結論
アサヒペンは大阪の家庭用塗料の老舗だ。ホームセンターの塗料の棚でおなじみのブランドを持ち、刷毛や壁紙などのDIY用品、買収で加えたペット用品と時計用品も売る。筆者の結論はやや割高だ。今の値段は自己資本の4割ほどで安く見えるが、その自己資本が資本コストの半分ほどしか稼いでいないからである。
本業の塗料とDIY用品は、DIYをする人の高齢化で数量が細っていく。会社はそれを買収で補う道を選び、2031年3月期に売上250億円という目標を掲げた。売上の規模は保てても、ホームセンターとの力関係は変わらない。値上げは交渉で遅れて通り、営業利益率は良い年でも6%台だ。
資本の使い方には評価できる点もある。2026年に入って自社株買いを大きく進め、株数は1割近く減った。ただ、政策保有株を29銘柄も持ち続け、自己資本は膨らんだままだ。10年の中立でも自己資本の稼ぎは4%台にとどまり、ためた利益は株主の価値をあまり増やさない。帳簿より安い値段は、それだけでは安全域にならない。安い理由は、帳簿の中身の稼ぎの低さにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿より安い株は、帳簿が稼ぐ時だけ掘り出し物になる。アサヒペンの自己資本は、資本コストの半分ほどしか稼いでこなかった。
オーナー利益、つまり設備の更新を済ませたあとに株主に残る利益は、ならせば年に6〜7億円だ。その使い道が問われる。自社株買いは、帳簿の4割ほどの値段で自分の株を買い戻すので、残る株主には得になる。ここは経営の判断を評価できる。
一方、買収で売上を足す道は慎重に見たい。ホームセンターの棚を束ねる狙いは筋が通るが、買った会社の利益率は本業より低い。のれんと借入が増えるほど、谷の年の打撃は大きくなる。政策保有株を持ち続けることも、資本を眠らせている。
堀、つまり他社がまねできない強みは、ブランドと棚という細い一本だ。払う値段が帳簿の4割でも、稼ぐ力から測った価値はそれよりやや下にある。自社株買いがこのまま続き、政策保有株が現金に変われば、評価は上がる。
何で稼ぐ会社か
売上は四つの事業でできている。いちばん大きいのは塗料で、売上の4割強を占める。家の壁や木部、鉄部を塗る家庭用の塗料と補修材で、ほぼすべてをホームセンターの棚で売る。プロの塗装業者でなく、休日に自分で塗る人が客だ。
二つ目はDIY用品で、刷毛やローラー、壁紙、補修用品など塗料と同じ棚に並ぶ品だ。売上の3割弱を占める。三つ目はペット用品で、2022年に子会社にしたザ・ペットが手がける。四つ目は時計用品で、2026年3月期に子会社にしたばかりだ。
稼ぎの形は、ホームセンターの棚をいかに広く押さえるかに尽きる。一つの会社が塗料から用品、ペット用品までまとめて納めれば、店にとっては発注の手間が減る。アサヒペンの買収は、この棚の束ね役を広げる狙いだ。顧客は多くのホームセンターに分かれ、1社で売上の1割を超える先はない。
工場と物流の拠点は国内にあり、従業員は連結で375人と小さい。原料の樹脂や溶剤、顔料は石油化学の市況で動き、値上げは店との交渉を経て遅れて通る。
会社の芯は、商品を作る力より、全国の棚に品を切らさず並べる力にある。品番の多さと物流の細かさが、新しく入ろうとする会社への壁になっている。
優良さと弱いところ
ブランドと棚はあるが、値決め力は弱い。これが筆者の見立てだ。家庭用の塗料でアサヒペンの名は広く知られ、ホームセンターの棚を長く押さえてきた。それでも営業利益率は過去12年で3〜6%台にとどまり、自己資本の稼ぎは過去10年の中ほどで5%弱だ。
理由は売り場の力関係にある。大手のホームセンターはPBの塗料を広げ、仕入れの値段を厳しく交渉する。原料高を値上げで返すのはいつも後からだ。ネット通販も用品の値段を押し下げる。
資本の使い方は改善の途中にある。2026年に入って自社株買いを大きく進めたのは評価できる。一方で、政策保有株を29銘柄、17億円以上持ち続け、買収の借入で純負債も20億円に増えた。自己資本が厚すぎることが、稼ぎの低さに表れている。棚を押さえる力は守りには効くが、値上げを先に通す攻めの力にはなっていない。経営の課題は、厚すぎる資本を軽くし、稼ぐ力に見合う大きさにすることだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の塗料市場は名目で年6%台伸びるが、その中心は新興国の建築と自動車だ。アサヒペンのいる日本の家庭用の塗料は、その流れの外にある。国内のDIYの需要は、人口の減少と高齢化で数量が緩やかに縮む。塗料を自分で塗る手間を嫌い、業者に頼むか、何もしない家が増えている。
売り場のホームセンターも曲がり角にある。業界は再編が進み、大手のチェーンがPBを広げて納める側の取り分を削る。来店客は高齢化し、若い世代はネットで道具を買う。ホームセンターに頼る家庭用品の会社は、売り場ごと細っていく危うさを抱える。
値段は物価並みに上がる。原料の樹脂や溶剤、顔料は石油化学の市況とともに上がり、各社は値上げを重ねてきた。ただ家庭用は、日本ペイントや関西ペイントの家庭用部門、カンペハピオなどとの棚の取り合いで、値上げの幅とタイミングが店に左右される。業界の再編は、大手が棚を束ねるか、小さい会社どうしが寄り合う形で進むとみる。
