結論
NFKホールディングスは、工場の炉に付けるバーナーを作る日本ファーネスを中核とする持株会社だ。2025年に半導体関連の基板や装置を手がけるキャストリコを、2026年には静岡の電気工事会社を買い、業態を急に広げている。筆者の結論は割高である。
割安に見える理由は現金だ。純現金は約32億円で、時価総額47億円の7割近い。ただ、この現金は配当に回らず、買収に使われている。少数株主の手元に戻る保証はない。筆者は、事業に要らない現金を半分の価値で見る。
事業の稼ぎはまだ小さい。工業炉は売上20億円前後で利益は薄く、伸びたのは買ったキャストリコの分だ。そのキャストリコは売上の4割をレーザーテック1社に頼る。半導体の投資の波をそのまま受ける。
水素やアンモニアを燃やすバーナーは将来の芽だが、工場の炉が切り替わるには時間がかかる。10年の中立で、純利益は3億円台と見る。その稼ぎと割り引いた現金を足しても、今の値段には届かない。
現金が株主に戻る道筋が見えるまで、筆者はこの評価を変えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、NFKホールディングスは「財布は厚いが、中身の使い方が読めない」会社だ。
事業の質は並みである。工業炉は顧客との長い関係で続くが、利益は薄い。キャストリコは先端の顧客に食い込むが、その顧客1社に頼る。電気工事は堅いが小さい。オーナー利益、つまり設備の更新を引いて株主が自由に使える利益は、今はまだ年に数億円しかない。
安全域の源は現金だ。純現金32億円は時価総額の7割近い。事業の部分には十数億円しか値段が付いていない計算になる。
ただ、現金は株主のものになるまで価値が確定しない。経営は無配のまま、現金を買収に回している。買収の値段が妥当かどうか、少数株主には判断の材料が乏しい。筆者は、事業に要らない現金を半分の価値で見る。
結論として、事業の稼ぎと割り引いた現金を足しても、今の値段に届かない。現金が配当や自社株買いで戻り始めるなら、評価は大きく変わる。
何で稼ぐ会社か
NFKホールディングスは、1951年創業の日本ファーネス工業を前身とする。2007年に持株会社となり、今は3つの事業を持つ。本社は横浜で、連結の従業員は約200人だ。
1つめは祖業の工業炉燃焼装置である。子会社の日本ファーネスが、鉄鋼や化学、自動車部品の工場で使う熱処理炉やバーナー、産業廃棄物の焼却装置を設計し、納めて保守する。2026年3月期の売上は19億円、営業利益は0.4億円にとどまった。窒素酸化物を減らすバーナーや、水素・アンモニアを燃やす技術を持つ。
2つめはエレクトロニクスだ。2025年8月に連結したキャストリコが担う。半導体の検査装置に使う検出基板やセンサー、制御基板を作り、装置の搬送部分の設計や、半導体回路の設計も請け負う。7か月半で売上18億円、営業利益1.2億円を稼いだ。大口の顧客はレーザーテックで、連結売上の41.5%を占める。
3つめが2026年7月に買った小林電気工業である。静岡県東部で電気設備の設計・施工・保守を手がける。会社は「安定した収益基盤」を取り込むと説明した。
ほかに、持株会社として不動産の賃貸収入もある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、どの事業も狭い。工業炉の燃焼装置は、炉の種類ごとに設計を合わせる受注生産で、顧客の工場との長い付き合いが強みになる。ただ、売上は過去10年で20〜30億円の間を上下し、営業利益率は良い年で7%台、悪い年は赤字だった。
キャストリコの強みは、レーザーテックの検査装置に深く組み込まれていることだ。半導体のマスク検査で世界の先端を行く顧客に部品を納める立場は、技術の証でもある。一方で、1社への依存は値段の交渉力を弱める。顧客の投資が止まれば、売上はそのまま落ちる。
資本効率は低い。ROE(自己資本に対する純利益の割合)は過去10年の中央値で2.4%だ。自己資本の半分以上が現金で、利益をほとんど生んでいない。
経営は買収で成長を買う方針に転じた。キャストリコは株式を対価に買ったため、株数が増えた。配当は出していない。株主から見れば、現金の使い道を経営に預けている形になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
工業炉の需要は、国内の製造業の設備投資と更新に連動する。鉄鋼や自動車部品の熱処理炉は、新設より更新と補修が中心だ。国内の工場が増えない中、数量は横ばいから少し減る。
変化の芽は脱炭素である。工場の炉は大量の都市ガスや重油を燃やす。これを水素やアンモニアに切り替える動きが、鉄鋼や化学で始まった。燃焼の技術を持つ会社には出番が来る。ただ、燃料の値段と供給の網が整うまで、本格的な切り替えは2030年代に入ってからと筆者は見る。競合には中外炉工業や大手の重工メーカーもいる。
半導体の検査装置は、波の大きい市場だ。微細化が進むほど検査の需要は増え、10年では伸びる。だが、装置の投資は2〜3年ごとに山と谷を繰り返す。レーザーテックの受注が谷に入れば、キャストリコの売上は大きく減る。
