結論
旭化学工業は、電動工具と自動車の樹脂部品を成形して納める、愛知県の小さな会社だ。売上は84億円。マキタ向けが約6割を占め、生産拠点は碧南、安城のほか中国の昆山とタイにある。
筆者の結論は「割高」だ。決算書の上では自己資本53億円、純現金11億円と厚い。しかし本業はほぼ儲からない。粗利率は9.5%で、営業利益率は過去12年の中央値が1%強にとどまる。自己資本に対する利益のROEは1%前後で、資本コストを大きく下回る。
注目は、儲からない会社がなぜ時価総額18億円で買えるかだ。PBRは0.35倍。割安に見えるが、ためた利益が額面ほどの価値を持たないなら、帳簿の安さは理由にならない。
見るべきは二つある。マキタが仕入れ先を絞らないか。そして値下げ要請を、物価3%の中でどこまで跳ね返せるか。ここが崩れると、赤字と工場の閉鎖が現実になる。創業家が持つ会社なので、現金が株主に戻る期待も小さい。10年の価値は、この三つの掛け算で決まる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に問うのは、「10年後もこの事業はあり、今より強いか」だ。樹脂成形は残る。しかし強くなる根拠は乏しい。顧客が値段を決め、顧客が生産を動かす仕事だからだ。
次に、資本の使い方を見る。自己資本は53億円あるが、生む利益は年1億円に届かない。ROEが資本コストを大きく下回る会社では、ためた利益は額面の価値を持たない。現金が11億円あっても、戻さなければ株主のものにならない。
経営者は誠実に見えるが、資本を増やす意思は読み取れない。配当は据え置きで、自社株買いもない。
安全域は、純現金と土地という下値の支えにある。ただ、10年かけて割引くと、支えだけでは今の値段に届かない。筆者は、PBRの低さに惹かれて持つ種類の株ではないと見る。払う値段に余裕があるとは言えない。見るべきは帳簿の資産でなく、その資産が株主のために働くかどうかだ。
何で稼ぐ会社か
電動工具の樹脂部品と、自動車の樹脂部品を作る受託成形の会社だ。2025年8月期の売上は84億円。国内の売上は43%、中国は46%、タイは11%と、海外が半分以上を占める。
電動工具の部品は、樹脂の成形から組み付けまでを請け負う。取引は1969年に始まったマキタが中心で、売上の約6割になる。工具のハウジングやバッテリー周りの部品が主力と筆者はみる。
自動車部品は、内装・外装の樹脂部品が中心だ。2割強を占める主要顧客はイノアックコーポレーションで、自動車部品の売上の大半を占めるとみられる。
自社製品の建築資材(アンカープラグ)、樹脂金型の設計製作、植物工場や廃棄樹脂の再利用なども手がける。いずれも新事業の位置づけだ。ただ売上は小さく、利益への寄与はまだ見えない。
従業員は単体で約480人。本社工場は愛知県碧南市、安城に事業所がある。海外はタイのラヨーン県と中国の昆山に子会社を持つ。受注残高は約6億円と、手元の注文は短い。売上の半分以上が海外という配置は、顧客のマキタが世界に工場を持つことへの対応でもある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、ほとんど無い。受託成形は顧客の図面で作る仕事で、値段は顧客が決める。粗利率は9.5%と、社内目標の20%に遠い。
良い点は、マキタとの取引が50年を超えることだ。工具の部品は車より設計の入れ替わりが遅く、いったん採用されれば長く続く。品質と納期の信頼が、取引を支えている。
悪い点は三つある。第一に、顧客の偏りだ。マキタとイノアックで売上の8割を占める。第二に、利益の薄さだ。営業利益率は直近12期のうち3期が赤字で、山でも7.7%にとどまる。第三に、賃金の上昇だ。中国の昆山は人件費の伸びが速く、価格に移せなければ利益が消える。
財務は強い。自己資本比率は79%、純現金は11億円で、借入に頼らない。倒産を心配する会社ではない。ただ強い財務は守りにすぎず、資本を増やす力にはなっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の元は、電動工具の世界の出荷と、日本車メーカーの生産だ。
電動工具は、電池式への切り替えが追い風になる。マキタはその世界大手で、住宅リフォームや建設、DIYの需要に連動する。2021年はコロナ下の巣ごもり需要で山を作り、旭化学も営業利益率が7.7%まで上がった。その後は在庫調整で落ち、今は戻りの途中にある。
競争は厳しい。部品の受託成形は参入が容易で、中国の成形会社が価格で迫る。マキタ自身も中国、ベトナム、ルーマニアに工場を持ち、調達先を選べる。旭化学は昆山の工場でマキタの中国生産に付き添っているが、顧客が生産を移せば、取引も動く。
自動車の樹脂部品は、電気自動車にも要る。インパネやコンソールなどの内装は、エンジンの有無を問わない。電動化で要らなくなる部品ではない。ただ完成車メーカーは毎年の値下げを求め、部品会社は数量でなく価格で苦しむ。
10年では、物価が3%上がる中で、受託成形が価格を同じだけ上げられるかが分かれ目になる。数量は横ばいでも、価格が物価に届かなければ、利益は実質で目減りする。
資本政策と M&A
配当は年0.3億円ほどで、利益が減っても据え置いてきた。2025年8月期の配当性向は66%だが、金額は0.3億円と小さい。DOEは0.6%。自社株は約86万株を持つが、近年の買い増しは確認できない。
株主優待はあり、100株以上に額面千円のQUOカードを贈る。対象の株主は多く見ても数千人で、費用は年0.1億円に届かない。還元の評価を変える額ではない。