追い風が無いわけではない。家を長く使う人が増え、外壁や木部の補修の需要は底堅い。水性で臭いの少ない塗料や、塗りやすい道具は高齢の客にも売れる。ただ、量を押し上げるほどの力はない。値段の上げ幅で数量の減りを埋める形が、この先も続く。
資本政策と M&A
配当は利益の3割ほどを目安にした安定配当だ。2026年3月期は3億円強の自社株買いも行い、2026年8月からはさらに5億円規模の自社株買いを進めた。株数はこの1年で1割近く減っており、還元の姿勢ははっきり強まった。
買収は売上を足す手段として使ってきた。2022年にペット用品のザ・ペット、2026年3月期に時計用品の会社を子会社にし、その借入で純負債は20億円に増えた。中期計画は2031年3月期に売上250億円を掲げ、さらに買収を重ねる構えだ。
気になるのは政策保有株だ。29銘柄、17億円以上を持ち、配当は利益に入るが、資本の効率を下げている。時価総額が60億円規模と小さく、自己資本を大きく下回るので、大手の塗料会社や投資ファンドの関心を引く余地はある。純負債を抱えるので、事業に要らない現金として分ける額はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の値段は自己資本の4割ほどにすぎない。しかも会社はその安さに気づき、自社株買いで株数を1年で1割近く減らした。帳簿より安く自分の株を買い戻すほど、残る株主の取り分は増える。政策保有株の17億円が現金に変われば、それも自社株買いに回せる。
買収の戦略にも筋がある。ホームセンターの棚に塗料、刷毛、壁紙、ペット用品、時計用品をまとめて納めれば、店は発注の手間が減り、アサヒペンは棚を広く取れる。時計用品は2026年3月期の途中から加わったので、通年で効けば売上は一段増える。会社の計画は2027年3月期に売上220億円を見込む。
家庭用の塗料は景気に強い。家の手入れは不況でも続き、むしろ節約で自分で塗る人が増える。値上げも物価が毎年上がる世界では受け入れられやすい。営業利益率が2021年3月期の6%台に戻れば、今の値段はかなり安い。棚を束ねる力は、新しく入ろうとする会社が簡単には持てない資産でもある。政策保有株を売って自社株買いに回せば、自己資本の稼ぎも上がる。
慎重な見方
自己資本が稼がない会社に、帳簿の値段は付かない。営業利益率は過去12年で3〜6%台、自己資本の稼ぎは5%弱で、資本コストの半分ほどだ。帳簿の4割という値段は、この稼ぎの低さをそのまま映している。
本業は細る。DIYをする人は高齢化で減り、ホームセンターの来店も細っている。大手のチェーンはPBの塗料を広げ、仕入れの値段を厳しく押さえる。ネット通販は用品の値段を下げる。刷毛や壁紙は、どこの会社の品でも大差が無いからだ。アサヒペンの値上げは、いつも原料高の後から、割り引かれて通る。
買収で売上を足しても、利益は足りない。ペット用品も時計用品も、本業より利益率が低い。借入で純負債は20億円に増え、のれんも積み上がる。買った事業がつまずけば、減損と利払いが同時に効く。自社株買いは評価できるが、政策保有株を29銘柄も抱えたままでは、資本の使い方が変わったとはまだ言えない。帳簿より安い値段が続くのは、市場がその低い稼ぎを正しく見ているからだ。自社株買いだけでは、本業の縮みは止まらない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうがやや強い。自社株買いの進め方は本物の前進で、上振れの筋書きに重みを残した。ただ、本業の数量が細る構図と、自己資本の稼ぎが資本コストの半分という記録は、買収だけでは変わらない。中心は売上の規模を保ちつつ利益率が過去の中ほどに戻る筋書きで、確率は悲観の側にやや寄せた。借金は重くなく、売れる資産もあるので、悲観の重みは1割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,724 円94 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 931 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 1,970 円68 億円、今との差 +4.2%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,457 円188 億円 | 1,393 円48 億円 | +262.5% | +13.7% | 548 円19 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,255 円147 億円 | 1,190 円41 億円 | +188.1% | +11.2% | 1,089 円38 億円 |
| 中立 | 40% | 3,135 円108 億円 | 1,016 円35 億円 | +119.6% | +8.2% | 1,660 円57 億円 |
| やや悲観 | 22% | 586 円20 億円 | 639 円22 億円 | −35.2% | −4.2% | 269 円9 億円 |