電気工事は、建物の設備更新と人手不足で需要が堅い。地域の工事会社は単価を上げやすい環境にある。ただ、規模は小さく、技術者の確保が成長の上限を決める。
全体として、3つの事業はそれぞれ違う波で動く。足すと波は少しならされるが、どれも大きく伸びる市場ではない。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、現金を配当でなく買収に使うことだ。2026年3月期も無配だった。純現金は約32億円あり、時価総額の7割近い。
買収は続いている。2025年にはキャストリコに株式を対価とする公開買付けを行い、株数が増えた。2026年7月には小林電気工業の全株を現金で取得した。取得額は開示されていない。会社は事業の組み合わせを広げる方針を掲げ、次の買収もありうる。
こうした使い方は、うまくいけば利益を伸ばす。だが、買った会社の値段が高すぎれば、現金は価値を失う。キャストリコでは、のれんを4.4億円計上し、DX事業の整理損も出た。
株主から見れば、配当の再開か自社株買いが、現金の価値を確かめる手段になる。今のところ、その兆しはない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の値段は、ほぼ現金だ。純現金は約32億円で、時価総額47億円の7割近い。事業に付いている値段は十数億円しかない。
その事業が伸び始めた。キャストリコの連結で、2026年3月期の売上は前期の1.8倍になった。2027年3月期は小林電気工業も加わり、売上は63億円を見込む。営業利益は3.5億円と、過去最高の水準だ。
キャストリコの顧客であるレーザーテックは、半導体のマスク検査で世界の先端を走る。微細化が進むほど検査の需要は増える。その装置の中核の基板を納める立場は強い。
工業炉にも追い風がある。工場の炉を水素やアンモニアに切り替える動きが始まり、燃焼の技術を持つ会社に出番が来る。日本ファーネスは低NOxバーナーの実績がある。
経営は現金を眠らせず、買収で利益を買っている。買った会社が稼げば、ROEは上がる。いずれ配当を再開すれば、現金の価値も見直される。
電気工事は人手不足で単価が上がりやすい。地域の設備更新は景気に左右されにくく、3つめの柱として全社の波を和らげる。
慎重な見方
現金は厚いが、株主のものではない。経営は無配を続け、現金を買収に使っている。小林電気工業の取得額は開示すらされていない。少数株主は、買った値段が妥当かを確かめられない。
事業は脆い。キャストリコは売上の4割をレーザーテック1社に頼る。半導体の装置投資が谷に入れば、売上は3割、4割と落ちる。キャストリコ単体は最終赤字で、DX事業の整理損も出した。
工業炉は長く伸びていない。売上は過去10年で20〜30億円を上下し、2026年3月期は前期から9%減った。営業利益は0.4億円しかない。水素やアンモニアの炉は、燃料の網が整うまで先の話だ。
ROEは過去10年の中央値で2.4%にすぎない。買収を重ねても、のれんの償却と管理の費用が増えるだけかもしれない。株式を対価にした買収で株数も増えた。
小さな会社が業態の違う会社を次々に買う形は、規律を失いやすい。現金を半分の価値で見るのは厳しすぎない。
電気工事も技術者の確保が難しく、小さな会社が伸ばせる幅は限られる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。現金の厚さは本物だが、戻り方が見えない。事業はキャストリコの連結で大きくなったが、その中身は1社への依存である。
確率は中立を中心に置き、悲観側を楽観側より少し厚くした。半導体の波の山を中立に置かず、谷の可能性をやや悲観に入れた。
現金が配当や自社株買いで戻り始めれば、戻り方の割引を小さくして見直す。今はその材料がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 89 円43 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 9 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 45 円22 億円、今との差 −52.8%、 期待の年率 +0.2%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 173 円85 億円 | 21 円10 億円 | +101.9% | +7.3% | 14 円7 億円 |
| やや楽観 | 18% | 135 円66 億円 | 14 円7 億円 | +55.6% | +4.5% | 27 円13 億円 |
| 中立 | 38% | 101 円49 億円 | 10 円5 億円 | +16.0% | +1.5% | 42 円21 億円 |
| やや悲観 | 25% | 42 円21 億円 | 4 円2 億円 | −51.5% | −7.0% | 12 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 29 円14 億円 | 0 円0 億円 | −70.1% | −11.4% | 3 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 89 円43 億円 | 9 円4 億円 | +1.9% | +0.2% | 98 円48 億円 |
