結論
アクシージアは、日本で作った美容ドリンクや化粧品を、主に中国の消費者に売る会社だ。売上の7割が中国向けで、越境ECや中国の販売網を通じて届く。筆者の結論は「割高」である。手元の現金は厚いが、事業そのものが稼げなくなっている。
利益は4年で消えた。2023年7月期に19億円あった営業利益は、2026年7月期に赤字になった。中国のネット通販で広告の値段が上がり、地元の化粧品ブランドが力をつけた。日中関係が冷えれば、日本の商品を選ぶ理由も薄れる。会社は次の期も赤字を見込む。
救いは財務だ。借金を差し引いても34億円の現金があり、配当も続けている。日本と東南アジアでの立て直しも始めた。だが、この会社の強みは中国の客の「日本製なら安心」という気持ちに乗る点にあった。その気持ちが続くかは、会社の力では決められない。
筆者は、10年後の中立で営業利益率が3%ほどに戻ると見る。それでも、余った現金を足した本質価値は今の時価総額の6割前後にとどまる。今の値段は、利益が昔の水準に戻ることをまだ期待している。現金の厚さだけが、その期待との差を少し埋めている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、現金が厚いだけでは安いと言えない。大事なのは、その現金の外にある事業が、10年でどれだけ稼ぐかだ。
この会社の事業は、中国の客の日本製への信頼と、ネット通販の広告の値段という、自分では決められない2つのものに乗っている。どちらも4年で悪い方へ動いた。売上は横ばいなのに利益が消えたのは、客を呼ぶ値段が上がり続けている証拠だ。
筆者は、事業の稼ぐ力は戻っても営業利益率で3%ほどと見る。そうなると、事業の価値は数十億円にとどまり、今の時価総額との差を現金で埋めることになる。その現金も、経営が使い道を決める。
経営の姿勢には好感が持てる。赤字でも配当を守り、自社株も買った。日本と東南アジアで新しいブランドを育てようとしている。ただ、オーナーとして10年持ちたい事業かと問われれば、筆者は首を横に振る。安全域は、現金の厚さにしか無い。その現金も、使い道を決めるのは経営だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、飲む美容液とも呼ばれるインナーケアのドリンクだ。主力の「AGドリンク」は糖化、つまり体の中で糖とたんぱく質が結びついて肌が衰える現象を抑えることをうたう。「ザ ピュア ドリンク」と合わせ、日本の工場に作ってもらった商品を中国の消費者に売る。化粧品の「AGTHEORY」シリーズもある。
売上134億円のうち96億円が中国向けだ。中国のネット通販の大手のモールに店を出し、インフルエンサーのライブ販売や広告で客を呼ぶ。代理店を通じた販売もある。中国の客から見れば「日本製」であることが安心の印になる。
日本では34億円を売る。注力ブランドの「LisBlanc」を刷新して値段を下げ、バラエティショップに並べ始めた。大阪のなんばに直営店も開いた。化粧品を輸入して売っていた子会社のエムアンドディは、自社ブランドの「BELLE BAI」に切り替えている。東南アジアではライブ販売で売上が大きく伸びたが、まだ4億円ほどだ。
工場は持たない。売上に対する原価は3割に満たず、売上総利益率は7割を超える。ところが、販売費と一般管理費がそれをほぼ食い尽くす。その多くは中国のネット広告と販売の手数料だ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、商品の中身より、売る場所と売り方にあった。中国の客の日本製への信頼に乗り、ネット通販とライブ販売の波をいち早くつかんだ。2019年には営業利益率が4割を超えた。
だが、その堀は浅かった。中国のネット通販では、広告とライブ販売の手数料を払えば誰でも客を呼べる。地元のブランドは安く、速く、中国の客の好みに合わせて商品を出す。広告の値段は上がり、同じ売上を保つのに年々お金がかかる。営業利益率は5年で4割から赤字まで下がった。
値段を決める力も弱い。会社自身が、中国の物価の低迷で売値の下げ圧力が強まると書いている。値段を上げれば客は地元のブランドに移る。
経営は創業者が率いる。創業者と関係する会社が株の2〜3割を持つ。配当は赤字でも続け、自社株も買ってきた。株主への姿勢は悪くない。ただ、日本と東南アジアへの投資が実るかは、まだ見えない。
筆者は、この会社の堀は売り場の変化とともに流れ去ったと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中国の化粧品の市場は大きい。小売の規模は4,000億元を超え、量も長い目では伸びる。だが、競争の形はこの5年で変わった。
1つ目は地元ブランドの台頭だ。中国の化粧品会社は、研究と生産に力を入れ、海外ブランドに負けない品質を安く出すようになった。若い客は、国のブランドを選ぶことに抵抗が無い。
2つ目は売り場の変化だ。大手のモールから、動画とライブ販売のアプリへ客が移った。そこでは広告と手数料の値段が上がり続け、売り手の取り分は細る。