| 悲観 | 10% | 531 円18 億円 | 348 円12 億円 | −53.5% | −7.4% | 88 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,724 円94 億円 | 931 円32 億円 | +93.4% | +6.8% | 3,655 円126 億円 |
今の株価時価総額 1,890 円65 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 時計とペットの買収が実り、計画の250億円を超える 利益 14 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,457 円188 億円
中期計画のとおり買収で事業を足し、売上は10年で250億円を超える。時計用品は通年で効き、全国のホームセンターの棚にまとめて並べる強みが生きる。ペット用品は猫の飼育数の伸びに乗り、塗料は高機能の補修材や水性の塗料で単価を上げる。
値上げはホームセンターとの交渉を経ても物価を少し上回って通り、営業利益率は6%と過去にない水準に届く。政策保有株の売却で得た現金は自社株買いに回る。それでも自己資本が厚いので、自己資本の稼ぎは資本コストに届かない。買収の上手な家庭用品の会社として、ようやく評価される10年になる。ホームセンターの棚を束ねる会社として、大手からも一目置かれる存在になる。
- 塗料:数量 5.1(出荷量(百万リットル・年、推定))× 価格 2,130(1 リットルあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 110 億円・営業利益 12 億円。数量 1.05 倍 × 単価 1.42 倍、利益率 10.5%
- DIY 用品(その他を含む):数量 10.6(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 710(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 5 億円。数量 1.05 倍 × 単価 1.42 倍、利益率 6.5%
- ペット用品:数量 10.1(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 568(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 3 億円。数量 1.2 倍 × 単価 1.42 倍、利益率 5%
- 時計用品:数量 4.2(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 710(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。数量 2 倍(通年+拡販)× 単価 1.42 倍、利益率 7%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 188 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は2031年3月期に売上250億円を掲げるが、この10年で利益率が6%を超えた年は無い。買収の統合がすべてうまくいく筋書きなので、低い確率にとどめた。
やや楽観 20% 買収事業が育ち、利益率が過去の山に並ぶ 利益 11 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,255 円147 億円
時計用品が通年で効き、ペット用品も数を伸ばす。塗料とDIY用品は、高齢化でDIYをする人が減るぶんを高機能の品で埋め、数量は横ばいを保つ。値上げはおおむね物価並みに通る。
売上は10年で250億円近くまで伸び、営業利益率は5%台と2021年3月期の山に近づく。配当は利益の3割を保ち、自社株買いも続く。ただ、ホームセンターとの力関係は変わらず、値上げの遅れは毎年少しずつ利益を削る。自己資本の稼ぎは5%台で、資本コストには届かない。会社は着実に大きくなるが、株主の価値はそれほどには増えない。政策保有株の一部を売って自社株買いに回せば、その差は少し縮む。
- 塗料:数量 4.9(出荷量(百万リットル・年、推定))× 価格 2,070(1 リットルあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 101 億円・営業利益 10 億円。数量横ばい × 単価 1.38 倍、利益率 9.5%
- DIY 用品(その他を含む):数量 10.1(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 690(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 4 億円。数量横ばい × 単価 1.38 倍、利益率 6%
