結論
日本デコラックスは、内装用の高圧メラミン化粧板を作る売上 62 億円の老舗メーカーだ。ケミカルアンカーと、電子部品向けの樹脂積層板、東京目黒区などの賃貸も手がける。筆者の結論は、今の値段はやや割高だが、下値が堅いというものだ。堅さの理由は、会社が持つ金融資産が時価総額とほぼ同じ大きさにあることだ。
貸借対照表を見ると、現預金と有価証券で 35 億円、投資有価証券が 43 億円ある。合計 78 億円は、いまの時価総額 77 億円と並ぶ。借金はなく、自己資本比率は 87% だ。市場は、年に 5 億円稼ぐ本業を、ほぼ無料で付けて売っている形になる。
ただし、安さの裏には理由がある。事業の ROE は 4% 台と資本コストを下回り、新築住宅の減少で数量は緩やかに縮む。筆頭株主の高平商事が議決権の 47% を持つ創業者一族の会社で、余った現金が株主に出てくる保証はない。配当性向は 56% と高いが、現金の山そのものは残る。
筆者は金融資産の 75% しか価値に数えていない。事業は資本コストを下回る稼ぎで、10 年後の価値と配当を現在に割り引くと、時価総額を 15% ほど下回る。ただし悲観の筋書きでも金融資産が残るので、割高といっても傷は浅い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「現金の山に、つまらないが堅い事業が付いている」。時価総額 77 億円に対し、金融資産が 78 億円。本業は年に 5 億円稼ぐ。ここまで安い値段は、普通は見つからない。
ただし、その現金が株主のものになるかは別問題だ。議決権の 47% を持つ大株主が創業者一族の会社で、現金を事業の外に出す必要性を感じていない。筆者は金融資産の価値に 0.75 を掛けて数えた。完全には数えない。
事業のほうは、ROE が資本コストを下回る。投じた資本に見合う稼ぎが出ていない。新築住宅の減少で、数量は緩やかに縮む。それでも借金がなく、賃貸という安定収入があり、10 年の間に潰れる心配はほとんどない。
安全域は厚い。悲観でも金融資産と賃貸不動産の価値が残る。値段のうえでは割高に出たが、下値は堅い会社だ。ただし価値の実現は、大株主の判断次第という点を忘れてはならない。償却は物価では増えないが、工場の更新投資は建築費の上昇で膨らむ。会計の利益ほど現金が残らない点も割り引いて見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。建築材料事業が売上の 94% を占め、不動産賃貸が 6% だが、利益では賃貸が大きい。
建築材料の中心は化粧板だ。1958 年に高圧メラミン化粧板「デコラックス」の生産を始めた会社で、住宅、店舗、公共施設の内装に使われる。売上は 42 億円。不燃メラミン化粧板「パニート」は、火に強い内装材として拡販中だ。電子部品向けは売上 9 億円で、プリント基板の材料になるフェノール樹脂積層板を作る。最大の販売先はイビケンで、売上の 10.5% を占める。ケミカルアンカーは売上 7 億円。1969 年に西独の会社と提携して始めた、コンクリートに金物を固定する製品だ。
不動産賃貸は東京都目黒区など 6 物件を貸す。帳簿価額は 55 億円で、売上は 4 億円、営業利益は 2 億円ある。営業利益率は 5 割だ。
従業員は 172 人。本社は愛知県扶桑町。研究開発費は年 1.2 億円で、売上の 2% にあたる。区分別の利益は、建築材料が 8.2 億円、不動産が 2.0 億円で、全社の調整で 3.7 億円を引く。
優良さと弱いところ
優良さは「中の下から中」と筆者は見る。強みは三つある。一つ目は財務の堅さだ。借金がなく、自己資本比率は 87%。二つ目は営業利益率の高さで、前期は 10.4%、10 年の範囲は 7 〜 13%。三つ目は賃貸不動産が、本業の景気に左右されない安定収入を生むことだ。
弱みもはっきりしている。資本効率が低い。ROE は 10 年の中央値で 3.0% しかない。利益を稼いでも、使い道のない現金が増える構造だ。次に、需要が新築住宅に偏る。人口が減る日本で、数量は構造的に縮む。三つ目は、大口顧客と大株主への依存だ。イビケン向けは売上の 1 割、高平商事は議決権の 47% を持つ。
経営は無理をしない。無理な買収はせず、配当性向 50 〜 70% の方針を守る。ただ資本の使い方は消極的で、金融資産を積み上げるばかりだ。利益を新しい事業に投じる意欲は乏しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
化粧板の市場は、日本の新築住宅、店舗改装、公共施設の内装に連動する。新築住宅は人口減で緩やかに減るが、リフォームや店舗の改装、不燃化の需要が底を支える。大手のアイカ工業が国内の中心で、日本デコラックスは中堅の位置にいる。
競合は、アイカ工業のほか、他素材の内装材や、海外から入る安価な化粧板だ。価格は原材料の樹脂と紙に連動し、値上げは原価の上昇を追いかける形になる。需要家は工務店、内装業者、家具・什器メーカーなど多岐にわたる。差別化の道は、不燃など機能を付けた品に絞られる。
電子部品向けは、プリント基板やパッケージ基板に使う積層板で、半導体関連の需要に連動する。電子部品の需要が追い風だが、顧客が少なく、振れが大きい。ケミカルアンカーは、インフラの補修や耐震工事に使い、政策の後押しがある。
10 年の見通しは、化粧板の数量が 1 割弱減り、価格は物価並み。電子部品向けと補修需要の伸びが、住宅の減少を部分的に補う。全体の数量は横ばいから緩やかな減少、価格は物価並みという姿だ。賃貸は都心の物件で、賃料は物価に連動して緩やかに上がる。
資本政策と M&A
還元は手厚いほうだ。年間配当は約 2.9 億円、配当性向は 56%。方針は 50 〜 70% で、これを守っている。自社株買いの記載はない。
ただし、金融資産は積み上がったままだ。現預金・有価証券・投資有価証券の合計は 78 億円。純現金は 10 年前の 39 億円から、いまの 33 億円とほぼ横ばいだ。前期は有価証券の取得に 6 億円を使った。
