結論
有機合成薬品工業は、アミノ酸、化成品、医薬の原料・中間体を作る売上 150 億円台の化学メーカーだ。三つの区分に売上がほぼ三等分で、輸出が半分を占める。筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力に対してやや高いというものだ。一番の理由は、10 年の利益が増えても自己資本の増えるほうが速く、ROE が資本コストに届かないことにある。
2026 年 3 月期は売上が過去最高の 154 億円になったのに、営業利益は 12 億円から 4 億円へ落ちた。原因は二つだ。常磐工場のグリシン増産設備が動き出して償却が始まったこと。電子材料向けの化成品で市況とシェアが急落したことだ。どちらも一過性とは言い切れない。
良い面もある。医薬の受託製造と、高品質のアミノ酸という伸びる方向に先行投資をしている。設備が埋まれば利益率は 7% 台に戻る。ただ戻っても ROE は 6% 前後で、資本コストの 8.5% に及ばない。
悲観の筋書きでは、中国勢の低価格攻勢で増産設備が埋まらず、赤字が続く。借入契約には経常赤字 2 期連続で担保を差し出す条項があり、余裕は小さい。ためた資産の価値は額面どおりには評価できない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安い理由がある安さ」だ。株価は純資産の 6 割弱。だが帳簿の資産の多くは専用の化学設備で、売れる額は簿価より小さい。ためた利益は額面どおりの価値を持たない。
見るべきは、投じた資本が資本コストを超えて稼ぐかどうかだ。この会社の ROE は 10 年を通じて資本コストの半分以下だった。直近の設備投資が実を結べば変わるが、結果はまだ出ていない。
経営は研究と設備に前向きで、方向は悪くない。しかし利益率の振れが大きく、将来の稼ぎが読みにくい。わからない事業には、高い値段を払わない。
安全域は、悲観の筋書きでの売れる資産と借金の差し引きに残る。値段を払うなら、利益率が 7% 台に戻ったことを決算で確かめてからでも遅くない。もう一つの見るべき点は、設備の償却が一巡したあとの利益だ。償却は物価では増えないが、更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。会計の利益は見かけ上ふくらみ、現金は細る。その差を割り引いて考えたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、化学品を作って顧客に納める製造業だ。顧客は製薬会社、タイヤ・農薬・電子材料のメーカー、食品・飼料の会社で、輸出が 5 割を超える。製品区分は三つある。
アミノ酸関係は売上 52 億円。グリシンが主力で、ビタミン原料も扱う。2025 年 6 月に常磐工場で増産設備が稼働した。2022 年からの 4 年で 47 億円をつぎ込んでおり、今はその償却を背負う時期にある。
化成品関係は売上 56 億円で、最大の区分だ。タイヤコード接着剤の原料、農薬中間体、シリコン化合物などを作る。前期は 10% 伸びたが、一部の電子材料向け製品の値崩れが第 4 四半期の利益を押し下げた。
医薬品関係は売上 47 億円。医薬品の原料と中間体を作り、受託製造への拡大を進めている。38 億円の設備投資を行ってきた。
区分別の利益は開示がなく、単一のセグメントで報告されている。従業員は 296 人、研究開発費は年 6 億円。製造は常磐工場などの国内拠点が担う。販売先では長瀬産業が 15% を占める。筆頭株主はニプロで約 15% を持つ。
優良さと弱いところ
優良さは「並みの下」と筆者は見る。強みはある。医薬の中間体は、顧客の承認に組み込まれると仕入れ先を変えにくいと筆者は見る。受託製造への足がかりも築いた。
弱みは三つある。第一に、価格を決められない。アミノ酸も電子材料向けも、中国メーカーが同じものを安く作れる。第二に、利益の振れが大きい。営業利益率は 10 年で 0.5% から 8.7% の間を動いた。第三に、資本効率が低い。ROE は 10 年の中央値で 2.5% だ。
財務は軽くない。純有利子負債は 56 億円、営業利益は支払利息の 2.7 倍しかない。長期借入には経常赤字 2 期連続で土地・建物を担保にする条項が付く。
経営は設備と研究に積極的に投じる方針だ。ただし 47 億円を投じたアミノ酸の設備は、償却が重く、まだ利益を生んでいない。ここの回収が、この会社の経営の力量を測る一番の材料になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の景色は二つに分かれる。医薬の原料・中間体は、高齢化で需要が堅く、製薬会社が中国・インドから日本へ供給を戻す動きもあり、追い風だ。特殊な中間体は参入が難しく、価格も保たれやすい。
アミノ酸と電子材料向け化成品は逆風だ。グリシンのような汎用に近い品は、中国の大手が規模で攻めてくる。電子材料向けは顧客の景気と在庫で数量が大きく振れ、前期の値崩れもその一例だ。
競合は、医薬中間体では国内の中堅精密化学メーカーや欧州・インドの受託メーカー、アミノ酸では中国・韓国の大手だ。この会社の規模は、世界の市場から見ればごく小さい。大手に価格で勝てない分、少量多品種の特殊品で生き残る戦い方になる。取れるシェアは狭い用途に限られる。
10 年の見通しは、数量はほぼ横ばいから微増、価格は物価に届かない品が多い。医薬の受託が当たれば全体の質が上がる。当たらなければ、汎用に近い品の比率が高いままで、利益率は 3 〜 5% に沈む。国内では製薬各社が原料の調達先を分散する流れが続き、日本の中堅メーカーに受託の機会が出てくる。ただし受託は品質保証と規制対応の費用がかさみ、小さな会社には負担が重い。
