結論
和井田製作所は、岐阜県高山市の研削盤メーカーだ。ドリルやエンドミルといった切削工具、金型の部品を、砥石で精密に削る機械を作る。売上は67億円で、半分強を海外で売る。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。技術は確かだが、稼ぎの山と谷が深すぎる。営業利益率は2019年3月期の22%から、直近は4%まで落ちた。過去10年のROE(自己資本に対する純利益の割合)の中央は8%弱で、資本コストの8.5%に届かない。
今は谷の側にいる。中国向けのプロファイル研削盤は好調だが、国内と欧米の工具メーカーが投資を絞った。会社は今期の営業利益を4億円と見込む。
10年をならせば、売上は物価に乗って100億円近くに届き、営業利益率は12%ほどに戻るとみる。純現金39億円は厚い下支えだ。それでも、稼ぐ力から測った値段に余った現金を足すと、今の時価総額をやや下回る。山の年の利益で値段を考えると、判断を誤る会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、和井田製作所は「技術はよいが、稼ぎが読みにくい会社」だ。
10年後も存在するか。工具と金型は製造業に欠かせず、それを削る機械も残る。答えは「はい」だ。堀は広がるか。精度の高い機械は残るが、中国の国産機と海外の大手に挟まれる。広がるとは言いにくい。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いて自由に使える利益は、山の年で10億円超、谷の年で2億円ほどだ。ならせば年7億円前後になる。自己資本106億円に対して薄い。
安全域はどうか。純現金39億円は時価総額の6割に当たり、下値は堅い。ただ、その現金は配当以外に戻ってこない。少数株主にはその使い道を決められない。
筆者は、山の年の利益を基準に値段を考えない。谷と山をならした稼ぎに、余った現金を足すと、今の時価総額をやや下回る。谷の年に安く見えても、それだけで買う理由にはならない。
何で稼ぐ会社か
和井田製作所は、研削盤ひと筋の会社だ。研削盤とは、高速で回る砥石で金属をわずかずつ削り、ミクロン単位の精度で仕上げる機械をいう。
製品は大きく2つある。1つは工具研削盤だ。超硬合金のドリルやエンドミルの刃を削り出す機械で、切削工具メーカーや工具の再研磨業者が買う。もう1つはプロファイル研削盤だ。金型のパンチなど複雑な形の部品を、拡大した像を見ながら削る。電子部品やモーターの鉄心を打ち抜く金型に使われる。
売上の地域は、日本が44%、中国が27%、中国を除くアジアが16%、欧米が13%だ。中国・台湾、上海、欧州、米国に販売と修理の子会社を置く。
稼ぎ方は、機械を1台ずつ売る商売に、修理と部品が付く形だ。機械は1台数千万円で、顧客の設備投資の波をそのまま受ける。据え付けた機械が増えるほど、修理と部品の売上が積み上がる。
従業員は数百人規模で、開発から組立までを高山の工場で手がける。山あいの工場で熟練の組立工が精度を出す。海外の販売子会社は売るだけでなく、据え付けと修理も担う。機械の寿命は長く、20年近く使われることも多い。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、狭い領域での精度と使い込まれた実績だ。プロファイル研削盤は、金型の職人が長年使ってきた機械で、置き換えにくい。工具研削盤は、刃の形を削り出すソフトと機械の両方が要る。
ただ、その強みは数字の安定につながっていない。営業利益率は過去12年で4〜23%と大きく振れた。売上は42億円から88億円の間を行き来する。ROEの中央は8%弱で、資本コストに届いていない。
弱点は2つある。1つは競争だ。工具研削盤では、オーストラリアのANCA、ドイツのWalterやVollmer、スイスのRollomaticといった海外勢が世界で強い。もう1つは顧客の偏りだ。切削工具と金型という2つの業界の投資に、売上の大半を頼る。
財務は堅い。自己資本比率は84%、純現金は39億円ある。谷の年でも赤字に落ちにくい体質だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
研削盤の需要は、工作機械の中でも山と谷が大きい部類だ。顧客の切削工具メーカーは、自動車や電子部品の生産が増える時に工具を増産し、その前に研削盤を買う。だから景気の波が、増幅されて届く。
日本工作機械工業会によれば、2026年上期の受注は前年より36%増えた。AI向けのデータセンター投資で、半導体と電子部品の設備が動いている。ただ、和井田の顧客である工具メーカーへの波及は遅れ、直近の決算は減収だった。
