結論
東洋ドライルーブは、部品の表面に乾いた潤滑の膜を塗る会社だ。油を差せない所、たとえば自動車の駆動部品やカメラのレンズ鏡筒に、二硫化モリブデンやフッ素樹脂の膜を焼き付ける。筆者の結論は「ほぼ適正、わずかに割高寄り」である。いちばんの理由は、厚い自己資本に対して稼ぎが薄く、自己資本利益率が資本コストに届かないことだ。
技術はしっかりしている。顧客の図面に膜の種類が書き込まれると、簡単には他社に替えられない。タイの子会社は売上 11 億円で純利益 3 億円を稼ぐ。ただ売上の半分強が自動車向けで、エンジンや変速機の部品は電気自動車の時代に細る。
10 年の中立では、売上が 7 割強の規模まで伸び、営業利益率は 11% 前後で落ち着くとみる。それでも 160 億円近くに膨らむ自己資本に対して、利益は 8 億円台だ。現金は 17 億円あるが、創業家が株の過半を持ち、還元は配当性向 3 割にとどまる。オーナーとして持つ喜びはあるが、払う値段に大きな安全域は見えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、わかりやすく長続きする小さな事業だ。部品に膜を塗るという仕事は 10 年後も残り、仕様に入り込む性格から顧客は離れにくい。経営は堅実で、借金はなく、無理な買収もしない。
しかし、オーナーの目で見ると、資本が利益を生む力が弱い。自己資本に対して年 5〜6% しか稼がず、それが株主の求める利回りを下回る。利益をため込むほど、内部留保は帳簿の額ほどの価値を持たなくなる。創業家が過半を持つ会社では、この現金の使い方を少数の株主が変えることは難しい。
筆者は、この会社を「よい職人の店」とみる。品質は確かで潰れにくいが、資本の配分で株主の価値を大きく増やす会社ではない。安全域を求めるなら、今の値段よりもう一段の下げが要る。
買うなら、利益率の高さより資本の使い方の変化を待ちたい。自社株買いや配当の引き上げで資本を軽くする動きが出れば、同じ事業でも株主の取り分は大きく変わる。
何で稼ぐ会社か
事業は「ドライルーブ」ひとつだ。二硫化モリブデン、フッ素樹脂、グラファイトといった滑る粉を、樹脂の結合剤に混ぜて塗料にする。これを部品に吹き付けて焼き固めると、油なしで滑る薄い膜ができる。塗料を売るだけでなく、自社の工場で部品を預かって塗る加工が稼ぎの柱である。塗る設備を自社で設計し、顧客の工場に技術ごと渡すこともある。
売上 54 億円のうち約 54% が自動車関連だ。ブレーキやドアの部品、変速機やエンジン回りのボルトやばね、シートの機構などに使われる。残りはカメラや交換レンズの鏡筒・絞り、事務機、電子機器である。2026 年 6 月期は光学向けが 2 割近く伸び、自動車の伸び悩みを補った。10% を超える大口顧客はおらず、顧客は分散している。
生産は国内の神奈川・愛知・大分などの工場と、中国の広州、タイ、ベトナムの子会社で行う。タイは日系の自動車部品メーカーの集積地にあり、売上 11 億円で純利益 3 億円という高い稼ぎを上げる。中国には持分法の合弁が 2 社あり、その利益が営業外に入るため、純利益が営業利益とほぼ同じ水準になる。2026 年 6 月期は 13 億円の設備投資で加工能力を増やし、その分だけ現金が減った。
優良さと弱いところ
強みは「図面に書き込まれる」ことだ。部品メーカーが膜の種類と厚みを仕様に定めて量産を始めると、途中で塗料や加工先を替えるには試験と承認がやり直しになる。だから一度採用されると、その部品が作られる限り注文が続く。営業利益率は収益認識の基準が変わった 2022 年以降、12〜15% で推移しており、小さな加工業としては高い。
弱いのは資本の使い方だ。自己資本は 110 億円あるのに、純利益は 6 億円で自己資本利益率は 5.5%。稼ぎの割に資本が厚く、その多くが工場と現金で寝ている。筆者が気にするのは、この差が 10 年たっても縮まりにくいことだ。利益の 3 割しか配らず、残りは自己資本に積み上がる。
値決めの力は中くらいだ。仕様に入れば値下げの圧力は弱いが、新しい部品の採用を取る段階では、住鉱潤滑剤や川邑研究所、海外ではダウのモリコートなどと比べられる。原料のフッ素樹脂は有機フッ素化合物の規制で選べる種類が減っており、配合を作り替える手間もかかる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
