結論
石原産業は、農薬と酸化チタンの会社だ。利益の約4分の3は農薬を中心とする有機化学事業が稼ぎ、売上の半分近くを占める無機化学事業は酸化チタンの市況悪化と戦っている。筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当というものだ。2026年3月期の営業利益190億円は欧州の天候特需に押し上げられた山で、会社自身も今期は142億円と見ている。
農薬は、自社で新しい分子を発明して世界で売る事業だ。益率は2割前後と高く、堀、つまり他社がまねできない強みは、特許と各国の登録制度にある。ただし特許はいつか切れる。殺菌剤フルアジナムはブラジルでジェネリックに押され始めた。次の剤が育つかどうかが、10年後の姿を決める。
無機化学は手術のさなかだ。コストの重い硫酸法を2027年3月末までに畳み、国内で唯一の塩素法に集約する。残る柱は、MLCC(積層セラミックコンデンサー)に使う高純度品など、他社が作りにくい用途だ。ここが育てば益率は上がる。育たなければ、中国の安値品に押される。
10年後の中立は、営業利益が230億円台、ROEは8%前後で資本コストと同じ水準にとどまる。倍率は10倍台で、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額とほぼ同じ。大きく割安でも割高でもない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でまず問うのは、この会社が毎年どれだけ現金を残せるかだ。農薬は稼ぐ力が強いが、剤の寿命が短く、新しい分子を作り続けるために年100億円規模の研究開発費が要る。この維持費を引いた分が、株主のものになる利益だ。2026年3月期の190億円は特需つきの山で、そのまま続くと考えるのは危ない。
堀は、農薬の登録と特許に宿る。ただ、堀は特許の満了とともに狭まり、新剤で作り直し続けなければならない。酸化チタンの堀は薄く、国内唯一の塩素法という位置も、世界の市況を変える力にはならない。電子材料だけは、顧客と共同で作る分、長く続く堀になりうる。
資本の使い方は、悪くない。赤字の元の硫酸法を切り、成長の見込める高純度品に投資する。配当も増やした。割り引いて見るのは、無機化学の立て直しが道半ばなことと、農薬の山が次の谷に変わりうることだ。
安全域は、今の値段にはほとんどない。10年後の姿が上振れしても、下振れしても、今の値段の周りに収まる。安く買えるとは言わないし、高すぎるとも言わない。
何で稼ぐ会社か
売上の55%を占める有機化学事業が、会社の稼ぎ頭だ。主力は除草剤・殺菌剤・殺虫剤の農薬で、自社で分子を発明し、国内は子会社の石原バイオサイエンスが売る。海外は米州・欧州・アジアで売り、売上の6割強が海外になる。犬の膵炎薬パノクエルなどの動物用医薬品、医薬品の原薬、有機中間体も同じ事業に入る。
いま育てている剤は、北米の小麦で伸びる除草剤トルピラレートと、インドで増えている殺虫剤シクラニリプロールだ。殺菌剤のシアゾファミドは欧州で売れている。一方、古い殺菌剤フルアジナムは、ブラジルでジェネリックとの競争が厳しい。
売上の45%を占める無機化学事業は、酸化チタン、機能性色材(導電性材料を含む)、電子材料、ファインケミカルからなる。国内で塩素法の酸化チタンを作るのは石原産業だけだ。電子材料は、村田製作所、子会社の富士チタン工業と作った合弁会社MFマテリアル(延岡、石原産業の出資は少数)を通じて、MLCC向けのチタン酸バリウムにも関わる。
このほか、商社や建設の小さな事業が売上で40億円ほどある。
優良さと弱いところ
堀の質は、農薬と酸化チタンでまるで違う。農薬は、分子の発明に十数年かかり、各国の登録も要る。新しい剤が入ってくるのは遅く、そこが参入障壁になる。年に100億円規模の研究開発費をかけ続ける会社の体力も、堀の一部だ。
弱みは、剤ごとの寿命が短いことだ。特許が切れた剤はジェネリックに急に押される。EUは環境規制で、使える成分を絞っている。少数の剤に売上が偏るので、1剤の失速が全体に響く。
酸化チタンは、顔料として世界の大手や中国勢と値段で競う汎用品に近い。値段は市場が決める。塩素法は品質で優位だが、規模では劣る。電子材料向けの高純度品だけが、顧客と組んで作る差別化品だ。
資本効率は山谷が大きい。ROEは2026年3月期に13%近くまで上がったが、過去10年の中央値は7%台だ。財務は自己資本比率が5割を超え、堅い。経営は、2005年のフェロシルト問題でコンプライアンスを総点検した過去がある。今は、赤字の元だった硫酸法を先に切る決断をした。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
