結論
昭和化学工業は、珪藻土という藻の化石の土を掘り、ビールや飲料をこす「ろ過助剤」に加工して売る会社だ。売上の6割がこのろ過助剤で、残りは建材の充填材とプールの塩素剤である。筆者の結論は、今の値段はやや割高だということだ。
事業は地味だが堅い。岡山・秋田・大分に鉱山と工場を持ち、ビール会社や製薬会社に長く納めてきた。客にとってろ過助剤は原価の小さな部品で、品質が安定していれば取引先を変える理由は少ない。
ただ、量は伸びない。国内のビールの量は減り続け、ろ過の方式も膜に置き換わる流れがある。営業利益は年4〜6億円の幅で、10年前から大きくは変わっていない。
本業の外の稼ぎが大きいのも特徴だ。中国の合弁の鉱山会社の持分の利益と、27億円ほどある持ち合いの株の配当が、営業利益に近い額を毎年足している。自己資本利益率は5〜7%で、資本コストの8%に届かない。帳簿の厚さに比べて株価は安く見えるが、ためた資本の稼ぎが低い以上、その割安は見かけにすぎない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、悪くはないが、熱心に持ちたいとも思いにくい会社だ。鉱山という替えのきかない資産を持ち、客との取引も長い。10年後も事業が残る確度は高い。
オーナー利益、つまり再投資を引いた株主に残る利益は、純利益より少し少ない。鉱山と工場の更新に年3〜4億円が要り、建築費の上昇でこの額は膨らむ。償却は年2.8億円で、更新の投資がそれを上回る分だけ現金が出ていく。
気になるのは資本の使い方だ。持ち合いの株を27億円抱え、配当は利益の2割しか出ない。ためた資本が資本コストを下回る稼ぎしか生まないなら、帳簿の厚さは値打ちにならない。自己株の取得は良い兆しだが、規模は小さい。
安全域は薄い。時価総額は自己資本の6割だが、それは稼ぐ力の低さに見合った値段だ。筆者は、持ち合いの株を売って株主に戻すか、膜ろ過に負けない新しい用途を育てるか、どちらかの変化を待ちたい。
何で稼ぐ会社か
事業は、珪藻土とパーライトという2つの鉱物を加工して売ることに尽きる。開示上のセグメントは1つで、製品の用途で4つに分けて売上を出している。
最大はろ過助剤の57億円だ。珪藻土を焼いて粉にしたもので、ビール・清涼飲料・醤油・製薬・化学品の製造で、液体の濁りをこし取るのに使う。ごみ焼却場の排ガスの処理にも使われる。客は飲料や食品の大手で、品質の安定と、決まった量を決まった時に届けることが求められる。
次が建材・充填材の15億円で、壁材や塗料、肥料に混ぜる材料だ。化成品も15億円で、プールや浄化槽の塩素剤を仕入れて売る。残りがその他である。
生産の拠点は、岡山県真庭市の工場が中心で、秋田と大分の工場、山形の鶴岡、栃木にも持つ。自前の鉱山から原料を掘れることが、輸入に頼る競合に対する強みになる。一方で、良い原料を長く確保し続けることは会社自身が課題に挙げている。
海外では、中国の白山市の鉱業会社に40%を出資し、その製品を北京の子会社を通じて世界に売る。持分の利益は営業外に入る。電子部品のオーベクスにも15.5%を出資する。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、自前の鉱山と客との長い取引にある。珪藻土は掘れる場所が限られ、新しく鉱山を開くには許認可と年月が要る。ろ過助剤は客の製品の品質を左右するので、一度採用されると簡単には替えられない。
ただ、その堀は値段を大きく引き上げるほど強くはない。営業利益率は過去12年で3〜8%の幅にとどまり、原料や燃料の値上がりを転嫁しきれない年がある。輸入品や、膜を使ったろ過という別の方式とも比べられる。
資本効率は低い。過去10年の自己資本利益率の中央値は7.3%で、資本コストの8%を下回る。自己資本94億円のうち3割ほどは持ち合いの株で、その配当は利益に入っているが、利回りは低い。
財務は堅い。純現金は6億円で、自己資本比率は64%だ。経営は創業家の石橋家とその関係先が4割超を持ち、外からの圧力は受けにくい。それは安定でもあり、資本の使い方が変わりにくい理由でもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ろ過助剤の需要は、飲料と食品の生産量に連動する。国内のビールの量は、若い人の酒離れと人口の減少で長く減ってきた。清涼飲料や醤油、製薬の量は比べて安定しているが、大きくは伸びない。会社自身も、国内では大幅な需要の伸びは期待できないと見ている。
技術の面では、膜を使ったろ過が広がりつつある。膜は繰り返し使え、使い終わった珪藻土の処分が要らない。大手のビール工場が設備を更新する時に膜を選べば、ろ過助剤の量はその分だけ消える。置き換えはゆっくりだが、10年では無視できない。
一方で、追い風もある。ごみ焼却場の排ガスの処理や、水の浄化など、環境の用途は根強い。建材の分野でも、珪藻土の調湿の性質が好まれる。
世界では、珪藻土の大手は米国や欧州に鉱山を持つ会社で、価格の基準を作っている。昭和化学工業は中国の合弁を通じて海外に売るが、規模は小さい。国内では、自前の鉱山と物流の近さで輸入品に対抗する形だ。