固体潤滑の膜は、油やグリースが使えない所の潤滑を受け持つ。真空や高温、ほこりを嫌う所、油が垂れては困る所だ。市場は小さく、塗料を作る化学会社と、塗る加工の会社が入り混じる。需要は顧客の生産台数に連動するので、自動車と電子機器の景気で加工量が上下する。2020 年の新型コロナの時は営業利益率が 3.6% まで落ちた。
構造の変化で最も大きいのは自動車の電動化だ。エンジンの摺動部品や変速機の部品は電気自動車では減る。一方で、モーター回りの静音、電池パックの部品、ドアやシートなどの機構部品は残る。会社は電動車向けの新しい膜の開発と、アジアの日系部品メーカーの開拓を課題に掲げる。電動化で失う部品と、新しく取る部品の差し引きが、10 年の数量を決める。
光学機器は交換レンズの高級品で伸びている。一方で事務機は紙の出力が減り、長い目では細る。原料では欧州と米国で有機フッ素化合物の規制が強まり、フッ素樹脂系の膜を別の材料で置き換える流れがある。配合の技術を持つ会社には参入の壁になるが、開発の費用は膨らむ。物価が上がる中で、塗料と加工賃の値上げは少しずつ通る。ただ自動車メーカーの年次の値下げ要請があり、価格は物価の上昇にやや届かないとみる。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、配当性向は 3 割だ。2026 年 1 月に 1 株を 3 株に分けたが、自社株買いの実績は乏しい。創業家の飯野家と関係先で株の 5 割強を持ち、親会社はない。
現金の使い道は設備投資に傾いている。2026 年 6 月期は 13 億円を投じ、純現金は 17 億円に減った。設備の増強が稼ぎに結び付くなら筋は通るが、自己資本利益率が資本コストを下回る中での投資は、株主の目からは物足りない。
買収されるかどうかは創業家の意思しだいだ。持ち株が厚いので、相手が来ても創業家が応じなければ動かない。逆に、事業承継の局面で同業や化学大手に売る選択肢はありうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電動化は恐れるほどの痛手にならない。エンジン部品は減っても、ドア・シート・ブレーキ・電動の機構など、滑る所はむしろ増える。モーターや電池の周りでは静かで油を嫌う部品が多く、乾いた膜の出番はある。会社は電動車向けの新しい膜を開発しており、顧客の分散も効いている。
伸びしろは光学と海外だ。2026 年 6 月期は光学向けが 2 割近く伸びた。タイの子会社は売上 11 億円で純利益 3 億円という高い稼ぎで、アジアの日系部品メーカーを取り込めば、加工量は 10 年で 3 割伸びる。13 億円の設備投資はその準備だ。
利益率も上がる。2022 年以降の営業利益率は 12〜15% で、加工の自動化が進めば 15% を保てる。そうなれば純利益は 14 億円に届き、自己資本利益率は 8% に近づく。PFAS 規制も、配合の技術を持つ会社には参入の壁になる。
創業家が株の過半を持つことも悪い話ばかりではない。短期の株価に振り回されず、10 年単位で工場と技術に投じられる。
慎重な見方
売上の半分強が自動車で、その中心はエンジンと変速機の回りだ。電気自動車の比率が上がれば、ボルト、ばね、摺動部品への膜の需要は確実に減る。国内の自動車生産も横ばいからやや減る。新しい部品で取り返せる保証はない。
値段も弱い。自動車メーカーの値下げ要請は毎年かかり、物価が上がっても加工賃に全部は乗らない。フッ素樹脂の規制で配合を作り替えれば、開発の費用が先に出る。中国の子会社と合弁は中国の景気に振られ、持分法の利益は当てにならない。
そして資本が重い。自己資本利益率は 5% 台で、資本コストに届かない。13 億円の投資をしても利益は減った。創業家が株の過半を持ち、還元は配当性向 3 割のまま現金と設備が積み上がる。悪い 10 年なら加工量は 4 分の 1 減り、営業利益率は 4% まで落ちる。
中国とタイの拠点は日系の部品メーカーの動きに左右され、現地の加工業者との価格競争も強まる。持分法の利益は自分では動かせない。
どちらに重みを置いたか