農薬の世界市場は、筆者の推定で実質750億ドル前後だ。シンジェンタ、バイエル、コルテバ、BASF、FMC、住友化学などの大手が大半を握り、石原産業の取り分は1%に届かない。大手の総合力では勝てないので、特定の作物と病害虫に効く独自の剤で、狭く深く売る会社になる。市場は実質で年1〜2%ほど伸び、人口と食料の需要が支える。
荒れるのは価格だ。特許が切れると、中国・インドのジェネリックが入る。EUは登録の維持が難しくなっており、主戦場は北米・南米に移る。新剤の承認が2026年度中にEUで見込まれており、ここが当たれば欧州の穴を埋められる。
酸化チタンは塗料・プラスチック向けが大半で、世界の顔料用の能力は700万トン前後とされる。需要は住宅・建設の景気に連れ、中国の安い品が市況を押し下げている。日本では硫酸法の採算が崩れ、石原産業も撤退を決めた。
成長が見込めるのは電子材料だ。AIサーバーの増加でMLCCの需要が増え、誘電体を薄く多層にするため、高純度で粒子の細かい酸化チタンが要る。石原産業は約39億円で四日市の高純度品の能力を倍にし、2030年4月に供給を始める。
資本政策と M&A
株主還元は厚くなってきた。配当は、連結株主資本配当率(DOE)3%を下限とし、2026年度に配当性向40%以上を目指す方針だ。年間配当は2024年3月期から2026年3月期にかけて約1.7倍になり、DOEは4%台に乗った。自社株買いは2022年11月から2023年3月に約20億円を実施しただけだ。
投資は、中期経営計画の3年間で設備投資327億円、研究開発費303億円。成長の中心は農薬の新剤と、電子材料向けの高純度酸化チタンだ。買収で大きくなる会社ではない。M&Aは、村田製作所らと組んだMFマテリアルのような、相手と組む形が中心になる。
構造改革の費用は重い。四日市の硫酸法の停止に続き、富士チタン工業は神戸工場を2026年度中に止め、減損25億円を2027年3月期第1四半期に計上した。早期退職は100名。痛みを今期に集めて、来期以降の利益を軽くする作りだ。
時価総額は約1,000億円で、規模は小さい。筆者は、農薬の事業や機能材の部分を目当てにした再編・買収の対象になる可能性を、無視しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
農薬は山を越えても高い益率を保てる。2026年3月期の営業利益率は22%で、特需を除いても18〜19%はある。トルピラレートは北米の小麦で伸び、シクラニリプロールはインドで増えた。EUでは新剤の承認が2026年度中に見込まれる。古い剤が切れても、混合剤にして特許期間の残る新剤へ移す戦略が、先行者の利益を作る。
無機化学は、悪い部分を自分から切る局面に入った。硫酸法は2027年3月末までに止まり、富士チタン工業の神戸も止まる。赤字の元が消え、塩素法に集約すれば、稼働率と益率が上がる。MLCC向けの高純度品はAIサーバーで需要が伸び、2030年に能力が倍になる。村田製作所との関係も深い。
財務は自己資本比率が5割を超え、純有利子負債は自己資本の3割だ。配当は増え、DOE4%台が続く。時価総額は約1,000億円と小さく、利益の山が半分ずつ戻るだけでも、10年後の利益は今より2割以上増える。中期経営計画の2030年目標、営業利益240億円は、物価が3%で上がる世界では十分に届く。
慎重な見方
2026年3月期の190億円は、欧州の天候特需と円安が重なった山だ。会社自身が今期を142億円と見ている。農薬の益率22%は、山の数字であって普通ではない。過去10年の営業利益は100億円前後で、ROEの中央値は7%台だ。
農薬は剤の寿命が短い。フルアジナムはブラジルですでにジェネリックに押されている。欧州で好調だったシアゾファミドも、特需が剥がれた今期は減収の見込みだ。EUは環境規制で登録の維持を難しくしている。新剤が育つ保証はなく、研究開発費は毎年かかる。
酸化チタンは、日本の他社がやめた事業を石原産業が続けている形だ。塩素法に集約しても、顔料の世界は中国の増設と値下げに押される。硫酸法の撤退で売上が数百億円減り、そのぶん固定費を薄める力は弱まる。MLCC向けは、需要が伸びても、競争相手が高純度品に入ってくれば値段が下がる。
構造改革の痛みも続く。減損、早期退職、設備停止は一度で終わらない。純有利子負債は時価総額の約4割あり、金利が上がれば利益は削られる。10年後のROEが資本コストに届かない会社に、高い倍率は付かない。
どちらに重みを置いたか
