結論
恵和は、液晶ディスプレイの光を均一にする拡散フィルム「オパルス」と複合拡散板「オパスキ」で稼ぐ会社だ。売上 205 億円の 8 割が光学製品で、残りは工程紙・防錆資材・農業資材などの機能製品である。筆者の結論は適正。純現金は時価総額の 25% を占めるが、液晶そのものが有機 EL に置き換わる流れが長い目で重い。
光学のセグメント利益率は 2025 年で 42% と高い。ただし全社の営業利益は、2026 年に 28 億円へ落ちる予想で、会社は 8 月に下方修正した。原油高で樹脂と溶剤が上がり、価格転嫁が追いつかない。
光学を数量×価格で 10 年積み上げると、中立の営業利益は 40 億円、率は 16.5%。市場の数量は横ばい、シェアと価格は中国勢に削られる。資本コストは 8.75%、ROE は 8% 前後で k を下回る。倍率は 1÷k の 9 割ほどに置いた。余った純現金 40 億円を足した本質価値は、時価総額より 2% 低いだけで、ほぼ等しい。楽観はミニ LED と車載が当たる姿、悲観は液晶向けの急減と事業整理である。
バリュー投資の観点から
価値を見るときは、光学製品の堀の強さと寿命を分けて考える。光拡散フィルムは顧客の設計に組み込まれ、切り替えには時間がかかる。ここまでは堀と呼べる。ただし、その市場である液晶ディスプレイが有機 EL に置き換わる流れにあり、堀の中身が縮む。ミニ LED と車載はこれを補うが、補い切るかは確かでない。
資本配分は、方針が変わった段階にある。DOE 4% と自社株買いの検討を打ち出し、ROE 15% を目標に置いた。実績はこれからで、純現金 55 億円の使い方が今後の評価を分ける。オーナー系の会社で、経営者は長期の視点を持てるが、少数株主に戻る速度は経営者の判断に左右される。
安全域は財務の厚みにある。自己資本比率は 77% で、時価総額の 4 分の 1 が純現金のため、悲観の谷でも資産の床がある。ただし、事業の稼ぐ力そのものは、中立でも物価を下回る価格上昇と中国勢の追随で削られる。安さを理由に買う会社ではなく、現金と光学の堀を足して適正と見るのが妥当である。
何で稼ぐ会社か
恵和は光学製品と機能製品の二つの事業を持つ。光学製品が売上の約 8 割を占め、利益はほぼ全てを稼ぐ。液晶ディスプレイのバックライトに使う光拡散フィルム「オパルス」は、LED の光を均一にして画面のムラを消す部材で、世界で高いシェアを持つ。顧客は液晶パネルや液晶モジュールのメーカーで、スマートフォン・タブレット・ノート PC・車載ディスプレイ向けが中心になる。大型テレビより小型・中型に強い。
複合拡散板「オパスキ」は、直下型ミニ LED を使うノート PC やモニター向けの製品で、単価と利益率が高い。ミニ LED の搭載機の増加と、車載ディスプレイの大型化が追い風になる。
機能製品は旧「生活・環境イノベーション事業」で、半導体や医療の製造工程で使う工程紙、防錆資材、農業資材、クリーンエネルギー車向けの特殊フィルムを作る。売上は光学の約 2 割強で、利益は小さい。2025 年に不採算の「地球の絆創膏」事業から撤退した。
競合は、拡散シートで世界の主要メーカーに挙がる中国の Exciton Technology(激智科技)と韓国の SK microworks Solutions である。恵和は高い画質が要る小型・中型の領域に絞り、車載向けも伸ばしている。
優良さと弱いところ
優良さは光学製品に集まる。光拡散フィルムは顧客の画面設計に合わせて拡散の度合いを調整する部材で、一度採用されると切り替えにくい。光学のセグメント利益率は 2025 年で 42%、2024 年は 49% 近くあり、汎用の化学品より明らかに高い。自己資本比率は 77%、純現金は 55 億円で、財務は強い。
弱みも大きい。第一に、液晶そのものが有機 EL に置き換わる流れにある。スマートフォンはすでに有機 EL が主流で、ノート PC とタブレットでも広がっている。第二に、中国の Exciton が品質を上げて、中位グレードの価格を引き下げている。第三に、売上の 8 割を占める光学製品に利益が集まり、機能製品は小さな黒字か赤字にとどまる。
資本効率は ROE が 2025 年で 9.5%、過去 7 年の中央値で 12.2% と悪くないが、2026 年予想では 9% を割る。創業者の長村惠弌会長が 4 割近くを持つ会社で、経営の継続性は高い一方、少数株主の発言力は限られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
光学製品が置かれる液晶ディスプレイ向け部材の市場は、数量が頭打ちで価格の競争が強い。スマートフォンは有機 EL が主流になり、ノート PC とタブレットでも有機 EL の採用が増えている。液晶は価格の安さと明るさで残る領域に集まりつつある。
一方で、直下型ミニ LED バックライトの採用機が増えている。恵和の「オパスキ」はこの用途で伸び、車載ディスプレイの大型化も追い風になる。会社は車載向けの売上を 2028 年に 57 億円とする計画を示している(2025 年の中計見直しで再確認)。
