結論
信和は、建設現場の足場(仮設資材)と、物流倉庫の棚やラックなどの物流機器を作る会社だ。くさび緊結式足場(くさびを打ち込んで組む足場)では国内の出荷金額で首位とされる。2026年3月期は売上が約201億円と前期比で15%伸び、営業利益は約25億円と過去最高に近い水準になった。\n筆者の結論は、今の値段はやや割安の側だ。足場は建設の需要に左右され、鋼材の値動きも利益を動かす。さらに、仮設の施工会社ヤグミの買収などで純有利子負債が約78億円に増えた。金利が上がるほど利払いが重くなる。\nそれでも中立では、建設現場の人手不足を背景に足場の更新が進み、物流機器の需要も伸びる。10年後の営業利益は30億円前後まで増える。ROEは資本コストにわずかに届かず、倍率を高くは置けない。配当と、返済や内部に残る利益を含めたトータルで、本質価値は今の時価総額を1割ほど上回る。割安の幅は小さく、安全域は広くない。
筆者は、買収の成果が数字に出るまでは、この会社を判断を急がず見ていきたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は事業が理解しやすく、足場という地味な必需品を押さえている点が魅力だ。建設現場がある限り、足場は要る。首位級の地位があり、レンタルや施工まで取り込めば、ストックの収益が増える。\nオーナー利益(設備投資を引いたあとの株主の取り分)は、純利益より少なめだ。足場の部材は貸し出す資産で、更新投資が要る。買収後の借金返済にも現金が回る。\n気がかりは資本配分だ。ここ数年は買収に資金を使い、還元は抑えた。買収が割高なら価値を壊し、適正なら価値を増やす。ヤグミなどの買収成果が数字に出てくるまで、筆者は慎重に見る。安全域は、資産の厚さにあるが、足場の鋼材在庫は価格が動く。
経営者が買収の価格に厳しくなれるか、借金を返しながら配当を続けられるかが、筆者の評価を分ける点だ。ここは慎重に見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は仮設資材事業で、売上の約7割を占める。くさび緊結式足場やシステム足場など、建設現場で高所の作業用に組む足場の部材を作り、販売とレンタルを行う。顧客は足場の施工会社やレンタル会社、ゼネコンで、国内の建設現場に広く入っている。2024年4月にはヤグミグループを子会社化し、全国有数の仮設施工会社を取り込んだ。製造と施工をつなげて、足場の需要を直接取りにいく体制だ。\nもう一つの柱が物流機器事業で、売上の約3割。倉庫や工場で使う棚、ラック、台車などを手がける。EC(ネット通販)の拡大で物流施設が増え、人手不足で保管や搬送の省力化が求められている。2003年に部門が設立された新しい分野で、仮設資材が弱い時期の下支えになってきた。\n2025年にはアルミ加工の凰金属工業を完全子会社にし、型枠・土木工事の海津建設もグループに加えた。鋼材を使う製造業なので、鋼材の価格が利益率に直結する。中期経営計画では、5年後に売上200億円、営業利益24億円を掲げたが、2026年3月期にはすでに売上・営業利益ともほぼ目標に届いた。
売上のほぼ全てが国内で、為替の影響は小さい。会計はIFRS(国際会計基準)で、リースはすでに貸借対照表に載っており、新リース会計基準による形の変化はない。
優良さと弱いところ
強みは、足場の首位級の地位と、製造から施工・レンタルまで一貫して持てる点だ。くさび緊結式足場は、組み立てが速く安全性が高い。現場の職人が使い慣れた部材は、簡単には替えられない。ヤグミの取り込みで、施工現場の需要を直接つかめるようになった。\n数字では、営業利益率が2016年3月期の16%台から、2024年3月期の5%台まで下がり、2026年3月期に12%台まで戻った。この10年で赤字になった期はない。自己資本比率は53%と十分だが、買収で純有利子負債が増えた。\n弱みは、建設の波と鋼材価格に左右される点だ。2024年3月期のように、利益が半分以下に落ちる年もあった。また、買収で規模が大きくなる一方、ROEは10%前後にとどまり、資本コストを上回るとは言い切れない。筆者は、買収の成果が数字に出るかどうかを、これから見極めたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の足場需要は、新築の建設に加えて、老朽化したビル・インフラの改修、再開発、都市の高層化で支えられる。建設現場では人手不足が深刻で、組み立てが速い足場の需要が高まる。一方、人口減少で新築住宅の着工は細っていく。\n足場の部材は鋼材が主な原料なので、鋼材価格の上昇は原価を押し上げる。価格転嫁が進めば利益は守れるが、遅れれば利益率が落ちる。物価が3%で上がる前提では、転嫁は比較的通りやすい。\n競合は、くさび式ではアルインコ(大株主でもある)、タカミヤなど。施工とレンタルを含む仮設の分野では、ヤグミのような施工会社と組む動きが業界で進む。物流機器では、ダイフクなどの大手から中堅まで多く、EC拡大で需要が伸びる一方、価格競争も激しい。世界的な建設の落ち込みは影響が小さく、国内中心の事業だ。