資本政策と M&A
還元は控えめで、年の配当は 2 億円強、利益の 3 〜 7 割の間で動く。次期も同額を見込む。自己株の取得は行っていない。
資金は設備に回る。アミノ酸に 47 億円、医薬に 38 億円を 2022 年からの計画で投じた。シンジケートローンの残高は 46 億円で、最終返済は 2033 年。10 年のうちに利益で返せるかが問題になる。
2026 年 5 月に新しい中期経営計画を出した。M&A の予定は見当たらない。筆頭株主のニプロが持つ約 15% が、再編の火種になる可能性は否定できない。10 年以内の買収・TOB の確率は 2 割強という試算もあるが、確率が読めないので価値には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アミノ酸の増産設備と、医薬の受託という二つの投資が、同時に実を結ぼうとしている。前期の減益は、新設備の償却が先に来た見かけの悪化だ。売上は 7 期連続で過去最高を更新した。数量は伸びている。
グリシンの需要は食品、飼料、医薬の用途で増え、設備が満員になれば償却は薄まる。医薬では、中間体で長い取引があり、受託製造に広げる足場がある。新しい中期計画も、この方向を引き継ぐ。
医薬の原料を国内調達に戻す動きは続く。承認を取った中間体は他社に代えにくく、価格は保たれる。営業利益率 7% は 2023 〜 2025 年に実際に出した水準で、特別な前提ではない。
借金は 46 億円のシンジケートローンで、返済は 2033 年までに分散している。利益が戻れば、財務の不安は消える。売上 150 億円のうち輸出が 5 割あるのは、世界で通じる品質の証拠だ。10 年たてば、自己資本は 180 億円を超え、配当も増える。
慎重な見方
前期の営業利益は 4 億円で、前の期の 12 億円から 7 割落ちた。償却は今後も毎年出続け、電子材料向けの値崩れは数量と価格の両方を傷める。回復を前提に値段を付けるのは危うい。
過去 10 年を見ると、営業利益率は 0.5% から 8.7% まで振れ、ROE の中央値は 2.5% にとどまる。資本コストの 8.5% に届いた年はない。この会社には、資本を増やしても利益が追いつかない癖がある。
グリシンは汎用に近く、中国の大手と戦うには規模が足りない。増産設備が埋まる保証はなく、埋めるために値引きすれば利益が出ない。医薬の受託も、競合は欧州とインドの大手で、参入が簡単とは言えない。
借入契約には、経常赤字が 2 期続くと土地・建物を担保に出す条項がある。赤字に転じる年が来れば、財務の自由度は一気に狭まる。配当で株主に返す力も弱い。時価総額が純資産より低いのは、市場がその事実を織り込んでいるからだ。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、設備が埋まった先の姿に依存する。慎重な言い分は、過去 10 年の実績に根ざしている。実績のほうが重いと見て、確率を悲観側に寄せた。
やや悲観と悲観を合わせて 42%、やや楽観と楽観で 24%、中立が 34%。前期の減益の原因が二つとも現在進行形であること、ROE が資本コストに届かない構造が長く続いたことが決め手になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 536 円116 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 117 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 342 円74 億円、今との差 −7.9%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,280 円277 億円 | 231 円50 億円 | +307.3% | +15.1% | 91 円20 億円 |
| やや楽観 | 18% | 838 円181 億円 | 176 円38 億円 | +173.2% | +10.6% | 182 円39 億円 |
| 中立 | 34% | 653 円141 億円 | 120 円26 億円 | +108.4% | +7.6% | 263 円57 億円 |
| やや悲観 | 27% | 225 円49 億円 | 92 円20 億円 | −14.5% | −1.6% | 86 円19 億円 |
| 悲観 | 15% | 173 円38 億円 | 37 円8 億円 | −43.3% | −5.5% | 32 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 536 円116 億円 | 117 円25 億円 | +76.0% | +5.8% | 653 円141 億円 |
今の株価時価総額 371 円80 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 新設備が満員になり、医薬の受託が当たる 利益 19 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 1,280 円277 億円
