結論
エスティックは、自動車の組立ラインでボルトを決まった力で締める「ナットランナ」の専業メーカーだ。売上は80億円、営業利益率は2割ある。海外が売上の約7割を占め、米国とインドで伸びている。
筆者の結論は「やや割安」だ。いちばんの理由は、利益の質に比べて値段が低いこと。自己資本比率は9割近く、借金はなく、純現金が時価総額の4分の1ほどある。それでいて営業利益率は15年間2割前後を保ってきた。
弱点も明確だ。顧客のほとんどが自動車メーカーとその部品会社で、受注は車種計画と設備投資の波に乗る。会社自身が前の中期計画の未達の理由に「EVシフトの混迷」を挙げている。国内は直近1年で1割強減った。
10年先は、海外が国内の減りを埋めて売上が1.5倍強に伸びる姿を中立に置いた。営業利益率は19%とし、過去の水準から上げていない。一方で、EV投資が止まり欧米の大手に価格で押される筋書きも、確率で3割持たせた。
経営は堅実だが、現金の使い方は守りに寄る。還元は利益の4分の1ほどで、自社株買いはほぼない。余った現金を丸ごと株主のものとは数えず、4分の3だけ評価した。
時価総額が100億円ほどと小さく、有名な大手の陰に隠れた銘柄だ。だからこそ、利益の質が値段に反映されにくい面がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エスティックは「資本をほとんど使わずに稼ぐ、小さくて地味な会社」だ。部品は外注、設備は軽く、売上が増えても現金は減らない。
ここで見るべきは、オーナー利益、つまり事業を続けるのに必要な投資を引いたあとに株主の手元に残る稼ぎだ。純利益の約12億円は、ほぼそのままオーナー利益と見てよい。この点は、設備を更新し続ける多くの製造業と違う。
懸念は二つある。一つは、自動車産業の一本足で、10年先の車の作り方が変わると、装置の需要が構造的に細ること。もう一つは、経営が溜め込んだ現金をどう使うか読めないこと。還元は利益の4分の1で、買収で失敗した記録も無い代わりに、積極的に戻す姿勢も見えない。
安全域は、無借金と純現金が下支えする。10年の悲観でも、手元の現金と売れる資産が時価総額の半分ほどはある。これが、不確実な自動車需要に対する保険になる。
筆者は、10年持つなら中立の稼ぎで十分に割安と見る。ただ、現金の戻り方と自動車需要が崩れる確率を踏まえ、割安の幅は小さく置いた。
何で稼ぐ会社か
主力は、自動車の組立ラインでエンジンや足回りのボルトを一定の力で締める電動ナットランナと、その制御装置だ。ほかに手持ち型のハンドナットランナ、部品を圧入するサーボプレス、据付と保守を売る。事業区分は一つだ。
同社は1993年に、油圧機器大手のTAIYO(旧太陽鉄工)のナットランナ事業を分けて生まれた。2003〜04年にパルス制御の特許を日米で取り、高いトルクでも作業者への反力を小さくできる。2007〜08年にはサーボプレスにも広げた。
稼ぎ方は軽い。部品の加工は外に出し、社内では開発・設計・組立・検査に絞る。工場に重い設備を持たないため、売上が増えても投資は小さく、営業利益率2割が続く。
顧客は国内外の自動車メーカーと部品メーカーだ。2026年3月期の売上80億円のうち、海外が54億円で約68%。海外は前期比で約1割伸び、米国子会社は過去最高の売上、インドを中心にアジアも大きく伸びた。国内は26億円で、約12%減った。
海外の拠点は米国ケンタッキー州(全額出資)、タイ(議決権49.8%)、上海(持分法の関連会社、50%)の3つ。2027年3月期の計画は売上86億円、営業利益17億円だ。
成長の柱は三つある。米国とインドの拠点の強化、自動車以外(大型特殊車両など)への販路、高付加価値の提案への切り替えだ。
サーボプレスは、ナットランナと同じ制御の技術を使って部品を圧入する装置で、売上の割合は小さい。ただ、同じ顧客に別の装置を売れる点で、顧客との関係を深める役割を持つ。保守の売上は景気の波が小さく、利益の下支えにもなる。
優良さと弱いところ
堀は「締付の品質を証明できる制御技術」と「ラインに入ってしまった後の切り替えの重さ」にある。ボルトの締付は安全部品に直結し、ラインに組み込んだ機器は車種が変わるまで入れ替えない。パルス制御の特許も効いている。
数字がそれを裏づけている。営業利益率は2015年3月期の19%から2020年3月期の26%まで上がり、直近の5期も20%前後だ。資本が小さくて済む作りなので、自己資本利益率は10〜13%を保った。
ただし、堀は広くない。国内では日東精工、海外ではアトラスコプコなど大手が競合で、市場全体に占める同社のシェアは1%に届かないと筆者は見る。顧客の自動車メーカーは購買力が強く、値決めを任せてくれる相手でもない。
財務は極めて堅い。自己資本比率は88%で、純現金は27億円。2期連続で受注が落ちても、会社が傷む心配は小さい。
経営の弱さは、現金の使い方だ。配当性向の目標は23%以上で、長期の目標でも30%以上にとどまる。利益の多くは社内に残り、自己資本は5年で約1.7倍に膨らんだ。一方、自己資本利益率は低下している。
