結論
新日本製薬は、テレビやネットで客を集め、定期購入で売る通販の会社だ。看板は「パーフェクトワン」。通販化粧品の国内首位で、売上の8割を化粧品、2割弱を健康食品などのヘルスケアが占める。
筆者の結論は、今の値段はやや割高だ。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額を2割弱下回る。理由はいちばん単純で、10年先の利益がそれほど伸びないからだ。化粧品の数量は国内の人口減で細り、値上げの分は広告費と人件費で消える。
見どころはヘルスケアだ。機能性表示のコーヒー「Slimore Coffee」が牽引し、今期は5割増の勢いにある。この波が10年続けば上振れる。ただ、広告を打つほど売れる商品は、打つのをやめれば売れなくなる。堀、つまり他社がまねできない強みとして頼るには薄い。
もう一つの柱は財布の厚さだ。純現金が時価総額の4割にあたる。創業者の一族と関係法人で株の約45%を持つため、この現金が株主に戻る保証は半分と見た。非公開化の可能性も残る。それでも、事業の稼ぐ力に現金の半分を足した値で、今の株価には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の稼ぐ力そのものは悪くない。原価率が低く、資本をほとんど食わない商売で、純現金も厚い。再投資は広告費にあたり、その費用は毎年の利益から先に出ていく。株主に残る利益は、計上利益とほぼ同じだと見てよい。
だが、10年先も確実に稼いでいるかと問えば、確信は持ちにくい。主力の化粧品は単一ブランドへの依存が強い。売上は広告の量で決まり、広告の単価は上がる方向にある。ヘルスケアはヒット商品の寿命と規制に左右される。わからない部分が多い事業には、高い値段を払わない。
資本の使い方も、評価は割れる。配当は安定しているが、現金が貯まり続け、創業家が約45%を握る構造では、この現金が株主に回る保証は弱い。買収で価値を壊した形跡は小さいが、大きく育てた実績もない。
そこで安全域を見る。事業の利益に妥当な倍率を掛け、余った現金の半分を足した値で、今の時価総額は少し上回られている。割安と言える余裕はない。現金が厚いことは下値の支えになるが、楽観と悲観の差が大きい分、払う値段には慎重でいたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は「顧客のデータベース」だ。広告で新規客を集め、定期購入に乗せ、化粧品や健康食品を売り続ける。登録は約660万人。1人の客から長く稼ぐほど広告費が報われる商売で、売上原価率は2割ほどと低い。その代わり広告宣伝費が売上の4分の1を超える。
化粧品は売上の8割を占める。主力のパーフェクトワンは、化粧水から乳液までを1本にまとめたオールインワンのジェルだ。通販化粧品市場で首位に立ち、売上がギネス世界記録にも認定された。2冊目の看板として、毛穴ケアのフォーカスがクレンジングバームで伸びている。ドラッグストア向けの卸販売は約40億円と小さいが、取扱店舗を増やして通販に頼らない売り場を作っている。
ヘルスケアは、青汁の「Wの健康青汁」と、機能性表示食品の「Slimore Coffee」が柱だ。今期の第3四半期までで売上は57%伸び、中期経営計画の「ヘルスケアで売上100億円」を1年前倒しで超える見通しになった。化粧品より利益率が低いが、顧客の裾野を広げる役目を持つ。
海外は小さい。アジア事業を見直して今期は赤字を絞り、中計では米国で通販の勝ち方を確かめてから広げる構えだ。
優良さと弱いところ
強みは三つある。一つ目は、通販化粧品で首位という実績だ。広告で客を集め、定期購入に育てる手順が確立している。二つ目は、660万人のデータベースだ。新商品を出すたびに、既存客へ直接売れる。三つ目は財務で、自己資本比率は8割を超え、純現金が厚い。景気が悪くなっても、広告を落とさずに耐えられる。
弱みは堀の浅さだ。パーフェクトワンのような看板商品に頼り、売上の増減が広告投資の増減にそのまま連動する。今期は広告を絞ったとたんに化粧品が減収になった。広告で需要を買う会社は、買うのをやめれば成長も止まる。資生堂や花王のように、店頭で自然に選ばれるブランドの強さとは質が違う。
経営も見るべき点だ。社長は1995年に入社した生え抜きで、創業者と親族の関連法人が株の約45%を持つ。意思決定は速いが、少数株主の取り分は大株主の意向しだいになる。前の中計では、顧客データベースと相性のよい買収を探したが、大型案件は実行できなかった。資本の使い方で実績が少ない点は、評価を厳しくする要因だ。
2025年9月期は買収したフラット・クラフトののれんで約8億円の減損を出した。小さな失敗だが、買収の目利きが試されている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の化粧品市場は約2.6兆円で、名目では年1〜3%しか伸びない。人口が減り、量は横ばいから微減だ。それでも市場が崩れないのは、中高年層が肌のケアにお金を使い続けるからで、新日本製薬が狙うのはちょうどこの層だ。
