結論
チタン工業は、山口県の宇部で酸化チタンと酸化鉄の粉を作る会社だ。日焼け止めに入る微粒子の酸化チタン、トナーやブレーキに使う酸化鉄、東芝の電池に入るチタン酸リチウムを持つ。筆者の結論は、今の値段は高いというものだ。素材には光るものがあるが、借金が重く、株主に残る利益が細いからだ。
売上は81億円、営業利益は3億円で、営業利益率は4%に届かない。過去12年で最も良かった年でも7%だった。2024年3月期には大きな減損を出し、自己資本を3割失った。
純負債はおよそ46億円で、時価総額の1.7倍ある。工場の設備は古く、更新の投資は先送りされている。金利が上がれば、借り換えのたびに利払いが増える。
楽観の芽は電池だ。東芝のSCiBが鉄道や車で採用を広げれば、チタン酸リチウムの注文は伸びる。ただ売上の6分の1を1社に頼る形で、その賭けを今の値段に織り込むのは早い。会社は2036年に売上150億円を掲げるが、筆者はその達成を前提にしない。
筆者がいちばん気にしているのは、設備の更新を先送りしたまま借金を返している点だ。いずれ大きな投資が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、素材は面白いが、株主に回る利益が薄すぎる会社だ。
化粧品の粉と電池の素材は、どちらも長く使われる可能性がある。顧客は簡単に乗り換えない。この点は、小さな会社として評価できる。
しかし、株主のものになる利益は年2億円前後だ。そこから工場の更新の投資を引くと、ほとんど残らない。いまの設備投資は償却費の6分の1しかなく、更新を先送りしているにすぎない。いずれ建築費の上がった値段で設備を建て替える時が来る。
借金も重い。純負債は時価総額の1.7倍あり、金利が上がれば利払いが利益を食う。資本の使い方に誤りがあったとは言わないが、減損で自己資本を3割失った過去は消えない。
安全域は見当たらない。電池の賭けが当たれば大きく報われるが、それは1社の電池の行方に頼る話だ。筆者は、この値段で持ち続けたいとは思わない。
何で稼ぐ会社か
1936年に創立した、酸化チタンと酸化鉄の専門メーカーだ。本社と工場は山口県宇部市にある。事業は2つのセグメントに分かれる。
酸化チタン関連は売上50億円で、全体の6割を占める。主力は化粧品向けの微粒子の酸化チタンだ。光を散らして紫外線を防ぐので、日焼け止めやファンデーションに入る。岩瀬コスファや森下産業などの商社を通じて、国内外の化粧品メーカーに届く。もう一つの柱が、子会社のTBMで作るチタン酸リチウムだ。東芝のリチウムイオン電池SCiBの負極に使われる。TBMはチタン工業が51%を持つ。
酸化鉄関連は売上32億円で、利益はこちらの方が大きい。コピー機のトナーに入る磁性の酸化鉄、ブレーキパッドの摩擦材、塗料や化粧品の顔料を作る。稲畑産業などの商社が主な売り先だ。
売り先は集中している。森下産業、稲畑産業、東芝、岩瀬コスファの4社で売上の6割を超える。商社が多いのは、海外の化粧品メーカーや電子部品のメーカーに届けるためだ。
場内の物流は子会社のTKサービスが担う。従業員は連結で200人ほどの小さな会社で、研究開発も宇部に集めている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、粉の粒をそろえる技術にある。だが、その堀は狭い。
化粧品の酸化チタンは、粒の大きさと表面の処理で、塗り心地と白浮きが決まる。化粧品メーカーは一度決めた原料をなかなか変えない。処方を変えると、安全性の試験をやり直す必要があるからだ。ここにはチタン工業の居場所がある。
しかし、同じ土俵にテイカや石原産業、堺化学工業といった大きな競合がいる。中国のメーカーも品質を上げてきた。値段は商社を通じて比べられ、主導権は買い手にある。営業利益率は過去12年で7%が最高で、多くの年は5%を下回った。
チタン酸リチウムは、東芝のSCiBという1つの電池に頼る。採用が広がれば強いが、電池の方式が変われば需要は消える。財務も弱い。純負債はEBITDAの5倍に近く、工場の更新を先送りしている。
経営は堅実だが、規模が小さく、大きな投資を自力で賄う余力に乏しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
酸化チタンと酸化鉄は、汎用品と特殊品の二つの顔を持つ。
塗料や紙に使う汎用の酸化チタンは、世界で年600万トンを超える大きな市場で、中国の大手が値段を決める。チタン工業はここでは戦っていない。戦うのは、化粧品や電子材料に使う特殊品の小さな市場だ。
化粧品の日焼け止めは、アジアを中心に伸びている。紫外線への関心は高まり、肌に優しい無機の紫外線散乱剤は好まれる。一方で、欧州では微粒子の酸化チタンへの規制の議論が続く。食品向けでは既に使用が禁じられた。化粧品に広がれば、需要は一気に冷える。
