結論
タイガースポリマーは、自動車や二輪向けのゴムホースとゴム・樹脂の成形品を作る大阪の中堅メーカーだ。売上の4割強がホンダ向けで、日本と米州が稼ぎの柱になっている。
筆者の結論は「やや割高」だ。理由は単純で、稼ぐ力が資本コストに届かない。自己資本利益率は5%で、資本コストの8.75%を下回る。ためた利益が、その額面ほどの価値を生んでいない。
この会社の強みは財務の厚さにある。純現金が125億円と時価総額の6割を超え、自己資本比率は75%に達する。このうち事業に要る分を除いた55億円を、余った現金として価値に足した。
ただし、現金の戻り方は鈍い。純現金は毎年10億円ほど積み上がり、配当性向は3割台にとどまる。純現金が増えても、株主の手元にそのまま戻るとは限らない。
強気の筋書きは、米国の需要が堅調で、日本と米州の利益率が上がる展開だ。慎重な筋書きは、ホンダの電動化の遅れと中国の撤退が重なり、数量と価格が崩れる展開である。確率で重みづけした価値は、今の時価総額を1割強下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「財務は優秀、事業は並」に分類される。借金がなく、純現金が時価総額の6割を超える。この点では安全域がある。
一方、オーナー利益、つまり事業を維持したうえで株主のものになる利益は、営業利益30億円からそこまで増えない。設備投資が償却を上回り、更新と増強にお金が出ていく。しかも利益のうち、現金が生む利息が1割を占める。
経営の資本配分は、堅実だが物足りない。借金を持たず、配当も出すが、現金の積み上がりを放置している。この現金を事業に回すか、自社株買いで戻せば価値は上がる。それが動かない以上、現金の価値を満額では数えにくい。
安全域はあるか。現金は安全域になるが、事業の稼ぐ力は資本コストに届かない。中立の10年後は時価総額が今を上回るが、割引くと今の値段を下回る。
筆者は、現金の戻りが動くまでは、満額の評価を与えない。逆に、資本政策の変化が確認できれば、この会社は見直しに値する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、自動車や二輪に使うゴムホースと成形品だ。売上は成形品が290億円で6割弱、ホースが141億円で3割弱、ゴムシートが55億円だ。1938年に個人で創業したゴムホースの会社が、樹脂やゴムの成形に事業を広げた。
地域は日本が232億円、米州が218億円、東南アジアが26億円、中国が26億円だ。利益は米州の18億円と日本の12億円でほぼ全部を占める。米州は売上の約4割で、利益は日本を上回る。東南アジアは0.5億円、中国は赤字(0.7億円)にとどまる。
顧客はホンダが売上の41.5%を占める。次いで、ホースの販売会社であるクリヤマ・オブ・アメリカが12.6%だ。この2社で売上の過半になる。トヨタと日産の比率は開示がない。
従業員は連結で約1,800人。日本が665人、米州が605人、東南アジアが254人、中国が262人だ。売上の約54%が海外の拠点で立つ。
研究開発費は15億円で売上の2.9%、前の期より14%増えた。自動車は燃料・冷却・空調など多くの流体を運ぶホースを必要とする。電動化でも冷却系などのホースは残るが、燃料系は減る。製品の中身が入れ替わる過程にある。
優良さと弱いところ
堀は広くない。ホースや成形品は、客の完成車メーカーの図面に従って作る部品で、値段は毎年の原価低減要請で決まる。ホンダの工場の近くで供給する体制は強みだが、同業のニチリンや住友理工も同じ客を狙う。
強みは三つある。一つはホンダとの長い取引で、車種の設計に組み込まれていること。二つ目は日本と米国の両方に拠点を持つことだ。三つ目は財務で、無借金に近く、純現金が厚い。
弱みははっきりしている。営業利益率は2020年から2023年に2〜3%台まで落ちた。ホンダ依存が4割を超え、ホンダの方針に会社の運命が左右される。
資本効率も低い。自己資本利益率は10年の中央値で5%台、目標の8%には届いていない。厚い純現金が利益を生まない分、ROEを押し下げている。
経営は、堅実だが積極的ではない。配当性向30%以上を目標とし、現金は貯まる一方だ。中期経営計画の開示もない。
結論として、財務は強いが、事業は弱い堀で稼ぐ会社だ。現金の厚さは安全域にはなるが、成長の源にはならない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の土台は、ホンダを中心とした自動車・二輪の生産台数だ。日本は人口減で内需が細り、米国は2028年ごろまで微増して横ばいに向かう。世界の自動車生産は微増にとどまる。
電動化は、ホースの中身を入れ替える。燃料ホースやエンジン周りの需要は電気自動車で減るが、電池や電子部品の冷却ホース、空調ホースは増える。ホンダは電動化の計画を見直しており、ハイブリッド車が延びる間は従来の部品が残る。
競争は、ニチリン、住友理工のような同業と、内製を進める自動車メーカーの両面から来る。部品が単純なほど、価格競争に陥りやすい。成形品は、軽量化や樹脂化で素材間の置き換えが続く。
米国では関税とメキシコを含む供給網の見直しが不確実だ。会社は米州で現地生産しているため、関税の直撃は受けにくいが、ホンダの北米生産が減れば同じだけ数量が減る。
