結論
アジュバンホールディングスは神戸の化粧品会社だ。美容室やエステサロンだけで売るヘアケアとスキンケアの専売ブランドを持つ。筆者の結論は割高だ。手元の現金は厚いが、ブランドが10年縮み続け、事業の稼ぎが今の値段をまったく支えていないからである。
売上は2016年3月期の50億円前後から、2026年3月期には38億円まで減った。スキンケアの落ち込みが特に速く、2026年3月期の中間期は前年より15%減った。かつて営業利益率は2割を超えたが、今は4%台だ。固定費の重い会社なので、売上の減りがそのまま利益を削る。
救いは純現金の21億円だ。今の値段の3分の1を超える。ただ、その現金は10年積み上がったまま、株主に戻されてはいない。10年の中立でも、事業の稼ぎは資本コストの半分に届かないとみる。今の値段は、ブランドが反転して利益率が過去の水準に戻る前提に近い。新ブランドの当たりで反転する道もあるが、それは確率の低い上振れにとどめた。会社が倒れる心配は小さいが、倒れないことと、今の値段に見合う価値があることは別の話だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、かつて強かったブランドが今も強いとは限らない。アジュバンは、その見極めが問われる会社だ。
オーナー利益、つまり事業を保つ費用を払ったあとに株主に残る利益は、年に1億円前後だ。工場を持たない身軽な会社なので、設備の更新に現金はほとんど要らない。それでも残る利益は小さい。ブランドの力が落ち、売上の減りがそのまま利益を削っているからだ。
堀、つまり他社がまねできない強みは、サロン専売という売り方と美容師との関係だった。その堀は10年で狭まった。大手は教育と品ぞろえで美容室を囲い、客はネットで安く買う。
手元の21億円の現金は本物の価値だ。ただ、少数株主はその使い道を決められない。現金が事業の立て直しや配当に回るまでは、帳簿の額どおりの値打ちは付けにくい。払う値段が事業の稼ぎと現金を足した価値を大きく上回っており、安全域は見えない。ブランドの反転が数字で確かめられてからでも、遅くはない。
何で稼ぐ会社か
売り物は、美容室とエステサロンで使い、店頭で客に売る化粧品だ。売上の6割強がヘアケアで、シャンプーやトリートメント、カラー剤を美容室に納める。3割強がスキンケアで、化粧水や美容液をサロンの店頭で売ってもらう。ドラッグストアや百貨店には置かない、サロン専売の売り方を貫いてきた。
稼ぎの仕組みは二段になっている。まず美容室が施術で使う業務用の商品を買う。次に、美容師が客に勧めて店頭で売る店販品がある。店販は利益率が高く、ブランドの強さがそのまま表れる。アジュバンは美容師向けの講習や販売の勉強会を開き、店販を育ててきた。
近年は立て直しの手を次々に打っている。サロンが新しく取引を始める時の仕入れの条件を外し、店販に絞った講習を始めた。nyu by adjuvant や muts totte といった新ブランドを出し、カラー剤の会社を中核の会社に統合した。美容室向けのアプリやネットの注文の仕組みも整えた。ただ、2026年3月期の売上は前年より1割近く減り、手は打っても数字はまだ戻っていない。
工場は持たず、生産は外に任せる。研究と商品の企画、美容師への教育に人と費用を集める形だ。資産は軽く、手元の現金が自己資本の半分を占める。
優良さと弱いところ
かつての強さは、今はほとんど残っていない。これが筆者の見立てだ。2011年3月期ごろの営業利益率は2割を超え、サロン専売のブランドとして高い値段で売れていた。その後、売上は年1.4%ずつ縮み、利益率は4%台まで落ちた。
理由は美容室の棚の取り合いにある。ミルボンや海外の大手は、美容師の教育と品ぞろえの厚さで美容室を囲い込む。美容室の数は横ばいでも、使う商品が他社に置き換えられれば、アジュバンの数量は減る。スキンケアは、客がネットやドラッグストアで安く買えるようになり、サロンの店頭で買う理由が薄れた。
財務は堅い。借金はなく、純現金は21億円ある。ただ、その現金は10年積み上がったままで、事業にも株主にも回っていない。経営の打つ手は速いが、どれも小さく、ブランド全体を押し上げる力はまだ無い。会社はROE8%の早期達成を掲げるが、直近のROEは3%台で、遠い目標だ。立て直しの手が数字に表れるまで、強みが戻ったとは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
前提は、数量がほぼ横ばいの国内の化粧品市場だ。日本の美容とパーソナルケアの市場は人口の減少で量が伸びず、値段は物価並みに上がる。伸びを取るのは、機能の高い商品やプレミアムの商品に集中できる会社だけだ。
美容室の市場は約1.3兆円で、前年とほぼ同じだった。美容室の数は多く、小さな店が大半を占める。業務用のヘアケアはミルボンが国内の首位で、ロレアルやシュワルツコフといった海外の大手が続く。どこも美容師の教育と講習に力を入れ、美容室との関係を囲い込む。小さいブランドは、この教育の厚さで負けやすい。
