結論
サンゲツは壁紙・床材・カーテン生地を作り、全国の内装工事店やハウスメーカーに売る内装材の最大手だ。筆者の結論は「やや割高」。事業の質は高いが、10年先の稼ぎはいまの利益水準を維持するのが精いっぱいで、今の時価総額はそこまでを織り込んでいる。
稼ぎの源は、壁紙の見本帳を握っていることにある。内装工事店は見本帳から商品を選ぶ。置いてもらえれば、同じ型番を毎回注文してくれる。この習慣が、原材料高に合わせた値上げを通してきた力の土台だ。2023年3月期以降、営業利益は80億円台から190億円前後に跳ね上がった。
ただし、この利益は需要が伸びたからではなく、値上げで作ったものだ。新設住宅は人口減で細る。値上げの余地も、顧客が内装の予算を削れば縮む。筆者は数量が10年で1割強減り、価格が物価並みに上がって、営業利益は230億円前後にとどまると見る。
救いは財務だ。226億円の純現金があり、自己資本比率は6割を超える。配当性向60%以上という方針で、現金は着実に株主へ戻る。海外が黒字化して北米で伸びれば上振れるが、赤字続きの国内エクステリアと海外には、まだ証明が要る。割安と言えるほどの安全域は、今の値段にはない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、サンゲツは「いい商売だが、成長しない商売」だ。まず商売の質を見る。見本帳という習慣が顧客を固定し、値上げが通る。借金が無く、利益の6割以上を配当で返している。オーナーとして持ち続けたい会社の条件は、かなり満たしている。
次に、10年後も同じ稼ぎが続くかを問う。ここに疑問がある。新設住宅は細る。値上げはいつまでも続けられない。利益率は値上げが先導してきたので、物価の落ち着く局面で戻りやすい。筆者は10年後の営業利益を、いまと同じ水準か少し上と置く。成長は物価の分だけで、数量は減る。
三つ目は価格だ。成長しない会社に払える倍率は、1÷資本コストが目安になる。今の時価総額は、そこに値上げ継続と海外の黒字化まで織り込んだ水準だ。純現金が時価総額の約12%あることは安全域になるが、それでは足りない。
買い値としての結論は、楽観の筋書きでも今の水準を大きく超えず、中立では下回る、だ。いい会社だが、今の値段では安全域が小さい。海外が本当に稼ぎ始めたことを確かめるまでは、慎重を保つ。
何で稼ぐ会社か
サンゲツの売上のおよそ8割は国内インテリアだ。壁紙(壁装材)、床材、カーテンなどのファブリックを、約1.2万点のオリジナル商品として企画し、メーカーから仕入れて、全国の内装工事店・工務店・ハウスメーカー・設計事務所に卸す。売上の中心は住宅だが、オフィスや店舗、病院などの非住宅も大きい。
商売の勘所は見本帳と在庫だ。内装工事店は、サンゲツの分厚い見本帳から選び、同じ商品を指名で買う。商品は国内の物流拠点に在庫を持ち、少量でも早く届ける。この手間は、メーカーが工事店ごとに対応するより効率がよい。
海外は、北米・東南アジア・中国で壁装材などを売る。売上は約350億円と全体の約17%だが、長く赤字で、2026年3月期に赤字がほぼ消えた。ここを中計の成長の柱に置いている。
国内エクステリア(庭・外構。子会社のサングリーンが担う)は売上が約70億円と小さく、利益は薄い。2026年4〜6月期は営業損失だった。足を引っ張るが、全体の利益を左右する規模ではない。
仕入れ先は国内外のメーカーで、サンゲツは図柄や機能を指定して作らせる。企画力と在庫の責任を持つことで、単なる問屋ではなく、商品を設計する卸として振る舞う。
優良さと弱いところ
サンゲツの強みは、顧客が変えにくいことだ。壁紙の国内最大手で、推定のシェアは4割台とみられる。競合には東リ、リリカラ、シンコールなどがいるが、見本帳の品ぞろえ、在庫、全国の営業網で並ぶ会社は少ない。内装工事店にとって、サンゲツの見本帳に載っていることが商品選びの出発点になっている。
値決めの力も実績がある。2021年に13〜18%の値上げを実施し、2024年末にも改定を通した。2026年7月には、さらに大きな改定を計画していると会社は説明している。原材料の塩ビ樹脂や物流費が上がっても、利益率を守れるのは、値上げで顧客が逃げにくいからだ。
資本の使い方は堅実だ。借金は少なく、純現金は226億円ある。還元は、前期並みの配当を下限にして、配当性向60%以上を目安にしている。
弱みは三つある。第一に、市場が小さくなることだ。新設住宅は人口とともに減る。第二に、利益の水準が上がりすぎたことだ。営業利益率は過去、3〜6%台が長かった。9〜10%の今は、値上げの余地が残っている間の数字だ。第三に、海外とエクステリアで、買収や投資の成果がまだ見えていない。筆者は、堀は厚いが広がらない、と見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の内装材市場は、新設住宅の着工戸数とほぼ連動して動く。人口減で着工は長く細り、市場は縮小傾向にある。会社も、市場全体は縮むと認めている。支えは二つある。ひとつはリフォーム・リニューアルだ。築年数がたった住宅やビルの張り替え需要は、新築より景気に左右されにくい。もうひとつは非住宅で、オフィス回帰や店舗の改装が、一定の需要を作る。
価格は上がる方向にある。壁紙の原料は塩ビ樹脂と可塑剤で、ナフサ(石油の一次製品)と為替の影響を受ける。物流費と人件費も上がる。これを価格に乗せられるかが、利益を分ける。業界は少数の大手が寡占しており、値上げは一斉に進みやすい。
