結論
スガイ化学工業は、農薬や医薬の原料の一歩手前の化合物、つまり中間物を大手から請け負って作る和歌山の化学会社だ。筆者の結論は「割高」で、PBR が 0.5 倍を割っていても、事業の稼ぐ力がそれに見合わない。
売上の 3 分の 2 は農薬の中間物で、住友化学など上位 3 社で売上の半分を占める。顧客の新剤や在庫の都合で注文が大きく振れ、前期は医薬向けが 1 年で 4 分の 1 に縮んだ。
自己資本 84 億円のうち 25 億円は日産化学や紀陽銀行などの持ち合い株だ。売る方針は無く、その配当は利益の 1 割強にすぎない。事業の ROE は 5% 前後で、資本コストの 9% に遠く及ばない。資産が厚いことと、株主にとって価値があることは別だと筆者は考える。機能性の新製品は明るい材料だが、まだ売上の 2 割に満たない。
10 年の中立では、利益は物価と新製品で 1.3 倍ほどに増えるが、価値は今の時価総額を 3 割ほど下回る。持ち合いを売って株主に戻す決断が出れば、この見立ては大きく変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の厚さに惑わされてはいけない会社だ。PBR は 0.5 倍を割り、清算すれば今の時価総額近くの値が付くかもしれない。だが会社は清算しない。少数株主に残るのは、事業が生む利益と配当だけだ。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益から古い工場の更新を引いた分だ。償却は年 5 億円と重く、更新は物価と工事費の上昇で高くつく。見かけの純利益ほど現金は残らない。
経営の資本の配分も評価しにくい。持ち合い株を増やし、還元は控えめだ。安全域は資産の厚さで一見大きいが、それを株主に渡す仕組みが無い。筆者は、持ち合いを売って還元に回す決断が出るまで、この資産を価値に数えない。
事業そのものは手堅く、10 年後も存在しているだろう。ただ、持ち続けたい会社かと問われれば、資本の使い方が変わるまで答えは保留だ。
何で稼ぐ会社か
事業は 1 つで、化学品の中間物を作って売る。中間物とは、農薬や医薬の有効成分になる手前の化合物のことだ。大手の農薬・医薬会社は自分で作らず、スガイのような受託の会社に製法を渡して作らせる。和歌山と福井に工場を持ち、従業員は 176 人だ。
前期の売上 64 億円のうち、農薬中間物が 43 億円と 3 分の 2 を占める。殺虫剤、殺菌剤、動物薬、殺ダニ剤の原料だ。機能性中間物は 12 億円で、感光性樹脂や生成 AI 向け半導体の材料、航空機の接着剤など新しい用途が伸びている。医薬中間物は 4 億円で、欧州向けの在庫調整で前期に大きく減った。界面活性剤も少し作る。
稼ぎ方は受託の手間賃だ。顧客が製品の寿命と在庫を決めるので、数量は自分では決められない。最大の顧客は商社の日星産業で売上の 25%、住友化学が 17% と続く。償却費は年 5 億円と営業利益並みに重く、古い設備を回し続ける装置産業の色が濃い。
前期は棚卸資産を減らして営業の現金収入が 17 億円に膨らみ、借入を返した。ただ、この現金の多さは在庫の取り崩しによる一時のもので、毎年続くものではない。
優良さと弱いところ
優良さは低めと筆者は見る。中間物の受託は、品質と安全の実績を積んだ会社が選ばれやすく、顧客が仕入れ先を変えるには手間がかかる。そこに小さな堀、つまり他社がまねしにくい強みはある。
しかし値決め力は弱い。製法と数量を決めるのは顧客で、スガイは作る側にすぎない。上位 3 社で売上の半分を占め、1 つの品目が抜けると売上が数割動く。過去 12 年の営業利益率は最良でも 9% ほどで、赤字の年もあった。
資本の効率も低い。自己資本の 3 割は持ち合い株で、その配当利回りは 3% に届かない。工場の償却は重く、事業の ROE は 5% 前後にとどまる。財務は堅く借金も小さいが、それは稼ぎが厚いからではなく、資産を抱え込んできた結果だ。
経営は堅実だが守りに偏っている。新製品の開発と設備の増強を課題に挙げるものの、数字の目標を伴う計画は示していない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の農薬の需要は、人口と食料の需要に沿ってゆっくり伸びる。気候の変化で病害虫が増え、食料の安全を守る声も強い。数量は実質で年 1〜2% ほど増えると筆者は見る。ただ、特許の切れた剤は中国・インドの安い品に置き換わり、値段の下押しも強い。
中間物の受託は、この流れの中で揺れやすい位置にある。大手の住友化学、日本農薬、クミアイ化学は新剤の開発に力を入れ、製造は外部に出す。どこに出すかは品質と値段で決まり、中国・インドの受託会社が力をつけている。国内の受託会社は、品質と安全の管理、少量で多品種を作る腕で選ばれる。