中国は伸びている。電子部品やモーターの金型向けに、プロファイル研削盤の受注が好調だ。一方で、中国の工作機械メーカーは国産化を進め、汎用の研削盤では安い国産機が増えた。高精度の機械は残るが、中位の機械は奪われていく。
10年で見ると、工具の需要は製造業の生産量とともに伸びる。電気自動車は部品が少なく、エンジン部品を削る工具は減る。その代わり、電池やモーターの金型、航空機の難削材を削る工具は増える。筆者は、数量は年1%ほどの伸びとみる。値段は物価並みに上がるが、中国の国産機が中位の価格を押さえる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026年3月期は配当の総額は2.2億円、性向は80%に達した。利益が落ちても配当を保つ姿勢で、今期は記念配当を含めて増配を予定する。
自社株買いの大きな実績は見当たらない。純現金は10年で40億円近くまで積み上がった。売上67億円の会社にとっては厚すぎる手元資金で、資本効率を下げている。
中期経営計画は開示されていない。買収の歴史も目立たない。研削盤のニッチで技術を持つ会社は、海外の大手が買い手になりうる。市場の推計では、10年でTOBや買収の確率が2割強ある。厚い純現金は、買い手にとっても魅力になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
和井田製作所は今、谷の底にいる。営業利益率は4%まで落ちたが、2019年3月期には22%あった。工具メーカーが投資を再開すれば、利益は何倍にも戻る。
その兆しはある。工作機械の受注は2026年上期に36%増えた。AI向けのデータセンター投資で、半導体と電子部品の設備が動いている。電子部品を打ち抜く金型を削るのは、和井田のプロファイル研削盤だ。中国の受注はすでに好調で、会社も今期の増収を見込む。
技術の蓄積も厚い。金型の職人が使い込んだ機械は置き換えにくい。据え付けた機械が増えるほど、修理と部品の売上も積み上がる。
財務は堅く、純現金は39億円ある。時価総額の6割に当たる。配当性向が80%になっても配当を保った。山の年の利益に戻れば、今の値段は安すぎたと言える。谷の年の値段で、山の年の稼ぎを買えることになる。航空機や医療機器の部品を削る難削材の工具も増え、研削盤の出番は電気自動車の時代にも残る。純現金の厚さは、谷の年に開発を止めずに済む強みでもある。
慎重な見方
山の年の利益を基準にするのは危うい。過去12年で営業利益率が15%を超えたのは5期しかない。ならせば12%前後で、ROEは資本コストに届かない。
競争も厳しい。工具研削盤では、ANCAやWalter、Vollmer、Rollomaticといった海外の大手が世界で強い。中国の工作機械メーカーは国産化を進め、中位の研削盤は安い国産機に置き換わる。中国の売上27%は、追い風であると同時に、最も奪われやすい部分でもある。
顧客の構造も変わる。電気自動車はエンジン部品が少なく、それを削る工具も減る。顧客の工具メーカーが減産すれば、研削盤の注文はさらに大きく減る。
純現金39億円も、株主のものとは言い切れない。自社株買いの実績は乏しく、現金は積み上がる一方だ。今期の1四半期目は赤字で、回復はまだ数字に表れていない。谷が長引けば、配当性向80%の配当も重荷になる。山の年を前提にした値段は、谷が深ければ簡単に崩れる。
どちらに重みを置いたか
谷から戻ること自体は、筆者も疑わない。分かれ目は、戻った先の利益率の高さだ。過去12年のならした利益率が、強気の見方の山の水準より説得力を持つ。
中立は利益率12%への回復に置いた。確率は中立の38%を中心に、中国の国産化と海外の大手との競争を踏まえ、やや悲観をやや楽観と同じ22%にした。純現金の下支えがあるので、悲観は1割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,681 円110 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 379 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 1,036 円68 億円、今との差 +5.1%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,157 円206 億円 | 627 円41 億円 | +283.8% | +14.4% | 303 円20 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,359 円154 億円 | 489 円32 億円 | +188.8% | +11.2% | 627 円41 億円 |
