結論
クリヤマは、産業用ホースを北米を中心に売る専門商社である。農機・建機向けのゴム・樹脂部品と、スポーツ施設の床材も手がける。売上の約半分は北米で、日本の会社というより北米の流通会社に近い。
筆者の結論は「やや割安」だ。10 年後の中立でも、利益は今より 5 割ほど増える。ただし伸びの大半は物価で、事業の質が上がるわけではない。自己資本利益率(ROE)は 8% 前後で、資本コストの 8% と同じ水準にとどまる。利益を貯めても株主の価値が増えにくい。今の値段がやや安いのは、期待が低すぎるからである。
足元は強い。2026 年の上期は営業利益が前年比で約 4 割増えた。ただし北米の関税の還付という一過性の分が混じる。実力は会社計画の 2027 年(売上 1,000 億円・営業利益 53 億円)あたりと見るのが妥当だ。
悩ましいのは、北米で大手のゲイツやパーカーに規模で勝てない点だ。小さい専門流通は、納期の速さと品ぞろえで戦う。この強みが続くか、安価な輸入品に崩されるかが、10 年の評価を分ける。創業家が筆頭株主で、再編や TOB は起きにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、クリヤマは「悪くないが、つかむほどではない」事業である。オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益の 7 割前後と見る。北米の在庫、配送センター、産業資材の設備に再投資が要り、物価で上がる運転資金も食う。
堀は狭い。値段を決める力が弱く、利益率は薄い。10 年先に今より強いとは言いにくい。
資本の使い方は無難である。大きな買収で価値を壊した形跡はなく、配当は減らされたことがない。ただし、貯めた利益に資本コストを超える稼ぎをさせられていない点が課題だ。ROE が 8% 前後では、貯めた利益が額面を超える価値を生まない。
安全域は、今の値段にある程度ある。時価総額は自己資本の約 0.7 倍で、稼ぐ力から見ても控えめだ。ただし、割安な理由がある。資本効率が資本コストに届かない会社は、帳簿より安く評価されるのが自然である。
だから結論は「適正価格に近い範囲で、やや割安」だ。大きな安全域を期待せず、低い期待が裏切られない前提で持つ事業である。
何で稼ぐ会社か
クリヤマの稼ぎの源は、ホースを買って売り、一部は自社で作るという単純な仕組みだ。売上の約半分を占める北米では、油圧・散水・産業用など多品種のホースを代理店へ大量に流す。米国イリノイ州の中央配送センターを軸に、在庫を持って速く届けるのが武器である。
産業資材は売上の約 3 割。農機・建機・商用車向けに、ゴム・樹脂部品とセンサーを供給する。2025 年 4 月にミトヨを傘下に入れ、メーカーの機能と商社の機能の両方を持つ形に変えた。尿素SCR(ディーゼルの排ガスを浄化する薬液)まわりの部品も扱う。
スポーツ・建設資材は国内の事業で、売上の約 1 割強。運動場や体育館の床材、人工芝、鉄道・学校施設の安全資材を売り、施工まで請け負う。人口が減る国内で、老朽化した施設の改修が需要を支える。
残りは欧州・南米・オセアニアのホース事業で、消防用ホースが強い。利益率は 10% 超と高いが、規模は小さい。
事業ごとの稼ぎ方は違うが、共通点がある。どれも自社で技術を独占しているわけではなく、仕入れ先とのつながり、納期、施工の信頼で付加価値を出す。景気の波は、農機・建機の生産と北米の設備投資に左右される。
優良さと弱いところ
クリヤマの優良さは、中くらいである。堀、つまり他社がまねできない強みは、北米の配送網と長年の取引先で、広くはない。ゲイツやパーカーのようにホースそのものの技術で囲い込むわけではないので、値段は市場が決める部分が大きい。
資本効率は弱い。過去 10 年の ROE の中央値は 8.8% で、資本コストの 8% を少し超えるだけだ。営業利益率も 4〜7% と薄く、2021 年の 7.2% が過去 12 年の山である。薄い利益率で売上を回す流通業なので、仕入れ値と為替の振れに弱い。
財務は安定している。自己資本比率は約 55%、純有利子負債はほぼゼロで、利息の支払いは営業利益の 16 倍で賄える。上場来、減配はない。
弱点もある。北米の倉庫移転で 2025 年は営業利益が減り、アルゼンチンの超インフレ会計も利益を乱した。海外展開は規模を取るが、現地の波に直接さらされる。
経営は創業家(栗山家)の関与が強く、守りの資本配分をする。大きな買収で価値を壊した形跡はない。一方、株主に厚く返すより事業に残す傾向があり、ROE が上がりにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
産業用ホースの世界市場は、調査会社の推計で 160 億ドル台。成長率は年 2% 程度の名目と、物価並みにも届かない。実質では成熟した市場である。
