結論
大伸化学は、塗料・インキ・洗浄に使う有機溶剤とシンナーを作る専業メーカーだ。国内のシンナー生産で最大手とされる。売上は350億円ほどで、営業利益率は3%台と薄い。
筆者の結論は「やや割高」だ。事業そのものは、原料の値動きに利益が左右される市況型で、10年先に利益が大きく増える理由が乏しい。しかも国内の印刷や塗料の需要は細っていく。
一方で、財務はきわめて堅い。有利子負債はほぼなく、純現金は86億円。時価総額の8割にあたる。ここが値段の下支えだ。ただし、現金の多くは仕入れの支払いを回すための運転資金でもあり、全額が株主のものにはならない。
直近の動きは強い。2027年3月期の第1四半期は営業利益が約6倍になり、会社は通期の経常利益予想を引き上げた。ただ、これは溶剤の市況が上向いた局面の利益で、筆者は中立の利益率には織り込んでいない。
還元は利益の4分の1ほどで、自社株買いはほとんどない。大株主は個人と資産管理会社で、現金の使い道は経営が決める。余った現金は半分だけ評価した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、大伸化学は「事業の価値より、財布の価値のほうが大きい会社」だ。事業は市況型で、10年先の利益を読みにくい。営業利益の3%台は、原料価格の波で簡単に1%や7%に動く。
オーナー利益、つまり設備の更新に必要な投資を引いたあとの自由に使える利益は、純利益とほぼ同じ約9億円だ。それに対し時価総額は104億円で、事業だけを見れば高くない。ただ、時価総額の8割は現金の厚みで説明がつき、事業の価値は小さく見積もられている。
問題は、現金が株主のものになるかだ。経営は資本の配分に熱心でなく、現金が事業の運転資金か余剰かの線引きも示していない。配当性向は4分の1にとどまる。もし経営が現金を戻す方針に変われば、評価は大きく変わる。
安全域は、無借金と現金の厚さにある。ただし、市況型で成長しない事業に、これ以上の上乗せは払えない。筆者は、現金の評価を半分に抑えたことで、やや割高と判断した。
何で稼ぐ会社か
主力は、トルエンやメチルエチルケトンなどの単一溶剤と、それを配合したシンナー類だ。印刷インキの希釈、塗料の薄め液、部品の洗浄などに使われる。2026年3月期の売上346億円のうち、単一溶剤が135億円、印刷用溶剤が62億円、特殊シンナーが40億円、洗浄用シンナーが21億円だ。
特徴は、小口の注文にも応じる体制にある。約3万2千種類の製品をデータベースで管理し、石油缶1缶からでも受注生産して即納する。販売はすべて代理店を通し、全国に約1,000社の代理店網を持つ。他社ブランドに供給するOEMもある。
生産拠点は埼玉県の越谷工場と兵庫県の兵庫工場の2つ。従業員は235人と少なく、工場は配合と充填が中心で、重い設備は要らない。子会社は運送の山崎梱包運輸が1社あり、物流をグループで抱える。
利益の決まり方は単純だ。原料の溶剤を石油化学メーカーから買い、配合して売る。原料価格が動けば販売価格も追随し、会社は値幅(スプレッド)を稼ぐ。2026年3月期は出荷量が増えたのに売価が下がって売上は微減、それでも販売価格の是正と原料の低下で営業利益は46%増えた。
優良さと弱いところ
強みは、品目の多さと小口の即納だ。大手の石油化学メーカーや商社が手を出しにくい小ロットを拾う。約1,000社の代理店網は、10年かけて作った販売の土台になっている。
ただし、堀は広くない。溶剤の原料は石油化学品で、他社も同じものを買える。品質が決め手になる製品は少なく、値段は市況と競合が決める。営業利益率は過去10年で2〜7%の間を動き、直近は2〜3%台まで落ちた。
資本の使い方は保守的だ。自己資本利益率は4〜8%と資本コストに届かず、現金が積み上がって利益率を押し下げている。自己資本は10年で約2倍になった。
経営には長所もある。借金がなく、本業が赤字になった年は過去20年ない。人員も少なく、固定費は軽い。ただ、新しい稼ぎの柱を作る動きは見えない。台湾の大勤化成への出資(10%)は小さな布石にとどまる。
筆者は、「堅いが伸びない会社」と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の有機溶剤の需要は、成熟から緩やかな縮小に向かう。印刷インキ向けは、紙の印刷物が減るにつれて細る。塗料向けは、水系塗料や粉体塗料への切り替えで溶剤の使用量が減る。環境規制の強化(揮発性有機化合物の削減)も長期の逆風だ。
一方で、工場の洗浄や電子部品向けの高純度溶剤、特殊な配合品は底堅い。2026年3月期は、特殊シンナー類が前期比で3%増えた一方、洗浄用や印刷用は減った。
