結論
大倉工業は、食品などの包装フィルムで食べてきた香川県の老舗メーカーだ。近年は大型液晶テレビ向けの光学フィルムが稼ぎ頭に育ち、2025 年 12 月期の営業利益は連結で過去最高になった。
筆者の結論は「ほぼ適正」だ。10 年の筋書きを確率で束ねた価値は、今の時価総額の前後に収まる。一番の理由は、利益の伸びが光学フィルムというほぼ一本の柱にかかっていて、残りは物価でしか伸びない事業だからだ。
強みは、包装でも光学でも顧客の工程に入り込んだ製品を持つこと。借金がなく、自己資本比率も 6 割を超え、配当も厚くなっている。DOE(自己資本に対する配当の割合)は 2026 年から 4% 水準へ上がる。
弱みは三つある。光学の顧客が中国の液晶パネルメーカーに偏ること。包装は値段を市場に決められること。そして中期計画が前回も未達だったことだ。2026 年にはフジコーの買収があり、中国 BOE との合弁も始まった。この二つが利益の質を上げるかどうかが、10 年の分かれ目になる。
今の値段は、記録的な利益がそのまま続く前提とおおむね釣り合う。だから安全域は薄い。筆者は、買うなら光学の将来を値段に織り込まない水準でと考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くはないが、安全域を取れる値段ではない」会社だ。
堀の深さは限られる。包装は値段を市場に決められ、光学は顧客が少なく、しかも相手は価格交渉に強い中国のパネルメーカーだ。事業としては、持ち続けて安心とまでは言えない。
一方で財務は堅い。借金がなく、自己資本は厚く、配当も増えている。景気が悪くなっても、会社が傾く心配は小さい。これが下値を支える。
問題は資本の使い方だ。過去 10 年の ROE は資本コストを下回ってきた。今後 3 年は 250 億円の設備投資が続き、その見返りが計画どおりかは、まだ見えない。光学フィルムの好調で ROE が 8% 台に乗るなら、価値は今の値段をわずかに上回る。
筆者なら、今の値段で喜んで買う理由は見つけにくい。光学の成長を値段に織り込んでいない水準まで下がったら、はじめて安全域が語れる会社だ。
何で稼ぐ会社か
大倉工業の事業は、合成樹脂、新規材料、建材、その他の四つに分かれる。売上の約 6 割は合成樹脂が占める。
合成樹脂の中心は包装資材だ。食品や飲料の外装に使うシュリンクフィルム(熱で縮んで商品を包むフィルム)、詰め替え用の軟包材、リキッドパックなどを作る。顧客は食品・日用品メーカーで、一社ごとの仕様に合わせて作り込む。環境対応のバイオ由来フィルムも出している。2026 年 1 月に買収したフジコーは、剥離フィルムや転写印刷フィルムを持つ加工会社で、この事業を補う。
新規材料は、いま利益の伸びを引っ張る部門だ。大型液晶の偏光板を守る光学アクリルフィルムと、視野角を広げる位相差フィルムが主力になる。アクリルは吸水しにくく、大型テレビでも寸法が狂わない。顧客はパネルメーカーや偏光板メーカーで、数は少ない。接着剤、医療向け、ベトナムの接着剤工場もここに入る。
建材は、パーティクルボード(木のチップを固めた板)やプレカット、木質構造材を扱う。2026 年 4 月に香川県で高瀬工場が本格稼働した。投資が先に出る事業で、稼ぐ力はまだ小さい。
このほか、ホテルと情報処理の小さな事業がある。全体で見ると、安定した包装を土台に、光学材料という成長の芽を育て、建材で次の柱を探している形だ。
優良さと弱いところ
優良さは「中の上」とみる。強みは顧客の工程への入り込みで、これは本物だ。ただ、堀が深いのは光学フィルムの一部にとどまる。
包装フィルムは、食品メーカーの仕様に合わせて作り、品質の事故を起こさないことが信用になる。乗り換えのコストは小さくないが、値段は原料のナフサ価格と競合の動きで決まる。同社は 2025 年に製品価格の改定を通し、営業利益を約 24% 伸ばした。値上げが通る力はあるが、原料が下がれば値下げも求められる。
光学フィルムは、アクリルで大型液晶に使える品質を量産できる会社が限られる点が強みだ。2025 年は新規材料の営業利益がほぼ倍になった。一方で、量産機 G2 ラインの立ち上げでは品質の問題で費用がかさんだ期があった。量産の腕はまだ完全には証明されていない。
資本効率は平凡だ。ROE(自己資本に対する利益率)は過去 10 年の中央値が 6% 台で、資本コストを下回ってきた。自己資本の 6 割を超える厚さと、実質無借金の財務が、安全域の主な中身になる。