店販、つまり美容室の店頭で客に売る商品は、ネットとドラッグストアに押されている。サロン専売のはずの商品がネットで安く売られることもあり、客が美容室で買う理由が薄れる。一方で、美容師が勧める本格的な商品を求める客も根強く、ブランドの立て直しに成功すれば、高い利益率が戻る余地はある。
不況では、化粧品のような選んで買う品は2〜3割落ちることがある。2020年のコロナ禍では美容室の休業で売上が減り、赤字を出した。業界の再編は、大手が小さいブランドを取り込む形で進むとみる。取り込まれる側に回るか、独自の隙間を守るかが分かれ目だ。
資本政策と M&A
配当は年に1億円弱の安定配当で、ここ数年は利益の大半を配当で戻している。2024年3月期に配当を半分に減らし、今の水準になった。2022年には自己株を買い、創業者が持ち株の一部を売った。自社株買いはその一度きりで、続いていない。
問題は手元の現金だ。純現金は21億円で、今の値段の3分の1を超える。10年前の14億円から減っておらず、事業に要る運転資金を引いても15億円ほどが余っている。会社はROE8%とPBR1倍以上の維持を掲げるが、余った現金を大きく株主に戻す方針は示していない。
創業者が会長兼社長を務め、約1割の株を持つ。別に15%を持つ株主もいる。時価総額は60億円規模と小さく、ブランドと美容室の取引先を目当てに大手が買う筋はありうる。余った現金は配当の実績を見て、帳簿の額の4分の3が株主に戻るとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
手元の現金だけで、今の値段の3分の1を超える。借金はなく、工場も持たないので、事業を立て直す時間は十分にある。2026年3月期は売上が減ったのに経常利益は予想を上回り、費用を削る力があることを示した。
ブランドの立て直しにも手を打っている。新しく取引を始めるサロンの仕入れの条件を外し、店販に絞った講習を始めた。nyu by adjuvant や muts totte といった新ブランドは、若い美容師に向けた品だ。カラー剤の会社を統合し、業務用の品ぞろえも厚くした。どれかが当たれば、固定費の重い会社なので利益は大きく戻る。
かつて営業利益率が2割を超えた実績もある。サロン専売の商品は、ドラッグストアの安売りに巻き込まれにくい。美容師が勧める本格的な商品を求める客は根強い。会社がROE8%とPBR1倍以上の維持を掲げた以上、余った現金を自社株買いに回す可能性もある。ブランドの大手が美容室の取引先を目当てに買う道も残る。手元の現金を考えれば、下値は限られている。費用を削って利益を守る経営の腕も確かだ。
慎重な見方
ブランドは10年縮み続けており、止まる気配がない。売上は50億円前後から38億円まで減り、2026年3月期の中間期はスキンケアが15%、ヘアケアも6%減った。新ブランドを出し、仕入れの条件を外し、講習を増やしても、数字は戻っていない。
美容室の棚は、ミルボンや海外の大手が教育と品ぞろえの厚さで押さえている。美容室の数は横ばいでも、使う商品が他社に置き換えられれば、小さいブランドは削られていく。スキンケアは客がネットやドラッグストアで安く買えるようになり、サロンで買う理由が薄れた。
手元の現金は厚いが、10年積み上がったまま株主に戻されていない。経営は創業者が担い、現金の使い道を少数株主は決められない。事業の稼ぎは年に1億円前後で、資本コストの半分に届かない。今の値段は、事業の稼ぎと現金を足した価値を大きく上回る。経営の打つ手は小さく、数も多すぎて焦点がぼやけている。反転の兆しが数字に表れるまで、この値段を払う理由は乏しい。費用を削って利益を守るやり方も、削る所が尽きれば終わる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。手元の現金と費用を削る力は本物で、悲観でも会社は倒れない。ただ、ブランドが10年縮み続けた記録と、立て直しの手が数字に表れていない事実は重い。中心は縮みが緩むが止まらない筋書きで、新ブランドが当たる上振れには1割弱を残し、確率は悲観の側に寄せた。手元の現金は帳簿どおりには戻らないとみて、その4分の3だけを価値に足した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 342 円27 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 124 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 238 円19 億円、今との差 −67.7%、 期待の年率 −4.5%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 946 円76 億円 | 225 円18 億円 | +58.8% | +4.7% | 82 円7 億円 |
| やや楽観 | 18% | 553 円44 億円 | 162 円13 億円 | −2.9% | −0.3% | 129 円10 億円 |
| 中立 | 40% | 331 円26 億円 | 125 円10 億円 | −38.1% | −4.7% | 182 円15 億円 |
| やや悲観 | 23% | 140 円11 億円 | 100 円8 億円 | −67.4% | −10.6% | 55 円4 億円 |