筆頭株主は高平商事で議決権の 47%、創業者一族の会社で、長期保有を目的に持つ。経営陣が自社株買いや特別配当を積極的に行う動機は乏しい。M&A の予定は見当たらない。10 年以内の買収・TOB の確率は 25% という試算があるが、大株主の姿勢を考えると、価値には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額 77 億円に対し、現預金と有価証券と投資有価証券で 78 億円ある。借金はなく、負債は全部で 24 億円。つまり市場は、年に 5 億円稼ぐ本業を無料で付けている。こんな会社が、他にあるだろうか。
本業も悪くない。前期は売上が横ばいなのに、営業利益は 17% 増え、利益率は 10.4% に上がった。原価率の改善は、値上げが通っている証拠だ。電子部品向けは 14.6% 伸びた。電子部品の需要が続けば、さらに伸びる。
不動産賃貸は、目黒区など都心の物件を持ち、営業利益率が 5 割ある。この収益は安定していて、帳簿の 55 億円以上の価値がありうる。
配当性向は 56% で、方針は 50 〜 70%。株主への還元は手厚い。大株主の高平商事は、配当を受け取る立場にある。創業者一族の会社として、資産を長く守る意識が強いのは、無駄な投資をしないという意味で株主にもプラスだ。現金が眠り続けることを、大株主が望んでいるとは限らない。10 年あれば、特別配当や自社株買いが出てくる余地は十分にある。
慎重な見方
安さには理由がある。事業の ROE は 4% 台で、資本コストを大きく下回る。10 年を通じて、ROE の中央値は 3.0% だ。利益を稼ぎ続けても、資本が増えるばかりで、株主に返らない構造が続いてきた。
議決権の 47% を持つ高平商事は創業者一族の会社で、長期保有が目的だ。現金を株主に返す動機が薄い。配当性向 56% は立派だが、金融資産の山は 10 年前から減っていない。それどころか、投資有価証券は積み増している。
事業の環境も厳しい。新築住宅は人口減で縮み、化粧板の数量は 10 年で 1 割近く落ちる。電子部品向けは顧客が少なく、イビケン向けが 1 割を占める。不動産の賃料収入は、テナントの退去で減った。
金融資産は、帳簿の額面で 78 億円だが、投資有価証券の中身は開示が薄い。評価が下がれば、安さは見かけだけになる。
工場は古く、更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。現金は事業の更新にも使われ、株主に出る額は思ったほど増えない。売上は 10 年前から 60 億円台で伸びておらず、成長の絵が描けない会社に、金融資産の価値だけで高い値段は付けにくい。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、金融資産という確かな裏づけに根ざしている。慎重な言い分は、現金が出てこないという構造に根ざしている。どちらも事実で、金融資産の戻り方 0.75 という形で両方を反映した。
確率はやや悲観・悲観を合わせて 34%、やや楽観・楽観で 28%、中立が 38%。悲観の筋書きでも金融資産が残るため、下の確率は厚くしなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 12,888 円100 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 4,061 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 8,733 円68 億円、今との差 −11.6%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 20,138 円157 億円 | 6,670 円52 億円 | +171.3% | +10.5% | 2,145 円17 億円 |
| やや楽観 | 20% | 16,777 円131 億円 | 5,387 円42 億円 | +124.3% | +8.4% | 4,433 円35 億円 |
| 中立 | 38% | 14,366 円112 億円 | 4,489 円35 億円 | +90.8% | +6.7% | 7,165 円56 億円 |
| やや悲観 | 22% | 7,661 円60 億円 | 2,822 円22 億円 | +6.1% | +0.6% | 2,306 円18 億円 |
| 悲観 | 12% | 6,477 円51 億円 | 1,026 円8 億円 | −24.1% | −2.7% | 900 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 12,888 円100 億円 | 4,061 円32 億円 | +71.5% | +5.5% | 16,949 円132 億円 |
今の株価時価総額 9,880 円77 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 不燃化粧板と電子部品向けが伸び、利益率が山を越える 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 20,138 円157 億円
不燃メラミン化粧板「パニート」が店舗・公共施設の内装で採用を広げ、化粧板の数量が 15% 増える。価格は高機能品の比率が上がり、物価を少し上回る。電子部品向けの積層板は、主要顧客の需要に乗って数量が 6 割増える。ケミカルアンカーは、インフラの補修需要で伸びる。営業利益率は 12% を超えて過去の最高を更新する。余った現金と有価証券は、配当性向 70% の上限近くで株主に回る。この筋書きでも、事業の ROE は資本コストをわずかに超える程度で、倍率は上限近くに置く。売上は今の 1.7 倍の 100 億円を超え、営業利益は 12 億円台に乗る。賃貸は物価並みに賃料が上がり、安定収入が続く。
