結論
菊池製作所は、新製品の試作品や金型、精密板金の部品を請け負う小さな会社だ。売上は 60 億円ほどで、ロボットやドローンの新興企業への出資にも力を入れてきた。
筆者の結論は「割高」だ。本業の営業損益は 10 年以上、ほとんどの期で赤字が続いた。2026 年 4 月期の営業損失は 2.5 億円と、前の期の 5 億円から縮んだが、黒字になったわけではない。会社の次期予想は営業利益 1.8 億円にとどまる。
株価は、本業の稼ぐ力ではなく、出資先の値打ちと純現金 19 億円に支えられている。会社は出資の保有価値を 50 億円とみるが、本業が赤字の間に、現金は研究開発へ消えていく。
試作の受注が増えている点は評価する。だが、ここから利益を出せるまでの道のりは長く、10 年後の中立でも、株主に残る利益は 2 億円足らずだ。
筆者が見るのは、本業の黒字が連結でも 2〜3 期続くか、出資先から現金が戻るかの 2 点だ。どちらも確かめられるまで、今の株価の期待は先走っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に見るのは、株主に残る利益だ。当社の営業利益は、10 年のほとんどの期で赤字だった。次期の予想営業利益 1.8 億円は、時価総額 117 億円に対して 1.5% にすぎない。
会社の価値の中心は、本業ではなく、出資先の保有価値だ。会社は 50 億円と見るが、未上場の新興企業の価値は不確かで、売れるまで実現しない。筆者は、半分が実現すれば良いと見る。
本業が資本コストを稼げない会社の自己資本は、帳簿の額面では評価できない。しかも現金は研究開発に使われ、毎年少しずつ減る。純現金の 19 億円を、そのまま株主の取り分とは数えにくい。
安全域は見当たらない。本業が黒字を 2〜3 期続け、出資先から現金が戻りはじめるまで、買う理由はない。小さな会社の改善は、実績を積んでから判断しても遅くはない。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 3 つに分かれる。試作・金型は、顧客の新製品の試作品と、量産用の金型を作る。量産は、精密板金やプレス、射出成形の部品を、まとまった数で作る。ロボット・装置等は、出資先と共同で作るロボットや装置の開発と製造だ。
売上の内訳は開示を取らず、試作・金型が 5 割弱、量産が 3 割、ロボット・装置等が 2 割台と推定する。2026 年 4 月期は試作・金型が前期比 16% 増、量産が 14% 増、ロボット・装置等が 0.5% 増だった。
顧客は、情報通信機器や精密機器、事務機器のメーカーが中心だ。1 社への依存は低いが、顧客ごとの発注は一定せず、受注の波が大きい。工場は国内にあり、少量多品種を短い納期で作る体制だ。
もう 1 つの顔が投資家としての面だ。ドローンのイームズロボティクス、高効率モーターのマグネイチャー、アシストスーツのイノフィスなど、25 社に出資している。投資額は 10 億円、会社が見る保有価値は 50 億円という。
本業は赤字でも、新興企業の試作や量産を請け負うことで、将来の受注につなげる狙いがある。
優良さと弱いところ
技術の核は、少量多品種を短い納期で作る力だ。板金、プレス、成形、機械加工を 1 社でそろえ、設計の相談から試作、量産へ橋渡しをする。顧客が試作から量産まで同じ会社に任せられるのは便利だ。
ただ、堀(他社がまねできない強み)は薄い。試作は価格と納期で競い、顧客の都合で切り替えられる。3D プリンターや海外の安い試作サービスも広がっている。大手の顧客は、複数の試作先を競わせて値段を下げる。利益率も、過去 12 年で最も良い年が 2% 足らずだ。
経営の弱点は、本業が稼げないのに、研究開発と出資に資金を使ってきたことだ。純損失の期が 10 年のうち 7 期ある。助成金を差し引いても、研究開発に年 5 億円ほどを使う計画だ。
救いは、自己資本比率が 65% と高く、純現金があることだ。4 四半期目に営業黒字へ転換した点も、改善の兆しとして評価する。ただ、1 四半期の黒字で構造が変わったとは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
試作・金型・精密板金の市場は、製造業全体の新製品開発の量に連動する。国内では製造業の設備投資と開発投資が名目で年 3% ほど伸びる。実質の数量はほぼ横ばいで、中小の加工会社の廃業が続くため、残った会社に受注が集まる面もある。
試作は、情報通信機器やロボット、医療機器、半導体装置の開発で需要がある。受注は、顧客の開発計画に左右され、数か月で大きく動く。2026 年 4 月期は、見積もりの引き合いが前期比 11% 増え、受注率も上がった。
競争は、同規模の板金・試作の会社が多数ある分散市場だ。値段で競う面が強く、納期と技術で差をつけられるのは一部の会社だけだ。人手不足で、人件費と外注費が物価以上に上がる。
ロボットとドローンの市場は伸びるが、出資先の多くは赤字で、量産に入るまでに時間がかかる。助成金を使った開発が多く、補助が切れる年には採算が一気に問われる。当社はその試作と量産を受ける立場で、出資先が育たなければ受注も育たない。
価格は、設計の難しさと数量で個別に決まる。材料の鋼板や樹脂は物価並みに上がるが、顧客への転嫁は交渉次第で、遅れが利益を削る。
資本政策と M&A
資本政策の特色は、ロボットなどのスタートアップへの出資だ。ロボットファンドの総額は 26 億円で、運用期間は 10 年とされる。会社は出資先の売却益で現金を得る構想を持つが、これまでの売却益は小さい。
配当は小さい。次期の配当は総額で 1 億円ほどの計画だ。会社は成長投資、配当、財務強化の順に重点を置くと説明しているが、具体的な還元の数値目標は示していない。