| 中立 | 38% | 1,835 円120 億円 | 382 円25 億円 | +124.9% | +8.4% | 843 円55 億円 |
| やや悲観 | 22% | 785 円51 億円 | 260 円17 億円 | +6.0% | +0.6% | 230 円15 億円 |
| 悲観 | 10% | 388 円25 億円 | 184 円12 億円 | −42.0% | −5.3% | 57 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,681 円110 億円 | 379 円25 億円 | +108.9% | +7.6% | 2,059 円135 億円 |
今の株価時価総額 986 円64 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 金型と工具の投資が重なり、山の利益に戻る 利益 14 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,157 円206 億円
電子部品と電池の生産が世界で増え、金型の投資が続く。航空機の難削材を削る工具の需要も伸び、工具メーカーが研削盤を買い増す。台数は25%増え、単価は物価をやや上回る1.38倍になる。
据え付けた機械が増え、修理と部品の売上も1.6倍になる。営業利益率は新品で15%、修理・部品で24%、全社で17%だ。純利益は13億円を超える。
配当は性向5割で増え、10年で37億円を配る。中国では高精度の機械が選ばれ続け、国産化の波は中位の機械にとどまる。工具研削盤の自動化の機種も、海外の大手と並んで選ばれる。研削盤のニッチで世界の上位に入る。
- 研削盤(新品):数量 250(販売台数(台))× 価格 3,860(1台あたりの平均価格(万円))→ 売上 97 億円・営業利益 14 億円。台数1.25倍・単価1.38倍・利益率15%
- 修理・部品:数量 4,800(稼働している据え付け台数(台))× 価格 37(1台あたりの年間の修理・部品の売上(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。据え付け1.2倍・単価1.40倍
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)18 億円。全体の PER 14.31 倍、時価総額 206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI・電子部品向けの金型投資と、航空機・電池向けの工具需要が重なる必要がある。山の年の利益率22%に近づく姿で、12年で2期しか起きていない。
やや楽観 22% 中国の金型需要が続き、利益率は13%台 利益 11 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,359 円154 億円
中国の電子部品とモーターの金型向けに、プロファイル研削盤が売れ続ける。国内と欧米の工具メーカーも投資を戻す。台数は15%増え、単価は1.36倍になる。
修理と部品は据え付けの増加で1.5倍になる。営業利益率は新品で12.5%、修理・部品で23%、全社で14%台だ。
純利益は11億円弱。配当性向は5割弱で、10年で33億円を還元する。
中国では国産化が進むが、高精度の機械では和井田の名前が残る。純現金は厚いまま、配当で少しずつ戻る。山の年の22%には届かないが、谷の年は浅くなる。修理と部品の稼ぎが、その下支えになる。
- 研削盤(新品):数量 230(販売台数(台))× 価格 3,800(1台あたりの平均価格(万円))→ 売上 87 億円・営業利益 11 億円。台数1.15倍・単価1.36倍・利益率12.5%
- 修理・部品:数量 4,700(稼働している据え付け台数(台))× 価格 36(1台あたりの年間の修理・部品の売上(万円))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。据え付け1.18倍・単価1.36倍
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)18 億円。全体の PER 13.14 倍、時価総額 154 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国のプロファイル研削盤の受注は実際に好調で、工作機械全体の受注も増えている。ならした利益率14%弱の実績があり、届く範囲。
