結論
双葉電子工業は、金型の部品と産業用の無線機器を作る会社だ。売上の 6 割強が生産器材、4 割弱が電子機器である。ホビー用ラジコンの「Futaba」ブランドでも知られる。筆者の結論は、10 年後の価値は今の値段を 4 割ほど下回る、というものだ。
本業は 7 年続けて営業赤字である。2026 年 3 月期も 23 億円の赤字で、会社は 2027 年 3 月期も 13 億円の赤字を見込む。構造改革で費用を 56 億円削ったが、売上が減って追いつかない。
一方で、財布は厚い。現金が 362 億円、投資有価証券が 173 億円あり、合計は時価総額の 284 億円を上回る。自己資本比率は 77% だ。
ただ、その資産が株主に届くかは別の問題だ。自社株買いの実績はなく、配当も小さい。会社は持ち合い株の売却と還元の強化を打ち出したが、結果はまだ出ていない。
資産の厚みは安全域になる。だが、稼げない会社の現金は、時間とともに価値が目減りする。筆者は、その点を重く見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安全域は資産にある。現金と持ち合い株の合計は、時価総額を上回る。自己資本比率は 77% で、財務が崩れる心配は小さい。
ただ、事業の質には疑問がある。営業利益は 7 年続けて赤字で、ROE の中央値はマイナスだ。事業の入れ替えを重ねたが、稼ぐ力はまだ戻らない。
問題は、資産が誰のものかだ。会社は、持ち合い株の売却と還元の強化を打ち出した。だが、これまでの自社株買いはなく、配当も小さい。経営者が資本を株主のために使うかを問えば、実績がない以上、評価は半分にとどまる。事業の質と資本配分の両方で、証明すべき点が残っている。
払う値段の安全域を問う。現金の半分だけを認めても、事業が小さな黒字にとどまるなら、10 年後の価値は今の値段を下回る。資産が還元されるかどうかが、価値を決める会社である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。電子機器と生産器材だ。
電子機器は、売上の 4 割弱を占める。表示装置に制御基板を組み合わせた複合モジュールと、その受託製造が中心だ。産業用ラジコンは、トラッククレーンや農薬散布のヘリ、ドローンを遠隔操作する無線機で、ホビー用ラジコンの送受信機やサーボもある。産業用ドローンと小型サーボを扱うロボティクス製品が、成長の柱だ。有機ELディスプレイは自社生産をやめ、事業のやり方を変えている最中である。
生産器材は、売上の 6 割強だ。プレスや樹脂成形の金型に使う、ダイセットやモールドベースなどの部品を売る。金型内の圧力を測るシステムや、射出成形の AI など、生産の合理化機器も育てている。主な市場は韓国と中国、ASEAN、日本だ。
海外売上の比率は、電子機器が 52%、生産器材が 57%。従業員は連結で 2,384 人にのぼる。
2026 年 3 月期の売上は 430 億円で、前の年から 11% 減った。蛍光表示管とタッチセンサーの事業を終えたことが響いた。営業損失は 23 億円である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、無線とディスプレイの技術と、金型部品の精度、世界に広げた供給網だ。ホビー用ラジコンのブランドは、長く愛されている。建設機械向けの無線リモコンでは、低価格と設計の自由度を武器にする。
弱みは、稼ぐ力そのものだ。売上総利益率は 16% で、販管費が 21% を占める。営業利益は 7 年続けて赤字である。生産器材の主力、モールドベースは、安い中国製品との価格競争に負けている。
事業の入れ替えも、うまくいっていない。有機ELの自社生産、蛍光表示管、タッチセンサーを続けて終わらせた。新しい柱の産業用ラジコンやロボティクスは、まだ小さい。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値はマイナスだ。自己資本は 838 億円と厚いが、その資本が稼ぎを生んでいない。
経営は、改革を急いでいる。海外の拠点を整理し、持ち合い株の縮減を決めた。ただ、実績が伴うまでは、評価を上げにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
生産器材の需要は、自動車と家電の生産で決まる。金型は、新しい車種や製品の立ち上げに合わせて動く。主力の韓国は、自動車と家電の低迷に加え、安い中国製品の流入で苦しい。国内も、自動車の回復が遅れている。半導体産業の需要は、回復の兆しがある。
電子機器では、新しい需要が出ている。産業用の無線リモコン市場は、建設機械と農業機械の遠隔操作で、年 6% ほど伸びると会社はみる。ドローンは、点検や防災の用途で伸び、年 20% の成長を見込む。防衛用の無人機向けのサーボも、需要が増えている。米国国防総省が安全性を認めたリストに、同社の送受信機が載った。
逆風もある。ホビー用ラジコンは、米国の関税で市場が冷えている。受託製造は、米国への生産回帰が追い風になる期待がある。