経営には評価できる変化がある。DOE を軸にした還元方針を打ち出し、政策保有株(持ち合い株)は純資産比 15.5% から 2030 年に 10% 未満へ減らす計画だ。ただ前の中期計画は目標に届かなかった。数字の約束を守れるかが、これからの見どころになる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
同社の事業は、包装資材と光学フィルムという、まったく違う二つの市場にまたがっている。
包装資材の国内市場は、人口とともに緩やかに縮む。食品の量が増えない以上、数量は 10 年でほぼ横ばいか、わずかに減るのが普通だ。伸びるのは、物価に合わせた値上げ分と、環境規制に対応した高付加価値品への切り替えだ。競合は興人フィルム&ケミカルズなど、国内の中堅メーカーが多く、寡占というより分散した競争になる。容器包装リサイクルの規制が強まれば、バイオ由来やリサイクル対応の製品を出せる会社が有利になる。
光学フィルムは、大型液晶テレビとモニターの需要に左右される。偏光板保護フィルムの世界市場は、2025 年の約 17 億ドルから 2032 年に約 24 億ドルへ伸びるとの予測がある。ただし液晶パネルの生産は中国に集まり、値段は下がり続ける。有機 EL への置き換えも長い目では進む。その中で日本のアクリルフィルムの優位は、品質と寸法安定性にある。中国勢がそこへ追いつけば、優位は縮む。
建材は、国内の新築住宅の減少が逆風だ。木材を使う建築や、現場の人手不足に応える工場でのプレカットは追い風になる。ただ、同社の規模はまだ小さく、収益への寄与は限られる。
2026 年はナフサ価格の高止まりで原料費が上がった。値上げで転嫁できるかどうかが、包装の利益率を左右する。
資本政策と M&A
資本政策は「還元は厚く、買収は小さく」だ。
配当は、DOE 3.0% 以上かつ配当性向 30% 以上を基本にする。2026 年と 2027 年は特別配当を足して、DOE を 4% 水準に上げる。2026 年の配当は、年初予想から引き上げられた。自社株買いも、2024 年と 2025 年にそれぞれ約 12 億円行った。中期計画の 3 年間で、還元は 65〜70 億円に上る。
買収は、2026 年 1 月のフジコーが目立つ程度で、金額も純資産の 15% 未満にとどまる。フジコーの利益は 2024 年で約 6 億円、会社は 2030 年に 10 億円を目指す。中国 BOE との合弁(BOE が 66%、大倉が 34%)は 2026 年 3 月に設立された。BOE の拠点内で光学フィルムを作り、販売を広げる狙いだ。
政策保有株は減らす方針で、売却で得た資金は還元と設備投資に回る。設備投資は 3 年で 250 億円と、利益に比べて重い。上場から長い会社で、TOB(株式公開買い付け)の話は聞こえないが、時価総額が小さく、資産も厚いので、買われる可能性は排除できない。
10年の還元は、DOE3%以上・配当性向30%以上の方針と、近年の年35億円ほどの水準の延長で、中立は純利益の約76%。
点検済み:中立の営業利益率が過去の山(7.1%)と前の中期計画の未達の実績を超える7.7%に置かれていたため、合成樹脂と建材を今の水準に置き直した(全社7.3%)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
光学フィルムは、会社が思う以上に伸びる。大型液晶は画面が大きくなるほど、寸法が狂いにくいアクリルの価値が増す。G2 ラインの歩留まりが安定し、BOE との合弁が軌道に乗れば、中国のパネル大手に量を乗せていける。偏光板保護フィルム市場は 2032 年にかけて年 5% 近く伸びる予測で、同社は品質で優位を保てる。
包装は、フジコーが加わって製品の幅が広がる。剥離フィルムや転写フィルムは、包装より値段の下がりにくい分野だ。バイオ由来品も広がり、規制が強まるほど同社に追い風になる。
資本の面でも伏線がある。DOE を軸にした還元が定着し、政策保有株の売却資金が配当と自社株買いに回る。ROE が 10% を超える年が続けば、時価総額は倍近くに育ちうる。2025 年に営業利益が 35% 伸びた実績は、利益の伸びが実際に起きていることを示している。