今の株価時価総額 96 円47 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 半導体の検査と水素の炉が同時に伸びる 利益 6 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 173 円85 億円
半導体の微細化が進み、マスク検査の需要が伸び続ける。キャストリコはレーザーテック以外の装置メーカーにも基板を納め、人員を6割増やす。1人あたりの売上も物価並みに上がる。
工業炉では、鉄鋼や化学の工場が水素やアンモニアの燃焼に切り替え始める。日本ファーネスの低NOxの技術が評価され、件数は2割増える。電気工事も設備更新の需要で伸びる。
全社の営業利益は9億円台に乗る。経営は配当を再開し、10年で10億円を払う。それでもROEは7%台で、資本コストに届かない。余った現金は戻り方を割り引いたまま足す。
- 工業炉燃焼装置(日本ファーネス):数量 120(受注・納入の件数(件))× 価格 27(1件あたりの平均売上(百万円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 7.0%
- エレクトロニクス(キャストリコ):数量 200(技術者・従業員の数(人))× 価格 3,015(1人あたりの年間売上(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 8.0%
- 電気工事(小林電気工業):数量 420(工事の件数(件))× 価格 402(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)12 億円。全体の PER 11.94 倍、時価総額 84 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:レーザーテックの成長と新しい顧客の開拓、水素・アンモニアの炉の立ち上がりが重なる必要がある。小さな会社が3つの事業を同時に伸ばす姿で、確度は低い。
やや楽観 18% キャストリコが伸び、工業炉も持ち直す 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 135 円66 億円
キャストリコは人員を4割増やし、レーザーテックの増産に付いていく。新しい顧客も少しずつ増え、1社への依存は3割台に下がる。
工業炉は水素・アンモニアの試験炉の受注が入り、件数が1割増える。保守の収入も積み上がる。電気工事は地域の設備更新で安定して稼ぐ。
全社の営業利益は7億円ほどになる。のれんの償却は続くが、利益で十分に吸収できる。
配当は再開するが控えめで、10年で7億円にとどまる。現金の大半は次の買収の資金として残る。
3つの事業の波は互いに少しずつずれ、全社の利益は前より安定する。それでも資本に対する稼ぎは並みにとどまる。
- 工業炉燃焼装置(日本ファーネス):数量 110(受注・納入の件数(件))× 価格 27(1件あたりの平均売上(百万円))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 5.5%
- エレクトロニクス(キャストリコ):数量 175(技術者・従業員の数(人))× 価格 3,015(1人あたりの年間売上(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 6.5%
- 電気工事(小林電気工業):数量 400(工事の件数(件))× 価格 402(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)12 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 66 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期の会社予想は営業利益3.5億円と過去最高水準で、半導体の検査の需要は10年で伸びる。買収した事業がそのまま稼ぐ姿には根拠がある。
中立 38% 3つの事業が並みに稼ぎ、現金は眠ったまま 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 101 円49 億円
キャストリコは人員を2割弱増やす。半導体の装置投資は山と谷を繰り返すが、10年をならせば緩やかに伸びる。レーザーテックへの依存は続く。
工業炉は件数がほぼ横ばいで、更新と保守が中心になる。水素の炉は試験の段階にとどまる。電気工事は件数が少し減るが、単価は物価並みに上がる。
全社の営業利益は5億円ほどで、純利益は3億円台だ。のれんの償却と、持株会社の費用が利益を少し削る。
配当は少額で再開し、10年で5億円を払う。純現金は買収の資金として残り、株主に戻る額は限られる。
筆者が最もありそうだと見る姿である。事業は続き、赤字にもならない。ただ、資本コストに届く利益は出ない。
