結論
ライオンは、ハミガキとハンドソープで国内首位に立つ日用品メーカーだ。洗剤、薬品、アジアでの歯みがき事業も持つ。強いブランドと高い自己資本比率に比べ、稼ぐ力は物足りない。営業利益率は1桁台の年が多く、花王のような厚みはない。筆者の結論は、今の値段はやや割高で、安く買える会社ではないというものだ。
伸びの源は二つある。一つは国内の値上げと、利益の出にくいブランドの整理だ。もう一つは、タイ・マレーシアを中心とするアジアでのオーラルケアの拡大だ。国内は人口が減るので、量は横ばいか微減にとどまる。それでも物価並みの値上げと、薬用の高価格ハミガキへの移行で、国内の利益は少しずつ厚くなる。
財布の中身は軽くない。純現金が約880億円あり、時価総額の2割近い。このうち事業に要らない分を分けて見ると、本業の利益に付く値段は意外に低い。化学品子会社の売却と豪州ブランドの買収で、成長の軸はオーラルケアとビューティケアに寄っていく。
中立の見立てでは、10年後の利益は今の約1.5倍になる。ただし自己資本が厚いため、ROEは9%前後にしか届かない。資本コストを7.75%(基本7.5%+quality−0.25%)とすると、倍率の上限は低く抑えられ、中立の10年後の時価総額は約6,200億円、確率で重みづけた本質価値は今の時価総額より約23%低い。強気に傾く材料は海外の立て直しと利益率の改善、弱気に傾く材料は中国の失速と国内競争だ。確率は慎重な側にやや寄せた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ライオンは悪くない事業を、普通の経営で持つ会社に見える。歯みがきは毎日の習慣で、需要は景気にほとんど左右されない。持ち続けたい事業という点では合格だ。
問題は、株主に残るお金の量だ。再投資は軽いが、利益そのものが薄い。営業利益率が1桁台のままでは、堀が深いとは言えない。値上げで利益率が上がる余地はあるが、競争が厳しい洗剤で価格を保てるかは分からない。
資本の使い方は評価が分かれる。自己資本が厚く、ROEは8%台にとどまる。この資本を使い切れていない。化学品の売却と海外への投資は正しい方向だが、成果が出るのはこれからだ。配当性向が低いのも、株主へ返す力を使っていないということだ。
安全域はある。純現金が時価総額の2割近くあり、本業が崩れても底が深くはない。ただし、安全域は「損をしにくい」ことを示すだけで、「大きく儲かる」ことは意味しない。今の値段は、筆者には妥当で、強く買い向かう理由が見つからない水準だ。事業の質をもう一段上げる証拠、つまり利益率が10%に乗る年が来るまでは、様子を見る価値がある。
何で稼ぐ会社か
ライオンの事業は三つに分かれる。国内の一般用消費財、海外、産業用品だ。売上の約半分を国内の一般用消費財が占め、残りの大半は海外が稼ぐ。
国内の中心はオーラルヘルスケアだ。ハミガキ、ハブラシ、洗口剤で、ハミガキとハブラシは国内首位、デンタル用品と洗口剤は2位にいる。ここに「キレイキレイ」のハンドソープ(首位)、洗濯用洗剤「トップ」「NANOX」、柔軟剤、台所・浴室用洗剤、解熱鎮痛薬「バファリン」、点眼薬「スマイル」が並ぶ。洗濯用洗剤と柔軟剤は3位で、花王とP&Gが先を行く。毎日使う消耗品で、1回あたりの金額は小さく、買い替えのサイクルは短い。
海外はタイ、マレーシア、中国、韓国、インドネシアなどで、ハミガキ、ハンドソープ、洗濯用洗剤を売る。東南アジアには有力な現地の販売網を持つ合弁相手がいる。ここ数年は、売上の約3割強が海外になった。2025年にはベトナムの薬品事業を連結子会社にし、2026年にはオーストラリアの自然派ビューティーケアブランド「Sukin」の運営会社を買収した。バングラデシュでは工場を立て、インドにも新会社を作った。
産業用品は化学品が中心だ。タイヤや電池向けの外販で収益力が高かった化学品子会社2社は、2026年6月に投資ファンド系の会社へ譲渡される。譲渡額の基準は189億円だ。低収益の事業やブランドを手放し、資金をオーラルケアとビューティケアに回す方針が、この動きに表れている。
優良さと弱いところ
強みは、歯みがきという習慣そのものに根を張っていることだ。ライオンは明治から歯みがきの普及活動を続け、家庭に定着した習慣を製品の棚に結びつけてきた。ハミガキとハブラシの首位は、この積み重ねによる。他社が棚を奪っても、すぐには崩れにくい。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは、花王ほど深くない。洗剤と柔軟剤は3位で、価格の主導権は握れていない。営業利益率は2020年に12%台まで上がったが、原料高の2023年には5%台まで落ちた。値上げの通りやすさでも、ブランド投資の重さでも、体力の差が利益率に出ている。