創業家の個人株主が上位を占め、代表取締役の杉浦武氏が14%、別の個人が9%を持つ。マキタも2.5%を持つ。支配株主はいないが、経営が株主への還元を急ぐ構造にはない。純現金は10年ほど7〜14億円で変わらず、戻す実績は乏しい。
政策保有株は上場1銘柄で簿価0.7億円と小さい。M&Aの実績や計画は確認できない。TOBの噂はない。時価総額が18億円と小さく、PBR0.35倍なので、買われる側の可能性はあるが、筋書きには入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額は18億円。純現金が11億円、土地が9億円、自己資本が53億円ある。事業が儲からなくても、これだけの資産がある。PBRは0.35倍で、清算してもプラスになる。
事業の回復余地も大きい。2021年は電動工具の需要が戻り、営業利益率が7.7%まで上がった。粗利率の目標は20%で、今の9.5%の半分以下だ。昆山の工場の自動化が進めば、人件費の上昇を吸収できる。
マキタとの付き合いは50年を超える。中国の生産に付き添える数少ない国内の成形会社で、乗り換えの手間は小さくない。自動車の樹脂部品も電気自動車に要る。
創業家が長く持つ会社なので、景気が悪くても配当を守る。経営の判断は早く、不採算の工場を整理する決断もしやすい。借金は無く、財務の傷みは小さい。2026年8月期は営業黒字に戻り、第3四半期までの純利益も増えた。回復が本物なら、今の値段は安い。損益分岐点を越えた後の利益の伸びは大きく、小さな会社ほど効きが速い。
慎重な見方
資産が厚くても、使い道の無い資産は価値を生まない。自己資本53億円に対して、利益は年1億円。ROEは1%で、資本コストの9%に遠く及ばない。10年でためた利益も、同じ低さで使われる。
営業利益率は過去12年の中央値が1%強。山の7.7%は、コロナ下の特需だった。粗利率の目標20%は、実現した年が無い。
マキタとイノアックで売上の8割。どちらかが調達先を替えれば、固定費の重い工場は赤字に落ちる。直近12期のうち3期が営業赤字で、純損益の赤字は4期ある。
昆山の賃金上昇は止まらず、顧客は毎年の値下げを求める。物価が3%上がる世界で、価格転嫁が追いつかない。
創業家が持ち、配当は据え置き、純現金は10年7〜14億円のままだ。現金が株主に戻る道筋は見えない。工場の更新投資も物価で膨らみ、現金はむしろ細る。PBRの低さは、この資本効率の悪さが正しく織り込まれた結果にすぎない。安く見える株が、安いとは限らない。
どちらに重みを置いたか
筆者は慎重な見方が強いと判断した。資産の厚さは下値の支えとして働くが、10年の価値を作るのは稼ぐ力だ。その稼ぐ力が、物価の中で伸びる根拠が見えない。
確率は、やや悲観と悲観を合わせて4割に置いた。倒産の心配はなく、悲観は1割強にとどめた。強気は合わせて2割強だ。回復の芽は2026年8月期に見えたが、10年の議論を変えるほどではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 736 円22 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 130 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 395 円12 億円、今との差 −34.7%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,945 円59 億円 | 263 円8 億円 | +264.9% | +13.8% | 155 円5 億円 |
| やや楽観 | 16% | 1,214 円37 億円 | 181 円6 億円 | +130.6% | +8.7% | 223 円7 億円 |
| 中立 | 37% | 740 円23 億円 | 132 円4 億円 | +44.1% | +3.7% | 323 円10 億円 |
| やや悲観 | 28% | 360 円11 億円 | 99 円3 億円 | −24.2% | −2.7% | 128 円4 億円 |
| 悲観 | 12% | 260 円8 億円 | 49 円2 億円 | −48.9% | −6.5% | 37 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 736 円22 億円 | 130 円4 億円 | +43.1% | +3.7% | 866 円26 億円 |
今の株価時価総額 605 円18 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 電動工具の増産が戻り、価格交渉も通る 利益 5 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,945 円59 億円
電池式工具の普及が進み、マキタ向けの部品が15%増える。2021年のような需要の山が定着し、中国と国内の工場の稼働が上がる。固定費の重い工場は、数量が増えると利益が一気に出る。昆山と碧南の稼働が上がり、残業と外注に頼らず回せる。
価格交渉も通り、部品単価は10年で物価並みの1.34倍まで上がる。自動車部品はイノアック以外にも客が広がり、利益率は4%に乗る。
営業利益は7億円弱。過去12年で最高の7.7%に近い水準だ。純利益は5億円で、配当は少しずつ増える。それでも自己資本が70億円を超えるので、ROEは7%前後にとどまる。強気でも資本コストに届かない点は変わらない。