価格は原油とナフサ、為替で決まる。原料の高騰期には売価の転嫁が遅れて利益が圧迫され、市況が戻る局面では逆に利益が大きく伸びる。2027年3月期の第1四半期の営業利益が約6倍になったのは、その典型と筆者は見る。
競合は、石油化学メーカー系の販売子会社、専門商社、地場のシンナーメーカーなどに分かれる。大手メーカーと違い、同社は配合と小口対応に特化する。取引先は代理店経由で細かく分散し、特定の大口依存は小さい。
10年先は、国内の数量は緩やかに縮み、価格は物価に沿って上がる。利益率は市況の波の中で、平均すれば3〜4%台に戻る、というのが筆者の見立てだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向は2026年3月期で23%、純資産に対する配当の割合は1%強にとどまる。2027年3月期の配当予想は据え置きだ。自社株買いは確認できていない。
現金は積み上がり続けている。純現金は2015年3月期の14億円から86億円へ、10年で6倍になった。使い道は、設備更新と運転資金、小さな出資に限られる。M&Aは2022年の山崎梱包運輸の子会社化くらいで、大型の買収の実績はない。
大株主は、個人(13%)、有限会社坪井(12%)、光通信系の投資組合(6.5%)、日本生命、三井住友銀行、丸善石油化学など。個人の持ち分が6割近く、大株主が経営に近い。光通信系の組合が入っている点は、現金の使い方に圧力がかかる材料になりうる。
筆者は、現金の戻り方を半分と置いた。性向が低く、積み上がる一方だからだ。TOBや非公開化の可能性は否定できないが、確かな材料はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2027年3月期の第1四半期の営業利益は約10億円、前年の6倍になった。会社は通期の経常利益予想を13億円から20億円に引き上げ、4割増の利益を見込む。価格の是正が進み、原料の購入も効率化した結果で、スプレッドが広がる局面に入った。
無借金で現金が86億円ある。時価総額の8割にあたる現金を差し引くと、事業は18億円ほどで買える計算だ。純利益が約9億円あれば、事業の倍率は2倍に過ぎない。現金の半分でも株主に戻れば、値段は大きく変わる。
光通信系の投資組合が6.5%を持つ。現金の使い方に株主の圧力がかかれば、配当性向の引き上げや自社株買いに動く可能性がある。大株主が個人中心で、TOBも現実的だ。
国内の溶剤は縮むが、洗浄用や電子部品向けの高付加価値品は伸びる。台湾への出資も動き出した。
国内最大手の地位と小口即納の体制は、代理店にとって他に代えにくい。需要が縮む局面ほど、規模の大きい会社に注文が集まる。
慎重な見方
溶剤は誰でも買える汎用品で、値段は原油とナフサが決める。2027年3月期の利益の跳ね上がりは、原料が上がる局面で売価を先に上げられた一時的な利益で、市況が反転すれば消える。過去10年の営業利益率は2〜7%を行き来しており、平均は4%台だ。
国内の印刷インキ向けは、紙の印刷物が減るにつれて細る。塗料向けも水系への切り替えで溶剤が減る。環境規制は逆風で、数量は10年で1〜2割縮むのが自然だ。
現金86億円のうち、多くは仕入れの支払いを回す運転資金だ。売上が増えれば売掛金が増え、現金は減る。余剰は見かけより小さい。しかも配当性向は4分の1にとどまり、大株主は個人中心で、現金が株主に戻る保証はない。
自己資本利益率は資本コストを下回る。ためた現金は、額面どおりの価値を持たない。TOBの観測を期待して買うのは、事業の価値を見ない投機だ。
市場が縮む中で、最大手というだけでは値上げの理由にならない。大手の石油化学メーカーが直販を強めれば、代理店網の価値も下がる。
どちらに重みを置いたか
慎重の言い分が勝つと見て、確率はやや悲観と悲観を3割台後半に寄せた。市況型の利益は平均でみる必要があり、直近の跳ね上がりを中立に引き延ばせない。
ただし、現金の厚さと光通信系の存在は、強気の言い分として筋が通る。そこで現金の評価は半分とし、やや楽観・楽観にも2割強の確率を残した。