| 悲観 | 12% | 94 円8 億円 | 50 円4 億円 | −80.5% | −15.1% | 17 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 342 円27 億円 | 124 円10 億円 | −36.8% | −4.5% | 466 円37 億円 |
今の株価時価総額 737 円59 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 新ブランドが当たり、サロンの店販が戻る 利益 5 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 946 円76 億円
nyu by adjuvant や muts totte といった新ブランドが若い美容師に支持され、取引する美容室が増える。店販、つまりサロンの店頭で客に売る商品も、アプリとネットの注文の仕組みで戻る。ヘアケアの数量は10年で1割増え、スキンケアも落ち込みが止まる。
値段は物価を少し上回って上がり、売上は名目で55億円を超える。固定費の重い会社なので、売上が戻れば利益は大きく戻り、営業利益率は12%に届く。手元の現金も2%で回る。自己資本の稼ぎは資本コストを上回り、会社が掲げるROE8%を超える。余った現金も自社株買いに回り、ブランドの大手が提携を求めてくる場面も出てくる。
- ヘアケア(カラー剤・その他を含む):数量 1.9(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 2,130(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 5 億円。数量 1.1 倍 × 単価 1.42 倍、利益率 13.5%
- スキンケア:数量 0.4(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 4,260(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。数量 0.9 倍 × 単価 1.42 倍、利益率 8%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 13.99 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ブランドが10年続けて縮んできた会社が反転するには、新ブランドの当たりと店販の立て直しが両方要る。過去に利益率2割を出した実績はあるが、確率は低くした。
やや楽観 18% 縮みが止まり、利益率が1割近くに戻る 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 553 円44 億円
新ブランドとカラー剤が既存品の減りを埋め、ヘアケアの数量は今の水準を保つ。スキンケアは2割減るが、減り方は今より緩やかになる。値段は物価並みに上がり、売上は名目で50億円前後に戻る。
費用は物価で増えるが、IT費や業務委託費を削った効果が残り、営業利益率は8%に戻る。手元の現金の利息も利益を支える。配当は少しずつ増える。自己資本の稼ぎは資本コストに届かないが、会社としては安定して稼げる形に戻る。余った現金の一部は自社株買いに回り、株主の取り分も少し増える。ただ、かつての2割の利益率には遠い。ブランドが生き返ったというより、縮みが止まって落ち着いた姿だ。
- ヘアケア(カラー剤・その他を含む):数量 1.7(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 2,070(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 4 億円。数量横ばい × 単価 1.38 倍、利益率 10.5%
- スキンケア:数量 0.3(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 4,140(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量 0.8 倍 × 単価 1.38 倍、利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 44 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年3月期は経常利益が予想を上回った。費用を削る力はあるので、売上の縮みが止まれば利益率は戻る。ただ縮みが止まった証拠はまだ無い。
中立 40% ブランドがゆっくり細り、利益は薄いまま 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 331 円26 億円
ヘアケアの数量は、美容室の数が横ばいの中で他社の商品に置き換えられ、10年で15%減る。スキンケアは3割半減る。値段は物価並みに上がるので、売上は名目で40億円前後とほぼ今の水準にとどまる。