競合のうち、東リは床材と壁紙の両方を持つ。リリカラは卸とメーカーの機能を併せ持つ。外からの脅威は、海外製の安い壁紙と、ネット通販だ。ただし内装工事は品番を指定して発注するので、卸の機能を完全には置き換えにくい。
サンゲツは中計で、キャッシュ創出と、戦略商品(フィルム・機能性床材・椅子生地)の拡大を掲げる。戦略商品は売上が445億円で、年7%近く伸びた。この比率が上がれば、住宅の縮小を少し相殺できる。
資本政策と M&A
還元は厚い。前期並みの配当を下限とし、配当性向60%以上を目安にする。2027年3月期も同額の予想だ。自社株買いは「機動的に検討」という言い方にとどまる。借金は少なく、期末の現金は350億円ある。
成長の投資は、海外でのM&A(買収)に重点を置く。国内の主力は、買って伸ばす余地が小さいからだ。ただし海外は、これまで赤字が続いた。買収の価格と、買った会社を立て直す力が問われる。筆者は、ここで失敗しないことが、中計の達成より重要だと見る。
政策保有株や大株主の動きは、今回の調べで確認できなかったので書かない。親会社はなく、独立系の会社だ。キヤノンマーケティングジャパンのような親子上場の歪みは無い。一方で、純現金と高い自己資本比率は、買収の標的としては魅力になり得る。ただし、これまでに具体的な提案は確認できていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
サンゲツの利益は、値上げで作った一過性のものではない。見本帳と在庫、全国の営業網という仕組みの上で、原材料高を価格に乗せ続けてきた結果だ。2023年3月期以降の営業利益率は9〜11%で安定し、会社は中計で10%を最終年度の目標にしている。
海外の黒字化は、これから効く。営業損失は8億円から0.4億円まで縮み、北米は好調だ。中計の目標は、営業利益30億円。M&Aで北米の事業を買い足せば、国内の縮小を上回る成長が見込める。
国内も、市場が縮むからといって、シェアが落ちるわけではない。縮む市場で最大手が残れば、仕入れ・在庫・物流の効率でさらに差がつく。戦略商品は年7%近く伸び、リフォームと非住宅に重心が移る。
財務は鉄壁だ。純現金226億円、配当性向60%以上、配当は前期並みが下限。値上げが続き、海外が目標どおりに30億円を稼げば、2030年に営業利益250億円という中計は、十分に届く。10年後の利益は今より3割増え、PERも市場の評価を受けて上がる。
慎重な見方
サンゲツの利益は、値上げが作った。営業利益は80億円台から190億円前後に倍増したが、数量はむしろ減っている。値上げの余地が無限でない以上、利益の水準も維持できない。顧客が内装の予算を削る、海外製の安価な商品に切り替える、塩ビ樹脂の相場が落ちて競合が値下げに動く、のどれかで利益率は戻る。
新設住宅は構造的に細る。着工が今の水準から2割減れば、見本帳の強みは、少ない需要を分け合う力にしかならない。リフォームと非住宅が、新築の減少を完全に補う根拠は薄い。
海外とエクステリアは、証明が済んでいない。営業損失がほぼゼロになったのは、構造改革のおかげで、成長ではない。中計の海外目標は、売上350億円を540億円に伸ばし、営業利益を30億円にする、という高いものだ。M&Aは価格が高くなりがちで、失敗すれば自己資本を削る。
そして今の時価総額は、これらの不確かな上振れを先取りしている。10年後の営業利益が今と同じ190億円だとしても、倍率は縮む。ROEは、資本コストを上回ったとしても、堀が広がらないので、価値は薄れる。
どちらに重みを置いたか
筆者は、慎重な見方がやや強いと判断した。値上げと海外の黒字化は、すでに実績が出ており、強気の見方を無視できない。だが10年の数量は構造的に細り、価格の上昇は物価並みが基本になる。利益率は、値上げで先導した分が戻る方向に傾く。
確率は、楽観を10%、やや楽観を22%、中立を36%、やや悲観を22%、悲観を10%と置いた。悲観は、住宅の縮小と海外の失敗が重なる筋書きで、確率を絞った。純現金と配当性向の高さが、下側の深さを抑えるからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,753 円2,795 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,682 円989 億円)。 今の値に割り戻すと 3,615 円2,126 億円、今との差 +13.7%、 期待の年率 +7.3%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,165 円4,802 億円 | 2,210 円1,300 億円 | +226.3% | +12.6% | 1,038 円610 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,723 円3,954 億円 | 1,938 円1,140 億円 | +172.4% | +10.5% | 1,906 円1,121 億円 |
| 中立 | 36% | 5,357 円3,151 億円 | 1,683 円990 億円 | +121.4% | +8.3% | 2,535 円1,491 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,143 円1,260 億円 | 1,547 円910 億円 | +16.0% | +1.5% | 812 円477 億円 |
