結論
クラスターテクノロジーは大阪府東大阪市の精密部品の会社だ。カメラやプリンター、産業用インクジェットのヘッドに使う微細な樹脂の成形品と金型を作り、受電設備に使う樹脂の成形碍子も手がける。筆者の結論は割高だ。技術は確かだが、売上13億円の小さな会社に、利益の40倍台という値段が付いているからである。
足元は好調だった。2026年3月期の売上は前年より27%増え、営業利益率は12.6%と過去最高になった。ナノ/マイクロと呼ぶ精密部品の売上は、3年で1.5倍に伸びた。ただ会社自身は、2027年3月期を売上横ばい、利益は大きく減るとみている。人を採り、設備を増やす年になるからだ。
10年の中立では、精密部品の数量は3割伸びるとみる。それでも営業利益率は過去の山の手前にとどまり、自己資本の稼ぎは資本コストとほぼ同じになる。手元の現金は厚いが、長く無配だった会社なので、株主に戻る分は割り引いて見る。今の値段は、楽観の筋書きをそのまま映した水準に近い。技術を評価することと、その技術にいくら払うかは別の問いだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、技術のある小さな会社に高い値段を払う時ほど、その技術が10年先も稼ぎを生むかを問う必要がある。
オーナー利益、つまり設備の更新を済ませたあとに株主に残る利益は、2026年3月期で1億円前後だ。精密な金型と成形機の更新には毎年それなりの現金が要り、会社はさらに設備と人を増やす。利益のうち自由に使える分は、見た目より小さい。
堀、つまり他社がまねできない強みは、微細な成形の技術と国内一貫の碍子だ。どちらも本物だが、顧客が少数で、機種の寿命に左右される。顧客が内製や海外に切り替えれば、堀は役に立たない。
今の値段は利益の40倍台で、10年先の楽観の筋書きをすでに映している。手元の現金は厚いが、その使い道を決めるのは経営で、長く株主に戻してこなかった。安全域は見えない。技術を評価するにしても、払う値段が高すぎる。伸びが数字で確かめられ、値段が稼ぐ力に近づくのを待つ方が筋がよい。
何で稼ぐ会社か
事業は二つに分かれる。売上の8割強を占めるのが、ナノ/マイクロ・テクノロジー関連だ。カメラのレンズまわりや、プリンター、産業用インクジェットのヘッド、遊技機などに使う、微細な樹脂の成形品と、その金型を作る。髪の毛ほどの精度で樹脂を形にする技術が売り物で、金型から成形まで社内で一貫して手がける。
2026年3月期は、産業用インクジェットのヘッドとその金型が大きく伸び、遊技機などのレジャー向けも新しい機種で増えた。OA機器は2年の低迷から戻り、カメラは横ばいだった。顧客は大手の機器メーカーで、数は多くない。
もう一つはマクロ・テクノロジー関連で、樹脂の成形碍子とその材料を作る。碍子とは、電気を通さずに電線や機器を支える部品だ。会社は、樹脂の成形碍子を国内で一貫して作れる唯一の会社だと説明する。バブル期に建てた受電設備の更新の需要で、2026年3月期は大きく増えた。
ほかに医薬品の容器の検査の事業が少しある。工場は大阪に持ち、借入はない。従業員は少なく、人の採用がそのまま生産の力を左右する。現金と定期預金は11億円近くあり、自己資本の6割を占める。会社は2025年に名古屋証券取引所に重複上場し、2026年には東証スタンダードに移った。
優良さと弱いところ
技術の堀は細いが本物だ。これが筆者の見立てだ。微細な樹脂の成形は、金型の精度と成形の条件の組み合わせで決まり、まねは簡単ではない。成形碍子を国内で一貫して作れることも、調達先を国内に求める顧客には強みになる。
弱みは顧客の偏りだ。売上の多くを少数の機器メーカーに頼り、その機種の寿命で売上が動く。顧客が部品を内製に切り替えたり、海外の工場に移したりすれば、仕事は一気に消える。2015〜2017年3月期に赤字が続いたのは、その怖さを示している。
資本の効率はまだ低い。自己資本の稼ぎは2026年3月期で7%台と、過去10年では高い方だが、資本コストには届かない。手元の現金が自己資本の6割を占め、それが稼ぎを薄めている。無配の時期が長く、配当を始めたのは2025年3月期からだ。現金を厚く持つのは小さい会社の守りだが、持ちすぎは稼ぎを薄める。技術で稼いだお金をどう使うか、その答えはまだ出ていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
前提は、数量の伸びが緩やかな部品の業界だ。樹脂の部品は電動化や軽量化で使われる場面が広がるが、実質の数量の伸びは年1〜2%にとどまる。顧客の機器メーカーの交渉力が強く、部品の会社が値段を決める力は弱い。
クラスターテクノロジーの市場は、その中のさらに小さな隙間だ。ミラーレスのカメラは世界の出荷が年600万台ほどで、伸びは緩やかだ。プリンターの市場は家庭用が縮み、伸びているのは産業用インクジェットだ。布や包装、電子部品の印刷にインクジェットが広がり、ヘッドの部品の需要も増えている。ここが今の成長の源になっている。
受電設備の碍子は、ビルや工場の電気設備の更新に連動する。バブル期に建てた設備が更新の時期を迎え、需要は底堅い。海外の安い碍子もあるが、国内で一貫して作れる会社は少なく、サプライチェーンの見直しが追い風になる。ただ碍子の市場そのものは大きくなく、伸びには上限がある。