財務は堅い。自己資本比率は6割を超え、純現金は約880億円ある。借金で苦しむ心配はほぼない。反面、ROEは2025年で8.6%と低い。稼ぐ力に対して資本が厚すぎる。経営もこれを課題とみて、2027年までの計画でROIC(投下した資本に対する利益率)を8〜9%へ引き上げる目標を置いた。2025年は6.7%だった。
弱みは、海外の成長が計画に届いていないことだ。2025年の海外売上の伸びは目標の年10%に対し3.6%にとどまった。中国は想定を下回り、タイとマレーシアが支えた。国内の値上げ効果は36億円と数字になったが、販売数量が落ちた時に値段を保てるかは、まだ試されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の日用品市場は、人口が減るので量は伸びない。伸びる余地は二つだ。一つは機能を付けた高価格品への移行、もう一つは値上げの浸透だ。ハミガキは、歯周病予防をうたう千円を超える薬用品が増えている。会社の推計でも、高価格帯の市場は2027年にかけて広がる見込みだ。量でなく単価で伸びる市場と考えてよい。
競争相手は多い。洗剤と柔軟剤では、花王とP&Gが規模で上回る。ハミガキではサンスター、花王、海外勢が高価格帯に攻めてくる。ドラッグストアが強くなり、店頭の力関係は小売に傾いている。値上げの通りやすさは、ブランドごとに差が出る。
海外では、東南アジアが成長の中心になる。人口が増え、歯みがきと手洗いの習慣がこれから定着する国が多い。ライオンは現地の合弁相手の販売網を使い、ハミガキとハンドソープを広げる。一方、中国は現地ブランドが力を付け、日系の外資ブランドには逆風だ。コルゲートやユニリーバなど世界の大手も、同じアジアで棚を争う。
原料と円相場も効く。石油由来の原料や包装資材が上がれば利益率を削り、値上げが遅れると傷が深くなる。為替は150円で一定と置くが、現実には振れる。ただ、海外の収益は円に直す時に膨らみも縮みもする。需要そのものは景気に左右されにくく、悪い年でも売上の落ち込みは1割に届かないのが普通だ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、守りから攻めに変わりつつある。2027年までの3年で、営業キャッシュフローは約1,500億円と見込む。成長投資に約500億円を使う想定で、残りは配当と、「機動的に検討」とする自社株買いに回る。配当は累進配当、つまり減らさず増やす方針で、2026年も増配を予定している。配当性向は30%前後で、日本の大手日用品の中では控えめだ。
買収は小ぶりだ。ベトナムの薬品事業の連結子会社化、豪州のSukinの取得(FY25売上は約80億円)、バングラデシュやインドへの進出がある。大きな買収で価値を壊す懸念は小さい。反面、買収で稼ぐ力が大きく変わることも期待しにくい。
事業の整理は進んでいる。化学品子会社2社の売却は、良い事業を手放す決断として評価できる。「リード」ブランドの売却など、低収益事業の整理も進んだ。
政策保有株の削減目標は、今回の調べでは確認できなかった。TOBや再編の可能性は、kabufuの推計で10年以内に15%程度だ。純現金が多く、株価も割安に映る時期があるため、ファンドや事業会社の標的になりうる。筆者は、この現金を配当や自社株買いに回すか、成長の買収に使うかが、今後の価値を決めると見ている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ライオンは変わり始めている。2025年の事業利益は17%増え、営業利益は28%増えた。値上げの効果が36億円、SKU(品目)の削減が65品目で、数字で成果が出ている。2027年までの計画も、利益率の改善を前面に掲げる。これを積み上げれば、営業利益率は10%を超える。
国内は、売る物の質が変わる。千円を超える薬用ハミガキが伸び、歯科医院向けや企業向けの口腔ケアのサービスも加わる。ハミガキ、ハブラシ、ハンドソープの首位は、売る量が減っても利益は増やせる土台だ。
海外は、まだ序盤だ。タイとマレーシアは好調で、バングラデシュ、インド、ベトナム、豪州と新しい国が加わる。海外売上は全体の約4割になり、会社が掲げる5割へ向かう。東南アジアは人口が増え、歯みがきの習慣がこれから広がる市場だ。
手元の現金も武器になる。純現金は約880億円あり、買収と還元の両方に使える。化学品の売却資金も入る。自社株買いが進めば、1株の利益は利益以上に伸びる。この現金を生かせば、ROEは10%台に届く。ROICの目標も、2030年に10〜12%と高い。
慎重な見方
稼ぐ力が弱いことは、数字ではっきり出ている。営業利益率は2023年に5%台まで落ち、2025年でも8%台だ。2020年の12%台は一時の山にすぎない。計画の目標も、2025年の実績は軒並み届かなかった。オーラルの売上は目標の年8%に対して5.2%、海外は10%に対して3.6%、国内の収益改善は+3〜5ptに対して+1.4ptだ。
