結論
ニチバンは、セロテープで知られる粘着テープの老舗だ。絆創膏のケアリーヴと貼付剤のロイヒも持ち、売上の半分が医療・ヘルスケア、残りが事務用から工業用までのテープである。筆者の結論は、今の値段は物価込みの本質価値に対して割高、というものだ。一番の理由は、稼ぐ力が資本コストに届かない状態が長く続いていることにある。
事業そのものは悪くない。ケアリーヴは救急絆創膏の売上数量で首位に立った。ブランドは育っている。だが自己資本利益率は2020年3月期から3〜4%台にとどまり、会社が掲げる8%には遠い。中期経営計画の営業利益45億円という目標に対して、2026年3月期は23億円だった。原料の値上がりは今も続く。
手元の純現金は115億円で、時価総額の3割にあたる。この厚さは下値を支える。ただ、筆頭株主の大鵬薬品工業が3割強を握り、取引先や銀行の持ち株も厚い。現金が株主に届く筋書きは描きにくい。筆者は、余った現金の半分だけを価値として数えた。
10年の中立では、売上は物価の分だけ伸び、営業利益率は5%台へ戻る。それでも純利益は30億円ほどで、事業に付く倍率は10倍台にとどまる。確率を掛けて割り引いた本質価値は、今の時価総額を3割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は二つある。事業がオーナー利益をどれだけ生むか。経営が資本をどう使うか。
ニチバンの事業は分かりやすい。ブランドがあり、潰れる心配は小さい。だが、オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益は、7年にわたり14〜24億円の間で動いているだけだ。自己資本は443億円もある。資本を使って稼ぐ力が低い会社では、帳簿の厚みを価値として評価できない。
資本の配分は保守的すぎる。現金は積み上がり、自社株買いの方針は示されていない。成長への投資も、利益の増加には結びついてこなかった。会社が掲げるROE8%が実現するなら、評価は変わる。筆者は、利益率の改善より先に、余った現金の使い道が示されるかを見る。
安全域は、純現金という形で存在する。しかし、その分は今の値段にすでに入っている。10年後の本質価値は、現金の半分と、10倍前後の倍率で評価した事業の合計だ。今の値段を重ねると、安全域はほとんど残らない。
何で稼ぐ会社か
ニチバンは粘着テープの会社だ。事業は大きく二つに分かれる。
メディカル事業は売上の約5割を占める。柱は救急絆創膏のケアリーヴ、鎮痛消炎の貼付剤ロイヒ、病院で使う医療用テープだ。顧客は、ドラッグストアで買う消費者と、病院や医療機関である。2026年3月期には、ロイヒつぼ膏が海外で売り出された。同じ年の3月には、ケアリーヴの新製品が韓国で出た。海外はまだメディカルの1割ほどだが、育てたい分野だ。
テープ事業はもう一つの柱だ。セロテープに代表される事務・家庭用に加え、電気用、包装用、マスキング用、保護フィルムなどの工業品を扱う。ネット通販向けの梱包テープも伸びている。顧客は文具店や量販店、産業資材の商社、通販事業者である。2026年3月期は、価格改定と生産の再編が利益を支えた。
全体の海外比率は1割強で、メディカルとテープが同じ規模だ。粘着剤や基材の原料は石油化学品につながるため、原料の値動きが利益率を左右しやすい。業種のくくりは化学だが、実態は消費財と医療材の色が濃い。この点を押さえて読んでほしい。
優良さと弱いところ
堀はブランドにある。ケアリーヴは、救急絆創膏の売上数量で首位に立った。長く王者だったバンドエイドを抜いたと報じられている。競合より高めの値段を保ったまま売る、という戦い方が実を結んだ。セロテープも、粘着テープの代名詞として多くの人が思い浮かべる名前だ。
だが、堀が利益に表れていない。自己資本利益率は2020年3月期から7期連続で3〜4%台(2023年3月期だけ、固定資産の売却益で6%)、営業利益率は4%台である。ブランドの強さを、稼ぐ力に変え切れていない。
弱みは二つある。ひとつは、原料高を価格に移す力だ。テープ事業は価格改定で持ち直したが、メディカルでは高粗利の製品が減り、収益性が下がった。もうひとつは規模である。工業用や包装用では日東電工や積水化学工業という大きな相手がいて、価格を主導できる立場にはない。
経営は財務を堅く守る。自己資本比率は約66%、純現金は115億円ある。安全だが、資本を寝かせすぎだ。筆者は、ここがこの会社でいちばん改善の余地が大きく、実行が遅れてきた点だと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の需要は、人口と高齢化に左右される。絆創膏のような日用品は人口減で細るが、貼付剤や医療用テープは高齢化で底堅い。事務用のセロテープは、書類のデジタル化で緩やかに減る。