将来は、足場の組み立ての自動化や、ICTによる現場管理が競争の軸になる。部材の軽量化や高強度化で、安全性と施工の速さを両立できる企業が優位に立つ。一方、開発費が重く、小さな会社は体力が続かない。国の安全基準の強化も、標準化された足場への切り替えを後押ししている。
資本政策と M&A
買収が資本政策の中心になった。2024年4月にヤグミ、2025年に凰金属工業と海津建設を取り込み、純有利子負債は前々期の約16億円から、2026年3月期は約78億円に増えた。自己資本比率は53%で、買収後の財務としては許容範囲だが、金利が上がれば利払いが重くなる。\n株主還元は、配当に下限を設けた累進配当の方針だ。配当性向は3割弱と低めで、利益の7割は内部に残る。自社株買いは目立たない。買収で借金を増やした以上、当面は還元よりも借金の返済と事業の統合が優先されるだろう。\n大株主には阪和興業とアルインコがそれぞれ5%台で名を連ねるが、親会社ではない。M&Aは今後も続く可能性があり、買収の成果と価格が資本効率を左右する。TOBの確率は、小型で財務が整う会社として一定程度ある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の建設現場は人手不足で、組み立てが速い足場の需要が高まっている。くさび式で首位級の地位を持ち、製造から施工までつなげたことで、ストックの収益が増える。ヤグミの取り込みで、現場の需要を直接取れる。\n営業利益率は12%台に戻り、5年後の目標をすでに達成した。物流機器もEC拡大で伸び、2本柱が揃う。累進配当の方針で、利益が増えれば配当も増える。\n10年で物価が上がれば、足場の価格も上がり、売上と利益は名目で膨らむ。買収の効果が出れば、営業利益は35億円規模も見込める。
物価が上がる世界では、実物資産である足場の部材の価値も上がり、レンタル用の保有資産が含み益を持つことになる。施工部門を取り込んだ会社は同業にほとんどなく、仮設の川上から川下までを握る強みが数字に現れ始めている。競合に対する価格交渉力も、規模が大きくなるほど増す。鋼材の価格上昇も、首位級のメーカーほど転嫁しやすい。レンタル用に保有する部材は、物価が上がれば更新費も増えるが、貸出料金も同じように上がる。稼働率を高く保てれば、資産の収益は着実に積み上がる。
慎重な見方
建設の波と鋼材価格に利益が左右される事業で、過去にも利益が半分以下に落ちた年がある。国内の新築は人口減で細り、足場の数量は長期的に減る。物流機器は競争が激しく、価格を上げにくい。\n買収で純有利子負債が約78億円に増えた。金利が3%台になると、利払いは数億円増える。買収の効果が出なければ、借金だけが残る。ROEは10%前後で、資本コストを上回るかも怪しい。\n5年後の目標を前倒しで達成したのは、好況期のためで、再現性は低い。景気が反転すれば、足場の施工現場が減り、買収した会社の収益も悪化する。
足場の需要は、再開発が一巡すれば細る。物流機器の拡大も、ECの伸びが鈍れば止まる。買収で膨らんだ規模が、そのまま重荷になりうる。加えて、施工は労務費の比率が高く、人手不足と賃上げの圧力が利益率を削る。製造業の感覚で買った施工会社は、思わぬ重荷になる。景気の悪化は、施工の遅れと不採算工事を同時に招く。
どちらに重みを置いたか
営業利益率の回復と首位級の地位は本物で、強気の見方に分がある。一方、買収後の借金と金利、建設の波も重い。確率は中立を厚くし、やや悲観の側にも重みを置いた。悲観は、鋼材高と建設不況が重なる負けとして1割強に置いた。確率の寄せ方では、買収による借金の重さを慎重に見て、悲観側に厚みを置いた。強気の見方も筋が通るため、完全な悲観には寄せていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,821 円247 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 404 円55 億円)。 今の値に割り戻すと 1,165 円158 億円、今との差 +24.6%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,350 円454 億円 | 664 円90 億円 | +329.3% | +15.7% | 401 円54 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,505 円340 億円 | 531 円72 億円 | +224.7% | +12.5% | 668 円91 億円 |