農薬の質と無機の立て直しという強気の根拠は本物だが、今の利益が山であることと、10年後のROEが資本コストと同じ水準にとどまることは、慎重な見方のほうが重い。中立は、農薬の取り分を山から少し戻した水準に置き、ROE8%台・PER10倍台とした。確率は中立を軸に、新剤とMLCCの上振れに28%、剤の失速と酸化チタンの苦戦に38%を置き、悲観側へわずかに寄せた。結果は、今の値段とほぼ同じ水準になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,556 円1,743 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,586 円607 億円)。 今の値に割り戻すと 3,189 円1,220 億円、今との差 +23.2%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,083 円3,858 億円 | 2,535 円970 億円 | +387.6% | +17.2% | 1,009 円386 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,234 円2,768 億円 | 2,051 円785 億円 | +258.8% | +13.6% | 1,857 円711 億円 |
| 中立 | 34% | 5,182 円1,983 億円 | 1,803 円690 億円 | +169.9% | +10.4% | 2,375 円909 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,619 円619 億円 | 1,098 円420 億円 | +5.0% | +0.5% | 679 円260 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,045 円400 億円 | 653 円250 億円 | −34.4% | −4.1% | 221 円85 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,556 円1,743 億円 | 1,586 円607 億円 | +137.3% | +9.0% | 6,141 円2,350 億円 |
今の株価時価総額 2,588 円990 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 新剤が育ち、MLCC向けが柱になる 利益 255 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 10,083 円3,858 億円
農薬は、トルピラレートとシクラニリプロールが北米・南米・インドで定着し、EUでも新剤が承認される。古いフルアジナムの減りを、混合剤にした新剤が埋め、取り分は0.8%まで上がる。益率は21%を保つ。
無機化学は、硫酸法を畳んで赤字の元が消え、塩素法の稼働率が上がる。MLCC向けの高純度品は2030年に能力が倍になり、AIサーバーの需要に乗って、平均単価が物価を上回って伸びる。益率は13%に届く。
営業利益は370億円規模になり、会社の2030年目標240億円を10年かけて大きく超える。ROEは12%台に上がり、配当と自社株買いで株主に厚く戻す10年になる。
- 有機化学(農薬・動物用医薬品・医薬品原薬):数量 900(世界の作物保護市場の規模(億ドル、実質。2026年の物価))× 価格 1.1%(石原産業の取り分(シェア)× 物価の指数。150円/ドルで億円に)→ 売上 1,447 億円・営業利益 304 億円。取り分 0.80%、益率 21.0%
- 無機化学(酸化チタン・機能性色材・電子材料・ファイン):数量 17.0(販売量(万トン、酸化チタン相当に換算した推定。実質))× 価格 57(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 972 億円・営業利益 126 億円。益率 13.0%
倍率:事業の純利益 255 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.13 倍、時価総額 3,858 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:確率8%:新剤の当たりとMLCC需要の同時成功は、強気の見方でも条件が重いので低めに置いた。
やや楽観 20% 農薬が主柱を保ち、無機化学は黒字を固める 利益 200 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 7,234 円2,768 億円
農薬は、北米と南米の新剤が伸び、フルアジナムの減りを補う。取り分は0.74%で、益率は19.5%に落ち着く。欧州は特需が剥がれたあと、新剤の承認で下げ止まる。