中国では日系メーカーの販売減が続き、会社の中国子会社は赤字が続いてきた。前の期は赤字が縮んだが、規模は小さい。
業界全体の構図は、ホンダの生産と部品の中身の入れ替わりで需要の量と質が決まるということだ。値段を決めるのは客で、会社は原価と品質で選ばれ続けるしかない。
資本政策と M&A
還元は、安定配当に業績連動を加え、連結配当性向30%以上を目標とする。前の期の年間配当は、配当性向で3割強だった。配当の支払いは10億円で、純利益の4割ほどになる。自社株買いは目立たない。
純現金は、2024年3月期に109億円、翌期に114億円、前の期に125億円と毎年10億円前後増えている。事業に使う分を超えて貯まる一方で、株主への戻りは遅い。目標ROEは8%以上だが、実績は5%だ。
設備投資は34億円で、償却費26億円を上回った。日本と東南アジアに積極的に投じている。研究開発費も15億円と増やした。
M&Aは、大型の買収の動きがない。政策保有株は上場株で13億円と小さく、価値として足す額ではない。ホンダ株は5万株しか持たず、前期から縮めた。
株主構成の詳細は確認できなかった。ホンダが4割強の顧客である以上、資本の動きがあればホンダの意向が効くとみるが、確かな材料はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の安全域は財務にある。純現金は時価総額の6割を超え、自己資本比率は75%だ。景気が悪化しても、返済に困ることはない。電動化の波が荒れても、その間を耐える体力がある。
米国は堅調だ。米州のセグメント利益は18億円で、日本の12億円を上回る。現地生産のため関税の影響を受けにくく、ホンダの北米向け需要は底堅い。
前の期は営業利益が計画の27億円を上回り、30億円で着地した。日本の利益は26%増えた。中国の赤字も縮んだ。研究開発費を増やしながら利益を伸ばしており、足場は固い。しかも借金がないので、金利が上がっても利払いに苦しむことはなく、むしろ現金の利息が増えて利益を押し上げる。
電動化は新しい需要も生む。電池や電子部品の冷却ホース、空調ホースは、電気自動車で増える。ホンダとの取引は、この新しい部品でも引き継げる。
現金の戻りが動けば、評価は一気に変わる。自社株買いを始めるだけで、時価総額は大きく見直される。目標ROEの8%を達成する圧力は強まっており、資本政策が動く可能性は高い。
慎重な見方
財務は強いが、事業は弱い。営業利益率は6%で、過去12年の最高の7%に近いが、2020年から2023年は2〜3%に沈んだ。値段を決めるのは客で、利益率が上がる構造が見えない。
ホンダ依存が4割を超え、クリヤマ・オブ・アメリカを足すと過半になる。ホンダが電動化の計画を見直し、調達先を絞れば、数量も価格も同時に落ちる。
現金は積み上がるが、戻らない。純現金は毎年10億円増えるのに、配当性向は3割台で、自社株買いは目立たない。現金に2%の利息しかつかない以上、持ち続けるほど資本効率が下がる。時価総額の6割を占める現金に満額の価値を与えるのは危うい。
電動化で燃料系のホースは減る。冷却系が増えるといっても、客が内製や別の調達先に切り替えれば、取り分は保証されない。米国の関税や供給網の見直しも、ホンダの北米生産を左右する。
中国は赤字が続き、東南アジアも利益が出ない。海外の売上の半分は、まだ稼げていない。
会社の見立てどおりに進んでも、自己資本利益率は5%台にとどまる。資本コストの9%近くを下回る限り、価値はその額面を割る。
どちらに重みを置いたか
筆者は、慎重な見方がわずかに強いとみる。強気の根拠である財務の厚さは本物だが、すでに値段に織り込まれている。弱気の根拠である資本効率の低さとホンダ依存は、長い実績に裏づけられている。
そのため、中立に重みを置き、やや楽観を19%、やや悲観を25%とした。悲観の11%は、ホンダ依存とホースの中身の入れ替わりを映している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,710 円330 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 513 円99 億円)。 今の値に割り戻すと 1,164 円224 億円、今との差 +17.7%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,911 円562 億円 | 757 円146 億円 | +270.9% | +14.0% | 257 円50 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,523 円487 億円 | 648 円125 億円 | +220.7% | +12.4% | 603 円116 億円 |
| 中立 | 38% | 2,055 円396 億円 | 544 円105 億円 | +162.9% | +10.1% | 988 円191 億円 |
| やや悲観 | 25% | 755 円146 億円 | 430 円83 億円 | +19.9% | +1.8% | 296 円57 億円 |
