結論
大成ラミックグループは、スープやたれなどの液体を小袋に詰める包装フィルムと、その充填機を一社で作る会社だ。国内の液体・粘体向けフィルムでは3割超のシェアを持つ。筆者の結論は、10年で見れば今の値段はやや割安というものだ。
稼ぎの核は消耗品のフィルムである。機械を一度入れた客は、その後もフィルムを買い続ける。国内の数量は人口減で伸びないが、値上げを通してきた実績がある。海外は売上の2割にとどまり、米国と東南アジアに伸びしろが残る。
弱みは規模の小ささと、原料樹脂の値動きで利益が振れやすい点だ。2027年3月期は売上が2割近く増える予想なのに、営業利益は減る見通しである。原料高の転嫁が遅れる典型的な姿だ。一方で自己資本比率は74%、純現金は時価総額の3割に及ぶ。資本は自社株買いと配当で株主へ戻してきた。
割安の幅は大きくない。海外の伸びと国内の値上げが想定どおりなら、安全域が残る。顧客が食品大手に偏る点と、プラスチック規制の行方は読み切れない。派手さのない会社を、小さな安全域つきで買えるかどうかが論点になる。
最後に、数字の見方を一つ。今期の予想は売上が増えて利益が減る形だが、第1四半期の営業利益はすでに通期予想の4分の3に達した。期の後半を慎重に見た予想と受け取れる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたいと思わせる点が二つある。一つは消耗品のフィルムが収益の大半を占め、機械が客を囲い込む構造だ。もう一つは資本の使い方が地味で堅いことだ。借金に頼らず、増配と自社株買いを続けてきた。
一方で、堀は広くない。国内の人口は減り、顧客は食品大手に偏り、原料は市況で動く。10年後に今より強いと言い切れる材料は、海外の販売網と環境対応フィルムの二つしかない。経営が掲げる「総合エンジニアリングカンパニー」は方向として正しいが、数字の裏づけはこれからだ。
安全域はある。純現金が時価総額の3割に当たり、事業の利益に高い倍率を払わなくても足元が崩れにくい。ただし、余った現金は株主に戻される前提で数えた。戻らなければ価値は目減りする。
筆者の評価は、中くらいの質の事業を、財務の安全域つきで買える会社というものだ。大きな安値ではなく、小さな安全域を丁寧に積む種類の投資対象である。10年持てば、利益の積み上がりと現金の還元が、静かに価値を押し上げると見ている。
気がかりは、現金の厚さを経営がどう使うかだ。持株会社への移行は、その問いに答える枠組みになる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの仕組みは単純だ。液体を小袋に詰める機械を売り、その袋になるフィルムを巻き取りの形で売り続ける。フィルムは使えば減る消耗品なので、機械を入れた顧客の注文は毎月積み上がる。
製品は大きく二つある。一つは液体・粘体用の包装フィルムで、連結売上の約9割を占める。調味料・スープ・飲料のもと・ゼリーなどの小袋に使う。もう一つは自社ブランドの液体充填機DANGANだ。5mlから500mlの小袋を、毎分400〜500袋の速さで詰める。機械は売上の約1割にとどまるが、フィルムの販路を作る役を担う。
周辺のサービスも手厚い。顧客の現場に合わせた充填の研修制度、包装工程を見える化するIoTの仕組み、フィルムの製造で出る溶剤の回収装置などをそろえる。機械、材料、運用の知見を一括で提供することで、顧客の手間を減らし、乗り換えにくさを作っている。
顧客は食品・飲料メーカーとその委託充填工場が中心だ。国内がおよそ8割で、残りは米国・東南アジア・韓国などの海外である。2025年4月に持株会社制へ移り、販売と機械は大成ラミック、フィルムの開発製造はDANGANフィルム、物流はグリーンパックスが受け持つ。
開示は単一セグメントのため、国内フィルム・海外フィルム・充填機の三つに分けた数字は筆者の推定である。国内は埼玉県白岡市の工場群が拠点で、2026年6月に第2工場を増築し、9月に第3工場を閉鎖した。古い設備から新しい設備へ集約する動きと読める。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、フィルムと機械を同時に提供できる点にある。自社の説明でも「両方を出す唯一のメーカー」とされる。袋の素材、シールの具合、充填の速さは互いに影響し合う。顧客は両方を最適にそろえてもらえるので、フィルムだけを安く売る競合に簡単には乗り換えにくい。
国内で3割超のシェアを持つことも堀の一部だ。中期経営計画の1年目(2025年3月期)は、営業利益が計画の20億円に対し24億円と、2割上回った。価格改定と高付加価値フィルム、原価低減が重なった結果である。ただし原料の樹脂価格が上がる局面では値上げが後追いになり、利益が一時的に細る。値決め力は強いというより、通せるが遅れると見る。
弱い所も多い。連結売上が300億円台と小さく、設備投資や海外展開に使える余力は大手に及ばない。顧客も食品大手に偏る。ZACROSなど大手の軟包装メーカーが小容量に力を入れれば、価格競争に引き込まれるおそれがある。
