結論
日本色材工業研究所は、化粧品のブランドから頼まれて口紅やファンデーションを作る受託製造の会社だ。自社の名前では売らない。筆者の結論はやや割高である。工場の稼働が戻れば利益は増えるが、売上の半分を超える借金を抱え、金利の上昇がその増益を食う。
2026 年 2 月期の営業利益は 1.8 億円にとどまった。コロナ明けの新製品の受注の波が引き、フランスの子会社も赤字が続いた。純利益は 3.4 億円だが、土地を売った益が大半だ。
筆者は、10 年後の営業利益を 8〜9 億円と見る。つくば工場が埋まり、新しく買った小諸工場も動く。それでも借入はほぼ 100 億円あり、金利が 1.6% から 3.5% に上がれば、利払いは倍になる。株主に残る利益は営業利益の半分ほどで、自己資本利益率(ROE)は資本コストに届かない。今の値段は、その回復をやや先回りしている。
配当は増えているが、性向は 2 割に満たない。株主にとっての安全域は、借金が減って利払いが軽くなるまで見えてこない。筆者はそれを待つ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本色材は「腕のいい職人の店に、大きな借金がついている」会社だ。メイク品の処方と色の技術は本物で、海外の高級ブランドも注文を出す。受託の業界そのものも、ブランドが製造を外に出す流れで伸びている。
ただ、値段を決めるのは客で、その上に重い借金が載っている。純負債は時価総額の 4 倍近く、利払いは営業利益とほぼ同じだ。金利が 3% 台の世界では、工場の稼働が戻っても、増えた利益の多くは銀行に渡る。株主に残るのは、その残りにすぎない。
安全域は見えない。PBR は 0.55 倍ほどで帳簿より安く見えるが、ROE が資本コストに届かない会社にとって、それは安すぎる値段ではない。借金を減らしながら利益率を上げる姿が 2〜3 年続けば、評価を見直す余地はある。
今の値段は、その転機を先に織り込んでいるように見える。
何で稼ぐ会社か
日本色材の仕事は、化粧品のブランドの「裏方」だ。客は国内外の化粧品メーカーで、彼らの企画に合わせて処方を作り、工場で詰めて納める。得意なのは口紅、アイシャドウ、パウダーなどのメイク品で、1930 年の創業から色材、つまり顔料を扱う技術を磨いてきた。
事業は日本とフランスに分かれる。日本は東京の研究所と、つくば・静岡の工場で作り、売上の 7 割を占める。海外の高級ブランド向けの輸出もある。2026 年 3 月には、化粧品会社のハーバーから長野県小諸の工場を買い、国内の 3 つめの拠点にした。
フランスは、2009 年に買ったテプニエ社と日本色材フランス社だ。欧州の化粧品と医薬品の受託をしている。売上は約 50 億円だが、ここ数年は赤字が続く。
稼ぎ方は、受注の数と工場の稼働で決まる。工場と設備にお金がかかるので、稼働が落ちると減価償却と人件費が利益を一気に削る。
客との契約は、製品ごとの受注が中心だ。ブランドが新しい色や処方を出すたびに試作を重ね、採用されれば量産に入る。研究開発の受託も請け負い、処方の開発料を受け取る。売れ筋の口紅が生まれれば数年は注文が続くが、ブランドの企画が外れれば、量はすぐに減る。
優良さと弱いところ
強みは、メイク品の処方と色の技術だ。口紅の発色やパウダーの肌への付き方は、原料の配合と製法のノウハウで決まり、客のブランドは簡単には他社に移さない。海外の高級ブランドからの受注があることも、技術の評価の証拠になる。
弱さは 3 つある。第 1 に、値段を決めるのは客だ。受託の会社は、ブランドの利益の一部を作業の対価として受け取るにすぎない。第 2 に、受注の波が大きい。コロナでメイク需要が消えた 2021 年 2 月期は、営業利益率が −9% まで落ちた。第 3 に、借金だ。工場の拡張とフランスの設備に借入で投じ、自己資本比率は 24% しかない。
受託の同業には、日本コルマーやトキワ、東洋ビューティなど非上場の大手が多く、人手と工場の取り合いになっている。日本色材は中堅で、規模で勝てる立場ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
化粧品の受託製造は、構造的に伸びている業界だ。新しいブランドの多くは自分の工場を持たず、企画と販売に集中して、製造を外に出す。ネットで生まれた小さなブランドや、異業種からの参入もこの流れを強めている。国内の化粧品の出荷量そのものは人口とともに横ばいだが、受託に出す割合が上がるので、受託の会社の数量は伸びる。
一方で、競争も激しい。大手の受託会社は工場を増やし、韓国の受託会社も日本に入ってきた。客のブランドは複数の受託先に注文を分け、値段を比べる。人手不足で工場の作業員の採用も難しく、外注の費用が上がっている。
欧州では、化粧品と医薬品の受託の受注が冷え込んでいる。エネルギーと人件費の上昇も重い。訪日客の買い物と、海外の高級ブランドの日本製への評価は追い風だ。筆者は、国内の受託の数量は 10 年で 1 割強増え、値段は物価並みに上がると見る。
