結論
神東塗料は、兵庫・尼崎に本社と工場を置く中堅の塗料メーカーだ。2025年に大日本塗料が株の過半を握り、その子会社として立て直しの途中にある。筆者の結論は割高だ。中期計画は4年後に純利益11億円を掲げるが、この会社がそれに近い利益を出したのは四半世紀前までさかのぼる。
事業の土台は弱い。売上の2割強を大東建託グループ1社に頼り、自動車向けの電着塗料は合弁相手への供給が中心だ。塗料は国内で数が増えず、値段は原料の上げ幅を追いかけるのがやっとである。2022年3月期から赤字が続き、4期続けて配当がない。
それでも再建の芽はある。親会社と粉体塗料を共同で開発し、販売網と生産を融通し合う。60億円の借入枠も確保した。筆者は、利益が過去の良かった頃の水準に戻る姿を中立に置く。その姿でも自己資本に対する利益は4%前後にとどまり、資本コストに届かない。今の時価総額は自己資本の4割弱だが、その安さは稼ぐ力の弱さの裏返しである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、神東塗料は安いが良い事業ではない。
事業は10年後も続くだろう。塗り替えの需要は残り、親会社の後ろ盾もある。ただ、オーナー利益、つまり設備の更新を引いて株主が自由に使える利益は、ここ数年ほとんど出ていない。値段を決める力がなく、原料が上がるたびに利益が消える構造は変わっていない。
経営の資本の使い方も、まだ判断できない。復配は先で、まずは赤字を止めることが仕事になる。中期計画の利益目標は、過去10年で一度も届いていない水準だ。計画どおりなら評価は大きく変わるが、それに賭ける理由は薄い。
安全域はどうか。時価総額は自己資本の4割弱しかない。ただ、その自己資本は利益をほとんど生んでいない。工場の土地や設備は、売らない限り株主のお金にならない。
筆者は、利益が過去の良かった頃の水準まで戻る姿を中立に置く。それでも今の値段には届かない。
何で稼ぐ会社か
神東塗料は1933年創業の塗料メーカーで、尼崎と千葉に工場を持つ。インドネシアにも子会社がある。連結の従業員は約400人だ。
売上は2026年3月期で215億円。ほぼ全部が塗料で、分野は4つに分かれる。工業用と建築資材向けのインダストリアル、橋や工場設備を錆から守る防食塗料などのインフラ、自動車の下塗りに使う電着塗料、鉄道の線路の砂利を固める道床安定剤などのその他だ。
売り先には偏りがある。最大の顧客は大東建託パートナーズで、売上の22.5%を占める。大東建託グループの賃貸住宅向けの塗料である。次が神東アクサルタ コーティング システムズで13.4%だ。米アクサルタとの折半の合弁会社で、同社が電着塗料の製造技術を許諾し、受託生産で製品を納めている。
稼ぎ方は、薄い利ざやの積み重ねである。原料の樹脂や顔料、溶剤は相場で動き、値上げはいつも後から追いかける。2026年3月期の営業利益は2.6億円で、売上の1%強にすぎない。経常利益は合弁会社の持分の利益などで3.9億円と、営業利益を上回る。
親会社の大日本塗料とは、互いに塗料を売り買いする関係にある。今後は販売網と生産を融通し合う。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。国内の塗料は日本ペイントと関西ペイントの2強が大きく、その下に中堅が並ぶ。同社はその中堅の一角で、価格を決める側ではない。
強みを挙げるなら、電着塗料の技術と、防食や道床安定剤のような狭い分野の製品だ。電着の技術は合弁会社に許諾し、ロイヤリティと受託生産の収入を生む。防食塗料は重機や工場設備の補修で需要が堅い。
ただ、全社の利益率は長く低い。営業利益率は2015〜2018年3月期に4%前後、それ以降は1%台から赤字だった。品質管理の問題も抱え、信頼の回復を課題に挙げる。ROE(自己資本に対する純利益の割合)は過去10年の中央値でマイナス1.2%だ。
経営の重しは顧客の偏りである。上位2社で売上の4割近い。1社の方針で売上が大きく動く。親会社の傘に入ったことは安心材料だが、経営の自由度は小さくなった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の塗料市場は、数量で見れば成熟から縮小に向かう。建物と車の数が増えないからだ。新築の住宅が減り、自動車の国内生産も頭打ちである。伸びるのは塗り替えと補修の需要で、橋や工場設備の老朽化がこれを支える。
価格は原料の動きに引っ張られる。樹脂や顔料、溶剤はナフサや酸化チタンの相場で動く。2022年前後の原料高では、値上げが追いつかず多くの中堅が利益を落とした。同社が赤字に沈んだのもこの時期だ。その後の価格改定で、売上は戻りつつある。
技術の流れは環境対応だ。溶剤を減らす水性塗料や、溶剤を使わない粉体塗料への切り替えが進む。粉体は親会社の大日本塗料も力を入れる分野で、共同開発の柱になる。
自動車では電動化が進む。車体の下塗りの電着は残るが、部品の数や塗る面積は変わりうる。国内の生産が細れば、電着塗料の数量も細る。
業界の再編は続く。中堅の塗料メーカーは単独で研究と販売網を維持するのが難しい。大日本塗料による子会社化も、その流れの1つである。筆者は、10年で国内の塗料の数量が横ばいから少し減ると見る。
資本政策と M&A
資本政策は、立て直しを優先する形だ。4期続けて配当がなく、2030年3月期までに利益剰余金の欠損を解消して復配を目指すとしている。自社株買いはない。
