結論
上村工業は、半導体のパッケージ基板やプリント基板に金属の膜をつける「めっき」の薬品と装置を作る会社である。筆者の結論は、やや割高。稼ぐ力は本物だが、いまの利益率は過去10年で最も高く、そのまま続くとは見ない。
稼ぎの源は、生成AIのサーバー向けパッケージ基板だ。薬品売上の約8割がウェハー・パッケージ関連である。2026年3月期は売上918億円、営業利益213億円で、営業利益率は23%に達した。10年前は14%だった。
10年先の中立は、めっき薬品の市場が実質で年4%伸び、上村がシェアを保ち、価格が物価並みに上がる姿である。売上は今の1.9倍、営業利益は1.7倍になる。それでも時価総額は3,500億円ほどで、還元を足しても今の値段の1.5倍ほどにとどまる。
強気に振れれば8,000億円を超える。AI向けの需要が2倍になり、ガラスコア基板などの新しい工程にも薬品が入る場合だ。ただ、堀は強いと言い切れず、顧客の値下げ圧力もある。確率を重ねると、本質価値は今の時価総額の8割ほどになる。
救いは財務だ。純現金が515億円あり、自己資本比率は84%。景気の谷でも、つぶれる心配は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、上村は「よい事業だが、値段次第」の会社である。
まず事業の質。薬品は繰り返し売れる消耗品で、顧客の工程に入り込む。資本はあまり要らず、営業利益率は2割を超え、借金もない。オーナーとして持ち続けたい性質をもつ。堀は、強いとまでは言えない。世界シェアが読めず、顧客が値下げを求める力も強いからだ。
次に、利益の持続性。いまの営業利益率は過去10年の最高で、AIの追い風が含まれる。バリュー投資家は、山の利益を永続するものとして評価しない。10年の中立では利益率を少し下げ、薬品の価格は物価並みの上昇にとどめた。
最後に、資本の使い方。純現金の半分は事業に要らないとみる。ただ、戻し方は会社しだいだ。ためる傾向が強いので、余った現金は額面の半分だけ価値に足した。
以上から、本質価値は今の時価総額の8割ほどと出た。差は1〜3割の範囲で、大きくは開かない。強気が当たれば大きく上に外れる。それでも払う値段に安全域が足りないというのが、筆者の見立てである。
何で稼ぐ会社か
上村工業は、めっきの薬品と装置を作る会社である。創業は170年以上前にさかのぼる。めっきとは、基板や部品の表面に銅・ニッケル・金などの薄い金属膜をつける処理だ。回路をつくり、電気を通し、錆を防ぐ。仕上がりを決めるのは薬品の配合で、ここが上村の本業にあたる。
事業は3つある。柱は表面処理用資材で、売上は777億円、全社の85%を占める。薬品がその中心で、薬品売上559億円のうち445億円(約8割)が半導体ウェハーとパッケージ基板向けだ。残りはプリント基板、ハードディスク、自動車部品などに使われる。次に表面処理用機械が84億円。めっきの設備と、薬品の濃度を自動で保つ液管理装置をつくる。薬品を売り込むための道具という性格が強い。最後が受託のめっき加工で、48億円である。
顧客は、パッケージ基板やプリント基板をつくる台湾・中国・韓国・日本のメーカーだ。売上を地域でみると、日本が3割強、台湾が2割強、中国が2割弱で、海外が約67%を占める。競合は、国内のJCUとメック、米国のマクダーミッド、独系のアトテックである。
薬品は、使うほど減る消耗品だ。顧客の工場が動く限り、繰り返し売れる。しかも一度ラインに入ると、品質が変わる怖さから簡単には替えられない。装置と液管理まで一括で出し、この「替えにくさ」を強めているのが、上村の戦い方である。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、消耗品を顧客の工程に組み込んで売る形にある。パッケージ基板のめっきは、配線の幅が数マイクロメートルまで細くなり、薬品の出来が歩留まり、つまり良品の取れる割合に直結する。顧客は一度認定した薬品を、少し安いというだけでは替えない。上村は薬品・装置・液管理を一括で出し、顧客と一緒に工程をつくる。ここが堀、つまり他社がまねしにくい強みである。
ただし筆者は、これを「強い堀」とまでは置かない。理由は2つある。ひとつは、世界シェアの裏づけが公開資料から取れないことだ。ニッケルめっきでは国内首位とされるが、AI向けの先端パッケージではマクダーミッドやアトテック、JCU、メックと競り合う。もうひとつは、顧客が強いことだ。台湾・中国の大手基板メーカーは、毎年のように値下げを求めてくる。