3つ目は日中関係だ。2025年11月以降、中国政府の渡航自粛の要請で訪日客が減り、日本の商品への関心も冷えた。関係が悪くなるたびに、日本のブランドは売上を落とす。福島の処理水の放出の後にも、日本の化粧品は中国で売れにくくなった。
日本の市場は2.6兆円ほどで、量は増えない。東南アジアは伸びるが、どの国も規模は小さく、ライブ販売の競争は中国と同じ形だ。筆者は、中国で日本の美容ブランドが特別な値段を取れる時代は終わったと見る。
勝ち残るのは、広告に頼らず指名で買われるブランドだけになる。
資本政策と M&A
株主への還元は、利益に比べて厚い。配当の総額は年2.3億円だ。2026年7月期は赤字でも配当を続け、次の期も同じ額を予定する。2024年12月には、立会外の取引で106万株の自社株を買った。
手元の現金は40億円で、借入は6億円弱だ。上場した2021年の58億円の純現金から、自社株買いと配当と赤字で34億円まで減った。筆者は、運転資金と広告の前払いに10億円ほどを残し、25億円を事業に要らない現金と見た。ただ、創業者側が株の2〜3割を持ち、現金の使い道を決めるのは経営だ。赤字が続けば、現金は配当と事業の立て直しで少しずつ減る。
買収は小さい。化粧品の輸入販売のエムアンドディを子会社にしたが、2026年7月期にそののれんを減損した。創業者側の持ち分が大きく、外から買われる可能性は低い。一方で、時価総額が純現金の2倍ほどまで下がっており、経営陣による買い取りが選ばれる余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
中国の消費は戻り始めている。化粧品の市場は堅調で、日本の美容ドリンクは糖化を抑えるという独自の訴えを持つ。アクシージアは、中国で効能をうたえる特殊化粧品の認可も取った。地元のブランドが増えても、日本製の品質に払う客は残る。日中関係は波があるが、冷えた時期の後には必ず戻ってきた。
利益が消えたのは、広告と人への投資を先に増やしたからだ。会社は広告と手数料を絞り、AIで費用を抑えると宣言した。売上総利益率は7割を超えるので、広告を1割減らすだけで利益は大きく戻る。2023年には営業利益率が17%近くあった。
日本と東南アジアも育つ。LisBlancはバラエティショップに並び、子会社は自社ブランドに切り替えた。東南アジアのライブ販売は売上が大きく伸びている。中国への偏りが薄まれば、事業の危うさも減る。
何より財務が堅い。借金を引いても34億円の現金があり、時価総額の半分に近い。事業の価値をほとんどゼロと見ても、下値は限られる。利益が昔の半分に戻るだけで、今の値段は安すぎることになる。
慎重な見方
利益が消えた理由は、一時の投資ではなく、商売の土台が崩れたことにある。中国のネット通販では、広告とライブ販売の値段が上がり続け、売り手の取り分は細る一方だ。地元のブランドは安く速く、若い客は国のブランドを選ぶ。日本製というだけで高い値段を取れた時代は終わった。
会社自身が厳しい見通しを書いている。中国では消費者の気持ちが冷え、物価の低迷で売値の下げ圧力が強まり、競争はさらに激しくなる。次の期も赤字の予想だ。
日中関係も重い。中国政府の渡航自粛の要請で訪日客は減った。関係が悪くなるたびに、日本の商品は中国で売れにくくなる。売上の7割を中国に頼る会社には、避けようのない危うさだ。
日本と東南アジアの立て直しも小さすぎる。日本の売上は34億円で、ブランドの刷新と値下げをしたばかりだ。子会社ののれんはすでに減損した。現金は厚いが、赤字と配当で毎年減っていく。創業者側が株の多くを持ち、現金を株主に戻す保証も無い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。広告の値段の上昇と地元ブランドの台頭は、会社自身が次の期も続くと見込んでおり、一時の投資では説明できない。日中関係の危うさも、売上の7割を中国に頼る限り消えない。強気の見方の支えは主に現金の厚さで、事業の稼ぐ力の回復ではない。確率はやや悲観と悲観を、同じ領域の新日本製薬・北の達人より厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 329 円75 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 102 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 218 円50 億円、今との差 −30.2%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,428 円327 億円 | 195 円45 億円 | +420.3% | +17.9% | 97 円22 億円 |
| やや楽観 | 15% | 693 円159 億円 | 109 円25 億円 | +157.2% | +9.9% | 120 円28 億円 |
| 中立 | 36% | 272 円62 億円 | 109 円25 億円 | +22.2% | +2.0% | 137 円31 億円 |
| やや悲観 | 28% | 114 円26 億円 | 101 円23 億円 | −31.2% | −3.7% | 60 円14 億円 |