受託の会社の利益率は、工場の稼働率でほぼ決まる。同じ設備で作る量が増えれば、償却と人件費が薄まって利益率が上がる。逆に、受注が減れば固定費が残って赤字になる。業界の伸びは量の追い風だが、同業も工場を増やしているので、稼働率が上がるとは限らない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、2026 年 2 月期は 1 株あたりの配当を 1.5 倍に増やした。それでも総額は 0.6 億円で、配当性向は 2 割に満たない。2026 年 4 月には自己株式をわずかに買った。株主優待はない。
会社は、コロナで傷んだ自己資本の回復を優先すると明言している。借入は短期と長期を合わせて約 96 億円、リースを含めると 99 億円で、現預金 11 億円を引いた純負債は 88 億円だ。今の時価総額の 4 倍近い。支払利息は年 1.6 億円で、営業利益とほぼ同じ額である。
M&A では、2009 年にフランスのテプニエ社を買ったが、ここ数年は赤字が続く。2026 年には小諸工場を 6.6 億円で買った。工場の拡張は借入で賄う形が続いており、金利の上昇は株主の取り分を直撃する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
工場が埋まれば、利益は大きく跳ねる。つくば工場の第 3 期の拡張は 2019 年に終わり、まだフル稼働していない。減価償却と人件費はすでに払っているので、受注が増えた分の多くが利益に残る。2027 年 2 月期の会社予想は、売上 10% 増で営業利益 2 倍だ。
業界の流れも味方する。新しい化粧品ブランドは自分の工場を持たず、受託に出す。海外の高級ブランドは日本製の品質を評価し、輸出も伸びる。小諸工場を加えたのは、その需要を取りにいくためだ。
2019 年 2 月期には営業利益率 8% を出した実績がある。そこに戻れば営業利益は 15 億円を超え、今の時価総額は利益の数倍にすぎなくなる。フランスの赤字も、設備の立ち上げが終われば縮む。
借入も、利益が増えれば返せる。営業利益に償却を足すと年 11 億円ほどあり、設備の投資を絞れば借金は着実に減る。利益が増え、借金が減る順番がそろえば、株主の取り分は二重に厚くなる。
慎重な見方
借金が重すぎる。純負債は 88 億円で、時価総額の 4 倍近い。支払利息は今でも営業利益とほぼ同じだ。金利が 1.6% から 3.5% に上がれば、利払いは年 3 億円を超え、今の営業利益を上回る。工場の稼働が戻っても、増えた利益の多くは銀行に渡る。
受託の商売は値段を決められない。客のブランドは複数の受託先に注文を分け、値段を比べる。大手の受託会社と韓国勢が工場を増やし、人手の取り合いも激しい。採用難で外注の費用が上がり、利益率を削っている。
フランスは赤字が続き、新しい設備の稼働も遅れている。2026 年 2 月期の純利益も、土地を売った益で底上げされたものだ。コロナのような需要の急減がもう一度来れば、借金の重さが命取りになりかねない。
株主に残るのは、銀行への支払いを終えた後のわずかな利益だけだ。
小諸工場の買収も借入で賄い、借金はむしろ増える方向にある。工場を増やすほど稼働率の勝負は厳しくなり、利益が出る前に利払いが先に来る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。工場の稼働の回復と受託の業界の伸びは認めるが、借金と金利の上昇は構造の話で、株主の取り分を確実に削る。確率は中立を厚くし、利益率 8% への回帰は楽観側に置いた。借金があるので、悲観は 1 割強にした。工場の稼働が上がっても、株主に残る利益は金利でかなり細る。そのため中立の倍率は控えめにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,001 円41 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 300 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 998 円20 億円、今との差 −10.9%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 9.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,805 円118 億円 | 492 円10 億円 | +462.2% | +18.8% | 441 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,638 円74 億円 | 418 円9 億円 | +262.2% | +13.7% | 811 円16 億円 |
| 中立 | 38% | 2,124 円43 億円 | 344 円7 億円 | +120.4% | +8.2% | 938 円19 億円 |
| やや悲観 | 23% | 207 円4 億円 | 197 円4 億円 | −64.0% | −9.7% | 93 円2 億円 |