10年先の分かれ目は2つだ。ひとつは、膜ろ過への置き換えがどこまで進むか。もうひとつは、良い原料を長く掘り続けられるかである。
資本政策と M&A
還元は細い。2026年3月期の配当は総額1.1億円で、純利益の2割弱だった。ただ、自己株の取得は続けており、発行済み株の1割強を自社で持つ。2026年4〜6月にも株数は3%ほど減った。
大株主は、創業家の石橋家の資産会社とみられるシグマが16%、石橋健藏氏が12%、石橋奨学会が8%で、関係先を合わせると4割を超える。親会社は無いが、オーナーの支配が強い会社だ。
持ち合いの株は上場の18銘柄で27億円ある。時価総額の半分にあたる。売る方針の開示は無く、配当は利益に入っているので、価値に別には足していない。
中期経営計画は、2030年度に売上110億円、EBITDA9億円を目標にする。岡山工場の改修に7億円弱を投じ、補助金で一部をまかなう。M&Aで新しい事業を作ることも掲げるが、具体的な案件は示していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
珪藻土は掘れる場所が限られた資源で、国内に鉱山と工場を持つ会社は少ない。ビール会社や製薬会社は、品質の安定した原料を長く確保したい。昭和化学工業は、その相手として替えがききにくい。
値上げも通り始めた。原料と燃料の値上がりを受けて価格を見直し、2026年3月期は営業利益が増えた。物価が年3%上がる世界では、必需の素材の値上げは受け入れられやすい。
本業の外の稼ぎも厚い。中国の合弁の持分の利益と持ち合いの株の配当で、毎年3億円以上が足される。持ち合いの株は27億円あり、売れば時価総額の半分になる。自己株の取得も続けており、資本の使い方は少しずつ株主の方を向いている。
設備の手当ても進む。岡山工場の改修には補助金も付き、生産の効率が上がれば利益率は過去の最良の8%近くに戻せる。中期経営計画のEBITDA9億円は、今の7億円台から無理のない目標だ。環境の用途、つまりごみ焼却場の排ガスや水の浄化は、人口が減っても量が落ちにくい。
慎重な見方
ビールの国内の量は減り続けている。膜ろ過への置き換えが進めば、ろ過助剤の量は数量の減り以上に落ちる。売上は10年前とほとんど変わらず、営業利益も4〜6億円の幅から出ていない。
資本の使い方は株主を向いていない。配当は利益の2割で、持ち合いの株を27億円も抱える。創業家が4割超を握り、外から変える力は無い。ためた資本は資本コストを下回る稼ぎしか生まない。
原料の確保も心配だ。会社自身が長期的な原料の供給体制を課題に挙げている。良い鉱脈が尽きれば、掘る費用が上がって利益が削られる。中国の合弁の利益も、中国の景気と政策しだいで振れる。
本業の外の稼ぎに頼る形も危うい。純利益の半分近くは、中国の合弁の持分の利益と持ち合いの株の配当だ。中国の景気や政策で合弁の利益が細れば、純利益は一気に縮む。持ち合いの株の配当は利回りが低く、27億円の資本を寝かせている割に稼ぎは小さい。創業家の支配の下では、それを変える手立ても乏しい。
どちらに重みを置いたか
両方の言い分はほぼ釣り合うが、慎重な見方がわずかに強い。鉱山という資産と客との長い取引は確かな強みだが、数量の減りと膜ろ過への置き換えも同じくらい確かだ。値上げは物価並みにとどまり、資本の使い方も大きくは変わらない。中立は営業利益率5%で数量が1割弱減る形に置き、確率は少し悲観の側に寄せた。値段の面でも、今の時価総額は中立の稼ぐ力とほぼ見合う。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 842 円90 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 114 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 468 円50 億円、今との差 −10.1%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,248 円133 億円 | 190 円20 億円 | +176.5% | +10.7% | 115 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,105 円118 億円 | 137 円15 億円 | +138.8% | +9.1% | 248 円26 億円 |
| 中立 | 37% | 989 円105 億円 | 125 円13 億円 | +114.3% | +7.9% | 412 円44 億円 |
| やや悲観 | 23% | 575 円61 億円 | 79 円8 億円 | +25.7% | +2.3% | 150 円16 億円 |
| 悲観 | 12% | 190 円20 億円 | 61 円7 億円 | −51.8% | −7.0% | 30 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 842 円90 億円 | 114 円12 億円 | +83.8% | +6.3% | 956 円102 億円 |