費用は物価で増え、営業利益率は4%前後と今と変わらない。利益を支えるのは、手元の現金が2%で回る利息だ。配当は今の額を保つ。自己資本の稼ぎは3%前後で、資本コストの半分に届かない。新ブランドは育つが、既存品の減りを埋めるのがやっとだ。事業の価値より、手元の現金の価値のほうが大きい会社になる。その現金も、株主に大きく戻される見込みは薄く、帳簿の額どおりには評価しにくい。
- ヘアケア(カラー剤・その他を含む):数量 1.4(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 2,010(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 6%
- スキンケア:数量 0.3(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 4,020(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量 0.65 倍 × 単価 1.34 倍、赤字
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は10年で年1.4%ずつ縮み、2026年3月期はさらに1割減った。新ブランドで縮みは緩むが止まらない、というのが最もありそうな道筋とみた。
やや悲観 23% 美容室の棚を大手に奪われる 利益 0 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 140 円11 億円
美容室はミルボンや海外の大手の商品に切り替え、アジュバンの取引は細る。ヘアケアの数量は10年で3割減り、スキンケアは半分になる。値段は物価を少し下回ってしか上がらない。
固定費が残るので、営業利益はほぼゼロに沈む。利益を支えるのは手元の現金の利息だけになる。配当は手元の現金から払い続けるが、現金は少しずつ減る。価値は事業の稼ぎでなく、残る現金のうち株主に戻りそうな分で決まる。新ブランドも大手の厚い品ぞろえの前では目立たず、立て直しの手は尽きていく。費用を削る余地も小さくなり、利益の底が見えなくなる。手元の現金は配当で少しずつ減っていく。
- ヘアケア(カラー剤・その他を含む):数量 1.2(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 1,950(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。数量 0.7 倍 × 単価 1.30 倍、利益率 2.5%
- スキンケア:数量 0.2(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 3,900(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。数量 0.5 倍 × 単価 1.30 倍、赤字
倍率:ROE 0.9% が k 8.25% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値しか生まず、PER の上限は 1÷k=12.1 倍。7.26 倍(上限の 60%)に置いた。ROE÷k が 0.11 なので、ためた利益の目減りに合わせて 1÷k に max(0.6, ROE÷k) を掛けた。余った現金 11.2 億円は利息を除いた事業の利益と分け、戻り方 0.75 を掛けて足した。
確率:ミルボンやロレアルのような大手は、教育と品ぞろえの厚さで美容室を囲い込む。スキンケアの落ち込みの速さを見て、厚めの確率を置いた。
悲観 12% ブランドが力を失い、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 94 円8 億円
美容室での取り扱いが半分に減り、スキンケアは3分の1近くまで縮む。値段は物価に追いつかない。固定費を削っても売上の減りに追いつかず、営業赤字が続く。
配当は大きく減らし、赤字と配当で手元の現金は半分ほどに減る。会社は現金があるので倒れないが、その使い道を少数株主は決められない。価値は残る現金のうち、株主に戻りそうな分だけになる。ブランドを他社に売る道もあるが、縮んだブランドに高い値段は付かない。株主に残るのは、配当で少しずつ戻る分と、細った現金の一部だけだ。かつて2割の利益率を誇ったブランドは、静かに棚から消えていく。美容師の記憶からも、名前が薄れていく。
- ヘアケア(カラー剤・その他を含む):数量 0.9(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 1,875(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.5 倍 × 単価 1.25 倍、赤字
- スキンケア:数量 0.1(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 3,750(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 −2 億円。数量 0.35 倍 × 単価 1.25 倍、赤字