- ペット用品:数量 9.3(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 552(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。数量 1.1 倍 × 単価 1.38 倍、利益率 4.5%
- 時計用品:数量 3.8(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 690(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。数量 1.8 倍 × 単価 1.38 倍、利益率 6%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 147 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:時計用品の通年の取り込みと値上げの浸透は、計画どおり進む公算がある。中期計画の売上目標に近い所まで届く道筋に、中立に次ぐ重みを置いた。
中立 40% 買収で売上を保ち、利益率は過去の中ほど 利益 8 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,135 円108 億円
DIYをする人は高齢化で減り、塗料の数量は10年で1割ほど細る。DIY用品も少し減るが、時計用品の通年の取り込みとペット用品で売上の規模は保たれ、名目で220億円ほどになる。値段は物価並みに上がるが、ホームセンターとの交渉で値上げは遅れて通る。
営業利益率は5%弱と、過去12年の中ほどに戻る。借入の借り換えで利払いが少し増え、政策保有株の配当がそれを埋める。配当は利益の3割を保ち、自社株買いも時々行う。自己資本の稼ぎは4%台で、資本コストの半分ほどにとどまる。ためた利益が株主の価値を増やさない状態は変わらない。自社株買いが続けば株主の取り分は少し増えるが、本業の縮みを打ち消すほどではない。
- 塗料:数量 4.5(出荷量(百万リットル・年、推定))× 価格 2,010(1 リットルあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 8 億円。数量 0.92 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 9%
- DIY 用品(その他を含む):数量 9.6(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 670(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 64 億円・営業利益 4 億円。数量 0.95 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 5.5%
- ペット用品:数量 8.5(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 536(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。数量横ばい × 単価 1.34 倍、利益率 3.5%
- 時計用品:数量 3.2(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 670(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。数量 1.5 倍(通年で取り込む)× 単価 1.34 倍、利益率 5%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 108 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収で売上の規模を保ちつつ、本業の塗料とDIY用品の数量が高齢化で細るのが最もありそうな道筋とみた。利益率は過去12年の中ほどに戻る。
やや悲観 22% ホームセンターの棚を大手とPBに削られる 利益 3 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 586 円20 億円
ホームセンターの再編が進み、大手のチェーンはPBの塗料や用品を広げる。アサヒペンの棚は削られ、塗料の数量は10年で2割近く減る。DIY用品とペット用品もネット通販の安値に押され、値段は物価を下回ってしか上がらない。
時計用品の買収も思ったほど伸びず、のれんの重さだけが残る。営業利益率は2%弱に落ち、配当は保つものの自社株買いは止まる。自己資本の稼ぎは1〜2%で、資本コストを大きく下回る。価値は事業の稼ぎと、政策保有株や賃貸用の不動産という売れる資産の大きい方でしか測れなくなる。買収で広げた棚は、本業の稼ぎを支えるどころか重荷になる。借入の返済が優先され、還元も細る。
- 塗料:数量 4.0(出荷量(百万リットル・年、推定))× 価格 1,950(1 リットルあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 5 億円。数量 0.82 倍 × 単価 1.30 倍、利益率 6%