- 工業炉燃焼装置(日本ファーネス):数量 100(受注・納入の件数(件))× 価格 27(1件あたりの平均売上(百万円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 4.0%
- エレクトロニクス(キャストリコ):数量 150(技術者・従業員の数(人))× 価格 3,015(1人あたりの年間売上(万円))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 5.0%
- 電気工事(小林電気工業):数量 380(工事の件数(件))× 価格 402(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)12 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 49 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工業炉は横ばい、キャストリコは半導体の波をならして緩やかに伸び、電気工事は安定する。どの事業も大きくは伸びない落としどころ。
やや悲観 25% 半導体の谷が長引き、キャストリコが稼げない 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 42 円21 億円
半導体の装置投資が長い谷に入り、レーザーテックの受注が落ちる。キャストリコの人員は減り、1人あたりの売上も物価に届かない。利益はほとんど出なくなる。
工業炉は国内の工場の更新が細り、件数が1割以上減る。電気工事は堅いが、全社を支えるほどの規模はない。
全社の営業利益は2億円強にとどまる。のれんの償却が重くのしかかる。
現金は次の買収に使われ、その一部は期待どおりに稼がない。配当は10年で2億円だけだ。
買収で広げた事業は管理の手間ばかり増え、持株会社の費用も重くなる。厚い現金は残るが、それを生かす道は見えない。
- 工業炉燃焼装置(日本ファーネス):数量 85.0(受注・納入の件数(件))× 価格 26(1件あたりの平均売上(百万円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 2.0%
- エレクトロニクス(キャストリコ):数量 110(技術者・従業員の数(人))× 価格 2,900(1人あたりの年間売上(万円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 2.0%
- 電気工事(小林電気工業):数量 350(工事の件数(件))× 価格 390(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 4.0%
倍率:ROEは約2%で資本コストを大きく下回る。利益の質が落ちた姿で1÷k(約11.1倍)の約72%の8.0倍に置いた。余った現金は谷と買収で4分の1を食い、12億円に戻り方0.5を掛けた。
確率:連結売上の4割を1社に頼り、装置投資の谷は2〜3年ごとに来る。キャストリコ単体の最終赤字が示すように、利益は薄く揺れやすい。
悲観 12% 顧客を失い、買収も裏目に出る 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 29 円14 億円
レーザーテックが基板の調達先を内製や他社に切り替え、キャストリコは大口を失う。人員を減らしても赤字が続き、のれんを減損する。
工業炉は国内の工場の縮小で件数が2割減り、利益が出ない。電気工事も人手不足で受注を絞る。
経営は現金でさらに買収を重ねるが、高値づかみが続く。自己資本は減損で50億円まで減る。
配当は出ない。残るのは純現金の一部だが、少数株主はその使い方を決められない。
経営陣が現金の使い方を変えない限り、株主は割り引かれた現金と、稼がない事業を抱えたままになる。
株式を対価にした買収が重なれば、株数も増え、1株の取り分はさらに薄まる。
- 工業炉燃焼装置(日本ファーネス):数量 75.0(受注・納入の件数(件))× 価格 25(1件あたりの平均売上(百万円))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 -2.0%
- エレクトロニクス(キャストリコ):数量 90.0(技術者・従業員の数(人))× 価格 2,700(1人あたりの年間売上(万円))→ 売上 24 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率 -4.0%
- 電気工事(小林電気工業):数量 320(工事の件数(件))× 価格 380(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 2.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は無い。床は純現金で、今の自己資本58.3億円に0.24を掛けた約14億円。純現金32億円から運転資金を除いた約24億円の半分強で、0.5の戻り方に見合う。
