結論
ダイセキは、工場から出る廃液・廃油・汚泥を引き取り、燃料や再生油にして売る会社だ。名古屋が本拠で、焼却炉も埋立地も持たない。引き取りで処理料を受け取り、出口の再生品でも稼ぐ。営業利益率は 20% を超える。筆者の結論は、10 年の本質価値が今の時価総額とほぼ同じ、つまり適正というものだ。割安とまでは言えない。
稼ぎの源は単純だ。複雑な廃液を混ぜて無害にし、燃料に変える技術と、工場との長い付き合いである。国内シェアは約 25%、取引工場は年 200〜300 のペースで増えてきた。ただし国内の製造業は縮み、相手の工場の総数は増えない。筆者は、シェアが 3 割前後まで上がる姿を中立に置いた。会社の目標(2031 年に売上 1,500 億円)は M&A を含む強気の道で、そこまでは見ない。
2025 年には上場子会社のダイセキ環境ソリューションを完全子会社にした。利益の外への漏れがなくなり、2027 年 2 月期の純利益は 2 割ほど増える計画だ。代わりに純現金は 112 億円まで細った。
10 年後の中立は、営業利益 220 億円、純利益 147 億円。利益の 7 割台を配当と自社株買いで返す方針なので、自己資本は 1,100 億円台にとどまり、資本効率は 13% 前後まで上がる。
今の値段は、この堅実な姿を十分に織り込んでいる。強気でも倍にはなりにくく、慎重な側には工場の空洞化と値上げ疲れが待つ。良い会社だが、買い手に残る余裕は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「払った値段に見合う利益を、長く、安定して生む」類の事業だ。廃液は工場が操業する限り出る。処理料は物価に合わせて改定できる。再生燃料の売値は相場で動くが、柱は処理料である。
オーナー利益、つまり設備投資を引いたあとに株主の手元に残る利益は大きい。焼却炉や埋立地のような重い設備が要らないので、営業利益の大半が現金になる。ROE が 11% 前後で、借金もほぼなく、これを無理なく続けられるのは強みだ。
経営が資本をどう使うかには、評価と注文の両方がある。利益の 7 割を配当と自社株買いで返す姿勢は良い。一方で、子会社の完全子会社化に高いプレミアムを払い、大阪油化工業の買収は不成立だった。次の M&A で失敗すれば、積み上げた価値を損なう。
安全域、つまり値段の余裕で見ると、今の PER 18 倍・PBR 2 倍は、この堅実さをすでに織り込んでいる。中立の 10 年後も、時価総額は今より 4 割ほど増えるにとどまり、配当を足して割り戻すと今の値段とほぼ釣り合う。悪くない会社だが、買って得をする値段ではない。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つに分かれる。開示されるセグメントは 1 つだけで、この分け方と金額は筆者の推定である。
主力はダイセキ本体の廃液・廃油・汚泥のリサイクルで、売上の 6 割強を占めると見る。化学・自動車・機械などの工場から、水や油の混ざった複雑な廃液を引き取る。成分の違う廃液を混ぜて中和し、脱水・乾燥して、セメント工場の補助燃料や原料にする。油は再生油として売り、銅やニッケルなどの金属は回収する。入口で処理料、出口で再生品の代金が入る二重の収入だ。取引先は 6 千超の工場で、従業員 100 人以上の製造工場の約 4 分の 1 にあたる。タンクや設備の洗浄を担う子会社のシステム機工も、この中に含めた。
2 つ目は子会社のダイセキ環境ソリューションだ。汚染された土の調査と浄化、PCB(絶縁油などに使われた有害物質)の処理、廃プラスチックの再資源化を手がける。2023 年には滋賀の杉本商事を買い、廃プラに入った。売上は年 200 億円強、営業利益率は 1 割ほどで、本体よりずっと低い。
3 つ目はダイセキ MCR で、使い終わった鉛バッテリーから再生鉛を作る。出荷は年 1.4 万トンと設備はほぼ満杯で、売上は 47 億円。鉛の相場で利益が大きく揺れる。
利益の中心は 1 つ目だ。2 つ目と 3 つ目は、1 つ目の顧客基盤を広げる役と、相場に振られる小さな事業という位置づけになる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、複雑な廃液を安全に、安く処理できる経験とノウハウだ。成分の違う廃液を混ぜて無害にする技は、一朝一夕には身につかない。許可と設備、本拠の愛知に集まる製造業との長い信頼が重なる。焼却炉や埋立地を持たないので、処分場の容量が尽きる心配もない。
数字にも出ている。営業利益率は過去 10 年で 16% から 20% 超へ上がり、純利益の ROE は 11% 前後。自己資本比率は 78% と厚い。取引工場を毎年 200〜300 増やしても、利益率は崩れなかった。これは値下げで客を取っていない証拠だ。