チタン酸リチウムの電池は、充電が速く長持ちし、燃えにくい。鉄道やバス、工場の機械など、安全と寿命を重んじる用途で使われる。ただ電気自動車の主流は別の方式で、市場は小さいまま伸びる可能性が高い。
酸化鉄は、トナーの需要が紙の減少とともに細る。ブレーキパッドは自動車の台数に沿って横ばいだ。原料の鉄やチタン鉱石、燃料の値段は世界の市況で動き、値上げは遅れて通る。
筆者の見立てでは、酸化チタン関連の数量は10年で15%伸び、酸化鉄関連は15%縮む。
業界の大手が規模で費用を下げるなか、小さな工場の不利は年々大きくなる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向20%を目安にする。総額は年1億円に満たない。自社株買いはしていない。2026年7月には自己株式の処分をした。
優先しているのは借金の返済だ。シンジケートローン17.5億円には、利益や純資産の水準を守る約束が付いている。2024年3月期の減損で自己資本が減ったので、返済と自己資本の回復が先になる。
株主には東芝、稲畑産業、山口銀行など、取引の縁で持つ会社が並ぶ。電池の素材を握る会社として、東芝や商社が関わりを深める道はある。ただ、会社ごと買われる動きは見えない。中計はROE8%を目安に掲げるが、今の稼ぎは4%に届かない。
まずは借金を減らし、配当を守ることが先だと筆者は見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電池の素材という、他社が持たない札がある。チタン酸リチウムは、東芝のSCiBの負極に使われる。SCiBは燃えにくく、2万回以上の充放電に耐える。鉄道の回生電力、バスの急速充電、工場の無人搬送車など、採用は着実に広がっている。電気自動車の主流ではなくても、安全と寿命を重んじる用途は大きい。
化粧品の粉も伸びる。アジアでは日焼け止めの需要が増え、肌に優しい無機の紫外線散乱剤が好まれる。化粧品メーカーは処方の原料を簡単に変えないので、一度採用されれば長く売れる。中計はこの拡販を軸に据えている。
利益も底を打った。2024年3月期の減損で重荷を下ろし、その後は2期続けて黒字だ。今期も増益を見込む。設備投資を抑えたので、借金は着実に減っている。
会社は2036年に売上150億円を掲げる。半分でも達成すれば、利益は今の数倍になる。時価総額は28億円しかない。
電池か化粧品のどちらか一つが当たるだけで、今の値段は安すぎたことになる。
慎重な見方
借金が重すぎる。純負債は46億円で、時価総額の1.7倍、EBITDAの5倍に近い。金利が上がれば、借り換えのたびに利払いが増える。シンジケートローンには利益の水準を守る約束があり、業績が崩れれば返済を迫られる。
設備は古い。いまの設備投資は償却費の6分の1しかない。更新を先送りすれば、いずれ故障や品質の問題が出る。建て替える時には、建築費の上がった値段で払うことになる。
電池の素材は1社頼みだ。東芝が電池の方式を変えたり、事業を縮めたりすれば、チタン酸リチウムの注文は消える。2024年3月期の大きな減損も、電池の素材の投資を見直した結果だった。
化粧品の粉には、テイカや石原産業、堺化学工業という大きな競合がいる。中国のメーカーも品質を上げた。欧州では微粒子の酸化チタンへの規制の議論が続く。トナー向けの酸化鉄は、紙の減少とともに細る。営業利益率は過去12年で7%が最高で、売上150億円の目標は遠い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に分がある。電池と化粧品の芽は本物だが、それを生かすための資本が会社に無い。借金と古い設備は、数字で確かめられる重しだ。確率は中立を厚くし、悲観側を楽観側より厚く置いた。東芝のSCiBが大型の採用を決め、借金が半分に減れば、楽観に寄せる余地がある。逆に、設備の故障や借金の約束への抵触が出れば、悲観を厚くする。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,059 円32 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 207 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 559 円17 億円、今との差 −38.3%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,437 円73 億円 | 335 円10 億円 | +206.3% | +11.8% | 277 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,622 円48 億円 | 268 円8 億円 | +108.9% | +7.6% | 378 円11 億円 |