- 電動工具部品(樹脂成形・組付):数量 1,050(電動工具1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.08(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 87 億円・営業利益 5 億円。913万台相当が15%増え、1台あたりの単価が1.34倍。営業利益率6%
- 自動車部品(内外装の樹脂部品):数量 165(自動車1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.19(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。150万台相当が1割増え、1台あたり1.34倍。営業利益率4%
- 建築資材・金型・その他:数量 8.0(実質の売上(億円、今の値段で換算))× 価格 1.34(価格の指数(今を1))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。実質5.6億円が8億円に増え、価格は1.34倍。営業利益率3%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 59 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気には、マキタの量産の回復と値上げの定着が同時に要る。粗利率は9.5%と低く、2021年の7.7%の再現は10年に1度の水準なので1割未満にとどめた。
やや楽観 16% 粗利が少しずつ戻る 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,214 円37 億円
マキタ向けの数量は5%ほど増え、部品単価は10年で1.31倍まで上がる。一部は値下げ要請に押されて物価に届かない。中国工場の自動化が進み、人件費の上昇を吸収する。
自動車部品は横ばいの数量で、利益率は2.5%まで戻る。建築資材は小さく、収支ほぼ均衡だ。
営業利益は4億円ほど。純利益は3億円で、直近の数倍にあたる。マキタの生産の海外移転が進んでも、昆山の工場が現地調達の窓口として残る。ただROEは5%に届かず、資本コストは超えない。回復は進んでいるが、自己資本が厚い分だけ、利益の増え方が薄く見える。
- 電動工具部品(樹脂成形・組付):数量 960(電動工具1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.08(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 78 億円・営業利益 4 億円。913万台相当が5%増え、1台あたり1.31倍。営業利益率4.5%
- 自動車部品(内外装の樹脂部品):数量 150(自動車1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.18(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量は横ばい、1台あたり1.28倍。営業利益率2.5%
- 建築資材・金型・その他:数量 7.0(実質の売上(億円、今の値段で換算))× 価格 1.30(価格の指数(今を1))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。実質7億円、価格1.3倍。営業利益率1%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 37 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2021年に利益が出せた実績があり、中国と国内の稼働が戻れば成り立つ。ただ値下げ要請が強く、2割弱にとどめた。
中立 37% 数量は横ばい、値上げは物価に届かない 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 740 円23 億円
マキタ向けの数量は横ばいで、部品単価は10年で1.28倍にとどまる。マキタは毎年の原価低減を求め、中国と国内の人件費の上昇を全部は価格に移せない。それでも自動化と中国工場の稼働で、利益率は3%まで戻る。
自動車部品は数量が8%減り、単価は1.24倍。内装部品は電気自動車でも要るが、イノアックの値下げ要請は続く。利益率は1%。
営業利益は2億円台、純利益は1.7億円。物価が1.34倍になる中で、実質の稼ぐ力は今と大きく変わらない。配当は今の水準から少しずつ増える程度だ。
償却は今ある設備が取得時の値段のまま減るので、見かけの利益は支えられる。ただ金型と機械の更新費は物価で膨らみ、現金は細る。
- 電動工具部品(樹脂成形・組付):数量 913(電動工具1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.08(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 73 億円・営業利益 2 億円。数量は横ばい、1台あたりの単価が1.28倍。営業利益率3%
- 自動車部品(内外装の樹脂部品):数量 138(自動車1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.18(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。150万台相当が8%減り、1台あたり1.24倍。営業利益率1%