弱みも書いておく。第一に、規模が小さい。時価総額は 2 千億円に届かず、大手の廃棄物会社と体力で競うには限りがある。第二に、再生燃料の出口がセメント工場などに偏る。第三に、資本の使い方に迷いが見える。2025 年 2 月に大阪油化工業へ TOB(株式の公開買い付け)をかけて不成立に終わり、同年には上場子会社を高いプレミアムで取り込んだ。
筆者は、強い堀とまでは見ない。地域と技術の堀はあるが、国内の製造業という限られた客層の中でのものだからだ。残る割合は標準の 2 分の 1 とした。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
産業廃棄物は全国で年に約 3.7 億トン出る。その大半は汚泥・がれき・動物のふん尿で、ダイセキの得意な液状の廃棄物はその一部にすぎない。許可を持つ業者は全国で約 11 万者にのぼり、上場の大手でも合わせて数% のシェアしかない。ダイセキは液状に絞って約 25% を握る、珍しい存在だ。
追い風は規制である。排出する工場は、最後まで責任を負う。自前で処理するより、実績ある会社へ出す流れが続く。2025 年 2 月期の新規取引は 270 工場で、これが成長の主な燃料になってきた。会社は 2030 年度に 30% を目指す。
逆風は、国内の製造業の縮みだ。従業員 100 人以上の製造工場は全国で約 2.4 万。人口が減り、生産の一部は海外へ出る。相手の母数は 10 年で 1 割ほど減ると見る。シェアが上がっても、取引工場の数は 7 千前後で頭打ちに近づく。
競合は、大栄環境や TRE ホールディングス、ミダックなどの上場同業と、各地の中小業者だ。大栄環境は焼却・埋立の重い設備で勝負する会社で、ダイセキとは稼ぎ方が違う。液状の領域では、価格より対応力で選ばれやすい。
土壌汚染の市場も大きくない。調査・対策の受注額は年 860 億円で、前年は 6% 減った。PCB は処理期限が近く、先細りだ。鉛バッテリーは、電気自動車の普及で長期には先細りだが、補機用の需要はまだ続く。
10 年の分かれ目は、工場の母数の減り方と、廃液の処理料をどこまで物価に合わせて上げられるかだ。
資本政策と M&A
資本政策は積極的だ。2025 年 2 月期から 3 年で、約 120 億円の自社株買いと、配当性向 40% を目指す方針を掲げる。総還元性向は当面 80% が目安だ。23 年間、減配はない。
M&A は、成長の穴を埋める手段になっている。2023 年に杉本商事を買って廃プラに入り、2025 年に上場子会社のダイセキ環境ソリューションを TOB で完全子会社にした。総額は約 143 億円で、プレミアムは 5 割を超えた。親子上場の解消は評価できるが、安い買い物ではない。大阪油化工業への TOB は不成立に終わった。
財務は堅い。純現金は 112 億円(2026 年 2 月末)、自己資本比率は 78% だ。完全子会社化で純現金は半分以下に減ったが、利益の増加で戻していける。
買われる側になる可能性は、一定ある。時価総額は 1,700 億円ほどで、大手の廃棄物会社や商社が買える大きさだ。外部の推定では 10 年以内の確率は 2 割弱とされる。ただし、確かな動きは見えない。
10 年の還元は、総還元性向 80% を目安とする方針と同じ、純利益の合計の 8 割。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
取引工場の増え方が、この会社の成長のすべてを物語る。毎年 200〜300 の新規開拓で、2025 年 2 月期には 6,201 工場、国内の対象工場の 25.6% まで来た。会社は 2030 年度に 30% を掲げる。国内で液状廃棄物にここまで絞った会社は他にない。
規制が強まるほど、排出する工場は実績のある処理先を選ぶ。小さな業者は設備投資の負担で脱落し、シェアは自然に集まる。値上げも通りやすい。廃液の処理は工場にとって費用の小さな項目で、安全が最優先だからだ。
新しい芽もある。アンモニアを回収する新技術は 2031 年 2 月期に売上 30 億円・営業利益 10 億円を見込む。廃プラの再資源化や、北海道・東北の拠点づくりも進む。ダイセキ環境ソリューションの完全子会社化で、顧客を相互に紹介し合い、土壌の調査から処理まで一括で受ける形が作れる。
資本の返し方も良い。総還元性向 80% の方針なので、利益が伸びれば株主へ返る分も増える。中計では 2027 年 2 月期に営業利益 180 億円、ROE 12% 台を掲げており、実現すれば 10 年後の営業利益 300 億円も見えてくる。