| 中立 | 38% | 1,190 円35 億円 | 235 円7 億円 | +57.4% | +4.6% | 541 円16 億円 |
| やや悲観 | 20% | 172 円5 億円 | 134 円4 億円 | −66.2% | −10.3% | 61 円2 億円 |
| 悲観 | 12% | 34 円1 億円 | 34 円1 億円 | −92.6% | −22.9% | 8 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,059 円32 億円 | 207 円6 億円 | +39.9% | +3.4% | 1,266 円38 億円 |
今の株価時価総額 905 円27 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 10% SCiBの採用が広がり、化粧品の粉も伸びる 利益 7 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,437 円73 億円
東芝のSCiBが鉄道やバス、工場の機械で採用を広げる。チタン酸リチウムの注文が増え、TBMの工場はフルに動く。化粧品向けの粉もアジアで伸び、酸化チタン関連の数量は1.5倍になる。稼働が上がり、利益率は8%に乗る。
酸化鉄はトナーが細るが、ブレーキと顔料が支え、数量はほぼ保つ。利益率は6.5%だ。
営業利益は10億円を超え、純利益は7億円近くになる。借金は返済が進み、利払いの増加を吸収する。配当は利益に合わせて増え、10年の還元は10億円だ。ROEは7%台で、資本コストにはまだ届かない。設備の更新もこの利益で賄える。
- 酸化チタン関連(化粧品向け・チタン酸リチウム):数量 9,000(販売数量(トン))× 価格 111(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 100 億円・営業利益 8 億円。数量1.5倍・単価1.34倍・利益率8%
- 酸化鉄関連(トナー・ブレーキ・顔料):数量 9,500(販売数量(トン))× 価格 42(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 40 億円・営業利益 3 億円。数量0.95倍・単価1.34倍・利益率6.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 73 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東芝のSCiBの大型採用と、アジアの化粧品向けの拡販が両方当たる必要がある。会社の2036年の売上150億円に近づく姿だが、利益率は過去12年の天井を超え、確度は低い。
やや楽観 20% 化粧品の粉が育ち、電池も少しずつ伸びる 利益 5 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,622 円48 億円
化粧品向けの粉が中国や東南アジアで採用を広げ、チタン酸リチウムも鉄道や工場の機械で少しずつ伸びる。酸化チタン関連の数量は1.3倍、単価は物価並みに上がる。利益率は6.5%に戻る。
酸化鉄はトナーの減少をブレーキと顔料で埋め切れず、数量は1割減る。利益率は5.5%だ。
営業利益は7億円台、純利益は4億円台だ。借り換えの金利は上がるが、借金の返済が進み利払いの増加は限られる。配当は少しずつ増え、10年の還元は8億円。ROEは5%台にとどまる。
設備の更新にもようやく手が付き、工場の故障のおそれは和らぐ。それでも、借金の重さは残る。
- 酸化チタン関連(化粧品向け・チタン酸リチウム):数量 7,800(販売数量(トン))× 価格 110(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 85 億円・営業利益 6 億円。数量1.3倍・単価1.32倍・利益率6.5%
- 酸化鉄関連(トナー・ブレーキ・顔料):数量 9,000(販売数量(トン))× 価格 42(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。数量0.9倍・単価1.32倍・利益率5.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:化粧品向けの拡販は中計の軸で、酸化チタン関連は前期8%の増収だった。電池の採用も細く続く。利益率を過去12年の天井近くに戻す姿で、中立より一段上。
中立 38% 化粧品が支え、トナーが細る 利益 3 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,190 円35 億円
化粧品向けの粉は伸び、電池の素材も細く続く。酸化チタン関連の数量は15%増え、単価は物価並みに近い1.3倍だ。利益率は5%に戻る。