| 悲観 | 10% | 571 円336 億円 | 884 円520 億円 | −54.2% | −7.5% | 146 円86 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,753 円2,795 億円 | 1,682 円989 億円 | +102.4% | +7.3% | 6,435 円3,785 億円 |
今の株価時価総額 3,180 円1,870 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 値上げが定着し、海外が第二の柱になる 利益 250 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 8,165 円4,802 億円
国内は、リフォームと非住宅の底堅さが新築の減少をほぼ補い、数量の落ち込みは 1 割以内にとどまる。戦略商品の比率が高まり、値上げで稼ぐ会社から、高付加価値の商品で稼ぐ会社に変わる。営業利益率は 12% を超える。
海外は、北米での買収が当たり、売上が 750 億円を超える。営業利益は 70 億円近くまで伸び、国内に次ぐ収益の柱になる。エクステリアも黒字に定着する。
配当性向 60% 以上は守られ、自社株買いも加わる。会社が掲げた ROE 14% に近い水準に届く。ただし、これは市場の縮小と原材料の高騰という二つの向かい風を、どちらも押し返した場合の姿で、起きる確率は高くない。
- 国内インテリア:数量 3,801(国内の内装材市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.40(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 2,183 億円・営業利益 273 億円。数量 0.95 倍・価格は物価を上回る 1.40 倍(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 海外:数量 5,597(海外の対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.34(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 750 億円・営業利益 68 億円。北米の買収が成功・数量 1.6 倍(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 国内エクステリア:数量 1,746(エクステリア対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.34(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 117 億円・営業利益 7 億円。黒字に定着(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
倍率:事業の純利益 250 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍。全体の PER 18.91 倍、時価総額 4,728 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの定着と海外の M&A の成功が両方そろう必要があり、住宅の縮小も軽くはない。確率は 10% にとどめた。
やや楽観 22% 海外が黒字化し、国内の縮小を緩やかに受け止める 利益 209 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 6,723 円3,954 億円
国内は、新設住宅の減少を、リフォームと非住宅が一部だけ補う。数量は 10 年で 1 割弱の減少にとどまり、価格は物価をやや上回って 1.37 倍になる。営業利益率は 11% 台を保つ。
海外は、北米が伸びて、売上が 630 億円前後まで増える。営業利益は 50 億円に近づき、中計の 30 億円を上回る。ただし、買収に頼る成長は限られ、国内を逆転するほどにはならない。
エクステリアは小さな黒字にとどまる。還元は配当を中心に、会社の方針である配当性向 60% 以上を守る。営業利益は 290 億円、ROE は 11% 台になる。中計の目標(営業利益 250 億円・ROE 14%)に、10 年かけて届く姿だ。
- 国内インテリア:数量 3,681(国内の内装材市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.37(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 2,069 億円・営業利益 238 億円。数量 0.92 倍・価格 1.37 倍(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 海外:数量 4,724(海外の対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.34(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 633 億円・営業利益 48 億円。北米が伸び、数量 1.35 倍(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 国内エクステリア:数量 1,612(エクステリア対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.34(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 108 億円・営業利益 5 億円。小さな黒字(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