資本効率は高い。営業利益率は14%から23%まで上がり、ROEは12%前後、自己資本比率は84%に達する。伸びは数量だけでなく、高付加価値の品が増えた結果である。
弱みは、利益の山の高さだ。過去10年の営業利益率の中央値は17%台で、今の23%はAIの追い風を含む。10年の中立では、この追い風が一部残るとみて21%に置いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
めっき薬品の需要は、半導体と電子基板への投資に連動する。いま追い風が最も強いのは、生成AIのサーバー向けだ。半導体材料の市場は2030年に700億ドル規模へ伸びるとの見通しがあり、電子材料全体は年6〜8%の成長とみられている。上村の主戦場であるパッケージ基板は、その中でも伸びの大きい分野である。
市場の大きさは競合から見積もれる。上村の資材売上は約5億ドル、JCUは約2億ドル、メックは約1.4億ドル。米国のマクダーミッドの電子向け事業は約18億ドル(はんだ材料なども含む)、アトテックは約12億ドルである。これに中国勢などを足すと、電子向けの湿式めっき薬品は約45億ドルで、上村のシェアは1割強になる。
10年の見通しは、実質で年4%の成長を中立とする。強気はAI向けの倍増、慎重は投資の一巡による足踏みである。価格は物価並みに上がるのが基本だが、顧客の値下げ圧力と中国勢の追い上げで、上振れは置きにくい。
半導体投資は、2〜4年の周期で山と谷をつくってきた。AIという新しい柱ができても、この周期は消えない。技術の転換点もある。ガラスコア基板やパネルレベルパッケージ(大きな板のまま半導体を組み立てる方式)は、量産が2027〜2030年とされる。ここで先に認定を取った薬品メーカーが、次の10年の主役になる。
中国の国産化は、中位グレードから進む。最先端では日本・欧米の優位が当面続くが、10年の悲観では中位品のシェアが削られる。
資本政策と M&A
還元は安定している。配当性向は4割台半ばで、自社株買いも小さく続ける。一方で純現金は、2022年3月期の258億円から2026年3月期の515億円へ倍増した。稼ぎの半分以上を内にためている形である。
M&Aは、ほとんど行ってこなかった。成長は自前の設備と研究開発でまかなう会社だ。2025年3月期から3年の中期経営計画では、成長投資200億円を掲げた。大阪府枚方市の機械工場の新設、深圳と韓国の倉庫、薬品の製造設備の増強が中心である。売上の目標は891億円だったが、実績は1年早く918億円に届いた。
今後の焦点は、積み上がった現金の使い道だ。事業に要る分を超えて眠る現金が、株主に戻るのか、買収で消えるのか。筆者は、大型買収より設備と研究への投資が続くと見る。還元を一段と厚くするかは、会社の方針しだいで、予想しにくい。
なお、kabufu の推計では、10年以内にTOB(株式公開買付け)を受ける確率は17%ほどである。時価総額が3,000億円規模で、技術を欲しがる材料大手には手の届く大きさだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AIは一度きりの波ではなく、半導体のつくり方そのものを変えている。チップを横に並べ、縦に積む先端パッケージが主流になり、基板は大きく、配線は細くなる。めっきの工程は増え、使う薬品の量も付加価値も上がる。上村は薬品売上の約8割がウェハー・パッケージ関連で、その入口に立っている。
会社の中期計画が掲げた2027年3月期の売上は891億円だった。実績は1年早く918億円に届き、経常利益も計画を大きく上回った。2027年3月期の第1四半期は、売上が前年より3割近く伸びている。会社の予想は慎重すぎる。
さらに上村は、パネルレベルパッケージとガラスコア基板に向けた薬品とめっき槽を開発している。量産は2027年以降だが、ここに入れば次の10年の成長の柱になる。純現金は515億円あり、200億円規模の成長投資も自前でまかなえる。
市場が実質で年7%伸び、シェアが2ポイント上がれば、利益は今の3〜4倍になる。薬品、装置、液管理をまとめて出せる会社は少なく、顧客の工程に入った薬品はまず替わらない。
慎重な見方
今の利益率は過去10年で最も高い。しかも、薬品売上の約8割が、AIサーバーという1つのテーマに乗っている。投資が一巡すれば、基板メーカーは過剰な設備を抱え、薬品の値下げを迫る。会社自身が、2027年3月期の営業利益を減益と予想している点も軽くない。