酸化鉄はトナーの減少で数量が15%減る。ブレーキと顔料が残り、利益率は5%を保つ。
今の償却費は年7億円ほどで、取得した時の値段のままだ。設備投資を抑えた分、償却は一時的に軽くなる。しかし更新は避けられず、建築費の上がった値段で建て替える分だけ償却は戻る。会計の利益は物価で膨らんで見えるが、現金は細る。
営業利益は5億円台、借金は返済で半分ほどに減るが、借り換えの金利が上がり、純利益は3億円強にとどまる。10年の還元は7億円。ROEは4%で、資本コストの半分に届かない。
- 酸化チタン関連(化粧品向け・チタン酸リチウム):数量 6,900(販売数量(トン))× 価格 108(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。数量1.15倍・単価1.30倍・利益率5%
- 酸化鉄関連(トナー・ブレーキ・顔料):数量 8,500(販売数量(トン))× 価格 41(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。数量0.85倍・単価1.30倍・利益率5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 35 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:化粧品向けの伸びとトナー向けの細りは、どちらも直近の数字に表れている。利益率は過去12年の良い年並みに戻るが天井は破らない、実績に沿った姿を中心に置いた。
やや悲観 20% 中国勢に押され、利払いが利益を食う 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 172 円5 億円
中国のメーカーが品質を上げ、化粧品向けの粉でも値段の競争が始まる。電池の素材は東芝の伸びが鈍り、酸化チタン関連の数量は1割減る。値上げは物価に届かず、利益率は2%に落ちる。
酸化鉄はトナーの減少が速まり、数量は3割減る。利益率は2%だ。
営業利益は1.6億円しか残らない。借り換えの金利は3.5%に上がり、利払いでほぼ消える。純利益はわずかで、配当は細る。10年の還元は4億円だ。稼ぐ力で測る価値はほとんど無く、残るのは借金を返した後の土地と株のわずかな値打ちだ。
設備の更新に回すお金も無く、工場の老朽化が進む。顧客が品質を理由に離れる危うさも高まる。
- 酸化チタン関連(化粧品向け・チタン酸リチウム):数量 5,400(販売数量(トン))× 価格 100(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 1 億円。数量0.9倍・単価1.2倍・利益率2%
- 酸化鉄関連(トナー・ブレーキ・顔料):数量 7,000(販売数量(トン))× 価格 38(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量0.7倍・単価1.2倍・利益率2%
倍率:ROEはほぼ0%で、稼ぐ力(0.15億円÷k)は約1.6億円。持ち合いの株と土地の税後約3億円を床とし、今の自己資本53億円の0.057倍に置いた。EV(時価総額+純負債約46億円)÷営業利益は約30倍になるが、借金が利益をほぼ食う筋書きなので株主の取り分は床で測った。
確率:化粧品向けの粉は大手と中国勢に比べられ、トナー向けは細る。借り換えの金利の上昇は確実に来る。両方が重なれば、営業利益の大半が利払いに消える。
悲観 12% 電池の注文が消え、借金が重荷になる 利益 −4 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 34 円1 億円
東芝が電池の方式を見直し、チタン酸リチウムの注文が途絶える。TBMの工場は止まり、減損が出る。化粧品向けも欧州の規制の議論が広がり、需要が冷える。酸化チタン関連の数量は4割減る。
酸化鉄もトナーの減少で半分近くに縮む。全社は営業赤字に沈み、借金の約束に触れる。貸し手の求めで設備を売り、増資で資本を補う道もある。配当は止まり、10年の還元は1億円にとどまる。
株主に残るのは、借金を返した後のわずかな資産だ。
80年以上続いた工場は、規模を縮めて残る。だが、株主に報いる力は失われ、増資で持分も薄まる。小さな会社にとって、1社に頼る賭けの負けは重い。
- 酸化チタン関連(化粧品向け・チタン酸リチウム):数量 3,600(販売数量(トン))× 価格 91(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 33 億円・営業利益 −1 億円。数量0.6倍・単価1.1倍・赤字