足元は中東の混乱で原油が高く、溶剤や燃料の値段が上がっている。会社は今期の利益の見通しを出せず、第 1 四半期は売上が 3 割減って営業赤字だった。半導体や感光性樹脂の新しい用途は伸びるが、規模はまだ小さい。10 年の中立では、農薬向けは横ばい近く、新製品が少し上乗せする姿を置く。
国内の受託会社は数が多く、どこも規模が小さい。大手の農薬会社が製造の委託先を絞り込む流れが強まれば、再編の波は避けられない。
資本政策と M&A
還元の方針は「安定した配当」で、配当性向は 2 割台だ。前期は増配したが、自社株買いはしていない。借入は返済が進み、ほぼ現金と同じ額まで減った。
問題は持ち合い株だと筆者は見る。日産化学や紀陽銀行など 25 億円の株を持ち、取引先の持株会を通じてむしろ増やしている。会社は保有の妥当性を毎年確かめるとするが、減らした実績はない。時価総額の 6 割にあたる株が、低い配当利回りのまま眠っている。中期計画も無く、資本の使い方を変える兆しは見えない。
経営陣が変わらない限り、この姿勢が急に変わるとは筆者は考えにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産から見れば明らかに安い。自己資本は 84 億円あり、時価総額はその半分に満たない。日産化学や紀陽銀行の株だけで 25 億円あり、土地も工場も持っている。借入はほとんど返し終えた。
事業も悪くない。農薬中間物は住友化学など大手との長い取引があり、品質と安全の実績で選ばれている。世界の農薬の需要はゆっくりでも伸び続ける。機能性中間物は前期に 46% 伸び、感光性樹脂や生成 AI 向け半導体の材料が新しい柱になりつつある。
資本の使い方が変わる余地もある。東証は PBR 1 倍割れの会社に改善を求め、持ち合い株の縮減を促している。会社が持ち合いを売って自社株買いや増配に回せば、眠っている価値が一気に株主に戻る。上場を続ける費用を考えれば、大手の傘下に入る道もありうる。
中東の混乱は一時のもので、原料高が落ち着けば利益は前期の水準に戻る。受託の会社は顧客と長く付き合うほど次の剤の製造も任されやすく、取引の歴史そのものが財産だ。
慎重な見方
帳簿が厚くても、株主に戻らなければ価値は無い。持ち合い株は減らした実績がなく、むしろ持株会で増えている。配当性向は 2 割台で、自社株買いもしない。中期計画すら出していない。
事業は顧客に振り回される。上位 3 社で売上の半分を占め、医薬中間物は 1 年で 75% 減った。今期は第 1 四半期で売上が 3 割減り、営業赤字だった。中東の混乱で原料と燃料が高く、利益の見通しも出せていない。中国やインドの受託会社が力をつければ、大口の注文が移る恐れもある。
工場は古く、償却は営業利益並みに重い。更新は物価で高くつき、ROE は 5% 前後から上がらない。資本コストの 9% に届かない事業に、ためた利益を積み上げても価値は減っていく。安い株が安いまま終わる典型だ。
持ち合い株の値下がりは自己資本を直撃し、資産の厚さという強気の根拠そのものを崩す。東証の要請に応える動きも、今のところ見えない。経営に変わる理由がない以上、この姿は 10 年続きうる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が筆者には説得力がある。資産の厚さは事実だが、会社が手放す意思を見せていない以上、少数株主の価値にはならない。事業は資本コストに遠く、顧客への依存も強い。強気の側は資本の使い方が変わることに賭けており、その確率は低くない程度だ。確率は中立を中心に、両側を同じ重さで置いた。資本の使い方が変われば、強気の側へ大きく寄せ直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,828 円63 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 961 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 2,775 円36 億円、今との差 −5.9%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,655 円100 億円 | 1,255 円16 億円 | +202.0% | +11.7% | 891 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,300 円82 億円 | 1,110 円15 億円 | +151.2% | +9.6% | 1,482 円19 億円 |