グリシンの増産設備が満員で回り、アミノ酸は用途を食品・医薬の高品質グレードへ広げて単価を物価以上に上げる。化成品は電子材料向けの値崩れが底を打ち、新しい用途の中間体が加わる。医薬品は新薬の中間体で長期の供給契約を取り、受託製造の比率が高まる。三つの区分の稼ぎが同時に立ち上がり、売上は今の 1.8 倍に達する。営業利益率は 10% に近づく。ここは過去 30 年でも届かなかった水準で、楽観の筋書きとしてもぎりぎりだ。医薬の設備投資 38 億円が回収され、借金も減る。ニプロや長瀬産業といった大口株主・販売先との関係が深まり、販路も安定する。自己資本は 10 年で 1.5 倍になり、配当は利益の 4 割近くまで引き上げられる。この筋書きでも ROE は資本コストをわずかに超える程度にとどまり、倍率は上限で置く。
- アミノ酸・ビタミン原料:数量 69.7(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.40(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 98 億円・営業利益 9 億円。増産品の高品質化
- 化成品(接着剤原料・農薬中間体・電子材料向け):数量 64.7(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 87 億円・営業利益 9 億円。電子材料回復
- 医薬品(原料・中間体・受託):数量 69.9(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.40(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 98 億円・営業利益 12 億円。受託の大型化
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.58 倍、時価総額 277 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:増産設備の稼働、電子材料の回復、医薬の受託の大型案件が全部そろう必要があり、売上 100 億円級の会社の 10 年としては重ねる条件が多い。最近の営業利益は 3.8 億円まで落ちており、確率は低く置いた。
やや楽観 18% 増産設備が順調に埋まり、医薬が着実に伸びる 利益 14 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 838 円181 億円
グリシンの増産設備が数年かけて埋まり、償却を吸収して利益が出る。医薬は受託製造が広がり、件数が着実に増える。化成品は電子材料向けが戻りきらないが、農薬中間体と接着剤原料が堅い。営業利益率は 8% 前後まで戻り、金額は今の 5 倍近くになる。ただし回復の中身は利益率の戻りが大きく、売上の伸びは年 4 〜 5% にとどまる。借金は返済が進み、配当は利益の 3 割台半ばで増える。自己資本は 1.4 倍ほどになるが、ROE は 7% 台で資本コストに届かない。会社の計画どおりに運べばここに着く。売上は今の 1.6 倍になり、アミノ酸と医薬が利益の柱になる。化成品は電子材料の再編が一巡し、農薬中間体と接着剤原料で稼ぎを保つ。借入は返済が進み、金利の上昇も利益で吸収できる。
- アミノ酸・ビタミン原料:数量 61.9(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.36(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 84 億円・営業利益 6 億円。償却を吸収
- 化成品(接着剤原料・農薬中間体・電子材料向け):数量 59.1(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.32(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 78 億円・営業利益 7 億円。電子材料は戻りきらず
- 医薬品(原料・中間体・受託):数量 60.6(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.36(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 82 億円・営業利益 9 億円。受託が着実に増える
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 181 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:設備はすでに完成して動いており、需要が付いてくれば償却負担が軽くなる。中期経営計画が掲げた営業利益率 7% は過去にも超えたので、実現の可能性は十分あると見て、2 番手に置いた。
中立 34% 利益率は 7% 台に戻るが、資本コストには届かない 利益 11 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 653 円141 億円
アミノ酸は設備が埋まり、単価は物価並みに上がる。医薬は受託の伸びで数量が 1 割強増える。化成品は電子材料が競争で目減りし、農薬中間体などで補う。数量はほぼ横ばいで、価格は物価より少し低い。営業利益率は 7% 台に戻り、過去の山の 8.7% は超えない。この水準は 2023 〜 2025 年の平均に近く、開示の計画でも裏づけがある。ただし償却の重い設備を抱えているため、景気が悪い年は 2% 台まで落ちる素地が残る。配当は利益に連動して増え、自己資本は 10 年で 135 億円から 180 億円強へ増える。ROE は 6% 前後で、資本コストには届かない。
- アミノ酸・ビタミン原料:数量 56.8(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 76 億円・営業利益 5 億円。設備が埋まる