純現金は 19 億円と時価総額の 16% に当たる。ただし、研究開発と設備投資が続けば、この現金は減る。大株主の構成は確認できていない。出資先の売却益が入った期は純利益が黒字になるため、本業の赤字を見えにくくする点にも注意が要る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
試作・金型の受注が回復している。見積もりの引き合いは 11% 増え、受注率も上がった。単体では営業黒字を達成し、第 4 四半期に営業利益 1.1 億円と黒字転換した。連結の赤字は新規事業の費用が主因で、本業は立ち直りつつある。
出資先の価値は大きい。25 社に 10 億円を出し、会社が見る保有価値は 50 億円だ。イノフィスのアシストスーツやマグネイチャーのモーターが量産に入れば、当社は試作から量産まで受注できる。出資先の上場や売却で、現金が入る道もある。
純現金 19 億円と自己資本比率 65% の財務は、赤字の期間を耐える力になる。助成金で研究開発の負担も軽くなっている。ロボット市場が伸びれば、10 年後に別の会社になる余地がある。
試作の需要は、国内の製造業が開発を内製から外注に移すほど増える。少量多品種を一括で受けられる会社は希少で、取引先は増えている。赤字の主因が新規事業の費用であれば、費用の整理で黒字は見えてくる。
慎重な見方
本業は10 年以上稼げていない。営業赤字の期が過去 12 年のほとんどで、最も良い年でも営業利益率が 2% に届かない。会社が掲げた中期計画の 2026 年 4 月期の営業利益 3.2 億円の目標に、実績は 2.5 億円の赤字で、5.7 億円足りない。
黒字になったと見える単体の利益も、連結では出資先への費用が食う。次期の予想営業利益 1.8 億円は、時価総額 117 億円に対し、あまりにも小さい。研究開発と設備投資で、年 5〜6 億円の現金が出ていく。
出資先の保有価値 50 億円は帳簿に載らない見込みの値で、売れた実績が乏しい。新興企業は多くが失敗し、現金化できるのは一部だ。試作は 3D プリンターや海外勢に侵される。現金は減るばかりだ。
助成金も永続しない。研究開発の助成が減れば、赤字は直ちに膨らむ。経営は何度も黒字化を約束したが、実現していない。単体の黒字化は成果だが、連結の 10 年の赤字を覆すにはまだ小さい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がはるかに強い。本業の黒字化は始まったばかりで、10 年の実績は赤字だ。出資先の値打ちは不確かで、実現するまで株主の取り分に数えにくい。そのため、中立の確率を 3 割にとどめ、やや悲観と悲観に 5 割を置いた。楽観側は、出資先の売却が実現する良い筋書きとして 2 割にした。助成金や出資益に頼る見かけの黒字と、本業の黒字を分けて見る必要がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 289 円35 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 34 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 148 円18 億円、今との差 −83.3%、 期待の年率 −9.6%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,330 円161 億円 | 66 円8 億円 | +57.6% | +4.7% | 70 円8 億円 |
| やや楽観 | 15% | 690 円83 億円 | 124 円15 億円 | −8.1% | −0.8% | 122 円15 億円 |
| 中立 | 30% | 240 円29 億円 | 41 円5 億円 | −68.2% | −10.8% | 84 円10 億円 |
| やや悲観 | 30% | 124 円15 億円 | 0 円0 億円 | −86.0% | −17.8% | 37 円5 億円 |
| 悲観 | 20% | 50 円6 億円 | 0 円0 億円 | −94.4% | −25.0% | 10 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 289 円35 億円 | 34 円4 億円 | −63.5% | −9.6% | 324 円39 億円 |
今の株価時価総額 886 円107 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 5% 出資先が育ち、売却益が入る 利益 8 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,330 円161 億円
出資先のうち数社が量産に入り、当社が試作から量産まで受注する。ロボット・装置等の数量は 10 年で 2 倍を超え、利益率も 12% に乗る。
出資先の一部が上場や売却に進み、保有価値 50 億円がほぼ現金になる。これで純現金は 50 億円台に増える。会社はその資金で量産設備を増やし、さらに出資を広げる。ただし、新興企業の成功は偶然に左右され、この筋書きは運の要素が大きい。
売上は 120 億円台に倍増し、工場の稼働率も上がる。営業利益は 11 億円ほどで、2008 年 4 月期の 16% には届かないが、近年の姿とは別の会社になる。配当も増え、10 年で 8 億円ほどを株主へ返す。