| 中立 | 33% | 2,024 円274 億円 | 443 円60 億円 | +163.8% | +10.2% | 814 円110 億円 |
| やや悲観 | 23% | 887 円120 億円 | 280 円38 億円 | +24.8% | +2.2% | 268 円36 億円 |
| 悲観 | 12% | 524 円71 億円 | 89 円12 億円 | −34.5% | −4.1% | 73 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,821 円247 億円 | 404 円55 億円 | +138.0% | +9.1% | 2,225 円302 億円 |
今の株価時価総額 935 円127 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 買収の効果が出て、足場も物流も伸びる 利益 30 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 3,350 円454 億円
ヤグミなど施工部門の利益率が上がり、仮設資材全体の営業利益率は16%まで戻る。物流機器もECで数量が3割伸び、営業利益率は12%に上がる。営業利益は43億円まで増え、借金は返済が進む。配当は累進で増え、自社株買いも始まる。足場の鋼材高も価格転嫁で吸収できる。この筋書きでは、足場の首位級の地位が収益力の源になり、物流機器との二本柱が揃う。無理な買収をせず、資本効率も上がる展開だ。10年の間に、国内の改修需要が積み上がり、足場の稼働率も高く保たれる。利益率の改善は、買収のシナジーと価格転嫁の両方から生まれる。
- 仮設資材(足場・施工・レンタル):数量 6.1(出荷量(万トン))× 価格 35(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 213 億円・営業利益 34 億円。数量は今の 1.05 倍、価格は 1.40 倍、営業利益率 16.0%
- 物流機器(ラック・棚・台車):数量 10.5(販売台数(万台))× 価格 9.80(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 103 億円・営業利益 12 億円。数量は今の 1.30 倍、価格は 1.40 倍、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.14 倍、時価総額 454 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収の成果と建設の好調が同時に続く前提でハードルが高く、1割にとどめた。
やや楽観 22% 施工との一貫体制が定着し、利益率は11%台 利益 25 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 2,505 円340 億円
足場の数量は横ばいを保ち、価格は物価並みに上がる。施工との一貫体制が定着して、営業利益率は仮設で15%、物流で11%になる。営業利益は37億円、純利益は24億円ほど。配当は純利益の3割台を保ち、借金の返済も進む。鋼材価格は転嫁が通り、利益率の振れは小さい。ヤグミを含む仮設部門の収益が安定し、物流機器も堅実に伸びる。借入の金利負担は増えるが、利益の伸びで吸収できる。買収の追加は控えめになる。国内の改修と再開発が下支えになり、足場の稼働は安定する。海外には出ず、国内で着実に積み上げる形だ。国内の人手不足が続く限り、組み立てが速い足場の需要は底堅く、買い替えのペースも保たれる。
- 仮設資材(足場・施工・レンタル):数量 5.8(出荷量(万トン))× 価格 34(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 198 億円・営業利益 30 億円。数量は今の 1.00 倍、価格は 1.37 倍、営業利益率 15.0%
- 物流機器(ラック・棚・台車):数量 9.7(販売台数(万台))× 価格 9.59(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 93 億円・営業利益 10 億円。数量は今の 1.20 倍、価格は 1.37 倍、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.86 倍、時価総額 340 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収の統合が進み、足場の需要が堅調に続く可能性は十分あり、中立の次に起こりやすい。