慎重な見方
伸びの前提が危うい。取引工場の母数は、国内の製造業とともに縮む。従業員 100 人以上の工場は約 2.4 万あるが、人口が減り、生産は海外へ出る。シェア 3 割を目指しても、取り込めるパイが小さくなれば、売上の伸びは物価分だけになりかねない。
足元の成績が計画に届いていない点も見逃せない。2026 年 2 月期は売上・利益とも会社計画を下回った。2027 年 2 月期の営業利益は 15% 増の計画だが、前期は 2% 増にとどまった。計画の多くは、取引工場の増加と値上げが順調に進むことに頼っている。
資本の使い方にも不安が残る。大阪油化工業への TOB は不成立に終わった。上場子会社の完全子会社化には、5 割超のプレミアムを払った。次に高い値段で買収を重ねれば、ROE を押し下げる。純現金は 112 億円まで減っており、大きな M&A を自己資金だけで賄う余力は小さい。
事業の外にも不安はある。鉛バッテリーは長期で先細りだ。PCB の処理は期限が近い。土壌の市場は年 860 億円と小さく、前年は 6% 減った。再生燃料の買い手であるセメント業界の動きも、出口を左右する。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の言い分が勝つ。シェアを毎年積み上げ、利益率も上がり、還元も厚い。ただし、強気の成長は取引工場の母数が減らないことを前提にしており、国内の製造業の縮みを考えると、その前提は割り引く必要がある。
確率は、やや強気と中立に厚く置いた。完全に悲観に寄せるほど事業は弱くない。一方で、最悪の筋書きは工場の空洞化に値下げ競争と買収の失敗が重なる場合で、確率は 1 割強とした。
結果として、10 年の価値は今の時価総額とほぼ同じで、適正の範囲に入る。堅実さは評価できるが、安く買える会社ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 5,207 円2,463 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,867 円883 億円)。 今の値に割り戻すと 4,136 円1,956 億円、今との差 +18.5%、 期待の年率 +7.3%(資本コスト 6.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,385 円4,439 億円 | 2,489 円1,177 億円 | +240.2% | +13.0% | 831 円393 億円 |
| やや楽観 | 21% | 7,347 円3,475 億円 | 2,203 円1,042 億円 | +173.7% | +10.6% | 2,006 円949 億円 |
| 中立 | 37% | 6,136 円2,902 億円 | 2,028 円959 億円 | +133.9% | +8.9% | 3,020 円1,428 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,722 円1,288 億円 | 1,592 円753 億円 | +23.6% | +2.1% | 992 円469 億円 |
| 悲観 | 12% | 923 円437 億円 | 943 円446 億円 | −46.5% | −6.1% | 224 円106 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,207 円2,463 億円 | 1,867 円883 億円 | +102.7% | +7.3% | 7,074 円3,345 億円 |
今の株価時価総額 3,490 円1,651 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 取引工場が 8 千超に増え、新技術と完全子会社化の効果も出る 10 年 利益 208 億円 · PER 21.3 倍 · 株価時価総額 9,385 円4,439 億円
取引工場は 8,200 に増える。国内の対象工場の 4 割近くを握る計算で、液状廃棄物ではほぼ一強になる。処理料は物価を少し上回って上がり、アンモニア回収など新技術の上乗せも乗る。
ダイセキ環境ソリューションは、完全子会社化で顧客を共有し、土壌の調査から処理までを一括で受ける形が当たる。廃プラの再資源化も育ち、売上は 400 億円台に乗る。鉛リサイクルは設備を増やして出荷を 1.3 倍にする。
配当と自社株買いは利益の 7 割台を保つ。会社の長期目標(2031 年に営業利益 250 億円)を 5 年遅れで超え、10 年後は営業利益 300 億円を超える。ただし、取引工場の拡大、新技術、土壌と廃プラの育成、鉛の増設の全部がうまくいく姿で、確率は軽く置く。国内の製造業が縮むなかでシェアだけが上がる前提でもある。