競争も変わる。台湾・中国の現地メーカーが育ち、中位グレードの薬品から食い込む。米国のマクダーミッドやアトテックは、先端品でも上村と正面から競る。顧客は大手の基板メーカーで、薬品を複数社から買い、価格を競わせる立場にある。シェアの裏づけが公開されていないことも、不安材料だ。
技術の変わり目もある。ガラスコア基板やパネルレベルは、薬品の作りを変える。ここで他社に先に認定を取られれば、いまの堀は意味を失う。
堀が強いと言い切れず、ROEが12%前後の会社に、AIの高成長がずっと続く前提を置くのは危うい。利益が景気の山で膨らんだ分は、先で薄れる。
そのうえ、利益の質を見ても、売上の伸びの多くは価格でなく数量に頼っている。数量は投資の循環で止まりやすい。値段を決める力が弱ければ、止まった時に利益は急に細る。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも事実の裏づけがある。ただ、筆者は慎重な見方のほうが強いと判断した。強気の見方は、需要の伸びについては正しい。だが、上村が値段を決める力を持つ証拠は乏しく、シェアを守る前提は置けても、上げる前提は置きにくい。利益率が過去最高の山にある点も、慎重な見方を支える。
そこで確率は、強気側(楽観とやや楽観)を33%、慎重側(やや悲観と悲観)を35%とし、悲観をやや厚くした。中立は32%である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 33,419 円5,346 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 6,445 円1,031 億円)。 今の値に割り戻すと 22,040 円3,526 億円、今との差 +23.8%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 6.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 72,061 円1.15 兆円 | 10,370 円1,659 億円 | +363.1% | +16.6% | 9,067 円1,451 億円 |
| やや楽観 | 22% | 50,162 円8,025 億円 | 8,083 円1,293 億円 | +227.2% | +12.6% | 12,814 円2,050 億円 |
| 中立 | 32% | 34,277 円5,483 億円 | 6,264 円1,002 億円 | +127.8% | +8.6% | 12,973 円2,075 億円 |
| やや悲観 | 22% | 13,138 円2,102 億円 | 5,513 円882 億円 | +4.8% | +0.5% | 4,103 円656 億円 |
| 悲観 | 13% | 4,596 円735 億円 | 2,375 円380 億円 | −60.8% | −8.9% | 906 円145 億円 |
| 加重平均 | 100% | 33,419 円5,346 億円 | 6,445 円1,031 億円 | +124.0% | +8.4% | 39,864 円6,377 億円 |
今の株価時価総額 17,800 円2,848 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 11% AI向けが倍増し、新工程にも入って利益が3.7倍に 利益 524 億円 · PER 21.7 倍 · 株価時価総額 72,061 円1.15 兆円
生成AIのサーバー向けパッケージ基板が、予想を超えて伸び続ける。基板は大型化し、配線は細くなり、1枚あたりに使うめっき薬品の量と付加価値が上がる。めっき薬品の市場は、実質で今の2倍になる。
ガラスコア基板やパネルレベルパッケージにも上村の薬品が入り、シェアは11.5%から13.5%へ上がる。薬品の価格は、物価の上昇を少し上回って上がる。
資材の営業利益率は28%に達し、装置も薬品とセットで売れる。純利益は今の3.7倍の520億円ほどになる。稼ぎが増えても還元は半分に抑え、純現金はさらに積み上がる。強気の見方が、ほぼそのまま当たる姿である。
- 表面処理用資材(めっき薬品・材料):数量 12.2(電子向け湿式めっき薬品の世界市場(実質、億ドル)× 上村のシェア)× 価格 140.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 2,554 億円・営業利益 715 億円。市場×シェア2.35倍・価格1.40倍、営業利益率28%
