結論
PEGASUSは、ニット衣料向けのミシンと、車のシートベルト部品など小型アルミ部品を作る機械メーカーだ。筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力に対して割高で、帳簿の資産の厚さはその穴を埋めきれないというものだ。決め手は、資本の厚さが利益率を押し下げている点にある。
自己資本は 326 億円ある。時価総額は 127 億円で、帳簿の PBR は 0.4 倍に見える。しかしこの自己資本には為替換算の評価益が約 92 億円含まれ、利益は 3 億円まで細っている。稼ぐ力が資本コストに届かない会社では、ためた資本は額面どおりには評価できない。
良い材料は、会社が方針を変えたことだ。2026 年 1 月に、利益に応じた配当をやめて余剰資金も還元する方針に切り替えた。前期の総還元は約 13 億円で、時価総額の 1 割に当たる。この姿勢が続けば、株主は資産の価値を現金で受け取れる。
一方、ミシンも車部品も中国勢の値下げに押されている。10 年先の利益が今の何倍にもなる筋書きは描きにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、PEGASUS は安い資産を持つが、稼ぐ力に乏しい会社と映る。
ミシンも車部品も、10 年後に存在し続ける事業だ。しかし利益率は中国勢の値下げに左右され、資本コストを稼ぐ水準にはなりにくい。帳簿の自己資本が時価総額の 2.6 倍あることは、割安の根拠にならない。利益を生まない資本は、額面より価値が低いからだ。
気になる点は 2 つある。為替換算の評価益が約 92 億円を占め、手元の現金の多くが海外で滞留していること。もう 1 つは、方針転換が始まったばかりで、実績がまだ 1 期しかないことだ。
良い点は、経営が資本を持ちすぎている問題に気づき、還元で応えたことだ。この姿勢が続くなら、株主は実質の資産を現金で受け取れる。
筆者は、中立の筋書きでも 10 年後の株主の取り分が今の時価総額に届かないと見る。悲観の下値は固いが、それは損をしにくいという意味にとどまり、安全域とは違う。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、アパレルマシナリーとオートモーティヴの二つの事業だ。2026 年 3 月期の売上 217 億円のうち、前者が 138 億円、後者が 78 億円を占める。
アパレルマシナリーは、縫製工場で使う工業用ミシンのうち、環縫い(かんぬい)ミシンを中心に作る。環縫いとは、糸を輪の形でからませて縫う方式で、Tシャツやニット衣料の縫い合わせに向く。製造は日本・中国・ベトナムの拠点で、機種は 3,500 種類を超える。顧客はバングラデシュ、インド、中国、ベトナムなど、ニットの縫製が盛んな国の工場である。直近は低価格の戦略機種を中南米やエジプトに投じ、累計売上は約 10 億円、展開国は 18 か国に広がった。
オートモーティヴは、アルミダイカスト(溶かしたアルミを型に流し込む成形法)で車部品を作る。主力は、シートベルトの巻き取り装置の部品などの安全関連で、拠点は中国・ベトナム・メキシコにある。電動車でもシートベルトは要るので、電動化の影響は受けにくい。取引先は完成車メーカーではなく、一次部品メーカーだ。
セグメント利益は 2 つ合わせて約 22 億円だが、本社費などの調整額が約 12 億円あり、営業利益は 9 億円まで減る。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、あまり厚くない。ミシンでは、長年の販売網と部品供給、自社で作るモーターとフレームが強みだが、杰克(Jack)など中国の大手が同じ価格帯に攻め込んでいる。会社が低価格の戦略機種を出したこと自体が、値段で勝負しなければならなくなった証拠でもある。
車部品は、顧客との取引が長く続く点が支えだ。ただし値決めは顧客が握り、中国では毎年の値下げ要請に追われている。直近のセグメント利益率はミシンが約 9%、車部品が約 12% で、どちらも前の年より 2〜3 ポイント低い。
資本の効率は低い。過去 10 年の ROE(自己資本利益率)の中央値は 4.6% で、資本コストを大きく下回ってきた。赤字の期は過去 20 年に 5 回ある。
財務は強い。自己資本比率は 72.5% で、借金より現金が多い。ただし為替換算の評価益を除くと比率は 50% 台後半で、海外子会社の現金は送金の制限があって国内では使いにくい。見かけほどの余力はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ミシンの需要は、衣料の生産拠点の移動に連動する。工場は中国から東南アジア、南アジア、アフリカへ動き、移るたびに新しい機械が売れる。人件費の上昇も、省人化機への買い替えを後押しする。市場の実質の伸びは年 1〜2% 程度とみる。
投資は景気と地政学で振れやすい。直近は、バングラデシュの金融引き締めと信用状の制限、インドへの追加関税の懸念で、南アジアの投資が止まった。2024 年の売上落ち込みも、同じ型の出来事だった。