事業が消えるという主張には無理があるが、資本の稼ぐ力が弱いという指摘は強い。強気側の数字でも自己資本利益率は資本コストに届かない。確率は中立を厚くし、悲観側の電動化の痛みを考えて、慎重な側にやや寄せた。強気側が描く加工量の3割増と利益率15%は、電動車向けの量産採用が見えるまでは裏付けが弱い。一方で無借金と顧客の分散から、事業が崩れる確率は低い。結果として中立を中心に、やや悲観をやや楽観と同じ厚さに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 2,707 円108 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 543 円22 億円)。 今の値に割り戻すと 1,657 円66 億円、今との差 +3.6%、 期待の年率 +7.3%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 4,997 円199 億円 | 821 円33 億円 | +263.9% | +13.8% | 698 円28 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,663 円146 億円 | 657 円26 億円 | +170.2% | +10.4% | 864 円34 億円 |
| 中立 | 38% | 2,784 円111 億円 | 534 円21 億円 | +107.5% | +7.6% | 1,261 円50 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,343 円53 億円 | 400 円16 億円 | +9.1% | +0.9% | 349 円14 億円 |
| 悲観 | 10% | 476 円19 億円 | 302 円12 億円 | −51.3% | −7.0% | 78 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,707 円108 億円 | 543 円22 億円 | +103.2% | +7.3% | 3,250 円129 億円 |
今の株価時価総額 1,599 円64 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 12% 電動車と光学で加工量が3割増 利益 14 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 4,997 円199 億円
電動車の機構部品とモーター回りで新しい膜が採用され、エンジン部品の減少を上回る。タイとベトナムの工場は日系の部品メーカーの移管を取り込み、加工量は 10 年で 3 割増える。
光学向けは交換レンズの高級品が続き、事務機の減少を補う。有機フッ素化合物の規制で配合を替えられない中小の同業が退き、残った会社に注文が集まる。値上げは物価並みに通る。
加工の自動化で人手が減り、営業利益率は 15% を保つ。純利益は 14 億円台に乗る。それでも自己資本は 180 億円に膨らみ、自己資本利益率は 8% にとどまる。資本の重さは最後まで残る。
- ドライルーブ(被膜剤の販売とコーティング加工):数量 130(加工・出荷量の指数(2026/06 期=100、推定))× 価格 0.74(指数 1 あたりの売上(億円)。物価と値上げで動く)→ 売上 96 億円・営業利益 14 億円。加工量1.30倍・価格1.36倍
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 13.44 倍、時価総額 198 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動車向けの新しい膜とアジアの開拓が両方当たる筋。開発は進めているが、量産の採用はまだ見えず、確率は低めに置く。
やや楽観 20% 海外と光学が自動車の減りを補う 利益 11 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,663 円146 億円
自動車向けは国内で細るが、アジアの日系部品メーカー向けの加工が伸びて相殺する。光学向けは交換レンズとカメラの部品で堅く、加工量は 10 年で 15% 増える。
加工賃と塗料の値段は物価に沿って上がる。13 億円の設備投資は稼働が上がって償却の負担を吸収し、営業利益率は 13% と過去 4 年の水準を保つ。
純利益は 11 億円前後になる。配当は性向 3 割を続け、自己資本は 170 億円近くまで積み上がる。自己資本利益率は 6% 台で、資本コストにはまだ届かない。
大きな買収はせず、現金は設備の更新と配当に回る。