中立 33% 中立:足場は少し減り、物流が伸びて利益30億円規模 利益 19 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,024 円274 億円
足場の数量は人口減で5%減るが、価格は物価並みに上がり、売上は180億円まで増える。営業利益率は14%で、過去の山の16%を超えない。物流機器は数量が1割伸び、売上は90億円規模、営業利益率は10%。営業利益は31億円、借り換えで増える利払いを引くと純利益は19億円ほど。配当は純利益の3割台で、10年で60億円。減価償却は今の設備分は増えず、更新投資は建築費の上昇で膨らむ。金利は上がるが、借金は10年かけて返済に回り、純有利子負債は少しずつ減る。大きな買収は想定せず、事業の統合と収益性の改善が続く。
- 仮設資材(足場・施工・レンタル):数量 5.5(出荷量(万トン))× 価格 34(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 184 億円・営業利益 26 億円。数量は今の 0.95 倍、価格は 1.34 倍、営業利益率 14.0%
- 物流機器(ラック・棚・台車):数量 8.9(販売台数(万台))× 価格 9.38(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 8 億円。数量は今の 1.10 倍、価格は 1.34 倍、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 259 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足場の更新需要と物流機器の成長はどちらも読みやすく、中間を置いた。
やや悲観 23% 鋼材高と建設の減速で利益率が低下 利益 9 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 887 円120 億円
新築の着工が細り、足場の数量は2割近く減る。鋼材高の転嫁が遅れ、仮設の営業利益率は9%に下がる。物流機器も価格競争で7%どまり。営業利益は15億円ほど、利払いが増えて純利益は8億円台にとどまる。配当は純利益の4割台を保つが、借金の返済は進まず、買収の成果も乏しい。金利負担と鋼材高が同時にかかり、財務の余裕が薄れる。新しい買収は難しく、既存事業の立て直しに専念する時期が長引く。物流機器の価格競争も続き、稼ぎの柱が両方とも弱る。減価償却と利払いが利益を圧迫し、配当の余力も細る。施工部門の採算も悪化し、のれんの償却負担が重くなる。事業の入れ替えを迫られる可能性もある。
- 仮設資材(足場・施工・レンタル):数量 4.7(出荷量(万トン))× 価格 31(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 148 億円・営業利益 13 億円。数量は今の 0.82 倍、価格は 1.25 倍、営業利益率 9.0%
- 物流機器(ラック・棚・台車):数量 7.7(販売台数(万台))× 価格 8.75(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 67 億円・営業利益 5 億円。数量は今の 0.95 倍、価格は 1.25 倍、営業利益率 7.0%
倍率:ROEは約3%でkを大きく下回るので、PERは1÷kが上限。ためた利益は額面未満の価値という前提で、約7割の9倍に置いた。
確率:2024年3月期のように利益が半分以下に落ちる年が、10年のうちに何度か来る可能性を、2割強に置いた。
悲観 12% 構造的に負け、買収が裏目に出て建設不況も重なる 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 524 円71 億円
新築と改修の需要が細り、足場の数量は4割落ちる。施工部門の不採算が表面化し、のれんの減損も出る。物流機器も競争で収益を失い、営業利益はほぼゼロ。利払いが重く、純利益は赤字になる。こうなると稼ぐ力ではなく、持つ資産の価値で値が付く。足場の鋼材在庫と土地・設備の売却価値が下支えになるが、借金の返済に回るため手元には残りにくい。取引先のゼネコンや施工会社も厳しくなり、売掛債権の回収にも気を配る必要が出る。再編や身売りの対象になる可能性も高まる。のれんの減損で自己資本が減り、財務の余裕が失われる。銀行との交渉で、返済条件が厳しくなる可能性もある。
- 仮設資材(足場・施工・レンタル):数量 3.5(出荷量(万トン))× 価格 28(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 95 億円・営業利益 4 億円。数量は今の 0.60 倍、価格は 1.10 倍、営業利益率 4.0%