競争は二極化している。上位帯は日本勢と中国の上位、低価格帯は中国の新興だ。環縫いは、杰克や標準機を出す中国勢と直接ぶつかる。会社が提携先に選んだ JUKI は、2025 年 10 月に PEGASUS 株の市場売却を決め、資本提携を解いた。業務提携は続くが、頼れる後ろ盾は薄れた。
車部品の市場は、世界の自動車生産に連動する。台数は伸びにくいが、安全部品は 1 台あたりの数が増える傾向にある。米国の関税でメキシコ拠点の使い方が変わり、日系部品メーカー向けの受注が伸びている。一方で中国の内需は値下げ圧力が強い。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、手元資金の戻し方だ。2026 年 1 月に配当性向 30% 以上の方針をやめ、資本の効率を軸にした運営に変えた。前期の配当は利益の 2 倍を超え、配当性向は 200% を上回った。自社株買いも約 8 億円行い、総還元は約 13 億円になった。
新しい中期経営計画の基本方針は 2026 年 5 月に出ており、PBR 1 倍超と ROE 9% 超を目指すとする。詳細は 10 月末の予定だ。会社の目標どおり ROE が 9% になるには、利益が 3 倍になるか、資本を大きく減らすしかない。
JUKI との資本提携は解消され、JUKI は持ち株を売る。親会社や大株主が薄れたぶん、買収されるリスクも生まれる。ただし時価総額が小さく、買い手が現れても不思議ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
PEGASUS は、資産の割に値段が安すぎる。時価総額は 127 億円で、現金は借金を上回り、自己資本は 3 倍近い。会社は配当性向の縛りをやめ、余剰資金も戻す方針に切り替えた。前期の総還元は 13 億円と、時価総額の 1 割に及んだ。この還元が続けば、株を持つだけで資産が現金に変わる。
事業の底も固い。ミシンは新興国の縫製工場で長く使われ、低価格の戦略機種が中南米やアフリカで売れ始めた。車部品はシートベルトの部品が中心で、電動化の影響を受けにくく、米州ではメキシコ拠点を使った日系部品メーカー向けの受注が伸びている。
2023 年 3 月期には営業利益が 27 億円まで増えた実績がある。投資が戻れば、営業利益は 20 億円台に乗り、時価総額の 3 割を稼ぐ水準になる。JUKI の持ち株売却で大株主の重しが取れ、買収提案が出る可能性も高まる。割安の根拠は、帳簿の PBR ではなく、現金に変わる資産の量にある。
慎重な見方
稼ぐ力が、資本コストに届いていない。過去 10 年の ROE は中央値で 4.6% と低く、今期の営業利益は 9 億円にすぎない。予想の営業利益はさらに 5 億円前後まで下がる。ミシンは中国の杰克などに低価格帯を押さえられ、会社が出した戦略機種は値下げ競争の入口にすぎない。
車部品も、中国では値下げ要請が強く、セグメント利益は前期より 23% 下がった。米州の伸びは小さな絶対額で、中国の減益を補いきれない。
自己資本の 326 億円も見かけほどの価値はない。そのうち約 92 億円は為替換算の評価益で、海外子会社の現金は送金に制限がある。国内で使える余剰資金は限られ、還元を続けるには資産の切り売りになる。配当性向 200% 超は、持続できる水準ではない。
JUKI も資本提携を解き、持ち株を売り出す。後ろ盾が薄れ、需給の重しにもなる。過去 20 年で赤字の期が 5 回ある会社に、高い倍率を払う理由は乏しい。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さと還元の変化には根拠があり、悲観の下値は固い。ただし稼ぐ力が資本コストに届かないため、中立の価値は今の時価総額を下回る。確率は中立 38%、やや悲観 27% とし、楽観側は合計 22% にとどめた。為替換算の評価益と海外に滞留する現金を割り引くと、資産の厚さは見かけの半分ほどで、還元が続くかどうかが最後の分かれ目になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 543 円130 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 205 円49 億円)。 今の値に割り戻すと 376 円90 億円、今との差 −27.7%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,028 円247 億円 | 354 円85 億円 | +165.3% | +10.2% | 83 円20 億円 |
| やや楽観 | 16% | 768 円184 億円 | 292 円70 億円 | +103.4% | +7.4% | 170 円41 億円 |
| 中立 | 38% | 621 円149 億円 | 258 円62 億円 | +68.7% | +5.4% | 334 円80 億円 |
| やや悲観 | 27% | 330 円79 億円 | 125 円30 億円 | −12.6% | −1.3% | 123 円29 億円 |
| 悲観 | 13% | 254 円61 億円 | 42 円10 億円 | −43.3% | −5.5% | 38 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 543 円130 億円 | 205 円49 億円 | +43.5% | +3.7% | 748 円179 億円 |