競合は大きい。油圧ホースはゲイツ、イートン、パーカー・ハネフィンが握り、ブリヂストン、アルファゴムも工業用で並ぶ。クリヤマは、これら大手と競合しつつ、同時に品ぞろえを補う流通の役割も持つ。北米の売上は 400 億円台で、市場の数%に当たる。
北米の事情は 2 つある。1 つは関税。2025 年は米国の関税の負担で販売代理店が在庫を絞り、クリヤマも過去に負担した関税の還付を 2026 年に受けた。この還付は一過性である。もう 1 つは価格の適正化で、値上げが通ったのは追い風だが、中国製品との競争は消えていない。
産業資材は、農機・建機・商用車の生産台数に連動する。世界の需要は景気で振れるが、尿素SCRやセンサーなど部品の 1 台あたりの金額は増えている。
国内のスポーツ・建設資材は、人口減で新設が減る一方、学校・体育館・鉄道の老朽化対策が続く。民間の建設投資は 2025 年度に 75 兆円規模と底堅い。ここでは数量は横ばい、価格は物価並みと見る。
欧州は消防用ホースの更新需要、南米はアルゼンチンの通貨と会計に左右される。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 30% 以上と、株主資本配当率(DOE)3% 以上の両方である。上場来、減配はなく、2025 年の配当は前年より増えた。自社株買いは 2019 年以降ほとんどない。
中期計画(2025〜2027 年)は、3 年で 200 億円以上の資金を使う。事業投資に 60〜70 億円、買収などの戦略投資に 60〜100 億円、経営基盤に 45〜60 億円、株主還元に 35〜50 億円。資金は営業キャッシュフローの 140〜160 億円と借入で賄う。
買収は小型が中心だ。2025 年 4 月にミトヨを傘下に入れ、2024 年にはスポーツアパレルから撤退した。大型の買収の実績はない。
株主優待は、2023 年に廃止を決めたが、2025 年に QUOカードで復活した。200 株以上を 1 年以上持つ株主へ 千円分から。年間の費用は 1 億円未満と見込まれ、価値への影響は小さい。
筆頭株主は創業家の栗山博司氏で約 7%。持株は分散しており、TOB の確率は高くない。10 年の還元は、中立で純利益の合計の約 4 割(500 億円のうち約 200 億円)と見た。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
北米の流通網は、欠品の少なさと納期の速さで中小の代理店に選ばれている。イリノイの中央配送センターを広げ、カナダと米国で製造ラインを増やす計画があり、物流の拡張がシェアを押し上げる。2026 年の上期は営業利益が約 4 割増え、価格の適正化が定着したことが確認できた。
産業資材では、ミトヨの合流でメーカー機能が加わる。農機・建機・商用車のセンサーと尿素SCR関連は、1 台あたりの部品金額が増える分野で、台数が伸びなくても売上が増える。
財務は無借金に近く、自己資本比率は 55% ある。中期計画は 2030 年に営業利益 80 億円、ROE 11% を掲げ、配当性向 30% 以上と DOE 3% の方針も決めた。PBR 1 倍割れの是正に取り組む姿勢は明確で、株主還元の拡大余地もある。
今の時価総額は 360 億円で、2026 年の会社予想の純利益 39 億円の約 9 倍である。計画の 2027 年の純利益 42 億円が実現すれば、それだけで割安が解消に向かう。小型の買収を重ねる経営は堅実で、数百億円の資金を成長に回せる余力もある。
慎重な見方
2026 年上期の好調は、過年度の米国関税の還付という一過性の利益で膨らんでいる。実力で見れば、営業利益率は 4〜5% の薄さに戻る。北米の価格適正化も、関税の環境が変われば元に戻る可能性がある。
競合はゲイツやパーカーのような技術と資本を持つ大手で、クリヤマは規模で勝てない。中国・アジア製の安いホースが関税の抜け道で流れ込めば、価格競争に巻き込まれる。メーカー直販やネット調達の拡大で、中間の流通は中抜きされやすい。
資本効率も弱い。ROE は 8% 前後で、資本コストと同じだ。中期計画の ROE 11% は、利益を 5 割増やしながら自己資本の積み上がりを抑えるという、両立の難しい目標である。過去 10 年、営業利益は 20〜46 億円の間を行き来し、10 年たっても 2021 年のピークを超えていない。
加えて、アルゼンチンの超インフレ会計、カナダの物流拠点の移転費用、北米の関税と、会社が管理できない要因が毎年のように利益を乱している。海外の売上が大きい割に、為替や現地の波への備えは薄い。創業家が筆頭株主のため、再編や資本効率を迫る圧力も弱い。
どちらに重みを置いたか
