結論
ノエビアホールディングスは、販売員が顧客と対面で高級スキンケアを売る化粧品会社だ。売上の約8割が化粧品で、営業利益率は17%と同業の上位にある。借金はなく、純現金も厚い。
筆者の結論は、事業の質は良いが今の値段は先の成長を織り込みすぎている、というものだ。稼ぎ頭の対面販売は、顧客も販売員も高齢化し、市場そのものが縮んできた。10年先に利益が物価並みに伸びる姿は描きにくい。強気の筋書きでも今の時価総額には届きにくい。
足元も追い風ではない。2026年9月期は上期の売上が4%減り、営業利益は2割減った。会社予想の営業利益 114 億円は遠い。前期の最高益も、保険金など一時の営業外収益に支えられた面がある。
利益のほぼ全部(約98%)を配当で払う会社なので、内部にお金は貯まらない。成長を買う株ではなく、配当を買う株だ。上位株主が株の約3分の2を握るため、非公開化の余地は残る。ただし価値は事業の稼ぎで測り、その期待は置いていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ノエビアは事業の質は良いが、持ち続けて資産が増える会社には見えにくい。化粧品の利益率24%は、顧客との信頼という堀が実際に働いている証拠だ。借金がなく、再投資もほとんど要らない。稼いだ利益はそのまま株主に渡せる。
問題は、その利益が今後10年に伸びるかだ。再投資の余地が小さいので、利益を増やす道は、数量を保ち、値上げを通すことしかない。ところが数量を支える対面の客と販売員は、高齢化で細っている。値上げが通る間は利益が名目で伸びるが、物価の伸びにも届きにくい。
資本の使い方は誠実だが、増やす力はない。利益を全部配当に回し、自己資本は横ばいだ。オーナーとして見ると、配当で返してもらうだけでは物価に負ける。
安全域は薄い。資本コスト7%で測る本質価値は、今の時価総額の3分の2ほどだ。強気の筋書きでも今の値段までは届きにくい。事業が良いことと、その値段が割安なことは別だと、筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は化粧品事業で、売上の約8割、利益の大半を占める。主力のノエビアブランドは、販売員が肌を見ながら高級スキンケアを勧める売り方だ。最高峰の「ノエビア スペチアーレ」や美容液の「シルキーリフト」が代表で、一度買った客が長く使い続ける。広告より人の信頼で売る事業だ。
化粧品にはもう1つの顔がある。ドラッグストアなどで売るセルフ化粧品のサナと、美容ドリンクだ。前期はドリンクが伸び、栄養補助食品は減った。サナは訪日客の買い物にも近く、会社は下期にセルフ領域のインバウンド需要の取り込みを掲げている。
医薬・食品事業は売上の約18%だが、利益は1割に満たない。一般用医薬品や食品を手がけ、前期は利益が約2割減った。その他の事業は小さい。
対面販売の強みは、売る人と買う人の関係が長く続くことにある。一人の客が長く使うほど、新規の広告費をかけずに利益が積み上がる。反面、販売員が減ると顧客の入れ替えも止まる。事業の安定と脆さは同じ根から出ている。
本社は神戸のポートアイランドにあり、連結子会社は13社。会社の中長期の方針は「節度ある成長」で、最初の柱に日本市場での革新と利益の創出を置く。成長の主役は国内に据えている。
優良さと弱いところ
強みは利益率と財務の厚さだ。化粧品事業の利益率は24%に達し、会社全体でも17%を保つ。自己資本比率は70%で、実質は無借金だ。売上の約8割を握る事業が、広告や値引きでなく販売員との関係で売れている。ここが堀、つまり他社がまねしにくい強みだ。
弱みは、その堀が縮む土俵の上にあることだ。訪問販売の化粧品市場は約3,100億円で、実質では毎年縮んでいる。同業の最大手ポーラは販売員が2万3千人から2万1千人へ減り、顧客数も7%減った。ノエビアの販売員数は確認できないが、筆者は同じ向きの圧力を受けているとみる。
利益の質にも注意がいる。前期の純利益は過去最高だったが、営業利益は3%減だった。差を埋めたのは保険金や損害賠償金などの営業外収益だ。医薬・食品の利益も2割減った。
資本配分は一貫している。利益をほぼ全額配当に回し、自己資本は十年以上ほぼ横ばいだ。株主には誠実だが、成長に回すお金が少ない。再投資で利益を伸ばす力は乏しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の美容・パーソナルケア市場は年7%台で伸びるとされる。ただノエビアの事業は日本の対面販売が中心で、その伸びを取り込めていない。日本は人口が減り、量は伸びない。成長の道は、単価を上げる高級化と、訪日客の需要に絞られる。
ノエビアが戦う訪問販売・対面型の化粧品市場は、2025年版の調査で約3,100億円と、実質で0.5%縮んだ。ノエビアの化粧品事業(約500億円)は、そのうち1割台を占めるとみる。最大手はポーラで、資生堂、コーセー、花王のカネボウ化粧品も対面の売り場で競う。いずれも対面以外の売り場も広げている。
対面販売には根強い客がいる。肌の悩みを聞いてもらえる安心感は、ネット通販では代わりにくい。しかし販売員の高齢化と、若い世代のネット中心の買い方が、客の入れ替わりを難しくしている。