今の株価時価総額 520 円55 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 値上げが定着し、新しい用途も育つ 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,248 円133 億円
10年後、昭和化学工業は値上げを物価以上に通せる会社になっている。良い珪藻土を掘れる場所が世界で減り、自前の鉱山の値打ちが上がる。ろ過助剤の量は製薬や環境の用途に広がって5%増え、利益率は9%に上がる。
中国の合弁は世界への販路を広げ、持分の利益も伸びる。営業利益は9億円台で、中期経営計画のEBITDAの目標を超える。配当は利益の4分の1に上がる。それでも自己資本は積み上がり、自己資本利益率は資本コストに少し届かない。持ち合いの株を売る判断はまだ出ない。
環境の用途、つまりごみ焼却場の排ガスや水の浄化も、自治体の設備の更新とともに広がる。
- 濾過助剤:数量 33,358(推定出荷量(トン))× 価格 25(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 8 億円。製薬・環境の用途で増える
- 建材・充填材・その他:数量 35,910(推定出荷量(トン))× 価格 8.28(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。調湿建材が伸びる
- 化成品:数量 3,300(推定販売量(トン))× 価格 69(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。少し増える
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと新しい用途がそろって育つ道。数量の縮みを越える必要があり、確率は低い。
やや楽観 20% 値上げが物価並みに通り、数量を保つ 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,105 円118 億円
10年後、昭和化学工業は数量をほぼ保ちながら、値上げを物価並みに通している。ビールの量は減るが、製薬・化学・ごみ焼却場の用途で補い、ろ過助剤の量は2%減にとどまる。利益率は8%で、過去の最良の水準に近い。
営業利益は7億円台で、持分の利益と配当を合わせた純利益は8億円を超える。配当は利益の2割を保ち、自己株の取得も続ける。自己資本は150億円に積み上がり、自己資本利益率は5%台だ。帳簿は厚いが、稼ぎの率は上がらない。
岡山工場の改修で生産の効率も上がり、燃料の値上がりを吸収しやすくなる。ビール会社との取引も、品質の安定で続く。
- 濾過助剤:数量 31,135(推定出荷量(トン))× 価格 25(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 77 億円・営業利益 6 億円。数量をほぼ保つ
- 建材・充填材・その他:数量 34,200(推定出荷量(トン))× 価格 8.16(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 化成品:数量 3,150(推定販売量(トン))× 価格 68(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。少し増える
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 104 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの浸透と、ビール以外の用途で数量を保つ道。直近の増益が裏づけになる。
中立 37% 量は1割弱減り、値上げは物価並み 利益 7 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 989 円105 億円
10年後、昭和化学工業は今と同じ姿で稼ぎ続けている。ろ過助剤の量はビールの縮みと膜ろ過への置き換えで8%減り、値上げは物価並みにとどまる。利益率は7%で今と同じだ。
売上は117億円ほどになり、中期経営計画の110億円をやや上回る。営業利益は6億円弱で、持分の利益と配当を足した純利益は7億円だ。配当は利益の2割で、自己資本は150億円近くに積み上がる。自己資本利益率は5%を割り、資本コストに届かない。持ち合いの株はそのまま残り、ためた資本は配られない。創業家が支配する、静かな会社であり続ける。
岡山工場の改修は終わるが、効率の改善は燃料と人件費の上昇で打ち消される。
- 濾過助剤:数量 29,228(推定出荷量(トン))× 価格 24(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 71 億円・営業利益 5 億円。8%減