事業の質では慎重な見方が優勢で、価格では強気の見方に分がある。堀が狭く、ROE が資本コストに届かないので、倍率を高く置く根拠はない。一方、今の時価総額は自己資本の 0.7 倍と、そこまでの悲観を既に織り込んでいる。中立を中心に最大の確率を置き、悲観側(やや悲観と悲観の合計)を楽観側より厚くした。結論は「やや割安」にとどまる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,589 円724 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 950 円192 億円)。 今の値に割り戻すと 2,355 円475 億円、今との差 +33.8%、 期待の年率 +9.9%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,978 円1,407 億円 | 1,314 円265 億円 | +371.2% | +16.8% | 663 円134 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,267 円1,062 億円 | 1,126 円227 億円 | +263.2% | +13.8% | 1,279 円258 億円 |
| 中立 | 40% | 3,860 円778 億円 | 992 円200 億円 | +175.6% | +10.7% | 1,940 円391 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,528 円308 億円 | 754 円152 億円 | +29.7% | +2.6% | 502 円101 億円 |
| 悲観 | 10% | 976 円197 億円 | 570 円115 億円 | −12.2% | −1.3% | 155 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,589 円724 億円 | 950 円192 億円 | +157.9% | +9.9% | 4,539 円915 億円 |
今の株価時価総額 1,760 円355 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 北米で面を取り、産業資材も育つ 利益 95 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 6,978 円1,407 億円
北米の中央配送センターと現地生産が回り、在庫の欠品が減る。大手に比べて小さいが納期の速さで中小の代理店を取り込み、北米のシェアは 2.9% から 3.8% に上がる。産業資材ではミトヨとの合流で、センサーと尿素SCR(排ガスを浄化する薬液)まわりの部品が農機・建機の 1 台あたり供給額を押し上げる。欧州は消防用ホースの伸びが続く。スポーツ・建設資材も学校や鉄道の改修を工事ごと受ける形で利益率が上がる。売上は 1,650 億円規模、営業利益率は 6.5% 付近と、過去 12 年の山(7.2%)に迫る。M&A は小さな買収が当たり、ROE は 10% を超える。
- 北米ホース:数量 112(北米の産業用ホース・関連品の流通市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 7.64(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 856 億円・営業利益 64 億円。市場 112 億ドル(実質)× シェア 3.8%、営業利益率 7.5%
- 産業資材:数量 310(主要取引先の農機・建機・商用車の生産台数(万台、推定))× 価格 15,075(1 台あたりの供給額(円・名目))→ 売上 467 億円・営業利益 37 億円。対象機械 310 万台 × 1 台あたりの供給額(今の 1.68 倍)、営業利益率 8.0%
- スポーツ・建設資材:数量 76.0(年間の施工・販売面積(万㎡、推定))× 価格 25,125(1 ㎡あたりの売上(円・名目))→ 売上 191 億円・営業利益 14 億円。施工 76 万㎡ × 1 ㎡あたりの売上(今の 1.68 倍)、営業利益率 7.5%
- 欧州・南米・豪ホース:数量 33.0(対象地域の消防・産業用ホース市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 4.02(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 133 億円・営業利益 16 億円。市場 33 億ドル(実質)× シェア 2.0%、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.83 倍、時価総額 1,407 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の 2030 年(売上 1,200 億円・営業利益 80 億円)を 10 年の途中で超え、さらに北米の配送網で面を広げる必要がある。会社の計画は過去に何度か未達の期もあり、連続して当たる確度は高くない。