| 中立 | 40% | 5,312 円69 億円 | 1,003 円13 億円 | +114.1% | +7.9% | 2,526 円33 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,428 円32 億円 | 796 円10 億円 | +9.3% | +0.9% | 645 円8 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,921 円25 億円 | 536 円7 億円 | −16.7% | −1.8% | 246 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,828 円63 億円 | 961 円13 億円 | +96.3% | +7.0% | 5,790 円76 億円 |
今の株価時価総額 2,950 円39 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 新製品と農薬の受託が両方伸びる 利益 9 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 7,655 円100 億円
住友化学などからの農薬中間物の受託が続き、世界の農薬の需要に沿って数量が 1 割強増える。さらに、感光性樹脂や生成 AI 向け半導体に使う機能性中間物が、試験採用から量産に進む。和歌山と福井の工場は稼働が上がり、償却の重さが薄まる。
原料高は値上げで転嫁でき、利益率は過去の最良に並ぶ。それでも ROE は 6% 台で、資本コストには届かない。自己資本の 3 分の 1 近くを政策保有株が占め、その配当の利回りが低いからだ。持ち合いを売って還元に回す動きが出れば、この先はさらに明るくなる。株主から見ても、資産と事業の両方が報われる 10 年になる。
- 農薬・医薬中間物:数量 2,300(出荷量(トン・推定))× 価格 0.03(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 7 億円。2300 トン × 1 トン 3.1 百万円、営業利益率 9.5%
- 機能性中間物・界面活性剤ほか:数量 2,400(出荷量(トン・推定))× 価格 0.02(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 4 億円。2400 トン × 1 トン 1.5 百万円、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 100 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:農薬の受託が続き、半導体向けの新製品も育つ重なりが要る。両方がそろう確度は高くないので 1 割。
やや楽観 20% 機能性中間物が育つ 利益 7 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 6,300 円82 億円
主力の農薬中間物は顧客の在庫調整を挟みながらも横ばいを保つ。伸びるのは機能性中間物で、感光性樹脂や航空機の接着剤向けが新しい柱になる。数量は 10 年で 4 割ほど増える。
値段は物価並みに上がり、利益率は 9% 前後と過去の良い年に近い。設備の更新は物価で高くつくが、稼働の上昇で吸収できる。ROE は 5% 台にとどまり、ためた利益は帳簿の価値を下回る。配当性向 2 割台の方針も変わらず、現金と持ち合い株が積み上がる。新製品の開発に人と設備を割く余裕も生まれ、受託一本足の弱さが少しずつ和らぐ。
- 農薬・医薬中間物:数量 2,200(出荷量(トン・推定))× 価格 0.03(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 6 億円。2200 トン × 1 トン 3.1 百万円、営業利益率 8.8%
- 機能性中間物・界面活性剤ほか:数量 2,100(出荷量(トン・推定))× 価格 0.02(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。2100 トン × 1 トン 1.5 百万円、営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 82 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:機能性中間物は前期に 46% 伸びており、その勢いが一部続くと見る筋書きにそれなりの重みを置く。