| 悲観 | 15% | 66 円15 億円 | 44 円10 億円 | −64.8% | −9.9% | 16 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 329 円75 億円 | 102 円23 億円 | +38.3% | +3.3% | 432 円99 億円 |
今の株価時価総額 312 円71 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 中国が戻り、広告を絞って稼ぐ力が戻る 利益 19 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 1,428 円327 億円
中国の消費が戻り、日中関係も落ち着く。日本の美容ドリンクは糖化を抑える独自の訴えで、健康志向の中国の中高年に定着する。特殊化粧品の認可を取ったAGTHEORYも売れ、中国の売上は10年で7割増える。
会社は広告と手数料を絞り、ライブ販売の効率を上げる。中国の営業利益率は12%まで戻る。日本ではLisBlancがバラエティショップの定番になり、東南アジアのライブ販売も大きく育つ。日本・その他の売上は2.7倍になり、利益率は8%に乗る。
純利益は20億円近くになり、配当と自社株買いを厚くしても現金は残る。
- 中国向け:数量 6.4(中国の化粧品の小売市場(今の値段・億元)× 取り分)× 価格 25(1 億元あたりの売上(億円。今の値に中国の単価の指数を掛ける))→ 売上 162 億円・営業利益 19 億円。市場 1.3 倍 × 取り分 0.11%・単価 1.20 倍・利益率 12%(中国の物価が低く、地元ブランドとの値下げ競争で物価 3% ほど上がらない)
- 日本・その他:数量 154(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.67(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 103 億円・営業利益 8 億円。個数 2 倍・単価 1.34 倍・利益率 8%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 15.83 倍、時価総額 315 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国の消費と日中関係が戻り、広告の抑制で利益率が1割台に戻る筋書き。土台が崩れた後なので確度は低い。
やや楽観 15% 広告の統制と日本・東南アジアの育成が実る 利益 10 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 693 円159 億円
中国の売上は10年で2割増える。地元のブランドに客を取られる分を、インナーケアの新商品と特殊化粧品で埋める。広告と手数料の統制が効き、中国の営業利益率は8%に戻る。
日本ではLisBlancと子会社のBELLE BAIが育ち、東南アジアのライブ販売も伸びて、日本・その他の売上は2倍を超える。立ち上げの費用がかさみ、利益率は5%にとどまる。
純利益は10億円ほどになる。配当は年2.3億円を続け、現金は少しずつ積み上がる。中国への偏りは今の7割から6割弱に下がる。
日中関係は波があるが、大きな規制には至らない。
- 中国向け:数量 4.9(中国の化粧品の小売市場(今の値段・億元)× 取り分)× 価格 24(1 億元あたりの売上(億円。今の値に中国の単価の指数を掛ける))→ 売上 118 億円・営業利益 9 億円。市場 1.2 倍 × 取り分 0.09%・単価 1.16 倍・利益率 8%(中国の物価が低く、地元ブランドとの値下げ競争で物価 3% ほど上がらない)
- 日本・その他:数量 131(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.66(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 86 億円・営業利益 4 億円。個数 1.7 倍・単価 1.32 倍・利益率 5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 13.97 倍、時価総額 150 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:広告の抑制と日本・東南アジアの育成が実り、利益率が中国で8%に戻る筋書き。会社の打ち手が全部当たる形。
中立 36% 中国で細り、日本と東南アジアで埋める 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 272 円62 億円
中国では地元のブランドにシェアを奪われ、売上は10年で5%ほど減る。売値も中国の物価の低迷で上がりにくい。広告と手数料の統制で、中国の営業利益率は4%まで戻るが、昔の水準には遠い。
日本と東南アジアは伸びる。LisBlancの値下げとバラエティショップへの展開が効き、東南アジアのライブ販売も育つ。日本・その他の売上は1.8倍になるが、ブランドを育てる費用がかさみ、利益率は2%にとどまる。
