結論
サンケイ化学は、鹿児島市に本社を置く農薬の専業メーカーだ。殺虫剤を中心に、全農を通じて農協と農家に売る。筆者の結論は、今の値段はやや割高だというものだ。財務は堅く、利益も安定しているが、その稼ぎは資本コストの半分ほどにとどまる。
稼ぎ頭は殺虫剤で、売上の半分を占める。南九州と沖縄のさつまいも、さとうきび、野菜の害虫に効く剤で、地元の農家に長く使われてきた。農薬は国の登録がないと売れず、新しい会社が簡単には入れない。それがこの会社の守りだ。
弱みは、国内の農家の減少と、利益率の低さだ。過去12年の営業利益率は最良でも5.6%で、多くの年は1〜3%だった。農家が減れば、農薬の量も細る。
還元も細い。配当は利益の1割半ほどで、利益の大半は会社に残る。上位の株主で7割を持ち、住友化学や財団が大株主に並ぶ。筆者は、ためた利益が少数株主に戻る道は細いと見る。堅い会社だが、今の値段に安全域は見えない。株価が自己資本の半分ほどなのは、この稼ぐ力の薄さと還元の細さを映していると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「わかりやすく、堅いが、株主には薄い」事業だ。農薬は農家にとって欠かせない資材で、10年後も使われている。登録という参入の壁もある。事業の寿命は長いと筆者は見る。
だが、稼ぐ力は弱い。売上64億円に対して営業利益は2億円弱で、自己資本利益率は資本コストの半分ほどだ。成分を大手から買う中堅は、値段を決める力を大手と全農に握られている。
筆者がいちばん気にしているのは、資本の使い方だ。利益の大半を会社に残し、配当は1割半ほどしか出さない。ためた利益が資本コストを下回る稼ぎしか生まないなら、その利益は株主にとって額面未満の値打ちになる。
上位の株主で7割を持つ会社では、少数株主が還元を求める力も弱い。堅い会社であることは確かだが、払う値段に安全域があるとは言いにくい。
何で稼ぐ会社か
事業は農薬の製造販売と、農薬に関わる防除の事業だ。製品の区分では、殺虫剤が34億円で最も大きい。殺菌剤が7億円、殺虫と殺菌を兼ねた剤が4億円、除草剤が6億円、その他の農薬が7億円で、農薬の合計は58億円になる。農薬以外の売上は6億円だ。
売り先は全農が28%を占める。全農から県の経済連と農協を通じて、農家に届く。農薬の流通では農協の網が太く、この網に乗ることが売上の土台になる。
工場は鹿児島と埼玉の深谷の2つで、粒や粉の剤を作る。農薬の有効成分は大手から買い、自社で農家が使いやすい形に仕立てる。大株主の住友化学とクミアイ化学工業は、成分の調達でもつながりがある。
子会社には、緑地や防除の仕事をする富士グリーンとサンケイグリーンがあり、沖縄の琉球産経を持分法で持つ。利益の形は単純で、量と値段、成分の仕入れ値の3つで決まる。営業利益は2億円弱だが、受取配当や関係会社の利益で経常利益は3億円近くになる。
害虫の多い年は殺虫剤がよく売れ、少ない年は在庫が残る。天候と作付けで売上は毎年少し振れるが、大きく崩れることは少ない。売上はこの12年、60〜72億円の幅に収まってきた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、狭いが確かにあると筆者は見る。農薬は国の登録がないと売れない。登録には試験と年数が要り、地元の作物と害虫に合わせた剤の登録は、新しい会社が簡単にそろえられない。南の産地の農家が長く使う剤は、指名で買われる。
ただ、その堀は浅い。有効成分の多くは大手から買うもので、自社で新しい成分を生み出す力は乏しい。特許の切れた成分の安い剤が出れば、値段で押される。値段を決める力は、全農と大手の農薬会社の側にある。
資本の効率は低い。過去10年の自己資本利益率の中央値は5%弱で、資本コストに届かない。利益の多くを配当に回さず会社に残すので、自己資本は積み上がるが、その稼ぎは薄い。
良い点は財務の堅さだ。純有利子負債はほぼゼロで、自己資本比率は41%ある。2025年11月期には長期の借入を7億円返した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の農薬の市場は、出荷の額で年3,000億円台の成熟した市場だ。農家の高齢化と農地の減少で、量は長く緩やかに減ってきた。一方で、農業法人の大型化やドローンでまく剤の普及で、1ヘクタールあたりの使い方は変わりつつある。
競争の形は、新しい成分を生み出す大手と、成分を買って剤に仕立てる中堅に分かれる。住友化学、クミアイ化学工業、日本農薬、日産化学のような大手は、海外にも売り、新しい剤で値段を保つ。北興化学工業やOATアグリオのような中堅は、国内の流通と剤の工夫で戦う。サンケイ化学は、その中でも小さく、南の産地に強い地方の専業だ。