- 試作・金型:数量 0.3(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 製造業の開発案件 × 当社の受注)× 価格 1.35(値段の指数(2026 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 53 億円・営業利益 6 億円。試作・金型:数量 1.40 倍 × 価格 1.35 倍、営業利益率 12.0%
- 量産:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段))× 価格 1.34(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。量産:数量 1.20 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 10.0%
- ロボット・装置等:数量 0.2(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 出資先の量産規模 × 当社の受注)× 価格 1.30(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 43 億円・営業利益 5 億円。ロボット・装置等:数量 2.20 倍 × 価格 1.30 倍、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)57 億円。全体の PER 13.82 倍、時価総額 161 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ロボットとドローンの出資先が量産に入り、売却や上場で現金が入る良い筋書き。会社が見る保有価値 50 億円が大きく実現する形だが、10 年の実績が赤字なので低く置いた。
やや楽観 15% 本業が黒字化し、出資の一部が実る 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 690 円83 億円
試作・金型の受注が 10 年で 1.25 倍に増え、利益率も 10% に乗る。量産も伸びる。ロボット・装置等は黒字に近づくが、規模は小さいままだ。研究開発の費用は助成金で大きく相殺され、連結でも黒字が定着する。
出資先のうち 1〜2 社が売却され、現金 19 億円ほどが入る。純現金は 38 億円に増える。それでも出資の大半は回収が長引き、現金の使い方は慎重になる。
営業利益は 5〜6 億円で、会社の次期予想の 3 倍ほどにあたる。売上は 100 億円に近づき、固定費の重さが薄まる。配当は少しずつ増える。値上げの転嫁も進み、人件費の上昇を吸収できる。
- 試作・金型:数量 0.2(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 製造業の開発案件 × 当社の受注)× 価格 1.34(値段の指数(2026 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 47 億円・営業利益 5 億円。試作・金型:数量 1.25 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 10.0%
- 量産:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段))× 価格 1.32(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。量産:数量 1.10 倍 × 価格 1.32 倍、営業利益率 8.0%
- ロボット・装置等:数量 0.2(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 出資先の量産規模 × 当社の受注)× 価格 1.25(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。ロボット・装置等:数量 1.60 倍 × 価格 1.25 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 11.75 倍、時価総額 83 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:試作の受注回復が続き、連結でも黒字が定着する筋書き。出資先の一部が現金化される。
中立 30% 黒字には戻るが、利益はわずか 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 240 円29 億円
試作の受注は 10 年で 15% ほど増え、値段は物価並みに上がる。利益率は 8% で、単体の黒字が定着する。量産は横ばいに近い。
ロボット・装置等は、出資先の量産が遅れて、ほぼ収支とんとんにとどまる。研究開発費は助成金で相殺しながら、年 5 億円ほどを使う。
営業利益は 2 億円強で、10 年後も本業の稼ぎは小さい。売上は 90 億円ほどで、純利益は 2 億円足らずだ。出資先の売却益が入る年は黒字が大きく見えるが、本業の実力ではない。配当は年 1 億円ほどにとどまる。純現金は研究開発で少しずつ減る。人手不足で人件費が上がり、利益率の改善は小さな幅にとどまる。
- 試作・金型:数量 0.2(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 製造業の開発案件 × 当社の受注)× 価格 1.34(値段の指数(2026 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 43 億円・営業利益 4 億円。試作・金型:数量 1.15 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 8.0%