ここで効くのが、セルフ領域とドリンクだ。ドラッグストアやインバウンド向けの商品は、販売員に頼らず量を取れる。ただ競争は激しく、花王やコーセーの有力ブランドと棚を争う。筆者は、この領域の伸びで対面販売の縮みをどこまで埋められるかが、10年の分かれ目と見ている。
資本政策と M&A
資本政策は単純で、稼いだ利益をほぼ全部、配当で株主に返している。前期の総還元性向は98%で、配当総額は約77億円だった。会社の基本方針は「内部留保を確保しつつ安定配当を続ける」だが、実際は配当優先だ。自社株買いはほぼなく、自己株の保有は400株に過ぎない。
結果として自己資本は十年以上、約550億円前後で動かない。純現金は4割ほど減った。ためこまず返す姿勢は、少数株主にとって好ましい。
大株主の構成は偏る。筆頭はエヌ・アイ・アイで約36%、個人の大倉俊氏が約11%、上位株主の合計は約66%に達する。大株主は配当を受け取る立場で、会社に資金を残すよう求める圧力は弱い。
M&Aの大型案件は確認できない。上位株主の持ち分が厚いので、買う側にも買われる側にもなりにくい。ただ非公開化の可能性はゼロでなく、参考値では10年内の買収確率を18%程度とみる。この値は価値の計算には入れていない。
10年の還元は、総還元性向98%の実績どおり。純利益を超えないので、余った現金は別に足してよい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ノエビアは、同業が苦しむ対面販売で、24%という高い利益率を維持している。これは顧客との信頼が崩れていない証拠だ。最高峰のスペチアーレや美容液のシルキーリフトのように、高価格帯が売れているので、数量が減っても単価の上昇で売上を保てる。
今は底に近い。2026年9月期の上期は営業利益が2割減ったが、減益の底が見えれば、そこから戻る余地は大きい。会社は下期に、プレミアム商品の育成と、セルフ領域でのインバウンド需要の取り込みを掲げた。訪日客の消費は年9兆円を超え、サナのような商品は販売員なしでも量を取れる。
借金がなく、純現金は時価総額の約16%ある。しかも利益の98%を配当で返す。業績が横ばいでも、配当だけで資本コストの一部を回収できる株だ。上位株主が約3分の2を握るので、非公開化が起きれば、今の値段に上乗せが付く可能性もある。
国内の高齢化は、肌の悩みに寄り添う対面販売には追い風にもなる。顧客が高齢になるほど、時間をかけて話を聞く販売員の価値は上がる。数量が横ばいを保てれば、利益は物価並みに伸び、10年後は今の1.3倍を超える。
慎重な見方
対面販売の市場は、20年縮み続けている。2025年版の調査でも、市場は約3,100億円で実質0.5%減だ。最大手のポーラでさえ、販売員が2万3千人から2万1千人へ減り、顧客数も7%減った。ノエビアだけがこの流れを逃れる理由は見当たらない。
足元の数字がそれを裏づける。2026年9月期は、上期の売上が4%減り、営業利益は2割減った。第3四半期までの経常利益も13%減だ。会社予想の営業利益 114 億円は、すでに遠い。前期の純利益が最高だったのは、保険金など営業外の一時収益に助けられたからで、本業は減益だった。
医薬・食品は利益が前期に2割減り、化粧品事業のドリンクも栄養補助食品の減少を補う程度にとどまる。成長のエンジンが見当たらない。
利益の98%を配当に回す方針は、裏返せば、販売網や商品に再投資する余力が小さい、ということだ。上位株主に偏る資本構成なので、少数株主の声も届きにくい。
今の株価は、利益の約20倍だ。物価で利益が伸びる前提を置いても、この値段は払いすぎで、数量が年1%減るだけで、10年で利益は横ばいになる。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方に分がある。24%の利益率と借金のなさは本物だ。ただし10年の利益は、数量と値上げの競り合いで決まり、対面販売の縮みと足元の減益が重く、慎重な見方の指摘が強い。
中立は、数量が年1%弱減り、値上げが物価並みに通る姿に置いた。利益はほぼ横ばいで、実質では細る。この前提では10年後の時価総額は今に届かず、確率を重みづけた本質価値は今の時価総額より3割強低い。
確率は、中立に3分の1、やや悲観と悲観に合わせて4割を置いた。強気の筋書きは、セルフ領域とドリンクが対面の縮みを埋めた場合で、合計2割台半ばにとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 4,811 円1,643 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,113 円722 億円)。 今の値に割り戻すと 3,952 円1,350 億円、今との差 −15.8%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,863 円3,027 億円 | 3,016 円1,030 億円 | +153.0% | +9.7% | 950 円325 億円 |