競争は、中国勢が追い上げる構図にある。拡散シートの主要メーカーには、中国の Exciton と韓国の SK microworks Solutions が挙がる。恵和は中位グレードで値下げ圧力を受け、高い画質が要る分野で守る形になる。
原材料は樹脂と有機溶剤で、原油価格に連動する。2026 年は中東情勢で石油価格が上がり、コストが利益を削った。顧客への価格転嫁は遅れが出やすい。全体として、市場の数量は横ばい、価格は物価に届かず、シェアは中国勢に少しずつ削られる業界である。
資本政策と M&A
配当は、2025 年 11 月に方針を変えた。従来の下限を残しつつ、株主資本配当率(DOE)4% と配当性向 30% を目安にする。2025 年 12 月期は期末配当を増やした。自社株買いは 2025 年 2 月に上限 4.15% で実施し、機動的な取得と保有株の消却も検討するとしている。
資本政策の目標は ROE 15% 以上と PBR 1 倍超である。いまの ROE は 9% 台で、純現金が時価総額の 4 分の 1 ある。この現金をどう使うかが焦点になる。
M&A は目立った実績がない。事業の選択としては、光学への集中を 2025 年 8 月に明確にし、不採算の「地球の絆創膏」から撤退した。撤退の特別損失は 8 億円ほどとされる。
創業者の長村会長が 4 割近くを持つため、買収される側になる可能性は低い。ただし、会長が 36〜38% を持つ状態は、少数株主にとっては経営の継続性とも、売買の厚みの薄さとも読める。
点検済み:中立の営業利益率 16.5% は、過去 12 年の山(26%)を超えず、直近 4 年の平均(17%)の内に置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ミニ LED が普及し、恵和の「オパスキ」は単価と利益率が高いまま数量を伸ばす。ノート PC・タブレット・モニターの直下型ミニ LED の採用が広がり、車載ディスプレイも大型化する。会社は車載向けの売上を 2028 年に 57 億円とする計画で、これは光学の売上の 3 分の 1 に迫る。
中国の Exciton が追い上げても、高い画質が要る小型・中型の領域では恵和が先行する。拡散フィルムは顧客の設計に組み込まれ、切り替えに時間がかかる。2026 年の減益は原油高による一時要因で、価格転嫁が進めば利益率は戻る。
資本政策も動いている。DOE 4% と自社株買いが打ち出され、ROE 15% と PBR 1 倍超を目標に置いた。純現金は時価総額の 4 分の 1 あり、還元に回れば株主価値が上がる。2025 年には不採算事業から撤退し、光学に集中する姿勢も明確になった。会長が 4 割近くを持つ会社で、経営の継続性も高い。今の値段は、光学の堀と純現金を十分に織り込んでいない。
慎重な見方
液晶そのものが縮む産業に、恵和は依存している。スマートフォンは有機 EL が主流になり、ノート PC とタブレットにも広がっている。ミニ LED は液晶の延命策に過ぎず、有機 EL の価格が下がれば置き換えは加速する。車載の計画 57 億円も、まだ実績のない数字である。
中国の Exciton は品質を上げ、中位グレードの価格を押し下げている。恵和の光学のセグメント利益率は 2024 年の 49% 近くから 2025 年に 42% へ、2026 年の予想では 33% 前後まで落ちる。これは原油高だけでなく、価格転嫁の弱さを示す。
売上の 8 割と利益のほぼ全てを光学が占め、機能製品は黒字が小さい。全社費用は年 26 億円あり、光学の利益が 3 割落ちれば営業利益は半分以下になる。純現金は強みだが、会長が 4 割近くを持つため、現金が少数株主に戻る保証はない。ROE 15% の目標も、いまの水準から遠い。
どちらに重みを置いたか
光学の堀と純現金は事実として存在する。一方、液晶向け市場が有機 EL に置き換わる流れと、中国勢の追い上げも事実である。中立では数量を横ばい、シェアと価格を中国勢に削られる形で置き、利益率を 2025 年より下げた。余った純現金 40 億円は別に足し、戻り方は DOE 4% と自社株買いの方針を見て満額(1.0)とした。楽観はミニ LED と車載が当たる姿に 8%、悲観は液晶向けの急減に 10% を置き、結果は適正になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,241 円413 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 612 円113 億円)。 今の値に割り戻すと 1,371 円252 億円、今との差 +16.0%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 8.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,275 円787 億円 | 1,032 円190 億円 | +349.0% | +16.2% | 425 円78 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,139 円578 億円 | 815 円150 億円 | +234.5% | +12.8% | 791 円146 億円 |