- ドライルーブ(被膜剤の販売とコーティング加工):数量 115(加工・出荷量の指数(2026/06 期=100、推定))× 価格 0.73(指数 1 あたりの売上(億円)。物価と値上げで動く)→ 売上 83 億円・営業利益 11 億円。加工量1.15倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 146 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:光学の伸びとタイの高い稼ぎが続く筋。2026年6月期の実績の延長に近く、確率は中立に次ぐ。
中立 38% 電動化の減りと新規採用が拮抗 利益 8 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,784 円111 億円
自動車向けはエンジンと変速機の部品が減り、ドアやシート、電動の機構部品の採用で一部を取り返す。光学とアジアの加工が少しずつ伸び、加工量は 10 年で 5% 増にとどまる。
価格は物価の上昇にやや届かない。自動車メーカーの年次の値下げ要請と、新しい膜の採用での他社との比べ合いがあるためだ。新しい工場の償却が取得時の値段のまま残る一方で、人件費と原料は物価で上がる。営業利益率は 11% 前後に落ち着く。
純利益は 8 億円台で、配当は性向 3 割を続ける。現金は設備と配当に回り、大きな自社株買いはない。自己資本利益率は 5% 前後と、今と変わらない。
- ドライルーブ(被膜剤の販売とコーティング加工):数量 105(加工・出荷量の指数(2026/06 期=100、推定))× 価格 0.70(指数 1 あたりの売上(億円)。物価と値上げで動く)→ 売上 74 億円・営業利益 8 億円。加工量1.05倍・価格1.30倍(値下げ要請で物価にやや届かない)
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 111 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動車の電動化で失う部品と、新しく取る部品・光学の伸びがほぼ釣り合う筋。売上の過去10年の動きに近く、もっとも厚く置く。
やや悲観 20% エンジン部品が先に減る 利益 5 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,343 円53 億円
電気自動車の比率が早く上がり、エンジン・変速機のボルトやばね、摺動部品への膜の注文が先に減る。新しい部品の採用は量産までに時間がかかり、加工量は 10 年で 1 割減る。
事務機の需要も細る。値上げは物価の 8 割ほどしか通らず、増やした工場の稼働が下がって固定費が重くなる。営業利益率は 7〜8% に落ちる。
中国の合弁は中国の景気で利益が振れ、持分法の利益も細る。純利益は 4〜5 億円で、配当は性向 3 割のまま減る。
新しく建てた工場の償却は取得した時の値段のまま残り、稼働が落ちた分だけ利益を圧迫する。現金は設備の維持と配当で少しずつ減り、自社株買いの余力は乏しい。
- ドライルーブ(被膜剤の販売とコーティング加工):数量 90.0(加工・出荷量の指数(2026/06 期=100、推定))× 価格 0.68(指数 1 あたりの売上(億円)。物価と値上げで動く)→ 売上 61 億円・営業利益 5 億円。加工量0.90倍・価格1.25倍
倍率:ROE 3.1%で資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で測り、利益の先細りを見て1÷kの7割台の9倍。余った現金は谷で設備に食われるとみて0.75倍の7.5億円、戻り方0.75で足した。
確率:電動化が国内とアジアで想定より早く進み、新しい採用が追いつかない筋。自動車比率54%を考えると無視できず、楽観側より厚くした。
悲観 10% 電動化と値下げで小さな加工屋に 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 476 円19 億円
電動化でエンジン回りの注文が大きく減り、新しい採用では海外の大手と中国の加工業者に競り負ける。有機フッ素化合物の規制で主力の膜の配合を作り替える費用もかさむ。加工量は 10 年で 4 分の 1 減る。
値段は物価の半分ほどしか上がらず、増やした工場は稼働が下がる。営業利益率は 4% まで落ち、持分法の利益で純利益が 2 億円ほどに支えられる。
赤字にはならず無借金も保つが、優良な加工業ではなくなる。現金は設備の維持と配当で減っていく。
創業家が承継の局面で事業を売る道もあるが、その頃には買い手が払う値段も下がっている。