人の面では、技術者の確保が成長の制約になる。会社は国内の人員を大きく増やす計画で、採用が計画通りに進むかが、新製品の開発速度と保守の品質を左右する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ネジ締付装置の需要は、自動車の生産設備投資が源だ。新車種の立ち上げ、工場の新設、ラインの更新の三つのときにまとめて発注が出る。数量は世界の自動車生産台数よりも、設備投資の波に近い動きをする。
世界のナットランナ市場は、調査会社の推計で2025年の約76億ドルから2031年の約133億ドルへ伸びるとされる。ただし、この数字は携帯型の工具を含む広い定義だ。自動車ライン向けの固定式に絞ると、市場はその数分の1になる。
足元の追い風は、人手不足による省人化、締付データの記録を求める品質要求の厳しさ、米国での工場新設だ。逆風はEVだ。会社の資料でも、中国では一部のEVメーカーを除いて投資が鈍り、米国でもEVの減速で計画の遅れが出たと説明している。
ただ、EVは内燃機関より部品点数が減る一方で、電池パックや電動駆動ユニットの締付は精度が厳しい。装置の台数は減っても、1台あたりの単価と要求水準は上がる可能性がある。筆者は、EVかどうかよりも、自動車全体の設備投資の総額に数量が従うと見る。
競合はアトラスコプコなど海外の大手と日東精工などの国内勢だ。価格競争になりやすい汎用品は海外の大手が強く、同社は制御の細かさと保守の速さで差をつける。
中国は現地の安価な製品が増えており、日系自動車の中国投資が細る中で、同社の中国は連結に入らない持分法の関連会社にとどまる。10年先を見ると、米国とインドの比重がさらに増える見込みだ。
資本政策と M&A
資本政策は守りだ。配当性向は2026年3月期で約25%、2027年3月期の予想も25%強。中計の目標は23%以上で、長期でも30%以上と、利益が余る会社にしては低い。
自社株買いは2020年3月期に実施した以外、ほとんどない。無借金で現金がたまり続けるので、自己資本が膨らみ、自己資本利益率は10%に落ちた。筆者は、余った現金は4分の3しか評価しなかった。
M&Aの実績はなく、海外は自前の子会社で伸ばしてきた。上場は2006年にマザーズ、2022年に東証スタンダードへ移った。
成長投資は、国内の新工場、米国・タイ・インドの拠点強化、人員(国内234人から295人、海外27人から42人へ)だ。ファブレスで外注に頼るため、1回の投資は小さい。
TOBなどの再編は、確かな材料は見当たらない。時価総額が100億円ほどと小さく、現金が厚いため、買われやすい条件は揃っている。ただし支配株主の動向は確認できていない。
大量保有報告では、投資会社のフラクタル・ビジネスが保有を増やした報告が2026年に続き、海外の運用会社の保有も出ている。物言う株主が現金の使い方に口を出す可能性は、10年のうちには小さくない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
海外で売上が伸びる。米国は過去最高、インドも大きく伸びた。自動車メーカーは人手不足で省人化に急ぎ、締付データを残す要求も増える。ラインに入った装置は車種が変わるまで替えない。
営業利益率は15年2割前後を保ち、無借金で、設備投資はほぼ要らない。売上が10年で1.5倍になれば、利益は同じ率で伸び、現金も積み上がる。自己資本比率が9割近い会社に、倒産のリスクはない。
EVの混迷は、すでに前の計画の未達で織り込み済みだ。電池パックや駆動ユニットの締付は精度の要求が厳しく、パルス制御の強みが活きる。大手EVメーカーの大口案件や大型特殊車両への販路も、実績として出てきた。
配当性向を30%に引き上げるだけで、株主の取り分は2割増える。経営は現金の使い方を問われる時期に入った。100億円の時価総額で純現金が27億円、営業利益が16億円あれば、再編でも還元でも動く余地は大きい。
米国の工場新設は、日系だけでなく現地の自動車メーカーにも広がる。拠点を持つ同社は、保守の速さを武器に取引先を増やせる。
慎重な見方
同社は自動車一本足だ。顧客は購買力の強い自動車メーカーで、設備投資の波が来るたびに、受注は需要より大きく振れる。会社自身が前の計画の未達の理由を「EVシフトの混迷」と書いたことは重い。米国でもEVの減速で計画が遅れている。
国内は2026年3月期に12%減った。海外が増えたといっても、米国は関税の影響で利益が前年を下回り、中国は現地の安価な製品に押される。アトラスコプコなど海外の大手は規模が桁違いで、価格を下げられると同社の2割の利益率は守れない。
営業利益率の20%は、過去の自動車投資のよい時期の結果で、10年先の約束ではない。人件費は物価で上がり、外注の加工費も上がる。値上げが通らなければ、利益率は10%台前半に落ちる。
現金の使い方にも不安がある。還元は利益の4分の1で、自己資本は5年で1.7倍に膨らみ、自己資本利益率は10%に低下した。たまった現金は、株主のものになる保証がない。