- DIY 用品(その他を含む):数量 8.9(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 650(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。数量 0.88 倍 × 単価 1.30 倍、利益率 3%
- ペット用品:数量 7.6(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 520(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。数量 0.9 倍 × 単価 1.30 倍、利益率 1.5%
- 時計用品:数量 2.7(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 650(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。数量 1.3 倍 × 単価 1.30 倍、利益率 2%
倍率:ROE 1.6% が k 7.5% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値しか生まず、PER の上限は 1÷k=12.5 倍。7.5 倍(上限の 60%)に置いた。ROE÷k が 0.20 なので、ためた利益の目減りに合わせて 1÷k に max(0.6, ROE÷k) を掛けた。悲観側でも稼ぐ力(純利益÷k)の 6 割で、政策保有株と賃貸用不動産の床(18.2 億円)をわずかに上回る。
確率:ホームセンターの業界は再編とPBの拡大が進み、納める側の交渉力は落ちている。過去に利益率が1%台まで落ちた年もあるので、厚めの確率を置いた。
悲観 10% 本業が縮み、買収の失敗が重なる 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 531 円18 億円
DIYの需要がはっきり縮み、ホームセンターの来店も減る。塗料の数量は10年で3割減り、値上げは原料高に追いつかない。ペット用品と時計用品はネット通販の安値に負け、赤字に沈む。のれんの減損も出る。
営業損益は赤字が定着し、配当は大きく減らす。借入の返済のため、政策保有株は売らざるをえない。価値は事業の稼ぎでなく、政策保有株を売った税後の手取りと、賃貸用の土地・建物でしか測れない。在庫と売掛金は借入の返済に消えるので、株主に残る分はそれほど多くない。少数株主は資産の使い道を決められず、清算の値段より低い所で値が付き続ける。ブランドの名は残っても、棚の主役ではなくなる。
- 塗料:数量 3.4(出荷量(百万リットル・年、推定))× 価格 1,875(1 リットルあたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 64 億円・営業利益 2 億円。数量 0.7 倍 × 単価 1.25 倍、利益率 3%
- DIY 用品(その他を含む):数量 7.6(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 625(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 0 億円。数量 0.75 倍 × 単価 1.25 倍、損益ゼロ
- ペット用品:数量 6.8(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 500(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.8 倍 × 単価 1.25 倍、赤字
- 時計用品:数量 2.1(販売個数(百万個・年、推定))× 価格 625(1 個あたりの出荷単価(円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量横ばい × 単価 1.25 倍、赤字
倍率:赤字なので PER は当てない。今の自己資本 145 億円に PBR 0.126 を掛け、床の資産(政策保有株の税後と賃貸用不動産)の 18.2 億円に合わせた。
確率:本業の縮みと買収の失敗が同時に起きる筋書きは、ホームセンターの不振が深まれば起こりうる。借入はあるが重くはなく、売れる資産もあるので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
塗料
家庭用の塗料・補修材。ホームセンターで売る「アサヒペン」ブランドの主力。
| 数量出荷量(百万リットル・年、推定) | 価格1 リットルあたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.9 | 1,500 | 73 | 6 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 2,010 | 91 | 8 |