筆者は、事業の価値と現金の価値を分けて考えた。事業の稼ぎは平均でみると小さく、現金の価値は戻り方で決まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,700 円215 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 639 円29 億円)。 今の値に割り戻すと 2,612 円120 億円、今との差 +17.7%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 8,636 円395 億円 | 1,005 円46 億円 | +334.3% | +15.8% | 578 円26 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,751 円309 億円 | 831 円38 億円 | +241.5% | +13.1% | 1,365 円62 億円 |
| 中立 | 40% | 5,372 円246 億円 | 678 円31 億円 | +172.5% | +10.5% | 2,420 円111 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,577 円118 億円 | 525 円24 億円 | +39.7% | +3.4% | 806 円37 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,484 円68 億円 | 219 円10 億円 | −23.3% | −2.6% | 170 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,700 円215 億円 | 639 円29 億円 | +140.5% | +9.2% | 5,339 円244 億円 |
今の株価時価総額 2,220 円102 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:スプレッドが広がったまま、利益率は6%に 利益 22 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 8,636 円395 億円
国内の溶剤メーカーの撤退が相次ぎ、供給が絞られる。同社は小口の即納と約3万種の配合力で、値上げを通しやすくなる。第1四半期の水準に近い値幅が続く。
数量は横ばいを保つ。洗浄用や電子部品向けの高付加価値品が、印刷・塗料の縮みを埋める。価格は物価並みの1.35倍。営業利益率は6%まで上がる。
光通信系の投資組合などの株主が現金の使い方を迫り、配当性向が3割台に上がる。余った現金の一部は自社株買いに回る。
台湾への出資は事業の広がりに育つ可能性があるが、利益を左右するほどではない。
投資家から見れば、市況型の会社に構造的な利益率を認める筋書きなので、この水準が続く確率は低い。それでも、小口の即納という強みが値決めの力に変わる余地はある。
- 有機溶剤・シンナー類:数量 173,000(年間出荷量(トン、推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円。0.002億円=20万円))→ 売上 467 億円・営業利益 28 億円。出荷量173,000トン(1.0倍)× 1トン0.0027億円(1.35倍)、営業利益率6%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 15.23 倍、時価総額 360 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第1四半期のような値幅の拡大が構造的に続く筋書き。過去の最高7.3%に迫る利益率が10年続く条件は厳しく、1割に届かない。
やや楽観 18% やや楽観:高付加価値品が増え、利益率は5%に 利益 18 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 6,751 円309 億円
洗浄用と電子部品向けの高付加価値の溶剤が伸びる。数量は10年で3%減にとどまり、印刷向けの縮みを吸収する。価格は物価並みの1.34倍で、転嫁が遅れずに通る。
営業利益率は5%。過去の最高7.3%の下で、直近2年の2〜3%台より高い。第1四半期に見えた値幅の拡大の一部が定着する、という見方だ。
配当性向は3割に近づき、現金の積み上がりは緩む。
台湾の大勤化成との連携が、東南アジア向けの輸出につながる。
工場の稼働率が上がり、固定費が薄まる効果も出る。ただし、原料価格が大きく反転すれば、この利益率は保てない。