今の株価時価総額 521 円125 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 米州と新興国でミシンが伸び、車部品も広がる 利益 20 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,028 円247 億円
10 年後、環縫いミシンは新興国のニット工場で着実に売れ、低価格の戦略機種が中南米やアフリカで根づく。値段の低い機種が増えても台数が伸び、アパレル事業の営業利益率は 12% に戻る。車部品は、メキシコ拠点を使った日系部品メーカー向けが広がり、アルミダイカストの提案営業が新しい顧客を連れてくる。シートベルト部品は電動化の影響を受けにくい。本社費は物価で増えるが、売上の伸びに吸収される。営業利益は 28 億円と、今の 3 倍の水準になる。会社は手元の余剰資金を配当と自社株買いで戻し続け、10 年の還元は純利益を上回る。それでもROEは資本コストに届かない。資本を厚く持つ構造が変わらないためだ。
- アパレルマシナリー(環縫いミシン・工業用ミシン):数量 106(販売台数換算(千台))× 価格 2.07(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 220 億円・営業利益 26 億円。台数 ×1.15・単価指数 ×1.38・利益率 12.0%
- オートモーティヴ(アルミダイカスト車部品):数量 1,300(搭載車換算(万台))× 価格 0.10(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 136 億円・営業利益 19 億円。搭載車換算 ×1.30・単価指数 ×1.34・利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 247 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が旧計画で掲げた売上 300 億円・営業利益 32 億円に近い姿。過去 12 年で営業利益率が 10% を超えたのは 4 回あるが、いずれも設備投資が盛り上がった年だった。10 年続くとは見にくい。
やや楽観 16% ミシンは堅調、車部品は米州で伸びる 利益 15 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 768 円184 億円
ミシンは台数がわずかに増え、値段は物価並みに上がる。南アジアの投資は金融引き締めの影響から抜け、インド以西の顧客も戻る。アパレル事業の営業利益率は 11% で、2019 年前後の水準に近い。車部品は北米向けが伸びて売上が 1.6 倍になる。中国の値下げ圧力は残るが、メキシコと東南アジアの拠点が受け皿になる。営業利益は 21 億円、純利益は 15 億円。余剰資金は計画どおり戻され、配当は利益と同じ水準が続く。会社の掲げる ROE 9% には遠く、資本の厚さが利益率を押し下げる構造は変わらない。成功ではあるが、過去の最高水準には届かない。
- アパレルマシナリー(環縫いミシン・工業用ミシン):数量 97.7(販売台数換算(千台))× 価格 2.01(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 196 億円・営業利益 22 億円。台数 ×1.06・単価指数 ×1.34・利益率 11.0%
- オートモーティヴ(アルミダイカスト車部品):数量 1,180(搭載車換算(万台))× 価格 0.10(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 122 億円・営業利益 16 億円。搭載車換算 ×1.18・単価指数 ×1.32・利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 184 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米州の車部品が伸び、ミシンが物価並みに値上がりする姿。直近の米州の増収という裏づけがあるため、中立に次ぐ厚みを置いた。
中立 38% ミシンは横ばい、車部品は小さく伸びる 利益 12 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 621 円149 億円
ミシンは台数が今よりわずかに減る。中国勢が低価格帯を押さえ、会社は低い値段の戦略機種を増やして対抗する。そのため単価は物価ほどは上がらず、10 年で 1.3 倍にとどまる。営業利益率は 10.5% 程度で、2022〜2023 年の好況期には届かない。車部品は米州の日系部品メーカー向けが伸び、売上は 1.4 倍になる。中国の値下げ圧力で利益率は 13% にとどまる。本社費は物価で増え、営業利益は 17 億円、純利益は 12 億円になる。配当は余剰資金を含めて毎年出し続けるが、利益の伸びは限られ、自己資本はほぼ今のまま。ROE は 3% 台にとどまる。
