結論
オーケーエムは、滋賀県に本社を置くバタフライバルブの専門メーカーだ。円板を回して流れを開け閉めする弁で、船、発電所、ビルの空調、工場の配管に使われる。売上の6割弱は船向けで、なかでも船のエンジンの排ガスを処理する設備のバルブでは世界のおよそ4割を握る。筆者の結論はやや割安である。
強みは、規制が作った小さな市場で先に地位を固めたことだ。国際海事機関(IMO)の窒素酸化物の規制で、新しい船の発電機には排ガスを処理する装置が要る。そこに組み込むバルブは高温と腐食に耐えなければならず、作れる会社は限られる。国内の主要な造船所の7割超に納めてきた実績もある。LNGやアンモニアを燃料にする船が増えれば、1隻あたりのバルブの数と値段はさらに上がる。
弱みは造船の波と、海外の競合の値下げだ。前の中期計画は、排ガス用バルブで海外勢の価格攻勢を受けて未達に終わった。2026年度の第1四半期も、部材の値上がりで利益が2割減った。
財務は堅く、純現金は27億円ある。稼ぐ力を造船の波で均して資本コストで測ると、本質価値は今の時価総額を1割強上回る。安全域は大きくないが、事業の質に対して値段は控えめだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オーケーエムは「規制が作った小さな堀を持つ、正直な小型株」だと筆者は見る。船の排ガスという、大手が見向きもしない狭い市場で世界の4割を取った。この種の地位は、市場が小さいほど他社が入ってきにくい。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いた後に株主のものになる利益は、年に7〜9億円ほどだ。工場の更新と研究開発に毎年お金が要るが、借金に頼らずに賄える。資本の使い方も、配当に加えて自社株買いを始め、少しずつ株主の方を向いてきた。
気になるのは2つある。1つは造船の波だ。今は受注が積み上がった山の上にいて、10年のうちに谷は必ず来る。もう1つは価格の力の弱さで、海外勢の値下げに一度負けている。
それでも、稼ぐ力を波の平均で見れば、今の値段は控えめだ。純現金を引けば、事業は利益の6倍台で買える計算になる。安全域は厚くはないが、事業の質に見合う値段がついている。筆者は、新燃料の船のバルブで採用を重ねられるかを、オーナーとして見続けたい。
何で稼ぐ会社か
製品の8割強はバタフライバルブだ。円板を90度回すだけで流れを止められるので、口径の大きな配管でも軽く、場所を取らない。ほかに、泥や粉を含む流れを切るナイフゲートバルブ、ゴムの管を押しつぶして閉めるピンチバルブを作る。注文に合わせた仕様は10万種類を超え、少量多品種の受注生産が基本である。
市場は舶用と陸用に分かれる。舶用は売上の58%で、2026年3月期は18%伸びた。船の冷却水やバラスト水の配管に加え、発電機の排ガス処理装置向けのバルブが伸びた。LNGを燃料にする船の燃料供給の装置向けも、売り先が広がっている。買い手は国内の造船所と、韓国・中国の造船所、舶用機器のメーカーだ。
陸用は売上の42%で、ビルの空調、発電所、上下水道、化学や食品の工場の配管に使われる。メタルワン、英和、ユアサ商事といった商社を通じて売る形が多く、この3社で売上の半分を占める。
工場は滋賀の本社のほか、マレーシアと中国の常熟にある。海外の売上は約2割で、ベトナムと韓国の釜山に事務所を置く。社員は連結で371人の小さな会社だ。
次の柱として、アンモニアと液化水素を運ぶ配管のバルブを開発し、2027年3月期から売り出す。どちらもマイナス数十度から250度近い低温に耐える必要があり、作れる会社はさらに限られる。
優良さと弱いところ
優良さの核は、船の排ガス用バルブでの世界4割のシェアだ。この市場は、2016年以降に建造された船に窒素酸化物の3次規制が掛かったことで生まれた。排ガスを処理する装置は数社の大手が作り、そこに組み込むバルブの供給元は限られる。一度採用されると、同じ型の船では同じバルブが使われ続ける。部品の交換と保守の仕事も後から入る。
ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは厚くない。前の中期計画では、海外の競合が値下げで攻め込み、排ガス用バルブの売上は計画に届かなかった。韓国や中国の造船所の近くには、安いバルブを作る会社がある。シェアは守れても、値段を自分で決める力は強くない。
陸用のバタフライバルブは、国内に巴バルブやキッツなど大きな競合がいる成熟した市場だ。ここでの強みは品ぞろえと納期の短さで、利益率は舶用より低い。