- 廃液・廃油・汚泥のリサイクル(本体・設備洗浄を含む):数量 82.0(取引工場数(百工場))× 価格 9.97(1 工場あたり年間売上(百万円))→ 売上 817 億円・営業利益 233 億円。取引工場 8,200・1 工場あたり売上は物価に 5% 上乗せ
- 土壌・PCB・廃プラの環境ソリューション(ダイセキ環境ソリューション):数量 210(土壌・廃棄物の取扱量(万トン、推定))× 価格 2.02(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 424 億円・営業利益 59 億円。土壌・廃プラの取扱量 1.4 倍・拠点増
- 鉛リサイクル(ダイセキ MCR):数量 1.8(再生鉛の出荷量(万トン))× 価格 45(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 81 億円・営業利益 14 億円。鉛の出荷 1.8 万トン(設備増)
倍率:事業の純利益 208 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.2% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.3 倍。全体の PER 21.34 倍、時価総額 4,439 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:取引工場の拡大が 30% を超え、新規事業と M&A が両方うまくいく必要がある。強気としては最も良い姿で、実現の確度は高くない。
やや楽観 21% これまでより遅いペースで取引工場が増え、利益率も上がる 10 年 利益 170 億円 · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 7,347 円3,475 億円
取引工場は 7,500 まで増える。これまでのペースの半分ほどで、シェアは 3 割台前半になる。処理料は物価をわずかに上回って上がる。
ダイセキ環境ソリューションは土壌と廃プラが育ち、売上は 350 億円ほどになる。鉛リサイクルは設備の増強で出荷が 1 割強伸びる。利益率は本体で 27% に乗る。
還元は利益の 7 割台を保つ。自己資本の積み上がりが小さいので、ROE は 14% 台まで上がる。会社の中計に近いが、そこまで全部は届かない 10 年である。M&A は小さな案件にとどまり、価値を壊すほどの失敗はない。ダイセキ環境ソリューションの完全子会社化も、顧客の相互紹介を通じて少しずつ効いてくる。
- 廃液・廃油・汚泥のリサイクル(本体・設備洗浄を含む):数量 75.0(取引工場数(百工場))× 価格 9.69(1 工場あたり年間売上(百万円))→ 売上 726 億円・営業利益 196 億円。取引工場 7,500・物価を少し上回る改定
- 土壌・PCB・廃プラの環境ソリューション(ダイセキ環境ソリューション):数量 180(土壌・廃棄物の取扱量(万トン、推定))× 価格 1.96(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 353 億円・営業利益 44 億円。土壌・廃プラ 1.2 倍
- 鉛リサイクル(ダイセキ MCR):数量 1.6(再生鉛の出荷量(万トン))× 価格 45(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 72 億円・営業利益 11 億円。鉛の出荷 1.6 万トン
倍率:事業の純利益 170 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.4 倍。全体の PER 20.44 倍、時価総額 3,475 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:これまでのペースで取引工場が増え、利益率も計画に近づく。過去 10 年の実績に最も近い筋書きで、中立より少し軽く置く。
中立 37% 取引工場は 7 千前後で頭打ちに近づき、値上げは物価並みにとどまる 10 年 利益 147 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 6,136 円2,902 億円
取引工場は 7,000 前後で頭打ちに近づく。新規開拓は続くが、国内の製造業が縮んで母数が減るためだ。シェアは 3 割ほどになる。処理料は物価並みに上がり、再生燃料の売値も相場に沿う。
