結論
ロンシール工業は塩ビ製の床材・防水シート・壁紙を作る老舗である。筆者の結論は「事業は平凡、資産は厚い。ただし株主に戻る保証が薄く、適正な水準」だ。
本業の稼ぎ頭は床材と防水で、利益率は6%前後にとどまる。国内の新築が細るなか、数量を伸ばす力は弱い。車両用床材や輸出といった小さな芽が、全体の利益率を支えている。
一方で純現金は約67億円、時価総額の7割近くに達する。自己資本比率は7割を超え、財務が崩れる心配はほぼない。
問題は、その現金が株主のものになりにくい点だ。東ソーが約4割を持つ構造で、配当は純利益の2〜4割という方針である。現金は積み上がっても、戻る額は限られる。
筆者は、現金の半分だけを株主の価値と見る。それを足しても、10年後の価値は今の値段を大きく超えない。割安とは言い切れない。安全域はあるが、それは現金の分に限られる。
仮に東ソーが動けば話は変わる。だが買われることを前提に、価値を組み立てる気はない。現金をどこまで株主の取り分と数えるか。その一点が、この会社の評価を左右する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「事業を買う」より「現金を買う」案件に近い。事業そのものは、国内の建築資材という成長しない市場で、堀も浅い。持ち続けて価値が増える種類の会社ではない。
一方、払う値段のうち現金が7割を占めるなら、残りの事業にほとんどお金を払っていない計算になる。これが安全域である。ただし現金が自由に使える前提が崩れると、安全域は一気に薄くなる。
親会社が4割を握り、配当の方針が純利益の2〜4割とあっては、現金は会社の中に残り続けやすい。筆者が現金の戻り方を半分とみる理由はここにある。
事業の値打ちは、利益に10年後も物価並みの伸びを見て、資本コストに届かない会社として測る。それでも現金と合わせれば、今の値段は大きく割高ではない。上振れは、親会社の再編か配当の引き上げが起きた時である。
何で稼ぐ会社か
主力は合成樹脂加工品事業で、売上の98%を占める。建築用の塩ビ床材(ロンリウムなど)、屋上の防水シートと防水工事、壁紙、鉄道車両の床材、住宅資材、フィルム基材までを手がける。
製品別の売上は開示されていないが、直近期は住宅資材、輸出用の床材、車両用の床材が増え、国内の床材、防水資材、壁紙が減った。国内の建築向けが全体の大半で、成長の芽は輸出と車両に偏る。
残りは不動産賃貸で、東京・四つ木のショッピングセンターを貸す。売上は3.6億円と小さいが、営業利益は2.7億円と全社の2割に及ぶ。利益の質が高い部分だ。
主力工場は茨城県の土浦事業所で、敷地は約9.6万平方メートルある。直近の設備投資は4億円台で、本社移転、変電設備の更新、混練設備の自動化が中心だ。能力を増やす投資ではなく、人手と原料のロスを減らす投資である。
従業員は連結で419人。中小の素材メーカーとして、固定費は軽い。研究開発費は年3.7億円で、売上の1.7%にあたる。新製品の種まきは続けているが、事業の姿を変えるほどの規模ではない。
生産は製造原価で約90億円、仕入れた商品は約48億円。自社で作る部分と他社から買う部分が半々に近く、他社品を組み合わせて売る商社的な顔も持つ。
優良さと弱いところ
筆者の評価は「悪くないが、堀は浅い」だ。床材は東リ、タジマ、サンゲツと競い、防水はウレタンやアスファルトなど他の工法とも競う。値段を自分で決められる製品は少ない。
強みは二つある。一つは車両用床材のように、安全基準や納入実績が必要な分野だ。切り替えが難しく、利益率も相対的に高い。車両の床材は火災安全や耐久の基準が厳しく、一度採用されれば長く使われやすい。もう一つは塩ビ樹脂という原料の近くにいる安心感である。
弱みははっきりしている。過去10年の営業利益率は3〜12%で、直近は6%台。2017年の12%は再現していない。自己資本利益率も5%前後で、資本コストに届かない。
経営は慎重で、無借金、現金は厚い。従業員の平均勤続は17年と長く、現場の技術は蓄積されている。ただし資本効率を高める動きは遅い。中期目標は売上高経常利益率5%以上の安定で、意欲は高くない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建築資材は、人口減と新築の減少で数量が細る構造にある。床材は改修・張り替え需要が下支えするものの、大型の伸びは見込みにくい。壁紙はクロスの代替素材との競争もある。
防水は、塩ビシート防水が改修で一定の需要を持つ。建物の老朽化で改修は長く続くが、工法間の競争が値段を縛る。ここでの数量は、10年で2〜3割の減少から横ばいの間を見る。
成長が見込めるのは車両用床材と輸出である。鉄道車両の更新は景気に左右されにくい。輸出は海外の床材の需要を取り込めるが、現地メーカーとの価格競争もある。
原料は塩ビ樹脂と可塑剤で、石油化学の値動きの影響を受ける。値上げが遅れると利益率が削られ、物価の上昇局面では転嫁のタイミングが勝負になる。
人件費は物価に連れて上がる。工場の自動化は進めているが、省人化の効果はまだ小さい。
筆者が見るところ、この領域は「大きく負けないが、大きく勝てない」市場だ。需要の質は安定し、参入者も限られる。ただし数量が伸びないなか、勝ち負けは値上げを通せるかどうかで決まる。
10年の悲観は、塩ビ離れが加速して国内の数量が4割減る筋書きである。中立では15%減にとどまると見る。
資本政策と M&A
配当は連結純利益の20〜40%を目安とし、直近の期末配当は前期から引き上げた。自社株買いは目立たない。
政策保有株は上場4銘柄で約13億円と控えめで、大和ハウス工業、サンゲツ、みずほフィナンシャルグループ、リリカラなどを持つ。純資産の6.5%にとどまり、売却を急ぐ状況でもない。
東ソーが議決権の38.4%を持つ。完全子会社化の話は出ていないが、純現金が時価総額の7割近くあるため、親会社の目には買いやすい対象にも映る。