工業用は景気と製造業の稼働に連動する。電気用やマスキング用は、顧客の工場の動きしだいだ。包装用は通販の拡大で追い風を受けてきた。
競合は事業ごとに違う。絆創膏では、ジョンソン・エンド・ジョンソンのバンドエイドと首位を争う。鎮痛の貼付剤では、久光製薬のサロンパスなどが先行する。包装用や工業用では、日東電工と積水化学工業が大手である。
足元の最大の課題は原料だ。会社は、中東情勢を背景にした原材料の上昇を、企業努力だけでは吸収しきれないと見ている。2027年3月期の第1四半期は、売上が増えても営業利益は減った。値上げを通せるかどうかが、10年の利益率を決める。
粘着テープは世界では成長市場だが、海外の工業用は日東電工などが先に押さえている。ニチバンが取りにいくのは、ロイヒやケアリーヴのようにブランド品を持ち込める市場だ。アジアの一部が中心になる。
資本政策と M&A
配当は増やしてきた。2026年3月期は前の期より1割以上の増配で、配当性向は49%だった。目処とする30〜40%を超えている。自社株買いの方針は示されていない。10年の還元は、純利益の45%前後を配当と見込んだ。
株主優待がある。毎年9月末に100株以上を半年以上持つ株主へ、3,500円相当の製品詰め合わせを渡す。費用は開示されておらず、株主数から筆者が推定すると、年2.5億円前後だ。販管費に入っており、利益はすでにその分だけ下がっている。株主の側から見れば配当と同じ受け取りなので、10年の還元に足した。やや悲観では0.75倍、悲観では0.5倍とした。
筆頭株主は大鵬薬品工業で、持ち株比率は約33%。日本マスタートラスト信託銀行、取引先持株会、三菱UFJ銀行が続く。安定した株主が厚く、市場から強い圧力がかかりにくい構図だ。そのため、純現金115億円のうち事業に要らない約80億円は、半分だけを株主の価値として数えた。
M&Aの実績は目立たない。kabufuの推計では、10年以内にTOBや買収が起きる確率は2割強だ。ただ、それは約33%を握る大鵬薬品工業の判断しだいで、筆者は筋書きの中心に置いていない。
会社は2027年3月期にROE8%以上、PBR1倍以上を掲げる。2026年3月期のROEは3.8%だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ブランドが首位に立った今は、稼ぐ力を引き上げる局面だ。ケアリーヴは救急絆創膏の売上数量で首位になり、競合より高い値段でも売れている。ロイヒつぼ膏は海外で販売が始まり、韓国ではケアリーヴの新製品も出た。海外は売上の1割ほどだが、ブランド品を持ち込める土台はできている。
テープ事業は価格改定が通り、生産の再編も進んだ。通販向けの梱包用や工業品は伸びている。原料が上がる局面は、値上げを通せる会社と通せない会社を分ける。ニチバンはブランド品が多く、通せる側にいる。
会社は、営業利益45億円、ROE8%以上を目標に掲げた。達成は遅れたが、方向は変わらない。そこへ純現金115億円が使われれば、様子は一変する。自社株買いや高収益領域への投資が実行されれば、ROEは数ポイント上がる。筆頭株主の大鵬薬品工業との関係も、販売や開発での協力を広げる余地になる。
売上が物価並みに伸び、メディカルの利益率が1割台に乗れば、営業利益は70億円台に届く。今の値段は、この変化をほとんど織り込んでいない。
慎重な見方
ブランドが強くても、稼げていない事実は動かない。ROEは7期続けて3〜4%台、営業利益率は4%台だ。中期経営計画の営業利益45億円は、半分にも届かなかった。目標を掲げては外すことを繰り返してきた会社に、同じ目標をもう一度信じる理由は薄い。
原料の上昇が、いま最も重い。会社自身が、企業努力だけでは吸収しきれないと認めている。2027年3月期の第1四半期は、売上が増えても営業利益が減った。値上げは、競合との価格差や取引先の反発で、思うようには通らない。
国内の需要は人口とともに細る。事務用のセロテープはデジタル化で縮み、絆創膏も人口減の影響を受ける。海外の工業用は日東電工のような大手が先に押さえ、ニチバンは出遅れている。
現金は大きいが、戻ってこない。筆頭株主が3割強を持ち、取引先持株会や銀行も厚い。物言う株主が動きにくい構図で、現金が株主に届く保証はない。PBR1倍の目標も、実績の積み上げではなく宣言にとどまっている。
要するに、安いのではない。現金の厚みで安く見えているだけだ。
どちらに重みを置いたか