ダイセキ環境ソリューションは、土壌が横ばいから緩やかな増加、廃プラが少し育つ程度で、PCB の終わりを補う。鉛リサイクルは設備の範囲で出荷が少し増える。
利益率は 21% 前後で、今を少し上回る。会社計画の 23% には届かない。還元は利益の 7 割台。自己資本が思ったほど増えず、ROE は 13% まで上がる。平凡だが崩れない 10 年である。大型の M&A はなく、純現金は少しずつ積み上がる。完全子会社化の効果は、利益の増え方に表れる程度にとどまる。
- 廃液・廃油・汚泥のリサイクル(本体・設備洗浄を含む):数量 70.0(取引工場数(百工場))× 価格 9.47(1 工場あたり年間売上(百万円))→ 売上 663 億円・営業利益 172 億円。取引工場 7,000・物価並みの改定
- 土壌・PCB・廃プラの環境ソリューション(ダイセキ環境ソリューション):数量 165(土壌・廃棄物の取扱量(万トン、推定))× 価格 1.92(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 317 億円・営業利益 38 億円。土壌横ばい〜微増・廃プラ増で PCB 終了を補う
- 鉛リサイクル(ダイセキ MCR):数量 1.5(再生鉛の出荷量(万トン))× 価格 45(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 67 億円・営業利益 9 億円。鉛の出荷 1.5 万トン
倍率:事業の純利益 147 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍。全体の PER 19.74 倍、時価総額 2,902 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:取引工場は増えるが、製造業の縮みで母数が減り、7 千前後で頭打ちに近づく。値上げは物価並みに通る。最も重みを置く筋書き。
やや悲観 23% 製造業の縮みが速く、処理料の値上げが物価に追いつかない 10 年 利益 103 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,722 円1,288 億円
製造業の縮みが予想より速く、取引工場は 6,500 で足踏みする。処理料の改定は物価に追いつかず、10 年で 25% ほどの上昇にとどまる。再生燃料の売値も軟調だ。
ダイセキ環境ソリューションは PCB の終わりと土壌の競争で伸びず、利益率は 1 割を切る。鉛リサイクルも、バッテリーの電動化で相場と数量が弱い。
本体の利益率は 22% ほどに下がり、全社でも 17% 前後になる。大型の M&A は見送られ、自社株買いも縮む。堅い会社であることは変わらず、純現金も積み上がる。ただ、国内の客先が細るなかで次の成長の柱が見えないまま、10 年が過ぎていく。規模が小さいので、値下げ競争を体力で乗り切る手もない。
- 廃液・廃油・汚泥のリサイクル(本体・設備洗浄を含む):数量 65.0(取引工場数(百工場))× 価格 8.84(1 工場あたり年間売上(百万円))→ 売上 574 億円・営業利益 129 億円。取引工場 6,500・改定は 10 年で 25%
- 土壌・PCB・廃プラの環境ソリューション(ダイセキ環境ソリューション):数量 150(土壌・廃棄物の取扱量(万トン、推定))× 価格 1.83(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 275 億円・営業利益 25 億円。取扱量は横ばい・競争で値上げ難
- 鉛リサイクル(ダイセキ MCR):数量 1.3(再生鉛の出荷量(万トン))× 価格 40(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 52 億円・営業利益 5 億円。鉛の出荷 1.3 万トン・相場軟調
倍率:ROE 9.3%。RONIC = k 6.5% + 残る割合 1/2 ×(9.3% − 7.25%)= 8.3%、g 3.75% から正当化 PER = (1 − 3.75÷8.3)÷(7.25 − 3.75) = 15.6 倍。上限の約 8.0 割(12.5 倍)に置いた。利益は横ばいに近く、成長しない。
確率:製造業の縮みが速く、値上げが物価に追いつかない。会社計画を 2 期続けて下回った実績があり、やや厚めに置く。
悲観 12% 工場の空洞化と値下げ競争、買収の失敗が重なる 10 年 利益 45 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 923 円437 億円