筆者は、買収があれば現金の価値に近い上乗せがつくと見る。ただし買われる前提では評価しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金が時価総額の7割近くあり、事業に払う値段はほぼゼロに近い。自己資本比率は7割超で、PVC原料が上がっても資金繰りに不安はない。
営業利益は直近で5割増えた。車両用床材と輸出が伸び、不動産賃貸も安定している。本社移転や自動化の投資が済めば、固定費が下がり、利益率は7%台に乗る。
配当を1割以上引き上げた。方針の枠は純利益の2〜4割と広く、現金が溜まり続ければ、枠の上限まで引き上げる余地がある。東ソーも、持分法の取り込みや再編で現金を使う動機を持つ。
10年で物価が3割上がれば、土浦と四つ木の土地の含み益も膨らむ。四つ木は都心に近い用地で、帳簿価額との差は大きいはずだ。数字が出ていない資産の価値が、将来の再評価の種になる。
親会社の東ソーにとっても、100億円足らずの時価総額でグループの化学・建材事業を取り込める好機である。現金がある分、買収の資金負担は軽い。TOBの観測が出るたびに、市場は現金の価値を織り込みなおすだろう。
慎重な見方
本業の中身は弱い。国内の床材、防水、壁紙の売上は減っており、成長しているのは小さな芽だけだ。2023年3月期には営業利益率が3%を割り、2025年3月期の純利益はほぼゼロだった。景気と原料価格で簡単に崩れる事業である。
現金は確かに厚いが、株主のものとは限らない。親会社の東ソーが約4割を持ち、少数株主が現金の使い道を決められない。配当の方針が純利益の2〜4割なら、10年たっても現金は積み上がるだけだ。
自己資本利益率は5%前後で、資本コストを大きく下回る。現金を寝かせるほど、この数字は悪化する。四つ木の土地の含み益も、売却や再開発の約束がない以上、少数株主には届かない。
塩ビ離れが進めば、数量は10年で3割以上減りかねない。そうなれば、事業は現金の足を引っ張る重荷になる。
物価が上がる局面では、原料と人件費の上昇を売値に転嫁できるかが問われる。この会社は過去に転嫁が遅れ、利益を落としてきた。インフレは現金の目減りでもあり、現金が7割を占める評価は、物価の上昇に逆風になる。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は現金に根拠があり、弱気の言い分は現金の戻り方に根拠がある。どちらも正しいが、現金の分は戻り方を掛けて見るべきだと筆者は判断した。そのため、中立を最大に置き、やや悲観に厚く確率を寄せた。悲観は現金と保有株が支えるため、1割にとどめた。
結局、強気も弱気も現金の扱いで決まる。筆者は両者の中間、つまり半分だけ数える立場を取った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,735 円172 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 964 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 2,434 円112 億円、今との差 +13.8%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,265 円289 億円 | 1,345 円62 億円 | +255.8% | +13.5% | 533 円25 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,282 円243 億円 | 1,194 円55 億円 | +202.7% | +11.7% | 1,295 円60 億円 |
| 中立 | 38% | 4,470 円206 億円 | 1,020 円47 億円 | +156.7% | +9.9% | 2,086 円96 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,645 円76 億円 | 781 円36 億円 | +13.4% | +1.3% | 607 円28 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,302 円60 億円 | 477 円22 億円 | −16.8% | −1.8% | 178 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,735 円172 億円 | 964 円44 億円 | +119.7% | +8.2% | 4,699 円217 億円 |
今の株価時価総額 2,139 円99 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:車両・輸出が育ち、利益率が7%台に乗る 利益 20 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 6,265 円289 億円
車両用床材と輸出が、10年で数量を1.35倍まで伸ばす。鉄道の更新と海外の改修需要を取り込み、この部門の利益率は9%に乗る。
国内の建築向けは数量の減りが5%にとどまる。改修の防水が堅調で、値上げも物価を少し上回る。全社の営業利益率は9%に近づく。
純現金は積み上がり、配当は純利益の4割に近づく。ただし、親会社の東ソーが現金を使う方針は示さないため、現金の戻り方は変わらない。
自己資本利益率は7%近くにとどまり、資本コストには届かない。事業の評価は上がっても、割安といえる水準までは届かない。
この筋書きを実現するには、鉄道会社や海外の販売網との関係を一段深める必要がある。社内の営業力はまだ小さく、実現には時間がかかる。
- 建築用床材・防水・壁紙(国内):数量 9.5(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,960(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 186 億円・営業利益 11 億円。営業利益率6.0%