中期計画の 2027 年目標は営業利益 70 億円で、2026 年の会社予想はすでに 65 億円まで来ている。ここから光学が量で伸びれば、70 億円は通過点になる。2030 年の 100 億円という長期目標も、光学の面積が 2 倍になる世界なら届く。財務に余裕があるので、設備投資を借金に頼らずに続けられる点も大きい。
慎重な見方
光学フィルムの好調は、一時の液晶の在庫調整が終わっただけで、長続きしない。液晶パネルの価格は下がり続け、パネルメーカーはフィルムの値下げを迫る。中国の材料メーカーがアクリルフィルムの品質に追いつけば、日本の優位は消える。有機 EL への置き換えも進む。BOE との合弁は、技術を渡して値段を下げる方向に働きかねない。
包装は、食品の量が増えない国内で値上げの余地が小さい。ナフサ価格が下がれば、価格改定の分を戻す圧力がかかる。建材は投資が先行し、住宅の減少で稼働率が上がらない恐れがある。
加えて、前の中期計画が未達だった事実がある。新工場の立ち上げ遅れが繰り返され、設備投資の 250 億円が見合う利益を生まないなら、ROE は資本コストを下回り続ける。ホテルや情報処理のような本業から遠い事業も、全体の資本効率を引き下げている。
配当を厚くしても、それは自己資本を使って払っているだけで、事業の稼ぐ力が上がったことにはならない。過去 10 年の ROE は 6% 台で資本コストに届いたことがなく、2025 年の最高益も包装の値上げと光学の一時的な回復に支えられた面が強い。記録的な利益を水準として扱うと、割高をつかみやすい。
どちらに重みを置いたか
光学フィルムの伸びは実績があるが、顧客の偏りと中国勢の追い上げという構造の弱さも本物だ。包装と建材は、物価に沿って伸びるだけと考えるのが素直だった。
このため、中立を最も厚くし、強気と慎重の確率はほぼ対称に置いた。慎重側を少し厚くしたのは、前の中期計画の未達と、光学の顧客集中を重く見たからだ。財務の堅さは、悲観の落ち込みを抑える方向にだけ効かせた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 7,532 円851 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,308 円374 億円)。 今の値に割り戻すと 5,740 円649 億円、今との差 +10.4%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 16,616 円1,878 億円 | 4,158 円470 億円 | +299.5% | +14.9% | 1,870 円211 億円 |
| やや楽観 | 21% | 11,125 円1,258 億円 | 3,804 円430 億円 | +187.1% | +11.1% | 3,135 円354 億円 |
| 中立 | 38% | 6,983 円789 億円 | 3,393 円384 億円 | +99.5% | +7.2% | 3,943 円446 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,552 円402 億円 | 2,919 円330 億円 | +24.4% | +2.2% | 1,424 円161 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,651 円300 億円 | 2,035 円230 億円 | −9.9% | −1.0% | 469 円53 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,532 円851 億円 | 3,308 円374 億円 | +108.5% | +7.6% | 10,840 円1,225 億円 |
今の株価時価総額 5,200 円588 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 光学フィルムが世界で定着する 利益 124 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 16,616 円1,878 億円
大型液晶向けの光学アクリルフィルムが、G2 ラインの安定稼働と BOE との合弁で量を大きく伸ばす。中国の大手パネルメーカーが寸法安定性を評価し、アクリルの採用が広がる。新規材料は今の 2 倍の面積を出荷し、利益率は 17% まで上がる。