- アパレルマシナリー(環縫いミシン・工業用ミシン):数量 89.4(販売台数換算(千台))× 価格 1.95(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 174 億円・営業利益 18 億円。台数 ×0.97・単価指数 ×1.30・利益率 10.5%
- オートモーティヴ(アルミダイカスト車部品):数量 1,080(搭載車換算(万台))× 価格 0.10(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 110 億円・営業利益 14 億円。搭載車換算 ×1.08・単価指数 ×1.30・利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 149 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ミシンは新興国の投資の波に左右され、車部品は為替と関税の影響を受ける。どちらも大きくは崩れず、大きくも伸びないという落としどころ。
やや悲観 27% 中国勢に押され、ミシンの利益が細る 利益 5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 330 円79 億円
中国の大手が低価格帯から中位帯へ上がり、会社の戦略機種は値下げ競争に巻き込まれる。ミシンの台数は 15% 減り、利益率は 9% に下がる。車部品は中国向けの値下げが続き、米州の伸びで穴を埋めきれない。本社費は物価で増え、営業利益は 7 億円まで細る。純利益は 5 億円にとどまる。会社は配当を縮め、余剰資金の戻しも止まる。自己資本は今のまま動かず、手元の現金は海外に滞留する。事業は残るが、株主の取り分は細る。構造的に負けた姿で、優良な会社とは言えなくなる。それでも借金は軽く、現金と土地が株主の最後の支えとして働く。
- アパレルマシナリー(環縫いミシン・工業用ミシン):数量 78.4(販売台数換算(千台))× 価格 1.88(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 147 億円・営業利益 13 億円。台数 ×0.85・単価指数 ×1.25・利益率 9.0%
- オートモーティヴ(アルミダイカスト車部品):数量 920(搭載車換算(万台))× 価格 0.10(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 88 億円・営業利益 10 億円。搭載車換算 ×0.92・単価指数 ×1.22・利益率 11.0%
倍率:稼ぐ力(純利益 5 億円 ÷ k)は約 56 億円で、床の純現金+売れる資産(約 78 億円)のほうが大きい。今の自己資本 326 億円に 0.24 倍を掛けて 78 億円に置いた。自己資本の積み上げには掛けていない。
確率:中国のミシン大手が低価格から中位帯へ上がり、車部品も中国向けの値下げが止まらない姿。直近の利益の減少が示す方向と一致するため、中立に次ぐ厚みを置いた。
悲観 13% 需要が冷え込み、赤字で資産の切り売りに 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 254 円61 億円
ミシンの投資が止まり、台数は 35% 減る。中国勢が値段を崩し、単価は物価にも届かない。車部品は関税と中国の値下げで、売上が 4 割減る。営業利益率は両事業とも数%に落ち、本社費を賄えず営業赤字になる。会社は工場の再編と減損を出し、自己資本が痩せる。配当は大きく縮み、自社株買いは止まる。海外の現金は本社に戻しにくく、株主が使える余剰資金は小さい。それでも財務の借金は軽いため、倒れることはない。残るのは、ブランドと保守の収益、そして土地と運転資本の価値だ。再編が進めば、買収提案が出る余地もあるが、株主が受け取る額は自己資本の帳簿よりずっと小さくなる。
- アパレルマシナリー(環縫いミシン・工業用ミシン):数量 59.9(販売台数換算(千台))× 価格 1.73(1 千台あたりの売上(億円))→ 売上 103 億円・営業利益 3 億円。台数 ×0.65・単価指数 ×1.15・利益率 3.0%
- オートモーティヴ(アルミダイカスト車部品):数量 700(搭載車換算(万台))× 価格 0.09(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 2 億円。搭載車換算 ×0.70・単価指数 ×1.10・利益率 4.0%
倍率:営業赤字なので PBR で置く。床は純現金の半分、運転資本の回収、売れる土地建物の税後で約 62 億円。今の自己資本 326 億円に 0.19 倍、減損後の自己資本 290 億円に 0.21 倍の 61 億円とした。清算されない限り現金の使い道は少数株主が決められない。
確率:地政学の混乱と景気の谷が重なり、ミシンも車部品も同時に冷える。ミシンの投資は 2020 年と 2024 年に実際に落ちた。悲観の確率は 5% を超えて置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アパレルマシナリー(環縫いミシン・工業用ミシン)