- 化粧板(高圧メラミン・不燃メラミン「パニート」):数量 48.8(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.38(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 67 億円・営業利益 10 億円。パニートが採用拡大
- 電子部品向け(プリント基板用フェノール樹脂積層板):数量 14.1(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.30(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。電子部品向け拡大
- ケミカルアンカー:数量 9.4(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.40(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。補修需要
- 不動産賃貸:数量 4.0(賃料収入の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.30(賃料の指数(今を 1.0。名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。賃料は物価並み
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 157 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:内装の不燃化と、電子部品向けの需要の取り込みが同時に当たる必要がある。過去 10 年の営業利益率の最高は 12.9% で、それを超える水準なので確率は低く置く。
やや楽観 20% 化粧板が踏みとどまり、積層板とアンカーが伸びる 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 16,777 円131 億円
化粧板は住宅の減少を、不燃品とリフォームで相殺して数量が横ばい。電子部品向けの積層板は着実に伸びる。ケミカルアンカーはインフラの補修で緩やかに増える。賃貸は物価並みに賃料が上がる。営業利益率は 11% で、前期の 10.4% を少し上回る。配当性向は 6 割弱を保ち、現金は積み上がらない。不燃品の採用が進み、価格は物価並みを保つ。工場の更新投資は建築費の上昇で膨らむが、自己資金で賄える。自己資本は 190 億円に増える。売上は 88 億円ほどに伸び、営業利益は 9 億円台に乗る。賃貸は物価並みに賃料が上がり、金融資産の利息は金利上昇で増える。
- 化粧板(高圧メラミン・不燃メラミン「パニート」):数量 42.4(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 57 億円・営業利益 8 億円。数量横ばい
- 電子部品向け(プリント基板用フェノール樹脂積層板):数量 11.4(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.28(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。着実に増加
- ケミカルアンカー:数量 8.3(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.36(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。補修需要
- 不動産賃貸:数量 4.0(賃料収入の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.28(賃料の指数(今を 1.0。名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。賃料は物価並み
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 131 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期の増益は原価率の改善によるもので、今の 10% 台の利益率を保つ可能性は十分ある。営業利益率が 11% 前後で安定する筋書きを、2 番手に置いた。
中立 38% 住宅の数量減を値上げで補い、利益率は 10% 弱 利益 6 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 14,366 円112 億円
化粧板の数量は住宅の新築減で 1 割近く落ちるが、不燃品の比率が上がり、価格は物価並みに上がる。電子部品向けの積層板は緩やかに伸びる。ケミカルアンカーは補修需要で横ばいに近い。賃貸は退去のあと、物価並みの賃料改定で収入が戻る。本社費などの費用は物価で増えるが、減価償却は古い設備なので増えない。営業利益率は 9.6% で、過去 10 年の中ほどだ。配当性向は 56% を保ち、自己資本は 188 億円に増える。事業だけで見た ROE は 5% に届かない。売上は 78 億円ほどに伸びるが、営業利益は 7 億円台にとどまる。金融資産の利息と配当は金利上昇で増え、純利益を下支えする。
- 化粧板(高圧メラミン・不燃メラミン「パニート」):数量 39.0(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.32(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 52 億円・営業利益 7 億円。数量 8% 減・価格は物価並み
- 電子部品向け(プリント基板用フェノール樹脂積層板):数量 9.7(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.25(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。緩やかに増加