資本効率は物足りない。ROEは6%で、自己資本の4分の1近くが現金だからだ。過去10年の営業利益率は5%台から10%台まで動き、安定して高いとは言えない。経営は持株会社化でROICを意識した運営に変えると宣言した。この言葉が数字に表れるかが、これからの評価の分かれ目になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
液体の小袋包装は、スーパーの調味料、ラーメンのスープ、外食の業務用ソース、飲料の濃縮もとなど、暮らしのあちこちに使われている。小袋は持ち運びやすく、使い切りで衛生的で、中身の量を細かく決められる。ここ数年は一人暮らしや共働きの増加で、小分け需要が底堅い。
国内の食品の量は人口減で横ばいから緩やかな減少にある。小袋への切り替えが進む余地はあるものの、全体の数量は伸びないと見るのが現実的だ。伸びるのは海外で、とくに米国のアジア系食品や外食、東南アジアの調味料・飲料市場である。大成ラミックは米国とタイに販売の拠点を持ち、2026年9月には海外のマーケティングを束ねる子会社も設立する予定だ。
競合は二層ある。フィルムでは凸版・大日本印刷といった大手の軟包装メーカーと、液体用に強いZACROS(旧藤森工業)がいる。ZACROSは大容量のバッグインボックスが主力で、小容量ではむしろ競い合う立場だ。機械では国内外の充填機メーカーが並ぶが、フィルムまで一体で提供できるところは少ない。
外部環境として、樹脂原料は中東のナフサ供給の混乱で2026年に急騰した。業界全体で値上げが進んでおり、この会社の売上予想が前期比で2割近く増える背景と考えられる。環境面では、石油由来のプラスチックを減らす圧力と、単一素材でリサイクルしやすいフィルムへの切り替えが課題だ。対応できた会社が値上げを通しやすくなる。
物流や人手不足も無視できない。米国では物流の混乱が解消に向かい、顧客の在庫調整が一巡したことで、2025年3月期の海外受注が回復した。顧客の在庫の増減が、フィルムの出荷を一時的に大きく動かす点は、この業界の癖である。
資本政策と M&A
還元は堅実である。配当は「安定的に出す」が方針で、性向は28%、自己資本に対する配当率は1.7%と軽い。それを補うのが自社株買いだ。2025年5月に20万株・5億円を上限に決議し、自己株式は発行済み株式の約14%にのぼる。純現金が58億円から47億円へ減ったのは、還元に回した結果と見てよい。
株主優待も出している。100株を1年以上持つ株主に自社関連商品の詰め合わせ(5千円相当)を贈る。株主数の開示は取れず、原価ベースの年額は0.7億円と推定した。10年分の7億円を還元に足している。
買収では2016年にマレーシアの軟包装会社を取得し、2022年に8割余りを売却した。小さな会社が離れた国で事業を持つ難しさを示す例で、経営は引き際を判断できる。今後は海外を自前の販売網で広げる方針だ。
親会社はなく、タイパックが約8%、取引先持株会が約4%を持つ。TOBの対象になる可能性は否定できないが、筆者は筋書きの確率に直接は入れていない。純現金が厚く、買い手から見れば財布に近い会社である点も、株主には心強い。
中期経営計画は3か年で、国内の収益力、海外の拡大、新事業の三本柱だ。持株会社化により、事業ごとの損益と資本効率を管理する体制へ移った。資本の使い方が数字に出るまで、数年はかかる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は小さいがゆえに、伸びしろが大きい。国内の3割超というシェアは、機械を入れた顧客が長くフィルムを買う仕組みの結果で、簡単には崩れない。海外はまだ売上の2割にとどまり、米国の在庫調整が一巡した2025年3月期には、海外が計画を2割近く上回った。米国とタイの拠点、新設の海外統括会社で、販売の伸びを加速できる。
環境対応のフィルムは追い風だ。単一素材で回収しやすい袋に切り替えたい食品大手は、フィルムと機械の最適化を同時に頼める大成ラミックに声をかける。付加価値が上がれば、原料高を超えて値上げを通せる。充填機の新機種が売れれば、その後のフィルム需要が連鎖して積み上がる。包装工程を見える化するIoTの仕組みも、顧客の離れにくさを一段と高める。
2027年3月期はすでに予想を上方修正した。第1四半期の営業利益は前年の2倍強で、価格改定と原価低減が効いている。通期の営業利益予想の4分の3を第1四半期で稼いでおり、会社の予想は保守的に見える。持株会社化でROIC重視の経営に変わり、第3工場の閉鎖で設備を集約する。利益率が改善し、純現金は還元に回る。10年後に営業利益率が1割近くになる姿は、無理のない延長線上にある。
慎重な見方
国内の需要は人口とともに細る。小袋の量は伸びず、シェア3割超の国内市場で拡大の余地は乏しい。海外では、売上の2割という規模で大きな顧客を押さえるには、現地の大手との競争に勝たなくてはならない。マレーシアの子会社を手放した経緯は、遠い国での事業の難しさを物語る。
利益も安定しない。原料の樹脂は2026年に急騰し、値上げが遅れる局面では利益が削られる。今期の営業利益予想は前期比で2割近く減る。第1四半期が好調でも、通期の予想が低いままなのは、後半の失速を会社自身が見込んでいるからではないか。駆け込みの出荷が前倒しされただけなら、反動が来る。