財務と資本の使い方は改善している。自己資本比率は8割を超え、借金はほぼ無い。配当は利益の3割を目安にし、2026年には初めて市場から自社株を買った。会社はPBR1倍超を目標に掲げ、ROEを8〜10%に上げると約束している。前の計画を守れなかった点は割り引くが、方向は株主の側を向いている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
舶用のバルブの需要は、世界の造船の量と、1隻に載る環境装置の数で決まる。造船は10年から20年の周期で山と谷を繰り返す産業だ。2021年以降、コンテナ船とLNG船の発注が膨らみ、造船所の受注残は数年分に積み上がった。2020年代の後半はこの受注の竣工が続くが、その先は発注の波が細る局面が来ると筆者は見る。
一方で、1隻あたりのバルブの中身は濃くなる。IMOは2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げ、LNG、メタノール、アンモニアを燃料にする船が増える。燃料の配管には低温と腐食に耐える特殊なバルブが要り、1隻あたりの金額は重油の船より大きい。窒素酸化物の規制が掛かる海域も広がっている。造船の数が横ばいでも、バルブの売上は伸びる余地がある。
競争の相手は、国内では中北製作所などの舶用バルブのメーカー、海外では韓国と中国のバルブ会社だ。造船の重心が韓国と中国に移る中、現地の会社は近さと値段で戦う。オーケーエムが地位を保てるかは、排ガスや新燃料のような難しい用途で先を行けるかにかかる。
陸用は国内のバルブ市場が約4,600億円で横ばいとされる。ビルの建て替えや、データセンターの冷却の配管、上下水道の更新が下支えする。世界の産業用バルブ市場は2034年に1,200億ドル台へ伸びる見通しだが、この会社の陸用の売上は国内が中心で、伸びは物価並みにとどまるだろう。
資本政策と M&A
株主への還元は、配当性向30%を目安とし、1株あたりの配当の額の維持・向上を基本とする。2026年3月期は配当に2.4億円、自社株買いに2.6億円を使い、利益の6割強を戻した。自社株買いは上場後初めてで、立会外の取引で一度に買った。
中期計画の3年間では、56億円の現金の入りのうち43億円を戦略投資に回すとしている。国内工場の更新、海外工場の増産、研究開発、自動化、そしてM&Aだ。還元は3年で8億円と控えめである。手元の純現金27億円の多くは、この投資に使われる前提で見る必要がある。
大株主は創業家の資産管理会社が上位に並び、クローバー通商が10%、奥村晋一商会が6.6%を持つ。2025年には奥村晋一氏の持ち分が資産管理会社へ移った。創業家の持ち分が厚いので、敵対的な買収の的にはなりにくい。一方で、創業家が非公開化を選ぶ道もゼロではない。
筆者は、戦略投資がM&Aに向かう時の値段と、ROE8〜10%の約束が守られるかを見ている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
船の脱炭素は、この会社にとって10年続く追い風だ。IMOは2050年の排出実質ゼロを掲げ、LNG、メタノール、アンモニアを燃料にする船の発注が増えている。燃料の配管には低温と腐食に耐えるバルブが要り、1隻あたりの金額は重油の船の何倍にもなる。オーケーエムはLNG燃料船の燃料供給の装置向けで売り先を広げ、アンモニアと液化水素のバルブも2027年3月期に売り出す。
排ガス用バルブで世界の4割を持つ地位は、新燃料の船でも効く。造船所と舶用機器のメーカーは、実績のある部品を使い続ける。国内の主要な造船所の7割超に納めた関係は、韓国や中国の造船所に広げる足場にもなる。
2026年3月期の営業利益は13億円で、中期計画の6.8億円を大きく超えた。計画の13.3億円は1年前倒しで届いた形だ。会社は2031年3月期に売上200億円・営業利益20億円を掲げる。その半分を達成するだけで、今の値段は安い。
純現金は27億円あり、借金はほぼ無い。自社株買いを始め、PBR1倍超を目標にした。資本の使い方が株主に向き始めた今が、評価の見直しの入り口だ。
慎重な見方
造船は周期の長い産業で、今は山の上にいる。2021年からの大量発注の竣工が続いているだけで、10年のうちに発注が細る谷は必ず来る。2026年3月期の舶用の18%増は、その山の恩恵だ。山の利益を常態と見て計画を語るのは危うい。