中立 40% 受託の山谷を繰り返す 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 5,312 円69 億円
農薬中間物は顧客の新剤と在庫で毎年のように数量が振れるが、10 年では 5% ほど増える。機能性中間物は新製品が育ち、数量は 3 割ほど増える。医薬中間物は欧州向けが戻ったり消えたりを繰り返す。
値段は原料高を転嫁しつつ物価並みに上がる。利益率は 8% 前後で、過去 5 年の水準だ。償却は取得した時の値段のままだが、古い工場の更新は機械代と工事費の上昇で高くつき、現金は見かけの利益ほど残らない。ROE は 5% 前後で、ためた利益の価値は帳簿の半分ほどにとどまる。配当は少しずつ増えるが、持ち合い株は売られず、資産の厚さは株主の価値に届かないまま積み上がる。
- 農薬・医薬中間物:数量 2,100(出荷量(トン・推定))× 価格 0.03(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 5 億円。2100 トン × 1 トン 3.1 百万円、営業利益率 8.0%
- 機能性中間物・界面活性剤ほか:数量 2,000(出荷量(トン・推定))× 価格 0.02(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。2000 トン × 1 トン 1.5 百万円、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 69 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:農薬の受託は顧客次第で山谷があり、新製品は育つが規模は小さい。過去 10 年の姿の延長を中心に置いた。
やや悲観 20% 大口の受託が抜ける 利益 4 億円 · PER 6.9 倍 · 株価時価総額 2,428 円32 億円
住友化学などの大口顧客が、中間物の生産を中国やインドの受託会社に移す。農薬中間物の数量は 1 割減り、機能性中間物も伸び悩む。中東の混乱が長引けば原料の溶剤や燃料が高止まりし、転嫁が遅れる。
利益率は 6% に下がり、ROE は 3% 台に沈む。工場の人と設備の固定費は残り、稼働の低さが利益を削る。配当は細り、株価は事業の稼ぎより持ち合い株と土地の値で支えられる。大手の傘下に入る話が出なければ、資産の厚さは帳簿の上にとどまる。新製品の開発も人手が足りず、次の柱を育てる力が細っていく。持ち合い株の配当だけが、利益を細く下支えする。
- 農薬・医薬中間物:数量 1,800(出荷量(トン・推定))× 価格 0.03(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 3 億円。1800 トン × 1 トン 3.0 百万円、営業利益率 6.0%
- 機能性中間物・界面活性剤ほか:数量 1,600(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。1600 トン × 1 トン 1.5 百万円、営業利益率 6.0%
倍率:事業の ROE 3.2% で PER の上限は 11.1 倍。稼ぐ力は弱いが、持ち合い株と土地の床(25 億円)を下回らない 6.9 倍に置いた。
確率:上位 3 社で売上の 5 割を占め、医薬中間物は 1 年で 75% 減った前例がある。大口の抜けは十分ありうる。
悲観 10% 受託の柱を失う 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,921 円25 億円
中国・インドの化学会社が品質と値段で追いつき、大口の農薬中間物の受託を失う。数量は 3 割近く減り、新製品も量産に届かない。和歌山と福井の工場は稼働が落ち、利益率は 2% ほどに沈む。
赤字の年も挟まり、配当は大きく減る。事業の稼ぐ力にはほとんど値が付かず、価値を支えるのは日産化学や紀陽銀行の株、土地、少しの現金だ。それらも、会社が売る決断をしない限り株主の手には届かない。受託の腕を支えた技術者も年を重ね、立て直しは難しくなる。工場を縮めるにも解体や環境の費用がかかり、身軽にはなれない。株主に残るのは、細い配当と、売られない資産の帳簿の値だけになる。
- 農薬・医薬中間物:数量 1,400(出荷量(トン・推定))× 価格 0.03(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。1400 トン × 1 トン 2.9 百万円、営業利益率 2.0%