- 建築資材・金型・その他:数量 6.0(実質の売上(億円、今の値段で換算))× 価格 1.25(価格の指数(今を1))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。実質6億円、価格1.25倍。営業利益率0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 22 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12期の実績では営業利益率の中央値は1%強で、2〜3%台に定着した経験がない。慎重な見方がやや強く、中立に4割弱を置いた。
やや悲観 28% 値下げ要請と中国の人件費で利益が消える 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 360 円11 億円
マキタが調達先を絞り、数量が15%減る。単価は10年で1.2倍にとどまり、物価の3%に届かない。中国の賃金上昇は止まらず、昆山工場の利益が削られる。
自動車部品は数量が2割減り、イノアック向けの値下げが続く。赤字に戻る。建築資材も売上が伸びない。
営業利益はほぼゼロ。現金の利息で純利益がわずかに残る程度だ。配当は今の水準を守るのがやっとで、増配はない。会社は工場の統廃合を進めるが、固定費は思うように落ちない。
収益力で測れば価値は小さく、現金と土地と売掛金が下値を支える。それでも事業は続き、倒産には向かわない。
- 電動工具部品(樹脂成形・組付):数量 776(電動工具1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.07(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。913万台相当が15%減り、1台あたり1.2倍。営業利益率1%
- 自動車部品(内外装の樹脂部品):数量 120(自動車1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.17(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。150万台相当が2割減り、1台あたり1.18倍。営業利益率-1.5%
- 建築資材・金型・その他:数量 5.0(実質の売上(億円、今の値段で換算))× 価格 1.20(価格の指数(今を1))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。実質5億円、価格1.2倍。営業利益率-3%
倍率:稼ぐ力はほぼ無く、売れる資産で置く。今の自己資本52.9億円に0.20倍を掛けた額で、純現金(戻り方0.75)、土地、売掛・在庫の回収から借入・買掛を引いた約10.5億円に合わせた。稼ぐ力(純利益÷k)より大きく、床が効く局面。
確率:粗利率9.5%の会社は、売上が1割減るだけで営業赤字に落ちる。直近12期で営業赤字は3期、利益率が1%以下の期は8期あり、過去の姿に近いため3割近くを置いた。
悲観 12% マキタの内製化・調達先替えで主力を失う 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 260 円8 億円
マキタが成形部品の調達を東南アジアと自社へ振り替え、数量が45%減る。単価は1.1倍にとどまる。固定費の重い碧南と昆山の工場は稼働が落ち、赤字が続く。自動車部品も数量が4割減る。
会社は工場を閉じ、人員を整理して小さくなる。配当は大きく削る。工場の統廃合で人員を整理し、減損と閉鎖費用で自己資本は傷む。
事業の稼ぐ力はなく、価値は現金と土地と回収できる債権で決まる。成形機や自社保有の金型は中古で売っても値が小さく、回収の中心は現金と土地になる。少数株主は清算を決められず、純現金も半分しか戻らないとみる。事業の撤退は残った資産の回収に向かい、価値は床で決まる。
- 電動工具部品(樹脂成形・組付):数量 502(電動工具1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.07(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 34 億円・営業利益 −1 億円。913万台相当が45%減り、1台あたり1.1倍。営業利益率-4%
- 自動車部品(内外装の樹脂部品):数量 90.0(自動車1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当))× 価格 0.16(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 14 億円・営業利益 −1 億円。150万台相当が4割減り、1台あたり1.1倍。営業利益率-6%
- 建築資材・金型・その他:数量 3.0(実質の売上(億円、今の値段で換算))× 価格 1.10(価格の指数(今を1))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。実質3億円、価格1.1倍。営業利益率-5%
倍率:赤字で稼ぐ力はゼロ。売れる資産の税後約8億円(床の欄)を超えないよう、今の自己資本52.9億円に0.15倍を掛けて置いた。EV÷営業利益は赤字で意味がない。
確率:マキタは売上の約6割を占める。同社が部品を中国・東南アジアの別の工場へ移す、または内製に戻す可能性は常にあり、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電動工具部品(樹脂成形・組付)
マキタ向けを中心とする電動工具の樹脂部品の成形と組み付け。碧南・安城と中国・昆山の工場で作る。