倍率:事業の純利益 209 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍。全体の PER 18.31 倍、時価総額 3,827 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の黒字化と値上げの定着は実績が出ており、実現する可能性は十分にある。会社の中計の達成度に近い筋書きとして、楽観より厚く置いた。
中立 36% 値上げは物価並みにとどまり、数量の減少が利益を抑える 利益 170 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 5,357 円3,151 億円
国内は、新設住宅の着工が人口とともに減る。リフォームと非住宅が下支えして、数量の減少は 10 年で 1 割強にとどまる。価格は物価並みの 1.34 倍。サンゲツは壁紙の最大手として、シェアを守り切る。
営業利益率は 10% 強で、利益は 200 億円を少し超える水準に落ち着く。2026 年から 2027 年にかけて、原材料の高騰と値上げの時間差で、利益は一時的にぶれる。
海外は営業利益 30 億円に達し、中計の目標と同水準になる。ただし、国内の大きな縮小を補うことはできない。エクステリアは小さな黒字にとどまる。
全社の営業利益は 236 億円で、2026 年 3 月期の 194 億円から、物価の分だけ増える。経営は堅実で、配当性向 60% 以上を維持する。10 年後のサンゲツは、よく稼ぐが成長しない「優良な中堅」として評価される。
- 国内インテリア:数量 3,520(国内の内装材市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.34(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 1,935 億円・営業利益 203 億円。数量 0.88 倍・価格は物価並み 1.34 倍(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 海外:数量 4,022(海外の対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.34(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 539 億円・営業利益 30 億円。中計の 30 億円とほぼ同水準(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 国内エクステリア:数量 1,463(エクステリア対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.34(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 98 億円・営業利益 3 億円。小さな黒字(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
倍率:事業の純利益 170 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.46 倍、時価総額 2,968 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新設住宅の縮小と、物価並みの値上げが基本線。海外の黒字化は進むが、国内の減少を補うほどではない。強気と慎重の言い分が拮抗した落としどころとして最も厚くした。
やや悲観 22% 値上げが戻り、利益率が一段下がる 利益 111 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,143 円1,260 億円
原材料の塩ビ樹脂が落ち着き、競合が値下げで数量を取りに来る。サンゲツは、シェアを守るため値上げの一部を戻す。価格は物価を下回る 1.30 倍にとどまり、数量は新設住宅の減少に引かれて 2 割減る。
営業利益率は 8% 台に下がり、国内の営業利益は 145 億円になる。過去 10 年の中央値に近い水準に戻る姿だ。
海外は、北米の伸びが想定を下回り、営業利益は 10 億円に届かない。エクステリアは赤字から抜けられない。全社の営業利益は 154 億円。配当性向を保てば、還元は増えず、自己資本が積み上がって ROE は資本コストを下回る。