人手不足は同社にも及ぶ。国内の人員を大きく増やす計画は、採用に失敗すれば開発も保守も止まる。小さい会社が複数の海外拠点を同時に育てる負担は、思うより重い。
どちらに重みを置いたか
確率は中立を4割に置き、強気のうち楽観とやや楽観を3割、慎重のうちやや悲観と悲観を3割とした。海外の伸びと無借金の強さは強気が強いが、自動車一本足と現金の戻り方の弱さは慎重の指摘が当たっている。
強気の言い分が効くのは、営業利益率を守れるかどうかだ。ここは15年の実績があるので、中立の利益率は19%と過去より下に置いた。慎重の言い分は、悲観を1割、やや悲観を2割に持たせて反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,884 円287 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 408 円41 億円)。 今の値に割り戻すと 1,684 円168 億円、今との差 +66.5%、 期待の年率 +12.5%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,165 円515 億円 | 662 円66 億円 | +476.4% | +19.1% | 466 円46 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,043 円403 億円 | 512 円51 億円 | +350.5% | +16.2% | 1,002 円100 億円 |
| 中立 | 40% | 3,201 円319 億円 | 411 円41 億円 | +257.3% | +13.6% | 1,445 円144 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,230 円123 億円 | 301 円30 億円 | +51.4% | +4.2% | 306 円31 億円 |
| 悲観 | 10% | 552 円55 億円 | 181 円18 億円 | −27.6% | −3.2% | 73 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,884 円287 億円 | 408 円41 億円 | +225.6% | +12.5% | 3,292 円328 億円 |
今の株価時価総額 1,011 円101 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:米国とインドで台数が1.5倍、営業利益率は2割を超える 利益 28 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 5,165 円515 億円
米国とインドの工場新設ラッシュに乗り、台数は10年で5割強増える。EV向けの電池パックと駆動ユニットの高精度な締付で、パルス制御が選ばれる。大型特殊車両など自動車以外の販路も二桁の割合に育つ。
価格は物価を上回る。高付加価値な提案に切り替わり、1台あたりの売上は物価の1.34倍より少し高い1.4倍になる。営業利益率は22%まで上がる。
国内の落ち込みは海外が埋める。ファブレスの強みで、売上が伸びても設備投資は小さい。純利益は年30億円近くまで増え、配当性向は30%台に上がる。
経営は米国の拠点強化と非自動車の開拓に資金を使うが、買収はしない。余った現金は配当と自社株買いにも回り始める。
- ネジ締付装置(ナットランナ・サーボプレス・保守):数量 10,400(締付システム(ナットランナ+制御装置の組)換算の年間出荷台数(推定))× 価格 0.02(1台あたりの売上(億円。保守・部品を含む平均))→ 売上 175 億円・営業利益 38 億円。台数10,400(1.55倍)× 1台0.0168億円(1.4倍)、営業利益率22%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 17.52 倍、時価総額 505 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の伸びが続き、EV向けの締付も取り込む筋書き。台数が5割増える条件は厳しく、確率は1割に届かない。
やや楽観 22% やや楽観:海外が国内の減りを上回って伸び、利益率は2割を保つ 利益 22 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 4,043 円403 億円
海外が毎年1割近く伸び、国内の減りを埋める。台数は10年で35%増え、売上は150億円近くまで届く。会社の中期計画(2027年3月期に売上90億円)の延長線だ。
営業利益率は20〜21%を保つ。人件費の上昇は値上げで吸収でき、パルス制御や制御ソフトの付加価値が下支えする。
自動車のEV化は思ったほど台数を減らさず、むしろ品質要求の高まりが装置の入れ替えを促す。ただし、中国の競合による価格圧力は残り、利益率を大きく上げる余地は小さい。