- ケミカルアンカー:数量 7.6(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 不動産賃貸:数量 3.9(賃料収入の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.25(賃料の指数(今を 1.0。名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。退去後に賃料改定
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期まで 10 年の営業利益率は 7 〜 13% の範囲で動いた。住宅の数量が減る中で、値上げと不燃品で補う姿を中心に置く。大きな振れも大きな改善も見込まない。
やや悲観 22% 住宅の減少と顧客の需要減で、利益率が 6% に下がる 利益 3 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 7,661 円60 億円
新築住宅の着工が大きく減り、化粧板の数量が 2 割落ちる。海外の安い化粧板や他素材との競合で、価格も物価に届かない。電子部品向けは主要販売先の需要減で縮む。営業利益率は 6% 弱まで下がる。固定費は物価で増える一方、販売が減るため、操業度の低下が利益を削る。配当は今の水準を保てず減らす。自己資本は 170 億円ほどになる。売上の減少に合わせて工場の稼働を絞り、人員も自然減で調整するが、利益を守りきれない。ただし現金と有価証券は残り、財務の余裕は変わらない。売上は 65 億円ほどで今とほぼ同じ、営業利益は 4 億円弱に半減する。固定費の比率が高く、数量の減少が利益に大きく響く。
- 化粧板(高圧メラミン・不燃メラミン「パニート」):数量 33.9(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.28(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 43 億円・営業利益 4 億円。着工減・海外品と競合
- 電子部品向け(プリント基板用フェノール樹脂積層板):数量 7.0(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.20(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。顧客需要減
- ケミカルアンカー:数量 6.8(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.30(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 不動産賃貸:数量 3.6(賃料収入の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.20(賃料の指数(今を 1.0。名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。テナント減
倍率:事業の ROE は 2% 台と k 8.0% を大きく下回る。稼ぐ力が資本コストから遠く、PER は上限 12.5 倍の 72% の 9 倍に置いた。
確率:新築住宅は人口減で構造的に減る。さらに主要販売先の需要が弱まれば、積層板が縮む。現金に余裕があるため、厳しい局面でも配当は保つが、利益の水準は下がる筋書きだ。
悲観 12% 需要の落ち込みが続き、現金を取り崩す 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 6,477 円51 億円
住宅着工が大きく落ち、化粧板の数量が 35% 減る。海外品との競争で価格も物価に届かない。電子部品向けは主要販売先を失い、半分に縮む。営業利益は赤字に沈み、現金と有価証券を取り崩して耐える。工場の稼働が落ちて、固定費が重くのしかかる。配当は大きく減る。筆頭株主の高平商事が過半に近い株を持つので、余った現金が株主に返される保証はなく、価値は現金の半分程度として見る。配当は大きく減るが、無配にはならない。不動産賃貸だけは安定して、全社の営業利益を下支えする。自己資本は 135 億円ほどに減る。工場の統廃合など構造改革の費用もかさみ、事業の価値は大きく目減りする。
- 化粧板(高圧メラミン・不燃メラミン「パニート」):数量 27.6(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.20(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。着工が急減
- 電子部品向け(プリント基板用フェノール樹脂積層板):数量 4.4(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.10(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。顧客喪失
- ケミカルアンカー:数量 6.1(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.20(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。縮小
- 不動産賃貸:数量 3.4(賃料収入の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.15(賃料の指数(今を 1.0。名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。テナント減
倍率:赤字で稼ぐ力では値が付かない。今の自己資本 163 億円に掛ける形で、売れる資産の税後と同じ水準の 0.31 倍に置いた。