| やや楽観 | 18% | 7,302 円2,494 億円 | 2,650 円905 億円 | +112.0% | +7.8% | 1,791 円612 億円 |
| 中立 | 34% | 5,855 円2,000 億円 | 2,401 円820 億円 | +75.8% | +5.8% | 2,807 円959 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,437 円833 億円 | 1,789 円611 億円 | −10.0% | −1.0% | 1,141 円390 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,071 円366 億円 | 732 円250 億円 | −61.6% | −9.1% | 234 円80 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,811 円1,643 億円 | 2,113 円722 億円 | +47.5% | +4.0% | 6,924 円2,365 億円 |
今の株価時価総額 4,695 円1,604 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% セルフ領域と高級品が噛み合う10年 利益 127 億円 · PER 23.1 倍 · 株価時価総額 8,863 円3,027 億円
ノエビアが、対面の縮みをセルフ領域とドリンクで埋める。スペチアーレやシルキーリフトのような高価格帯が売れ、単価は物価を上回って上がる。ドラッグストアとインバウンド向けのサナは、販売員に頼らず量を取れる。化粧品の数量は今より5%増え、利益率も25%まで上がる。
医薬・食品は数量を戻して利益率が1割に届く。会社全体の営業利益は約180億円と、今の1.6倍になる。
配当は利益とともに増え、資本の使い方は今と変わらない。対面の販売員は減るが、顧客の高齢化で一人あたりの購入額が上がり、販売網の効率は保たれる。強気の見方がほぼ当たった世界で、ここでも筆者は、今の値段に届くかは微妙だと見る。
- 化粧品(ノエビア・サナ・ドリンクなど):数量 17.6(化粧品・ドリンクなどの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 4,270(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 753 億円・営業利益 188 億円。営業利益率25.0%
- 医薬・食品:数量 27.5(医薬品・食品の販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 618(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 170 億円・営業利益 17 億円。営業利益率10.0%
- その他(化粧雑貨の仕入販売など):数量 10.0(雑貨などの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 348(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 124 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 29.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 23.13 倍、時価総額 3,027 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:セルフ領域とドリンクが対面の縮みを埋め、高級品の単価が物価を上回る筋書き。足元は上期の営業利益が2割減で、会社が言う下期の巻き返しも確認できていない。強気の筋書きは実現に条件が多く、確率を低めに置いた。
やや楽観 18% 対面は踏みとどまり、物価を上回る値上げが通る 利益 107 億円 · PER 22.4 倍 · 株価時価総額 7,302 円2,494 億円
対面販売の数量は、ほぼ今の水準で踏みとどまる。ポーラなど同業が苦しむなかで、ノエビアは常連客の厚みで客数を保つ。単価は高級品の比率が上がり、物価を少し上回って上がる。化粧品の利益率は23.5%に上がる。
セルフ領域とドリンクは増えるが、全体を引っ張るほどではない。医薬・食品は横ばいで、利益率は9%にとどまる。営業利益は約150億円と、今の1.3倍になる。
配当は利益に連れて伸びる。2026年9月期の減益は一時の谷だったと受け止められる。自己資本は横ばいのまま、ROE(自己資本利益率)は2割に近づく。
- 化粧品(ノエビア・サナ・ドリンクなど):数量 16.6(化粧品・ドリンクなどの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 4,150(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 690 億円・営業利益 162 億円。営業利益率23.5%