- 表面処理用機械(めっき装置・液管理装置):数量 156(めっき装置・液管理装置の出荷台数(台、推定))× 価格 0.98(1台あたりの平均単価(億円、名目))→ 売上 153 億円・営業利益 21 億円。数量1.30倍・価格1.40倍
- めっき加工・その他:数量 110(受託めっき加工・その他の処理量(万㎡相当、推定))× 価格 0.77(1万㎡あたりの売上(億円、名目))→ 売上 84 億円・営業利益 4 億円。数量1.10倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 520 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.2% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)250 億円。全体の PER 21.68 倍、時価総額 11,528 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向け需要が10年で倍になり、かつシェアも上がる必要があり、条件が重なる。慎重な見方のほうが強いので、1割強にとどめた。
やや楽観 22% AI向けが続き、細線化の高付加価値品でやや上振れ 利益 377 億円 · PER 20.8 倍 · 株価時価総額 50,162 円8,025 億円
AI向けの需要は続くが、投資の波が1〜2回入る。めっき薬品の市場は、実質で今の1.75倍になる。上村はパッケージ基板の新工程で一部のシェアを取り、11.5%から12.3%へ上がる。
薬品の価格は物価並みに上がる。顧客の値下げ圧力は残るが、細線化に伴う高付加価値品への移行が、それを埋め合わせる。
資材の営業利益率は26%で、今よりやや下がる。純利益は今の2.7倍の380億円ほどで、ROEは15%前後になる。機械は薬品とのセット販売が増え、受託加工も数量がわずかに伸びる。
本業の強さは認められるが、堀が破れない範囲の、素直な上振れである。中計が前倒しで達成されたように、会社の読みは慎重に出る傾向がある。ただ、その慎重さが続く保証はない。上村が値段を決める力を持つと確かめられるまで、これ以上は上に置かない。
- 表面処理用資材(めっき薬品・材料):数量 9.7(電子向け湿式めっき薬品の世界市場(実質、億ドル)× 上村のシェア)× 価格 136.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 1,979 億円・営業利益 515 億円。市場×シェア1.87倍・価格1.36倍、営業利益率26%
- 表面処理用機械(めっき装置・液管理装置):数量 138(めっき装置・液管理装置の出荷台数(台、推定))× 価格 0.94(1台あたりの平均単価(億円、名目))→ 売上 129 億円・営業利益 16 億円。数量1.15倍・価格1.34倍
- めっき加工・その他:数量 105(受託めっき加工・その他の処理量(万㎡相当、推定))× 価格 0.77(1万㎡あたりの売上(億円、名目))→ 売上 81 億円・営業利益 4 億円。数量1.05倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 374 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)250 億円。全体の PER 20.77 倍、時価総額 8,010 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向けの需要が続き、新工程でも薬品が採用される素直な上振れ。会社の中計が前倒しで達成された実績を踏まえ、2割強を置いた。
中立 32% 市場は実質年4%、シェアは保ち、利益率は山から少し下がる 利益 261 億円 · PER 19.9 倍 · 株価時価総額 34,277 円5,483 億円
AI向けの追い風は続くが、半導体投資の波で2〜3年に一度は調整が入る。めっき薬品の市場は、実質で年4%、10年で今の1.5倍になる。シェアは11.5%のまま変わらない。
価格は物価並みの1.34倍。顧客の値下げ圧力と、細線化に伴う付加価値の上昇が相殺する。機械と受託加工は数量が横ばいで、価格だけが物価で上がる。