10 年後を考える。金型は、中国製品に主導権を渡し続ける恐れがある。成長事業が、縮む既存事業の穴を埋められるかが、分かれ目になる。同業の比較資料は見つからなかった。ただ、金型部品の世界では、ミスミのような大手と、韓国・中国の地場メーカーが入り乱れ、価格の決め手を持つ会社は少ない。
資本政策と M&A
資本の使い方が、最大の論点だ。現金は 362 億円、投資有価証券は 173 億円ある。有利子負債はほぼない。自己資本は 838 億円で、時価総額の 3 倍近い。
会社は、資本効率の改善を打ち出した。2026 年 6 月、政策保有株、つまり取引先などの持ち合い株を、2030 年 3 月末までに連結純資産の 10% 未満へ減らすと決めた。上場株式は 111 銘柄ある。売却益は、2027 年 3 月期の特別利益に入る見込みだ。
子会社の不動産も売った。2026 年 3 月期に 34 億円の売却益を出した。
還元は小さい。2026 年 3 月期の配当性向は 30% で、前の年の配当は半分ほどだった。自社株買いの実績はない。長期の目標は ROE 8%、PBR 1 倍以上だが、道のりは遠い。
韓国と中国の子会社を整理し、基幹システムの刷新に約 15 億円の特別損失も計上した。MAZIN とは資本提携をした。
子会社の少数株主の持分は 114 億円ある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の値段は、現金と持ち合い株の合計より安い。会社は、資本効率の改善に動いている。2026 年 6 月に、持ち合い株を 2030 年 3 月末までに連結純資産の 10% 未満へ減らすと決めた。ROE 8%、PBR 1 倍以上の目標も掲げる。売却で得た資金は、還元と成長投資に回る。
構造改革で、すでに費用を 56 億円削った。韓国と中国の赤字の拠点は、解散で片づく。その効果は、2027 年 3 月期から出る。
成長の芽もある。産業用の無線リモコンは、米国の大手建機メーカー向けに量産を始めた。小型のサーボとドローンは、防衛・点検の需要が伸びる。送受信機は、米国国防総省の認定リストに載った。
これらが育てば、10 年後に営業利益率が 5% を超える。資産を還元し始めれば、割安は一気に解消に向かう。会社が掲げた ROE 8% が実現すれば、自己資本 838 億円に対し、利益は 60 億円を超える計算になる。
慎重な見方
本業の赤字は、7 年続いている。構造改革で 56 億円を削ったのに、黒字にならなかった。2027 年 3 月期も、13 億円の赤字を見込む。会社が掲げた 2026 年度の営業利益 15 億円の目標は、未達に終わる。
生産器材は、価格競争に負けている。主力の韓国は、自動車と家電の低迷と、安い中国製品の流入で苦しい。モールドベースは、受注を取れなかった。
新しい事業も遅れる。産業用サーボは量産の案件が遅れ、売上の目標に届かなかった。基幹システムの刷新には、約 15 億円の特別損失が出た。
最大の問題は、資産が株主に届かないことだ。過去に自社株買いはなく、配当は小さい。持ち合い株の縮減は、まだ方針にすぎない。現金は、赤字の穴埋めと投資で、目減りしていく。
足元の純利益 25 億円は、土地の売却益のおかげだ。実力ではない。
現金と時価総額を並べて割安と見る向きは、その現金が使われずに眠る可能性を軽く見ている。
どちらに重みを置いたか
資産の厚みと、会社が資本配分を変えようとしている姿勢には、実現性がある。ただ、本業が 7 年赤字で、還元の実績がない点は、割り引かざるをえない。
筆者は、中立を小さな黒字と、資産の半分の還元に置き、確率は慎重側へやや寄せた。強気に 3 割強、慎重に 3 割半だ。強気が実現すれば、資産の価値は今の値段に届くが、中立では 4 割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 639 円271 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 334 円142 億円)。 今の値に割り戻すと 496 円210 億円、今との差 −23.7%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,043 円442 億円 | 660 円280 億円 | +162.0% | +10.1% | 170 円72 億円 |
| やや楽観 | 22% | 856 円363 億円 | 448 円190 億円 | +100.6% | +7.2% | 287 円122 億円 |
| 中立 | 32% | 747 円317 億円 | 330 円140 億円 | +65.7% | +5.2% | 345 円146 億円 |
| やや悲観 | 24% | 336 円142 億円 | 212 円90 億円 | −15.7% | −1.7% | 132 円56 億円 |
| 悲観 | 12% | 224 円95 億円 | 106 円45 億円 | −49.2% | −6.6% | 40 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 639 円271 億円 | 334 円142 億円 | +49.7% | +4.1% | 973 円413 億円 |