確率:新築住宅の急減と主要顧客の喪失が重なる負けの筋書きだ。会社の財務は強く、悲観でも赤字の期を耐えられるが、事業の価値は大きく目減りする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
化粧板(高圧メラミン・不燃メラミン「パニート」)
住宅・店舗・公共施設の内装に使う化粧板。1958 年に「デコラックス」の生産を始めた会社の本業。
| 数量出荷の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 42.4 | 1.00 | 42 | 6 |
| 10 年後 中立 | 39.0 | 1.32 | 52 | 7 |
取り方:化粧板製品 41.9 億円にその他 0.5 億円を足した 42.4 億円(2026/03)を今の値段の出荷額と置いた。建築材料事業の営業利益 8.2 億円を、化粧板 6.0 億円・積層板 1.1 億円・アンカー 1.1 億円に割ったのは推定。
電子部品向け(プリント基板用フェノール樹脂積層板)
プリント基板の材料になるフェノール樹脂の積層板。主要販売先のイビケンが売上の 1 割を占める。
| 数量出荷の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.8 | 1.00 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 9.7 | 1.25 | 12 | 2 |
取り方:電子部品業界向け 8.8 億円(前期比 +14.6%)を今の値段の出荷額と置いた。区分別の利益は開示がなく、1.1 億円と推定した(推定)。
ケミカルアンカー
コンクリートに金物を固定する接着剤方式のアンカー。1969 年に西独の会社と提携して始めた。
| 数量出荷の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.2 | 1.00 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.6 | 1.34 | 10 | 1 |
取り方:ケミカルアンカー 7.2 億円(前期比 -2.3%)を今の値段の出荷額と置いた。区分別の利益は開示がなく、1.1 億円と推定した(推定)。
不動産賃貸
東京都目黒区ほか 6 物件を貸す。帳簿価額は約 55 億円(土地 40 億円、建物 15 億円)。
| 数量賃料収入の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格賃料の指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 1.00 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3.9 | 1.25 | 5 | 2 |
取り方:不動産事業の売上 4.01 億円、営業利益 2.04 億円(開示値、2026/03)。テナントの退去で減収した。
リスクと懸念
大株主の方針
高平商事が議決権の 47% を持つ創業者一族の会社で、長期保有が目的。余った現金を特別配当や自社株買いで株主に返す動機が薄く、金融資産が価値として実現しない恐れがある。
新築住宅の減少
化粧板の需要は新築住宅と内装改装に連動する。人口減で着工が構造的に減り、数量は 10 年で 1 割近く落ちる見込み。
主要顧客への依存
電子部品向け積層板は、イビケンが売上の 10.5% を占める。顧客の需要や仕入れ方針が変われば、この区分は半分以下に縮む。
原材料と円安
化粧板は樹脂と紙が原料で、原油価格や円安で原価が上がる。値上げが原価に追いつかなければ、営業利益率が 10% を割る。
投資有価証券の評価
投資有価証券は 43 億円あり、内容は開示が薄い。市場の変動で評価が下がれば、価値の裏づけが目減りする。
賃貸のテナント退去
不動産賃貸は営業利益の 2 割を占める。前期はテナントの退去で減収した。空室が増えれば、安定収入の前提が崩れる。
今後の分かれ目
- 特別配当や自社株買いなど、金融資産を株主に返す具体策が出る
- 金融資産の戻り方を 1.0 に近づけ、価値を引き上げる。やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 高平商事が持株を買い増す、または非公開化の動きが出る
- 買い手の価格が価値を超えるかを確かめる。非公開化は金融資産の価値を実現させる可能性がある。
- 電子部品向けの主要顧客がまとまった減産を発表する
- 積層板の数量の前提を下げる。悲観側の確率を上げる。
- 不燃化粧板「パニート」の売上が 2 桁で伸び続ける
- 化粧板の価格と利益率の前提を引き上げる。やや楽観側へ寄せる。
- 投資有価証券で含み損が出る、または評価損を計上する
- 金融資産の額を引き下げ、安全域の前提を見直す。
見ておくもの
- 配当・自社株買い・特別配当の方針の変化
- 現預金・有価証券・投資有価証券の合計と内訳
- 化粧板の数量と不燃品の売上
- 電子部品向け積層板の売上とイビケン向け比率
- 賃貸不動産の稼働と賃料
倍率と資本コストの決め方
4 区分の数量と価格を、出荷(賃料)の実質額と価格指数に分けて積んだ(区分別の売上は開示値、化粧板・積層板・アンカーの利益の割り振りは推定)。k は 7.5% に quality 0.5% を足した 8.0%。倍率は式から出し、事業の ROE が k を下回るので 1÷k を上限にその 7 〜 9 割に置いた。今の株価や過去の PER・PBR は倍率の根拠に使っていない。金融資産は 0.75 を掛けて数えた。賃貸不動産は賃料を利益に入れているので、別に価値を足していない。減価償却は物価で増やさず、新規の設備だけを新しい値段で足した。リースの影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.5 倍・やや楽観 PER 11.5→12.5 倍・中立 PER 11→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。