資材の営業利益率は23%と、今の26%から下がる。全社では21%になる。売上は今の1.9倍の1,750億円、純利益は1.9倍の260億円である。還元は純利益の半分で、ROEは12%に落ち着く。高い利益率と純現金の強さが、そのまま続く10年を描いた。
- 表面処理用資材(めっき薬品・材料):数量 7.8(電子向け湿式めっき薬品の世界市場(実質、億ドル)× 上村のシェア)× 価格 134.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 1,562 億円・営業利益 359 億円。市場×シェア1.50倍・価格1.34倍、営業利益率23%
- 表面処理用機械(めっき装置・液管理装置):数量 120(めっき装置・液管理装置の出荷台数(台、推定))× 価格 0.94(1台あたりの平均単価(億円、名目))→ 売上 113 億円・営業利益 12 億円。数量1.00倍・価格1.34倍
- めっき加工・その他:数量 100(受託めっき加工・その他の処理量(万㎡相当、推定))× 価格 0.77(1万㎡あたりの売上(億円、名目))→ 売上 77 億円・営業利益 3 億円。数量1.00倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 257 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)250 億円。全体の PER 19.86 倍、時価総額 5,362 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場が実質年4%で伸び、シェアは保つが利益率は山から少し下がる、議論の落としどころ。
やや悲観 22% AI投資が一巡し、値下げと中国勢で利益が横ばい 利益 154 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 13,138 円2,102 億円
AI向けの投資が一巡し、パッケージ基板が過剰になる。台湾・中国の基板メーカーは、薬品の値下げを強く求めるようになる。中国の現地メーカーが中位グレードに食い込み、上村のシェアは11.5%から10%強に下がる。
めっき薬品の市場は、実質で今の1.25倍にとどまる。薬品の価格は1.22倍で、物価を大きく下回る。
資材の営業利益率は20%に下がり、全社では18%になる。純利益は今とほぼ同じ150億円台で、10年がほぼ横ばいに終わる。それでも赤字にはならず、純現金も守られる。優良ではあるが、成長を期待されなくなる姿である。
- 表面処理用資材(めっき薬品・材料):数量 5.8(電子向け湿式めっき薬品の世界市場(実質、億ドル)× 上村のシェア)× 価格 122.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 1,067 億円・営業利益 213 億円。市場×シェア1.13倍・価格1.22倍、営業利益率20%
- 表面処理用機械(めっき装置・液管理装置):数量 108(めっき装置・液管理装置の出荷台数(台、推定))× 価格 0.84(1台あたりの平均単価(億円、名目))→ 売上 91 億円・営業利益 7 億円。数量0.90倍・価格1.20倍
- めっき加工・その他:数量 95.0(受託めっき加工・その他の処理量(万㎡相当、推定))× 価格 0.74(1万㎡あたりの売上(億円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 1 億円。数量0.95倍・価格1.30倍
倍率:事業のROEが資本コスト6.75%を少し上回る程度の筋書き。ためた利益は帳簿の額に届かない価値とみて、稼ぐ力(純利益÷k=12.5倍)より低い11.5倍に置いた。余った現金は谷で食うので0.75倍で数える。
確率:投資の一巡と顧客の値下げで、利益が横ばいに終わる筋書き。利益率が過去最高の山にあることを踏まえ、やや厚く置いた。
悲観 13% 新工程で認定を取れず、中国勢と顧客に追われて構造的に負ける 利益 40 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 4,596 円735 億円
構造的な負けが起きる。中国・台湾の現地メーカーが先端グレードにも入り、米国の大手も攻勢をかける。大手の基板メーカーは薬品を複数社から買い、価格を叩く。ガラスコア基板などの新しい工程で認定を取れず、上村は先端品の席を失う。