中立 38% 谷から戻り、ならした利益に落ち着く 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,835 円120 億円
工具と金型の投資は、山と谷を繰り返しながら10年で少し増える。台数は1割増え、単価は物価並みの1.34倍だ。中国の国産化で中位の機械は減るが、高精度の機械と自動化の機種が埋める。
修理と部品は、据え付けの増加と単価の上昇で1.5倍になる。営業利益率は新品で10%、修理・部品で22%、全社で12%に戻る。既存の工場の償却は取得した時の値段のままで、利益率を少し支える。
純利益は8億円台。配当性向は45%ほどで、10年で25億円を配る。
ROEは6%台にとどまる。純現金は厚いまま残り、資本効率を押し下げる。
- 研削盤(新品):数量 220(販売台数(台))× 価格 3,750(1台あたりの平均価格(万円))→ 売上 83 億円・営業利益 8 億円。台数1.10倍・単価1.34倍・利益率10%
- 修理・部品:数量 4,600(稼働している据え付け台数(台))× 価格 36(1台あたりの年間の修理・部品の売上(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。据え付け1.15倍・単価1.34倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)18 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 120 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率の中央は14%弱、平均は12%前後。山と谷をならした利益率への回復が最も自然な姿。
やや悲観 22% 中国の国産化で中位の機械を失う 利益 5 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 785 円51 億円
中国で国産の研削盤が育ち、中位の機械の注文が消える。国内と欧米でも、電気自動車の普及でエンジン部品を削る工具が減る。台数は1割減り、単価は1.25倍にとどまる。
修理と部品は据え付けが増えず、1.3倍の伸びにとどまる。営業利益率は新品で6%、修理・部品で18%、全社で9%弱だ。
純利益は4.6億円。配当は保ち、10年で17億円を配る。
高精度の機械は残るが、売上の柱は細る。純現金は使い道が決まらないまま残り、株主に戻るのはその一部だけだ。会社は研削盤のニッチに残るが、成長の物語は消える。ROEは4%を切り、資本コストとの差は開く。
- 研削盤(新品):数量 180(販売台数(台))× 価格 3,500(1台あたりの平均価格(万円))→ 売上 63 億円・営業利益 4 億円。台数0.9倍・単価1.25倍・利益率6%
- 修理・部品:数量 4,300(稼働している据え付け台数(台))× 価格 33(1台あたりの年間の修理・部品の売上(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。据え付け1.08倍・単価1.25倍
倍率:ROEは約3.6%でkを大きく下回る。中国と海外の大手に挟まれた構造的に弱い姿として、1÷kの約68%の8.0倍。余った現金は0.75倍の額で足した。
確率:中国の工作機械の国産化は国の方針として進み、売上の27%が当たる。直近の利益率4%は、こうした圧力の下で起きうる姿をすでに示した。
悲観 10% 山が来ず、研削盤の商売が細る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 388 円25 億円
中国の国産機と海外の大手に挟まれ、研削盤の台数は3割減る。単価は1.14倍しか上がらない。工具メーカーの投資は戻らず、山の年が来ない。
修理と部品が売上を支えるが、全社の営業利益率は1%を切る。人件費は物価で上がるのに、値上げは通らない。純利益はほとんど残らない。
配当は減らしつつ続け、10年で12億円を配る。
値段の床は、事業の稼ぎではなく純現金になる。ただし、その現金の使い方は少数株主には決められない。研削盤の技術は、海外の大手が安く買う対象になる。修理と部品だけが細く残り、据え付けた機械の寿命とともに減っていく。
- 研削盤(新品):数量 140(販売台数(台))× 価格 3,200(1台あたりの平均価格(万円))→ 売上 45 億円・営業利益 −1 億円。台数0.7倍・単価1.14倍・赤字