さらに、プラスチック規制や紙・生分解素材への切り替えは、石油由来フィルムの会社にとって構造的な逆風だ。顧客は食品の大手で、価格交渉力が強い。機械が売れても、フィルムを他社へ切り替えられれば客を失う。ROEは6%で資本コストを下回る。現金が厚いのは事業に投じる先が乏しいことの裏返しでもあり、株主に戻る保証はない。過去10年の営業利益率は10%を超えたのが一度だけで、中立でも1割には届かない。
海外の統括子会社を新設しても、最初の数年は費用が先に出る。
どちらに重みを置いたか
国内の数量は伸びず、原料高の転嫁は遅れる。ここは慎重な見方が正しい。一方で、価格改定を通してきた実績と、海外が計画を超えた実績は、強気の根拠として具体的だ。
中立は両者の落としどころとして、国内は数量を少し減らして値上げで補い、海外は数量を5割増とした。確率は、規模の小ささと規制リスクを重く見て、悲観の側にやや厚く置いた。上振れは環境対応フィルムが値上げを支える場合に限り、営業利益率は過去の山の1割を超えない範囲にとどめた。純現金は、戻している実績があるので帳簿の額どおり数えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,251 円319 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,491 円90 億円)。 今の値に割り戻すと 3,447 円209 億円、今との差 +33.3%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,878 円539 億円 | 2,087 円127 億円 | +324.0% | +15.5% | 1,096 円67 億円 |
| やや楽観 | 23% | 6,823 円414 億円 | 1,759 円107 億円 | +231.9% | +12.7% | 1,974 円120 億円 |
| 中立 | 38% | 5,730 円348 億円 | 1,540 円94 億円 | +181.1% | +10.9% | 2,763 円168 億円 |
| やや悲観 | 21% | 2,496 円152 億円 | 1,117 円68 億円 | +39.7% | +3.4% | 759 円46 億円 |
| 悲観 | 8% | 1,153 円70 億円 | 720 円44 億円 | −27.6% | −3.2% | 150 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,251 円319 億円 | 1,491 円90 億円 | +160.7% | +10.1% | 6,742 円409 億円 |
今の株価時価総額 2,586 円157 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 海外と環境フィルムが伸びる 利益 38 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 8,878 円539 億円
海外が主役になる。米国とタイの販売網に加え、新設の海外統括会社が各地の客を細かく押さえ、海外フィルムと充填機の数量が10年で倍近くになる。充填機の新機種が売れ、その後のフィルム需要が連鎖して積み上がる。
国内は人口減で数量こそ横ばいだが、単一素材の環境対応フィルムが食品大手に採用され、値上げが原料高を超えて通る。包装工程を見える化するIoTの仕組みも、客の離れにくさを高める。
持株会社化でROICを意識した経営が定着し、第3工場の閉鎖など設備の集約が利益率を押し上げる。営業利益率は過去の山に近い1割弱まで上がる。純現金は自社株買いと増配で戻り、ROEは資本コストを上回る。ここまで揃うのは、うまくいった10年である。
鍵を握るのは顧客の乗り換えにくさだ。機械、フィルム、研修、IoTを束ねて提供する形が、競合の値下げ攻勢を跳ね返す。
- 国内フィルム:数量 34.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 98(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 337 億円・営業利益 29 億円。環境フィルムで値上げが通る
- 海外フィルム:数量 13.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 98(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 134 億円・営業利益 19 億円。米国・東南アジアで数量が倍に
- 充填機(DANGAN):数量 382(販売台数(台、保守・部品を台数換算した概算))× 価格 2,100(1台あたり単価(万円、概算))→ 売上 80 億円・営業利益 12 億円。新機種が売れる