やや楽観 20% 計画どおりに進み、ROE が 9% 近くへ戻る 利益 77 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 5,267 円1,062 億円
中期計画が大筋で実現する。北米のシェアは 3.5% に上がり、物流網の効果で営業利益率は 7% に届く。産業資材は農機・建機の需要が底堅く、センサーの比率が上がる。欧州・南米は消防用ホースが支え、アルゼンチンの会計の乱れも落ち着く。スポーツ・建設資材は国内の老朽化対策で受注が増える。売上は 1,480 億円、営業利益は 87 億円。配当性向 30% 以上と DOE 3% の方針で還元を続け、ROE は 9% 手前まで戻る。大型の買収はせず、数十億円規模の買収を数件重ねる。北米ではゲイツなどの大手と競りながらも、中小の代理店向けの品ぞろえと納期で居場所を守る。為替と関税が大きな逆風にならない前提の筋書きである。
- 北米ホース:数量 108(北米の産業用ホース・関連品の流通市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 7.04(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 760 億円・営業利益 53 億円。市場 108 億ドル(実質)× シェア 3.5%、営業利益率 7.0%
- 産業資材:数量 305(主要取引先の農機・建機・商用車の生産台数(万台、推定))× 価格 14,110(1 台あたりの供給額(円・名目))→ 売上 430 億円・営業利益 32 億円。対象機械 305 万台 × 1 台あたりの供給額(今の 1.57 倍)、営業利益率 7.4%
- スポーツ・建設資材:数量 74.0(年間の施工・販売面積(万㎡、推定))× 価格 23,718(1 ㎡あたりの売上(円・名目))→ 売上 176 億円・営業利益 12 億円。施工 74 万㎡ × 1 ㎡あたりの売上(今の 1.58 倍)、営業利益率 6.8%
- 欧州・南米・豪ホース:数量 32.0(対象地域の消防・産業用ホース市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 3.62(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 116 億円・営業利益 13 億円。市場 32 億ドル(実質)× シェア 1.8%、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.85 倍、時価総額 1,062 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年の計画と 2030 年の計画の達成を、やや早めに見る確率。直近の 2 期で売上は計画を上回ったが、営業利益は倉庫移転などで揺れた。
中立 40% 物価並みに伸び、利益率は今より少し上 利益 59 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,860 円778 億円
売上は物価の分に北米の小幅なシェア増が乗り、1,300 億円まで増える。北米のシェアは 3.2% にとどまり、大手のゲイツやパーカーに正面から勝つ形にはならない。産業資材は農機・建機の台数がほぼ横ばいで、ミトヨの通年化とセンサーの比率上昇で 1 台あたりの供給額が少し増える。スポーツ・建設資材は人口減で面積が横ばい、単価は物価並み。営業利益率は 5% 台に上がるが、計画の 6.7% には届かない。ROE は 7% 台で資本コストに届かず、利益は厚くなっても株主の取り分は伸びにくい。小型の買収は続くが、価値を増やす効果は小さい。
- 北米ホース:数量 105(北米の産業用ホース・関連品の流通市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 6.43(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 675 億円・営業利益 44 億円。市場 105 億ドル(実質)× シェア 3.2%、営業利益率 6.5%
- 産業資材:数量 294(主要取引先の農機・建機・商用車の生産台数(万台、推定))× 価格 13,266(1 台あたりの供給額(円・名目))→ 売上 390 億円・営業利益 27 億円。対象機械 294 万台 × 1 台あたりの供給額(今の 1.47 倍)、営業利益率 6.8%