気候の変化は追い風にも向かい風にもなる。暖かい地域の害虫が北へ広がれば、殺虫剤の出番は増える。逆に、大雨や干ばつで作付けが減れば、農薬の量も減る。
10年の業界の見通しは、国内の量が1割ほど減り、値段は物価並みに上がる形だ。食料の安全保障を重く見る政策は下支えになるが、農家の数の減りを止めるほどではない。中堅が生き残る道は、地元の作物に合わせた剤を磨くことと、大手との取引を深めることだ。
資本政策と M&A
配当は年1回が基本で、2025年11月期は総額0.27億円を出した。純利益の1割半ほどにすぎない。自社株買いの開示は見当たらない。自己株は発行済みの株の12%ある。
大株主は、名前の開示の無い個人が24%、住友化学が13%、サンケイ科学振興財団が13%、クミアイ化学工業が6%、鹿児島銀行が5%で、上位10の株主で7割を持つ。市場に出回る株は少ない。
会社は持ち合いの株として、クミアイ化学工業、住友化学、九州フィナンシャルグループの株を3.7億円持つ。受取配当は利益に入っている。大手の農薬会社が、取引の深い中堅を取り込む再編はありうるが、会社は何も示していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
農薬は登録で守られた商売だ。地元の作物と害虫に合わせた剤の登録は、新しい会社が簡単にそろえられない。南九州と沖縄のさつまいもやさとうきびの害虫に効く剤は、農家が長く指名で使う。需要は景気にほとんど左右されない。
利益も戻ってきた。2023年11月期の営業赤字から、2025年11月期には営業利益1.8億円まで回復し、会社は今期と来期も増益を見込む。2021年には営業利益率5.6%を出した実績もある。
財務は堅い。純有利子負債はほぼゼロで、借入を返し続けている。住友化学とクミアイ化学工業が大株主にいて、成分の調達でも安定している。
気候の変化で暖かい地域の害虫が北へ広がれば、南の産地の殺虫剤に強いこの会社の出番は増える。時価総額は自己資本の半分ほどで、資産の裏づけは厚い。
大株主の住友化学やクミアイ化学工業にとって、地方の流通に強い中堅は手放しにくい取引先だ。取引の深い大手が取り込みに動けば、少数株主にも報いる値段が付きうる。
慎重な見方
利益率の天井は低い。過去12年の営業利益率は最良でも5.6%で、多くの年は1〜3%、2023年は赤字だった。会社予想の増益も、2021年の山を超える水準ではない。有効成分を大手から買って剤に仕立てる中堅に、値段を決める力はない。
国内の農家は減り続ける。農地も細り、農薬の量は長く減ってきた。南の産地のさつまいもも、病気の流行や作付けの減少に揺れている。量が減れば、2つの工場の固定費が重くなる。
資本の使い方にも不安がある。配当は利益の1割半ほどで、利益の大半を会社に残す。ためた利益が資本コストを下回る稼ぎしか生まないなら、株主の価値は増えない。上位の株主で7割を持ち、少数株主が還元を求める力も弱い。
資産の裏づけも、少数株主には届かない。自己資本の帳簿は、資本コストに届かない稼ぎでは床にならない。
大手との取引の深さも、裏を返せば依存だ。成分の仕入れ値を決めるのは大手で、剤の値上げが遅れれば利益が削られる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方がやや強い。農薬の登録の壁と財務の堅さは本物で、事業が消える心配は小さい。だが、稼ぐ力は資本コストの半分ほどで、利益の大半を会社に残す還元の細さが株主の取り分を削る。中立は今の利益率を保つ形に置き、確率は中立を厚く、悲観の側をやや厚めにした。悲観の深さは、財務の堅さを見て同業より浅く置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 3,296 円30 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 368 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 1,632 円15 億円、今との差 −8.7%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,822 円52 億円 | 647 円6 億円 | +262.0% | +13.7% | 453 円4 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,561 円41 億円 | 502 円5 億円 | +183.4% | +11.0% | 1,013 円9 億円 |
