結論
共和レザーは、自動車のシートやドアトリムに貼る合成皮革の国内最大手だ。トヨタが3割強を持つ持分法適用会社で、車向けが売上の9割近い。筆者の結論は「やや割高」である。シェアは強いが、稼ぐ力が細りすぎている。
直近の営業利益は9億円。売上558億円に対して1.7%しか残らない。会社は今期、営業赤字を見込む。中東情勢による原材料高と、老朽設備の更新やDXの償却が重なったためだ。
それでも会社は2031年3月期に営業利益50億円を掲げる。筆者は、そこまでは戻らないと見る。完成車メーカーには毎年、原価低減を求められる。値上げの交渉力は弱い。価格転嫁のルールは整えたが、まだ実績がない。
10年後の中立では、営業利益は35億円にとどまる。時価総額は今の水準を少し上回る程度で、配当を足しても資本コストを稼げない。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を2割弱下回る。
下支えもある。純現金が52億円あり、配当は利益を上回って払い続けている。トヨタ系の再編でTOBに至る可能性も否定できない。ただし、それは値段の話であり、事業が生む価値の話ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい会社には届かない。稼ぐ力が資本コストに届かないからだ。
事業の本質は単純で、国内の内装合皮という居場所は堅い。10年後も車は走り、座席には表皮が要る。ただし、その居場所の地代にあたる利益は、完成車メーカーが決める。シェアが高くても、値段を決める側にはいない。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主のものになる利益は、いまほぼゼロだ。償却の増える投資期で、配当は利益を超えている。投資が実れば利益は戻るが、中立でもROEは6〜7%にとどまり、資本コストの8.5%に届かない。
安全域は薄い。確率で重みを付けた本質価値は、今の値段より2割弱低い。純現金や厚い自己資本は足元を支えるが、稼げない資産の帳簿価値は、その額では売れない。トヨタ系再編の思惑はあるが、本質価値の計算には入れない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、車内の「革」だ。本革の代わりに使う合成皮革(生地に塩ビやポリウレタンの樹脂を貼り合わせた素材)を作り、シートやドアトリム、コックピットの表皮として内装メーカーに納める。主な納入先はテレンプ(林テレンプ)などで、最終顧客はトヨタ系の完成車メーカーだ。
売上の約9割が車両用。残りは住宅・住設向け(壁装材やソファの表皮)と、ファッション・生活資材(バッグ・靴・雑貨向けや個人向けのEC)である。車両用は国内で約7割のシェアを持つとされ、世界でも2番手と紹介される。
材料は生地(基布)と樹脂。生地の主な購入先だった東宝繊維を子会社にして、開発を内製化し、納期とコストを縮める狙いだ。海外は中国などに生産拠点を持ち、北米向けも出す。いまは北米向けの減少と、販売構成の悪化が利益を削っている。
成長の一手がインドだ。2026年9月にKYOWA INDIAを設立し、約29億円を増資する。2027年に工場を立ち上げ、2030年に営業利益6億円を目指す。数字としては大きくない。筆者は、国内の成熟を埋める程度の効果と見る。
優良さと弱いところ
良い会社か。筆者は「堀は中くらい、値決め力は弱い」と見る。
強みは、国内の合成皮革で積み上げたシェアと、トヨタ系の長期取引だ。内装の素材は、意匠と耐久性の承認に時間がかかる。いったん採用されれば、車種のモデルチェンジの数年は乗り換えにくい。トヨタ自動車が筆頭株主(35%)で、取引は安定している。
弱みは三つある。第一に、顧客が偏る。トヨタ系の生産計画が、そのまま売上を決める。第二に、完成車メーカーは毎年の原価低減を求めてくる。原材料高を転嫁するには交渉と時間がかかる。第三に、資本効率が低い。自己資本は366億円と厚いが、ROEは直近で2%を下回る。過去10年の中央値でも5%に届かない。
経営については、配当を利益以上に払い続ける姿勢が目を引く。株主には優しいが、積極投資の期にこれは苦しい。バリュー投資家の目で見れば、資本を回して高い収益を得ている会社ではなく、守りで資産を抱える会社だ。
安全域は、純現金と厚い自己資本にある。ただし、稼ぐ力が戻らない限り、帳簿の厚みは価値の裏づけにならない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