価格の力も弱い。前の中期計画は、排ガス用バルブで海外勢の値下げに押され、売上も利益も大きく未達だった。造船の重心は韓国と中国に移り、現地のバルブ会社は近さと値段で攻めてくる。2026年度の第1四半期は、部材の値上がりを売値に移しきれず、営業利益が2割減った。会社の通期の予想も減益だ。
陸用は国内の成熟市場で、巴バルブやキッツといった大手と競う。商社3社で売上の半分を占め、値段は商社との交渉で決まる。ここに伸びの余地は小さい。
中期計画では3年で43億円を戦略投資に回し、M&Aも含む。小さな会社の買収は、値段を誤ると一度で何年分の利益を失う。手元の純現金は株主の安全域ではなく、投資の元手として見るべきだ。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。船の脱炭素で1隻あたりのバルブの中身が濃くなる流れは、造船の数の波より長く続く。排ガス用バルブの4割の地位は、新燃料の船でも足場になる。ただ、価格の力の弱さと造船の谷は現実の重しで、確率は中立に最も厚く置き、やや楽観をやや悲観と同じ重さにした。同業の中北製作所より、悲観の確率を少し軽くした。シェアの高い用途が環境規制で育つ分だけ、構造的に負ける道は狭いと見たからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,581 円156 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 838 円37 億円)。 今の値に割り戻すと 2,321 円101 億円、今との差 +57.6%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,401 円280 億円 | 1,174 円51 億円 | +414.3% | +17.8% | 606 円26 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,147 円225 億円 | 1,035 円45 億円 | +319.7% | +15.4% | 1,360 円59 億円 |
| 中立 | 38% | 4,116 円180 億円 | 907 円40 億円 | +241.0% | +13.1% | 1,909 円83 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,479 円65 億円 | 595 円26 億円 | +40.8% | +3.5% | 456 円20 億円 |
| 悲観 | 10% | 472 円21 億円 | 407 円18 億円 | −40.3% | −5.0% | 88 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,581 円156 億円 | 838 円37 億円 | +200.0% | +11.6% | 4,419 円193 億円 |
今の株価時価総額 1,473 円64 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:新燃料の船で地位を広げ、Create200に届く 利益 18 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 6,401 円280 億円
IMOの規制が前倒しで強まり、LNG・メタノール・アンモニアを燃料にする船が新造船の主流になる。造船の発注は2020年代後半の谷が浅く、2030年代に再び山を迎える。オーケーエムは排ガス用バルブの4割の地位を保ったまま、新燃料の供給装置向けでも採用を重ねる。1隻あたりのバルブの金額は、物価を除いても今の2割増しになる。
液化水素の運搬船と受け入れ基地の配管でも、低温に耐えるバタフライバルブが採用される。陸用はデータセンターの冷却と発電所の更新で台数が伸びる。売上は200億円に届き、会社の長期目標を数年遅れで達成する。
営業利益率は12%台に上がり、ROEは資本コストを上回る。M&Aは小さな補完の買収にとどまり、還元も厚くなる。規制が作った小さな堀が、10年かけて広がる筋書きだ。
- 舶用:数量 2,800(バルブを納める新造船の隻数(隻・年、推定))× 価格 0.04(1隻あたりの売上(億円・名目))→ 売上 116 億円・営業利益 16 億円。2,800隻×415万円(物価1.34倍に新燃料の上乗せ1.24倍)