不況では、カメラやプリンターのような機器の部品は2〜3割落ちることがある。機種の入れ替えの時期に仕事を取り損ねれば、景気と関係なく売上が消える。小さい会社ほど、この振れが大きい。逆に、一つの大きな機種を取れば売上が跳ねるのも小さい会社の特徴だ。
資本政策と M&A
配当は2025年3月期に始めたばかりで、2026年3月期は記念の配当を含めて年に0.3億円ほどだ。利益の3割弱にあたる。自社株買いの実績はない。2027年3月期は人の採用と設備の増強に現金を回すとしている。
手元の現金と定期預金は11億円近くあり、借入はない。時価総額の2割近くに当たる。運転資金と成長の投資を見込んでも、6億円ほどは事業に要らないとみる。ただ、無配の時期が長く、還元の方針も弱いので、この現金が株主に戻るのは半分ほどとみる。
買収の当事者になった歴史はない。名古屋証券取引所への重複上場と東証スタンダードへの移行で、上場を保つための課題は片付いたと会社は説明する。時価総額が60億円規模の小さな会社で、技術を目当てに大手の部品会社が関心を持つ余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ナノ/マイクロの売上は3年で1.5倍になった。産業用インクジェットは、布や包装、電子部品の印刷に広がる成長の市場で、ヘッドの微細な部品は精度の高い会社にしか作れない。クラスターテクノロジーは金型から成形まで一貫して作れるので、新しい機種の仕事を取りやすい。
成形碍子も追い風を受けている。バブル期の受電設備が一斉に更新の時期を迎え、しかも国内で一貫して作れるのは自社だけだと会社は言う。地政学のリスクで調達先を国内に戻す動きは、この強みをさらに生かす。
財務は堅い。借入はなく、現金と定期預金は11億円近い。2027年3月期の減益は、人と設備に投じる前向きな費用だ。上場を保つ課題を片付け、会社は成長の投資に軸足を移した。売上が2倍になれば、固定費の重い会社なので利益は大きく伸び、営業利益率は2割を超える。そうなれば今の値段は高くない。
小さい会社は、一つの大きな仕事で姿が変わる。産業用インクジェットの大手から量産の部品を任されれば、売上は数年で倍になりうる。技術を持つ会社が伸びの入り口に立った時、利益の倍率が高く見えるのは当然だ。
慎重な見方
売上13億円の会社に、利益の40倍台の値段が付いている。これは伸びがずっと続く前提の値段だ。会社自身が2027年3月期を売上横ばい、利益は半分以下とみている。足元の勢いは、すでに一服している。
顧客の偏りは重い。仕事の多くを少数の機器メーカーに頼り、機種の寿命で売上が動く。顧客が部品を内製に切り替えたり、海外に移したりすれば、仕事は一気に消える。2015〜2017年3月期に赤字が続いたのは、その怖さの表れだ。カメラもプリンターも、家庭向けの市場は縮んでいる。
資本の使い方にも疑問が残る。長く無配で現金をため込み、配当を始めたのは2025年3月期からだ。自己資本の6割が現金で、それが稼ぎを薄めている。人と設備を増やす投資が実るかは、まだ分からない。人手不足の中で採った人が育つまでには時間もかかる。技術は本物でも、払う値段に見合う稼ぎは見えない。
小さい会社の高い倍率は、伸びが一度でもつまずけば大きく縮む。売上13億円の規模では、一つの機種の失注で利益が消えることもある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。技術と産業用インクジェットの伸びは本物で、上振れの筋書きに1割の重みを残した。成形碍子の追い風も見ている。ただ、少数の顧客に頼る形と、会社自身が見込む2027年3月期の減益は重い。中心は数量が3割伸び、利益率が過去の山の手前にとどまる筋書きで、確率は中立のまわりに厚く置いた。借入が無く現金も厚いので、悲観の重みは1割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 613 円35 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 89 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 337 円19 億円、今との差 −53.1%、 期待の年率 −0.2%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,518 円86 億円 | 158 円9 億円 | +133.2% | +8.8% | 168 円10 億円 |
| やや楽観 | 22% | 957 円54 億円 | 123 円7 億円 | +50.3% | +4.2% | 238 円14 億円 |
| 中立 | 38% | 577 円33 億円 | 88 円5 億円 | −7.6% | −0.8% | 253 円14 億円 |
| やや悲観 | 20% | 123 円7 億円 | 53 円3 億円 | −75.5% | −13.1% | 35 円2 億円 |
| 悲観 | 10% | 70 円4 億円 | 18 円1 億円 | −87.8% | −19.0% | 9 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 613 円35 億円 | 89 円5 億円 | −2.4% | −0.2% | 702 円40 億円 |