国内の製造業の空洞化が進み、取引工場は 6,000 に戻る。競合が値下げで攻め、処理料の上昇は物価の 3 分の 1 にとどまる。再生燃料の売値は崩れ、利益率は本体でも 15% まで落ちる。
ダイセキ環境ソリューションは土壌市場の縮みと PCB の終わりで赤字に近づく。高いプレミアムで取り込んだことの重荷が表に出る。鉛リサイクルは電動化で数量・相場とも落ちる。買収の失敗で数十億円の損失が出る。純現金は薄いまま、借入で穴を埋める場面も出てくる。
営業利益は 70 億円台で、今の半分に落ちる。強みである技術と許可は残るが、成長企業ではなくなり、倍率も下がる。残るのは、堅実な利益を生む小さな専業会社という姿である。
- 廃液・廃油・汚泥のリサイクル(本体・設備洗浄を含む):数量 60.0(取引工場数(百工場))× 価格 7.78(1 工場あたり年間売上(百万円))→ 売上 467 億円・営業利益 70 億円。取引工場 6,000・改定は 10 年で 10%・利益率 15%
- 土壌・PCB・廃プラの環境ソリューション(ダイセキ環境ソリューション):数量 120(土壌・廃棄物の取扱量(万トン、推定))× 価格 1.61(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 193 億円・営業利益 8 億円。土壌・PCB が縮み赤字に近づく
- 鉛リサイクル(ダイセキ MCR):数量 1.1(再生鉛の出荷量(万トン))× 価格 34(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。鉛の出荷 1.1 万トン・相場下落
倍率:ROE 4.3% は k 6.5% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 13.8 倍。利益が構造的に縮む筋書きなので、稼ぐ力(純利益 45 億円 ÷ k 6.5%)から上限の約 7.0 割(9.7 倍)に置いた。市場の倍率は使っていない。利益が減る事業なので、1÷k に届かない水準に置いた。
確率:空洞化・値下げ競争・買収の失敗が重なる構造的な負けの筋書き。起これば痛いが、この事業の堅さからは 1 割強にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
廃液・廃油・汚泥のリサイクル(本体・設備洗浄を含む)
工場の廃液・廃油・汚泥を引き取り、燃料・再生油・金属にする国内の主力。タンクや設備の洗浄(システム機工)を含む。
| 数量取引工場数(百工場) | 価格1 工場あたり年間売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 64.5 | 7.07 | 456 | 116 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 9.47 | 663 | 172 |
取り方:取引工場は 2025 年 2 月期に 6,201、2026 年 2 月期は 270 前後の増加を見込む計画から 6,450 と置いた。売上 718 億円から子会社の分を引き、本体と設備洗浄で 456 億円と推定した(開示のセグメントは 1 つ)。営業利益は本体の経常利益 127 億円(2027 年 2 月期計画)の水準から 116 億円とした。1 工場あたりの売上には、処理量と処理料と再生品の売値が混ざる。
土壌・PCB・廃プラの環境ソリューション(ダイセキ環境ソリューション)
汚染土壌の調査・浄化、PCB の処理、廃プラスチックの再資源化。2025 年に完全子会社化した。
| 数量土壌・廃棄物の取扱量(万トン、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 150 | 1.43 | 215 | 24 |
| 10 年後 中立 | 165 | 1.92 | 317 | 38 |
取り方:子会社の 2026 年 2 月期中間の売上 114.6 億円・営業利益 12.5 億円の倍から、年の売上 215 億円・営業利益 24 億円と置いた。取扱量は、法対象の汚染土壌 328 万トン(令和 5 年度)にその外の土壌と廃プラ、PCB を加えて 150 万トンと推定。1 トンあたり売上は 1.4 万円ほどになる。
鉛リサイクル(ダイセキ MCR)
使用済みの鉛バッテリーから再生鉛を作る。設備はほぼ満杯。
| 数量再生鉛の出荷量(万トン) | 価格1 トンあたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1.4 | 34 | 47 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 45 | 67 | 9 |