| 中立 | 38% | 3,785 円34 億円 | 368 円3 億円 | +132.4% | +8.8% | 1,578 円14 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,953 円18 億円 | 301 円3 億円 | +26.1% | +2.3% | 518 円5 億円 |
| 悲観 | 12% | 737 円7 億円 | 112 円1 億円 | −52.5% | −7.2% | 102 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,296 円30 億円 | 368 円3 億円 | +105.0% | +7.4% | 3,664 円33 億円 |
今の株価時価総額 1,787 円16 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 南の産地で強い殺虫剤が値上げを通し、利益率5%台に乗る 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 5,822 円52 億円
10年後、サンケイ化学は南九州と沖縄の畑で欠かせない農薬の会社になっている。さつまいもやさとうきび、野菜の害虫に効く殺虫剤で、地元の農協と農家の信頼を保つ。暖かい地域の害虫は気候の変化で北へ広がり、九州の外でも量が伸びる。
農家の数は減るが、大きな農業法人が増え、農薬の量は今の水準を保つ。値上げは物価より少し強く通り、営業利益率は5%台半ばに乗る。2021年に一度届いた水準を、毎年続けられる形だ。
住友化学やクミアイ化学工業との取引で、新しい有効成分の剤を自社の製品に仕立てる。配当は利益の2割ほどに増える。それでも自己資本利益率は資本コストに届かず、ためた利益の多くは会社に残る。
- 農薬:数量 5,276(推定出荷量(トン))× 価格 154(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 81 億円・営業利益 4 億円。量を保ち値上げが通る
- 農薬以外・防除:数量 3,846(推定出荷量(トン換算))× 価格 28(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。防除の請負が伸びる
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 44 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の最良の営業利益率5.6%(2021年)を10年続ける筋書き。一度は届いた水準だが、続いた記録はなく確率は小さい。
やや楽観 20% 利益率4%前後で安定し、配当を少しずつ増やす 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,561 円41 億円
10年後、サンケイ化学は安定した中堅の農薬会社だ。農家の数は減り、農薬の量は5%ほど減るが、値上げは物価より少し強く通る。主力の殺虫剤は南の産地で使われ続け、全農を通じた販売の網も崩れない。
営業利益率は4%前後で、過去12年の最良と平均の間だ。古い工場の償却は物価で増えず、その分だけ利益率が上向く。手元の現金は2%で回り、借入の金利の上昇をほぼ打ち消す。
配当は少しずつ増えるが、利益の大半は会社に残る。自己資本利益率は6%弱で、資本コストに届かない。大株主の住友化学とクミアイ化学工業との関係は、取引の安定には効くが、還元を厚くする力にはならない。
- 農薬:数量 5,012(推定出荷量(トン))× 価格 151(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。量は少し減る
- 農薬以外・防除:数量 3,526(推定出荷量(トン換算))× 価格 27(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。少し伸びる
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 33 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の利益率の回復(2.8%)と過去の山(5.6%)の間。農薬の需要の底堅さを見て2割。