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 13.76 倍、時価総額 539 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国・東南アジアの拡大と環境対応フィルムの付加価値が同時に実現する筋書きで、条件が重なるため1割にとどめた。
やや楽観 23% 海外が伸び国内は値上げで補う 利益 31 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 6,823 円414 億円
海外の販売網が育ち、海外フィルムの数量が7割強増える。米国の在庫調整のような一時的な波はあっても、10年の傾向は右肩上がりである。充填機も新機種の拡販で1〜2割台の増加を保つ。
国内は数量が横ばいに近く、値上げで売上を支える。環境対応フィルムの採用が少しずつ進み、価格は物価をわずかに上回る。ただし食品大手の価格交渉力は強く、大きな上乗せは取れない。
営業利益率は9%弱まで上がるが、過去の山を超えない。持株会社化の効果は部分的にとどまる。還元は堅く続き、ROEは資本コストをわずかに上回る。強気の見方が実現するが、突き抜けはしない筋書きである。
原料高の局面でも値上げが遅れずに通り、利益の波が小さくなる。この点が中立との違いである。
- 国内フィルム:数量 33.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 96(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 320 億円・営業利益 24 億円。値上げが物価をわずかに上回る
- 海外フィルム:数量 11.9(出荷量(千トン、推定))× 価格 98(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 117 億円・営業利益 15 億円。海外が7割増
- 充填機(DANGAN):数量 347(販売台数(台、保守・部品を台数換算した概算))× 価格 2,055(1台あたり単価(万円、概算))→ 売上 71 億円・営業利益 10 億円。新機種で堅調
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.74 倍、時価総額 414 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の拡大が順調で、国内の値上げも通る筋書き。過去に計画を超えた実績はあるが、規制や原料の波もあるため2割強とした。
中立 38% 国内は値上げで維持し海外が伸びる 利益 26 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,730 円348 億円
国内のフィルムは、人口減で数量が緩やかに2%ほど減るが、値上げが物価並みに通って売上は3割増える。環境対応フィルムは少しずつ広がるが、採用は限定的で、価格を物価より上げるほどの力はない。
海外フィルムは、米国と東南アジアで数量が10年で5割増える。売上の比率は2割から2割強へ上がる。充填機は新機種と東南アジアの設備投資で1割台半ばの増加となる。
本社費などの調整は物価並みに増える。工場は新しい設備で償却が少しずつ増えるが、既存の設備は取得時の値段のままなので、利益率は小幅に改善する。営業利益率は7.8%と過去の山より低い。還元は性向4割強で続き、自己資本は緩やかに増える。ROEは資本コストにわずかに届かない。
海外統括会社の費用が先行して出るが、10年で見れば吸収できる範囲にとどまる。
- 国内フィルム:数量 32.7(出荷量(千トン、推定))× 価格 94(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 307 億円・営業利益 22 億円。数量2%減・価格は物価並み
- 海外フィルム:数量 10.2(出荷量(千トン、推定))× 価格 98(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 101 億円・営業利益 12 億円。海外は数量5割増
- 充填機(DANGAN):数量 314(販売台数(台、保守・部品を台数換算した概算))× 価格 2,010(1台あたり単価(万円、概算))→ 売上 63 億円・営業利益 8 億円。1割台半ばの増加
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 342 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の数量は横ばい、値上げは物価並み、海外は米国・東南アジアで年4%前後の数量成長。これまでの実績に近い、最も普通の姿として4割弱を置いた。
やや悲観 21% 原料高の転嫁が遅れ利益が伸びない 利益 16 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 2,496 円152 億円
国内では原料高の転嫁が遅れ、顧客からの値下げ要求も強まる。価格は物価に追いつかず、10年で3割弱の上昇にとどまる。数量は人口減とプラスチック規制の影響で、1割弱減る。