通販化粧品の市場は約6,200億円と、化粧品全体の4分の1を占める。首位の新日本製薬に、ファーマフーズやオルビスが続く。通販の競争の本質は、広告で客を獲得する単価の勝負だ。ネット広告の単価が上がり、SNSやモール経由の新興ブランドが増えるほど、同じ客を取るのに費用がかさむ。
同じ領域の花王、資生堂、ポーラ・オルビスは、店舗や百貨店、海外を持つ。新日本製薬は通販と卸に集中する分だけ、広告の効率で差がつく。逆に言えば、広告が効く限りは利益率が高く、効かなくなれば急に落ちる。
ヘルスケアは、機能性表示食品の市場が追い風だ。ただし2024年の紅麹問題以来、規制は厳しくなる方向にある。ヒット商品の寿命も短い。Slimore Coffeeが10年先まで売れ続ける保証はなく、次の柱を作り続けられるかが問われる。
生成AIで検索の仕方が変わる点も気になる。AIが答えをまとめ、ネット広告に触れずに商品が選ばれる世の中になれば、通販の客の取り方が変わる。
資本政策と M&A
還元は、配当を軸にしている。2025年9月期の配当性向は4割強(記念配当を含む)で、今期の予想は3割台半ばだ。10年では純利益の約4割を配当に回すと置いた。自社株買いは目立った実績が確認できず、自己株を持っているが、株数への影響は小さい。
株主優待は、毎年9月末に100株以上へ自社商品を贈る。費用は原価ベースで年1億円に届かないと見る。利益から既に引かれているため、還元の差は1ポイントに満たず、ここでは一言にとどめた。
純現金は約170億円と厚い。広告の前払い、納税、運転資金に要る分を除き、約120億円を余った現金と見た。創業者一族と関連法人が株の約45%を持つため、戻る保証は半分とした。実際、過去6年で純現金は着実に積み上がっている。
買収は、顧客データベースと相性のよい案件を探す方針だが、前の中計では大型案件を実行できなかった。小さな買収の減損も出している。買う側としては期待しすぎないほうがよい。買われる側の可能性、つまり創業家による非公開化は、10年以内に2割弱の確率で見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ヘルスケアの伸びは本物だ。Slimore Coffeeは機能性表示コーヒーの国内売上首位に立ち、今期の第3四半期までで部門の売上が57%伸びた。卸の取扱店舗も約1.2万に増え、通販に頼らない売り場ができた。Fun and Healthの売上100億円という中計の目標は、1年前倒しで超える。
化粧品も底を打つ。今期は広告費をROI重視に絞って減収になったが、ECの売上は前年を上回り、フォーカスのクレンジングバームは過去最高を更新した。広告を絞っても客が逃げなかったことは、データベースの強さを示す。660万人の既存客に新商品を売れば、新規獲得の費用なしで売上が積み上がる。
財務も申し分ない。自己資本比率は8割を超え、純現金は時価総額の4割にのぼる。減損の一過性を除けば、今期の純利益は3割以上増える。中計の営業利益60億円と、ROE15%が見えてきた。米国で通販の勝ち方を作り、アジアへ広げる計画が当たれば、10年後の売上は今の2倍近くに伸びる。創業家による非公開化があれば、株主は上乗せ価格で報われる。
慎重な見方
売上の8割を占める化粧品は、足元で減収だ。主力のパーフェクトワンは広告を絞ると売上が落ちる。つまり、客が自然に買い続けているのではなく、広告で買われている。広告の単価は上がり続け、新興ブランドはSNSやモールで同じ客を奪いにくる。人口が減る国内で、中高年向けの化粧品の数量は伸びない。
ヘルスケアの急成長は、Slimore Coffeeという一つの商品に支えられる。機能性表示食品は紅麹問題以来、規制の目が厳しい。ヒット商品の寿命は短く、広告を止めれば売れなくなる。利益率も化粧品より低く、今期は営業利益が逆に3.7%減っている。売上は伸びても、利益は伸びていない。
中計の営業利益60億円は、広告を増やさずに売上を2割伸ばす前提だが、そのような例は過去にない。買収も、前の中計で大型を実行できず、買ったフラット・クラフトは減損した。純現金が厚くても、創業家が約45%を握る限り、株主に戻る保証はない。非公開化は、安い価格で行われる恐れもある。10年先の利益が物価を超えて伸びる根拠は薄い。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、ヘルスケアの勢いと財務の厚さで説得力がある。だが、利益に直結する広告の効率が悪くなる懸念と、10年先の化粧品の数量が細る点で、慎重な見方のほうが強いと判断した。