2025年、大日本塗料が時価総額にして30億円弱の値段で公開買付けを行い、発行済み株式の約46%を取得した。続く第三者割当で過半を握り、議決権は50.1%となった。上場は続け、中期計画の期間も上場を維持する前提だ。親会社との覚書で、子会社でなくなるような株の発行には事前の承諾が要る。
借金は純額で約21億円ある。2025年12月に60億円の借入枠を銀行団と結んだ。財務制限の条項はなく、資金繰りの不安は小さい。
少数株主から見ると、親会社が残りの株を買い取る可能性がある一方、配当が戻るまで時間がかかる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
再建の道筋は具体的だ。大日本塗料の子会社となり、粉体塗料の共同開発と販売網の活用、生産の融通で2.5億円の効果を見込む。中期計画は4年後に営業利益11億円、純利益11億円を掲げる。今の時価総額48億円に対し、計画どおりなら純利益の4倍強でしかない。
土台も整った。60億円の借入枠には財務制限の条項がなく、資金繰りは安定した。福利厚生施設の減損で古い資産の整理も進んだ。2026年3月期の営業キャッシュフローは9億円と前の期の赤字から大きく戻った。
事業にも強みがある。電着塗料の技術はアクサルタとの合弁で使われ、ロイヤリティと受託生産を生む。防食塗料は老朽化した橋や工場設備の補修で需要が堅く、道床安定剤も好調だ。
親会社が残りの株を買い取る可能性もある。2025年の公開買付けは時価総額にして30億円弱の値段だったが、利益が戻った後なら値段は上がる。時価総額は自己資本の4割弱で、下値は限られる。
繰越欠損があるうちは税も軽い。利益が戻れば、その多くが自己資本に積み上がる。
慎重な見方
中期計画は信用できない。営業利益11億円は売上の5%で、この会社は2004年3月期以来その水準に届いていない。過去10年の営業利益率は良い年でも4%台だった。翌期の会社予想ですら営業利益は2億円にとどまる。
顧客の偏りが重い。大東建託グループ1社で売上の2割強、合弁会社を足すと4割近い。どちらかが調達先を変えれば、売上はすぐに1割以上減る。
値段を決める力がない。原料が上がるたびに利益が消え、2022年3月期から赤字が続いた。国内の塗料は数量が増えず、自動車の電動化と国内生産の頭打ちで電着の需要も細る。品質管理の問題も抱えた。
親会社は助けにもなるが、少数株主の味方とは限らない。2025年の公開買付けは時価総額にして30億円弱で、今の値段を大きく下回った。将来に残りの株を買う時も、親会社は安く買いたい。復配は早くて2030年3月期で、それまで株主に戻るお金はない。
時価総額が自己資本の4割弱なのは、利益を生まない資産だからだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。中期計画の数字は、過去の実績から見て高すぎる。顧客の偏りと値決めの弱さは、親会社の傘に入っても消えない。
一方、親会社との提携と借入枠で、事業が傾く心配は小さくなった。確率は中立を中心に置き、計画にほぼ届くやや楽観に2割を与えた。悲観側はやや楽観側より少し厚くした。
計画に届かなくても、過去の良かった頃の利益率に戻れば事業は安定する。ただその姿でも、資本コストに見合う利益は出ない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 198 円67 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 27 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 101 円34 億円、今との差 −25.7%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 424 円144 億円 | 73 円25 億円 | +266.0% | +13.9% | 35 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 326 円111 億円 | 53 円18 億円 | +178.9% | +10.8% | 76 円26 億円 |
| 中立 | 38% | 212 円72 億円 | 24 円8 億円 | +73.3% | +5.6% | 90 円30 億円 |
| やや悲観 | 23% | 78 円26 億円 | 9 円3 億円 | −36.3% | −4.4% | 20 円7 億円 |
| 悲観 | 12% | 38 円13 億円 | 0 円0 億円 | −71.7% | −11.9% | 5 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 198 円67 億円 | 27 円9 億円 | +65.3% | +5.2% | 225 円77 億円 |
今の株価時価総額 136 円46 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 親会社との統合が効き、利益率が5%台に乗る 利益 13 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 424 円144 億円
大日本塗料との統合が深まる。粉体塗料の共同開発が当たり、親会社の販売網で工業用の出荷が増える。自動車用は電着の増強で取引先を広げる。