- 陸用:数量 120,000(出荷するバルブの台数(台・年、推定))× 価格 0.00(1台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 84 億円・営業利益 8 億円。12万台×7万円
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 15.52 倍、時価総額 280 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新燃料の船の普及と造船の高い水準が10年続き、アンモニア・液化水素のバルブでも採用が重なる必要がある。会社の長期目標の達成に近い道で、1割弱に置いた。
やや楽観 22% やや楽観:造船の谷を新燃料の中身で埋める 利益 15 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 5,147 円225 億円
2020年代の後半に造船の発注は細るが、谷は過去ほど深くない。新しく造られる船の多くがLNGやメタノールを燃料にし、1隻あたりのバルブの金額は物価を除いて1割強増える。排ガス用バルブのシェアは海外勢の値下げで少し削られるが、新燃料の用途で取り返す。
陸用は国内のビルと工場の更新で台数を少しずつ伸ばす。値上げも物価並みに通る。売上は180億円前後で、中期計画の営業利益率10%超を保つ。
配当は利益の3割を守り、自社株買いも続ける。純現金の一部は国内工場の自動化と海外工場の増産に使い、M&Aは慎重に選ぶ。ROEは資本コストを少し上回る所まで上がる。
- 舶用:数量 2,600(バルブを納める新造船の隻数(隻・年、推定))× 価格 0.04(1隻あたりの売上(億円・名目))→ 売上 104 億円・営業利益 14 億円。2,600隻×400万円
- 陸用:数量 110,000(出荷するバルブの台数(台・年、推定))× 価格 0.00(1台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 7 億円。11万台×6.9万円
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 14.76 倍、時価総額 221 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:造船の数は波を打つが、新燃料の船の比率が上がり1隻あたりの金額が増える道。規制の流れはすでに決まっており、やや悲観と同じ22%に置いた。
中立 38% 中立:造船は平年並みに戻り、中身の濃さで伸びる 利益 12 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 4,116 円180 億円
2021年からの大量発注の竣工が一巡し、造船の数は今の山から1割ほど下がって平年並みに戻る。それでも環境規制で1隻あたりのバルブは増え、金額は物価を除いて15%ほど上がる。舶用の売上は物価の分を含めて90億円台になる。営業利益率は今の山の水準から少し下がり、12%前後に落ち着く。
陸用は国内の成熟した市場で、台数は1割ほど伸び、値段は物価並みに上がる。データセンターの冷却や上下水道の更新が下支えするが、大きな伸びは無い。
会社全体の売上は160億円前後で、営業利益率は10%強を保つ。中期計画の目標の水準が10年続く形だ。配当と自社株買いで利益の4割を戻し、残りは工場と研究開発に使う。ROEは7%台で資本コストに少し届かないが、事業は堅く、株主の取り分は着実に増える。
- 舶用:数量 2,400(バルブを納める新造船の隻数(隻・年、推定))× 価格 0.04(1隻あたりの売上(億円・名目))→ 売上 92 億円・営業利益 11 億円。2,400隻×385万円(物価1.34倍×中身1.15倍)
- 陸用:数量 100,000(出荷するバルブの台数(台・年、推定))× 価格 0.00(1台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 5 億円。10万台×6.7万円(物価並み)
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 13.96 倍、時価総額 170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:造船の数は今の山から1割ほど下がり、1隻あたりの中身の増加がそれを補う中心の見方。同業の中北製作所の中立と同じ38%。