配当性向は30%まで高まり、現金の積み上がりは緩やかになる。
米国の拠点は現地の自動車メーカーにも広がり、インドでも日系の新工場に食い込む。
- ネジ締付装置(ナットランナ・サーボプレス・保守):数量 9,045(締付システム(ナットランナ+制御装置の組)換算の年間出荷台数(推定))× 価格 0.02(1台あたりの売上(億円。保守・部品を含む平均))→ 売上 148 億円・営業利益 30 億円。台数9,045(1.35倍)× 1台0.01632億円(1.36倍)、営業利益率20.5%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 16.89 倍、時価総額 384 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画(売上90億円、営業利益19億円)の延長に近い。海外の伸びが続く条件は妥当な範囲。
中立 40% 中立:海外が国内の減りを埋め、営業利益率は19%に落ち着く 利益 18 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 3,201 円319 億円
台数は10年で18%増える。米国とインドで増え、国内は車の生産減と海外移管で細る。1台あたりの売上は物価並みの1.34倍で、値上げが通る範囲にとどまる。
営業利益率は19%。過去の20%前後より下に置いた。人件費と外注費が物価で上がる分を、値上げで吸収しきれない可能性を織り込んだためだ。減価償却は小さいので、物価の影響はほぼ人件費と外注費に限られる。
純利益は年17〜18億円。配当性向は28%で、自己資本は200億円を超える。事業に要る資本は小さく、現金だけが積み上がる。
会社は主力の自動車に頼り続ける。非自動車の販路は伸びるが、利益を大きく変えるほどにはならない。
- ネジ締付装置(ナットランナ・サーボプレス・保守):数量 7,906(締付システム(ナットランナ+制御装置の組)換算の年間出荷台数(推定))× 価格 0.02(1台あたりの売上(億円。保守・部品を含む平均))→ 売上 127 億円・営業利益 24 億円。台数7,906(1.18倍)× 1台0.01608億円(1.34倍)、営業利益率19%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 16.16 倍、時価総額 294 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年の営業利益率(19〜26%)の下側、台数は年1.7%増と控えめ。海外の拡大と国内の縮小を差し引いた落としどころ。
やや悲観 20% やや悲観:自動車の設備投資が細り、価格競争で利益率は14% 利益 10 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,230 円123 億円
EV化の混迷が続き、自動車メーカーが設備投資を絞る。台数は5%減り、海外大手の値下げ攻勢で1台あたりの売上は物価の1.30倍にとどまる。
営業利益率は14%に落ちる。人件費は物価で上がるが、値上げは通らない。制御ソフトやサービスで稼ぐ部分があるため、赤字にはならない。
純利益は年10億円。配当は維持するが、性向は28%で現金の積み上がりは遅くなる。やや悲観では、余った現金の4分の3だけを評価した。
会社は海外の拠点に使う資金を絞り、成長の柱は一つ減る。
それでも手元の現金は厚く、配当は続く。事業の価値は下がるが、現金の分が下値を支える。
- ネジ締付装置(ナットランナ・サーボプレス・保守):数量 6,365(締付システム(ナットランナ+制御装置の組)換算の年間出荷台数(推定))× 価格 0.02(1台あたりの売上(億円。保守・部品を含む平均))→ 売上 99 億円・営業利益 14 億円。台数6,365(0.95倍)× 1台0.0156億円(1.3倍)、営業利益率14%
倍率:事業の自己資本利益率が5〜6%で資本コスト7.5%を下回るため、式の上限は1÷k(12.5倍)。構造的に押される筋書きなので、これより低い9倍に置いた。
確率:自動車の投資が長期に弱く、海外大手との価格競争が続く筋書き。2割は現実的にありうる。
悲観 10% 悲観:自動車の投資が構造的に縮み、大手の安値攻勢で営業利益は数億円 利益 3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 552 円55 億円
自動車の設備投資が長期に細り、ガソリン車の新規ラインが止まる。EVの締付は部品点数が減り、同社の得意なラインの新設が減る。台数は10年で35%減る。
海外大手は規模を武器に値下げを仕掛け、1台あたりの売上は物価の1.15倍にとどまる。人件費は物価で上がるため、営業利益率は6%まで落ちる。
純利益は年3億円弱。自己資本は薄くはならないが、事業の稼ぐ力は弱く、値は手元の現金と売れる資産が支える。