- 建材・充填材・その他:数量 32,490(推定出荷量(トン))× 価格 8.04(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。5%減
- 化成品:数量 3,000(推定販売量(トン))× 価格 67(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 89 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の量の緩やかな縮みと物価並みの値上げという、会社自身の見方にも沿う中心の見通し。
やや悲観 23% 膜ろ過への置き換えが進み、量が2割減る 利益 5 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 575 円61 億円
10年後、大手のビール工場の多くが設備の更新で膜ろ過に切り替えている。ろ過助剤の量は2割減り、工場の稼働が下がって利益率は5%に落ちる。建材と化成品も量が減る。
営業利益は3億円台に下がり、純利益の半分以上を持分の利益と配当が占める形になる。本業の稼ぎは細るが、配当は利益の15%ほどを守る。自己資本は140億円を超えて積み上がるが、自己資本利益率は3%台だ。ためた資本の値打ちは帳簿を大きく下回る。
中国の合弁の利益は保たれるが、本業の縮みを補うほどではない。燃料と電気代の上昇も、値上げで取り返しきれない年が増える。
- 濾過助剤:数量 25,416(推定出荷量(トン))× 価格 23(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 3 億円。膜ろ過で2割減
- 建材・充填材・その他:数量 29,070(推定出荷量(トン))× 価格 7.80(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。15%減
- 化成品:数量 2,850(推定販売量(トン))× 価格 65(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。少し減る
倍率:ROE3.5%がk8.0%以下なので上限は1÷k=12.5倍。稼ぐ力(純利益÷k)の約7割の8.5倍。本業の稼ぎが細り、営業外に頼る利益の質を割り引いた。
確率:大手のビール工場の設備更新で膜ろ過が選ばれる道。置き換えの流れは確かにあり、2割強と置いた。
悲観 12% 膜ろ過と原料難で、本業の稼ぎが消える 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 190 円20 億円
10年後、昭和化学工業は構造的に負けている。膜ろ過への置き換えが一気に進み、ろ過助剤の量は3分の2に減る。良い鉱脈が細り、掘る費用と燃料の値上がりで利益率は1%に落ちる。
本業の営業利益はほぼゼロで、純利益は持分の利益と持ち合いの株の配当だけで2億円台だ。中国の合弁の利益も、現地の景気で細る。配当は細り、自己株の取得も止まる。資産は持ち合いの株と鉱山の土地が中心だが、創業家が支配する会社で、少数の株主にはそれを売らせる力が無い。
帳簿の自己資本は残っても、それを生かす稼ぎが無い。株主に戻るのは細い配当だけだ。
- 濾過助剤:数量 20,650(推定出荷量(トン))× 価格 23(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 47 億円・営業利益 0 億円。3分の2に減る
- 建材・充填材・その他:数量 23,940(推定出荷量(トン))× 価格 7.50(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。赤字
- 化成品:数量 2,400(推定販売量(トン))× 価格 63(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。収支とんとん
倍率:本業の稼ぎがほぼ無く、PERでは測りにくい。稼ぐ力(純利益2.4億円÷k)約30億円の7割弱で、持ち合いの株と純現金に戻り方0.75を掛けた床(約21億円)とほぼ同じ。今の自己資本93.9億円に0.215倍(約20億円)。
確率:膜ろ過への置き換えと原料の確保の難しさが重なる構造的な負け。会社自身が原料を課題に挙げており、1割強と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
濾過助剤
珪藻土・パーライトを焼いて粉にしたろ過材。ビール・飲料・醤油・製薬・化学、ごみ焼却場の排ガス処理に使う。
| 数量推定出荷量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 31,770 | 18 | 57 | 4 |
| 10 年後 中立 | 29,228 | 24 | 71 | 5 |