やや悲観 22% やや悲観:造船の谷と海外勢の値下げが重なる 利益 6 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,479 円65 億円
2020年代の終わりに造船の発注が大きく落ち込み、竣工の数は今の8割を切る。韓国と中国のバルブ会社が排ガス用と新燃料用で値下げを仕掛け、シェアは4割から3割前後に下がる。1隻あたりの金額は物価並みにしか上がらない。
陸用も国内の建設の減速で台数が減り、値上げは物価に届かない。部材の値上がりを売値に移しきれず、営業利益率は6%台に下がる。
会社は純現金で工場の稼働を支え、配当の下限を守る。中期計画で掲げた戦略投資のうち、M&Aの一部は思ったほど稼がない。ROEは4%前後に落ち、事業の稼ぎは資本コストの半分になる。
- 舶用:数量 2,000(バルブを納める新造船の隻数(隻・年、推定))× 価格 0.04(1隻あたりの売上(億円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 5 億円。2,000隻×350万円(物価並み)
- 陸用:数量 90,000(出荷するバルブの台数(台・年、推定))× 価格 0.00(1台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 3 億円。9万台×6.4万円
倍率:事業のROE4.1%はkの半分。PERは1÷k=12.1倍の6割の7.5倍。余った現金は谷で一部を食うとみて0.75倍の7.5億円に戻り方0.75を掛けて足した。
確率:前の中期計画で海外勢の値下げに負けた実績があり、造船の谷と重なる道は十分ありうる。22%に置いた。
悲観 10% 悲観:舶用の地位を失い、ただのバルブ会社になる 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 472 円21 億円
造船の長い谷が来る中で、韓国と中国の造船所は現地のバルブ会社の部品に切り替える。オーケーエムの排ガス用バルブのシェアは2割を割り、新燃料の用途でも大手の舶用機器メーカーの系列に押し出される。舶用の売上は今より減り、利益はほぼ消える。
陸用は国内の成熟した市場で、商社からの値下げの要求が続く。部材の値上がりも重なり、営業利益率は3%を切る。
会社は配当を下限まで絞り、純現金を取り崩して工場を保つ。M&Aで買った会社の減損も出る。会社は残るが、事業の稼ぎは資本コストに遠く、値段は手元の現金に戻り方を掛けた所まで下がる。
- 舶用:数量 1,700(バルブを納める新造船の隻数(隻・年、推定))× 価格 0.03(1隻あたりの売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 1 億円。1,700隻×320万円(値下げ)
- 陸用:数量 80,000(出荷するバルブの台数(台・年、推定))× 価格 0.00(1台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。8万台×6万円
倍率:事業の稼ぎは純利益1.9億円÷k=23億円ほどで、床の資産と同じ水準。純現金27.5億円に戻り方0.75を掛けた20.6億円を、今の自己資本108億円に対する倍率で書いた。
確率:排ガス用バルブの地位を海外勢に奪われ、新燃料の用途でも採用が進まない道。規制で用途が広がる分だけ構造的に負ける道は狭いので、同業より少し軽い1割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
舶用
船の冷却水・バラスト水の配管、発電機の排ガス処理装置、LNG燃料の供給装置などに組み込むバタフライバルブ。
| 数量バルブを納める新造船の隻数(隻・年、推定) | 価格1隻あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,570 | 0.03 | 64 | 9 |
| 10 年後 中立 | 2,400 | 0.04 | 92 | 11 |
取り方:有報の舶用の売上64.23億円を、1隻あたり約250万円のバルブとみて年2,570隻相当と推定した(世界の新造船の竣工は大型船で年2,000〜3,000隻、国内主要造船所の7割超に納入)。単一セグメントなので営業利益は舶用13.5%・陸用9%と置いた推定。
陸用
ビルの空調、発電所、上下水道、化学・食品の工場の配管のバタフライバルブ、ナイフゲート・ピンチバルブ。