中立 38% 農家の減少に合わせて量が細り、薄い利益を積む 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,785 円34 億円
10年後、サンケイ化学は小さな利益を積み続ける地方の農薬会社だ。農家の高齢化と農地の減少で、農薬の量は1割強減る。値段は物価並みに上がり、売上は77億円ほどになる。
営業利益率は3%で、直近の水準を保つ。古い工場の償却は物価で増えず、利益率を少し支える。一方で、ジェネリック、つまり特許の切れた成分の安い農薬との競争が続き、値上げの余地は限られる。受取配当や関係会社の利益が営業外で1億円ほど足される。
配当は少しずつ増えるが、利益の大半は会社に残る。自己資本は50億円ほどに積み上がる。自己資本利益率は4%台で、資本コストの半分ほどにとどまる。
- 農薬:数量 4,643(推定出荷量(トン))× 価格 147(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 68 億円・営業利益 2 億円。農家の減少
- 農薬以外・防除:数量 3,205(推定出荷量(トン換算))× 価格 27(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の農地と農家の減少と、直近の利益率の回復の中ほど。利益率は過去12年の最良の半分ほど。
やや悲観 23% 安い農薬に押され、利益がほとんど消える 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,953 円18 億円
10年後、サンケイ化学は利益がほとんど出ない会社になっている。農家の減少が速く、農薬の量は4分の1減る。特許の切れた成分の安い農薬や、ドローンでまく新しい剤に押され、値上げは物価に届かない。
営業利益率は1%に落ちる。受取配当と関係会社の利益が、かろうじて純利益を黒字に保つ。配当は今の水準のまま据え置かれ、利益の多くは会社に残るが、その稼ぎは資本コストを大きく下回る。
帳簿の自己資本は積み上がっても、少数の株主がそれを動かすことはできない。上位の株主で7割を持つ会社では、還元の方針が変わる見込みも薄い。
- 農薬:数量 3,957(推定出荷量(トン))× 価格 141(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 56 億円・営業利益 1 億円。安い剤に押される
- 農薬以外・防除:数量 2,884(推定出荷量(トン換算))× 価格 26(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。量が細る
倍率:利益がほぼ無く、稼ぐ力(0.9億÷k)は約11億円。今の自己資本33億円に0.287倍で、それを下回る。ためた利益には掛けていない。
確率:2023年に営業赤字に落ちた記録と、農家の減少の速さから可能性はそれなりにある。
悲観 12% 国内の農薬の量が細り、赤字の会社になる 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 737 円7 億円
10年後、サンケイ化学は構造的に負けている。主力の産地のさつまいもやさとうきびの作付けが細り、農薬の量は4割減る。大手が安い剤で地方の市場にも入り込み、値上げは通らない。
営業赤字が続き、工場の減損で自己資本は削られる。鹿児島と深谷の2つの工場を1つに絞る話も出る。持ち合いの株を売っても、赤字と設備の整理に消える。大手の取引先が成分の供給を絞れば、主力の剤も作れなくなる。
少数の株主には資産の使い道を決める力がない。帳簿の自己資本は床にならず、価値は売れる資産の一部だけになる。財務が堅いので倒れはしないが、株主に戻るものは細い。
- 農薬:数量 3,166(推定出荷量(トン))× 価格 132(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 42 億円・営業利益 −1 億円。作付けが細る
- 農薬以外・防除:数量 2,564(推定出荷量(トン換算))× 価格 24(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。赤字
倍率:赤字でPERは使えない。今の自己資本33億円に0.2倍。床の資産6.6億円(floor_assets)に合わせた。
確率:主力の産地の作付けが大きく減る構造的な負け。純負債がほぼ無く財務は堅いので、確率は1割強にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