車の内装用表皮の需要は、車の生産台数に連動する。国内は人口減で横ばいから微減、海外が補う。世界の生産は8,000万〜9,000万台規模で、10年で大きくは増えない。数量の伸びは、新興国(インド)と搭載率の高まりに限られる。
構造の変化は二つある。電動化が進むと、車内の静かさと質感を訴える意匠が重みを増し、本革代替の合皮の需要は保たれやすい。一方で、軽量化とコスト圧力が増し、完成車メーカーは素材の見直しを続ける。ファブリックや不織布、人工皮革と競合する面もある。
価格は、物価で上がるはずが、完成車メーカーの原価低減要請で相殺されやすい。直近は中東情勢で樹脂と溶剤が上がり、転嫁の遅れが利益を圧迫した。会社は契約条件を改めたが、効果は今後の実績で確かめる必要がある。
競合は、国内ではセーレン(車の内装用の合成皮革)、クラレ(人工皮革)など。海外は韓国・中国・インドの合皮メーカーが追い上げる。完成車メーカーが海外で現地調達を進めるほど、国内メーカーの輸出は不利になる。北米の関税は直接のコストでなく、現地化の圧力として効く。
資本政策と M&A
資本政策は、配当が最優先だ。配当は利益を大きく上回る水準で据え置かれ、純現金は2年で134億円から52億円へ減った。減ったのは、老朽更新とインドを含む積極投資に回したためだ。
M&Aは東宝繊維を子会社化した。生地の内製化が狙いで、規模は小さい。大型の買収はしていない。
見ておくべきは、トヨタ系の再編だ。トヨタ自動車が3割強を持つ持分法適用会社で、豊田通商も6.5%を持つ。系列の整理でTOB(株式公開買い付け)や完全子会社化に進む可能性は、kabufuの推計で10年以内に3割弱ある。起きれば値段は跳ねるが、それは筆者が測る本質価値とは別の話だ。
純現金は、運転資金とインドの工場投資に先行して使うため、余った現金としては切り分けない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
中計どおりに戻れば、利益は数倍になる。老朽設備の更新が終われば、不良と手直しが減って歩留まりが上がる。東宝繊維の内製化で、開発の速度と原価が一段よくなる。価格転嫁の契約条件を整えたので、原材料高は次からは利益を削りにくい。
インドは、トヨタ系の増産に合わせた現地生産で、国内の穴を埋める。2030年に営業利益6億円という計画は、小さく見えて、利益率の高い成長だ。
さらに、純現金と厚い自己資本が下値を支える。トヨタ系の再編でTOBが起きれば、評価は一気に切り上がる。営業利益率が過去の山の8%台に戻れば、時価総額は今の倍以上になる。
国内で7割のシェアを持つ会社が、1.7%の利益率で止まっているのは異常だ。完成車メーカーの承認を得た素材は、数年は乗り換えられない。その参入障壁を考えれば、利益が戻らない理由のほうが見つからない。
名目の売上は物価で増える。固定費の増え方が物価に追いつかなければ、利益率は自然に戻る。更新投資で設備の効率が上がれば、同じ人数でより多くを作れる。インドの現地生産は、トヨタ系の海外展開と歩調を合わせるので、取引の安定も続く。
慎重な見方
この会社は、過去12年、営業利益率が8%を超えたことがない。直近は1.7%まで落ち、今期は赤字予想だ。中計の9%は、実績から大きくかけ離れている。
値段を決めるのは完成車メーカーだ。原価低減の要請は毎年かかり、転嫁のルールを整えたと言っても、実際の交渉は始まったばかりだ。償却は先に載り、利益は後から来る。投資が実らなければ、赤字が続く。
北米は関税と現地化の圧力で縮み、中国と韓国の合皮メーカーが中位品から追い上げる。国内の車の生産は増えない。配当は利益の倍近い額を払っていて、純現金は2年で80億円以上減った。このペースが続けば、財務の余裕は数年で尽きる。
しかも、利益が戻る前提の中計は、更新投資と原価低減の両方を同時に成功させる必要がある。トヨタ系が株主であることは安心材料に見えるが、取引先としては厳しい交渉相手でもある。
人件費も物価で上がり、製造の現場は人手不足が深刻だ。更新投資の償却は、需要が弱ければそのまま固定費の重さになる。中国や韓国の合皮メーカーが中位品でシェアを取れば、国内の価格は押さえ込まれる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。強気の筋書きは、中計の達成と価格転嫁の定着という二つの仮定に依存するが、どちらも実績がない。