生産は2社で融通し合い、工場の稼働が上がる。人員を増やさずに売上を伸ばし、全社の営業利益率は5%台半ばに乗る。中期計画の目標を数年遅れで上回る姿だ。
原料高は親会社と共同で調達して和らげる。大東建託グループ向けも塗り替えの周期で安定して続く。
復配は計画どおり2030年3月期に実現し、配当性向は3割を保つ。10年で25億円を株主に戻す。
親会社にとっても、同社の電着と防食の技術は魅力になる。グループの中で役割がはっきりし、投資も呼び込める。
- インダストリアル(工業用・建築資材向け):数量 13.4(出荷量(千トン))× 価格 1,072(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 144 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 5.0%
- インフラ(防食・道路・軌道材料・工事):数量 7.2(出荷量(千トン))× 価格 1,340(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 97 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 7.0%
- 自動車用(電着塗料ほか):数量 8.3(出荷量(千トン))× 価格 938(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 78 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 144 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画を上回る利益率が10年続く姿で、2000年代前半以来の水準。親会社の販売網と粉体塗料の成功が重なる必要があり、確度は低い。
やや楽観 20% 中期計画に数年遅れで届く 利益 10 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 326 円111 億円
中期計画の営業利益11億円に、数年遅れで届く。親会社の販売網と粉体塗料が工業用の数量を支え、防食塗料は橋や工場設備の補修で伸びる。
値上げは原料の上げ幅に追いつき、利益が消える年は減る。全社の営業利益率は4%台半ばと、2015〜2018年3月期の水準を少し上回る。
欠損は2030年3月期までに解消し、配当を再開する。10年で18億円を払う。
親会社の傘の下で、経営は手堅くなる。一方で、親会社の都合で取引の条件が決まる場面も増える。それでもROEは5%台にとどまり、資本コストには届かない。
筆者が見る楽観寄りの姿でも、自己資本の大きさに比べて利益はまだ小さい。それでも赤字の続いた数年と比べれば、事業の安定は段違いだ。
- インダストリアル(工業用・建築資材向け):数量 12.9(出荷量(千トン))× 価格 1,060(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 137 億円・営業利益 6 億円。営業利益率 4.0%
- インフラ(防食・道路・軌道材料・工事):数量 6.6(出荷量(千トン))× 価格 1,330(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 88 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 6.0%
- 自動車用(電着塗料ほか):数量 7.7(出荷量(千トン))× 価格 930(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 72 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 111 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:親会社との提携効果2.5億円は具体的で、借入枠で資金も安定した。計画は高いが、遅れて届く道は十分にある。
中立 38% 良かった頃の利益率に戻るが、資本に見合わない 利益 7 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 212 円72 億円
赤字は止まる。値上げが原料の動きに追いつき、親会社との共同調達で原価も少し下がる。全社の営業利益率は3%前後に戻る。2015〜2018年3月期の4%前後には届かない。
数量はほぼ横ばいだ。新築と自動車の国内生産が細る分を、防食塗料の補修需要と親会社の販売網が埋める。価格は物価に少し届かない1.30倍前後にとどまる。
純利益は年6億円台に戻る。繰越欠損が尽きた後は税が普通にかかる。持分法の利益と受取配当が経常利益を下支えする。
復配は2030年3月期ごろで、10年の還元は8億円にとどまる。ROEは4%弱で、資本コストに遠い。
- インダストリアル(工業用・建築資材向け):数量 12.1(出荷量(千トン))× 価格 1,040(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 126 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 2.5%