- 車両用床材・輸出用床材:数量 3.5(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 2,800(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 98 億円・営業利益 9 億円。営業利益率9.0%
- 住宅資材・フィルム基材:数量 3.0(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,400(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 42 億円・営業利益 2 億円。営業利益率5.5%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸施設数)× 価格 4.30(1施設あたり賃料収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。営業利益率75.0%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 13.04 倍、時価総額 289 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車両用床材と輸出が想定以上に伸び、原料高の転嫁も順調に進む筋書き。直近の営業利益5割増の勢いが定着しても、過去10年の最良期に届くのは難しく、確率は低く置いた。
やや楽観 20% やや楽観:国内が踏ん張り、利益率が6.5%に定着 利益 17 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 5,282 円243 億円
国内の建築向けは数量が10%減にとどまり、値上げを物価並みに通す。車両用と輸出は1.25倍に増える。
全社の営業利益率は7%弱で、会社の中期目標の経常利益率5%を上回る水準が続く。原料高の転嫁は半年以内に進み、利益の振れは小さくなる。
配当は純利益の4割近くまで上がる。ただし現金は、配当を払ってもなお積み上がる。
自己資本利益率は約6%で、資本コストには届かない。
東ソーとの関係は今のまま続き、再編の動きは出ない。四つ木の賃貸は安定し、全社の利益を下支えする。値上げの浸透と数量の下げ止まりが、この筋書きの条件になる。
- 建築用床材・防水・壁紙(国内):数量 9.0(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,918(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 173 億円・営業利益 9 億円。営業利益率5.4%
- 車両用床材・輸出用床材:数量 3.3(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 2,740(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 89 億円・営業利益 7 億円。営業利益率8.2%
- 住宅資材・フィルム基材:数量 2.7(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,370(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。営業利益率4.7%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸施設数)× 価格 4.20(1施設あたり賃料収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。営業利益率72.0%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 243 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近期の改善が定着し、会社の今期予想(営業利益率6.4%)を物価並みの伸びで延ばした形。過去の山に届かない範囲で、確率は2割。
中立 38% 中立:国内は細り、車両・輸出と賃貸が下を支える 利益 14 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,470 円206 億円
国内の建築向けは、数量が10年で15%減る。値段は物価並みに上がるので、売上は1.14倍にとどまる。
車両用床材と輸出は数量が15%増える。住宅資材とフィルムは横ばいで、四つ木の賃料は物価の半分ほど上がる。
全社の営業利益率は6.5%前後で今と変わらない。原料と人件費の上昇を値上げで吸収する形だ。設備の償却は取得時の値段のままで増えない一方、更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、現金を細らせる。
配当は純利益の4割弱で、現金は積み上がる。親会社が4割を持つ構図は変わらない。
10年の道筋は、緩やかに細る国内と、小さく伸びる輸出・車両の綱引きである。賃貸の利益は物価の半分ほどしか伸びず、全社の利益率を押し上げる力は弱い。筆者はこの筋書きを最も現実的と見る。
- 建築用床材・防水・壁紙(国内):数量 8.5(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,876(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 159 億円・営業利益 8 億円。営業利益率4.8%