洗剤と柔軟剤は3位で、価格を決める力は花王やP&Gほどない。ドラッグストアに値引きを迫られれば、値上げは頓挫する。原料高と円安が重なれば、利益率はまた簡単に落ちる。
海外は不安が残る。中国は想定を下回り、日系ブランドは現地ブランドに押される。東南アジアの合弁は相手に依存し、利益の取り込みも限られる。買収も、豪州のSukinは売上が約80億円の小さな会社で、会社全体を動かす規模ではない。
さらに、現金が多いこと自体が問題でもある。ROEが8%台なのに現金をため込めば、1株の利益は伸びない。還元を厚くしなければ、市場は評価しない。配当性向は30%前後で、日本の同業から見ても控えめだ。成長の絵が実を結ばなければ、今の値段は高い。
どちらに重みを置いたか
強気の指摘は、利益率の改善が数字で出ている点と、純現金の厚さで説得力がある。慎重な見方は、2025年の目標未達と、利益率の低さ、ROEの低さで強い。10年の見通しでは、稼ぐ力が上がる余地は認めるが、その水準は花王ほどにはならないと見る。確率は中立を軸に、慎重な側へやや寄せた。10年の悲観には、中国の失速と国内の価格競争が同時に来る筋書きを12%置いた。強気側の筋書きは、合わせて27%とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,105 円5,838 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 600 円1,663 億円)。 今の値に割り戻すと 1,411 円3,913 億円、今との差 −22.9%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,534 円9,801 億円 | 790 円2,192 億円 | +136.2% | +9.0% | 346 円959 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,849 円7,901 億円 | 706 円1,958 億円 | +94.2% | +6.9% | 675 円1,873 億円 |
| 中立 | 36% | 2,283 円6,331 億円 | 622 円1,725 億円 | +58.6% | +4.7% | 1,046 円2,900 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,419 円3,935 億円 | 525 円1,455 億円 | +6.2% | +0.6% | 486 円1,348 億円 |
| 悲観 | 12% | 873 円2,421 億円 | 394 円1,092 億円 | −30.8% | −3.6% | 152 円422 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,105 円5,838 億円 | 600 円1,663 億円 | +47.7% | +4.0% | 2,705 円7,502 億円 |
今の株価時価総額 1,831 円5,078 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 利益率が10%台に乗り、アジアが育つ 利益 601 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 3,534 円9,801 億円
10年で、ライオンは利益率10%台のアジア発のオーラルケア企業になる。国内は千円を超える薬用ハミガキと歯科向けのサービスで、営業利益率が11%台に乗る。
海外はタイ、マレーシア、ベトナム、インド、バングラデシュで売上を伸ばし、海外構成比は5割に近づく。豪州Sukinなど自然派ブランドも育つ。自社株買いで資本を絞り、ROEは12%近くまで上がる。会社が掲げる2030年のEBITDAマージン16%超に迫る、最も理想的な10年だ。国内の首位ブランドの維持と、海外の販売網の厚みが、ともに効く。経営の資本配分が株主向けに変わり、現金も有効に使われる。10年後の営業利益は、今の事業利益の2.7倍ほどになる。
- 国内の一般用消費財(オーラル・洗剤・ハンドソープ・薬品):数量 5.6(国内の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 560(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 3,136 億円・営業利益 361 億円。営業利益率11.5%