- 量産:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段))× 価格 1.30(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。量産:数量 1.00 倍 × 価格 1.30 倍、営業利益率 6.0%
- ロボット・装置等:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 出資先の量産規模 × 当社の受注)× 価格 1.20(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。ロボット・装置等:数量 1.30 倍 × 価格 1.20 倍、営業利益率 -1.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 29 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:試作の受注が少し伸び、赤字が止まる中心の筋書き。会社が予想する次期の営業利益 1.8 億円が、10 年後も大きくは変わらない形だ。
やや悲観 30% 赤字が続き、現金が減る 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 124 円15 億円
試作は 3D プリンターと海外の安い試作に押され、数量が横ばいにとどまる。利益率は 4% で、連結では出資先への費用が残る。
ロボット・装置等は赤字のままで、研究開発費の助成金も減る。営業損益は年 2 億円ほどの赤字が続く。新しい設備の投資は先送りされ、競争力も少しずつ落ちる。売上は 70 億円台で伸びず、固定費の重さが利益を削り続ける。
10 年で現金が 20 億円ほど減り、純現金はほぼ消える。配当は止まるか、最低限にとどまる。出資先の価値も、売れるまでに目減りする。助成金の水準が下がれば、赤字はさらに広がる。
- 試作・金型:数量 0.2(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 製造業の開発案件 × 当社の受注)× 価格 1.28(値段の指数(2026 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。試作・金型:数量 1.00 倍 × 価格 1.28 倍、営業利益率 4.0%
- 量産:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段))× 価格 1.25(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。量産:数量 0.90 倍 × 価格 1.25 倍、営業利益率 3.0%
- ロボット・装置等:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 出資先の量産規模 × 当社の受注)× 価格 1.15(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 17 億円・営業利益 −1 億円。ロボット・装置等:数量 1.00 倍 × 価格 1.15 倍、営業利益率 -8.0%
倍率:赤字が続き稼ぐ力がない。価値は売れる資産と、出資先の一部の値打ちで決まる。今の自己資本 60 億円に PBR 0.25 を掛けた額(15 億円)を置いた。
確率:過去 10 年の姿が続く筋書き。試作は価格競争で伸びず、研究開発の費用が利益を食う。
悲観 20% 本業が縮み、現金を使い果たす 利益 −6 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 50 円6 億円
試作の顧客が離れ、数量が 2 割減る。量産も縮み、値段は物価に追いつかない。ロボット・装置等は赤字が深まる。
営業損失は年 6 億円ほどに拡大する。研究開発の助成金が減る年は、赤字がさらに膨らむ。10 年で現金が尽き、借入か増資で延命する。既存の株主の取り分は大きく薄まる。借入には、事業を担保に入れる条件がつく。
出資先も多くが失敗し、帳簿の価値は消える。売上は 70 億円を割り、固定費を賄えない。残るのは設備と在庫の売却額だけだ。この筋書きでは、会社は縮小均衡に入り、株式の価値はほぼ残らない。
- 試作・金型:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 製造業の開発案件 × 当社の受注)× 価格 1.15(値段の指数(2026 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 26 億円・営業利益 0 億円。試作・金型:数量 0.80 倍 × 価格 1.15 倍、営業利益率 -1.0%
- 量産:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段))× 価格 1.10(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。量産:数量 0.70 倍 × 価格 1.10 倍、営業利益率 -3.0%
- ロボット・装置等:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 出資先の量産規模 × 当社の受注)× 価格 1.10(値段の指数(2026 年=1.0))→ 売上 10 億円・営業利益 −2 億円。ロボット・装置等:数量 0.60 倍 × 価格 1.10 倍、営業利益率 -20.0%