無機化学は、構造改革で採算が戻り、電子材料が育つ。MLCC向けの高純度品は計画どおり2030年に供給が始まり、益率は11%になる。
営業利益は300億円弱。ROEは10%近くまで上がる。会社の中期経営計画の路線がほぼ実現する10年で、株主還元も増やし続けられる。農薬の新剤が一定程度当たり、無機の構造改革が予定どおり終わる、確度の比較的高い筋書きだ。
- 有機化学(農薬・動物用医薬品・医薬品原薬):数量 880(世界の作物保護市場の規模(億ドル、実質。2026年の物価))× 価格 1.0%(石原産業の取り分(シェア)× 物価の指数。150円/ドルで億円に)→ 売上 1,309 億円・営業利益 255 億円。取り分 0.74%、益率 19.5%
- 無機化学(酸化チタン・機能性色材・電子材料・ファイン):数量 16.5(販売量(万トン、酸化チタン相当に換算した推定。実質))× 価格 53(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 868 億円・営業利益 95 億円。益率 11.0%
倍率:事業の純利益 200 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.84 倍、時価総額 2,768 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:確率20%:会社の中期経営計画の路線がほぼ実現する、確度の比較的高い上振れ。
中立 34% 農薬は山から戻って横ばい、無機は薄い黒字 利益 157 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 5,182 円1,983 億円
農薬は、2026年3月期の山から戻り、取り分は0.69%に落ち着く。市場が実質で伸びる分と物価で売上は増えるが、剤の入れ替えで益率は18%に下がる。特許切れの剤は価格が下がり、新剤がそれを埋めて、全体はおおむね横ばいに近い。
無機化学は、硫酸法の撤退で売上が一段減る。残る塩素法と電子材料で益率は9%に上がるが、中国の安値品との競争は続く。MLCC向けは育つが、全体を引き上げるほどではない。
営業利益は230億円台にとどまり、ROEは8%台で資本コストとほぼ同じ。配当は続くが、株主に返す水準を大きく上げる余力はない。いちばん起きやすい中間の筋書きだ。
- 有機化学(農薬・動物用医薬品・医薬品原薬):数量 862(世界の作物保護市場の規模(億ドル、実質。2026年の物価))× 価格 0.9%(石原産業の取り分(シェア)× 物価の指数。150円/ドルで億円に)→ 売上 1,196 億円・営業利益 215 億円。取り分 0.69%、益率 18.0%
- 無機化学(酸化チタン・機能性色材・電子材料・ファイン):数量 16.0(販売量(万トン、酸化チタン相当に換算した推定。実質))× 価格 49(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 790 億円・営業利益 71 億円。益率 9.0%
倍率:事業の純利益 157 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.63 倍、時価総額 1,983 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:確率34%:農薬の山からの戻りと無機の薄い黒字が重なる、最も起きやすい筋書き。
やや悲観 25% 新剤が伸び悩み、酸化チタンの値下がりが続く 利益 76 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,619 円619 億円
農薬は、ブラジルと欧州でジェネリックと規制に押される。新剤の立ち上がりが遅れ、取り分は0.60%に下がる。価格も物価に届かず、益率は14%まで落ちる。
無機化学は、硫酸法の撤退で量は減ったが、塩素法も中国勢の値下げに押され、MLCC向けも新規の競争が入って益率は4%にとどまる。
営業利益は120億円弱、ROEは5%を割る。会社の計画の2030年目標には届かず、配当は下限のDOE3%を守るのがやっとになる。研究開発と構造改革の費用が重く、成長への再投資が細っていく。過去の実績(利益が100億円前後の年が多い)に近い姿だ。
- 有機化学(農薬・動物用医薬品・医薬品原薬):数量 840(世界の作物保護市場の規模(億ドル、実質。2026年の物価))× 価格 0.8%(石原産業の取り分(シェア)× 物価の指数。150円/ドルで億円に)→ 売上 983 億円・営業利益 138 億円。取り分 0.60%、益率 14.0%