中立は、化粧品の数量が1割弱減り、価格は物価並み、ヘルスケアは今期の跳ね上がりを土台に1.8倍で置いた。確率は中立を36%、やや悲観と悲観を合わせて38%、楽観とやや楽観を合わせて26%とし、悲観側にやや寄せた。ヘルスケアの勢いと現金の厚さを認めたうえでも、確率で重みづけた価値は今の時価総額を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 4,705 円997 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 682 円145 億円)。 今の値に割り戻すと 2,817 円597 億円、今との差 +39.5%、 期待の年率 +10.3%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,027 円1,701 億円 | 963 円204 億円 | +345.3% | +16.1% | 719 円152 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,797 円1,440 億円 | 863 円183 億円 | +279.4% | +14.3% | 1,379 円292 億円 |
| 中立 | 36% | 5,747 円1,217 億円 | 735 円156 億円 | +221.1% | +12.4% | 2,334 円494 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,635 円558 億円 | 543 円115 億円 | +57.4% | +4.6% | 826 円175 億円 |
| 悲観 | 12% | 710 円151 億円 | 368 円78 億円 | −46.6% | −6.1% | 129 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,705 円997 億円 | 682 円145 億円 | +166.8% | +10.3% | 5,387 円1,141 億円 |
今の株価時価総額 2,019 円428 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% ヘルスケアが第二の柱になり、米国でも通販が根づく 利益 69 億円 · PER 22.7 倍 · 株価時価総額 8,027 円1,701 億円
ヘルスケアはSlimore Coffeeに続く商品を出し続け、機能性表示食品の規制にも対応して、売上を3倍超に伸ばす。米国で通販の型が根づき、アジアへ広がる。化粧品は中高年向けのミドル世代の取り込みが進み、数量は今より1割増える。
広告をROI基準で配分する経営が定着し、化粧品の営業利益率は14%まで上がる。顧客データベースの活用で既存客への販売が厚くなり、広告費を抑えても売上が積み上がる。ヘルスケアの利益率も11%に乗る。
現金は使い道が見つかり、小さな買収も当たる。創業家による非公開化があれば、上乗せ価格で株主に報いる。配当は安定して増え、配当性向は4割で続く。
- 化粧品(パーフェクトワン・フォーカスなど。通販と卸):数量 1,049(化粧品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 4,690(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 492 億円・営業利益 69 億円。数量1.10倍、利益率14%
- ヘルスケア(Slimore Coffee・青汁などの健康食品):数量 808(健康食品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 3,350(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 271 億円・営業利益 30 億円。数量2.6倍、利益率11%
倍率:事業の純利益 67 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 29.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 22.66 倍、時価総額 1,618 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ヘルスケアが次の看板商品を出し続け、米国での通販が当たり、広告効率も保つという好条件がそろう必要がある。通販は看板商品の寿命が短く、10年続く連勝の確度は高くない。
やや楽観 18% ヘルスケアが定着し、化粧品は横ばいを保つ 利益 58 億円 · PER 22.4 倍 · 株価時価総額 6,797 円1,440 億円
ヘルスケアは今期の跳ね上がりが一時の勢いに終わらず、数量が10年で2.2倍になる。化粧品は人口減を中高年の取り込みで相殺し、数量はほぼ横ばいを保つ。
