結論
ジャノメは家庭用ミシンの老舗メーカーで、売上の約 7 割が海外だ。売上の 76% を家庭用ミシン・刺しゅう機が占め、残りは卓上ロボットとサーボプレスなどの産業機器、ダイカスト、ソフト開発の IT 関連である。筆者の見立ては「適正」。純現金と事業の稼ぎがそろって評価され、今の値段とほぼ釣り合う。割安とは言い切れない。
事業の中心はミシンだ。世界のミシン市場は成熟しているが、北米のキルト・刺しゅう愛好家向け高級機で強みを持つ。2026 年 3 月期は米国の関税と為替で台数が 81 万台に減ったものの、中高級機の構成が上がって売上は増えた。
足を引っ張るのはダイカストだ。原材料高で赤字が続き、産業機器全体も赤字だ。ここが直るかが利益率の分かれ目になる。
財務は固い。純現金は 55 億円で、時価総額の 24% に当たる。ROE は 1.7% と低く、会社は 2028 年 3 月期に ROE 8% 以上、PBR 1 倍以上を目標に掲げた。MM Investments が 9% を保有し、資本効率の改善を促す大株主がそろった。それでも、本業の稼ぎは資本コストを超えず、評価の鍵は利益率の持ち直しと還元の実行にある。
バリュー投資の観点から
事業は分かりやすい。ミシンは趣味と実用の道具で、10 年後も使われる。この点の予測のしやすさは悪くない。ただし産業機器とダイカストが混ざり、利益の読みは単純でない。
バリュー投資の観点で、まず見たいのはオーナー利益だ。営業利益は 2027 年 3 月期予想で 30 億円、税引き後で 20 億円ほど。自己資本 346 億円に対して 6% 前後で、資本コストに届かない。純現金が 55 億円あり、その分を除いた事業の稼ぎはさらに小さい。
経営の資本配分は変わり始めている。自社株買いと増配に動き、ROE 8% を目標に置いた点は評価できる。一方、ダイカストの赤字を何年も抱え、買収も含む戦略投資 85 億円を掲げる点には慎重になる。
安全域は、純現金の厚さと、現在の純資産より安い値段にある。それでも、稼ぐ力が資本コストを超えるまで、安さは確かな根拠にならない。割安と見るのは、利益率が戻る前提で、純現金と還元が下支えするからだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は家庭用機器で、売上の 76%(297 億円)を占める。家庭用ミシン、刺しゅう機、その関連ソフトを開発・製造・販売する。2026 年 3 月期の販売は 81 万台で、北米・欧州・大洋州が 54 万台、中南米・中東・アジアが 19 万台、日本が 8 万台だった。北米向けの売上は 116 億円(前期 102 億円)で、家庭用の約 4 割にあたる。
産業機器は 2 つに分かれる。卓上ロボットとサーボプレス(電動プレス)は、電池・半導体・医療・自動車の組立ラインで使われる。2026 年 3 月期の販売はロボットが 2,855 台と前期の 2 倍超になり、プレスが 1,045 台だった。もうひとつがダイカスト(アルミなどの鋳造部品)で、2023 年に承継したアートテックの事業を含む。売上 24 億円に対し営業損失は 6 億円と重い。
IT 関連は子会社のジャノメクレディアが担う。ソフト開発、情報処理、システム運用管理で売上は 29 億円。営業利益は 5.4 億円と、売上の 7% で全社の営業利益の 3 割近くを稼ぐ。自社運用のサーバを軸にした運用管理が強みとされる。
不動産賃貸も少し営んでいる。生産は国内の本社工場に加え、台湾とタイの子会社が担い、現地通貨高は原価の上昇を通じて利益を圧迫する。
優良さと弱いところ
堀は「普通」と見る。ジャノメの強みはブランドで、北米のキルト・刺しゅうの愛好家には高級機で定評がある。ミシンは一度買えば長く使われ、部品や付属品の売上もある。一方、世界の家庭用ミシンはブラザーが首位級で、シンガーなど競合も多い。世界シェアは公表されておらず、ジャノメが首位という証拠はない。強い堀、つまり他社がまねできない強みと呼ぶには足りない。
収益の振れは大きい。営業利益率は 2019 年 3 月期に 3.0%、2021 年 3 月期にマスク需要で 11.2% まで上がり、2023 年 3 月期は 5.5%、2026 年 3 月期は 4.9% だった。景気や為替、需要の山が収益を左右する。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 4.4%、2026 年 3 月期は 1.7%。自己資本の 346 億円は、ミシンの在庫、純現金、賃貸不動産などに寝ている部分が多い。
足元は改善の兆しがある。2027 年 3 月期の営業利益 30 億円の予想に対し、1Q は 8.1 億円と順調だ。ただし期初の営業利益見通しを 13 億円としながら実績が 19 億円に上振れた経緯があり、予想の幅が大きい会社でもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
家庭用ミシンの世界市場は成熟していて、台数は大きくは伸びない。新興国では家計の収入が上がる国で需要が増え、先進国では手芸・キルトの趣味層が高級機に買い替える。ジャノメが 2027 年 3 月期に狙う新興国 15 万台、先進国 6 万台の上積みは、そうした構図に沿っている。ただし 2025 年 3 月期の 89 万台、2024 年 3 月期の 95 万台から台数は減ってきており、単価の上昇で売上を補う形が続く。
競争ではブラザーが北米で強く、シンガーなどが続く。ジャノメは高級機と刺しゅうで棲み分けている。米国の通商政策は輸出に直接効き、台湾・タイの現地生産の通貨高も原価を押し上げる。