- 海外(アジア中心のオーラル・ハンドソープ・洗剤):数量 11.5(海外の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 279(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 3,214 億円・営業利益 450 億円。営業利益率14.0%
- 産業用品(化学品・業務用ほか):数量 16.0(出荷量(万トン、推定。実質の数量))× 価格 28(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 446 億円・営業利益 31 億円。営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 595 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)400 億円。全体の PER 15.79 倍、時価総額 9,801 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率10%台とアジアでの成長が両方実現する必要があり、2025年までの実績を見ると確度は低い。
やや楽観 19% 海外が育ち、利益率は1割前後で定着 利益 507 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,849 円7,901 億円
改善が長く続く。国内の営業利益率は10%、海外は12.6%まで上がる。海外の数量は年約7%で伸び、東南アジアの販売網と新しい国の事業が利益を引き上げる。
化学品の整理で産業用品は小さく安定する。ハミガキの高価格帯が定着し、国内の利益は個数が減っても増え続ける。配当は増え続け、自社株買いも適度に入る。ROEは10%台半ばまで上がり、資本の使い方でも評価が上がる。中国は伸びないが、全体の足を引っ張るほどではない。新興国の中間層が育つにつれ、ハンドソープと洗剤の需要も広がる。営業利益は今の事業利益の2.3倍ほどに伸び、買収の成果も積み上がる。
- 国内の一般用消費財(オーラル・洗剤・ハンドソープ・薬品):数量 5.5(国内の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 548(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 3,014 億円・営業利益 307 億円。営業利益率10.2%
- 海外(アジア中心のオーラル・ハンドソープ・洗剤):数量 10.9(海外の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 273(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 2,981 億円・営業利益 376 億円。営業利益率12.6%
- 産業用品(化学品・業務用ほか):数量 15.8(出荷量(万トン、推定。実質の数量))× 価格 27(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 428 億円・営業利益 26 億円。営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 501 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)400 億円。全体の PER 14.96 倍、時価総額 7,901 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改善が長く続くという想定。海外の伸びと国内の収益構造改革が定着すれば現実になる。
中立 36% 中立:海外は伸びるが利益率は花王に届かない 利益 428 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 2,283 円6,331 億円
10年かけて、国内と海外の両方が緩やかに伸びる。国内は人口が減って個数は少し減るが、物価並みの値上げと高価格品への移行で売上は年2.7%ほど増える。営業利益率は9%まで上がる。
海外は個数が年2.5%ほど増え、利益率は11.5%に届く。中国は伸びないが、東南アジアと豪州が補う。会社の2030年目標には届かないが、利益は今の約1.5倍になる。配当は増え、自社株買いも時々入る。洗剤の3位という立場は変わらず、花王との差も縮まらない。ハミガキの首位だけが利益の太い柱として残る。オーナーの目で見れば、安定して利益が増える普通の良い会社に収まる。営業利益は今の事業利益の約2倍になる。