| 中立 | 38% | 2,372 円437 億円 | 625 円115 億円 | +153.5% | +9.7% | 1,139 円210 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,359 円250 億円 | 435 円80 億円 | +51.8% | +4.3% | 431 円79 億円 |
| 悲観 | 10% | 435 円80 億円 | 244 円45 億円 | −42.6% | −5.4% | 68 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,241 円413 億円 | 612 円113 億円 | +141.3% | +9.2% | 2,852 円525 億円 |
今の株価時価総額 1,182 円218 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% ミニ LED と車載で数量が伸び、中国勢にもシェアを守る 利益 56 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 4,275 円787 億円
ノート PC とタブレットの直下型ミニ LED が普及し、複合拡散板「オパスキ」の数量が伸びる。車載ディスプレイも大型化し、2028 年に 57 億円とする会社計画を超えて広がる。市場の数量は実質で 1.12 倍になる。
中国の Exciton などが追い上げても、小型・中型で高い画質が要る分野では恵和がシェアを守る。シェアは 5% 上がり、価格は物価に近い 1.37 倍になる。
光学のセグメント利益率は 42% を保ち、2022 年のような山の水準には届かない。全社の営業利益率は 25% 前後で、過去 12 年の山(26%)を超えない。機能製品も黒字が定着する。
- 光学製品:数量 2,240(液晶バックライト向け拡散材の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 11.4%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08383 × 1.0))→ 売上 256 億円・営業利益 108 億円。営業利益率42%
- 機能製品:数量 3,300(機能性フィルム・工程紙の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 1.7%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01233 × 1.0))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。営業利益率6%
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 13.45 倍、時価総額 787 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ミニ LED の採用拡大と車載の立ち上がりが同時に当たり、価格の競争も限定的にとどまる。三つが重なる必要があるため、確率は 8% にとどめた。
やや楽観 20% 光学は数量を保ち、原材料高が一服して利益率が戻る 利益 41 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 3,139 円578 億円
2026 年の減益は原油高による樹脂と溶剤のコスト増が主因で、価格転嫁が数期かけて進む。光学の利益率は 40% に戻る。
数量はミニ LED と車載が液晶から有機 EL への置き換えを補い、1.05 倍になる。シェアは中国勢の追随で 4% 下がるが、価格は物価に近い 1.25 倍まで上がる。
機能製品は不採算事業の撤退が済み、小さな黒字になる。全社費用は物価に合わせて増える。営業利益率は 21% になり、2024 年と 2025 年の間に入る。
車載向けは会社計画の 57 億円に届かないが、半分ほどまで育つ。純現金は DOE 4% と自社株買いで少しずつ戻り、10 年の還元は 150 億円になる。ROE は 10% 近くまで上がるが、会社の目標の 15% には届かない。
- 光学製品:数量 2,100(液晶バックライト向け拡散材の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 10.5%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08383 × 1.0))→ 売上 220 億円・営業利益 88 億円。営業利益率40%