- 化成品(接着剤原料・農薬中間体・電子材料向け):数量 56.3(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.30(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 73 億円・営業利益 6 億円。数量横ばい・価格は物価未満
- 医薬品(原料・中間体・受託):数量 53.6(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.34(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 72 億円・営業利益 7 億円。受託が伸びる
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 141 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最近 3 年で営業利益率は 8.7% から 2.5% まで振れ、直近は電子材料の値崩れと償却の増加が重なった。会社予想の回復を認めつつ、10 年の中心は中計の目標 7% 前後に置く。業績の振れが大きい会社なので、中立に厚い確率は置けない。
やや悲観 27% 電子材料の値崩れが広がり、増産設備が埋まらない 利益 5 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 225 円49 億円
中国メーカーの追い上げでグリシンの価格が伸びず、増産設備は 8 割しか埋まらない。化成品は電子材料向けの数量が 2 割減り、価格も物価に追いつかない。医薬は横ばいで、受託の獲得が遅れる。営業利益率は 4% 台で止まり、償却を払うとわずかな利益しか残らない。借金の借り換え金利が上がり、純利益は営業利益の 6 割強に縮む。財務制限条項の経常赤字 2 期連続には届かないものの、余裕は小さい。配当は今の水準の維持が精いっぱいで、自己資本は 160 億円ほどにとどまる。設備の更新には建築費の上昇で現金が多く出ていき、償却より投資が先行する。借入の増加で利払いが重くなり、利益の残りは細る。医薬の受託が伸びても、全体の不調を埋めるには足りない。
- アミノ酸・ビタミン原料:数量 51.6(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.25(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 65 億円・営業利益 3 億円。設備が 8 割稼働
- 化成品(接着剤原料・農薬中間体・電子材料向け):数量 47.9(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.20(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 57 億円・営業利益 3 億円。電子材料の縮小
- 医薬品(原料・中間体・受託):数量 46.6(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.30(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 61 億円・営業利益 5 億円。横ばい
倍率:ROE 3.4% は k 7.5% を大きく下回り、稼ぐ力が資本コストに遠い。PER の上限 11.8 倍より低く、上限の 7.5 割の 9 倍に置いた。
確率:直近の減益の直接の原因が、電子材料向けの値崩れと設備の償却負担であり、すでに起きている事実である。これが続く筋書きの確率は高く、最大の中立に次ぐ重さで置いた。
悲観 15% 中国勢にアミノ酸も電子材料も押され、借金に追われる 利益 −4 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 173 円38 億円
中国のアミノ酸メーカーが低価格で世界の需要を取り、グリシンの増産設備は半分も埋まらない。電子材料向けは顧客の内製化や撤退で数量が 3 割減る。医薬は受託の失注が続き、研究開発費の負担が重くのしかかる。営業利益は赤字に沈み、経常損失が 2 期続いて土地・建物を担保に差し出す。設備の減損で自己資本は 125 億円ほどに減り、配当は大きく減る。価値は稼ぐ力ではなく、売れる土地・設備・在庫の見積もりで決まる。医薬の中間体の一部は残るが、全体では事業の縮小と工場の統廃合を迫られる。借入の返済が優先され、株主への配当は止まりに近い水準まで下がる。ニプロや長瀬産業など取引先との関係で、一部の事業が譲渡される可能性もある。
- アミノ酸・ビタミン原料:数量 46.4(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.15(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 53 億円・営業利益 −3 億円。稼働半分以下・赤字
- 化成品(接着剤原料・農薬中間体・電子材料向け):数量 39.4(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.10(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。数量 3 割減