- 機能性中間物・界面活性剤ほか:数量 1,300(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。1300 トン × 1 トン 1.5 百万円、営業利益率 2.0%
倍率:稼ぐ力(純利益 1.0 億円÷k)は 11 億円ほどで、価値は売れる資産で決まる。投資有価証券 25 億円と土地 8 億円の税後に純現金を足した床 25 億円を、今の自己資本に 0.30 倍を掛けた額で置いた。
確率:受託の中間物は顧客の切り替え一つで消える。2002 年度のように大きな赤字を出した過去もあり 1 割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
農薬・医薬中間物
大手の農薬・医薬会社から製法を受け取り、有効成分の手前の化合物を受託で作る。
| 数量出荷量(トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.02 | 47 | 4 |
| 10 年後 中立 | 2,100 | 0.03 | 65 | 5 |
取り方:数量は開示が無いので推定。農薬中間物 43.2 億円と医薬中間物 4.1 億円を合わせ、精密化学の中間物の単価を 1 トン 200〜300 万円ほどとみて年 2,000 トンと置いた。利益は部門別の開示が無いので全社の営業利益率 7.6% を少し上回る 8% で割り振った。
機能性中間物・界面活性剤ほか
感光性樹脂・半導体・香料・接着剤向けの中間物と界面活性剤。
| 数量出荷量(トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 0.01 | 17 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 0.02 | 30 | 2 |
取り方:数量は開示が無いので推定。機能性中間物 11.7 億円、界面活性剤 3.8 億円、その他 1.6 億円を合わせ、界面活性剤の安い単価を混ぜて 1 トン 113 万円ほど、年 1,500 トンと置いた。利益は全社の残り。
リスクと懸念
大口顧客への依存
上位 3 社で売上の半分を占める。顧客が製品をやめる、生産を海外の受託会社に移すと、1 品目で売上が数割動く。医薬中間物は前期に 1 年で 75% 減った。
中東の混乱と原料高
ホルムズ海峡の閉鎖で原油が高く、溶剤や燃料の値段が上がっている。会社は今期の利益の見通しを出せていない。転嫁が遅れれば、利益率は数ポイント落ちる。
持ち合い株の値下がり
自己資本の 3 割が日産化学や紀陽銀行などの株だ。株式相場が崩れれば自己資本が目減りし、売る方針も無いので、値下がりをそのままかぶる。
古い工場の更新
償却は年 5 億円と営業利益並みに重い。工場の更新は物価と工事費の上昇で高くつき、借入か還元の削減で賄うことになる。
訴訟と安全
7 億円の訴訟損失引当金を積んでいる。中身は開示されていない。化学工場は事故や環境の規制で操業が止まるおそれもある。
今後の分かれ目
- 持ち合い株を売って自社株買いや増配に回す
- 眠っていた 25 億円が株主の価値になり、中立の価値は今の時価総額を超えうる。
- 機能性中間物が売上の 3 割を超える
- 顧客の偏りが和らぎ、やや楽観の筋書きに近づく。
- 大口の農薬中間物の受託が海外へ移る
- 数量が 1 割以上減り、やや悲観に寄る。利益率は 6% を割る。
- 中東の混乱が長引き原料高が続く
- 転嫁の遅れで数年は利益が細る。10 年の中立は変えないが、その間の還元は減る。
- 大手化学の傘下に入る
- 資産の価値が値段に乗りやすい。ただ、公表された動きはない。
見ておくもの
- 利益の見通しの開示と原料・燃料の転嫁
- 上位顧客の比率と農薬中間物の数量
- 機能性中間物の売上
- 政策保有株の縮減の有無
- 訴訟の行方
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k の関係だけで置いた。中立の事業の ROE は 5% 弱で k 8.5% を大きく下回るので、PER は 1÷k を上限に ROE÷k に沿って 6.5 割とした。政策保有株は配当を利益に残すので価値に足さず、悲観の床にだけ税後で数えた。今の PBR や同業の値付けは見ていない。今の株価が倍でも半分でも、価値の計算は変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.89→11.76 倍・やや楽観 PER 8→11.76 倍・中立 PER 7.22→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。