- ドライルーブ(被膜剤の販売とコーティング加工):数量 75.0(加工・出荷量の指数(2026/06 期=100、推定))× 価格 0.62(指数 1 あたりの売上(億円)。物価と値上げで動く)→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円。加工量0.75倍・価格1.15倍
倍率:ROE 1.4%。稼ぐ力(純利益÷k≒24億円)が床で、利益がさらに縮む恐れを見て1÷kの66%の8倍。余った現金は半分の5億円、戻り方0.75で足した。帳簿の自己資本は床にしない。時価総額は純現金17億円×戻り方0.75を上回り、現金の床は割らない(PBRが低いのは自己資本の多くが稼がない工場と現金のため)。
確率:電動化に加え、規制で主力の膜を作り替える負担と中国・タイの景気の悪化が重なる構造的な負け筋。顧客の分散と無借金の財務を考え、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ドライルーブ(被膜剤の販売とコーティング加工)
固体潤滑の被膜剤を作って売り、国内とアジアの工場で部品に塗る加工を請け負う。
| 数量加工・出荷量の指数(2026/06 期=100、推定) | 価格指数 1 あたりの売上(億円)。物価と値上げで動く | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 100 | 0.54 | 54 | 7 |
| 10 年後 中立 | 105 | 0.70 | 74 | 8 |
取り方:単一セグメント。部品の個数や塗った面積の開示が無いため、売上54.12億円を100とした加工量の指数で表した(推定)。数量は自動車54%・光学・電子の生産量、価格は加工賃と塗料の単価の動きとみる。
リスクと懸念
自動車の電動化
売上の約54%が自動車関連で、エンジンや変速機の回りの部品が多い。電気自動車ではこれらの部品が減り、新しい機構部品での採用が追いつかなければ加工量が細る。
有機フッ素化合物の規制
欧米でPFASの規制が強まり、フッ素樹脂系の膜を別の材料で置き換える必要が出ている。配合の作り替えと顧客の再承認に費用と時間がかかる。
資本の効率の低さ
自己資本利益率は5%台で資本コストに届かない。配当性向3割のまま利益と現金が積み上がり、設備投資も稼ぎに結び付かなければ、株主の価値は増えにくい。
中国とアジアの景気
中国の子会社と持分法の合弁2社、タイ・ベトナムの工場は現地の自動車生産に左右される。持分法の利益は純利益を営業利益並みに押し上げており、減れば純利益が細る。
拠点の集中
神奈川の技術開発センターは他の拠点で代わりが利かないと会社自身が書いている。災害や事故で止まれば、新しい膜の開発と供給に響く。
今後の分かれ目
- 電動車向けの新しい膜が量産で採用される
- エンジン部品の減りを補えれば、加工量は横ばいから増加に転じ、やや楽観の筋に近づく。
- 13億円の設備投資の稼働が上がらない
- 償却と固定費が重くなり、営業利益率は10%を割る。やや悲観の筋に寄る。
- 自社株買いや配当性向の引き上げを打ち出す
- 利益は同じでも資本が軽くなり、自己資本利益率が上がる。余った現金の戻り方も高く見られる。
- PFAS規制で主力の膜の配合を替える必要が出る
- 開発費が先に出るが、替えられない中小の同業が退けば注文が集まる余地もある。
- 創業家が事業承継で株を手放す
- 同業や化学大手への売却で、現金と工場の価値が表に出る可能性がある。
見ておくもの
- 自動車向けと光学向けの売上の伸び
- タイ・ベトナム子会社の売上と利益
- 営業利益率(10%を保てるか)
- 配当性向と自社株買いの方針
- PFAS規制への対応品の採用
倍率と資本コストの決め方
数量は顧客の生産量(自動車54%・光学・電子)から、価格は物価に値下げ要請を差し引いて置いた。ROEは全筋書きで資本コスト7.75%以下なので、倍率は1÷kを上限に利益の質で割り引いた。今のPERや過去のPBRは見ていない。余った現金は運転資金を除いた10億円だけを分け、創業家の持ち株を見て戻り方を0.75にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.44 倍・やや楽観 PER 11→12.9 倍・中立 PER 10.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+0.75%で8.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。