弱気の言い分が強い。ブランドの首位は事実だが、それが利益に変わった証拠が7年出ていない。原料高の局面で、営業利益がまた下を向いている点も重い。強気の最大の論拠は現金の使い道だが、株主の構成を考えると、実行を前提にはできない。確率は、やや悲観の側に寄せた。ブランドの首位と海外の芽は、やや楽観と楽観の筋書きで評価している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,091 円422 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 673 円136 億円)。 今の値に割り戻すと 1,455 円294 億円、今との差 −22.5%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,413 円891 億円 | 1,084 円219 億円 | +192.7% | +11.3% | 440 円89 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,821 円569 億円 | 829 円167 億円 | +94.4% | +6.9% | 730 円147 億円 |
| 中立 | 40% | 2,188 円442 億円 | 689 円139 億円 | +53.2% | +4.4% | 1,151 円232 億円 |
| やや悲観 | 22% | 975 円197 億円 | 512 円103 億円 | −20.8% | −2.3% | 327 円66 億円 |
| 悲観 | 10% | 842 円170 億円 | 324 円65 億円 | −37.9% | −4.7% | 117 円24 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,091 円422 億円 | 673 円136 億円 | +47.2% | +3.9% | 2,765 円558 億円 |
今の株価時価総額 1,878 円379 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 首位ブランドが利益に変わる 利益 58 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 4,413 円891 億円
ケアリーヴの首位が利益率に結びつき、ロイヒは海外で定着する。メディカルの営業利益率は1割を超える。ヘルスケアの高粗利製品が戻り、病院向けの医療用テープも堅調で、海外は今の2倍を超える規模になる。
テープ事業では、価格改定が定着し、生産の再編による効率化が進む。通販向けの梱包用やマスキングなどの工業品が伸び、営業利益率は6%台に乗る。
経営は、手元の現金を自社株買いと成長分野への投資に使い始める。会社が掲げたROE8%以上は10年のうちに実現し、後半は9%に近づく。大鵬薬品工業との関係も、販売や開発の協力に広がる。営業利益は75億円ほどになるが、全社の営業利益率は9%で、過去の山の10%近くを超えない。還元は純利益の5割、優待も続く。
- メディカル(ケアリーヴ・ロイヒ・医療用テープ):数量 1,684(出荷量(百万枚。絆創膏・貼付剤・医療用テープを 1 枚に直した概算))× 価格 28(1 枚あたりの平均単価(円))→ 売上 465 億円・営業利益 51 億円。首位ブランドが利益に変わる
- テープ(セロテープ・工業用・包装用):数量 105(出荷量(百万巻。各種テープを 1 巻に直した概算))× 価格 347(1 巻あたりの平均単価(円))→ 売上 365 億円・営業利益 24 億円。価格改定が定着し、通販・工業品が伸びる
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 14.73 倍、時価総額 890 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ケアリーヴの首位が利益率に結びつき、海外が育ち、現金の使い道も示される、という好条件が重なる姿。重なる条件が多いので確率は抑えた。
やや楽観 20% 値上げが通り、利益率が戻る 利益 41 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,821 円569 億円
ケアリーヴは首位を保ち、ロイヒの海外は少しずつ広がる。メディカルの営業利益率は8%台に戻る。原料の上昇は価格改定で吸収され、ヘルスケアの収益性も持ち直す。