- 車両用床材・輸出用床材:数量 3.0(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 2,680(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 80 億円・営業利益 6 億円。営業利益率7.5%
- 住宅資材・フィルム基材:数量 2.5(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,340(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸施設数)× 価格 4.14(1施設あたり賃料収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。営業利益率70.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通し(国内数量の緩やかな減少、価格は物価並み)に沿った中心。会社予想の営業利益率6.5%に近く、過去10年の中央値を少し上回るにとどまる。
やや悲観 25% やや悲観:塩ビ離れで国内が3割減り、価格競争が強まる 利益 9 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 1,645 円76 億円
国内の建築向けが数量で25%減り、値上げも物価に届かない。東リやサンゲツとの価格競争が強まり、利益率は3%前後まで下がる。
車両用床材と輸出は横ばいにとどまる。原料高の転嫁が遅れ、営業利益は11億円前後に落ちる。
工場の稼働が下がり、固定費の重さが利益を削る。それでも無借金で、現金も厚いので、倒れる心配はない。
四つ木のテナントの入れ替えで賃料収入が一時的に落ち、全社の利益を押し下げる局面もありうる。
配当は純利益の4割を維持するが、金額は減る。現金は谷で食われる分があるとみる。
建て替えや省人化の投資が思うように成果を出さず、投じた額が回収できない可能性もある。
- 建築用床材・防水・壁紙(国内):数量 7.5(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,820(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 137 億円・営業利益 4 億円。営業利益率3.0%
- 車両用床材・輸出用床材:数量 2.6(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 2,600(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 68 億円・営業利益 4 億円。営業利益率6.0%
- 住宅資材・フィルム基材:数量 2.2(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,300(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.0%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸施設数)× 価格 3.90(1施設あたり賃料収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。営業利益率66.0%
倍率:自己資本利益率は約3.6%で資本コストに届かず、新しく投じるお金の稼ぎは6.1%。g4%で正当化PERは7.5倍、構造的に細る事業なのでその8割の6.0倍。余った現金は谷で食う分を引いた30億円に戻り方0.5。
確率:2023年3月期に営業利益率が3%を割った実績があり、原料高と数量減が重なる筋書きは現実味がある。2割台後半の確率を置いた。
悲観 10% 悲観:塩ビ離れと価格崩れで本業が赤字に近づく 利益 4 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,302 円60 億円
国内の建築向けが数量で4割減り、塩ビ以外の素材や工法への置き換えが進む。工場の稼働が落ち、床材・防水は営業利益1%台まで下がる。
住宅資材とフィルムは赤字に近づき、四つ木のテナントも一部が抜ける。営業利益は4億円台にとどまる。
減損も出て、自己資本は215億円まで減る。ただし現金は67億円あり、倒産の恐れはない。
時価総額は、稼ぐ力ではなく、純現金と売れる資産で測る。
この筋書きでは本業の再建が止まり、現金を使った買収や投資に成功の見込みがない。親会社も支援に動かず、少数株主は現金の価値を十分に受け取れない。
- 建築用床材・防水・壁紙(国内):数量 6.0(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,680(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 101 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.0%
- 車両用床材・輸出用床材:数量 2.0(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 2,400(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3.0%
- 住宅資材・フィルム基材:数量 1.5(出荷面積(百万㎡、推定))× 価格 1,200(1㎡あたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸施設数)× 価格 3.50(1施設あたり賃料収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。営業利益率60.0%