- 機能製品:数量 3,000(機能性フィルム・工程紙の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 1.6%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01233 × 1.0))→ 売上 48 億円・営業利益 2 億円。営業利益率4%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 12.72 倍、時価総額 553 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年の原材料高は一時的で、価格転嫁も進むという筋書き。数量は市場並みに伸びるが、中国勢にシェアを少し削られる。実現しやすい姿なので 20% を置いた。
中立 38% 光学は数量が横ばいで、シェアと値上げは中国勢に削られる 利益 30 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 2,372 円437 億円
光学製品の市場は実質で横ばいに近い。スマートフォンやノート PC の一部は有機 EL に移るが、ミニ LED の搭載機と車載ディスプレイが補う。
中国の Exciton や韓国の SK microworks Solutions が中位グレードで追い上げ、恵和のシェアは 1 割下がる。価格は物価 1.34 倍に届かず、1.17 倍になる。光学の利益率は 37% で、2025 年の 42% より低く、2026 年の予想(33% 前後)よりは高い。
機能製品は小さな黒字で、全社費用は物価で増えて 34 億円になる。営業利益は 40 億円、営業利益率は 16.5% で、2025 年(21%)と 2026 年予想(13%)の間に入る。
- 光学製品:数量 2,000(液晶バックライト向け拡散材の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 9.8%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08383 × 1.0))→ 売上 196 億円・営業利益 73 億円。営業利益率37%
- 機能製品:数量 3,000(機能性フィルム・工程紙の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 1.6%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01233 × 1.0))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。営業利益率3%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 11.87 倍、時価総額 384 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の数量は有機 EL への置き換えとミニ LED・車載が相殺して横ばい。シェアは中国勢に削られ、価格は物価に届かない。業界の前提に最も沿う姿として最大の 38% を置いた。
やや悲観 24% 有機 EL への置き換えと価格競争で、光学の利益率が下がる 利益 16 億円 · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 1,359 円250 億円
有機 EL が中型ディスプレイに広がり、液晶向けの数量は実質で 6% 減る。恵和のシェアも中国勢に 15% 削られる。
価格は物価 1.22 倍まで上げて、シェア低下と相殺すると 1.04 倍にとどまる。原材料の値上げを顧客に移し切れず、光学の利益率は 32% に下がる。
機能製品は数量が減り、利益はゼロに近い。全社費用は人員の整理で 30 億円までの増加に抑える。営業利益は 22 億円、営業利益率は 11% で、2026 年予想(13%)より低い。現金は設備投資に一部使い、余った現金は 30 億円に減る。
- 光学製品:数量 1,880(液晶バックライト向け拡散材の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 8.7%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08383 × 1.0))→ 売上 163 億円・営業利益 52 億円。営業利益率32%
- 機能製品:数量 2,700(機能性フィルム・工程紙の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 1.5%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01233 × 1.0))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0%