テープ事業は、事務用の縮小を通販向けや工業用の伸びが補い、営業利益率は5%台になる。生産の再編による効率化も続く。
経営は、会社の目標ほどではないが、資本効率を意識した運営を続ける。配当性向は5割前後で、自社株買いは小規模にとどまる。全社の営業利益率は7%で、営業利益は50億円ほどだ。純現金は引き続き厚く、大きな買収や自社株買いは行われない。
- メディカル(ケアリーヴ・ロイヒ・医療用テープ):数量 1,496(出荷量(百万枚。絆創膏・貼付剤・医療用テープを 1 枚に直した概算))× 価格 27(1 枚あたりの平均単価(円))→ 売上 401 億円・営業利益 34 億円。値上げが通り利益率が戻る
- テープ(セロテープ・工業用・包装用):数量 100(出荷量(百万巻。各種テープを 1 巻に直した概算))× 価格 342(1 巻あたりの平均単価(円))→ 売上 342 億円・営業利益 18 億円。通販・工業品が事務用の縮小を補う
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 569 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ブランドの強さを保ち、値上げが通って利益率が戻るが、海外の貢献は限られ、現金も大きくは動かない姿。慎重な見方より少し弱い確率にした。
中立 40% 物価並みに伸び、利益率は5%台へ 利益 31 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,188 円442 億円
売上は物価の分だけ伸びる。メディカルは高齢化と海外の拡大で数量が1割ほど増え、テープは事務用の縮小と通販の伸びがほぼ相殺する。値段は物価並みに上がる。ただ、メディカルは病院向けの値上げが通りにくいため、物価をわずかに下回る。
営業利益率は今の4.5%から5.6%ほどへ戻る。テープの価格改定と生産再編の効果が積み上がり、メディカルは高粗利製品の落ち込みから持ち直す。会社の計画(2028年3月期に6%台)より低く置いたのは、過去12年の山(9.6%)の手前に収まる範囲で、実績のある改善だけを織り込んだからだ。営業利益は39億円、純利益は30億円ほどになる。
配当性向は直近の49%から下がり、45%前後に落ち着く。優待も続く。自己資本は580億円ほどまで積み上がり、ROEは5%台にとどまる。現金は大きく動かない。
- メディカル(ケアリーヴ・ロイヒ・医療用テープ):数量 1,372(出荷量(百万枚。絆創膏・貼付剤・医療用テープを 1 枚に直した概算))× 価格 26(1 枚あたりの平均単価(円))→ 売上 357 億円・営業利益 25 億円。高齢化と海外で数量が1割増
- テープ(セロテープ・工業用・包装用):数量 98.0(出荷量(百万巻。各種テープを 1 巻に直した概算))× 価格 342(1 巻あたりの平均単価(円))→ 売上 335 億円・営業利益 14 億円。事務用の縮小を通販が補う
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 442 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重の議論の落としどころ。ブランドは保つが、原料高の転嫁は遅れ、利益率の戻りは緩やかという姿。慎重な見方が強いので、楽観側には寄せなかった。
やや悲観 22% 原料高を転嫁し切れない 利益 20 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 975 円197 億円
原料の上昇が長引き、価格改定の通りが遅れる。ケアリーヴは首位を保つが、量販店や通販の値引き圧力を受け、高めの値段を維持しにくくなる。メディカルの営業利益率は5%に低下する。
テープ事業は、事務用の縮小が進み、数量が1割近く減る。通販向けの梱包用は競争が強く、営業利益率は3%にとどまる。生産の再編を続けても、固定費の重さは軽くならない。
全社の営業利益率は4%、純利益は20億円ほどにとどまる。経営は配当を維持しようとするが、優待を縮小し、還元の水準は下がる。自己資本はふくらみ、ROEは4%を割る。現金は谷で食い、事業に使う分が増える。
- メディカル(ケアリーヴ・ロイヒ・医療用テープ):数量 1,247(出荷量(百万枚。絆創膏・貼付剤・医療用テープを 1 枚に直した概算))× 価格 26(1 枚あたりの平均単価(円))→ 売上 319 億円・営業利益 16 億円。高めの値段を維持しにくい