- インフラ(防食・道路・軌道材料・工事):数量 6.2(出荷量(千トン))× 価格 1,310(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 81 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 4.5%
- 自動車用(電着塗料ほか):数量 7.1(出荷量(千トン))× 価格 910(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 65 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 72 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:親会社との提携と値上げの定着で赤字は止まるが、顧客の偏りと値決めの弱さは残る。2015〜2018年3月期の姿に戻るのが自然な落としどころ。
やや悲観 23% 大口顧客の離脱と原料高で、利益が細る 利益 3 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 78 円26 億円
大東建託グループが塗料の調達先を一部切り替え、インダストリアルの数量が1割減る。原料高の局面では値上げが遅れ、利益がまた消える年が出る。
自動車用は国内生産の頭打ちと電動化で出荷が減る。合弁会社への受託生産も細る。
親会社との提携効果は出るが、数量の減りを埋めきれない。全社の営業利益率は1.5%前後にとどまる。
復配は遅れ、10年の還元は3億円だけだ。親会社が残りの株を買い取る話が出ても、利益が細った後なので値段は低い。
防食塗料と道床安定剤が下支えとなり、赤字は避ける。ただ、資本に対する稼ぎはごくわずかで、自己資本は眠ったままになる。
- インダストリアル(工業用・建築資材向け):数量 11.3(出荷量(千トン))× 価格 1,000(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 113 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 1.0%
- インフラ(防食・道路・軌道材料・工事):数量 5.8(出荷量(千トン))× 価格 1,280(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 74 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 3.0%
- 自動車用(電着塗料ほか):数量 6.3(出荷量(千トン))× 価格 880(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 55 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.7%
倍率:ROEは約2%で資本コストを大きく下回る。顧客を失い利益の質が落ちた姿で、1÷k(約11.4倍)の7割の8.0倍に置いた。PBRは0.16倍と低いが、純現金は無く、売れる資産は工場の土地くらいで、稼ぐ力の値が床を上回る。
確率:上位2社で売上の4割近く、どちらかの調達先の変更は十分ありうる。2022〜2026年3月期の赤字が、原料高に弱い構造を示している。
悲観 12% 大口を失い、赤字が続いて資産を切り売りする 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 38 円13 億円
大口の顧客を2社とも大きく失い、売上は2割以上減る。値段で中国や大手と争えず、工場の稼働が落ちる。
赤字が続き、工場の設備や土地の減損で自己資本は100億円近くまで減る。尼崎か千葉の工場を閉じ、生産を親会社に寄せる。
配当は戻らない。親会社は残りの株を安く買い取って上場をやめる道を選ぶかもしれないが、その値段は資産の一部にとどまる。
最後に残るのは、防食塗料と道床安定剤の小さな事業と、工場の土地だ。借金を返した後に少数株主へ届く額は、今の時価総額の一部にとどまる。
親会社にとって同社は、技術と販路を取り込めば足りる存在になる。少数株主の取り分を守る仕組みは乏しい。
- インダストリアル(工業用・建築資材向け):数量 9.5(出荷量(千トン))× 価格 950(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 90 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率 -1.0%
- インフラ(防食・道路・軌道材料・工事):数量 5.2(出荷量(千トン))× 価格 1,200(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 62 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 1.0%
- 自動車用(電着塗料ほか):数量 5.1(出荷量(千トン))× 価格 840(1トンあたりの平均価格(千円))→ 売上 43 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率 -2.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は無く、PBRで置く。今の自己資本131億円に0.1を掛けた約13億円。純負債があり、売れる資産は工場の土地の一部にとどまる。