確率:大口顧客の切り替えと買収の失敗が重なる構造的な負け。現金が厚く倒れる心配はないので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工業炉燃焼装置(日本ファーネス)
工場の熱処理炉やバーナー、産業廃棄物の焼却装置を設計して納め、保守する。
| 数量受注・納入の件数(件) | 価格1件あたりの平均売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 95.0 | 20 | 19 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 27 | 27 | 1 |
取り方:セグメント売上18.9億円・営業利益0.37億円(有報)。件数の開示はないため、炉と保守を合わせ1件平均2千万円として件数に直した推定。
エレクトロニクス(キャストリコ)
半導体の検査装置向けの検出基板・制御基板、装置の搬送部の設計と保守、半導体回路の設計を請け負う。
| 数量技術者・従業員の数(人) | 価格1人あたりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 127 | 2,250 | 29 | 2 |
| 10 年後 中立 | 150 | 3,015 | 45 | 2 |
取り方:連結した7か月半の売上17.9億円・営業利益1.15億円を1年に直した推定(28.6億円・1.84億円)。人数は有報のエレクトロニクス事業の従業員127人。
電気工事(小林電気工業)
静岡県東部で電気設備の設計・施工・保守を手がける。2026年7月に全株を取得。
| 数量工事の件数(件) | 価格1件あたりの平均売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 300 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 380 | 402 | 15 | 1 |
取り方:売上は非開示。2027年3月期の会社予想の増収幅から年約12億円と推定し、1件平均300万円で件数に直した。利益率は地域の電気工事会社並みの6%弱と置いた推定。
リスクと懸念
レーザーテックへの依存
連結売上の41.5%を1社に頼る。半導体の装置投資の谷や、調達先の切り替えがあれば、キャストリコの売上と利益はすぐに大きく落ちる。AIエージェントによる代替は回路の設計の請負に一部及びうるが、基板の製造が中心で影響は小さい。
買収の規律
2025年と2026年に業態の違う会社を続けて買った。小林電気工業の取得額は開示していない。高値で買えば、現金の価値は失われ、のれんの減損が出る。
現金が株主に戻らない
純現金は時価総額の7割近いが、無配が続く。現金が買収に回り続けるなら、帳簿の額ほどの価値はない。
工業炉の停滞
売上は過去10年で20〜30億円を上下し、利益は薄い。国内の工場の更新が細れば、件数はさらに減る。水素・アンモニアの炉は立ち上がりが遅れうる。
人手の確保
キャストリコの設計者や、電気工事の技術者は採用が難しい。人が集まらなければ、需要があっても受注を増やせない。
株式を対価にした買収
キャストリコは株式を対価に買い、株数が増えた。同じ形の買収を重ねれば、既存の株主の取り分は薄まる。
今後の分かれ目
- 配当の再開や自社株買いが発表されたら
- 余った現金の戻り方を0.75〜1.0に引き上げ、価値を見直す。
- キャストリコがレーザーテック以外の大口顧客を開拓し、依存が3割を切ったら
- 寿命の上乗せを下げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 半導体の装置投資が谷に入り、キャストリコが2期続けて減収になったら
- やや悲観の確率を厚くする。
- 水素・アンモニアを燃やす炉の量産の受注が開示されたら
- 工業炉の件数と利益率を引き上げる。
- 次の買収で取得額が純現金の半分を超えたら
- 買収の値段と稼ぎを確かめ、高すぎれば悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- キャストリコの売上とレーザーテック向けの比率
- 工業炉の受注残と保守の売上
- 配当・自社株買いの方針
- 次の買収の額と開示の中身
- のれんの残高と減損の有無
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、事業ごとの件数・人数×単価で10年後の利益を積んだ。キャストリコと小林電気工業は1年分に直した推定である。半導体の山の利益を中立に置かず、ならした水準にした。倍率はROEが資本コストを下回るので1÷k(約11.1倍)の約81%に置き、余った現金16億円は戻り方0.5で足した。今の時価総額が純現金の約1.5倍であることは倍率の根拠にしていない。リースの影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.94 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。