- 国内の一般用消費財(オーラル・洗剤・ハンドソープ・薬品):数量 5.4(国内の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 536(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 2,894 億円・営業利益 260 億円。営業利益率9.0%
- 海外(アジア中心のオーラル・ハンドソープ・洗剤):数量 10.2(海外の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 267(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 2,728 億円・営業利益 314 億円。営業利益率11.5%
- 産業用品(化学品・業務用ほか):数量 15.5(出荷量(万トン、推定。実質の数量))× 価格 27(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 413 億円・営業利益 21 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 422 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)400 億円。全体の PER 14.04 倍、時価総額 6,330 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の人口減と、海外の緩やかな伸びを組み合わせた中心の筋書き。
やや悲観 25% 国内の価格競争が続き、海外も伸び悩む 利益 306 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 1,419 円3,935 億円
国内の価格競争が続き、10年かけても利益率が伸びない。国内の営業利益率は7.5%にとどまり、海外は9%で足踏みする。
中国は縮み、東南アジアは現地ブランドや世界の大手に押される。値上げの余地が限られ、原料高を吸収しきれない年も出る。化学品を売って小さくなった産業用品は、利益が出にくくなる。配当は維持されるが、増配は小幅にとどまる。ROEは7%前後に沈み、資本を厚くためた会社という評価が続く。買収も、大きな成果を生まない。市場は、成長の絵を信じなくなり、倍率が下がる。営業利益は今の事業利益の1.4倍にとどまり、物価の上昇にも追いつかない。
- 国内の一般用消費財(オーラル・洗剤・ハンドソープ・薬品):数量 5.2(国内の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 512(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 2,662 億円・営業利益 200 億円。営業利益率7.5%
- 海外(アジア中心のオーラル・ハンドソープ・洗剤):数量 9.0(海外の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 255(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 2,299 億円・営業利益 207 億円。営業利益率9.0%
- 産業用品(化学品・業務用ほか):数量 14.5(出荷量(万トン、推定。実質の数量))× 価格 25(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 361 億円・営業利益 14 億円。営業利益率4.0%
倍率:ROE 6.9% は k 7.75% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で PER は 1÷k=13.8 倍まで。国内の価格競争と中国の低調で、新しく投じる資金の稼ぎは薄まる。ROE は k とほぼ並ぶので 1÷k を上限とし、その9割の 11.6 倍に置いた。
確率:国内の価格競争が続き、海外も目標に届かない。これまでの実績(目標未達・低い利益率)に近いので、厚めに置いた。
悲観 12% 中国と国内の競争で、優良さを失う 利益 121 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 873 円2,421 億円
10年で、構造的に優良さを失う。中国の失速と国内の価格競争が同時に起き、国内の営業利益率は4%、海外も4%まで落ちる。
洗剤・柔軟剤は他社に押され、ハミガキの首位も高価格帯を取れずに揺らぐ。海外の買収は成果が出ず、減損も重なる。純現金と首位ブランドが下支えになり、倒産の心配はないが、普通の小さな日用品メーカーとして評価される。配当は据え置きが続く。ブランドへの投資を抑えるうちに、棚の位置を失う悪循環も起きる。高い自己資本比率は守りになるが、成長しないことの裏返しでもある。営業利益は今の事業利益の半分に届かず、規模の縮小が続く。市場の評価も、成長株から、現金が厚いだけの会社へと下がる。