今の株価時価総額 719 円41 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 産業用インクジェットの部品で柱が太る 利益 5 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 1,518 円86 億円
産業用インクジェットのヘッドが、印刷や電子部品の製造で使われる場面を広げる。クラスターテクノロジーは微細な樹脂の部品と金型を一貫して作れる強みで、ヘッドのメーカーから新しい機種の仕事を次々に取る。ナノ/マイクロの数量は10年で8割増える。
樹脂の成形碍子も、受電設備の更新と国内での調達を求める流れに乗り、5割増える。値段は物価を少し上回って上がる。人を増やして販管費は膨らむが、売上の伸びがそれを上回り、営業利益率は2割を超える。自己資本の稼ぎは資本コストをはっきり上回る。手元の現金も配当と自社株買いで少しずつ戻り、技術を持つ小さな会社の理想の姿になる。
- ナノ/マイクロ・テクノロジー関連:数量 19.1(成形品・金型の出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 140(1 個あたりの出荷単価(円・名目、金型をならす))→ 売上 27 億円・営業利益 12 億円。数量 1.8 倍 × 単価 1.40 倍、セグメント利益率 45%
- マクロ・テクノロジー関連(樹脂成形碍子・樹脂材料):数量 353(成形碍子・材料の出荷個数(千個・年、推定))× 価格 1.40(1 個あたりの出荷単価(千円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。数量 1.5 倍 × 単価 1.40 倍、セグメント利益率 28%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 16.09 倍、時価総額 84 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ナノ/マイクロの売上は3年で1.5倍になった。この勢いが10年続けば大きいが、顧客は少数で、機種の入れ替えで一気に失う例も多い。確率は1割にとどめた。
やや楽観 22% 新しい顧客を足し、利益率が過去の山を保つ 利益 3 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 957 円54 億円
ナノ/マイクロの数量は10年で5割増える。産業用インクジェットとレジャー向けの新しい機種が、ミラーレスのカメラの横ばいを補う。成形碍子も受電設備の更新の需要で3割半増える。値段は物価並みに上がる。
人の採用と設備の増強で費用は増えるが、売上の伸びがそれを吸収する。営業利益率は2割弱と、2026年3月期の水準を上回る。自己資本の稼ぎは資本コストを上回り、配当も少しずつ増える。それでも少数の顧客に頼る形は変わらず、一つの機種の終わりが利益を揺らす。金型の更新の仕事も増え、技術の評判は広がり、大手の部品会社から提携の声がかかる場面も出てくる。
- ナノ/マイクロ・テクノロジー関連:数量 15.9(成形品・金型の出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 137(1 個あたりの出荷単価(円・名目、金型をならす))→ 売上 22 億円・営業利益 9 億円。数量 1.5 倍 × 単価 1.37 倍、セグメント利益率 43%
- マクロ・テクノロジー関連(樹脂成形碍子・樹脂材料):数量 317(成形碍子・材料の出荷個数(千個・年、推定))× 価格 1.37(1 個あたりの出荷単価(千円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量 1.35 倍 × 単価 1.37 倍、セグメント利益率 27%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 14.9 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画で営業を強め、新しい顧客を開拓している実績がある。ナノ/マイクロの伸びがやや鈍りながら続く道筋に、中立に次ぐ重みを置いた。
中立 38% 小さな精密部品の会社として着実に伸びる 利益 2 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 577 円33 億円
ナノ/マイクロの数量は10年で3割増える。産業用インクジェットの部品は伸びるが、カメラやOA機器の部品は横ばいから少し減る。成形碍子は受電設備の更新の需要で2割増える。値段は物価並みに上がり、売上は名目で22億円ほどになる。
人の採用と設備の増強で販管費は物価以上に増え、営業利益率は12%台と過去の山の手前にとどまる。自己資本の稼ぎは資本コストとほぼ同じになる。配当は利益の3割ほどを保つが、手元の現金は積み上がり続ける。ためた利益は株主の価値をほとんど増やさない。成形碍子は受電設備の更新で安定して稼ぐが、市場が小さく伸びには限りがある。技術はあっても、会社の規模が小さいままでは、稼ぎの絶対額は大きくならない。