配当は維持が精いっぱいで、成長投資は止まる。経営は現金を事業に戻せず、株主の取り分は限られる。
小さな会社なので、この局面では他社に買われる可能性も出てくるが、その価格が現金を大きく上回る保証はない。
- ネジ締付装置(ナットランナ・サーボプレス・保守):数量 4,355(締付システム(ナットランナ+制御装置の組)換算の年間出荷台数(推定))× 価格 0.01(1台あたりの売上(億円。保守・部品を含む平均))→ 売上 60 億円・営業利益 4 億円。台数4,355(0.65倍)× 1台0.0138億円(1.15倍)、営業利益率6%
倍率:稼ぐ力は事業の純利益約3億円で値が付かず、床の資産(純現金27億円と売れる資産)が値を決める。今の自己資本112億円に0.49を掛けた。
確率:自動車一本足と海外大手の価格攻勢が重なる筋書き。小さい会社の宿命として1割は持たせる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ネジ締付装置(ナットランナ・サーボプレス・保守)
自動車の組立ラインでボルト・ナットを決まった力で締める電動ナットランナと制御装置、ハンドナットランナ、サーボプレス、据付・保守を一つのセグメントで売る。
| 数量締付システム(ナットランナ+制御装置の組)換算の年間出荷台数(推定) | 価格1台あたりの売上(億円。保守・部品を含む平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,700 | 0.01 | 80 | 16 |
| 10 年後 中立 | 7,906 | 0.02 | 127 | 24 |
取り方:台数は開示がなく推定。売上80.3億円を1台あたり約120万円(制御装置込みの締付システム、保守・部品を含む平均)で割り、約6,700台と置いた。世界のナットランナ市場は調査会社の推計で約1.1兆円(携帯工具を含む広い定義)で、同社は自動車ライン向けの固定式に絞るため、市場の1%未満とみる。営業利益15.7億円(率19.6%)は2026/03期の実績。
リスクと懸念
自動車一本足
顧客のほとんどが自動車メーカーとその部品会社。設備投資が細ると、受注は需要の落ち込みより大きく振れる。ほかの用途は育ち始めたばかりで、利益を支えるほどの規模にはない。
EV化の混迷
会社自身が前の中計の未達の要因にEVシフトの混迷を挙げた。EVの減速で米国の投資計画にも遅れが出た。EV向けの締付は精度の要求が高いが、台数が減ればその分売上も細る。
海外大手との価格競争
アトラスコプコなど海外大手は規模が大きい。値下げを仕掛けられると、営業利益率2割の維持は難しくなる。中国では現地の安価な製品も増えている。
関税と為替
米国は関税の影響で利益が前年を下回った。ドル円は150円で固定して試算したが、実際の為替の変動は利益を大きく振る。売上の約7割が海外にある。
現金の使い方
還元は利益の4分の1ほど。自己資本は膨らみ、自己資本利益率は低下している。余った現金が株主に戻る保証はなく、余った現金の評価は帳簿の4分の3にとどめた。
人材と内製化
国内の人員を234人から295人へ増やす計画で、人件費が先に増える。技術職の確保に失敗すると、新製品や保守の品質が落ちる。
今後の分かれ目
- 国内の受注が2期続けて前年を下回る
- 台数の減りが構造的な可能性が高い。やや悲観の確率を上げる。
- 米国とインドの売上が国内の減りを上回って伸び続ける
- 中立よりやや楽観の筋書きに確率を寄せてよい。営業利益率が2割を保つかが次の確認点。
- 営業利益率が15%を割る
- 値上げが通っていない合図。やや悲観〜悲観の確率を上げる。
- 配当性向を30%以上に引き上げる、または自社株買いを実施する
- 余った現金の戻り方を1.0へ見直す材料になる。割安の幅が広がる。
- 大手の自動車部品メーカーや装置会社による買収提案が出る
- 現金の厚さと利益率から、プレミアムが付く可能性はある。ただし提案の中身で判断する。
見ておくもの
- 国内と海外の売上の伸び(四半期)
- 営業利益率(20%前後の維持)
- 米国・インドの売上と受注
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の自己資本利益率(約9〜12%)と資本コスト7.5%から、式の上限の約9割に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。営業利益率は過去の20%前後より下の19%に置き、直近の伸びを延ばしていない。
今の時価総額に近い筋書きはやや悲観のあたりで、中立は値段より上に出る。数字を寄せずに出た結果だ。リースは小さく、新リース会計基準の影響は小さい。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→17.52 倍・やや楽観 PER 12.5→16.89 倍・中立 PER 11.5→16.16 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。