| 悲観 | 11% | 518 円100 億円 | 202 円39 億円 | −27.1% | −3.1% | 79 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,710 円330 億円 | 513 円99 億円 | +124.8% | +8.4% | 2,223 円429 億円 |
今の株価時価総額 989 円191 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 米国が堅調で、日米の利益率が上がり、現金の戻りも動く 利益 41 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,911 円562 億円
米国の需要が堅く、米州の数量は12%増える。ホンダの電動車の冷却ホースなど、新しい部品が加わり、単価は物価をやや上回る1.36倍になる。日本の利益率は6.5%、米州は9%に上がる。
東南アジアは数量が3割増え、赤字を脱する。中国は横ばいで小さな黒字を出す。会社全体の営業利益率は7.3%と、過去12年の山を少し超える。営業利益は53億円になる。
純利益は41億円。配当性向は45%に高まり、10年の還元は約146億円だ。現金の戻りが動き、積み上がった現金も使われる。ただし、ROEは7%にとどまる。資本コストを下回る点は変わらない。
- 日本:数量 3.0(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 109(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 322 億円・営業利益 21 億円。数量1.02倍・価格1.36倍、利益率6.5%
- 米州:数量 2.1(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 156(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 331 億円・営業利益 30 億円。数量1.12倍、利益率9%
- 東南アジア:数量 1.2(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 39(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。数量1.3倍、利益率4%
- 中国:数量 1.0(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 35(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。数量横ばい、利益率2%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 562 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホンダの北米需要、日米の利益率上昇、冷却系ホースの伸びが重なる必要がある。ROE が資本コストに届かない会社なので7%にとどめた。
やや楽観 19% 日米が堅調で、会社の言う利益率の上振れが続く 利益 35 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,523 円487 億円
日本は横ばいの数量を、物価並みの単価で支える。米州は数量が7%増え、利益率は8.3%を保つ。東南アジアは数量が2割増えて小さな黒字になる。中国は撤退と縮小で赤字を脱する。
会社全体の営業利益率は6.5%で、過去12年の山に近づく。営業利益は45億円、純利益は35億円。10年の還元は約125億円だ。
ただし、ROEは6%にとどまり、資本コストには届かない。厚い現金が利益を生まない分、資本効率は上がらない。
米州の新しい部品が少しずつ増え、日本は国内生産の縮小を価格転嫁で補う。東南アジアと中国は大きな改善にはならない。ホンダ依存は続くが、取引の質は保たれる。「財務の強い、普通の部品会社」として、今と同じくらいの評価を保つ。
- 日本:数量 2.9(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 107(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 311 億円・営業利益 18 億円。数量横ばい・価格1.34倍、利益率5.8%
- 米州:数量 2.0(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 153(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 312 億円・営業利益 26 億円。数量1.07倍、利益率8.3%
- 東南アジア:数量 1.1(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 38(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。数量1.2倍、利益率3%