| 悲観 | 12% | 103 円2 億円 | 49 円1 億円 | −86.4% | −18.1% | 18 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,001 円41 億円 | 300 円6 億円 | +105.4% | +7.5% | 2,301 円47 億円 |
今の株価時価総額 1,120 円23 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 工場が埋まり、利益率が 2019 年の山を超える 利益 10 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 5,805 円118 億円
受託の流れに乗って工場が埋まる筋書きだ。新しいブランドと海外の高級ブランドからの注文が増え、つくばと小諸がフル稼働する。国内の数量は 3 割近く増え、値段は物価をやや上回る。
フランスは新しい設備が立ち上がり、医薬品の受託で黒字に戻る。全社の営業利益は 16 億円を超える。増えた利益で借入を返し、金利の上昇の重さは和らぐ。ROE は資本コストをわずかに上回り、配当も増える。それでも受託の会社として、値段を決める力は客の側に残る。金利の上昇は残るが、利益の厚みで十分に吸収できる。借入は半分ほどに減る。
- 日本:数量 100(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 2.05(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 205 億円・営業利益 13 億円。1 億個(1.27 倍)× 205(1.37 倍)、6.5%
- 仏国:数量 30.0(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 2.75(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 83 億円・営業利益 3 億円。3,000 万個(1.19 倍)× 275(1.38 倍)、4%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.2 倍。全体の PER 11.2 倍、時価総額 111 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 8% 超は過去 12 年で 2019/02 期の 1 度だけで、国内の稼働の回復とフランスの黒字化、借金の圧縮が重なる必要がある。7% とした。
やや楽観 20% 稼働が戻り、利益率が 2017 年並みに近づく 利益 7 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 3,638 円74 億円
国内の工場の稼働が戻り、利益率が一段上がる筋書きだ。国内の数量は 2 割増え、つくばの拡張の分が埋まる。小諸工場も動き出す。値段は物価並みに上がる。
フランスは赤字を抜け、小さな黒字になる。全社の営業利益は 12 億円ほどだ。ただ、借入の金利は 3% 台に上がり、利払いは今の 2 倍近くになる。株主に残る利益は 7 億円弱で、ROE は 9% 弱。資本コストにはまだ届かない。借入は少しずつ減る。それでも配当は少しずつ増え、株主の取り分は今より厚くなる。小諸の稼働が利益に乗るまで数年かかる。借入の返済も進む。
- 日本:数量 95.0(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 2.03(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 193 億円・営業利益 11 億円。9,500 万個(1.21 倍)× 203(1.35 倍)、5.5%
- 仏国:数量 28.0(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 2.70(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 76 億円・営業利益 2 億円。2,800 万個(1.11 倍)× 270(1.35 倍)、2.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 72 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2027/02 期予想は営業利益 2 倍で、受注は期末に向けて堅調だった。国内の稼働が戻る道は現実的なので 20% とした。
中立 38% 工場はほどほどに埋まるが、増益の多くを金利が食う 利益 4 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,124 円43 億円
国内の数量は 15% 増え、値段は物価並みに上がる筋書きだ。受託に出すブランドが増え、つくばと小諸の稼働は少しずつ上がる。ただ、人手不足で外注の費用が上がり、利益率は 4.5% にとどまる。