AI向け投資の反動で、めっき薬品の市場は実質で今と同じ水準にとどまる。シェアは11.5%から8.5%へ下がり、価格は物価を大きく下回る1.05倍になる。
資材の営業利益率は8%、機械と受託加工は赤字になる。全社の営業利益は40億円ほどで、純利益はほぼ金利収入だけになる。ここでの価値は稼ぐ力ではなく、純現金と売れる資産の税後で測る。
- 表面処理用資材(めっき薬品・材料):数量 3.8(電子向け湿式めっき薬品の世界市場(実質、億ドル)× 上村のシェア)× 価格 105.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 603 億円・営業利益 48 億円。市場×シェア0.74倍・価格1.05倍、営業利益率8%
- 表面処理用機械(めっき装置・液管理装置):数量 84.0(めっき装置・液管理装置の出荷台数(台、推定))× 価格 0.77(1台あたりの平均単価(億円、名目))→ 売上 65 億円・営業利益 −1 億円。数量0.70倍・価格1.10倍
- めっき加工・その他:数量 95.0(受託めっき加工・その他の処理量(万㎡相当、推定))× 価格 0.69(1万㎡あたりの売上(億円、名目))→ 売上 65 億円・営業利益 −3 億円。数量0.95倍・価格1.20倍
倍率:電子材料の優位を失い、利益がほぼ金利収入だけの筋書き。稼ぐ力でなく売れる資産で測る。純現金と、設備・在庫などの売却価値(税後)を床とし、今の自己資本1,167億円に0.63倍を掛けた。
確率:技術の変わり目で認定を取れず、中国勢と顧客の値下げで構造的に負ける筋書き。起きれば深いので、1割を超える確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
表面処理用資材(めっき薬品・材料)
パッケージ基板・プリント基板・半導体ウェハー・ハードディスクなどに使うめっき薬品と材料。全社の約85%の売上と、ほぼ全部の利益を稼ぐ。
| 数量電子向け湿式めっき薬品の世界市場(実質、億ドル)× 上村のシェア | 価格売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.2 | 100.0% | 777 | 204 |
| 10 年後 中立 | 7.8 | 134.0% | 1,562 | 359 |
取り方:電子向け湿式めっき薬品の世界市場を、上村の資材売上(約5.2億ドル)、JCU(約2億ドル)、メック(約1.4億ドル)、マクダーミッドの電子向け(約18億ドル)、アトテック(約12億ドル)に中国勢などを足して約45億ドルと置いた。上村のシェアは5.18÷45で約11.5%(推定)。数量は市場×シェアの実質、価格は今を1.00とする名目の指数で、物価3%は価格に入れる。 数量は市場の実質成長(物価を除く)× シェアで、物価は価格の指数に別に入れている。
表面処理用機械(めっき装置・液管理装置)
めっきの設備と薬品の濃度を自動で管理する装置。薬品の売り込みを支える設備として、景気と顧客の投資に左右される。
| 数量めっき装置・液管理装置の出荷台数(台、推定) | 価格1台あたりの平均単価(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.70 | 84 | 9 |
| 10 年後 中立 | 120 | 0.94 | 113 | 12 |
取り方:表面処理用機械の売上84億円を、出荷台数約120台(めっき槽・自動化ライン・液管理装置の合計、推定)×1台あたり約0.7億円と置いた。台数は開示が無く推定。数量は台数の実質、価格は物価3%込みの名目。機械の利益は開示を確認できず、全社の営業利益213億円との差から約9億円と推定した。
めっき加工・その他
顧客の部品に代わって行う受託のめっき加工と、その他の小さな事業。利益はごくわずか。
| 数量受託めっき加工・その他の処理量(万㎡相当、推定) | 価格1万㎡あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.57 | 57 | 2 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.77 | 77 | 3 |
取り方:受託めっき加工の売上48億円とその他約9億円(全社売上918億円との差)を合わせ、処理量を約100万㎡相当、1万㎡あたり約0.57億円と置いた(開示が無く推定)。利益は開示を確認できず、約2億円と推定した。調整は全社費用でマイナス2億円と置いて、営業利益213億円に合わせた。