- スポーツ・建設資材:数量 72.0(年間の施工・販売面積(万㎡、推定))× 価格 20,100(1 ㎡あたりの売上(円・名目))→ 売上 145 億円・営業利益 9 億円。施工 72 万㎡ × 1 ㎡あたりの売上(今の 1.34 倍)、営業利益率 6.0%
- 欧州・南米・豪ホース:数量 31.0(対象地域の消防・産業用ホース市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 3.02(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 94 億円・営業利益 9 億円。市場 31 億ドル(実質)× シェア 1.5%、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 761 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北米の価格適正化と配送網の効果は見えているが、一過性の関税還付で足元は膨らんでいる。実力は計画より少し低いとみて、中心に最大の確率を置く。
やや悲観 22% 北米の値崩れで利益率が戻る 利益 30 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 1,528 円308 億円
関税が下がるか、迂回輸入が増えて、北米でアジア製の安いホースが流れ込む。クリヤマは価格を維持できず、シェアは 2.8% に下がり、営業利益率は 5% にとどまる。産業資材は農機・建機の需要の谷で台数が減り、ミトヨの統合効果も薄い。倉庫や人件費は物価で上がり、本社費は削れない。売上は 1,090 億円と物価の伸びをやや下回り、営業利益は 35 億円と今を下回る。還元は DOE の方針を守るのが難しくなり、ROE は 4% 台まで下がる。それでも事業は続き、大手との取引と中小代理店の基盤は残る。物流網の拡張は縮め、投資は維持の水準にとどまる。成長の看板だった北米の配送網が、値下げ競争の中で重い固定費になる筋書きである。
- 北米ホース:数量 98.0(北米の産業用ホース・関連品の流通市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 5.63(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 552 億円・営業利益 28 億円。市場 98 億ドル(実質)× シェア 2.8%、営業利益率 5.0%
- 産業資材:数量 280(主要取引先の農機・建機・商用車の生産台数(万台、推定))× 価格 12,060(1 台あたりの供給額(円・名目))→ 売上 338 億円・営業利益 17 億円。対象機械 280 万台 × 1 台あたりの供給額(今の 1.34 倍)、営業利益率 5.0%
- スポーツ・建設資材:数量 66.0(年間の施工・販売面積(万㎡、推定))× 価格 19,095(1 ㎡あたりの売上(円・名目))→ 売上 126 億円・営業利益 6 億円。施工 66 万㎡ × 1 ㎡あたりの売上(今の 1.27 倍)、営業利益率 4.5%
- 欧州・南米・豪ホース:数量 29.0(対象地域の消防・産業用ホース市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 2.61(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 76 億円・営業利益 6 億円。市場 29 億ドル(実質)× シェア 1.3%、営業利益率 8.0%
倍率:ROE 4.4% が k 7.75% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、正当化 PER の上限は 1÷k=12.5 倍。やや悲観は伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 7.5 割の 9.4 倍に置いた。
確率:関税の環境が変わり、中国・アジア製の安い品が北米の流通に戻る可能性は現実的。過去 12 年にも営業利益率が 4% 台に沈んだ期が複数ある。
悲観 10% 北米で価格競争に負け、流通網を縮める 利益 10 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 976 円197 億円
北米でメーカー直販と安価な輸入品が主流になり、専門流通の付加価値が薄れる。シェアは 2.2% まで下がり、営業利益率は 3.5% に落ちる。配送センターと現地生産の投資は回収できず、在庫と設備の減損が約 100 億円出る。産業資材は主要顧客の台数減と値下げ要求で伸びない。スポーツ・建設資材は工事の受注が細り、欧州・南米も利益が小さくなる。売上は 800 億円、営業利益は 13 億円に落ち、会社は稼ぐ力ではなく、持っている資産の値打ちで評価される。創業家の影響が強く、積極的な再編や売却にも進みにくい。