広告のROI管理が効き、化粧品の営業利益率は13%まで上がる。ヘルスケアは10%台前半で安定する。卸の取扱店舗が増え、通販に頼らない売り場が売上の1割を超える。
中計の営業利益60億円は、2年遅れで達成する。その後は物価並みに増え、配当性向は4割を保つ。現金は貯まり気味だが、増配と小さな投資で一部が使われる。
競合の動きは穏やかだ。通販化粧品の首位として、ファーマフーズやオルビスに対する差は保ち、広告の効率で一歩先を行く。創業家の持ち株は変わらず、経営は安定する。
- 化粧品(パーフェクトワン・フォーカスなど。通販と卸):数量 973(化粧品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 4,690(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 456 億円・営業利益 59 億円。数量1.02倍、利益率13%
- ヘルスケア(Slimore Coffee・青汁などの健康食品):数量 684(健康食品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 3,350(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 229 億円・営業利益 24 億円。数量2.2倍、利益率10.5%
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 22.38 倍、時価総額 1,359 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ヘルスケアの伸びは足元で実績がある一方、広告で成長を買う構造は変わらない。やや良い筋書きは、実績に近い分だけ中立の隣に置く。
中立 36% ヘルスケアは伸びるが、化粧品の数量は細る 利益 49 億円 · PER 22.1 倍 · 株価時価総額 5,747 円1,217 億円
化粧品の数量は、人口減と競争で10年に1割弱減る。値上げは物価並みに通るが、広告費と人件費も同じだけ上がるため、営業利益率は12%台前半で足踏みする。
ヘルスケアは、足元の跳ね上がりを土台に、数量が10年で1.8倍になる。商品の入れ替えを続けながら、利益率は化粧品より低い9%台にとどまる。
全体では、売上は年4%ほどの伸び、営業利益は70億円前後と、物価をわずかに上回る程度だ。会社の中計である営業利益60億円は、2年ほど遅れて達成する。配当は純利益の4割弱を保ち、現金は積み上がる。大株主の構成は変わらず、非公開化もない。
- 化粧品(パーフェクトワン・フォーカスなど。通販と卸):数量 906(化粧品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 4,690(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 425 億円・営業利益 52 億円。数量0.95倍、利益率12.3%
- ヘルスケア(Slimore Coffee・青汁などの健康食品):数量 559(健康食品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 3,350(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 187 億円・営業利益 18 億円。数量1.8倍、利益率9.5%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 22.07 倍、時価総額 1,134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の人口減、広告単価の上昇、ヘルスケアの足元の勢いを合わせた中心の筋書き。実績のある成長と構造的な逆風が、ほぼ打ち消し合う。
やや悲観 26% 広告単価が上がり、値上げも通りにくくなる 利益 28 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 2,635 円558 億円
ネット広告の単価が上がり、SNSとモールで育つ新興ブランドが中高年の客まで取りにくる。化粧品の数量は15%減り、値上げも競争で物価の3分の2しか通らない。
営業利益率は9%台に下がる。広告を絞れば売上が落ち、増やせば利益が削られる、というジレンマが続く。ヘルスケアは機能性表示食品の規制強化で足を引っ張られ、数量は1.3倍にとどまる。
配当は減益に合わせて下がる。現金は広告の増額と小さな買収の失敗で、いくらか目減りする。それでも赤字には陥らず、事業の稼ぐ力は保たれる。
他社との比較では、花王や資生堂の店頭ブランドに対し、広告で客を取る新日本製薬の弱さが際立つ。買収は小さな案件にとどまり、成長の補いにはならない。創業家の持ち株は変わらず、現金の使い道も増えない。