リスクと懸念
AI向けパッケージ基板への集中
薬品売上の約8割がウェハー・パッケージ関連で、その中心が生成AIのサーバー向けである。AI投資が一巡すれば、基板メーカーの設備投資が止まり、薬品の使用量が減る。利益率が過去最高の山にあるぶん、反動も大きい。
顧客の値下げ圧力
顧客は台湾・中国の大手基板メーカーで、薬品を複数社から買い、価格を競わせる立場にある。量が増えても、単価が毎年下がれば利益は伸びない。上村の価格決定力は、公開資料からは確かめにくい。
中国勢と海外大手の追い上げ
中国の現地めっき薬品メーカーが、中位グレードから食い込んでいる。米国のマクダーミッドやアトテックは、先端品でも上村と競る。シェアの数字が公開されないため、取られていても気づきにくい。
技術の変わり目で認定を落とす
ガラスコア基板やパネルレベルパッケージは、薬品の作りを変える可能性がある。量産は2027〜2030年とされ、ここで他社が先に認定を取れば、いまの堀が効かなくなる。
利益率の山と会社予想の減益
2027年3月期は、増収でも営業利益は減る計画である。為替・材料費・研究開発費・人件費が重なれば、利益率はさらに下がる。10年の中立でも、この山からの低下を織り込んでいる。
現金の使い道とガバナンス
事業に要らない現金が数百億円ある。大型買収で価値を壊すか、還元されずにたまり続けるかは会社しだいだ。自己株の処分や取得の方針も、今後の資本政策の読みにくさになる。
今後の分かれ目
- ガラスコア基板・パネルレベルパッケージの量産で、上村の薬品が主要な顧客に採用されたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。シェアが上がる筋書きに近づく。
- 2027年3月期の通期で、営業利益が会社予想を大きく上回って着地したら
- 利益率が山から下がらない根拠になる。ただし山の利益を永続とは見ず、価格の動きを確かめる。
- 主要顧客が薬品の単価を毎年引き下げ、増収でも利益が伸びなくなったら
- やや悲観の確率を上げる。価格決定力が弱いという見立てを裏づける。
- 中国の現地メーカーの薬品が、台湾の大手基板メーカーに認定されたら
- 悲観の確率を上げる。中位品から先端品へ広がるかを確かめる。
- 純現金の使い道として、大型の買収が発表されたら
- 買収の中身で判断する。本業の延長で割安なら価値を足し、遠い分野への高値買いなら余った現金の評価を下げる。
- 配当性向の引き上げや大きな自社株買いが決まったら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0へ引き上げる根拠になる。
見ておくもの
- 表面処理用資材の四半期の売上と営業利益率(特にウェハー・パッケージ関連の薬品売上)
- 台湾の大手基板メーカーと半導体各社の設備投資の動き
- ガラスコア基板・パネルレベルパッケージの量産の時期と上村の採用状況
- 中国の現地めっき薬品メーカーの認定の進み方
- 純現金の水準と、配当・自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
数量は市場の実質規模×シェア、価格は物価3%込みの名目(中立で10年1.34倍)で売上を積み、利益率は事業の構造から置いた。倍率は、その時点の純利益に正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k6.75%、g4%、RONIC=k+残る割合1/2×(ROE−k))を当て、中立は上限の85%に置いた。利益の質(高い利益率と純現金)と、循環・顧客集中・シェア不明の弱さを見合わせた。悲観は純現金と売れる資産の税後で測った。今の株価は最後に比べただけで、今の倍率に寄せていない。製造業でリース負債は小さく、新リース会計基準での形の変化は無視できる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.8→21.68 倍・やや楽観 PER 14.4→20.77 倍・中立 PER 13.3→19.86 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.5% を足して8.0%。個別の懸念(シェアが不明・顧客が強い・現金の使い道)は k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 6.75%。