- 中国:数量 1.0(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 35(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 0 億円。数量0.95倍、利益率1%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 487 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前の期の実績(営業利益が計画を上回った)が続き、新規部品が加わる筋書き。会社の目標を超えず、ホンダ依存も残るので19%に抑えた。
中立 38% 中立:日米は現状並み、中国は縮み、現金だけが積み上がる 利益 28 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,055 円396 億円
日本は数量が5%減るが、価格転嫁で物価の7割強を取り戻す。米州は数量が3%増え、利益率は7%を保つ。東南アジアは小さな利益、中国は縮小して損益トントンになる。
会社全体の営業利益率は5.5%、営業利益は36億円。前の期の6%から少し落ちるのは、人件費と原材料の上昇が客の値下げ要求で転嫁しきれないからだ。借金がない会社なので、金利の上昇は現金の利息を増やして利益を押し上げる。
純利益は28億円。配当性向は4割で、10年の還元は約105億円。現金は積み上がり続けるが、使い道は限られる。
今ある設備の償却は物価で増えない。投資は償却を上回り、償却は10年で40億円前後に増える。
「堅実だが、成長しない会社」という姿が、中立の10年後だ。
- 日本:数量 2.8(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 106(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 291 億円・営業利益 15 億円。数量0.95倍・価格1.32倍、利益率5%
- 米州:数量 2.0(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 151(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 296 億円・営業利益 21 億円。数量1.03倍、利益率7%
- 東南アジア:数量 1.0(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 37(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。数量1.10倍、利益率2%
- 中国:数量 0.9(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 34(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。数量0.85倍、損益トントン
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 396 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホンダの生産が横ばいで、会社の利益率が6%弱で落ち着く、過去の実績と会社予想の延長。強気と慎重の言い分を平均した中心。
やや悲観 25% ホンダの生産が細り、価格圧力で利益率が4%に落ちる 利益 17 億円 · PER 6.9 倍 · 株価時価総額 755 円146 億円
ホンダの生産が細り、日本の数量が1割強減る。米州も数量が7%減り、客の値下げ要求が強まる。単価は物価の上昇に届かず、1.28倍にとどまる。
日本の利益率は3.5%、米州は5%に下がる。東南アジアは損益トントン、中国は赤字が続く。会社全体の営業利益率は3.7%、営業利益は21億円になる。
純利益は17億円。配当は4割を維持して10年で約83億円。現金は積み上がるが、事業の稼ぎが細り、資本効率はさらに下がる。
過去にも2020年から2023年に営業利益が11〜13億円まで落ちた。この水準に近づく筋書きだ。
- 日本:数量 2.6(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 102(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 262 億円・営業利益 9 億円。数量0.88倍・価格1.28倍、利益率3.5%
- 米州:数量 1.8(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 147(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 259 億円・営業利益 13 億円。数量0.93倍、利益率5%
- 東南アジア:数量 0.9(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 36(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 0 億円。数量横ばい、損益トントン