海外は伸びるものの、現地の大手との競争で価格が崩れ、数量の増加は2割台半ばにとどまる。充填機は横ばいである。環境対応への設備投資は先に出て、回収が遅れる。
営業利益率は5%台半ばまで下がり、利益は今の水準から伸びない。還元は性向を下げて続けるが、自社株買いは細る。資本効率は資本コストを大きく下回り、現金の厚さだけが安心材料になる。事業の稼ぐ力が弱まる10年である。
2027年3月期のように、売上が増えて利益が減る年が何度か繰り返される。
- 国内フィルム:数量 30.7(出荷量(千トン、推定))× 価格 90(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 275 億円・営業利益 15 億円。値上げが遅れ数量も1割弱減る
- 海外フィルム:数量 8.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 96(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 81 億円・営業利益 7 億円。競争で価格が崩れる
- 充填機(DANGAN):数量 273(販売台数(台、保守・部品を台数換算した概算))× 価格 1,950(1台あたり単価(万円、概算))→ 売上 53 億円・営業利益 5 億円。横ばい
倍率:ROE 4.5%は資本コスト 8% を大きく下回る。式の正当化 PER は 9.2 倍で、構造的に弱い筋書きなので、やや悲観は 7.4 倍に置いた。余った現金は谷で食うとして 0.75 倍で数えた。
確率:原料高が長引き値上げが遅れる、大口顧客の値下げ要求が強まる、規制対応の費用がかさむ、といった複数の悪化が重なる筋書き。小規模な会社の現実的な悪化として2割強を置いた。
悲観 8% 大口顧客を失い構造的に縮む 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,153 円70 億円
大口の食品顧客が海外の安価なフィルムや紙・生分解素材へ切り替え、国内の数量が2割近く減る。値上げは通らず、価格は物価の半分ほどしか上がらない。
海外は現地の競合に押され、数量は伸びない。充填機は新機種が売れず、3割ほど減る。固定費の重い工場と本社費は縮められず、稼働率が下がって営業利益率は3%台に落ちる。
もう優良な会社ではなくなっている。経営は持株会社化の成果を出せず、現金は事業に消えていく。清算されない限り、少数株主に現金の使い道を決める力はない。それでも、純現金と設備の売却価値が下値を支える。
配当と優待は縮小され、自社株買いは止まる。人員と設備の整理にも費用がかかる。
- 国内フィルム:数量 27.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 84(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 230 億円・営業利益 7 億円。大口離れで数量2割減
- 海外フィルム:数量 6.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 88(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 54 億円・営業利益 3 億円。競争で伸びない
- 充填機(DANGAN):数量 191(販売台数(台、保守・部品を台数換算した概算))× 価格 1,800(1台あたり単価(万円、概算))→ 売上 34 億円・営業利益 2 億円。新機種不振で3割減
倍率:事業の稼ぐ力は小さく(純利益は 10 億円に届かない)、帳簿の自己資本でなく純現金と売れる資産で測る。今の自己資本 260 億円に 0.27 倍を掛けた 70 億円。
確率:大口顧客の切り替えとプラスチック規制の強化が重なり、フィルム需要が構造的に縮む筋書き。小規模ゆえにありうるとして8%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内フィルム
液体・粘体の小袋に使う包装フィルム(国内向け)。シェアは3割超とされる。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.4 | 70 | 234 | 16 |
| 10 年後 中立 | 32.7 | 94 | 307 | 22 |
取り方:開示は単一セグメント。フィルム売上283.8億円から海外分約50億円を除いた国内分約234億円を、1トンあたり約70万円の単価で割って出荷量を推定した。利益の配分も推定。
海外フィルム
米国・東南アジア・韓国向けの液体包装フィルム。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.8 | 74 | 50 | 7 |
| 10 年後 中立 | 10.2 | 98 | 101 | 12 |
取り方:2025年3月期の海外売上61億円(フィルムと機械の合計)から機械分を除き、2026年3月期のフィルム分を約50億円と推定した。海外は国内よりやや高い単価と置いた。