- ナノ/マイクロ・テクノロジー関連:数量 13.8(成形品・金型の出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 134(1 個あたりの出荷単価(円・名目、金型をならす))→ 売上 19 億円・営業利益 7 億円。数量 1.3 倍 × 単価 1.34 倍、セグメント利益率 40%
- マクロ・テクノロジー関連(樹脂成形碍子・樹脂材料):数量 282(成形碍子・材料の出荷個数(千個・年、推定))× 価格 1.34(1 個あたりの出荷単価(千円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量 1.2 倍 × 単価 1.34 倍、セグメント利益率 26%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 13.14 倍、時価総額 31 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画は2027年3月期を減益とみるが、新しい顧客の開拓は続いている。数量が3割伸び、利益率は過去の山の手前にとどまる道筋を中心に置いた。
やや悲観 20% 主な顧客の機種が終わり、伸びが止まる 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 123 円7 億円
主な顧客のカメラやプリンターの機種が終わり、次の機種の部品を他社に取られる。ナノ/マイクロの数量は10年で横ばいにとどまり、値段は物価を少し下回ってしか上がらない。成形碍子も伸びない。
増やした人と設備の費用が残り、営業利益はほぼゼロに沈む。配当は細り、手元の現金は増えない。価値は事業の稼ぎでなく、手元の現金と土地のうち株主に戻りそうな分で決まる。現金は厚いが、無配の時期が長かった会社なので、株主に戻る分は半分ほどとみる。2027年3月期に始めた成長の投資は、結果として重荷だけを残す。成形碍子は残るが、会社全体を支えるには小さすぎる。人を減らすにも時間がかかる。
- ナノ/マイクロ・テクノロジー関連:数量 10.6(成形品・金型の出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 130(1 個あたりの出荷単価(円・名目、金型をならす))→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。数量横ばい × 単価 1.30 倍、セグメント利益率 35%
- マクロ・テクノロジー関連(樹脂成形碍子・樹脂材料):数量 235(成形碍子・材料の出荷個数(千個・年、推定))× 価格 1.30(1 個あたりの出荷単価(千円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。数量横ばい × 単価 1.30 倍、セグメント利益率 20%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)が小さく、値は資産の床で付くとみて、今の自己資本 17.5 億円に PBR 0.371 を掛けて床の 6.5 億円に合わせた。
確率:少数の顧客と機種に頼る会社では、一つの機種の終わりが売上を大きく削る。過去に赤字が続いた時期もあり、2割を置いた。
悲観 10% 顧客を失い、赤字に戻る 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 70 円4 億円
主な顧客が部品を海外の工場や自社の内製に切り替え、ナノ/マイクロの数量は10年で4割減る。カメラとOA機器の市場も縮む。成形碍子は海外の安い品に押され、値段は物価に追いつかない。
人と設備の固定費が残り、営業赤字に戻る。配当は止まり、手元の現金は赤字の穴埋めで半分に減る。会社は借金が無いので倒れないが、価値は残る現金と土地のうち株主に戻りそうな分だけになる。2010年代半ばの赤字の時期に戻る筋書きだ。金型の技術を持つ人も他社に移り、強みそのものが細る。技術は残っても、それを稼ぎに変える顧客がいなければ、価値は資産の床まで落ちる。
- ナノ/マイクロ・テクノロジー関連:数量 6.4(成形品・金型の出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 125(1 個あたりの出荷単価(円・名目、金型をならす))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。数量 0.6 倍 × 単価 1.25 倍、セグメント利益率 25%
- マクロ・テクノロジー関連(樹脂成形碍子・樹脂材料):数量 188(成形碍子・材料の出荷個数(千個・年、推定))× 価格 1.25(1 個あたりの出荷単価(千円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量 0.8 倍 × 単価 1.25 倍、セグメント利益率 10%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)が小さく、値は資産の床で付くとみて、今の自己資本 17.5 億円に PBR 0.229 を掛けて床の 4.0 億円に合わせた。