- 中国:数量 0.8(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 33(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 −1 億円。数量0.75倍、利益率−3%
倍率:事業の ROE 3.1%は k 7.75%を大きく下回る。PER の上限は 1÷k=11.43 倍で、やや悲観は上限の 6 割の 6.86 倍に置いた(7 割へは引き上げない)。余った現金は谷で食うので今の 0.75 倍の 41 億円とし、戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:ホンダの電動化の遅れ、客の値下げ圧力、中国の縮小が重なる、過去の実績(2020〜2023年)に近い筋書き。25%を置いた。
悲観 11% 構造的に負ける:ホンダの調達が細り、ホースの中身も入れ替わる 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 518 円100 億円
ホンダが調達先を絞り、数量が3割減る。燃料系のホースは電動化で減り、冷却系は別の調達先に流れる。単価は物価の上昇にも届かず、1.18倍にとどまる。
日本と米州の利益率は0.5%まで落ちる。東南アジアと中国は赤字で、工場の閉鎖費用が出る。営業利益はほぼゼロ、純利益は現金の利息で2億円だ。
配当は3割を保てず、10年の還元は約39億円に縮む。自己資本は工場の閉鎖と減損で約100億円減るが、現金は厚い。厚い現金が下値を支え、戻りがあれば価値は残る。
ただし、小さな株主には現金の使い方を決める力がなく、帳簿の現金の半分程度しか戻らない前提で価値を置く。
- 日本:数量 2.0(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 94(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 192 億円・営業利益 1 億円。数量0.7倍・価格1.18倍、利益率0.5%
- 米州:数量 1.4(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 135(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 193 億円・営業利益 1 億円。数量0.75倍、利益率0.5%
- 東南アジア:数量 0.7(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 33(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 −1 億円。数量0.8倍、利益率−3%
- 中国:数量 0.5(納入先の車両台数相当(百万台・推定))× 価格 31(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。数量0.5倍、利益率−8%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロ。ROE が k を大きく下回るので利益から倍率を出さず、純現金の半分と売れる資産の半分から成る約 100 億円を床にした。今の自己資本 470 億円に対する倍率では約 0.21 倍。減損後の自己資本は 461 億円。EV÷営業利益は営業利益がほぼゼロなので意味を持たない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.2169 倍・時価総額 100 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:ホンダ依存が4割を超え、電動化でホースの中身が入れ替わる変化は無視できない。中国は赤字が続く。11%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
国内工場でホース、ゴムシート、成形品を作り、ホンダなど国内の客と海外拠点へ納める。
| 数量納入先の車両台数相当(百万台・推定) | 価格百万台あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.9 | 80 | 232 | 12 |
| 10 年後 中立 | 2.8 | 106 | 291 | 15 |
取り方:車両台数は開示がない。外部売上 232.2 億円を、1 台あたり搭載額を推定して割り戻し、約 290 万台相当と置いた。営業利益はセグメント利益 12.2 億円(開示、前年比 +26%)。
米州
米国などの現地工場で、ホンダ向けを中心にホース・成形品を作る。
| 数量納入先の車両台数相当(百万台・推定) | 価格百万台あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.9 | 115 | 218 | 18 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 151 | 296 | 21 |
取り方:車両台数は開示がない。外部売上 217.6 億円を、日本より高い 1 台あたり搭載額(大型車・SUV が多い)で割り戻し、約 190 万台相当と置いた。営業利益はセグメント利益 17.6 億円(開示、前年比 −10%)。