- 国内の一般用消費財(オーラル・洗剤・ハンドソープ・薬品):数量 4.8(国内の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 460(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 2,208 億円・営業利益 88 億円。営業利益率4.0%
- 海外(アジア中心のオーラル・ハンドソープ・洗剤):数量 7.5(海外の販売個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 220(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 1,647 億円・営業利益 66 億円。営業利益率4.0%
- 産業用品(化学品・業務用ほか):数量 12.0(出荷量(万トン、推定。実質の数量))× 価格 21(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 251 億円・営業利益 3 億円。営業利益率1.0%
倍率:優良さを失い ROE が 3% 前後まで落ちる筋書きなので、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。純現金と、工場・不動産・在庫・投資有価証券の売却価値(税後)を床とし、今の自己資本に 0.75 倍を掛けた。
確率:中国の失速と国内の価格競争が同時に起き、優良さを失う。需要は残るが利益率が落ちたままになる複合の筋書きとして、12%置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の一般用消費財(オーラル・洗剤・ハンドソープ・薬品)
ハミガキ・ハブラシ・ハンドソープで首位、洗剤・柔軟剤・解熱鎮痛薬・点眼薬を持つ国内の中核事業。
| 数量国内の販売個数(億個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.5 | 400 | 2,208 | 150 |
| 10 年後 中立 | 5.4 | 536 | 2,894 | 260 |
取り方:開示は売上のみ。セグメント売上(セグメント間を含む)の比で外部売上に直し、平均単価を国内の日用品らしい水準(数百円台)と置いて個数を逆算した。個数は人口減で年0.2〜0.5%減るが、薬用の高価格品への移行は単価の側で効く。利益は非開示で、事業利益307億円を売上と収益構造改革の進み具合で割り振った推定。
海外(アジア中心のオーラル・ハンドソープ・洗剤)
タイ・マレーシア・中国・韓国などでハミガキ・ハンドソープ・洗濯用洗剤を売る。ベトナム・豪州・南アジアへ広げている。
| 数量海外の販売個数(億個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 7.6 | 200 | 1,517 | 130 |
| 10 年後 中立 | 10.2 | 267 | 2,728 | 314 |
取り方:セグメント売上(海外 1,780 億円)を連結売上へ比例で直し、平均単価を国内の半分ほどと置いて個数を逆算した。東南アジアの低価格品が多く単価は国内の半分。豪州Sukinの買収分(売上約80億円)は筋書きの数量に足した。利益は非開示で、事業利益を海外の改善(EBITDAマージン+0.7pt)の進み具合から割り振った推定。
産業用品(化学品・業務用ほか)
化学品子会社と業務用品など。化学品2社は2026年6月に譲渡の予定で、残る事業は小さくなる。
| 数量出荷量(万トン、推定。実質の数量) | 価格1トンあたりの平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.0 | 20 | 497 | 27 |
| 10 年後 中立 | 15.5 | 27 | 413 | 21 |
取り方:セグメント売上を比例で直した外部売上を、出荷25万トン(推定)・単価約20万円で割り付けた。このうち約9.5万トン(売上約190億円)が譲渡される化学品子会社分で、将来の筋書きでは出荷量から外す。利益は非開示で、事業利益から推定。
リスクと懸念
海外の成長が計画に届かない
海外の売上は、2025年の伸びが目標の年10%に対して3.6%だった。中国が想定を下回り、タイとマレーシアが支えた形だ。東南アジアの合弁は相手に依存する面があり、海外が低成長のままなら、2030年の構成比5割という目標も遠のく。
国内の価格競争と店頭の力関係