- 国内インテリア:数量 3,201(国内の内装材市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.30(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 1,707 億円・営業利益 145 億円。数量 0.80 倍・値上げの一部が戻る(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 海外:数量 3,500(海外の対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.30(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 455 億円・営業利益 9 億円。伸びが想定を下回る(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 国内エクステリア:数量 1,308(エクステリア対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.30(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 85 億円・営業利益 0 億円。収支とんとん(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
倍率:ROE 7.1% は k 7% を下回る。RONIC は 7.6%、g 3.0% で正当化 PER は約 12 倍だが、ためた利益が額面未満の価値になるので、倍率は 10 倍に置いた。
確率:原材料の相場が緩み、競合が値下げに動けば、値上げで先導した利益は戻る。新設住宅の減少も、補いが小さければ大きく効く。慎重な見方の言い分が最も当たりやすい筋書きとして、中立に次ぐ確率にした。
悲観 10% 住宅市場の縮小と海外の失敗が重なる 利益 42 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 571 円336 億円
新設住宅の着工が今の半分近くまで細り、リフォームと非住宅の底堅さでも補い切れない。数量は 4 割近く減る。海外の安価な壁紙と、ネット通販を使った工事店の直接調達が広がり、見本帳の強みが弱まる。値上げは通らず、価格は物価を下回る 1.20 倍にとどまる。
営業利益率は 5% に落ちる。海外では買収した会社の立て直しに失敗し、営業損失が続く。エクステリアも赤字だ。営業利益は 56 億円まで減る。
配当は削減される。それでも、純現金 226 億円と、自己資本の厚さが、倒産の心配を遠ざける。サンゲツは、寡占の地位は保つが、成長せず、利益も細る事業会社として評価される。
- 国内インテリア:数量 2,480(国内の内装材市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.20(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 1,221 億円・営業利益 61 億円。数量 0.62 倍・価格は物価を下回る 1.20 倍(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 海外:数量 2,800(海外の対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.20(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 336 億円・営業利益 −3 億円。買収の立て直しに失敗(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
- 国内エクステリア:数量 1,017(エクステリア対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor))× 価格 1.20(平均単価の指数(今 = 1.00))→ 売上 61 億円・営業利益 −2 億円。赤字が続く(市場×シェアの実質量。シェアの変化は数量に含む)
倍率:ROE 3.2% は k 7% を大きく下回り、稼ぐ力は事業の純利益を k で割った約 525 億円まで。成長のない会社の倍率として 8 倍に置いた。純現金と売れる資産の税後は別に床として見る。
確率:新設住宅の大幅な縮小と、海外の買収の失敗が重なる筋書き。純現金と高い還元性向が、下側の深さを抑えるので 10% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内インテリア
壁紙・床材・ファブリックを企画し、内装工事店・ハウスメーカー・設計事務所に卸す。売上の約8割、利益のほぼ全部を稼ぐ。
| 数量国内の内装材市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor) | 価格平均単価の指数(今 = 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 1.00 | 1,641 | 193 |
| 10 年後 中立 | 3,520 | 1.34 | 1,935 | 203 |
取り方:開示の売上 1,641 億円・営業利益 193 億円を、数量(市場の実質規模 × シェア。開示が無いので推定)× 単価の指数で置いた。市場の実質規模は壁装材・床材・ファブリックの合計を約 4,000 億円規模、シェアは 4 割台と推定。 数量欄は市場の実質規模、rev_factor は今のシェア。
海外
北米・東南アジア・中国で壁装材などを売る。北米が主力。長く赤字だったが、2026/03 期に赤字がほぼ消えた。