- 北米ホース:数量 85.0(北米の産業用ホース・関連品の流通市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 4.42(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 376 億円・営業利益 13 億円。市場 85 億ドル(実質)× シェア 2.2%、営業利益率 3.5%
- 産業資材:数量 250(主要取引先の農機・建機・商用車の生産台数(万台、推定))× 価格 10,854(1 台あたりの供給額(円・名目))→ 売上 271 億円・営業利益 11 億円。対象機械 250 万台 × 1 台あたりの供給額(今の 1.21 倍)、営業利益率 4.0%
- スポーツ・建設資材:数量 55.0(年間の施工・販売面積(万㎡、推定))× 価格 18,090(1 ㎡あたりの売上(円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 3 億円。施工 55 万㎡ × 1 ㎡あたりの売上(今の 1.21 倍)、営業利益率 3.0%
- 欧州・南米・豪ホース:数量 26.0(対象地域の消防・産業用ホース市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 2.01(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 52 億円・営業利益 3 億円。市場 26 億ドル(実質)× シェア 1.0%、営業利益率 5.0%
倍率:ROE が k 7.75% を大きく下回る悲観では、帳簿の自己資本は床にならない。稼ぐ力(純利益÷k)は約 130 億円だが、在庫・売掛金・現金・不動産を処分した時の税後の回収額(約 250 億円)のほうが大きい。今の自己資本 492 億円の約 4 割に置いた。
確率:大手メーカーの直販・ネット調達と、中国製の低価格品の挟み撃ちが重なる複合のシナリオ。小さな専門流通が規模で負けた時、利益が薄い事業ほど悪化が速い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
北米ホース
北米で産業用ホース、油圧・散水用ホースを代理店へ卸す流通と一部製造。
| 数量北米の産業用ホース・関連品の流通市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 4.35 | 435 | 28 |
| 10 年後 中立 | 105 | 6.43 | 675 | 44 |
取り方:開示の事業別実額は取っていない。中期計画の 2027 年の構成(北米約 50%)から逆算し、2025 年の売上を約 435 億円と推定した。北米の産業用ホース・関連品の流通市場を約 100 億ドル、クリヤマのシェアを約 2.9%(435 億円÷150 円)と推定。市場の数量は実質で、物価 3% は価格(シェア × 150 円 × 物価の倍率)に入れた。営業利益率は計画の 6.6% に近い 6.5% とした。
産業資材
農機・建機・商用車向けのゴム・樹脂部品、センサー、尿素SCR関連商材(ミトヨ含む)。
| 数量主要取引先の農機・建機・商用車の生産台数(万台、推定) | 価格1 台あたりの供給額(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 9,000 | 270 | 16 |
| 10 年後 中立 | 294 | 13,266 | 390 | 27 |
取り方:2027 年計画の産業資材 305 億円と構成比(約 30%)から、2025 年を約 270 億円(ミトヨは 4 月から)と推定。対象機械を 300 万台、1 台あたりの供給額を 9 千円とした推定値で、開示ではない。台数は実質、物価と部品の高度化(センサー)は 1 台あたりの金額に入れる。
スポーツ・建設資材
国内の運動場・体育館・鉄道・学校施設向けの床材、人工芝、安全資材の販売と施工。
| 数量年間の施工・販売面積(万㎡、推定) | 価格1 ㎡あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 70.0 | 15,000 | 105 | 6 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 20,100 | 145 | 9 |
取り方:2027 年計画 120 億円(構成約 12%)から 2025 年を約 105 億円と推定。1 ㎡あたり 1.5 万円(床材と施工)で年 70 万㎡と置いた推定値。人口減で新設は減るが改修が支える。