| 数量出荷するバルブの台数(台・年、推定) | 価格1台あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 93,800 | 0.00 | 47 | 4 |
| 10 年後 中立 | 100,000 | 0.00 | 67 | 5 |
取り方:有報の陸用の売上46.91億円を、1台あたり約5万円とみて年9.38万台と推定した。
リスクと懸念
造船の周期
売上の6割弱が新造船に乗る。2021年からの大量発注の竣工が今の売上を押し上げており、発注が細れば数年遅れで売上が落ちる。造船は10年から20年の周期を持ち、谷では受注が半分になることもある。今の利益を常態と見ると、稼ぐ力を高く見誤る。
海外勢の値下げ
前の中期計画は、排ガス用バルブで海外の競合の価格攻勢を受けて未達に終わった。造船の重心が韓国と中国に移り、現地のバルブ会社は近さと値段で攻めてくる。シェアの4割を保てても、値段を下げて守る形になれば利益率は落ちる。
部材の値上がり
2026年度の第1四半期は、部材の調達費が上がり、売上が増えても営業利益が2割減った。7月に値上げしたが、商社と造船所への売値に移すまでには時間がかかる。鉄や樹脂の値段の急な上昇は、毎回利益を削る。
M&Aの値段
中期計画では3年で43億円を戦略投資に回し、M&Aも含む。純現金の大半に当たる額だ。小さな会社の買収は、相手の稼ぎを見誤ると一度で数年分の利益を失う。どの会社をいくらで買うかが、10年の価値を大きく左右する。
商社への依存
陸用の多くはメタルワン、英和、ユアサ商事の3社を通じて売り、この3社で売上の半分を占める。商社の扱いの方針や値下げの要求が、そのまま売上と利益率に響く。最終の使い手との距離が遠いのも弱みだ。
新燃料の不確かさ
アンモニアや水素を燃料にする船は、技術と規制の両方がまだ固まっていない。主流がLNGやメタノールに偏れば、開発したアンモニアと液化水素のバルブは思ったほど売れない。新燃料への期待に寄せすぎない見方が要る。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が中期計画の10.6億円を上回ったら
- 部材の値上がりを売値に移せたと見て、中立の利益率を保つ。やや楽観の確率を少し上げてよい。
- 世界の新造船の発注量が2年続けて3割以上減ったら
- 造船の谷の入り口と見て、やや悲観の確率を上げる。竣工の減少は2〜3年遅れで売上に出る。
- アンモニア燃料船や液化水素の運搬船でバルブの採用が発表されたら
- 1隻あたりの中身が濃くなる筋書きが進んだと見て、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 純現金の多くを使う大きなM&Aを発表したら
- 買う値段と相手の利益を見て評価し直す。稼ぎの倍率が高すぎる買収なら、価値を下に見直す。
- 自社株買いを毎年の方針にしたら
- 余った現金の戻り方を上げ、本質価値を上に見直す。
- 排ガス用バルブで海外勢の値下げが再び強まったら
- シェアと利益率の前提を下に見直し、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 舶用と陸用の受注高(四半期)
- 世界の新造船の発注量と、新燃料の船の比率
- 営業利益率と部材の価格転嫁
- 戦略投資とM&Aの中身
- 配当と自社株買いの額
倍率と資本コストの決め方
売上は舶用を隻数×1隻の金額、陸用を台数×1台の金額で積んだ。1隻の金額は物価に加え、環境規制で中身が濃くなる分を中立で1.15倍だけ上乗せした。倍率は事業のROE(余った現金を除く)とk7.5%から、ROEがkを超える筋書きは正当化PER、届かない筋書きは1÷k=12.1倍を上限にその6〜8.5割で置いた。純現金27.5億円は戦略投資に使う前提で、余った現金は10億円だけ足した。今のPER8倍台やPBR0.6倍からは置いていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.2→15.52 倍・やや楽観 PER 9.9→14.76 倍・中立 PER 9.9→13.96 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75%を足した8.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。