フランスは赤字すれすれで、黒字は小さい。全社の営業利益は 8.6 億円ほどになる。借入の金利は 3% 台に上がり、支払利息は今の 2 倍近い 3 億円になる。株主に残る利益は 4 億円ほどで、ROE は 6% 台だ。配当は 2 割前後の性向で続き、借入はゆっくり減る。工場は動いているのに、株主の取り分は細いままという形だ。
- 日本:数量 90.0(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 2.01(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 181 億円・営業利益 8 億円。9,000 万個(1.15 倍)× 201(物価並み 1.34 倍)、4.5%
- 仏国:数量 26.0(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 2.68(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 70 億円・営業利益 1 億円。2,600 万個(1.03 倍)× 268(1.34 倍)、1%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 43 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受託の業界の伸びと工場の稼働の回復、金利の上昇と競争の激しさが打ち消し合う落としどころで、最も起こりやすい。38% とした。
やや悲観 23% 受注が伸びず、利払いが利益の大半を食う 利益 1 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 207 円4 億円
受注が伸び悩み、工場の稼働が上がらない筋書きだ。大手の受託会社と韓国勢が値段で攻め、国内の数量は 4% 増にとどまる。値上げも物価に届かない。人手不足で外注の費用がかさみ、利益率は 3% だ。
フランスは赤字が続く。全社の営業利益は 4 億円弱で、支払利息 3.3 億円でほとんど消える。株主に残る利益は 1 億円に届かず、ROE は 1% 台に沈む。工場の更新の投資は、償却より多い現金を求め、借入はほとんど減らない。配当は細り、株主に戻る現金はわずかになる。フランスの撤退の判断も先送りが続く。自己資本は少しずつしか増えない。
- 日本:数量 82.0(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 1.92(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 157 億円・営業利益 5 億円。8,200 万個(1.04 倍)× 192(1.28 倍、物価に届かない)、3%
- 仏国:数量 22.0(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 2.50(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 55 億円・営業利益 −1 億円。2,200 万個(0.87 倍)× 250(1.25 倍)、−1%
倍率:ROE 1.2% は k 9.5% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て 1÷k の 10.5 倍の 7 割弱の 7.0 倍。EV÷営業利益は約 23 倍で 20 倍を超えるが、それは純負債が重いためで、株主の取り分はわずかしか残らない。
確率:人手不足と競争の激化、フランスの赤字はすでに起きている。金利の上昇は確実に来るので、利益が細るこの筋書きを 23% とした。
悲観 12% 需要の急減が来て、借金の返済に追われる 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 103 円2 億円
メイク需要の急減か、大口の客の離反が来る筋書きだ。国内の数量は 1 割減り、値段も物価に届かない。フランスは赤字が広がり、撤退か売却の費用がかかる。
営業利益はゼロ近くまで落ち、3% 台に上がった金利の利払いで赤字が続く。会社は銀行の求めで設備の投資を止め、配当を打ち切る。減損で自己資本は削られる。株主の値打ちは、同業に安く買われる時の小さな上乗せに近づく。借金の重さが、受託の技術の価値を株主に届けない。受託の技術の価値は、借金の返済の陰に隠れる。配当は止まり、株主は長く待たされる。再編の話が出ても値段は低い。
- 日本:数量 70.0(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 1.80(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 126 億円・営業利益 0 億円。7,000 万個(0.89 倍)× 180(1.2 倍)、0%
- 仏国:数量 18.0(製品の出荷個数(百万個、推定))× 価格 2.40(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 43 億円・営業利益 −2 億円。1,800 万個(0.71 倍)× 240(1.2 倍)、−4%