- 医薬・食品:数量 25.0(医薬品・食品の販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 618(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 155 億円・営業利益 14 億円。営業利益率9.0%
- その他(化粧雑貨の仕入販売など):数量 10.0(雑貨などの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 348(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 105 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 22.39 倍、時価総額 2,494 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:対面の客の厚みで数量が踏みとどまる筋書き。ポーラなど同業が販売員・顧客を減らしており、ノエビアだけが踏みとどまる根拠は強くない。強気の見方がやや弱いので、中立より低く置いた。
中立 34% 対面は緩やかに縮み、値上げで名目を保つ 利益 89 億円 · PER 21.4 倍 · 株価時価総額 5,855 円2,000 億円
対面販売の数量は年に0.7%ほどずつ減り、10年で7%減る。値上げは物価並みに通るが、物価を上回る分は得られない。販売員の高齢化で営業の固定費の負担が重くなり、化粧品の利益率は24%から22%へ下がる。
セルフ領域やドリンクの伸びは、対面の縮みの穴埋めにとどまる。医薬・食品は数量を保つが、利益率は8%前後で動かない。会社全体の営業利益は約120億円と、今の1割増にとどまる。物価の伸び(3割強)に届かず、実質では細る。
配当は利益の98%近くを出し続け、純現金と自己資本はほぼ横ばいを保つ。大きな買収も非公開化もなく、同じ会社が同じ配当を出し続ける10年になる。
- 化粧品(ノエビア・サナ・ドリンクなど):数量 15.6(化粧品・ドリンクなどの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 4,029(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 629 億円・営業利益 139 億円。営業利益率22.0%
- 医薬・食品:数量 24.3(医薬品・食品の販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 618(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 150 億円・営業利益 12 億円。営業利益率8.0%
- その他(化粧雑貨の仕入販売など):数量 9.0(雑貨などの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 348(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 21.41 倍、時価総額 2,000 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量が年0.7%減、値上げは物価並み、利益率は縮む。対面市場の実質縮小(2025年版 −0.5%)に近い置き方。慎重な見方が強いと判断し、中立の確率は3分の1にとどめた。
やや悲観 27% 対面の客と販売員の高齢化が数量に出る 利益 49 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 2,437 円833 億円
対面販売の数量が10年で2割落ちる。販売員の高齢化と、若い客のネット移行が重なり、新規の客が入れ替わらない。値上げで補おうとするが、物価ほどは通らず、単価は1.3倍にとどまる。化粧品の利益率は17%まで下がる。
医薬・食品は利益がさらに細り、その他事業も収支ゼロに近い。会社全体の営業利益は約65億円と、今の6割にとどまる。
それでも配当は利益の水準に合わせて払い続け、純現金は大きく減らない。ROEは9%程度と資本コスト並みに落ち、成長の乏しい普通の会社として評価される。大株主は配当を重んじるため、減益の初期は配当を守ろうとして、再投資の手当てが遅れやすい。この遅れが数量の落ち込みを長引かせる。
- 化粧品(ノエビア・サナ・ドリンクなど):数量 13.4(化粧品・ドリンクなどの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 3,909(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 525 億円・営業利益 89 億円。営業利益率17.0%
- 医薬・食品:数量 22.5(医薬品・食品の販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 600(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 135 億円・営業利益 7 億円。営業利益率5.0%