倍率:赤字で稼ぐ力はなく、現金は使い果たす。今の自己資本 60 億円に PBR 0.10 を掛けた額(6 億円)まで縮むと置いた。
確率:10 年の赤字が続き、研究開発と出資で現金を失う筋書き。業績のこれまでの動きを考えると、無視できない確率とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
試作・金型
新製品の試作品と量産用の金型。精密板金、機械加工、成形を含む。
| 数量当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 製造業の開発案件 × 当社の受注 | 価格値段の指数(2026 年=1.0、物価と値上げを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 0.2 | 1.00 | 28 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 1.34 | 43 | 4 |
取り方:開示は売上全体 61 億円と、事業別の伸び率のみ。試作・金型を 28 億円と推定した(前期比 16% 増)。営業利益率は単体黒字の水準(4% ほど)と見て配分した推定。
量産
精密板金、プレス、射出成形の量産部品。
| 数量当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段) | 価格値段の指数(2026 年=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 0.1 | 1.00 | 18 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 1.30 | 23 | 1 |
取り方:量産を 18 億円と推定した(前期比 14% 増)。営業利益率は 3% 弱と見て配分した推定。
ロボット・装置等
出資先と共同で作るロボット、ドローン、アシストスーツ、モーターの開発と製造。
| 数量当社の出荷額(億ドル、2026 年の値段)= 出資先の量産規模 × 当社の受注 | 価格値段の指数(2026 年=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 0.1 | 1.00 | 15 | −2 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 1.20 | 23 | 0 |
取り方:残りの 15 億円をロボット・装置等と推定した(前期比 0.5% 増)。研究開発費の大半(助成金差引後 5.3 億円)を含み、営業損失 1.8 億円と推定。全体の営業損失 2.5 億円から調整 -2.3 億円(本社費など)を除いて配分した。
リスクと懸念
本業の赤字が続く
営業損失は過去 12 年のほとんどの期で出ている。2026 年 4 月期も 2.5 億円の赤字で、黒字化は単体で始まったにすぎない。
研究開発と出資で現金が減る
助成金を引いても、次期の研究開発費は年 8 億円規模、設備投資は 6 億円の計画だ。本業が稼げなければ、純現金は数年で減る。
出資先の価値が実現しない
出資は未上場の新興企業が中心で、保有価値は会社の見立てだ。多くは失敗し、売却で現金化できる額は不確かだ。
試作需要の代替
3D プリンターや海外の安い試作サービスが広がると、国内の中小の加工会社は受注を奪われる。価格競争が続く。
人手不足と人件費
熟練の職人が減り、人件費は物価以上に上がる。値上げに転嫁できなければ、利益率が悪化する。
資金調達による希薄化
現金が尽きれば、増資や借入が必要になる。既存の株主の取り分は薄まる。過去 20 年にも希薄化の期がある。
今後の分かれ目
- 連結営業利益が 2 期連続で黒字になる
- やや楽観の確率を引き上げる。本業の改善が構造的だと確かめられる。
- 出資先の売却や上場が発表され、まとまった現金が入る
- 楽観・やや楽観の確率を引き上げる。保有価値の実現が確認できる。
- 次期の営業利益が予想 1.8 億円を下回る
- やや悲観と悲観の確率を引き上げる。単体の黒字化は一時のものだった可能性が出る。
- 増資や大きな借入が発表される
- 現金が尽きる筋書きに近づく。株主の取り分の希薄化を確かめる。
- TOB(公開買付け)が発表される
- 小さな会社の買い取りになる。出資先の価値を買い手がどう評価するかを確かめる。
見ておくもの
- 連結営業利益の推移(2027 年 4 月期予想 1.8 億円)
- 試作・金型の受注と見積もり引き合いの伸び
- 研究開発費の水準と助成金
- 出資先の売却・上場、純現金の水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROE が資本コスト(k=8.75%)に届かない筋書きでは、上限は 1÷k=11.1 倍で、利益の質が並以下なので上限の 7〜8.6 割に置いた。今の株価や過去の PER・PBR は見ていない。数量は事業別の売上の推定、価格は物価並みの 1.3 倍を基本にした。悲観側は稼ぐ力ではなく、売れる資産と出資先の現金化の額から置いた。出資先の保有価値 50 億円は会社の見立てで、楽観にだけ織り込んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→13.82 倍・やや楽観 PER 7.8→11.75 倍・中立 PER 7.8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。