農薬
殺虫剤を中心に、殺菌剤・除草剤などを鹿児島と深谷の工場で作り、全農・農協を通じて売る。
| 数量推定出荷量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 5,276 | 110 | 58 | 2 |
| 10 年後 中立 | 4,643 | 147 | 68 | 2 |
取り方:製品区分の売上(有報)の殺虫剤33.69・殺菌剤7.11・殺虫殺菌剤4.36・除草剤5.79・その他7.08億円の合計58.03億円。数量は開示が無く、粒剤・粉剤が多いので平均の卸値を1トン110万円と置いて約5,300トンと推定した。利益は単一の開示で、全社の営業利益1.80億円を売上の割合で割り振った推定。中立の数量は農家と農地の減少から10年0.88倍、価格は物価並み1.34倍。
農薬以外・防除
農薬以外の資材と、子会社の緑地・防除の仕事。
| 数量推定出荷量(トン換算) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 3,205 | 20 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3,205 | 27 | 9 | 0 |
取り方:農薬以外の売上6.41億円(有報)。資材と請負が混ざるので、1トン20万円の資材に換算して約3,200トンと置いた推定。利益は割り振りの推定。中立の数量は横ばい、価格は物価並み。
リスクと懸念
国内の農家と農地の減少
農家の高齢化と農地の減少で、農薬の量は長く減ってきた。主力の南の産地の作付けが細れば、殺虫剤の量も減る。2つの工場の固定費は、量が減っても下がりにくい。
安い剤と大手との競争
特許の切れた成分の安い農薬が出れば、値段で押される。新しい成分を持つ大手が地方の市場に力を入れれば、中堅の棚は細る。有効成分を大手から買う形では、値段を決める力も弱い。
全農への依存
売上の28%を全農が占める。農協の流通の網に乗ることは強みだが、取引の条件を決めるのは全農の側だ。流通の仕組みが変われば、販売の土台が揺らぐ。
天候と病害虫の流行
大雨や干ばつ、さつまいもの病気の流行で作付けが減れば、農薬の量も減る。逆に害虫が大発生した年は売上が伸び、利益は年ごとに振れる。
還元の細さと少数株主
配当は利益の1割半ほどで、利益の大半は会社に残る。上位の株主で7割を持ち、少数株主が還元を求める力は弱い。ためた利益が資本コストに届かない稼ぎしか生まなければ、株主の価値は増えない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2年続けて4%を超えたら
- 値上げと償却の効果が定着したと見て、やや楽観の側へ確率を移す。
- 配当性向を3割以上に上げる、または自社株買いを始めたら
- ためた利益が株主に戻る道ができたと見て、戻り方と中立の見方を引き上げる。
- 主力の殺虫剤の販売量が年5%以上減ったら
- 南の産地の縮みが速いと見て、やや悲観の確率を厚くする。
- 大株主の住友化学やクミアイ化学工業が持株を増やす、または統合を申し入れたら
- 本質価値の外の話として、条件と少数株主の扱いを見て判断する。
- 再び営業赤字に落ちたら
- 農家の減少が利益を削る構造が強まったと見て、中立の利益率を下げる。
見ておくもの
- 殺虫剤の販売額と主力の産地の作付け
- 営業利益率と値上げの時期
- 配当性向と自己資本の積み上がり
- 全農向けの売上の比率
- 大株主の持株の変化
倍率と資本コストの決め方
農薬と農薬以外に分け、数量は推定(農家と農地の減少から10年0.88倍)、価格は物価並みで積んだ。中立の営業利益率3%は過去12年の最良5.6%以下で、物価で増えない償却の分を含む。倍率はROEがk9%を大きく下回るため1÷kの7割、悲観側は今の自己資本33億円と売れる資産の床に掛け、今のPBR0.5倍や時価総額から逆算していない。持ち合いの株の配当は利益にあるので、株の価値は別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.4→11.11 倍・中立 PER 8.2→11.11 倍・やや悲観 PBR 0.3→0.287 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.0%。黒字で財務の存続に疑いは無いので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 9.00%。