- 医薬品(原料・中間体・受託):数量 41.9(出荷の実質額(億円。今の値段のまま))× 価格 1.25(価格指数(今を 1.0。名目))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。失注
倍率:赤字で稼ぐ力では値が付かないので、今の自己資本 135 億円に掛ける形で置く。売れる資産の税後(床)の見積もりと同じ水準の 0.30 倍。
確率:単一の工場群と少数の主力品に頼る小さい会社で、中国の増産と顧客の内製化が同時に来れば赤字が続く。過去にも 4 回赤字になり、財務制限条項にも触れる。実際に起こりうる負けとして置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アミノ酸・ビタミン原料
グリシンなどのアミノ酸と、ビタミン原料。食品・飼料・医薬の原料に使われる。2025 年に常磐工場でグリシンの増産設備が動き出した。
| 数量出荷の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 51.6 | 1.00 | 52 | 1 |
| 10 年後 中立 | 56.8 | 1.34 | 76 | 5 |
取り方:アミノ酸関係の売上 51.6 億円(2026/03、前期比ほぼ横ばい)を今の値段の出荷額と置いた。区分別の利益は開示がない。増産設備の償却が始まり、全社の営業利益 3.8 億円のうち 1 億円前後と推定した(推定)。
化成品(接着剤原料・農薬中間体・電子材料向け)
タイヤコード接着剤の原料、農薬中間体、シリコン化合物など。電子材料向けの一部は値崩れが起きた。
| 数量出荷の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 56.3 | 1.00 | 56 | 2 |
| 10 年後 中立 | 56.3 | 1.30 | 73 | 6 |
取り方:化成品関係の売上 56.3 億円(前期比 +10.5%)を今の値段の出荷額と置いた。区分別の利益は開示がなく、第 4 四半期に電子材料向けで悪化したため 2 億円強と推定した(推定)。
医薬品(原料・中間体・受託)
医薬品の原料と中間体。受託製造(CDMO)を広げる方針。
| 数量出荷の実質額(億円。今の値段のまま) | 価格価格指数(今を 1.0。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 46.6 | 1.00 | 47 | 2 |
| 10 年後 中立 | 53.6 | 1.34 | 72 | 7 |
取り方:医薬品関係の売上 46.6 億円(前期比 -4.1%)を今の値段の出荷額と置いた。区分別の利益は開示がなく、研究開発費 6.2 億円の多くはここに効くが、本社費として別に引き、医薬は 2 億円強と推定した(推定)。
リスクと懸念
中国勢の低価格攻勢
グリシンなどアミノ酸は、中国の大手が規模を武器に価格を下げてくる。増産設備が埋まらなければ償却が重くのしかかり、アミノ酸の区分は赤字になる。
電子材料向けの値崩れ
前期の第 4 四半期に、一部の電子材料向け化成品で市況とシェアが急落した。顧客の景気と在庫調整に左右され、数量も価格も短期間に動く。
償却負担と財務制限条項
2 つの設備投資で償却が先行する。経常赤字が 2 期続くと土地・建物を担保にする条項があり、赤字が続くと財務の自由度が狭まる。シンジケートローンは 46 億円。
医薬の受託の失注
医薬の中間体は顧客の承認に組み込まれて堅いが、受託製造は欧州・インドの大手と競う。大型案件を取れなければ、38 億円の投資が回収できない。
少数の工場・製品への集中
主力は少数の工場と製品で成り立ち、1 つの事故や顧客の方針変更が全体に響く。売上 150 億円の小さな会社で、分散が効きにくい。
中東情勢と原料高
2027 年 3 月期の利益予想が、中東情勢を理由に当初は未定だった。原料と物流費の上昇を価格に転嫁できるかが問われる。
今後の分かれ目
- グリシン増産設備の稼働率が 8 割を超える
- 償却を吸収して利益率が戻る。中立から楽観側へ確率を移す。
- 電子材料向け化成品の値崩れが 2 期続く
- 化成品の利益率が 5% を割る。やや悲観の確率を上げる。
- 医薬の受託で大型の長期契約を発表する
- 医薬の数量と利益率の前提を引き上げ、楽観寄りに見直す。
- 経常赤字が 2 期続き担保提供の条項に触れる
- 財務の自由度が狭まる。悲観の確率を上げ、配当の減額も織り込む。
- ニプロが買い増す、または再編の動きが出る
- 買い手の出す価格が価値を超えるかを確かめる。確率は価値に入れていない。
見ておくもの
- グリシン増産設備の稼働率と償却
- 電子材料向け化成品の価格・シェア
- 医薬の受託製造の受注
- 営業利益率 7% への戻り
- 借入の財務制限条項と純有利子負債
倍率と資本コストの決め方
各区分の数量と価格を、出荷の実質額と価格指数に分けて積んだ(区分別の利益は開示がなく推定)。k は 7.5% に quality 1.0% を足した 8.5%。倍率は式から出し、ROE が k を下回る中立以下は 1÷k を上限にその 7 〜 9 割に置いた。今の株価や過去の PER・PBR は倍率の根拠に使っていない。悲観の床は売れる資産の税後から置いた。減価償却は物価で増やさず、新規の設備だけを新しい値段で足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.58 倍・やや楽観 PER 11→13.33 倍・中立 PER 10→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。