今の株価時価総額 650 円276 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 強気:事業が黒字に定着し、資産の還元も進む 利益 33 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,043 円442 億円
産業用ラジコンが建機・農機向けに広がり、ロボティクスは小型ドローンとサーボで防衛・点検の需要を取る。米国への生産回帰で、受託製造も戻る。電子機器の利益率は 8% に乗る。
生産器材は、韓国と中国の整理が終わり、適正売価と合理化機器の拡大で、金型部品の採算が改善する。利益率は 4% になる。全社の営業利益率は 5% 台に上がり、過去 12 年のどの年よりも高い。
政策保有株を売り、手元の余った資金も、自社株買いと配当で株主に戻す。10 年の還元は 280 億円に達し、手元の現金は大きく減る。ROE は 6% 近くまで上がるが、資本コストにはなお届かない。政策保有株の売却は予定より早く進み、成長投資にも資金を回せる。会社の長期目標(ROE 8%・PBR 1 倍)に、少し近づく。
- 電子機器:数量 900(従業員数(人、電子機器))× 価格 28(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 252 億円・営業利益 20 億円
- 生産器材:数量 1,400(従業員数(人、生産器材))× 価格 24(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 339 億円・営業利益 14 億円
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 442 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業の黒字化と、資産の還元の両方が実現する姿。会社が資本配分の転換を打ち出していることを見て、1 割を置いた。
やや楽観 22% やや強気:黒字に戻るが、利益率は低いまま 利益 24 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 856 円363 億円
電子機器は、産業用ラジコンとロボティクスの伸びで、赤字を脱する。利益率は 5% 台だ。生産器材は、整理の効果と適正売価で黒字に戻るが、中国製品との競争で利益率は 2% 台にとどまる。
営業利益は 20 億円ほどで、全社の利益率は 4% を切る。会社が掲げた 2026 年度の目標(営業利益 15 億円)に、10 年かけて届く姿だ。
政策保有株を売り、還元は配当と自社株買いで 190 億円。それでも現金は積み上がる。ROE は 4% 近くで、会社の長期目標 8% には遠い。韓国と中国の整理の費用は、2〜3 年で出きる。その後は、固定費の軽い会社として、小さな黒字を続ける。
- 電子機器:数量 830(従業員数(人、電子機器))× 価格 27(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 227 億円・営業利益 13 億円
- 生産器材:数量 1,380(従業員数(人、生産器材))× 価格 24(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 329 億円・営業利益 8 億円
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 363 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中計の目標に、10 年遅れで届く姿。強気側へ 2 割強を置いた。
中立 32% 中立:小さな黒字にとどまり、資産は半分しか戻らない 利益 17 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 747 円317 億円
電子機器は、産業用ラジコンの伸びで、赤字から小さな黒字に変わる。人員は少しずつ減る。生産器材は、韓国と中国の整理が終わっても、価格競争が続き、利益率は 1% 台にとどまる。
全社の営業利益は 12 億円ほどだ。収益の柱は、本業よりも、現金の利息と持ち合い株の配当、賃料である。
還元は、配当性向 30% 前後の配当に、政策保有株の売却資金を使った自社株買いを足し、10 年で 140 億円になる。現金の多くは手元に残る。ROE は 2〜3% で、資本コストを大きく下回る。10 年後の双葉電子は、資産は厚いが、稼げない会社のままである。整理の費用と基幹システムの刷新費用で、最初の 2 年は赤字が続く。その後に、ようやく黒字へ戻る。
- 電子機器:数量 760(従業員数(人、電子機器))× 価格 27(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 203 億円・営業利益 7 億円