一方、純現金と厚い自己資本は、悲観を深くはさせない。確率は中立に35%、やや悲観に27%、悲観に13%を置き、楽観側は合わせて25%にとどめた。結論は、10年後の価値が今の時価総額を2割弱下回る「やや割高」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,217 円290 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 513 円122 億円)。 今の値に割り戻すと 913 円218 億円、今との差 +3.8%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,078 円734 億円 | 965 円230 億円 | +359.4% | +16.5% | 323 円77 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,998 円476 億円 | 671 円160 億円 | +203.4% | +11.7% | 454 円108 億円 |
| 中立 | 35% | 1,416 円338 億円 | 566 円135 億円 | +125.3% | +8.5% | 694 円165 億円 |
| やや悲観 | 27% | 376 円90 億円 | 378 円90 億円 | −14.4% | −1.5% | 203 円48 億円 |
| 悲観 | 13% | 261 円62 億円 | 168 円40 億円 | −51.3% | −6.9% | 56 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,217 円290 億円 | 513 円122 億円 | +96.6% | +7.0% | 1,730 円412 億円 |
今の株価時価総額 880 円210 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 中計を達成し、利益が戻る 利益 53 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 3,078 円734 億円
更新投資が実り、不良と手直しが減る。東宝繊維の内製化で開発が速くなり、原価も下がる。価格転嫁のルールが定着し、原材料高を次の年には売値に載せられるようになる。インドの工場が立ち上がり、トヨタ系の増産にも付いていく。
搭載台数は700万台に増える。1台あたりの売上は、内装の高級化で物価を少し上回る。営業利益は70億円近くに戻り、営業利益率は8%に迫る。過去の山(8.1%)に並ぶ水準だ。
自己資本もこの間に厚くなるが、ROEは10%台に乗る。評価も、残る利益の質を映して上がる。ただし、この姿は10年のうち数年しか続かないと見ておく。
この筋書きが成り立つ条件は、車の生産が落ちないことと、転嫁の交渉が毎年通ることだ。どちらかが欠ければ、下の筋書きへ移る。
- モビリティ(車両用内装表皮):数量 700(搭載車の台数(万台))× 価格 1.11(1 台あたりの売上(万円・名目))→ 売上 779 億円・営業利益 66 億円。700万台 × 1台1.11万円(物価1.38倍)、営業利益率8.5%
- インダストリー(住宅・住設向け):数量 230(出荷面積(万㎡))× 価格 0.20(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 3 億円。230万㎡ × 0.201万円、営業利益率7%
- ファッション・生活資材:数量 240(出荷面積(万㎡))× 価格 0.27(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 64 億円・営業利益 3 億円。240万㎡ × 0.268万円、営業利益率4%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.84 倍、時価総額 734 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計は過去の実績から大きく離れ、値上げの実績も浅い。達成には更新投資の成功と転嫁の定着の両方が要るので低く置いた。
やや楽観 17% 更新投資が実り、緩やかに戻る 利益 38 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 1,998 円476 億円
償却の山は2〜3年で通り過ぎ、利益が戻り始める。価格転嫁は部分的に成功し、物価分の大半を売値に載せられる。インドが小さく貢献し、搭載台数は650万台に増える。