倍率:赤字なので PER は当てない。今の自己資本 42.2 億円に PBR 0.178 を掛け、床(残る純現金 約 10 億円 × 戻り方 0.75)の 7.5 億円に合わせた。
確率:売上の縮みが止まらず、固定費を削り切れない筋書き。2020年3月期と2024年3月期に赤字を出しており、10年の構造的な負けとして1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ヘアケア(カラー剤・その他を含む)
美容室で使うシャンプー・トリートメント・カラー剤と、店頭で客に売る店販品。
| 数量出荷個数(百万個・年、推定) | 価格1 個あたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.7 | 1,500 | 26 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 2,010 | 29 | 2 |
取り方:中間期の構成比(ヘアケア 64%・スキンケア 33%・その他 3%)を通期 38.1 億円に当て、ヘアケアとその他で 25.5 億円。業務用の大容量と店販品をならした出荷単価を 1 個 1,500 とし、年 170 万個と推定。利益は本社費込みの推定。
スキンケア
エステ・美容室で売る化粧水・美容液などの基礎化粧品。
| 数量出荷個数(百万個・年、推定) | 価格1 個あたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 3,000 | 13 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 4,020 | 11 | 0 |
取り方:通期 38.1 億円の 33% で 12.6 億円。出荷単価 1 個 3,000 とし、年 42 万個と推定。中間期に前年比 −15% と落ち込みが大きく、赤字とみた。
リスクと懸念
ブランドの縮みが止まらない
売上は10年で年1.4%ずつ縮み、2026年3月期はさらに1割近く減った。新ブランドや講習の手を打っても戻らなければ、固定費の重さで赤字が定着する。
大手による美容室の囲い込み
ミルボンや海外の大手は、美容師の教育と品ぞろえの厚さで美容室を囲い込む。小さいブランドは講習の厚さで負け、取引する美容室を少しずつ失う。
店販のネットとドラッグストアへの流出
客が同じような商品をネットやドラッグストアで安く買えるようになり、美容室の店頭で買う理由が薄れた。利益率の高い店販が細れば、利益は売上の減り以上に減る。
現金が株主に戻らない
純現金21億円は10年積み上がったままだ。少数株主は使い道を決められず、事業の立て直しで使い切る、あるいは割高な買収に使う恐れもある。
不況と美容室の来店
化粧品は選んで買う品で、不況では2〜3割落ちることがある。コロナ禍では美容室の休業で赤字を出した。来店の間隔が延びれば、業務用の消費も減る。
今後の分かれ目
- ヘアケアの売上が前年を上回る状態が2年続いたら
- 縮みが止まったとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 新ブランドの売上が全社の2割を超えたら
- ブランドの立て直しが数字に表れたとみて、楽観の筋書きに重みを移す。
- 余った現金で大きな自社株買いや増配を決めたら
- 現金の戻り方を1.0に近づけ、価値を見直す。
- スキンケアの売上が前年比で2割以上減り続けたら
- 美容室の棚を失う筋書きが近づいたとみて、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 化粧品の大手が資本提携や買収を持ちかけたら
- ブランドと取引先に値段が付く場面になる。ただし縮んだブランドに高い値段は付きにくい。
見ておくもの
- ヘアケアとスキンケアの売上の前年比
- 取引する美容室の数と店販の比率
- 新ブランドの売上
- 手元の現金の使い道(自社株買い・増配・買収)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段から置かず、資本コスト8.25%と10年後の自己資本の稼ぎだけで決めた。中立のROEは3%台(余った現金を除く)で資本コストの半分に届かないので、PERの上限は1÷kで、ためた利益の目減りに合わせてその6割に置いた。余った現金15億円は事業と分け、戻り方0.75を掛けて足した。悲観は赤字なので、残る現金の床に合わせて今の自己資本にPBRを掛けた。今のPBRが1.4倍前後であることは計算のあとに比べただけで、倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→13.99 倍・やや楽観 PER 11.07→12.12 倍・中立 PER 7.27→12.12 倍・やや悲観 PER 7.27→7.26 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。