欧州・南米・豪ホース
欧州の消防用ホース、南米、オセアニアのホース販売と製造。
| 数量対象地域の消防・産業用ホース市場(億ドル・実質)× シェア | 価格実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 2.00 | 60 | 7 |
| 10 年後 中立 | 31.0 | 3.02 | 94 | 9 |
取り方:2027 年計画の欧州・南米・豪 70 億円(構成約 7%)から、2025 年を約 60 億円と推定。対象市場を 30 億ドル、シェア約 1.3% と推定。営業利益率は計画の 11.4% に近い 11% とした。
リスクと懸念
北米の関税と輸入品の価格競争
売上の約半分が北米で、関税の動きが利益を大きく左右する。2026 年上期は過年度の関税の還付で膨らんだが、これは一回きりだ。関税が下がれば中国・アジア製の安いホースが戻り、価格の適正化も崩れうる。
大手メーカーの直販と中抜き
ゲイツ、パーカー、イートンはホース本体と金具を一括で供給できる。代理店がメーカーから直接買う流れが強まれば、中間の専門流通の付加価値が薄れる。
薄い利益率と為替・仕入れの振れ
営業利益率は 4〜7% で、数%の仕入れ値の変化が利益を左右する。ドル建て仕入れと円建て決算のズレ、運賃の上昇も効く。
海外の会計・現地リスク
アルゼンチンの超インフレ会計は 2025 年の利益を乱した。南米は通貨と規制の波が大きく、海外比率が高いグループ全体の利益も毎年のように揺れる。
ROE が資本コストに届かない構造
過去 10 年の ROE は中央値 8.8% で、資本コストとほぼ同水準。利益を貯めても価値が増えにくい。配当性向 30% 台の低い還元が続けば、貯まる自己資本が足かせになる。
物流拠点の移転・投資の失敗
カナダの物流倉庫の移転で 2025 年の営業利益は減った。中央配送センターの拡張、製造ラインの増設は 60〜100 億円規模の投資で、需要が伸びなければ回収できない。
創業家支配と再編の遅れ
創業家の影響が強く、外部の圧力が弱い。資本効率の改善、事業の売却や再編が遅れる可能性がある。
今後の分かれ目
- 北米で関税が引き下げられ、アジア製の安いホースの輸入が増えたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。価格の適正化が崩れるかを、北米の営業利益率で確かめる。
- 2027 年に売上 1,000 億円・営業利益 53 億円の計画が実現したら
- 中立の利益率を上方修正してよい。計画より低い水準にとどまるなら、中立のままとする。
- 自社株買いや増配で ROE が 10% に近づいたら
- 倍率の上限が上がるので、楽観・やや楽観の確率を厚くする。
- 北米の中央配送センターの拡張が計画どおり稼働し、シェアが 3% を超えたら
- 楽観側に寄せる。逆に拡張後も稼働率が上がらないなら、投資の回収に疑いが出る。
- 農機・建機の生産が 2 年続けて減ったら
- 産業資材の数量を下方修正し、やや悲観に寄せる。
- 大型の買収(時価総額の 3 割超)を発表したら
- 買収の価格と ROE への効果を確かめる。資本コストを超える稼ぎがなければ、やや悲観側に移す。
見ておくもの
- 北米の営業利益率(関税還付を除く)の推移
- 中央配送センターの稼働と在庫回転
- 農機・建機の世界生産台数
- 配当性向・DOE・自社株買いの発表
- アルゼンチンの会計処理の影響
倍率と資本コストの決め方
数量は実質で置き、物価は価格の側に入れて売上を積んだ(北米と欧州は市場 × シェア × 150 円 × 物価、産業資材とスポ建は対象数量 × 1 台・1 ㎡あたりの金額)。セグメントの今の実額は開示になく、中期計画の構成比から逆算した推定である。利益率は、過去 12 年の山 7.2% と計画 6.7% の下に中立を置いた。倍率は k 7.75% と g 4% の式から出し、ROE が k 以下の中立〜悲観は上限 1÷k=12.5 倍の範囲で置いた。今の PER 9 倍や PBR 0.7 倍に合わせてはいない。純利益÷営業利益は過去 5 期の中央値 0.88 を使った。純有利子負債がほぼゼロなので、利払いの変化は入れていない。リースは今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。2026 年上期の関税還付は一過性として、実力の利益には入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.64→14.83 倍・やや楽観 PER 11.19→13.85 倍・中立 PER 10→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。