全社の営業利益は5億円ほどで、配当を払うと利益はほとんど残らない。現金は横ばいで、事業は細く続く。
中国の単価が物価ほど上がらないのは、中国の物価そのものが低く、地元のブランドとの値下げの競争が続くからだ。
- 中国向け:数量 3.9(中国の化粧品の小売市場(今の値段・億元)× 取り分)× 価格 24(1 億元あたりの売上(億円。今の値に中国の単価の指数を掛ける))→ 売上 91 億円・営業利益 4 億円。市場 1.15 倍 × 取り分 0.075%・単価 1.12 倍・利益率 4%(中国の物価が低く、地元ブランドとの値下げ競争で物価 3% ほど上がらない)
- 日本・その他:数量 108(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.65(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 1 億円。個数 1.4 倍・単価 1.30 倍・利益率 2%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 62 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国でシェアを落としつつ、日本と東南アジアで埋め、利益率は3%ほどに戻る。会社の見通しと業界の流れの折り合い。
やや悲観 28% 広告と地元ブランドに押され、利益が出ない 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 114 円26 億円
中国のネット通販の広告の値段は上がり続け、地元のブランドに客を奪われる。中国の売上は10年で4割減り、利益率は2%しか残らない。日中関係は冷えたり戻ったりを繰り返し、そのたびに売上が揺れる。
日本と東南アジアの立て直しは時間がかかり、売上は5割増にとどまる。利益率は1%で、ブランドを育てる費用が重い。
全社の利益はほとんど出ず、配当は現金を取り崩して払う。時価総額は、稼ぐ力ではなく、割り引いた現金の価値に近づく。
AIを使った費用の抑制も、広告の値段の上昇を打ち消すほどの効果は出ない。経営は日本への投資を続けるが、成果は小さい。
- 中国向け:数量 2.5(中国の化粧品の小売市場(今の値段・億元)× 取り分)× 価格 22(1 億元あたりの売上(億円。今の値に中国の単価の指数を掛ける))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。市場 1.1 倍 × 取り分 0.05%・単価 1.05 倍・利益率 2%(中国の物価が低く、地元ブランドとの値下げ競争で物価 3% ほど上がらない)
- 日本・その他:数量 116(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.62(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 72 億円・営業利益 1 億円。個数 1.5 倍・単価 1.24 倍・利益率 1%
倍率:利益がほとんど出ない筋書き。稼ぐ力(純利益 1.6 億÷k≒18 億)の内側で、上限 1÷k の 7.2 割の 8.0 倍に置き、余った現金は谷で食う分を見て 0.75 倍で足した。
確率:広告の値段と地元ブランドに押され、利益がほぼ出ないまま続く筋書き。直近2年の流れの延長で、厚く置く。
悲観 15% 日中関係の悪化で中国の売上を失う 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 66 円15 億円
日中関係が大きく悪化し、中国の当局が日本の食品と化粧品の輸入や販売を絞る。大手のモールでの販売も難しくなり、中国の売上は10年で8割減る。日本と東南アジアも、立ち上げの赤字が続く。
会社は人員と広告を絞って生き残りを図るが、赤字は数年続く。配当は止まり、現金は事業の立て直しと赤字の穴埋めで減っていく。
創業者側が経営を握ったまま、現金の使い道は少数株主には決められない。価値は、残った現金を大きく割り引いた額にとどまる。
東南アジアの小さな売上だけでは、中国で失った分を埋められない。日本のブランドも、新しい客を取る広告の重さに耐えられない。
- 中国向け:数量 0.9(中国の化粧品の小売市場(今の値段・億元)× 取り分)× 価格 21(1 億元あたりの売上(億円。今の値に中国の単価の指数を掛ける))→ 売上 19 億円・営業利益 −2 億円。中国の売上 8 割減・赤字
- 日本・その他:数量 69.3(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.55(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 −1 億円。個数 0.9 倍・単価 1.10 倍・赤字
倍率:赤字なので PBR で測る。今の自己資本 71.3 億の 0.2 倍で約 15 億。稼ぐ力は無く、床は割り引いた現金(floor_assets_oku)から置いた。