- 無機化学(酸化チタン・機能性色材・電子材料・ファイン):数量 16.0(販売量(万トン、酸化チタン相当に換算した推定。実質))× 価格 46(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 732 億円・営業利益 29 億円。益率 4.0%
倍率:事業の ROE 4.5% が k 8% 以下なので、PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。ただし稼ぎが k に届かない構造的な負けの筋書きなので、上限の約 6 割の 7.5 倍に置いた。
確率:確率25%:農薬の剤が1〜2つ失速し、酸化チタンの値下がりが続く。過去の実績に近い。2026年3月期が山である点と、剤の寿命の短さを重く見て上より厚く置いた。
悲観 13% 農薬の主力剤を失い、酸化チタンも赤字に 利益 −30 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,045 円400 億円
農薬は、主力剤が特許切れとEUの規制で急に売れなくなり、新剤の承認も遅れる。取り分は0.48%まで下がり、ジェネリックとの値下げ競争で価格も物価に届かない。益率は8%に落ちる。
無機化学は、中国の安値品が塩素法の市場にも入り、MLCC向けでも顧客の内製化や他社品に押される。益率はマイナスになり、塩素法の設備にも減損が出る。
営業利益はほぼゼロ。配当は削られ、事業の一部は売却して資金を作ることになる。会社は、農薬の事業と土地・保有資産で価値を支えるだけの存在になり、市場で再編・買収の対象になる。
2005年のフェロシルト問題から立ち直った会社が、10年かけて再び優良さを失う筋書きだ。研究開発費を削れば新剤が出ず、削らなければ赤字が続く。どちらを選んでも、株主に残る利益はごくわずかになる。
- 有機化学(農薬・動物用医薬品・医薬品原薬):数量 800(世界の作物保護市場の規模(億ドル、実質。2026年の物価))× 価格 0.6%(石原産業の取り分(シェア)× 物価の指数。150円/ドルで億円に)→ 売上 720 億円・営業利益 58 億円。取り分 0.48%、益率 8.0%
- 無機化学(酸化チタン・機能性色材・電子材料・ファイン):数量 14.0(販売量(万トン、酸化チタン相当に換算した推定。実質))× 価格 42(1トンあたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 589 億円・営業利益 −12 億円。益率 -2.0%
倍率:ほぼ営業利益ゼロで、稼ぐ力では値が付かない。農薬の事業と土地・保有資産の売却価値(純有利子負債を引いた後)の税後 400 億円(今の自己資本 1,290 億円の約 3 割)に置いた。営業利益がほぼゼロなので EV ÷ 営業利益は意味を持たず、純有利子負債 398 億円は床の計算の中で先に引いてある。
確率:確率13%:主力剤の失速と酸化チタンの苦戦が同時に起きる複合の負け。単一製品に偏る会社で、10年は長いので5%を超える確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
有機化学(農薬・動物用医薬品・医薬品原薬)
除草剤・殺菌剤・殺虫剤の農薬が中心。犬の膵炎薬パノクエルなどの動物用医薬品、医薬品の原薬、有機中間体も含む。
| 数量世界の作物保護市場の規模(億ドル、実質。2026年の物価) | 価格石原産業の取り分(シェア)× 物価の指数。150円/ドルで億円に | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 750 | 0.7% | 826 | 183 |
| 10 年後 中立 | 862 | 0.9% | 1,196 | 215 |
取り方:世界の作物保護市場を実質約750億ドルと推定し(開示なし。大手の売上の一般的な見積りから)、2026年3月期の有機化学の売上826億円がその約0.73%に当たるとした。2026年3月期は欧州の天候特需で通常より高く、中立の取り分は0.69%まで戻す。価格は取り分に物価の指数をかけたもので、中立は10年で1.34倍。
無機化学(酸化チタン・機能性色材・電子材料・ファイン)
酸化チタン(硫酸法と塩素法)、導電性材料を含む機能性色材、MLCC向けなどの電子材料、ファインケミカル。「その他」の商社・建設(売上約40億円)は調整に含めた。
| 数量販売量(万トン、酸化チタン相当に換算した推定。実質) | 価格1トンあたりの平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 34 | 682 | 50 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 49 | 790 | 71 |