- 化粧品(パーフェクトワン・フォーカスなど。通販と卸):数量 810(化粧品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 4,200(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 340 億円・営業利益 32 億円。数量0.85倍、価格1.20倍、利益率9.5%
- ヘルスケア(Slimore Coffee・青汁などの健康食品):数量 404(健康食品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 2,875(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 116 億円・営業利益 8 億円。数量1.3倍、価格1.15倍、利益率6.5%
倍率:ROE は 7% 前後で k 7.25% を下回る。この場合 PER の上限は 1÷k の 12.5 倍で、減益と広告依存を考えて 8 割の 15.32 倍に置く。
確率:広告で需要を買う通販は、単価の上昇と新興ブランドの攻勢に弱い。今期も広告を絞ると化粧品が減収になった事実があり、慎重な筋書きに中立に近い重みを置く。
悲観 12% 広告で客を取れなくなり、構造的に収益を失う 利益 6 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 710 円151 億円
パーフェクトワンの商品力が薄れ、広告で客を取る単価が採算割れに近づく。生成AIが購買の入口になり、検索広告で客を集める方法の効きが落ちる。化粧品の数量は3分の2に、値上げも通らず、営業利益率は3%まで落ちる。
ヘルスケアは機能性表示食品の規制で看板商品を失い、数量は3割減って赤字になる。撤退と在庫処分の損失も出る。
配当は大きく減らすが、純現金は減り方を抑えて守る。創業家は経営の立て直しを優先し、非公開化は見送る。事業の稼ぐ力は細り、価値は純現金と売れる資産で測る。
株価の面では、広告で客を取れなくなった通販会社に、成長の期待は残らない。立て直しの買収は失敗に終わり、のれんの減損も重なる。経営陣が交代しても、構造の弱さは変わらない。
- 化粧品(パーフェクトワン・フォーカスなど。通販と卸):数量 620(化粧品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 3,500(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 217 億円・営業利益 7 億円。数量0.65倍、価格は横ばい
- ヘルスケア(Slimore Coffee・青汁などの健康食品):数量 218(健康食品の販売個数(万個、推定。実質の数量))× 価格 2,500(1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後))→ 売上 54 億円・営業利益 −2 億円。数量0.70倍、赤字
倍率:稼ぐ力が細るので、事業の利益でなく売れる資産で測る。純現金と売れる資産の税後を床にし、今の自己資本 228 億円に 0.66 倍を掛けた。
確率:広告単価の高騰と看板商品の陳腐化が同時に来て、通販の勝ちパターンが崩れる複合の筋書き。売上の大半が広告に依存するため、起きれば一気に崩れる。起きる確率は低いが無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
化粧品(パーフェクトワン・フォーカスなど。通販と卸)
オールインワンジェルのパーフェクトワンなどを、通販(定期購入)とドラッグストア向けの卸で売る。売上の約8割。
| 数量化粧品の販売個数(万個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 953 | 3,500 | 334 | 42 |
| 10 年後 中立 | 906 | 4,690 | 425 | 52 |
取り方:化粧品の売上 333.7 億円を、定期割引後の平均単価(price 欄の値)で割り、約 950 万個と推定した(開示は金額のみ)。部門別の利益は開示が無く、全社の営業利益 47.8 億円を、広告効率が高い化粧品に 42 億円、投資段階のヘルスケアに 5.8 億円と配分した推定。数量は人口減で実質やや減る。
ヘルスケア(Slimore Coffee・青汁などの健康食品)
機能性表示食品のSlimore Coffee、Wの健康青汁などを通販と卸で売る。今期に急伸している。
| 数量健康食品の販売個数(万個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均単価(円、名目。定期割引後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 311 | 2,500 | 78 | 6 |