| 数量海外の対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor) | 価格平均単価の指数(今 = 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,500 | 1.00 | 350 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4,022 | 1.34 | 539 | 30 |
取り方:開示の売上約 350 億円・営業利益 −0.4 億円。数量は、北米の市場規模 × シェアの合計を実質億円で置いた。 数量欄は市場の実質規模、rev_factor は今のシェア。
国内エクステリア
庭・外構の施工と資材を扱う子会社サングリーンが中心。東海と首都圏に注力。
| 数量エクステリア対象市場の実質規模(億円・今の値段)× シェア(シェアは rev_factor) | 価格平均単価の指数(今 = 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,460 | 1.00 | 73 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,463 | 1.34 | 98 | 3 |
取り方:開示から直接は出ない。全社売上 2,064 億円から国内インテリアと海外を引いた残りを売上、全社営業利益 194 億円の残りを営業利益と推定した。2026 年 4〜6 月期は営業損失と報じられている。 数量欄は市場の実質規模、rev_factor は今のシェア。
リスクと懸念
新設住宅の構造的な減少
売上のおよそ8割を占める国内インテリアは、新設住宅の着工に連動する。人口減で着工が今の2割以上減ると、見本帳の強みは、細る需要を分け合う力にしかならない。リフォームと非住宅が、新築の減少を完全に補える保証は無い。
値上げの限界と原材料相場の反転
2023年3月期以降の利益は、値上げが作った部分が大きい。塩ビ樹脂やナフサの相場が緩み、競合が値下げに動けば、先導してきた利益率が戻る。顧客が内装予算を削る局面でも、値上げは通りにくい。
海外の M&A の失敗
中計は、海外の営業利益を 30 億円まで伸ばすために、買収を重視する。買収価格が高くなれば、自己資本を削る。海外は長く赤字だった。赤字が消えたのは構造改革の結果で、成長の証明はまだ先だ。
国内エクステリアの赤字
売上は約70億円と小さいが、2026年4〜6月期は営業損失だった。体制を刷新したばかりで、利益化の道筋は確認できていない。全体の利益を左右する規模ではないが、経営の資本配分の目を測る材料になる。
新リース会計基準の影響
2028年3月期から、賃借している倉庫や事務所が、使用権資産とリース負債として貸借対照表に載る。営業利益は少し増え、純現金は見かけ上減り、自己資本比率も下がる。価値は変わらないが、数字の形が変わる。
中東情勢と原材料・物流費
会社は中計の目標に、中東情勢によるコスト上昇を織り込んでいないと説明する。原材料と物流のコストが急に上がると、値上げが追いつくまでの数四半期、利益が圧迫される。2027年3月期は減益予想だ。
今後の分かれ目
- 2026年7月の値上げが、数量の大きな減少なしに通る
- 価格の強さが再確認され、やや楽観・楽観の確率を上げてよい。利益率は10%を超えて定着する。
- 海外の営業利益が、中計どおり30億円に近づく
- 海外が第二の柱になる筋書きが現実味を増す。ただし、買収に頼る成長か、既存事業の成長かを見分ける。
- 新設住宅の着工が、年間70万戸を下回る
- 国内の数量が、中立の想定よりも速く減る。中立から、やや悲観へ確率を移す。
- 原材料相場が下落し、競合が値下げで数量を取りに来る
- 値上げで作った利益が戻る。やや悲観の筋書きに近づく。
- 大型の海外買収を、高い価格で発表する
- 自己資本が削られるリスクが高まる。買収後の立て直しの実績が出るまで、悲観の確率を厚くする。
- 自社株買いを、定期的に実施する方針に変える
- 純現金が株主に戻る確度が上がる。還元の評価が上がる。
見ておくもの
- 2026年7月の価格改定の浸透度と、受注数量の変化
- 新設住宅着工戸数と、リフォーム・非住宅の需要
- 海外セグメントの営業利益(中計の30億円)と、買収案件
- 国内エクステリア(サングリーン)の損益
- 配当性向と、自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額(約1,880億円)や過去のPER・PBRは倍率の根拠に使っていない。セグメントごとに数量(市場の実質規模×シェア)と価格(物価並みを基本)を10年先まで積み、営業利益率は値上げで先導した分の戻りを見て置いた。倍率は、事業のROE・RONIC・資本コスト・gから正当化PERを出し、上限の7〜10割で利益の質に応じて決めた。中立のROEが資本コストを上回るので、PERは1÷kを下回らせていない。結果として中立が今の時価総額を下回ったが、これは今の値段に寄せなかった結果で、割高を作るための逆算はしていない。リースは新会計基準(2028年3月期から)で数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→18.91 倍・やや楽観 PER 13→18.31 倍・中立 PER 12.5→17.46 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足した。会社が自らの株主資本コストを 6〜8% と認識していることとも矛盾しない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.00%。