洗剤と柔軟剤は国内3位で、花王とP&Gが先を行く。ドラッグストアの力が強まるなか、値上げが売り場で拒まれる恐れがある。値上げが販売数量の落ち込みを招けば、収益構造改革で積んだ利益の改善が逆戻りし、立て直しに数年かかる。
原料高と為替
石油由来の原料や包装資材が上がると、利益率はすぐに削られる。2023年に営業利益率が5%台へ落ちたのは、その例だ。値上げが遅れれば傷は深くなり、立て直しにも時間がかかる。海外の利益は円に直す時に増減するので、円相場の動きも利益を揺らす。
中国の外資ブランド離れ
中国では現地ブランドが力を付け、日系ブランドは苦戦している。ライオンの中国事業は、青島の研究開発・生産体制を軸にハミガキやハンドソープを売るが、想定を下回った。反日感情の再燃などで売上が急に落ちる可能性も残り、回復には時間がかかる。
資本を使い切れないリスク
純現金が約880億円あり、ROEは8%台と低い。この資本を成長投資にも還元にも十分に回せなければ、価値は伸びない。逆に、割高な買収で現金を使えば、価値を壊す。2027年までの成長投資約500億円の使い道が問われる。
買収と事業整理の実行
豪州Sukin、ベトナム、バングラデシュ、インドの新しい事業は、いずれも立ち上がりの途中だ。化学品子会社の売却は2026年6月の実行予定で、収益の高い事業を手放す分、残る事業の利益を伸ばして穴を埋める必要があり、実行を誤れば減益になる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が10%を超えて2年以上続いたら
- 収益構造改革が定着したとみて、楽観・やや楽観の確率を上げる。ROEも9%を超え、倍率の上限が上がる。
- 海外売上の伸びが年10%水準に戻り、利益率も上がり続けたら
- 2030年の構成比5割へ向かう筋書きが現実になる。中立の海外の数量の前提を上方に直す。
- 国内で値上げのたびに販売数量が目に見えて落ち始めたら
- 国内の価格を決める力が弱いとみて、中立の営業利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 自社株買いが年数百億円の規模で実行されたら
- 余った現金が株主に返り、ROEが上がる。1株の利益が増え、倍率の評価も上がりうる。
- 中国で売上が急減する、または現地ブランドに大きくシェアを奪われたら
- 海外の成長前提を大きく引き下げる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ファンドや事業会社からTOBの動きが出たら
- 純現金と首位ブランドが評価され、値段が上に切り替わる可能性がある。筋書きの外の出来事として別に考える。
見ておくもの
- 一般用消費財・海外それぞれの事業利益率(四半期)
- オーラルヘルスケアの売上成長率(目標は年8%水準)と海外売上の成長率(目標は年10%水準)
- EBITDAマージン(2027年に13%超の目標)とROIC(8〜9%の目標)
- 自社株買いの実施と、配当性向の動き
- 中国・タイ・マレーシアの売上動向と、原料価格・円相場
倍率と資本コストの決め方
資本コストは基本7.5%+quality−0.25%の7.25%。倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限に対し、楽観0.9・やや楽観0.85、中立は1÷kの下限(13.8倍)に置いた。ROEが9%前後と低く、RONICはkをわずかに超えるだけなので、上限そのものが低い。今のPERやPBRに合わせにいかず、結果として中立は今の時価総額を少し上回る値になった。悲観は稼ぐ力でなく純現金と売れる資産で測った。純現金881億円は時価総額の17%なので、事業に要らない分400億円(成長投資と買収の分を引いた)を分け、時価総額=(純利益−余った現金の利息)×PER+余った現金で出した。現金は捨てていない。店舗を借りて営む会社ではなく、リースは工場・倉庫・事務所が中心とみる(額は未確認)。新リース会計基準でBSの形が変わる点は、数字を今と同じ形(賃料を営業費用に入れた形)でそろえた。悲観では家賃が固定費として残る前提で利益率を置いた。IFRS適用のため、営業利益は事業利益に近い形でならして置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.25%(需要の安定 −0.5、利益率の低さによる値決めの弱さ +0.25)を足して 7.25%。個別のリスク(中国・化学品の売却・買収の実行)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業が傾いてはいないので上乗せはしない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 7.75%。