取り方:会社概要の売上 47 億円と、年間出荷 1.4 万トンから、1 トンあたり 33.6 万円と置いた。営業利益は鉛の相場と設備の償却で振れるので 6 億円と推定した。
リスクと懸念
国内の製造業の縮み
ダイセキの客は国内の製造工場だ。人口減と生産の海外移転で、従業員 100 人以上の工場は 10 年で 1 割ほど減ると筆者は見る。取引工場のシェアが上がっても、母数が減れば数量の伸びは止まる。最も大きな構造上のリスクで、筆者は悲観の筋書きの中心に置いた。
処理料の値上げが物価に追いつかない
人件費と運送費は物価で上がる。処理料の改定が遅れれば、営業利益率は少しずつ削られる。工場にとって廃液処理は小さな費用だが、競合が値下げで攻めると改定が難しくなる。再生燃料の売値は相場で動き、利益率の振れを大きくする。物価上昇が続く世界では、この改定力の差が 10 年後の利益に効く。
会社計画の未達が続く
2026 年 2 月期は売上・利益とも会社計画を下回った。2027 年 2 月期は営業利益 15% 増の計画で、前期の 2% 増から大きく加速する。取引工場の増加と値上げを前提にしており、ずれると、増益の期待が大きく崩れる。
M&A の失敗と資本配分
大阪油化工業への TOB は不成立で、上場子会社の取り込みには 5 割超のプレミアムを払った。次の大型案件で高い値段を払えば、ROE が下がる。純現金は 112 億円と薄く、借入を伴う大型買収は、利払いの増加という形でも重くのしかかる。
子会社の事業の先細り
ダイセキ環境ソリューションは PCB の処理が期限に向かい、土壌市場も年 860 億円と小さい。ダイセキ MCR の鉛バッテリーは、電動化で長期には先細りだ。この 2 つを合わせて売上の 3 割強を占め、本体の穴を埋める力は弱く、2 つの事業の先細りは本体への依存を強める。
再生燃料の出口と規制
再生燃料は主にセメント工場へ売る。セメント業界の生産縮小や、脱炭素による燃料・原料の見直しが起きれば、出口の価格と数量が揺れる。廃棄物の処理に関する規制の変更も、費用と競争条件を変える。出口の一社への依存が高まるほど、価格交渉力は弱くなる。
今後の分かれ目
- 2027 年 2 月期に営業利益 168 億円を計画どおり達成する
- 計画の信頼性が戻り、やや強気・強気の筋書きの確度が上がる。
- 取引工場の新規開拓が年 200 を下回る
- シェア 3 割の目標が遠のき、やや弱気の筋書きが現実味を帯びる。
- 廃液の処理料の改定が物価並みに通らない
- 利益率が 20% を割り込み、中立の利益水準が下振れする。
- 次の M&A に高いプレミアムを払う
- ROE の押し下げが確定し、資本配分への評価が下がる。
- セメント業界など出口の買い手が燃料の受け入れを絞る
- 再生燃料の売値と数量が崩れ、悲観の筋書きに近づく。
- 大手の廃棄物会社や商社が TOB を仕掛ける
- 買収の値段で見直される可能性があるが、本質価値の計算は変えない。
見ておくもの
- 取引工場の数と新規取引の件数(毎期の決算説明資料)
- ダイセキ本体の経常利益と、処理料の改定の状況
- ダイセキ環境ソリューションの利益率(土壌・PCB・廃プラの内訳)
- ダイセキ MCR の鉛地金の出荷量と鉛の相場
- 自社株買いの実施状況と配当性向
- M&A の発表と買収の値段
倍率と資本コストの決め方
自己資本は今の値に期間の純利益を足して還元を引いて流し、ROE は結果として出した。k は基本 7.5% に quality −0.25% を足した 7.25%、g は k−3.5% の 3.75%、残る割合は標準の 1/2。中立は正当化 PER の約 8.5 割に置き、今の PER・PBR や同業の倍率は使っていない。純現金は 112 億円で時価総額の 7% と小さく、運転資金や次の M&A に要るので、余った現金としては分けなかった。数量は取引工場数など実質、価格は物価 3% の名目で積んだ。計算の結果が今の値段に近かったが、寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 18.8→21.34 倍・やや楽観 PER 16.9→20.44 倍・中立 PER 15.3→19.74 倍)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.25% を足して 7.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 6.50%。