包装は、フジコーの剥離・転写フィルムが加わって単価の高い製品の比率が増え、バイオ由来品も定着する。建材は高瀬工場が安定稼働し、木材の工場加工の追い風を受ける。
政策保有株の売却資金で還元は厚くなり、自己資本は膨らまずに ROE は 12% を超える。会社が掲げる 2030 年の営業利益 100 億円を、2035 年にはほぼ倍で超える姿だ。
- 合成樹脂(包装フィルム・軟包材ほか):数量 185(出荷量(千トン、推定))× 価格 48(平均単価(万円/トン))→ 売上 895 億円・営業利益 94 億円。フジコーと高付加価値品が効く
- 新規材料(光学フィルム・接着剤・医療):数量 90.0(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 600(平均単価(円/平方メートル))→ 売上 540 億円・営業利益 92 億円。G2 安定・BOE 合弁で量が倍増
- 建材(木質構造材・パーティクルボード):数量 225(出荷量(千立方メートル相当、推定))× 価格 9.20(平均単価(万円/立方メートル相当))→ 売上 207 億円・営業利益 14 億円。高瀬工場が安定稼働
倍率:事業の純利益 124 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.21 倍、時価総額 1,878 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:光学の採用が世界で広がり、包装の高付加価値化と建材の立ち上げも同時に進む組み合わせ。好条件が重なるので確率は抑えた。
やや楽観 21% 光学が伸び、包装も底堅い 利益 89 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 11,125 円1,258 億円
光学フィルムは大型液晶で着実にシェアを取り、新規材料の面積は 7 割増になる。単価は中国勢の値下げ圧力で物価ほど上がらないが、量が補う。
包装は食品向けの数量が緩やかに減る一方、価格改定が通り、フジコーの利益も計画に近づく。建材は新工場の償却を吸収し、小さな黒字を保つ。
配当は DOE 4% 水準を保ち、政策保有株の売却分も還元に回る。ROE は 10% 前後に上がり、資本コストを超える年が増える。会社の中期計画を少し遅れて達成する姿だ。光学の顧客は広がるが、主力の顧客への依存は残り、利益の質は今とあまり変わらない。
- 合成樹脂(包装フィルム・軟包材ほか):数量 176(出荷量(千トン、推定))× 価格 48(平均単価(万円/トン))→ 売上 840 億円・営業利益 78 億円。価格改定が通る
- 新規材料(光学フィルム・接着剤・医療):数量 72.0(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 560(平均単価(円/平方メートル))→ 売上 403 億円・営業利益 59 億円。光学が着実にシェア増
- 建材(木質構造材・パーティクルボード):数量 215(出荷量(千立方メートル相当、推定))× 価格 9.00(平均単価(万円/立方メートル相当))→ 売上 194 億円・営業利益 11 億円。新工場の償却を吸収
倍率:事業の純利益 89 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.1 倍、時価総額 1,258 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:光学は伸びるが中国勢の値下げで利益率の上がり方は鈍く、包装は横ばいに物価が乗る。経営計画が遅れながら達成される姿。
中立 38% 光学が伸びて包装を支える 利益 63 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 6,983 円789 億円
光学フィルムは大型液晶の需要に乗って 5 割ほど面積が増える。ただ液晶パネルの値下げ圧力と中国勢の追い上げで、単価は 10 年で 1.15 倍と物価の 1.34 倍に届かず、利益率は 12% で止まる。
包装は国内の食品向けが少しずつ減る。そこへフジコーの商品が加わり、全体の出荷は今より 1 割ほど増える。利益率は今の 8% 近くを保つ。建材は新工場が軌道に乗り、小さな利益を出す。