- 生産器材:数量 1,350(従業員数(人、生産器材))× 価格 23(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 314 億円・営業利益 5 億円
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 317 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本業が小さな黒字になり、還元も配当の延長にとどまる姿。最も重い筋書きとして 3 割強を置いた。
やや悲観 24% やや弱気:赤字から抜けられず、現金で穴を埋める 利益 6 億円 · PER 8.1 倍 · 株価時価総額 336 円142 億円
生産器材は、中国製品との価格競争が続き、利益率が改善しない。韓国の整理が終わっても、売上が元に戻らない。電子機器は、産業用ラジコンが伸びても、ホビー用ラジコンと受託製造の落ち込みを埋めきれない。
営業利益は小さな赤字で、現金の利息と配当で、全体を黒字に保つ。人員の削減と事業の整理に、費用がかかり続ける。
還元は配当の水準にとどまり、政策保有株の売却資金も、事業の損失と投資に消える。ROE は 1% に届かない。資産は残るが、使われないまま眠る姿である。基幹システムの刷新費用がかさみ、期待した効率化も思うように出ない。会社は、赤字を営業外の収益でしのぐ。
- 電子機器:数量 700(従業員数(人、電子機器))× 価格 26(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 179 億円・営業利益 0 億円
- 生産器材:数量 1,250(従業員数(人、生産器材))× 価格 22(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 274 億円・営業利益 −3 億円
倍率:余った現金 150 億円を分けると、事業の純利益 3.7 億円(税後利息を除く)・事業の自己資本 585 億円・事業の ROE 0.6%。事業の ROE 0.6% が資本コスト k 8.75% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 11.1 倍。事業が赤字近辺で、伸びも堀も期待できないので、上限の 7 割に置いた。事業 3.7 億円 × 8.09 倍 + 余り 75 億円(帳簿 150 億円 × 戻り方 0.5)で時価総額 103.9 億円。
確率:7 年続いた赤字が、あと 10 年続く姿。過去の実績に照らして、4 分の 1 弱を置いた。
悲観 12% 弱気:構造的に負け、本業の赤字が資産を削る 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 224 円95 億円
自動車と家電の金型需要が縮み、中国製品に値下げで負け続ける。生産器材の売上は、2 割近く減る。電子機器は、有機ELと蛍光表示管の跡を埋める新製品が育たず、受託製造も米国の関税で伸びない。
営業赤字は 10 億円を超え、構造改革の費用も重なる。会社は事業を切り出し、土地や持ち合い株を売って費用に充てるが、株主への還元は配当の最低限にとどまる。
手元の現金も、事業の損失と買収の失敗で、目減りしていく。優良さを失った 10 年である。韓国・中国の整理でも採算は戻らず、追加の事業撤退を迫られる。経営の立て直しに、時間がかかる。
- 電子機器:数量 650(従業員数(人、電子機器))× 価格 24(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 156 億円・営業利益 −5 億円
- 生産器材:数量 1,100(従業員数(人、生産器材))× 価格 20(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 225 億円・営業利益 −7 億円
倍率:本業の赤字が続き、稼ぐ力は現金の利息と配当だけで、床は売れる資産と戻り方で測る。回収後に残る約 200 億円の 5 割弱を、今の自己資本 838 億円に対する PBR 0.113 倍(時価総額 95.0 億円)に置いた。純現金(今 283 億円)を下回るのは、現金が株主に届く保証がないためである。
確率:構造的に負け続ける筋書き。本業の赤字が 7 年続いた実績を見て、1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子機器
複合モジュール・受託製造(EMS)、産業用ラジコン、ホビー用ラジコン、ロボティクス(産業用ドローン・サーボ)、有機ELディスプレイ。
| 数量従業員数(人、電子機器) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 772 | 20 | 154 | −13 |
| 10 年後 中立 | 760 | 27 | 203 | 7 |
取り方:電子機器の売上 154.1 億円(内部取引を含む、決算短信)を、電子機器の従業員 772 人で割って 1 人当たり 20.0 百万円とした。人数は実質の数量、単価は物価で上がる名目。営業損失は 13.2 億円(利益率 −8.6%)。蛍光表示管・タッチセンサーの終息と有機ELの自社生産終了で、売上も人員も縮んでいる途中の数字。