取り方:酸化チタン・機能性色材・電子材料・ファインの販売量を、酸化チタン相当で約20万トンと推定し(開示なし・概算)、売上682億円で割って平均単価約34万円/トンとした。硫酸法の停止で量は減り、MLCC向けなど高単価品の比率が上がるので、平均単価は物価に品ぞろえの上振れ・下振れが乗る。
リスクと懸念
剤の特許切れとジェネリックの値下げ
農薬の売上は少数の剤に偏る。特許が切れた剤は、中国・インドのジェネリックが入り、価格と数量が一気に落ちる。フルアジナムはブラジルですでに押されている。新剤が育つ前に次の剤が切れれば、利益は数年で2〜3割動く。
2026年3月期の利益が山である
2026年3月期の営業利益190億円は、欧州の天候特需と円安に押し上げられた。会社自身が今期を142億円と見ている。山の利益に高い倍率を付ける見方は危ない。山の後の谷が深いと、ROEが資本コストを割る年が続く。
EUの登録規制
EUは環境規制で、農薬の成分の登録の維持を難しくしている。欧州の売上は全体の2割強で、特需が終わった後の下げ止まりに、EUの規制と新剤の承認の行方が効く。承認が遅れれば、欧州の穴は埋まらない。
酸化チタンの中国勢との値下げ競争
顔料用の酸化チタンは、中国の増設と安値品が市況を押し下げている。塩素法は品質で優位でも、規模では劣る。硫酸法を畳んだあとの塩素法が、値下がりで利益を出せなければ、無機化学は赤字に戻る。
構造改革の費用と実行
硫酸法の停止、富士チタン神戸工場の閉鎖、早期退職100名と、費用が連続する。減損は神戸で25億円が決まり、四日市でも出る。停止後の固定費を本当に落とせるか、従業員への対応を含めて、実行の巧拙で利益が動く。
MLCC向けの競争と需要の揺れ
高純度酸化チタンは、AIサーバー向けのMLCC需要を取り込む成長の柱だ。ただ、MLCCは景気で在庫が振れ、顧客は複数の調達先を持つ。能力倍増の稼働は2030年4月で、需要の山が過ぎた後に完成する可能性もある。
今後の分かれ目
- EUで新しい農薬剤の承認が2026年度中に下りたら
- 欧州の売上の下げ止まりの確度が上がる。やや楽観〜中立の確率を上げてよい。
- トルピラレート・シクラニリプロールの売上が2027年3月期の計画を上回って伸びたら
- 新剤の立ち上がりが速いとみて、農薬の取り分を上げ、楽観側の確率を上げる。
- フルアジナムの減少が他の主力剤(シアゾファミドなど)にも広がったら
- 剤の寿命が短い構造が表に出たとみて、やや悲観側の確率を上げる。
- 硫酸法の停止後も無機化学の営業利益率が7%に届かなかったら
- 構造改革の効果が薄いとみて、無機の益率を下げ、やや悲観側に重みを移す。
- MLCC向け高純度酸化チタンの能力増強が前倒しされる、または契約が公表されたら
- 電子材料の柱が早く育つとみて、無機の益率と楽観側の確率を上げる。
- 農薬事業や機能材を対象にした再編・TOBの話が出たら
- 悲観の床より上の価値が評価される。ただし条件は個別に見て、価格が事業の価値を下回る提案なら受け入れる理由はない。
見ておくもの
- 有機化学(農薬)の四半期の営業利益率と、欧州・北米・南米の売上の動き
- トルピラレート・シクラニリプロールなど成長戦略剤の売上と、フルアジナムの減り方
- EUの新剤承認の可否
- 無機化学の営業利益率と、硫酸法停止後の塩素法の稼働
- MLCC向け高純度酸化チタンの投資の進捗と顧客の契約
- 中期経営計画 Vision 2030 StageII の2026年度目標(営業利益190億円以上・ROE10%以上)の達成度
倍率と資本コストの決め方
農薬(世界市場×取り分)と酸化チタンなど(販売量×単価)を、数量は実質、価格は物価3%込みの名目で積んだ。資本コストは基本7.5%に quality(循環 +0.5・値決め力 0・借金 0・寿命 +0.5 で +1.0%)を足した8.5%。倍率は利益ベースの正当化PERを上限に、楽観9割・やや楽観8.5割・中立9割に置き、やや悲観は構造的な負けとして上限の約6割、悲観は売れる資産で置いた。今の株価・今のPER・過去のPBRの底は参照していない。直近の営業利益190億円は特需つきの山とみて、取り分を戻して置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→15.13 倍・やや楽観 PER 10.7→13.84 倍・中立 PER 10.6→12.63 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。