営業利益は 90 億円台に届き、会社が掲げる 2030 年の 100 億円には 5 年遅れても届かない姿になる。全社の営業利益率は 7% 台前半で、過去の山(7.1%)とほぼ同じ。還元は純利益の 6 割強を保ち、自己資本はゆっくり増える。ROE は 8% 前後で、資本コストをわずかに上回る。
- 合成樹脂(包装フィルム・軟包材ほか):数量 167(出荷量(千トン、推定))× 価格 47(平均単価(万円/トン))→ 売上 785 億円・営業利益 61 億円。国内は微減、フジコーが補う(利益率は今と同じ 7.8%)
- 新規材料(光学フィルム・接着剤・医療):数量 61.0(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 517(平均単価(円/平方メートル))→ 売上 315 億円・営業利益 38 億円。光学は 5 割増。単価は液晶の値下げで物価ほど上がらず実質 1 割強の下落
- 建材(木質構造材・パーティクルボード):数量 205(出荷量(千立方メートル相当、推定))× 価格 8.83(平均単価(万円/立方メートル相当))→ 売上 181 億円・営業利益 8 億円。新工場が軌道に乗る(利益率は今と同じ 4.2%)
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.57 倍、時価総額 789 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:光学の伸びを認めつつ、中国勢の追い上げで利益率は伸び悩むという落としどころ。業界ノートの、機能材は伸びるが汎用領域は物価並みという前提にも沿う。
やや悲観 22% 光学の値下げと包装の価格競争 利益 36 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 3,552 円402 億円
液晶パネルの値下げ圧力が強まり、光学フィルムは数量こそ増えるが、単価が横ばいに近い。BOE との合弁でも、技術の流出と値引きの要求を受ける。利益率は 8% に下がる。
包装は、ナフサ価格が下がって価格改定の分を戻され、数量も国内の人口減で 1 割ほど減る。フジコーの買収効果は限られる。建材は工場の償却が重く、利益はほとんど残らない。
営業利益は今の 8 割ほどに落ち、設備投資の 250 億円が見合う利益を生まない。ROE は 5% 前後で、資本コストを下回り続ける。配当は DOE の方針で保たれるが、自己資本が増える速さは鈍る。
- 合成樹脂(包装フィルム・軟包材ほか):数量 150(出荷量(千トン、推定))× 価格 44(平均単価(万円/トン))→ 売上 660 億円・営業利益 43 億円。価格改定を戻され数量も減
- 新規材料(光学フィルム・接着剤・医療):数量 50.0(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 450(平均単価(円/平方メートル))→ 売上 225 億円・営業利益 18 億円。単価が横ばい・合弁で技術流出
- 建材(木質構造材・パーティクルボード):数量 190(出荷量(千立方メートル相当、推定))× 価格 8.20(平均単価(万円/立方メートル相当))→ 売上 156 億円・営業利益 4 億円。償却が重く利益僅少
倍率:ROE 5.1% は k 8.0% 以下で、ためた利益は額面未満の価値。PER の上限は 1÷k=12.5 倍で、稼ぐ力(純利益÷k)の 9 割の 11.25 倍に置いた。
確率:光学の値下げと包装の価格競争が重なり、設備投資が空回りする姿。中国の過剰生産能力の影響が長引く場合。
悲観 10% 光学の優位が崩れ、投資が重荷になる 利益 7 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 2,651 円300 億円
中国の材料メーカーがアクリルフィルムの品質に追いつき、光学の優位が消える。液晶から有機 EL への置き換えも進み、新規材料の面積は 3 割減り、単価も落ちて利益はほぼ消える。BOE との合弁は技術を渡しただけに終わる。
包装は国内で数量が縮み、値段も取れない。建材は住宅の減少で稼働率が上がらず、赤字すれすれになる。ホテルなど周辺事業の重さも残る。