生産器材
プレス・モールド金型用器材(ダイセット・モールドベース)、プレート製品、成形・生産合理化機器(金型内計測・射出成形 AI・ホットランナ)。
| 数量従業員数(人、生産器材) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,484 | 19 | 276 | −10 |
| 10 年後 中立 | 1,350 | 23 | 314 | 5 |
取り方:生産器材の売上 276.0 億円を、生産器材の従業員 1,484 人で割って 1 人当たり 18.6 百万円とした。人数は実質の数量、単価は物価で上がる名目。営業損失は 9.6 億円(利益率 −3.5%)。韓国・中国の拠点の整理が進行中で、人員は今後減る。海外売上は 57%。
リスクと懸念
本業の赤字が続く
営業利益は 7 年連続の赤字で、2027 年 3 月期も 13 億円の赤字を見込む。構造改革で 56 億円を削っても黒字にならなかった。成長事業の立ち上がりが遅れれば、赤字がさらに続き、現金を削る。
価格競争と中国製品
生産器材の主力、モールドベースは、安い中国製品との競争で受注を落とした。韓国市場への依存も大きい。適正売価の政策が、受注の減少とぶつかる。
自動車・家電の需要低迷
金型の需要は、自動車と家電の生産で決まる。国内も韓国も回復が遅れている。半導体向けの回復は期待されるが、規模は限られる。
資産が株主に届かない
現金と持ち合い株の合計は、時価総額を上回る。だが、自社株買いの実績はなく、配当は小さい。持ち合い株の縮減は方針にとどまる。使い道が成長投資や買収に偏れば、価値は目減りする。
新事業の立ち上がりの遅れ
産業用ラジコンとロボティクスは、量産の遅れで計画に届かなかった。ホビー用ラジコンは、米国の関税で市場が冷えた。有機ELの事業スキームの変更も、過渡期にある。
整理と刷新の費用
韓国・中国の子会社の解散と、基幹システムの刷新で、特別損失が出る。2027 年 3 月期の純損失は 39 億円の予想だ。想定を超えれば、自己資本を削る。
為替と営業外収益への依存
2026 年 3 月期の経常損失は 7 億円で、営業外収益 18 億円が営業赤字を支えた。そのうち為替差益は 4 億円ある。円高になれば、この支えは薄くなる。
今後の分かれ目
- 持ち合い株の売却と同時に、大型の自社株買いまたは増配を発表したら
- 強気側の確率を上げ、現金の戻り方を 1.0 に近づけてよい。資産の価値が株主に届く証拠になる。
- 営業利益が 2 期連続で黒字になったら
- 強気・やや強気側へ重みを移す。構造改革の効果が実証されたことになる。
- 産業用ラジコンやロボティクスが、会社計画どおりに量産に入ったら
- 強気側の確率を少し上げてよい。成長の柱が育っている証拠になる。
- 生産器材の営業損失がさらに拡大したら
- やや弱気側へ重みを移す。価格競争に負け続けている証拠になる。
- 現金を使った大型の買収が発表されたら
- 買収先の採算と値段を見て判断する。高値づかみなら、やや弱気側へ重みを移す。
- 第三者が同社を買収する、または株主が資本政策を提案したら
- 条件しだいで、価値は大きく動く。現金の扱いと買付価格を見る。
見ておくもの
- 営業利益(電子機器・生産器材別)の黒字化の時期
- 政策保有株の売却額と、その資金の使い道(還元か投資か)
- 配当と自社株買いの額、総還元性向
- 産業用ラジコン・ロボティクス・成形合理化機器の売上
- 韓国・中国の整理の費用と基幹システム刷新の費用
倍率と資本コストの決め方
数量は電子機器と生産器材の従業員数(実質)、価格は 1 人当たり売上(物価 3% を含む名目)で積んだ。事業は人員の縮小の途中にあるので、人数は中立でわずかに減らした。中立の価格は、電子機器が物価並みの 1.34 倍、生産器材は中国製品との競争と適正売価の政策で 1.25 倍とした。中立の営業利益率は、電子機器 3.5%・生産器材 1.5% で、全社 2% ほどの小さな黒字に置いた。過去 12 年の最高 2.7% を下回る。倍率は k 8.75%・g 4% の式から置き、ROE が資本コストを下回るので上限は 1÷k だ。現金 362 億円のうち、運転資金と整理・刷新の費用を引いた 200 億円を余った現金とし、戻り方は 0.5 とした。投資有価証券 173 億円は、配当が純利益に入っているので足していない。売る方針はあるが、実績がまだない。悲観の床は、戻り方を掛けた売れる資産で測り、純現金を下回る値を認めた。減価償却は物価で増やさず、設備投資(年 11 億〜19 億円)の膨らみは、利益率の低さに含めた。今の株価と PER は、最後に比べただけで、倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。理由は quality_why。事業は傾いているが、財務は厚く存続に疑いはないため、上乗せは付けない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。