- 酸化鉄関連(トナー・ブレーキ・顔料):数量 5,500(販売数量(トン))× 価格 35(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。数量0.55倍・単価1.1倍・赤字
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。売れる資産の税後は借入の返済でほぼ消え、戻り方0.5を掛けた床(約1億円)で、今の自己資本53億円の0.019倍に置いた。
確率:電池の素材の投資は2024年3月期に大きな減損を出した前例がある。東芝の電池の方式が変われば注文は消える。借金の約束に触れれば、資本の再編を迫られる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
酸化チタン関連(化粧品向け・チタン酸リチウム)
化粧品向けの微粒子の酸化チタンと、子会社TBMで作る電池用のチタン酸リチウムなど。
| 数量販売数量(トン) | 価格1トンあたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 83 | 50 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6,900 | 108 | 74 | 4 |
取り方:2026年3月期の酸化チタン関連の売上49.81億円・営業利益1.08億円(有報)。数量の開示は無く、化粧品向けと電池向けの特殊品をならした1トン約83万円と置いて約6,000トンとした推定。
酸化鉄関連(トナー・ブレーキ・顔料)
トナー用の磁性の酸化鉄、ブレーキパッドの摩擦材、塗料・化粧品の顔料。
| 数量販売数量(トン) | 価格1トンあたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 32 | 32 | 2 |
| 10 年後 中立 | 8,500 | 41 | 35 | 2 |
取り方:2026年3月期の酸化鉄関連の売上31.56億円・営業利益1.80億円(有報)。数量の開示は無く、1トン約32万円と置いて約1万トンとした推定。連結の営業利益2.99億円との差0.11億円は調整額。
リスクと懸念
借金と金利
純負債は46億円で、EBITDAの5倍に近い。借り換えの金利が3.5%に上がれば、利払いは年1億円以上増え、営業利益の3分の1を食う。シンジケートローンの約束に触れれば、返済を迫られる。
東芝への依存
売上の16%は東芝向けで、チタン酸リチウムはSCiBという1つの電池に頼る。電池の方式が変われば、TBMの工場は止まる。2024年3月期の大きな減損はその前触れだった。
古い設備
設備投資は償却費の6分の1しかなく、更新を先送りしている。故障や品質の問題が出れば、顧客を失う。建て替える時は建築費の上がった値段で払うことになる。
微粒子の酸化チタンの規制
欧州では食品への酸化チタンの使用が禁じられ、化粧品にも議論が及ぶ。規制が広がれば、主力の化粧品向けの粉の需要が冷える。
競争と原料の市況
化粧品向けではテイカ、石原産業、堺化学工業、中国のメーカーと比べられる。原料のチタン鉱石と燃料の値段は世界の市況で動き、値上げは遅れてしか通らない。
今後の分かれ目
- 東芝のSCiBが大型の採用を決め、TBMの売上が2期続けて2割超伸びたら
- やや楽観の確率を厚くし、酸化チタン関連の数量を上げる。
- 純負債が25億円を切ったら
- 借金の上乗せを減らし、資本コストを下げる。
- 全社の営業利益率が2期続けて6%を超えたら
- 中立の利益率を上げ、楽観側を厚くする。
- 欧州で化粧品の微粒子の酸化チタンが規制されたら
- 悲観の確率を厚くし、化粧品向けの数量を下げる。
- 設備の大きな故障や、借金の約束への抵触が開示されたら
- 悲観の確率を厚くし、資本の再編を筋書きに入れる。
見ておくもの
- 酸化チタン関連と酸化鉄関連のセグメント利益
- 東芝向けの売上とSCiBの採用
- 純負債と支払利息
- 設備投資と減価償却の差
- 欧州の酸化チタンの規制
- 配当性向
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPBRは見ずに、酸化チタンと酸化鉄の数量と単価から10年後の利益を積み、借り換えの金利を純利益に入れた。どの筋書きもROEは資本コスト9.5%を下回るので、PERは1÷k(約10.8倍)を上限に利益の質で74〜88%に置いた。悲観側は借金が重く稼ぐ力がほぼ無いので、持ち合いの株と土地の税後を床にした。今のPBR0.5倍は割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→10.53 倍・やや楽観 PER 9→10.53 倍・中立 PER 8→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。