- その他(化粧雑貨の仕入販売など):数量 8.0(雑貨などの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 338(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:ROE が約 11% と k 7% をわずかに上回る。ためた利益は額面に満たない価値になるので、倍率は下限の 1÷k(15.15 倍)に置いた。余った現金は谷で食うとして 0.75 倍。
確率:販売員と客の高齢化が数量に出る筋書き。足元の上期が売上4%減・営業利益2割減で、すでに入り口に見える。同業のポーラの販売員・顧客の減少も同じ向きなので、中立に近い厚みで置いた。
悲観 13% 対面の事業が構造的に崩れる 利益 6 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 1,071 円366 億円
対面販売の数量が6割まで落ちる。高齢の顧客が減り、販売員も補充できない。若い世代のネット中心の買い方に取り込まれ、値上げもほとんど通らない。化粧品の利益率は8%まで落ち、会社全体の営業利益はほぼゼロになる。
医薬・食品は利益が消え、その他も赤字になる。会社は販売網の縮小と、拠点の整理に追われる。配当は早い段階で大きく減らすが、それでも利益を上回るため、純現金を取り崩し、使わない拠点などの売却も使って払う。
この世界では、価値は稼ぐ力でなく、残る資産で決まる。純現金に、工場・拠点・在庫を売った税後のお金を足した額が下限だ。ブランドが崩れた会社の資産は、帳簿より安くしか売れない。
- 化粧品(ノエビア・サナ・ドリンクなど):数量 10.1(化粧品・ドリンクなどの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 3,608(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 364 億円・営業利益 29 億円。営業利益率8.0%
- 医薬・食品:数量 20.0(医薬品・食品の販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 577(1個あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 115 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
- その他(化粧雑貨の仕入販売など):数量 6.0(雑貨などの販売点数(百万点、推定。実質の数量))× 価格 325(1点あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-5.0%
倍率:優良さを失い利益が細る筋書きなので、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。今の自己資本 538 億円に 0.68 倍を掛けた。内訳は純現金と、拠点・在庫などを売った税後の価値(床の資産)。市場の倍率からは置いていない。
確率:対面事業が構造的に崩れる筋書き。ブランドの信頼は一度崩れると戻りにくく、大株主の資本配分は少数株主に不利に動く余地もある。数量の下落が止まらない事例(訪販の廃業・縮小)が同業にもあるため、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
化粧品(ノエビア・サナ・ドリンクなど)
対面販売のノエビアブランドと、セルフ化粧品のサナ、美容ドリンクを合わせた、全社の稼ぎ頭。
| 数量化粧品・ドリンクなどの販売点数(百万点、推定。実質の数量) | 価格1点あたりの平均単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 16.8 | 3,007 | 505 | 123 |
| 10 年後 中立 | 15.6 | 4,029 | 629 | 139 |
取り方:化粧品事業の売上 505 億円(セグメント利益 123 億円)を、1点あたり約 0.3 万円で割って約 1,680 万点と推定した。対面のスキンケアは単価が高く、ドリンク・セルフ品が点数を押し上げる。数量は国内の人口減と対面市場の縮み(実質 年 −0.5〜−2%)を踏まえて置く。
医薬・食品
一般用医薬品と食品を扱う事業。利益率は1割に満たない。
| 数量医薬品・食品の販売個数(百万個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 25.0 | 461 | 115 | 10 |
| 10 年後 中立 | 24.3 | 618 | 150 | 12 |
取り方:医薬・食品の売上 115 億円(セグメント利益は約 9.8 億円)を、1個あたり約 0.046 万円で割って約 2,500 万個と推定した。国内の需要は人口減で緩やかに縮み、値段は物価に沿って上がる。