倍率:赤字なので PBR で置く。純負債が資産の売却の値打ちをほぼ食うため、床は再編の時の小さな上乗せの約 2 億円で、今の自己資本 42.4 億円の 0.05 倍。
確率:コロナで営業赤字になった 2021〜2022 年の前例があり、その時より金利が高い。構造的に負ける筋書きを 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
国内外の化粧品ブランド向けのメイク品・スキンケアの製造受託と研究開発受託。つくば・静岡・小諸の工場。
| 数量製品の出荷個数(百万個、推定) | 価格1 個あたりの売上(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 78.6 | 1.50 | 118 | 3 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 2.01 | 181 | 8 |
取り方:個数の開示がないため推定。日本セグメントの売上 117.9 億円(内部売上 1.8 億円を含む)を、口紅・パウダーなどの受託の 1 個あたり約 150 で割った約 7,860 万個。利益はセグメント利益 2.81 億円。
仏国
テプニエ社と日本色材フランス社による、欧州の化粧品と医薬品の受託製造。
| 数量製品の出荷個数(百万個、推定) | 価格1 個あたりの売上(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 25.2 | 2.00 | 50 | −1 |
| 10 年後 中立 | 26.0 | 2.68 | 70 | 1 |
取り方:個数の開示がないため推定。仏国セグメントの売上 50.4 億円を、医薬品を含む 1 個あたり約 200 で割った約 2,520 万個。利益はセグメント損失 0.83 億円。
リスクと懸念
借金と金利の上昇
借入はリースを含め約 99 億円で、純負債は時価総額の 4 倍近い。平均の金利 1.6% が 3% 台に上がれば、利払いは年 3 億円を超え、今の営業利益を上回る。工場の拡張を借入で賄う形が続く限り、株主の取り分は金利に削られる。
受注の波
新製品の受注には波があり、コロナ明けの波が引いた 2026 年 2 月期は営業利益が 6 割減った。2021 年 2 月期にはメイク需要が消えて営業赤字になった。工場の固定費が重いので、稼働の上下が利益を大きく動かす。
フランスの赤字
テプニエ社と日本色材フランス社は、欧州の受注の冷え込みと新しい設備の稼働の遅れで赤字が続く。2009 年の買収から長く利益に貢献していない。撤退や売却となれば、さらに費用がかかる。
人手不足と外注の費用
国内の工場は採用難で工数が足りず、外注の加工費が上がっている。受託の会社は値段を客に転嫁しにくく、人件費の上昇がそのまま利益率を削る。
競争の激化
日本コルマーなど非上場の大手の受託会社が工場を増やし、韓国の受託会社も日本に入ってきた。客のブランドは注文を分けて値段を比べるので、中堅の受託会社は値段の勝負に巻き込まれやすい。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 期続けて 4% を超え、純負債が 70 億円を下回ったら
- 稼働の回復と借金の圧縮が同時に進んだ証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- フランスのセグメントが 2 期続けて黒字になったら
- フランスの利益率の見通しを上げる。
- 支払利息が営業利益を上回る年が来たら
- 金利の重さが表に出たとみて、やや悲観の確率を上げる。
- フランスの子会社を売却したら
- 売却の値段と借入の返済額で、純負債と利益の見通しを積み直す。
- 大手の化粧品会社や同業の受託会社から資本提携や買収の提案が出たら
- 受託の技術と工場に値段が付く。借金の扱いと合わせて再編の筋書きを見直す。
見ておくもの
- 国内の受注と工場の稼働(つくば・小諸)
- フランスのセグメントの損益
- 純負債と支払利息、借入の平均金利
- 営業利益率と外注の加工費
- 配当と自己資本比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR 0.55 倍を見ずに、ROE と k 9.5% から決めた。中立の ROE は 6% 台で k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 10.5 倍になり、その 8 割を使った。中立の営業利益率は 3.4% で過去 12 年の山 8.1% より下に置いた。借入の金利は 10 年で 3.5% に移し、純利益に入れた。純負債が重いので EV÷営業利益も見た。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.2 倍・やや楽観 PER 9→10.53 倍・中立 PER 8.4→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。