営業利益は50億円弱、営業利益率は6%前後。過去12年のうち、これを上回ったのは上位3年だけだ。国内の車の生産は増えないが、北米と東南アジアで失った分を取り戻す。
ROEは8%台で資本コストにわずかに届かない。配当は利益に見合う水準に収まり、純現金はゆっくり積み上がる。
株主にとっては悪くない姿だが、資本コストを超えて稼ぐ会社にはならない。シェアの高さが利益率に結びつかない構造は、ここでも残る。
- モビリティ(車両用内装表皮):数量 650(搭載車の台数(万台))× 価格 1.10(1 台あたりの売上(万円・名目))→ 売上 713 億円・営業利益 46 億円。650万台 × 1台1.097万円(物価1.36倍)、営業利益率6.5%
- インダストリー(住宅・住設向け):数量 215(出荷面積(万㎡))× 価格 0.20(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 3 億円。215万㎡、営業利益率6%
- ファッション・生活資材:数量 225(出荷面積(万㎡))× 価格 0.27(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 2 億円。225万㎡、営業利益率3.5%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.7 倍、時価総額 476 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計ほどは戻らず、過去の山の手前で止まる筋書き。投資の効果が出る確率は半々よりやや低いとみた。
中立 35% 物価分は稼ぐが、利益率は低いまま 利益 27 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,416 円338 億円
国内の車の生産は横ばいで、搭載台数は620万台にとどまる。インドの増分は北米の弱さで相殺される。価格は物価並みの1.34倍まで上がる。ただし、転嫁は遅れ、原価低減要請との相殺で、利益率は上がらない。
営業利益は35億円弱。営業利益率は4.5%で、過去12年の中央値並みだ。償却の山を越え、直近の1.7%よりは戻るが、中計の9%には遠い。
ROEは6〜7%で資本コストを下回る。配当は利益に近づく。純現金は取り崩さないが、増えもしない。この水準が事業の実力に近い。
過去の中央値と並ぶ水準であり、特別なことは何も起きない。それでも名目の売上は物価で増えるので、利益の額は今の数倍に戻る。
- モビリティ(車両用内装表皮):数量 620(搭載車の台数(万台))× 価格 1.08(1 台あたりの売上(万円・名目))→ 売上 670 億円・営業利益 34 億円。620万台 × 1台1.081万円(物価1.34倍)、営業利益率5.0%
- インダストリー(住宅・住設向け):数量 210(出荷面積(万㎡))× 価格 0.20(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 2 億円。210万㎡、営業利益率5%
- ファッション・生活資材:数量 215(出荷面積(万㎡))× 価格 0.27(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。215万㎡、営業利益率2.5%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 338 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:議論の落としどころ。慎重な見方が強く、中計の達成を中立に置かない代わりに、構造的な負けも置かない。
やや悲観 27% 値段を決められず、じわじわ削られる 利益 8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 376 円90 億円
完成車メーカーの原価低減要請が続き、物価分の値上げは通らない。価格は10年で1.28倍にとどまる。北米は関税と現地化の圧力で縮み、搭載台数は560万台に減る。
営業利益は11億円、営業利益率は1.6%。いまの水準にほぼ張りつく。投資で増えた償却が残り、利益は出ない。配当は利益を上回れなくなり、減配に向かう。
ROEは2%台で、資本コストにはまったく届かない。帳簿の自己資本は厚いが、稼ぐ力から測った価値はずっと小さい。