- テープ(セロテープ・工業用・包装用):数量 92.0(出荷量(百万巻。各種テープを 1 巻に直した概算))× 価格 332(1 巻あたりの平均単価(円))→ 売上 305 億円・営業利益 9 億円。事務用の縮小と競争で数量減
倍率:ROE 約3.6%は k 7.75% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値。RONICは約5.8%で、g 4% の正当化PERは約8倍。価値は稼ぐ力の範囲とし、その約9.5割の7.8倍に置いた。余った現金は谷で食う分を引いた60億円を半分だけ足す。
確率:原料高が長引き、転嫁が遅れる。ブランド品でも量販店・通販の値下げ圧力を受け、利益率が4%前後で張りつく。慎重な見方が強いので、確率を厚めに置いた。
悲観 10% ブランドの値引き競争と需要の縮小 利益 6 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 842 円170 億円
ケアリーヴが量販店・通販の値引き競争に巻き込まれ、首位の座も揺らぐ。高めの値段が崩れ、メディカルの営業利益率は2%台に落ちる。ロイヒの海外も、代理店との関係がうまくいかず、育たない。
テープ事業では、事務用のセロテープの縮小が加速し、工業用は海外大手との競争で値引きが続く。数量は4分の1ほど減り、営業利益率はほぼゼロになる。
もはや優良な粘着テープ会社とは言えない。純利益は数億円に細り、配当は維持されるが、優待は縮小する。現金は赤字の事業の補填や、効果の薄い投資に使われる。価値は、稼ぐ力ではなく、現金と売れる資産で測る局面になる。
- メディカル(ケアリーヴ・ロイヒ・医療用テープ):数量 1,060(出荷量(百万枚。絆創膏・貼付剤・医療用テープを 1 枚に直した概算))× 価格 23(1 枚あたりの平均単価(円))→ 売上 244 億円・営業利益 6 億円。値引き競争で利益率が崩れる
- テープ(セロテープ・工業用・包装用):数量 75.0(出荷量(百万巻。各種テープを 1 巻に直した概算))× 価格 281(1 巻あたりの平均単価(円))→ 売上 211 億円・営業利益 1 億円。縮小が加速し利益がほぼ消える
倍率:10年の構造的に負ける筋書き。純利益は数億円に細り、稼ぐ力でなく現金と売れる資産で測る。売れる資産の税後の合計から谷で食う分を引いた約170億円を床とし、今の自己資本443億円に0.38倍を掛けた。
確率:ブランドが値引き競争に巻き込まれ、国内の需要が縮み、現金も無駄に使われる、優良さが失われる姿。経営の実行力への疑いと原料高の長期化を考えて、5%よりやや高く置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
メディカル(ケアリーヴ・ロイヒ・医療用テープ)
救急絆創膏のケアリーヴ、鎮痛消炎の貼付剤ロイヒ、病院で使う医療用テープなどを手掛ける。売上の約5割。海外は約1割。
| 数量出荷量(百万枚。絆創膏・貼付剤・医療用テープを 1 枚に直した概算) | 価格1 枚あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,247 | 20 | 249 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,372 | 26 | 357 | 25 |
取り方:メディカルの売上249.4億円を、出荷量(絆創膏・貼付剤・医療用テープを1枚に直した概算で約12.5億枚)× 1枚の平均単価(約20円)に分けた。数量は、対象市場(国内の救急絆創膏・外用貼付剤・医療用テープと海外の一部。今の値段で約5,000億円と推定)× シェア約5%から逆算した推定。事業別の営業利益は開示を確かめられず、14.2億円は推定(ヘルスケアの高粗利製品の減少で前期から低下した方向だけを説明資料の要約から確認)。本社費は事業に配賦済みとし、全社の調整は0。
テープ(セロテープ・工業用・包装用)
セロテープなどの事務・家庭用に加え、電気用・包装用・マスキング用・保護フィルムなど工業用のテープを手掛ける。売上の約5割。海外は約1割。
| 数量出荷量(百万巻。各種テープを 1 巻に直した概算) | 価格1 巻あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 255 | 255 | 9 |
| 10 年後 中立 | 98.0 | 342 | 335 | 14 |