倍率:ROE は 4% 台で k を大きく下回る。ROE が k 以下なので PER の上限は 1÷k=11.4 倍で、事業の縮小を見てその約 8 割の 8.7 倍に置いた。余った現金は 30 億円で別に足す。
確率:有機 EL がノート PC とタブレットに広がり、中国勢との値下げ競争も続く。いまの減益の流れが続けば現実的な姿で、24% を置いた。
悲観 10% 液晶向けが急に縮み、事業の整理に入る 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 435 円80 億円
有機 EL の採用が加速し、ノート PC とタブレットの液晶向けは実質 25% 減る。ミニ LED と車載は期待ほど育たない。中国勢の追い上げでシェアが 3 割下がり、価格は物価に届かず 0.77 倍まで落ちる。
光学の利益率は 26% まで下がる。機能製品も赤字に戻る。
恵和が選べる手は少ない。光学以外に稼ぎ頭が無く、車載とミニ LED 以外に数量の逃げ場も無い。事業の整理に入れば、設備の減損と人員の整理が先に出る。全社費用を 22 億円まで絞っても、営業利益は 3 億円弱で、純利益は 2 億円に届かない。稼ぐ力は 20 億円ほどにとどまる。
純現金 55 億円は赤字の穴埋めや生産設備の整理に使われ、残る床は 80 億円ほどと見る。
- 光学製品:数量 1,500(液晶バックライト向け拡散材の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 6.5%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08383 × 1.0))→ 売上 97 億円・営業利益 25 億円。営業利益率26%
- 機能製品:数量 2,100(機能性フィルム・工程紙の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定))× 価格 1.4%(恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01233 × 1.0))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-2%
倍率:営業利益がほぼゼロで稼ぐ力は 20 億円ほど。純現金と売れる資産の床 80 億円を今の自己資本 238.6 億円に掛けて PBR 0.34 倍とした。自己資本は整理の減損で流れより増えない。
確率:有機 EL への置き換えが一気に進み、車載もミニ LED も当てが外れる。中国勢との値下げ競争も重なる。構造的な負けの姿で、10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
光学製品
液晶バックライト用の光拡散フィルム「オパルス」、直下型ミニ LED 向け複合拡散板「オパスキ」。スマートフォン・タブレット・ノート PC・車載ディスプレイ向け。
| 数量液晶バックライト向け拡散材の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定) | 価格恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08383 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,000 | 8.4% | 168 | 71 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 9.8% | 196 | 73 |
取り方:光学製品の売上 167.66 億円とセグメント利益 70.85 億円は決算(2025/12 期)。拡散材の実質市場 2,000 億円は筆者の推定(有料の市場調査は未確認)、シェア 8.38% はそこから逆算。数量は有機 EL への置き換えとミニ LED・車載が相殺して中立 1.0 倍。シェアは中国の Exciton などの追随で中立 10% 低下。価格は物価 1.34 倍より低く、シェア低下と合わせて 1.17 倍。
機能製品
工程紙、防錆資材、農業資材、クリーンエネルギー車向け特殊フィルム。2025 年に「地球の絆創膏」から撤退。
| 数量機能性フィルム・工程紙の実質市場(億円、2026 年の値段で測る、推定) | 価格恵和のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01233 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,000 | 1.2% | 37 | −2 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 1.6% | 48 | 1 |