営業利益は今の 2 割以下に落ち、新工場や研究開発の設備に減損が出る。自己資本は減損で痩せる。ただ財務は無借金で、売却できる土地・設備・保有株が下値を支える。稼ぐ力より、売れる資産で価値を測る局面だ。
- 合成樹脂(包装フィルム・軟包材ほか):数量 128(出荷量(千トン、推定))× 価格 38(平均単価(万円/トン))→ 売上 486 億円・営業利益 17 億円。数量が縮み値も取れない
- 新規材料(光学フィルム・接着剤・医療):数量 33.0(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 360(平均単価(円/平方メートル))→ 売上 119 億円・営業利益 2 億円。優位が崩れ面積・単価とも低下
- 建材(木質構造材・パーティクルボード):数量 160(出荷量(千立方メートル相当、推定))× 価格 7.00(平均単価(万円/立方メートル相当))→ 売上 112 億円・営業利益 1 億円。稼働率が上がらず赤字すれすれ
倍率:10 年の構造的な負けの筋書き。純利益は 7 億円(ROE 1% 強)に細り、稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後を床とし、今の自己資本 631 億円に 0.475 倍を掛けた。
確率:優良さが失われた 10 年。光学の優位が消え、投資が回収できない構造的な負けを想定。確率はほかの筋書きと同じ理由で上げ下げしていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
合成樹脂(包装フィルム・軟包材ほか)
シュリンクフィルム、軟包材、リキッドパックなどの包装資材を中心とする主力事業。2026 年からフジコー(剥離フィルム・転写フィルム等)が加わる。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格平均単価(万円/トン) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 150 | 35 | 527 | 41 |
| 10 年後 中立 | 167 | 47 | 785 | 61 |
取り方:2025/12 期の売上 526.7 億円を、包装フィルムの価格帯(1 キロあたり数百円)で割って出荷量を推定した。会社は数量を開示しないので推定。営業利益は前年比約 24% 増の開示から逆算した推定値。
新規材料(光学フィルム・接着剤・医療)
大型液晶の偏光板に使う光学アクリルフィルム、位相差フィルムなどの光学材料が中心。接着剤、医療関連、ベトナムの接着剤事業も含む。
| 数量出荷面積(百万平方メートル、推定) | 価格平均単価(円/平方メートル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 42.0 | 450 | 189 | 25 |
| 10 年後 中立 | 61.0 | 517 | 315 | 38 |
取り方:2025/12 期の売上 189.2 億円を、光学フィルムと接着剤などの平均単価(1 平方メートルあたり数百円台と仮定)で割って面積を推定した。世界の偏光板保護フィルム市場は 2025 年で約 17 億ドル(約 2,600 億円)、同社の光学材料はその 1 割に届かないとみる。推定値。価格は、液晶パネルの値下げ圧力で光学フィルムの単価が物価ほど上がらないため、中立でも 10 年 1.15 倍(物価 1.34 倍より低い)に置く。
建材(木質構造材・パーティクルボード)
パーティクルボード、プレカット、木質構造材料を手がける。高瀬工場(香川県)が 2026 年 4 月に本格稼働した。
| 数量出荷量(千立方メートル相当、推定) | 価格平均単価(万円/立方メートル相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 200 | 6.59 | 132 | 6 |
| 10 年後 中立 | 205 | 8.83 | 181 | 8 |
取り方:2025/12 期の売上 131.8 億円を、ボード・プレカット加重の単価(1 立方メートル 6.6 万円相当)で割った推定値。
リスクと懸念
光学フィルムの顧客集中