中位品から中国・韓国勢に押され、値下げ要請を断れない。固定費の重い工場は、稼働が落ちるだけで利益が飛ぶ。
- モビリティ(車両用内装表皮):数量 560(搭載車の台数(万台))× 価格 1.03(1 台あたりの売上(万円・名目))→ 売上 578 億円・営業利益 12 億円。560万台 × 1台1.033万円(価格1.28倍)、営業利益率2.0%
- インダストリー(住宅・住設向け):数量 190(出荷面積(万㎡))× 価格 0.20(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。190万㎡、営業利益率3%
- ファッション・生活資材:数量 190(出荷面積(万㎡))× 価格 0.26(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円。190万㎡、営業利益率1%
倍率:ROE 2.5% は k 8% よりずっと低く、稼ぐ力(純利益 8 億円)だけなら 70 億円弱。純現金と運転資本の売れる額を床として、今の自己資本 366 億円に 0.23 を掛けた。中立の PBR より大きく低い。余った現金は分けない。
確率:慎重な見方が強い。転嫁の遅れ、北米の縮小、中位品の追い上げのどれかが起きれば、この筋書きになる。
悲観 13% 構造的に負ける 利益 −8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 261 円62 億円
完成車メーカーが北米と東南アジアで現地調達を進め、輸出が細る。内装の素材も、不織布や人工皮革への切り替えが進む。搭載台数は480万台に落ち、価格も10年で1.20倍にとどまる。
営業利益は赤字に転じる。償却が重く、固定費は落ちない。投資が実らず、インドの工場も稼働が上がらない。減損で自己資本も削られる。
稼ぐ力はなくなり、純現金と運転資本を売って得る額が価値の床になる。配当は大きく減る。
トヨタ系の再編で取引の位置づけが変わる可能性もあり、この筋書きではシェアが失われる。国内最大手という看板は、利益の裏づけにならない。
- モビリティ(車両用内装表皮):数量 480(搭載車の台数(万台))× 価格 0.97(1 台あたりの売上(万円・名目))→ 売上 465 億円・営業利益 −5 億円。480万台 × 1台0.968万円(価格1.20倍)、営業利益率−1%
- インダストリー(住宅・住設向け):数量 170(出荷面積(万㎡))× 価格 0.19(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。170万㎡、営業利益率1%
- ファッション・生活資材:数量 170(出荷面積(万㎡))× 価格 0.25(1 ㎡あたりの売上(万円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 −1 億円。170万㎡、営業利益率−2%
倍率:赤字なので今の自己資本 366 億円に 0.17 を掛けた。稼ぐ力は無く、純現金の残りと運転資本の売却額(税引き後)を床とした。
確率:トヨタ系の内製化・素材転換と中国勢の台頭が重なる、構造的な負け筋。国内最大手の位置は簡単には崩れないので、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
モビリティ(車両用内装表皮)
自動車のシート・ドアトリム・コックピット向け合成皮革。トヨタ系の内装メーカー経由で納める。
| 数量搭載車の台数(万台) | 価格1 台あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.81 | 484 | 9 |
| 10 年後 中立 | 620 | 1.08 | 670 | 34 |
取り方:車両用の売上は FY2025 で489億円(販売実績)。FY2026 は全社558億円から車両用484億円と置いた。搭載車の台数は開示がなく、トヨタ系を中心に年600万台と推定。1台あたり約0.81万円(シートとドアトリムの表皮)。営業利益の配分は開示を取っておらず推定。
インダストリー(住宅・住設向け)
壁装材・ソファ・住設向けの合成皮革。
| 数量出荷面積(万㎡) | 価格1 ㎡あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 207 | 0.15 | 31 | 2 |
| 10 年後 中立 | 210 | 0.20 | 42 | 2 |