ニット衣料の縫製工場で使う環縫いミシンを中心とする工業用ミシンと周辺機器、保守・部品。
| 数量販売台数換算(千台) | 価格1 千台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 92.2 | 1.50 | 138 | 12 |
| 10 年後 中立 | 89.4 | 1.95 | 174 | 18 |
取り方:台数は開示されていない。売上 138 億円を、部品・保守を含めた 1 台あたり約 15 万円(推定)で割って約 9 万 2 千台とした。世界の工業用ミシンの出荷は年 300 万台前後(推定)で、シェアは台数で 3% 程度。物価の分は 1 台あたりの売上(価格)に入れる。台数による推定のため、シェアの動きは数量に含める。
オートモーティヴ(アルミダイカスト車部品)
シートベルトの巻き取り部品などの小型アルミダイカスト部品。中国・ベトナム・メキシコで製造し、一次部品メーカーへ販売。
| 数量搭載車換算(万台) | 価格1 万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.08 | 78 | 10 |
| 10 年後 中立 | 1,080 | 0.10 | 110 | 14 |
取り方:搭載台数は開示されていない。世界の自動車生産 9,000 万台のうち、会社の部品が載る範囲を約 1,000 万台(推定)、1 万台あたり約 0.078 億円とした。数量は搭載車の台数、価格は 1 台あたりの金額の指数で物価の分を持つ。推定である。
リスクと懸念
中国勢の値下げ攻勢
杰克など中国のミシン大手が低価格帯から中位帯に上がっている。会社が低価格の戦略機種を出したこと自体、値段で戦う局面に入った表れだ。中国の車部品も値下げ要請が毎年強まり、セグメント利益は 23% 下がった。
新興国の投資の波
ミシンは南アジアの金融引き締めや信用状の制限、インドへの追加関税の懸念で売上が動く。2024 年 3 月期は営業利益がほぼ 0 まで落ちた。景気の谷では、売上が 3 割前後落ちた実例がある。
海外に滞留する現金
自己資本比率 72.5% には為替換算の評価益 92 億円が含まれる。評価益を除くと 50% 台後半。海外子会社の現金は送金の制限があり、国内で自由に使える額は限られる。還元の原資を見かけほど厚く考えられない。
還元方針の持続性
前期の配当性向は 200% 超と、利益を大きく上回った。方針転換から 1 期しか経っておらず、余剰資金が減れば配当は利益並みに戻る。株主の期待が先行しやすい。
JUKI の持ち株売却と需給
JUKI は 2025 年 10 月に保有する PEGASUS 株を順次売却すると決めた。売却は市場で行われるため、需給の重しになる。業務提携は続くが、頼れる大株主は薄れる。
関税と為替
米国の関税でメキシコ拠点の使い方が変わる局面にある。為替は 10 年 150 円で固定して見ているが、実際は円高で海外の利益が目減りする。自己資本の評価益は円安で増え、円高で消える。
今後の分かれ目
- 営業利益が 2 年続けて 20 億円を超える
- ミシンの投資の回復と戦略機種の定着が確かめられる。楽観側の確率を上げてよい。
- 新しい中期経営計画で、具体的な還元額と資本の減らし方が示される
- 余剰資金の戻り方を 1.0 のまま保てる。示されなければ 0.5 に落として見る。
- 中国の杰克が日本の主要顧客に直接納める
- ミシンの堀が崩れ始めた印。やや悲観の確率を上げる。
- 車部品の米州向けが年 2 割以上伸び、セグメント利益率が 13% に戻る
- 車部品の価値は上がり、中立の利益率を引き上げられる。
- 買収提案や大株主の動きが出る
- 資産の厚さが値付けに反映される。提案価格が事業と資産の価値を映しているかを別に確かめる。
見ておくもの
- アパレルマシナリーのセグメント利益率と戦略機種の売上
- オートモーティヴの米州向け売上と中国の値下げ
- 為替換算調整勘定を除いた自己資本と、国内で使える現金
- 新中期経営計画の還元額・自己株式取得の規模
- JUKI の持ち株売却の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価・PER を見ず、環縫いミシンと車部品を数量(台数換算)×価格で積んだ利益から置いた。資本コストは基本 7.5% に循環 +0.5%・値決め +0.5% を足した 8.5%。中立の ROE は約 3.5% で k に届かず、式の PER は約 7.6 倍、置いたのは 8 倍。悲観側は自己資本の厚さでなく、純現金・運転資本・土地の売却価値から置いた。中立の営業利益率は 5.8% で、過去 12 年の最高 14.8% より低い。新リース会計基準は営業費用に家賃を入れた形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.76 倍・やや楽観 PER 8.6→11.76 倍・中立 PER 8→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。