光学材料の売上は、中国のパネル・偏光板メーカー数社に偏る。大口が内製や他社品へ切り替えれば、新規材料の利益は大きく減る。BOE との合弁(BOE が 66%)は販路を固める一方、値下げ交渉では相手側が主導権を握る構図になる。
量産立ち上げの失敗
光学アクリルフィルムの G2 ラインでは、立ち上げの品質問題で費用が膨らんだ期があった。前の中期計画も新工場の遅れが未達の主因の一つだった。今回の高瀬工場(建材)や増設でも同じことが起きれば、投資が回収できない。
液晶そのものの需要の頭打ち
大型テレビの出荷は成熟し、有機 EL や次の表示方式への置き換えが長期で進む。液晶の偏光板保護フィルムは、液晶が縮めば数量も縮む。同社の強みを作った市場そのものが細る危険がある。
原料ナフサ価格と価格転嫁
包装フィルムの原料はナフサ由来の樹脂だ。2026 年は価格が高止まりしており、転嫁できれば利益は伸びるが、下落局面では逆に値下げを求められる。食品メーカー相手の交渉力は強くない。
国内需要の縮小
包装は食品や日用品の国内数量に連動し、建材は新築住宅の減少に連動する。どちらも人口減で数量が緩やかに減る。減る分を価格と新製品で補えなければ、全社の成長は物価止まりになる。
資本効率の低さ
過去 10 年の ROE は 6% 台で、資本コストを下回ってきた。自己資本の厚さは安全の根拠だが、同時に利益率を押し下げる。設備投資が重いままだと、配当を上げても価値は増えない。
ホテルなど周辺事業と買収の失敗
ホテルや情報処理は本業と遠く、資本の使い道として妥当か疑問が残る。フジコーなどの買収が期待どおり利益を出さず、減損になる恐れもある。2025 年は構造改革の減損で純利益が減った。
今後の分かれ目
- G2 ラインの歩留まりが安定し、大口パネルメーカーの採用が増える
- 新規材料の利益が計画を超え、中立から強気側へ寄る。単価が下がっても、量の伸びで補えるかが見どころになる。
- 光学の大口顧客が内製化や他社品へ切り替える
- 新規材料の利益の大半が消え、全社の利益は 2〜3 割減る。悲観側の筋書きに近づく。
- ナフサ価格が下がり、食品メーカーが価格改定の見直しを求める
- 包装の利益率が戻され、営業利益は今より下に落ちる。値上げの定着か否かが分かれ目になる。
- フジコーが 2030 年の利益 10 億円に近づく
- 包装の高付加価値化が進み、買収は成功と判断できる。逆に伸びなければ、減損と資本効率の悪化に備える。
- 政策保有株の売却が計画どおり進み、還元に回る
- 自己資本が膨らみにくくなり、ROE が資本コストを超える年が増える。価値の押し上げ要因になる。
- 国内の新築住宅着工がさらに急減する
- 建材の稼働率が下がり、新工場の償却を吸収できない。全社の営業利益を数億円押し下げる。
見ておくもの
- 光学材料(新規材料)の売上と営業利益率
- G2 ラインの歩留まり・稼働率と増設の進捗
- BOE との合弁(合肥京倉新材料科技)の出荷量
- 包装の価格改定の定着度とナフサ価格
- フジコーの利益(2030 年に 10 億円の計画)
- 政策保有株の縮減と DOE 4% 水準の還元
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER・PBR を見ず、10 年後の事業の ROE・資本コスト 8.0%・成長率 4% から式で出した。中立は ROE が k をわずかに超える程度で、下限の 1÷k=12.5 倍に置いた。今の株価は中立の価値に近いが、これは記録的な利益の水準と将来の光学の伸びが同じ重さで効いた結果であり、株価に寄せたわけではない。悲観は過去の PBR の底でなく、売れる資産の税後と稼ぐ力から置いた。形は今と同じ(家賃を営業費用に入れる形)にそろえており、新リース会計の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.7→15.21 倍・やや楽観 PER 12.7→14.1 倍・中立 PER 12.5→12.57 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足して 8.0%。事業が傾いている様子はなく、extra は 0。BOE への依存や中計未達のような個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。