確率:2015〜2017年3月期に赤字が続いた記録がある。主な顧客を同時に失えば、固定費の重さで赤字に戻る。借金が無く現金があるので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ナノ/マイクロ・テクノロジー関連
カメラ・OA 機器・産業用インクジェット・レジャー機器向けの精密な樹脂成形品と金型。
| 数量成形品・金型の出荷個数(百万個・年、推定) | 価格1 個あたりの出荷単価(円・名目、金型をならす) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.6 | 100 | 11 | 5 |
| 10 年後 中立 | 13.8 | 134 | 19 | 7 |
取り方:セグメント売上 10.63 億円(短信)。個数の開示は無いので、精密成形品の平均出荷単価を 1 個 100 とし(金型の売上もならして含める)、年 1,063 万個と推定。利益は販管費を引く前のセグメント利益 4.85 億円(販管費は adjust に置く)。
マクロ・テクノロジー関連(樹脂成形碍子・樹脂材料)
受電設備などに使う樹脂の成形碍子と、その樹脂材料。国内で一貫して作る。
| 数量成形碍子・材料の出荷個数(千個・年、推定) | 価格1 個あたりの出荷単価(千円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 235 | 1.00 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 282 | 1.34 | 4 | 1 |
取り方:セグメント売上 2.25 億円とその他 0.11 億円の合計。碍子と材料をならした出荷単価を 1 個 1 千とし、年 23.5 万個と推定。利益は販管費前のセグメント利益(その他を含む)。
リスクと懸念
少数の顧客と機種への依存
精密部品の売上の多くを、少数の機器メーカーに頼る。機種が終わって次の仕事を取り損ねたり、顧客が内製や海外に切り替えたりすれば、売上は一気に消える。
成長投資の空振り
2027年3月期は人の採用と設備の増強で、利益が半分以下になる見込みだ。新しい顧客の仕事が思うように取れなければ、増えた固定費だけが残り、利益率は下がったまま戻らない。
家庭向け機器の市場の縮み
カメラや家庭用のプリンターの市場は長く縮んできた。産業用インクジェットの伸びで補えているが、その伸びが鈍れば、精密部品の数量は横ばいから減少に転じる。
現金が株主に戻らない
手元の現金と定期預金は11億円近いが、無配の時期が長く、還元の方針は弱い。少数株主は使い道を決められず、成長投資や買収で使い切られる恐れもある。
小さい会社の振れ
売上13億円の会社なので、一つの注文の増減で利益が大きく動く。不況では機器の部品は2〜3割落ちることがあり、2015〜2017年3月期には赤字が続いた。
今後の分かれ目
- 産業用インクジェットの新しい顧客を取り、ナノ/マイクロの売上が12億円を超えたら
- 成長の柱が太ったとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 2027年3月期の減益のあと、2028年3月期に営業利益率が1割台に戻ったら
- 成長投資が実ったとみて、楽観側に重みを移す。
- 主な顧客の機種が終わり、売上が前年比で2割以上減ったら
- 顧客の偏りの怖さが表れたとみて、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 配当性向の引き上げや自社株買いを決めたら
- 余った現金の戻り方を0.75以上に見直す。
- 大手の部品会社が資本提携や買収を持ちかけたら
- 技術に値段が付く場面になる。ただし筋書きの確率は事業の中身で決める。
見ておくもの
- ナノ/マイクロの売上と産業用インクジェット向けの伸び
- 成形碍子の受注
- 人の採用と設備投資のあとの営業利益率
- 配当性向と現金の使い道
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段から置かず、資本コスト8.25%と10年後の自己資本の稼ぎだけで決めた。中立のROE(余った現金を除く)は8%台半ばで資本コストとほぼ同じなので、PERは下限の1÷kに置いた。楽観は正当化PERの85%。余った現金6億円は事業と分け、戻り方0.5を掛けて足した。悲観側は稼ぐ力が小さいので、純現金と土地の床に合わせて今の自己資本にPBRを掛けた。今のPERが40倍台であることは計算のあとに比べただけで、倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.33→16.09 倍・やや楽観 PER 11.76→14.9 倍・中立 PER 11.76→13.14 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。