確率:日中関係の悪化か中国の規制で、中国の売上を大きく失う筋書き。売上の7割を一国に頼る危うさを見て15%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
中国向け
AGドリンク・ザ ピュア ドリンクなどのインナーケアと AGTHEORY の化粧品を、中国の大手モール・ライブ販売・代理店で売る。
| 数量中国の化粧品の小売市場(今の値段・億元)× 取り分 | 価格1 億元あたりの売上(億円。今の値に中国の単価の指数を掛ける) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 4.6 | 21 | 96 | −1 |
| 10 年後 中立 | 3.9 | 24 | 91 | 4 |
取り方:数量の開示は無いので推定。中国の化粧品の小売市場を約 4,500 億元(今の値段)とし、中国向けの売上 96.2 億円を 1 億元=21 億円で割った 4.58 億元をその取り分(約 0.1%)とした。単価は 1 億元あたりの億円で、中国の物価が低く売値の下げ圧力を会社も認めるので、10 年の上昇は 1.12 倍まで(物価 3% の 1.34 倍より低い)。
日本・その他
日本の LisBlanc(バラエティショップ・直営店)、子会社エムアンドディの BELLE BAI、東南アジアのライブ販売。
| 数量販売個数(万個・年、推定) | 価格1 万個あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 77.0 | 0.50 | 39 | −1 |
| 10 年後 中立 | 108 | 0.65 | 70 | 1 |
取り方:数量の開示は無いので推定。日本・その他の売上 38.5 億円を、化粧品・ドリンクの混ざった 1 万個あたり 0.5 億円の売値で割り、年 77 万個とした。物価 3% は単価に入れた。
リスクと懸念
日中関係と中国の規制
売上の7割が中国向けだ。2025年11月以降は中国政府の渡航自粛の要請で訪日客が減り、日本の商品への関心も冷えた。関係が悪化すれば、輸入や販売の規制で中国の売上を大きく失いうる。
中国のネット広告の値段の高騰
客を呼ぶ広告とライブ販売の手数料が上がり続け、2026年7月期は売上が横ばいでも営業赤字になった。会社は次の期も赤字を見込む。広告の値段は会社の力では決められない。
地元ブランドの台頭
中国の化粧品会社は品質を上げ、安く速く商品を出す。若い客は国のブランドを選ぶ。日本製というだけで高い値段を取れる時代は終わりつつある。
日本と東南アジアの立て直しの遅れ
LisBlancの刷新、子会社の自社ブランドへの切り替え、東南アジアのライブ販売はどれも始まったばかりだ。子会社ののれんはすでに減損した。育つ前に現金を使い切る恐れがある。
現金の使い道
純現金は34億円あるが、赤字と配当で毎年減る。創業者側が株の2〜3割を持ち、現金を株主に戻すか、事業に注ぎ込むかは経営が決める。
今後の分かれ目
- 2027年7月期に広告費の統制で営業黒字に戻る
- 利益の底が見えたと見て、中立の利益率を少し上げ、やや悲観の確率を下げる。
- 日中関係がさらに悪化し、中国での販売に規制がかかる
- 悲観の確率を大きく上げる。
- 日本と東南アジアの売上が全社の4割を超える
- 中国への偏りが薄れたと見て、寿命の上乗せを下げることを考える。
- 配当を減らさずに現金が2年続けて減る
- 現金で配当を払う形が続くと見て、余った現金の額を下げる。
- 経営陣による買い取り(MBO)が発表される
- 分析の対象から外す。買い取りの値段が純現金にどれだけ上乗せするかを見る。
見ておくもの
- 中国向けの売上と前年比
- 販売費と一般管理費の売上に対する比率
- 日本・その他の売上の比率
- 純現金の増減
- 日中関係と中国の化粧品・食品の規制
倍率と資本コストの決め方
中国は化粧品の小売市場(実質)× 取り分、日本・その他は推定の販売個数 × 単価で積んだ。中国の単価の上昇は中国の物価の低さと売値の下げ圧力から 10 年 1.12 倍まで、日本は物価並みにした。k は基本 7.5% に quality +1.5% で 9.0%。中立の事業の ROE は k に届かないので PER の上限 1÷k(11.1 倍)の 7.5 割、余った現金 25 億は戻り方 0.75 で別に足した。今の時価総額が純現金の 2 倍という市場の値付けは使っていない。2026/07 期の短信が facts にまだ無いので、自己資本の起点は短信の 71.3 億にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.3→15.83 倍・やや楽観 PER 11.3→13.97 倍・中立 PER 8.3→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の調整+1.5%を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。