- 物流機器(ラック・棚・台車):数量 6.1(販売台数(万台))× 価格 7.70(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。数量は今の 0.75 倍、価格は 1.10 倍、営業利益率 2.0%
倍率:今の自己資本169億円に0.42倍を掛けた。稼ぐ力が消えるので、売れる資産の税後の価値で値を付けた。純有利子負債を足したEV÷営業利益は100倍を超え、利益の倍率で割り引ける状況にないことも確認した。
確率:鋼材高と建設不況に買収の失敗が重なる構造的な負けとして1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
仮設資材(足場・施工・レンタル)
くさび緊結式足場・システム足場の製造・販売・レンタルと、ヤグミの施工。
| 数量出荷量(万トン) | 価格1トンあたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.8 | 25 | 145 | 22 |
| 10 年後 中立 | 5.5 | 34 | 184 | 26 |
取り方:仮設資材の売上は2026年3月期に全体の71.8%(会社開示)で約145億円。出荷量は開示がなく、鋼材部材の平均単価を1トン25万円と仮置きして逆算した推定値。ヤグミの施工売上を含む。営業利益は全社の営業利益24.8億円から物流機器と本社費を引いた推定配分。
物流機器(ラック・棚・台車)
倉庫・工場向けの棚、ラック、台車などの製造・販売。
| 数量販売台数(万台) | 価格1台あたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.1 | 7.00 | 57 | 6 |
| 10 年後 中立 | 8.9 | 9.38 | 84 | 8 |
取り方:物流機器の売上は同28.2%(会社開示)で約57億円。台数は開示がなく、1台7万円と仮置きして逆算した推定値。営業利益率は仮設より低い10%と推定。
リスクと懸念
建設の波と鋼材価格
足場は鋼材が主な原料で、鋼材が高騰して価格転嫁が遅れれば利益率が落ちる。新築の着工が減る年は、数量も落ちる。過去にも利益が半分以下に落ちた年がある。
買収後の借金と金利上昇
ヤグミ、凰金属工業の買収で純有利子負債は約78億円に増えた。金利が上がれば利払いが増え、買収の成果が出なければ借金だけが残る。
買収の統合と成果
施工会社を取り込んだことで、製造と施工のどちらも自社で負うことになり、現場の事故や不採算工事のリスクが増す。
物流機器の価格競争
大手から中堅まで競合が多く、ECの拡大で需要は伸びるが、価格は上げにくい。仮設の弱い時期の下支えになれるかは不透明。
人口減による長期の数量減
新築住宅と中低層建築の着工は、人口減で長期的に細る。改修と高層の需要でどこまで補えるかが分かれ目。
資本効率の低さ
ROEは10%前後で、資本コストを上回るとは言い切れない。買収で自己資本が積み上がっても、利益率が追いつかなければ資本効率は下がる。
今後の分かれ目
- ヤグミの施工部門が営業利益率8%以上を安定して出したら
- 買収の成果が数字で確認でき、中立の営業利益率を上げ、楽観側に重みを移す。
- 営業利益率が8%を割ったら
- 2026年3月期の回復が好況期の一時的なものだった合図。やや悲観の確率を上げる。
- 純有利子負債が50億円を下回ったら
- 買収後の財務の改善が進み、借金の上乗せを下げられる。
- 鋼材価格が急騰し、価格転嫁が遅れたら
- 利益率が数ポイント落ちる。中立の営業利益率を下げる。
- 物流機器の売上が仮設資材の伸びを上回って続いたら
- 2本柱の収益が安定したことになり、利益の振れが小さくなる。
- TOBや大株主の変更が起きたら
- 首位級の地位と財務が評価される上振れ要因。条件を確認する。
見ておくもの
- 仮設資材・物流機器別の営業利益率
- 鋼材価格と価格転嫁の速さ
- 純有利子負債と利払い
- ヤグミの施工部門の利益
- 新設住宅・非住宅の着工統計
倍率と資本コストの決め方
売上は出荷量×単価で積み、中立の営業利益率は2016年3月期の山(16%台)より低い11%台に置いた。倍率はROEがkをわずかに下回るため上限1÷kの約9割。今の株価は参照していない。会計はIFRSで、リース負債はすでに純有利子負債に含まれており、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→15.14 倍・やや楽観 PER 11→13.86 倍・中立 PER 10.5→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質+0.75%を足して8.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。