| 10 年後 中立 | 559 | 3,350 | 187 | 18 |
取り方:ヘルスケアの売上 77.7 億円を、定期・初回割引後の平均単価(price 欄の値)で割り、約 310 万個と推定した。新規客の獲得に広告を厚く入れる段階なので、利益は薄く推定した。今期の第3四半期までで売上が5割強伸びており、数量はそこで跳ね上がる。
リスクと懸念
広告単価の上昇と新興ブランド
広告費は売上の4分の1を超え、売上が広告の量で決まる。ネット広告の単価が上がり、SNSやモール経由の新興ブランドが中高年の客まで狙えば、同じ売上を保つ費用がかさむ。今期のように広告を絞った年は、化粧品が減収になる。
看板商品への依存
化粧品の売上の多くがパーフェクトワンのシリーズに偏る。主力が陳腐化したときの代わりが、今のところ見えにくい。フォーカスなど次の柱が育つかが、10年先の分かれ目になる。
機能性表示食品の規制と商品の寿命
ヘルスケアはSlimore Coffeeに牽引される。紅麹問題以来、機能性表示食品の規制は厳しい方向にあり、制度の見直しや行政の指導が入れば、看板商品の売り方が変わる。ヒット商品の寿命も短い。
創業家支配と資本の使い道
創業者と親族の関連法人が株の約45%を持つ。純現金が厚くても、株主に戻る保証は弱い。非公開化が安い価格で行われると、少数株主は不利になる。買収は前の中計で大型案件を実行できず、小さな買収では減損も出した。
人口減と購買の入口の変化
客は中高年の女性が中心で、国内の人口が減れば自然に細る。さらに、生成AIが買い物の入口になり、AIエージェントが商品を比べて選ぶ世になれば、検索広告やSNS広告で客を取る今の方法の効きが落ちる。広告で需要を買う商売には、特に重い逆風だ。
海外展開の不発
中計は米国で通販の型を作り、アジアへ広げる構えだ。だが、アジア事業は今期に見直しを迫られた。海外で広告費を先に使って客が根づかなければ、利益を削るだけに終わる。
今後の分かれ目
- ヘルスケアの売上が3四半期以上、前年を5割以上上回って伸び、利益率も上がったら
- 第二の柱が定着したとみて、やや楽観・楽観側の確率を上げる。
- 広告宣伝費の売上比が3割に近づいても、売上が伸びなくなったら
- 広告の効率が落ちた兆しとみて、やや悲観・悲観側の確率を上げる。
- パーフェクトワンの売上が広告を戻しても減り続けたら
- 看板商品の陳腐化を疑い、化粧品の数量の前提を下げる。
- 創業家や関連法人が、株の買い増しや非公開化の意向を示したら
- 価格しだいで株主の取り分が変わる。純現金の戻り方を見直す。
- 機能性表示食品の制度が厳しくなり、看板商品の届出に影響したら
- ヘルスケアの数量と利益率の前提を下方に直す。
- 米国での通販が黒字化し、アジアへ展開する計画が具体化したら
- 楽観側の筋書きの重みを増やす。
見ておくもの
- ヘルスケアの四半期売上と営業利益率の推移
- 広告宣伝費の対売上比と、化粧品のECの定期顧客数
- パーフェクトワンとフォーカスの売上の動き
- 機能性表示食品の制度変更と行政の動き
- 大株主の持ち株の変動、配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
数量は実質(個数)、価格は物価3%込みの名目で積み、化粧品の価格は10年1.34倍、数量は人口減で0.95倍とした。ヘルスケアは今期の急伸を土台に数量1.8倍。営業利益率は過去12年の山11.6%以下の11.5%前後に収めた。資本コストは基本7.5%+quality+0.5%(看板商品依存・広告単価・規制による寿命)の8.0%。倍率は式の上限(RONIC=k+1/2×(ROE−k)、g=4%)に対する割合で置き、今のPER・PBRは使っていない。純現金は運転資金と広告の前払いを除いた120億円を余った現金とし、創業家支配で戻る保証は半分とした。新リース会計は、通販で店舗を持たないため影響は小さい。今の株価は最後に比べただけで、寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.9→22.66 倍・やや楽観 PER 13→22.38 倍・中立 PER 12.5→22.07 倍・やや悲観 PER 10→15.32 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足して 8.0%。通販化粧品は看板商品への依存と広告単価の上昇を抱え、寿命の面で +0.5%。借金はなく、需要は景気で大きく振れないので他は 0。同じ領域のポーラ・オルビス、ノエビアと同じ水準。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。