取り方:セグメント売上 73.2 億円(有報)。家庭用の小缶が中心なので、ならした出荷単価を 1 リットル 1,500 とし、年 490 万リットルと推定。利益はセグメントの開示を見ていないので本社費前の推定(利益率 7.5%)。
DIY 用品(その他を含む)
刷毛・ローラー・壁紙・補修用品など。塗料と同じ棚で売る。
| 数量販売個数(百万個・年、推定) | 価格1 個あたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.1 | 500 | 51 | 3 |
| 10 年後 中立 | 9.6 | 670 | 64 | 4 |
取り方:DIY 用品 48.2 億円とその他 2.5 億円の合計。1 個 500 の平均出荷単価で年 1,010 万個と推定。利益率 5% の推定。
ペット用品
2022 年に買ったザ・ペットのペット用品。ホームセンター・ペット専門店で売る。
| 数量販売個数(百万個・年、推定) | 価格1 個あたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.5 | 400 | 34 | 1 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 536 | 45 | 2 |
取り方:セグメント売上 33.8 億円。1 個 400 の平均出荷単価で年 845 万個と推定。利益率 2.4% の推定。
時計用品
2026 年 3 月期に子会社にした時計用品の会社。今は一年分に満たない。
| 数量販売個数(百万個・年、推定) | 価格1 個あたりの出荷単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.1 | 500 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.2 | 670 | 21 | 1 |
取り方:セグメント売上 10.5 億円(期の途中から連結)。1 個 500 で年 210 万個と推定。10 年は通年の取り込みで数量を増やす。
リスクと懸念
ホームセンターの再編とPB
売上のほとんどがホームセンター経由だ。大手のチェーンがPBの塗料や用品を広げれば、アサヒペンの棚は削られ、仕入れの値段も押される。再編で店の数が減れば、棚そのものが減る。
DIYをする人の高齢化
家庭用の塗料の客は、休日に自分で家を手入れする人だ。高齢化でその数は減り、若い世代は業者に頼むか、何もしない。本業の数量は人口の減り方より速く縮むおそれがある。
買収の失敗
ペット用品と時計用品は本業より利益率が低く、借入とのれんで買った。売上が伸びなければ、のれんの減損と利払いが同時に利益を削る。中期計画はさらに買収を重ねる構えだ。
原料高の後追い
原料の樹脂や溶剤、顔料は石油化学の市況で動く。値上げは店との交渉を経て遅れて通るので、原料が急に上がる年は利益が消えやすい。
政策保有株と資本の効率
政策保有株を29銘柄、17億円以上持つ。配当は入るが、資本を眠らせ、自己資本の稼ぎを押し下げている。売却の方針が数字で示されない限り、資本の効率は上がりにくい。
今後の分かれ目
- 時計用品を通年で取り込み、営業利益率が5%台に乗ったら
- 買収の統合が利益に効き始めたとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 政策保有株の売却と、その資金での自社株買いを数字で示したら
- 資本の使い方が変わったとみて、ためた利益の値打ちと確率を見直す。
- 大手のホームセンターがPBの塗料を広げたら
- 棚を削られる筋書きが近づいたとみて、やや悲観の確率を上げる。
- 買収した事業でのれんの減損が出たら
- 買収で売上を足す戦略の限界とみて、悲観側に寄せる。
- 同業の大手や投資ファンドが株式の取得を始めたら
- 帳簿に近い値段が付く場面になりうる。ただし筋書きの確率は事業の中身で決める。
見ておくもの
- 塗料とDIY用品の売上の前年比
- 時計用品・ペット用品の利益率
- 自社株買いと政策保有株の売却の額
- 純有利子負債とのれんの推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段から置かず、資本コスト7.5%と10年後の自己資本の稼ぎだけで決めた。中立のROEは4%台で資本コストの半分ほどなので、PERの上限は1÷kで、ためた利益の目減りに合わせてその6割に置いた。同業のエスケー化研・藤倉化成より低いのはROE÷kが低いため。楽観でもROEはkに届かない。悲観は赤字なので、今の自己資本に床(政策保有株の税後と賃貸用不動産)のPBRを掛けた。今のPBRが0.4倍台であることは計算のあとに比べただけで、割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.8→13.33 倍・やや楽観 PER 8.79→13.33 倍・中立 PER 7.5→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。