取り方:住宅・住設用の売上は FY2025 で約31億円。面積は1㎡0.15万円と置いて推定。営業利益は推定。
ファッション・生活資材
バッグ・靴・雑貨向けの合成皮革と個人向けEC。
| 数量出荷面積(万㎡) | 価格1 ㎡あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 215 | 0.20 | 43 | 1 |
| 10 年後 中立 | 215 | 0.27 | 58 | 1 |
取り方:ファッション・生活資材用の売上は FY2025 で約44億円。FY2026 は43億円と置き、1㎡0.2万円と置いて面積を推定。営業利益は推定。
リスクと懸念
トヨタ系への偏り
売上の9割近くが車両用で、最終顧客はトヨタ系に偏る。生産計画の変更や部品の内製化・再編が、数量にそのまま響く。系列の整理で取引が見直される可能性も、持ち株比率が高い分だけ現実味がある。
原価低減要請と転嫁の遅れ
完成車メーカーは毎年、部品の原価低減を求める。中東情勢のような原材料高が起きても、売値に載せるまでには時間がかかる。会社は契約条件を改めたが、実際の交渉はこれからで、効果は実績で確かめるしかない。
積極投資の償却と回収
老朽設備の更新、DX、インド工場、東宝繊維の取り込みを同時に進める。償却は先に載り、利益は後から来る。需要が弱ければ、赤字が数年続く。純現金は2年で80億円以上減っており、余裕は思うほど長くない。
北米の関税と現地化
北米向けの減少が足元の利益を削っている。関税は直接の費用というより、現地調達への切り替えを促す圧力として効く。国内からの輸出が細れば、固定費の重い国内工場の稼働が下がる。
素材の置き換え
車内の素材は、本革代替の合皮のほか、不織布、人工皮革、ファブリックなど選択肢が多い。完成車メーカーがコストや環境負荷で素材を見直せば、需要は置き換わる。中国・韓国・インドの合皮メーカーの追い上げもある。
配当が利益を上回る
配当は利益を大きく上回って続いている。株主には優しいが、投資期にこれを続ければ純現金が細る。減配すれば評価は下がる。続ければ財務の余裕を食う。どちらに転んでも、株主の取り分は小さくなる。
今後の分かれ目
- 今期の営業損益が会社予想(赤字)より良く、来期に黒字へ戻る
- 償却の山を越えた証拠になる。やや楽観の確率を上げてよい。ただし、中計の9%は別の話で、営業利益率が6%を超えて初めて中立より上と読める。
- 原材料高を売値に載せる交渉が、次の期に通る
- 価格転嫁の実績ができる。中立の価格(物価並み)の信頼が上がり、やや悲観の確率を下げてよい。
- トヨタ自動車が完全子会社化やTOBを発表する
- 買収価格は本質価値とは別に決まる。価格が今より高くても、それが事業の価値を表すとは限らない。事業の稼ぐ力を別に確かめる。
- 北米向けの売上が戻らず、国内の生産計画も下がる
- 数量が10年で減る筋書きの確率を上げる。固定費が重く、利益は数量以上に落ちる。
- インドの工場が計画どおり2027年に立ち上がり、稼働が上がる
- 海外の柱が一つ増える。ただし2030年の営業利益6億円では、全社の利益を変えるほど大きくない。
- 配当を利益に見合う水準へ減らす
- 短期の評価は下がるが、純現金と投資余力は守られる。長い目では悪い知らせとは限らない。
見ておくもの
- 今期と来期の営業損益、償却の山の通過
- 価格転嫁の契約改定後の原材料高の影響
- 北米向けの売上と国内の車の生産台数
- インド工場の立ち上げ時期と稼働率
- 配当方針の変更とトヨタ系の再編
倍率と資本コストの決め方
今の株価や市場の倍率は見ていない。倍率は、k 8%(基本7.5% + 森六と同じ+1.0%)と、事業のROE、堀の強さ(普通)から正当化PERを求め、上限の約7〜8割に置いた。中立のROEは6.5%で資本コストを下回るので、PERの上限は1÷kの約11.8倍。置いた8.5倍はその約7割。悲観側は構造的な負け(数量減と価格の伸び悩み)から利益率を出し、床は今の自己資本に掛けた。結果は、確率で重みを付けた本質価値が今の時価総額より2割弱低い。今の値段が倍でも半分でも、この結論は変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→13.84 倍・やや楽観 PER 9→12.7 倍・中立 PER 8.5→12.5 倍・やや悲観 PBR 0.23→0.245 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。