- 有機溶剤・シンナー類:数量 167,800(年間出荷量(トン、推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円。0.002億円=20万円))→ 売上 450 億円・営業利益 23 億円。出荷量167,800トン(0.97倍)× 1トン0.00268億円(1.34倍)、営業利益率5%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 14.07 倍、時価総額 277 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期の水準の一部が定着し、会社が値幅を守る筋書き。2割弱とした。
中立 40% 中立:数量は緩やかに縮み、利益率は4%に落ち着く 利益 14 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 5,372 円246 億円
数量は10年で7%減る。印刷インキ向けと塗料向けが縮み、洗浄用・特殊品が一部を埋める。価格は物価並みの1.34倍で、原料の上昇を売価に転嫁する。
営業利益率は4%。過去10年の平均に近い。人件費と物流費は物価で上がるが、値幅の拡大で吸収する。減価償却は小さく、設備は軽いので、物価による見かけの増益は小さい。
純利益は年14億円ほど。現金の受取利息が、短期金利2%の分だけ増える。配当性向は27%まで緩やかに上がり、純現金はさらに積み上がる。
会社は新しい柱を作れず、現状維持が続く。
10年後も国内最大手の地位は保つが、市場自体が小さくなるため、規模の利益は広がらない。値幅は物価と競合の間で決まる。
- 有機溶剤・シンナー類:数量 160,900(年間出荷量(トン、推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円。0.002億円=20万円))→ 売上 431 億円・営業利益 17 億円。出荷量160,900トン(0.93倍)× 1トン0.00268億円(1.34倍)、営業利益率4%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)41 億円。全体の PER 12.91 倍、時価総額 215 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年の営業利益率は2〜7%(平均4%台)。直近の跳ね上がりは市況の山と見て、4%に置いた。
やや悲観 26% やや悲観:数量が2割縮み、利益率は2.5%に 利益 8 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,577 円118 億円
印刷インキ向けの需要が紙の印刷物とともに急減し、塗料向けも水系塗料への切り替えで縮む。数量は10年で18%減る。価格は競合との値下げ合戦で物価を下回る1.30倍にとどまる。
営業利益率は2.5%。直近2年の水準だ。スプレッドが薄く、人件費と物流費の上昇を吸収できない。
純利益は年8億円ほど。配当は維持するが、現金の積み上がりは緩やかになる。
この局面では、経営が現金を戻す理由も弱まり、株主還元の改善は見込めない。
工場の稼働率が下がり、固定費の負担が重くなる。代理店網は維持するが、新しい取引先の開拓は止まる。
- 有機溶剤・シンナー類:数量 141,900(年間出荷量(トン、推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円。0.002億円=20万円))→ 売上 369 億円・営業利益 9 億円。出荷量141,900トン(0.82倍)× 1トン0.0026億円(1.30倍)、営業利益率2.5%
倍率:事業の自己資本利益率が4%で資本コストを大きく下回り、式の上限は1÷k(約11.8倍)。構造的に縮む筋書きなので、これより低い8.5倍に置いた。
確率:印刷・塗料の縮みと環境規制が重なり、市況の追い風が消える筋書き。直近2年の2〜3%台が続く形で、3割近い確率。
悲観 10% 悲観:需要が3分の2に縮み、営業利益はほぼゼロ 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,484 円68 億円
国内の印刷と塗料が急速に縮み、溶剤の需要は10年で35%減る。海外製の安い溶剤や大手の直販に取られ、代理店網の価値も落ちる。価格は物価を大きく下回る1.15倍にとどまる。
営業利益率は1%弱まで下がる。人件費と工場の固定費は物価で上がるが、売上が縮んで吸収できない。
本業は薄利で、純利益は年2〜3億円。事業の稼ぐ力は小さく、値は現金と売れる資産が決める。ただし、現金の多くは運転資金で、経営が株主に戻す保証もない。
配当は維持できても、成長の柱はなくなる。