取り方:機能製品の売上は全社 204.73 億円から光学 167.66 億円を引いた 37.0 億円。セグメント損益は未確認で、撤退費用を含む -2 億円と置いた(全社の営業利益 42.86 億円=光学 70.85 億円+機能 -2.0 億円+全社費用・調整 -26.0 億円)。市場 3,000 億円は筆者の推定。数量は中立 1.0 倍、価格は物価 1.30 倍。
リスクと懸念
液晶から有機 EL への置き換え
スマートフォンはすでに有機 EL が主流で、ノート PC とタブレットにも広がっている。恵和の光学製品は液晶のバックライト向けで、置き換えが速まれば数量が急に縮む。ミニ LED はこれを遅らせる策に過ぎない。
中国勢との価格競争
拡散シートの主要メーカーに中国の Exciton がいる。中位グレードで品質を上げて値を下げており、恵和の価格上昇は物価に届きにくい。光学のセグメント利益率は 2024 年の 49% 近くから 2026 年に 33% 前後へ下がる予想である。
原材料とエネルギーの高騰
樹脂と有機溶剤、燃料のコストは原油価格に連動する。2026 年は中東情勢でこれが上がり、営業利益の予想が 44 億円から 28 億円へ下方修正された。価格転嫁が遅れる限り、利益は削られる。
一つの事業に集まる利益
光学製品が売上の約 8 割と利益のほぼ全てを占める。全社費用が年 26 億円ほどあるため、光学の利益が 3 割落ちれば営業利益は半分以下になる。
車載の計画が実績より先行
車載向けのオパスキ・オパルスは、2028 年に売上 57 億円とする会社計画がある。まだ実績が小さく、車載の立ち上がりが遅れれば光学の成長の中心が崩れる。
創業者の支配と少数株主
長村惠弌会長が 4 割近くを持つ。経営は継続するが、余った純現金や政策保有株の使い方は経営者の判断に左右され、少数株主に戻る速度は保証されない。
資本政策の実行が未確認
DOE 4% と自社株買いの方針は 2025 年に打ち出されたばかりで、実績がまだ短い。ROE 15% の目標はいまの水準から遠く、達成できない場合の説明が問われる。
今後の分かれ目
- 直下型ミニ LED の採用機が増え、オパスキの数量が伸びる
- 単価と利益率の高い製品の比率が上がり、光学の利益率が中立より上振れする。
- 中国勢がさらに品質を上げて値を下げる
- 恵和の中位グレードのシェアと価格が下がり、悲観や、やや悲観に近い姿になる。
- 有機 EL がノート PC とタブレットで急に広がる
- 光学の数量が実質で 2〜3 割減り、全社の営業利益は 2026 年予想の 28 億円を割る可能性がある。
- 原油価格が下がり、価格転嫁も進む
- 2026 年の減益は一時的と確認され、光学の利益率が 40% 近くに戻る。
- 純現金 55 億円を使った自社株買いや増配が出る
- 余った現金の戻りが確かになり、本質価値のうち現金の部分が現実の還元に近づく。
- 車載向けの売上が 2028 年の計画に近づく
- 光学の成長の柱が実績で確認され、楽観やや楽観の確率が上がる。
- 大型の M&A や設備投資で純現金を使い切る
- 現金の戻りが遅れ、ROE が上がらないまま資本の効率が落ちる。
見ておくもの
- 光学製品の月次または四半期の売上とセグメント利益率
- オパスキと車載向けの売上比率と数量
- 原材料価格の推移と価格転嫁の進み方
- 有機 EL とミニ LED の搭載機の動向
- 自社株買いと配当の実績、純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
光学は拡散材の実質市場(推定)× シェアと物価の指数、機能製品は市場(推定)× シェアで 10 年を積み上げ、価格は物価 1.34 倍より低い 1.17 倍(光学)と 1.30 倍(機能製品)とした。営業利益率は中立で 16.5%(過去 12 年の山 26% の内、2026 年予想 13% と 2025 年実績 21% の間)。全社費用は物価で増やした。net_oku は営業利益の 0.72 倍に余った現金の利息を足した形で置いた(過去の中央値 0.74)。ROE は事業だけで見て 8% 前後で k 以下のため、PER の上限は 1÷k=11.4 倍、その 9 割を置いた。余った現金は純現金 55 億円から運転資金の余裕 15 億円を引いた 40 億円とし、戻り方は 1.0。今の株価や PBR 0.9 倍から倍率を置いていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→13.45 倍・やや楽観 PER 11→12.72 倍・中立 PER 10.3→11.87 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25%。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。