確率:大口顧客の離脱と原料高、自動車の国内生産の減少が重なる構造的な負け。親会社の支えと借入枠があるので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インダストリアル(工業用・建築資材向け)
工業製品や建築資材の塗料。大東建託グループ向けの賃貸住宅用が大口。
| 数量出荷量(千トン) | 価格1トンあたりの平均価格(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.5 | 800 | 100 | 1 |
| 10 年後 中立 | 12.1 | 1,040 | 126 | 3 |
取り方:分野別の金額の開示がないため、大東建託パートナーズ向け48億円を含め売上の半分弱と推定し、1トン約80万円で量に直した。営業利益は全社2.55億円を配分した推定。
インフラ(防食・道路・軌道材料・工事)
橋や工場設備を錆から守る防食塗料、道路用、線路の道床安定剤、子会社の塗装工事。
| 数量出荷量(千トン) | 価格1トンあたりの平均価格(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 1,000 | 60 | 2 |
| 10 年後 中立 | 6.2 | 1,310 | 81 | 4 |
取り方:分野別の開示がないため売上の3割弱と推定し、防食塗料は単価が高いので1トン約100万円で量に直した。重機向けと工場補修が伸びた。営業利益は配分した推定。
自動車用(電着塗料ほか)
車体の下塗りに使う電着塗料。合弁の神東アクサルタへの受託生産とロイヤリティが中心。
| 数量出荷量(千トン) | 価格1トンあたりの平均価格(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.9 | 700 | 55 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7.1 | 910 | 65 | 1 |
取り方:神東アクサルタ向け28.8億円を含め売上の4分の1と推定し、1トン約70万円で量に直した。出荷量は減ったが価格改定で増収。営業利益は配分した推定。
リスクと懸念
大口顧客への偏り
大東建託パートナーズが売上の22.5%、合弁の神東アクサルタが13.4%を占める。どちらかが調達先を変えれば、売上は1割以上減り、薄い利益は簡単に消える。AIエージェントによる代替は関係しない。
原料高と値上げの遅れ
樹脂や顔料、溶剤の値段は相場で動く。2022年前後の原料高では値上げが追いつかず、赤字が続いた。同じことが起きれば、再建の道は遠のく。
中期計画の未達
4年後に営業利益11億円という目標は、2004年3月期以来届いていない水準だ。翌期の会社予想は営業利益2億円にとどまる。未達が続けば、復配も遅れる。
親会社と少数株主の利害
大日本塗料は議決権の50.1%を持つ。2025年の公開買付けは時価総額にして30億円弱の値段だった。取引の条件や将来の買い取りの値段が、少数株主に不利に決まるおそれがある。
自動車の国内生産と電動化
電着塗料は車体の下塗りに使う。国内の生産が細れば数量は減る。電動化で部品や塗る面積が変われば、需要の形も変わる。
品質管理
品質管理体制の信頼性向上を課題に挙げている。問題が再び起きれば、顧客の信頼と受注を失う。
今後の分かれ目
- 2028年3月期に営業利益が5億円を超え、中計の線に乗ったら
- やや楽観の確率を厚くし、中立の利益率を上げる。
- 大東建託グループ向けの売上が1割以上減ったら
- 大口の離脱が始まったとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 大日本塗料が残りの株の買い取りを発表したら
- その値段で価値が決まる。中立の値段との差を見て判断し直す。
- 欠損が解消し、予定より早く配当が再開されたら
- 還元の額を引き上げ、楽観側の確率を厚くする。
- 原料が再び急騰し、2期続けて営業赤字になったら
- 値決めの弱さが変わっていないとみて、悲観の確率を厚くする。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益率と中計の進み具合
- 大東建託グループと神東アクサルタ向けの売上
- 粉体塗料の共同開発の成果
- 復配の時期
- 大日本塗料の持株比率と取引の条件
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、分野ごとの出荷量×単価で10年後の利益を積んだ。分野別の金額は開示が無く推定である。中立の利益率は過去12年の山(2015〜2018年3月期の4%前後)より下の3%に置いた。倍率はROEが資本コストを下回るので1÷k(約11.4倍)の約83%に置いた。2025年の公開買付けの値段や今のPBRは倍率の根拠にしていない。新リース会計基準の影響は小さい(工場は自社保有)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→11.11 倍・やや楽観 PER 10.5→11.11 倍・中立 PER 9.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。