倍率:純利益4億円では稼ぐ力は測れない。床は売れる資産の税後で測り、今の自己資本197億円に対するPBR0.30倍(時価総額60億円)に置いた。
確率:本業が構造的に負ける筋書きだが、現金・保有株・土地という売れる資産が下を支える。2割を超えるほどの確率は置けず、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築用床材・防水・壁紙(国内)
塩ビ床材、屋上防水シートと工事、壁紙など国内の建築向け。売上の約63%と推定。
| 数量出荷面積(百万㎡、推定) | 価格1㎡あたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 1,400 | 140 | 6 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 1,876 | 159 | 8 |
取り方:合成樹脂加工品の売上217億円のうち、国内の床材・防水・壁紙を約140億円と推定(製品別は非開示)。1㎡あたり千四百円前後の品が年千万㎡出ると置いた。数量は新築の減少と改修の下支えで、中立は10年で0.85倍。価格は物価並み(10年1.34倍)。競合は東リ、タジマ、サンゲツ。
車両用床材・輸出用床材
鉄道車両の床材と、海外向けの床材。売上の約24%と推定。
| 数量出荷面積(百万㎡、推定) | 価格1㎡あたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.6 | 2,000 | 52 | 4 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 2,680 | 80 | 6 |
取り方:車両用床材と輸出用床材の売上を約52億円と推定(非開示)。車両用は特殊品で単価が高いため、1㎡あたり二千円前後と置いた。数量は車両の更新と輸出の伸びで、中立は10年で1.15倍。価格は物価並み。
住宅資材・フィルム基材
住宅向けの内装資材と、機能性フィルムの基材。売上の約11%と推定。
| 数量出荷面積(百万㎡、推定) | 価格1㎡あたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.5 | 1,000 | 25 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.5 | 1,340 | 34 | 1 |
取り方:住宅資材とフィルム基材の売上を約25億円と推定(非開示)。1㎡あたり千円前後と置いた。数量は新築の細りとフィルムの伸びが打ち消し合い、中立は10年で横ばい。価格は物価並み。
不動産賃貸
東京・四つ木のショッピングセンターの賃貸。
| 数量賃貸施設数 | 価格1施設あたり賃料収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 3.60 | 4 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 4.14 | 4 | 3 |
取り方:開示された不動産賃貸事業の売上3.6億円、営業利益2.7億円をそのまま使った。賃料は物価の約半分の上昇(10年1.15倍)とみる。
リスクと懸念
原料高の転嫁の遅れ
塩ビ樹脂と可塑剤の値上がりは、売値の改定に数か月かかる。2023年3月期のように営業利益率が3%を割る期は、今後も出る。物価が上がる局面で、転嫁力が弱い会社には利益の目減りが続く。
国内の建築需要の縮小
新築着工の減少に加え、塩ビ製品から別素材への置き換えが進むと、数量は想定以上に減る。固定費の重い工場では、数量減が利益を一気に削る。
現金が戻らない構造
東ソーが約4割を持ち、配当方針は純利益の2〜4割。少数株主が現金の使い道を決められず、積み上がる現金が自己資本利益率を押し下げる。
投資が成果を生まない恐れ
配合の自動化や混練設備の更新は、能力を増やさない投資である。省人化の効果が小さければ、設備投資の分だけ現金が減る。
不動産賃貸の入居リスク
四つ木のショッピングセンターは、利益の2割を担う。核テナントが退去したり、賃料が下がったりすれば、全社の利益の安定が崩れる。
今後の分かれ目
- 東ソーが完全子会社化を提案する
- 純現金の価値に近い上乗せが付く可能性が高い。その場合、少数株主にとっては現金が実際に戻る数少ない機会になる。
- 配当性向の方針が4割を超える水準に引き上げられる
- 現金の戻り方を高く見直す余地が出る。事業の価値は変わらなくても、全体の評価は上がる。
- 原料価格が急騰し、転嫁が半年以上遅れる
- 営業利益率は3%台に落ち、純利益は半分になりうる。現金の厚みがあるため倒れはしないが、評価は下がる。
- 車両用床材や輸出が想定を超えて伸びる
- 全社の利益率が7%台に乗り、事業の評価を引き上げる材料になる。
- 四つ木などの不動産の再開発や売却が発表される
- 帳簿に表れない含み益が顕在化し、資産の評価が見直される。
見ておくもの
- 東ソーの持株比率と再編の動き
- 配当方針と1株配当の水準
- 塩ビ樹脂の価格と売値改定の時期
- 車両用床材・輸出の売上の伸び
- 四つ木の不動産の利用方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。10年後の自己資本利益率は5%前後で資本コストに届かず、利益に掛ける倍率は低く抑えた。今の株価や同業の倍率は使っていない。現金は、親会社が4割を持ち配当方針が2〜4割にとどまるため、戻り方を0.5とした。新リース会計基準の影響は小さいが、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.6→13.04 倍・やや楽観 PER 8.5→12.9 倍・中立 PER 7.4→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。