東南アジア
タイなどの工場で、二輪・四輪向けのホース・成形品を作る。
| 数量納入先の車両台数相当(百万台・推定) | 価格百万台あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.9 | 28 | 26 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 37 | 37 | 1 |
取り方:車両台数は開示がない。外部売上 25.5 億円を、二輪が多く単価の低い搭載額で割り戻し、約 90 万台相当と置いた。営業利益は開示(0.5 億円、前年比 −64%)。
中国
中国の子会社で、日系メーカー向けのホース・成形品を作る。
| 数量納入先の車両台数相当(百万台・推定) | 価格百万台あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 26 | 26 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 34 | 29 | 0 |
取り方:車両台数は開示がない。外部売上 26.0 億円を、低い搭載額で割り戻し、約 100 万台相当と置いた。営業利益は開示(−0.65 億円の損失、前年は −2.8 億円)。
リスクと懸念
ホンダへの依存
売上の41.5%がホンダ向けで、ホースの販売会社クリヤマ・オブ・アメリカ(12.6%)を足すと過半になる。ホンダが電動化の計画を見直したり、調達先を絞ったりすれば、数量と価格が同時に落ちる。会社の運命が客の方針に左右される構造だ。
ホースの中身の入れ替わり
電動化で燃料系のホースは減り、電池や電子部品の冷却ホースが増える。ただし、新しい部品は客が別の調達先に切り替えるきっかけにもなる。入れ替わりの過程で取り分を落とすおそれがある。
現金が戻らない
純現金は毎年10億円前後増えるが、配当性向は3割台で、自社株買いは目立たない。現金に2%の利息しかつかない以上、持ち続けるほど資本効率が下がる。少数株主には現金の使い方を決める力がない。
米国の関税と供給網の見直し
米州は売上の4割強、利益の6割を稼ぐ。現地生産で関税の直撃は受けにくいが、ホンダの北米生産が減れば数量は同じだけ減る。供給網や協定の見直しで、仕入れの原価が上がる可能性もある。
中国と東南アジアの低収益
中国は赤字が続き、前の期に縮んだとはいえ、立て直しの道筋は見えない。東南アジアも利益が前年比で6割減った。海外の売上の約半分が、まだ稼げていない。
為替と原材料
売上の約54%が海外拠点で立つため、円高は連結の利益を目減りさせる。ゴムや樹脂の原材料は市況で動き、客への転嫁に遅れが出る。
今後の分かれ目
- 自社株買いや増配で、現金の戻りが動いたら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0に引き上げて評価できる。価値が大きく上がる。
- ホンダが北米・日本の調達先を絞ると表明したら
- 数量と価格が同時に落ち、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- ホンダの電動車向けの冷却ホースなど、新しい部品の受注が出たら
- 電動化でも取り分が保たれる証拠で、強気側の確率を上げる。
- 米州の利益率が8%を超えて安定したら
- 北米の需要が堅調で、強気側の確率を上げる。
- 中国の子会社を再編・撤退すると発表したら
- 赤字が止まり、利益が小さく改善する。特別損失は一度で済む。
- 目標ROE 8%に向けた資本政策の発表があったら
- 余った現金の使い方が変わる可能性が高い。内容しだいで評価を見直す。
見ておくもの
- 米州セグメントの利益と利益率
- ホンダ向け売上比率
- 純現金の積み上がりと配当・自社株買いの額
- 中国・東南アジアの損益
- 研究開発費と新規部品の受注
倍率と資本コストの決め方
数量(納入先の車両台数相当)は実質、価格は物価 3%を含む名目として別に置いた。10 年の償却費は今の 26.2 億円から、更新投資が今より約 3 割高い値段で足されて 40 億円前後と置き、利益率は日本が 5%、米州が 7%と、前の期(6.0%)より少し低い 5.5%にした。倍率は資本コスト 7.75%(基本 7.5%+quality 1.25%)から、事業の ROE が k 以下なので上限 1÷k の 7 割に置き、今の株価(PER 8 倍台)や過去の PBR には寄せていない。余った現金は戻り方 0.5 を掛けて別に足し、金利の上昇は現金の利息を増やして純利益に入れた。政策保有株は配当が利益に入っているので別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.29→12.9 倍・やや楽観 PER 9.14→12.9 倍・中立 PER 8→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25% を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 7.75%。