| 数量電動工具1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当) | 価格1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 913 | 0.06 | 57 | 0 |
| 10 年後 中立 | 913 | 0.08 | 73 | 2 |
取り方:2025/08期の売上83.6億円のうち、マキタグループ向けが約6割(外部データ)で、電動工具部品は全体の約3分の2と筆者が推定した。開示は製品別でなく、台数もない。913万台相当×1台あたり0.062万円で56.6億円とした。セグメント別の利益は開示がなく、全社の営業損失0.45億円を売上比で配分した推定。
自動車部品(内外装の樹脂部品)
イノアックなどの内装・外装向け樹脂部品。国内とタイの工場で作る。
| 数量自動車1台あたりの部品に換算した出荷(万台相当) | 価格1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 150 | 0.14 | 21 | 0 |
| 10 年後 中立 | 138 | 0.18 | 24 | 0 |
取り方:主力の1社(イノアックコーポレーション)が売上の約2割強(外部データ)。自動車部品は全体の約4分の1と筆者が推定。150万台相当×1台あたり0.1427万円で21.4億円とした。台数・利益は開示なしで、利益は全社の営業損失を売上比で配分。
建築資材・金型・その他
自社製品の建築資材(アンカープラグなど)、樹脂金型の設計製作、その他。
| 数量実質の売上(億円、今の値段で換算) | 価格価格の指数(今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 5.6 | 1.00 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 1.25 | 8 | 0 |
取り方:売上83.6億円から電動工具部品と自動車部品の推定を引いた残り(約5.6億円)。開示はない。利益は全社の営業損失を売上比で配分した推定。
リスクと懸念
マキタへの偏り
マキタグループ向けが売上の約6割。同社が調達先を変える、内製に戻す、生産を東南アジアに移すと、固定費の重い工場の稼働が一気に落ちる。長い付き合いでも、契約で守られているわけではない。
価格転嫁の難しさ
顧客は毎年、原価低減を求める。物価が3%で上がっても、部品単価が同じだけ上がるとは限らない。10年で1.28倍にとどまれば、実質の利益は縮む。
中国の人件費と地政学
売上の46%は中国で、昆山の賃金の上昇は速い。中国と日本の関係悪化や、関税の変更で生産の置き場所が動くと、工場の価値が下がる。
自動車部品の電動化と値下げ
内外装の樹脂部品は電気自動車にも要るが、車の設計が替わると部品の点数や形が入れ替わる。イノアックは完成車メーカーの値下げ要請を転嫁してくる。粗利は薄い。
赤字の再発
直近12期のうち3期が営業赤字で、利益率1%以下の期も多い。売上が1割減れば、固定費の重さから赤字に落ちる。赤字が続くと、現金が減り、財務の強さが失われる。
資本が株主に戻らない
純現金は11億円と時価総額の6割あるが、戻す方針は示されていない。創業家が上位株主で、少数株主が現金の使い方を決められない。
今後の分かれ目
- マキタが調達先の見直しを公表する、または売上のマキタ比率が5割を割る
- 主力を失う悲観の確率を上げる。比率が下がっても代わりの客が見つかるなら、評価は緩める。
- 営業利益率が2年続けて3%を超える
- 価格転嫁と自動化が働いている証拠だ。中立から強気の側へ確率を寄せる。
- 配当を増やす、または自社株買いを始める
- 現金が株主に戻る道筋ができる。余った現金の戻り方を0.5から上げてよい。
- 昆山または碧南の工場の閉鎖・売却が発表される
- 固定費が下がる反面、主力の縮小を示す。数量の筋書きを下げ、土地の売却益は床として別に見る。
- 自動車部品で、イノアック以外の新規受注が決まる
- 顧客の偏りが下がる。自動車部品の数量を中立から上げる材料になる。
見ておくもの
- マキタ向けの売上比率と電動工具の出荷
- 営業利益率と粗利率(目標20%に近づくか)
- 昆山の賃金上昇と為替
- 純現金の推移と配当・自社株買い
- イノアック以外の新規顧客
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト9%と事業のROE、成長3〜3.5%から式で置いた。中立の10年のROEは2.8%で、過去10年の中央値1.1%に2ポイント足した3.1%より低い。倍率は今の株価やPBR0.35倍には寄せていない。営業利益率は中立で2%台前半と、過去12年の山(7.7%)を下回る。純利益÷営業利益は0.7で、過去8年の中央値0.62に現金の利息を足した形。数量・単価・セグメント別の利益は開示がなく、筆者の推定を含む(建築資材・金型・その他は売上が小さく、数量×単価に分けず実質の売上と価格指数で置いた)。会計は新リース会計基準で2028年8月期ごろから形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。この会社は賃借が小さく、影響は限られる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8→11.11 倍・やや楽観 PER 7→11.11 倍・中立 PER 6.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。