その他(化粧雑貨の仕入販売など)
化粧雑貨の仕入販売などの小さな事業。
| 数量雑貨などの販売点数(百万点、推定。実質の数量) | 価格1点あたりの平均単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 10.0 | 260 | 26 | 1 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 348 | 31 | 1 |
取り方:その他の売上は約 26 億円。1点あたり約 0.026 万円で約 1,000 万点と推定した。事業の規模が小さいので細かく追わない。本社費用などは全社の調整で見る。
リスクと懸念
対面販売の構造的な縮小
訪問販売の化粧品市場は約3,100億円で、実質では毎年縮んでいる。同業のポーラは販売員が2万3千人から2万1千人へ減り、顧客数も7%減った。ノエビアの利益の大半はこの対面型の化粧品が稼ぐため、数量の減少がそのまま利益の減少につながる。
足元の減益が止まらない
2026年9月期は上期の売上が4%減、営業利益が2割減だった。第3四半期までの経常利益も13%減だ。会社予想の営業利益 114 億円とは開きが大きく、下方修正や減配に進めば、高い配当を目当てにした買いが崩れる。
利益の質と医薬・食品の不振
前期の最高益は、保険金や損害賠償金など営業外収益の寄与が大きく、営業利益は3%減だった。医薬・食品の利益は2割減で、改善の筋道は見えていない。本業の利益を過大に見ると判断を誤る。
配当優先で再投資の余力が乏しい
総還元性向が98%で、販売網や商品への再投資の原資は純現金に頼る。純現金は約420億円から約270億円へ減ってきた。利益が減る局面では、配当を守るか投資を守るかの二択になる。
支配構造と少数株主
筆頭株主のエヌ・アイ・アイが約36%、上位株主の合計は約66%に達する。資本の使い方や非公開化の判断は、大株主の都合に左右されやすい。少数株主の声が反映されにくく、条件も読みにくい。
セルフ領域の競争とインバウンドの波
セルフ化粧品は花王やコーセーなど大手と同じ棚を争う。訪日客の需要は、中国との関係や為替で大きく振れる。ここが対面の縮みを埋めると期待しすぎると、数量の前提を読み誤る。
今後の分かれ目
- 2026年9月期の通期決算で営業利益が会社予想を大きく下回り、翌期も減益予想になったら
- 対面販売の縮みが数量に出始めたと判断し、やや悲観・悲観側に重みを移す。
- セルフ領域(サナなど)とドリンクの売上が、対面の化粧品の減少を埋めて増収に転じたら
- 数量が横ばいを保つ筋書きに近づくので、やや楽観・楽観側の確率を上げてよい。
- 配当が減額されるか、配当性向を下げて利益を内部に残す方針に変わったら
- 還元の前提が崩れるので、10年の還元額を下げる。一方で再投資が増えるなら、成長の前提は見直す。
- 大株主による非公開化や、他社との資本提携が発表されたら
- 価値の本体は事業の稼ぎで測るが、提示価格が事業の価値を上回るかを、条件が出た時点で別途検討する。
- 対面型の化粧品市場の縮小が実質で年2%を超える調査結果が続いたら
- 数量の中立を0.93倍より低く置き直し、中立の利益を下げる。
- 医薬・食品事業の利益が2期続けて回復したら
- 利益の質への懸念が和らぐので、その他事業の足を引っ張る度合いを小さく見る。
見ておくもの
- 化粧品事業の四半期の売上とセグメント利益(対面とセルフ・ドリンクの内訳の開示)
- 2026年9月期の通期営業利益と、2027年9月期の会社予想
- 配当方針と総還元性向、純現金の増減
- 訪問販売化粧品市場の調査結果(日本流通産業新聞の年次調査)
- 訪日客の消費額と、セルフ領域のインバウンド向け売上
倍率と資本コストの決め方
数量は販売点数・個数(実質)、価格は物価 3% 込みの名目で、セグメントごとに積んだ。中立は対面の数量が年 0.7% 減・値上げは物価並み・化粧品の利益率 22% で置き、足元の減益や同業の縮みから逆算せず、市場調査(実質 −0.5%)と同業の販売員の減少を根拠にした。資本コストは基本 7.5% + quality 0.5% の 8.0%。倍率は利益ベースの正当化 PER で上限を出し(余った現金 150 億円を除いた事業の ROE で、残る割合 1/2・g 4%)、中立は上限の 7.5 割、やや悲観は下限の 1÷k、悲観は純現金と売れる資産の税後で置いた。今の PER 約 20 倍・PBR 約 3 倍は最後に比べただけで、寄せていない。拠点の賃借は小さいとみて(リース額は未確認)今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。新リース会計基準(2028/03 期以降)で見かけの数字の形が変わる点は価値に影響しないとみる。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足して 8.0%。大株主への偏りやセルフ領域の競争は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.00%。