充填機(DANGAN)
5mlから500mlの小袋を毎分400〜500袋で詰める液体充填機と、その保守・部品。
| 数量販売台数(台、保守・部品を台数換算した概算) | 価格1台あたり単価(万円、概算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 273 | 1,500 | 41 | 6 |
| 10 年後 中立 | 314 | 2,010 | 63 | 8 |
取り方:充填機売上41.0億円(有報の記述)を、1台あたり約1,500万円(保守・部品を含む概算)で割って推定した。
リスクと懸念
原料樹脂の高騰と値上げの遅れ
フィルムの主原料はポリエチレンなどの樹脂で、ナフサ価格に連動する。値上げは顧客との交渉で時間差が生じ、急騰の局面では利益が削られる。2027年3月期の営業利益予想が前期より減るのも、この影響を織り込んだ形に見える。
国内数量の頭打ち
人口減で食品の量そのものが伸びない。小袋への切り替えが進んでも、全体の数量は横ばいから微減が基本線だ。国内の利益はほぼ値上げの上手さで決まり、客の離脱が一つあるだけで数量が目に見えて減る規模である。
食品大手への顧客偏り
顧客は調味料・飲料の大手が中心で、価格や仕様の交渉力は相手が上だ。大口の1社が仕入れを分けたり、競合に切り替えたりすると、売上と稼働率が同時に落ちる。上位顧客の比率は開示から読み取れず、確認できない点も不安材料である。
プラスチック規制と素材の置き換え
石油由来フィルムを減らす圧力は強まる一方だ。単一素材化や紙・バイオ素材への移行が進めば、既存フィルムの需要が置き換わる。対応した環境フィルムは付加価値を生むが、開発費と設備投資が先に出る。
海外展開の実行力
海外の売上は2割で、米国とタイを中心に拡大する方針だ。マレーシア子会社を8割売却した過去もある。販売網の整備が遅れれば、投資だけが先行する。為替が円高に振れれば、円換算の数字が目減りする点にも注意が要る。
小規模ゆえの設備と人材の制約
連結売上は300億円台で、設備更新や研究開発に使える資金は限られる。工場の増築と閉鎖が並行しており、集約が計画どおり進まなければ、品質や供給にひずみが出る。建築費と設備費の上昇は更新の資金を押し上げる。
現金が株主に戻らない可能性
純現金は時価総額の3割に及ぶ。経営が買収や設備に使えば、帳簿の額ほどの価値は株主に届かない。過去は自社株買いで戻してきたが、方針が変わらない保証はない。
今後の分かれ目
- 国内の液体包装フィルムで値上げが原料高を上回って通る
- 利益率は今より高い水準に定着し、中立より上の筋書きの確率が上がる。国内の数量が横ばいでも、価格で成長を補える。
- 米国・東南アジアの売上が計画を超えて伸びる
- 海外フィルムと充填機の数量が膨らみ、全社の利益率が上がる。総合の評価は強気の側へ寄る。
- 原料の樹脂価格が高止まりし、値上げが遅れる
- 営業利益率は5%台に張りつき、やや悲観の筋書きに近づく。還元も縮み、現金の戻り方への疑いが強まる。
- 環境規制で単一素材フィルムへの切り替えが加速する
- 対応製品を持つ会社に有利で、付加価値が上がる。対応が遅れると既存の客を失い、悲観の側に傾く。
- 経営が現金を使った大型買収を発表する
- 余った現金の戻り方が下がる。買収が本業に近く、安く買えるなら価値は保たれる。離れた事業なら価値を壊す。
- 大口顧客が他社へ切り替える
- 国内の数量が目に見えて減り、固定費が重くなる。稼働率の低下が利益率に直結する。
見ておくもの
- 国内フィルムの価格改定の幅と原料価格の差
- 海外売上比率(現在2割)と米国・タイの伸び
- 充填機の販売台数と新機種の受注
- 環境対応フィルムの採用と単一素材化の進み具合
- 自社株買いの継続と純現金の推移
- 上位顧客の比率の開示
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。正当化PERは資本コスト8%と成長4%、ROEから求め、中立は上限の8.5割に置いた。今の株価やPERは見ていない。ROEが資本コストを下回る筋書きでは、1÷kを上限とする検査に従った。悲観の床は過去のPBRではなく、純現金と売れる資産の見立てから置いた。純現金は余った分だけを別に数え、戻り方1.0で足した。結果は割安の側に出たが、差は2割台にとどまる。今の株価に寄せたのではなく、純現金の厚さと名目成長が効いた結果である。会計基準の形は、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.01→13.76 倍・やや楽観 PER 11.45→12.74 倍・中立 PER 10.18→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足して 7.75%。事業が傾いている様子はなく extra は 0。海外展開の失敗や規制はk に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.00%。