取り方:有報の濾過助剤の売上57.19億円。数量は開示が無く、平均単価を1トン18万円と置いて約3.2万トンと推定。利益は単一セグメントで開示が無く、全社の営業利益4.5億円を濾過助剤に厚く割り振った推定(本社費も配って含める)。中立の数量はビールの量の縮みと膜ろ過への置き換えで10年0.92倍、価格は物価並み1.34倍。償却は年2.8億円で取得した時の値段のまま、岡山工場の改修の分だけ新しい値段で足され、10年で年3.5〜4億円に増える。物価で増える他の費用と合わせて利益率は今と同じ7%前後に置いた。
建材・充填材・その他
壁材・塗料・肥料などに混ぜる珪藻土・パーライトの材料と、その他の製品。
| 数量推定出荷量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34,200 | 6.00 | 21 | 0 |
| 10 年後 中立 | 32,490 | 8.04 | 26 | 1 |
取り方:有報の建材・充填材14.97億円とその他5.56億円の合計。平均単価を1トン6万円と置いて約3.4万トンと推定。利益は推定の割り振り。中立の数量は住宅の減少で10年0.95倍、価格は物価並み。
化成品
プール・浄化槽・温浴施設向けの塩素剤など。仕入れて売る商品が中心。
| 数量推定販売量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 50 | 15 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 67 | 20 | 0 |
取り方:有報の化成品の売上15.02億円。平均単価を1トン50万円と置いて約3千トンと推定。利益は推定の割り振り。中立の数量は10年横ばい、価格は物価並み。
リスクと懸念
膜ろ過への置き換え
ビール工場では、繰り返し使える膜でこす方式が広がりつつある。使い終わった珪藻土の処分が要らないのが利点だ。大手の工場が設備の更新で膜を選べば、ろ過助剤の量はその分だけ消える。置き換えはゆっくりだが、10年では大きく効く。
国内のビールの量の縮み
ろ過助剤の最大の用途はビールで、国内の量は人口の減少と酒離れで減り続けている。清涼飲料や製薬で補っても、ビールの減り分を埋めきれない年が続けば、売上は伸びない。
原料の確保
会社自身が、長期的な原料の供給体制の構築を課題に挙げている。良い鉱脈が細れば、掘る費用が上がり、品質も揺らぐ。新しい鉱山を開くには許認可と年月が要り、すぐには代わりが見つからない。
資本の使い方
持ち合いの株を27億円抱え、配当は利益の2割弱にとどまる。創業家と関係先が4割超を持ち、少数の株主には資本の使い方を変える力が無い。ためた資本が資本コストを下回る稼ぎしか生まない状態が続く。
中国の合弁の振れ
中国の鉱業会社への出資の利益は営業外に入り、純利益の大きな部分を占める。中国の景気や環境の規制、為替で利益は振れ、配当として日本に戻る額も読みにくい。
燃料と電気代
珪藻土を焼くには燃料を多く使う。重油やガス、電気代が上がれば、値上げが追いつくまでの間は利益が削られる。脱炭素の規制で燃料の転換を迫られれば、設備の投資も膨らむ。
今後の分かれ目
- 持ち合いの株を売り、その資金で自社株買いや増配をしたら
- ためた資本が株主に戻る道ができたと見て、戻り方を1.0に上げ、倍率の割引も小さくする。
- 大手のビール会社が膜ろ過への切り替えを発表したら
- ろ過助剤の量の減りが速まると見て、やや悲観の確率を厚くする。
- 値上げが続き、営業利益率が7%を2年続けて超えたら
- 値決めの力を認め、やや楽観の側へ確率を移す。
- 岡山工場の改修で生産の効率が上がり、費用が下がったら
- 中期経営計画のEBITDA9億円に近づくと見て、中立の利益率を引き上げる。
- 中国の合弁の利益が大きく落ちたら
- 純利益の土台が細ると見て、悲観の側の確率を見直す。
見ておくもの
- 濾過助剤の売上と数量の動き
- 国内のビールの出荷量と膜ろ過の採用
- 営業利益率と値上げの浸透
- 持分法の利益と受取配当の額
- 持ち合いの株の売却と自社株買い・配当の方針
- 岡山工場の改修の進み具合
倍率と資本コストの決め方
3つの用途に分け、数量は推定(濾過助剤はビールの縮みと膜ろ過で10年0.92倍)、価格は物価並み1.34倍。中立の営業利益率5.0%は過去12年の最良7.8%以下で、中計の売上110億円とほぼ同じ水準。償却は年2.8億円を取得した時の値段のまま、改修の分だけ新しい値段で足して10年で年3.5〜4億円(10年の合計約33億円)。営業外の持分の利益と配当は利益に残し、持ち合いの株の価値は別に足していない。倍率はROEがk8.0%以下で上限1÷kの7〜9割。今のPBR0.6倍前後や時価総額から逆算していない。リースは小さく、新リース基準で形はほぼ変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.5 倍・やや楽観 PER 11→12.5 倍・中立 PER 10.5→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+0.5%を足した8.0%。堀は普通(残る割合1/2)。