取り方:テープの売上255.3億円を、出荷量(各種テープを1巻に直した概算で約1億巻)× 1巻の平均単価(約255円)に分けた。数量は、対象市場(国内の事務用・工業用・包装用の粘着テープ。今の値段で約1兆円と推定)× シェア約2.5%から逆算した推定。営業利益8.5億円は推定(生産再編と価格改定で前期から改善した方向だけを確認)。本社費は事業に配賦済みとし、全社の調整は0。
リスクと懸念
原料高を価格に移せない
粘着剤や基材の原料は石油化学品につながる。会社は、中東情勢を背景にした原材料の上昇を企業努力だけでは吸収しきれないとみる。2027年3月期の第1四半期は、売上が増えても営業利益が減った。値上げが通らない状態が続くと、営業利益率は4%を割り込む。
国内需要の縮小
事務用のセロテープは、書類のデジタル化で緩やかに減る。絆創膏も人口減の影響を受ける。売上の9割が国内なので、人口と事務の電子化という戻らない流れを、そのまま受ける。高齢化で伸びる貼付剤と医療用テープで、どこまで補えるかが分かれ目になる。
稼ぐ力が上がらない
ROEは7期続けて3〜4%台で、中期経営計画の営業利益45億円は大きく未達だった。目標を掲げては外す状態が続くと、会社が掲げるROE8%も絵に描いた餅になる。ブランドの首位が利益に結びつくかを確認できていない。
現金が株主に届かない
純現金は115億円で時価総額の3割にあたる。筆頭株主の大鵬薬品工業が約33%を握り、取引先持株会と銀行も厚い。物言う株主が動きにくく、自社株買いの方針も示されていない。現金が使われないまま積み上がり、資本効率がさらに下がるおそれがある。
大手との競争
絆創膏では、バンドエイドが巻き返しに動く。工業用や包装用では、日東電工や積水化学工業が規模で上回る。ブランドで価格を保ってきたケアリーヴが、量販店や通販の値引き競争に巻き込まれると、メディカルの利益率が崩れる。
海外展開の不確実性
ロイヒつぼ膏とケアリーヴの海外展開は始まったばかりで、売上の貢献はまだ小さい。販売代理店の在庫調整で、国内の売上が一時的に落ちた例もある。海外の売上が育たない場合、成長の説明は国内の値上げだけになる。
今後の分かれ目
- 原料の上昇が長引き、値上げが通らない
- 営業利益率は4%を割り込み、やや悲観の筋書きに近づく。ブランド品でも転嫁が遅れる会社だという評価が固まる。
- 純現金の使い道として、自社株買いや大型投資が示される
- 余った現金の戻り方が半分から上がり、資本効率が改善に向かう。本質価値の差は縮まる。
- ケアリーヴとロイヒの海外売上が、メディカルの2割を超える
- メディカルの利益率が1割に近づき、楽観とやや楽観の確率を上げる材料になる。
- 大鵬薬品工業が持ち株を増やす、または再編を提案する
- TOBや完全子会社化の可能性が現実になる。その場合の評価は、買い手の判断で決まる。
- 営業利益率が6%を超え、複数期続く
- ブランドが利益に変わった証拠になる。中立の置き方を見直す。
- ケアリーヴが量販店や通販の値引き競争に巻き込まれる
- メディカルの高めの値段が崩れ、悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 営業利益率の推移(6%を超えて続くか、4%を割るか)
- 原材料の値上がりと、価格改定の通り方
- ケアリーヴの国内シェアと、海外の売上
- 純現金の使い道、自社株買いの有無、配当性向
- 大鵬薬品工業の持ち株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROEと資本コスト7.75%から式で置いた。ニチバンのROEは資本コストを下回るので、倍率は1÷kより低く、稼ぐ力の範囲に収めた。余った現金は半分だけ足した。今のPERやPBRは参照していない。純現金が厚いので事業に付く倍率は低く見えるが、それはROEが低いためで、今の株価に寄せたわけではない。還元は直近の配当性向49%を踏まえて純利益の45%とし、優待は推定の年2.5億円を足した。賃借は店舗中心ではなく、新リース会計基準の影響は小さいと見て、10年後の数字は賃借料を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.2→14.73 倍・やや楽観 PER 11.5→12.9 倍・中立 PER 10.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.25% を足して7.75%。事業が傾いている様子はなく、extra は0。経営の実行力や筆頭株主の影響は k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。