工場の統合や人員の削減が必要になるが、費用は先に出る。経営は現金を守る方向に動き、新しい分野への投資は止まる。
- 有機溶剤・シンナー類:数量 112,450(年間出荷量(トン、推定))× 価格 0.00(1トンあたりの売上(億円。0.002億円=20万円))→ 売上 259 億円・営業利益 2 億円。出荷量112,450トン(0.65倍)× 1トン0.0023億円(1.15倍)、営業利益率0.8%
倍率:稼ぐ力は純利益2億円台で値が付かず、床の資産(現金の半分、売掛金・棚卸の回収分、土地)が値を決める。今の自己資本174億円に0.39を掛けた。
確率:汎用溶剤の価格競争と数量の急減が重なる構造的な負け。小さな会社なので1割は持たせる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
有機溶剤・シンナー類
単一溶剤、印刷用溶剤、特殊・洗浄用シンナー、塗料用シンナーなどの製造・販売。代理店約1,000社を通して、約3万2千種類の品目を小口から売る単一セグメント。
| 数量年間出荷量(トン、推定) | 価格1トンあたりの売上(億円。0.002億円=20万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 173,000 | 0.00 | 346 | 12 |
| 10 年後 中立 | 160,900 | 0.00 | 431 | 17 |
取り方:出荷量は開示がなく推定。売上346.1億円を、溶剤とシンナーの平均単価約20万円/トンで割り、約17.3万トンと置いた。単一溶剤135億円、印刷用溶剤62億円、特殊シンナー40億円、洗浄用21億円の構成。2026/03期は出荷量が増え単価が下がり、営業利益11.7億円(率3.4%)。
リスクと懸念
原料価格と為替
溶剤の原料は石油化学品で、原油・ナフサ・円相場に左右される。上昇期に売価を転嫁できないと利益は圧迫される。反対に直近の利益は市況の追い風で、反転すれば消える。
国内需要の縮小
印刷インキ向けは紙の印刷物の減少で、塗料向けは水系・粉体塗料への切り替えで細る。環境規制の強化も溶剤の使用量を減らす。
現金が株主に戻らない
純現金は86億円だが、配当性向は23%前後で自社株買いはほとんどない。現金の多くは運転資金でもあり、余剰の線引きを会社は示していない。
競合と価格競争
石油化学メーカー系の販売会社や専門商社と競合する。品質の差がつけにくく、値決めを市況と競合に握られている。
生産拠点の集中
工場は越谷と兵庫の2か所のみで、災害や事故で出荷が止まるリスクがある。溶剤は危険物で、事故の責任も重い。
少数の大株主
個人と資産管理会社で約25%、光通信系の投資組合が6.5%を持つ。大株主の売買や提案で、現金の使い方や経営の方針が急に変わる可能性がある。
今後の分かれ目
- 通期の営業利益が予想を上回り、利益率が4%台後半を維持する
- スプレッドの拡大が定着している可能性。やや楽観の確率を上げる。
- 配当性向を30%以上に引き上げる、または自社株買いを実施する
- 余った現金の戻り方を0.75〜1.0へ見直す材料になる。
- 原油・ナフサが反転して下がり、売価の下落が先行する
- 直近の増益が一時的だった証拠。やや悲観の確率を上げる。
- 光通信系の投資組合が保有を増やす、または提案を出す
- 現金の使い方が変わる契機になる。楽観側の確率を上げる材料。
- 同業や商社による買収提案が出る
- 現金の厚さからプレミアムが付く可能性はある。提案の中身で判断する。
見ておくもの
- 営業利益率(4%前後に戻るか)
- 原油・ナフサと為替
- 配当性向・自社株買い
- 純現金と売掛金・買掛金の残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の自己資本利益率(4〜9%)と資本コスト8%から、式の上限(約11.8倍)の85〜90%に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。営業利益率は過去10年の平均(4%台)で置き、直近の増益を中立に延ばしていない。
現金は半分だけ評価し、10年でたまる分は自動で加えた。リースは小さく、新リース会計基準の影響はほぼない。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→15.23 倍・やや楽観 PER 10.5→14.07 倍・中立 PER 10→12.91 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。