- 修理・部品:数量 4,000(稼働している据え付け台数(台))× 価格 30(1台あたりの年間の修理・部品の売上(万円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。据え付け横ばい・単価1.13倍
倍率:ROEはほぼ0%で稼ぐ力では値が付かない。純現金39億円に戻り方を掛けた床(約25億円)を、今の自己資本106億円に対する0.24倍で書いた。
確率:中国の国産化・海外大手の自動化・電気自動車による工具需要の縮小が重なる構造的な負け。純現金が厚く、谷の年もほぼ黒字だったので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
研削盤(新品)
超硬工具を削る工具研削盤と、金型部品を削るプロファイル研削盤。日本・中国・アジア・欧米の工具・金型メーカーへ売る。
| 数量販売台数(台) | 価格1台あたりの平均価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 2,800 | 56 | 1 |
| 10 年後 中立 | 220 | 3,750 | 83 | 8 |
取り方:2026年3月期の売上66.6億円のうち、修理・部品を約1割5分(10.6億円)と推定し、残り56億円を平均単価2,800万円で台数に直した推定(約200台)。営業利益2.5億円の内訳は、修理・部品の利益率を高めに置いた推定。
修理・部品
据え付けた研削盤の修理、砥石まわりの部品、改造。
| 数量稼働している据え付け台数(台) | 価格1台あたりの年間の修理・部品の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 27 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4,600 | 36 | 16 | 4 |
取り方:稼働する据え付け台数を、年200台前後の販売が20年続いた分として約4,000台と推定し、修理・部品の売上10.6億円(推定)を割った。
リスクと懸念
設備投資の山と谷
顧客の工具・金型メーカーは、景気の変わり目で研削盤の投資を真っ先に止める。売上は過去10年で42億〜88億円と振れ、谷の年は営業利益率が4%を割る。
中国の国産化
売上の27%を占める中国で、工作機械の国産化が進む。高精度の機械は残っても、中位の研削盤は安い国産機に置き換わり、数量と価格が同時に削られる。
海外の大手との競争
工具研削盤ではANCA、Walter、Vollmer、Rollomaticが世界で強い。ソフトと自動化で差を付けられれば、海外での価格の力を失う。
電気自動車による工具需要の変化
エンジン部品が減れば、それを削る超硬工具も減る。顧客の工具メーカーが減産すると、研削盤の注文はさらに大きく落ちる。
物流と地政学
会社は今期の見通しで、イラン情勢による海上輸送の混乱を注意点に挙げた。輸出の比率が高く、納期と運賃の乱れが利益に響く。
今後の分かれ目
- 受注が2期続けて増え、営業利益率が12%を超えたら
- 谷からの回復が確かとみて、やや楽観の確率を厚くする。
- 中国の売上が2期続けて2割を超えて減ったら
- 国産化の進みとみて、やや悲観・悲観を厚くする。
- 自社株買いや還元方針が数字で示されたら
- 余った現金の戻り方を1.0に上げる。
- 海外の大手による買収の提案が出たら
- 純現金と技術の価値が値段に乗るとみて、楽観の確率を上げる。
- 工具研削盤で新しい自動化の機種が売れ、海外の売上が伸びたら
- 数量の伸びを上げ、楽観側を厚くする。
見ておくもの
- 受注と受注残の動き
- 営業利益率(12%に戻るか)
- 中国の売上の比率
- 日本工作機械工業会の受注統計
- 自社株買い・配当の方針
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、研削盤の台数×単価と、据え付け台数×修理・部品の単価で10年後の利益を積んだ。台数は10年で1.1倍(工作機械の受注額の名目年3〜5%を物価で割った実質の範囲)、単価は物価の1.34倍。中立の営業利益率12%は過去12年の中央14%弱と山22%の下。ROEが資本コストに届かないため、PERは1÷k(約11.8倍)を上限に、利益の振れの大きさから約8割に置いた。余った現金は戻り方0.75で足した。今の時価総額と比べたのは最後。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→14.31 倍・やや楽観 PER 10→13.14 倍・中立 PER 9.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。