産業機器は別の力学で動く。卓上ロボットは中国・韓国の電池・電子部品の設備投資に支えられたが、足元の 1Q は売上が前年を下回った。サーボプレスはインド・韓国の自動車向けが伸びる。競合はエプソン、山洋電気など。自動化の流れは追い風でも、中国の設備投資の波に左右される。
ダイカストは自動車部品の下請けで、アルミなどの原材料費・物流費・電力費の上昇を価格に移せるかが勝負だ。IT 関連は受託のソフト開発が AI エージェントに置き換わる影響を受けやすい一方、運用管理は顧客の基幹が絡むため、置き換えは緩やかと見る。
資本政策と M&A
還元の方針は、累進配当を意識し、DOE(株主資本配当率)3% 以上かつ配当性向 40% 以上を目安にする。2026 年 3 月期の配当は 9 億円ほど、2027 年 3 月期は増配の予定で、自社株買い 15 億円も実施した。中計では 3 年間で成長投資 105 億円(うち戦略投資 85 億円)と株主還元 75 億円を示している。
資本政策は動き始めた。会社は PBR 1 倍以上、ROE 8% 以上を 2028 年 3 月期の目標に置き、非事業用の不動産の見直しに着手した。ただ、政策保有株は上場 42 銘柄で合計 2 億円ほどと小さく、持ち合い株の整理で出る資金はほとんどない。賃貸不動産(八王子ほか)の簿価は 18 億円で、時価は開示がない。
M&A は少ない。2023 年にダイカストのアートテックを承継し、2006 年にエルナインターナショナルを買収した。戦略投資 85 億円の使い道は買収を含むと読めるが、ダイカストの赤字を見ると、買う側としての評価は定まっていない。
株主は MM Investments が 9% 台、大栄不動産が 8.5%、りそな銀行が 5% 超。TOB の履歴はないが、10 年以内の TOB の確率は 20% と見積もられる。株主優待は開示にない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ミシンの需要は景気に強く、ジャノメは北米で高級機のブランドを築いた。2026 年 3 月期は台数が減ったのに売上が増えた。中高級機の構成が上がったからだ。会社の 2027 年 3 月期の計画は新興国 15 万台、先進国 6 万台の上積みを織り込み、1Q の営業利益は 8.1 億円と通期予想の 3 割近くに達した。
産業機器は自動化の波に乗る。ロボットは販売が 2 倍を超え、インド・韓国の自動車向けにサーボプレスも伸びる。標準パッケージ化が進めば、個別対応で食われていた利益が出始める。ダイカストは価格改定の交渉が進み、原価低減も効いて赤字が縮むとみる。
財務の余裕は大きい。純現金は時価総額の 24%、自己資本比率は 68% で、増配と自社株買いの余地が大きい。会社は ROE 8%、PBR 1 倍を目標とし、MM Investments や大栄不動産も株主にいる。資本効率の改善を求める圧力は強く、実行されれば価値は動く。
さらに、時価総額は純資産の 65% ほどで、本業が少し戻るだけで安全域がある。
慎重な見方
利益率は景気と為替に弱い。営業利益率は 3% 台から 11% 台まで振れ、2026 年 3 月期は為替だけで 6.5 億円の減益要因だった。米国の関税はまだ影響額を開示されておらず、北米が家庭用の約 4 割を占める会社には大きな不確実性だ。
産業機器は 2 期連続の赤字で、ダイカストの営業損失は 6.3 億円と前期の約 2 倍。原材料高と物流費の上昇を価格に移せていない。ロボット・プレスの 1Q は前年を下回り、中国・韓国の設備投資の鈍化が出た。
IT 関連は営業利益の 3 割近くを稼ぐ一方、受託のソフト開発は AI エージェントに置き換わりやすい。
資本効率の目標も安心できない。前の計画を達成できなかった会社が、ROE 8% を 2028 年 3 月期に実現できるのか。純現金は戦略投資 85 億円で消える可能性があり、買収の失敗は純資産を減らす。
純資産の 65% という値段は、純資産が稼ぐ力に裏づけられていないことの裏返しでもある。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと純現金の厚さは両方の見方が一致する。争点は、利益率が 7% 近くまで戻るかと、純現金が還元に回るかだ。足元の 1Q の好調と会社が示した資本効率の目標を認め、中立に 38%、楽観とやや楽観を合わせて 28% を置いた。ダイカストと関税の不確実性、中計の未達の歴史から、やや悲観を 24%、悲観を 10% と厚めにした。計算の結果は、今の値段とほぼ同じ「適正」になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,025 円339 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 834 円139 億円)。 今の値に割り戻すと 1,563 円261 億円、今との差 +18.5%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,592 円768 億円 | 1,495 円250 億円 | +361.5% | +16.5% | 487 円81 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,966 円496 億円 | 1,076 円180 億円 | +206.5% | +11.9% | 808 円135 億円 |
| 中立 | 38% | 2,116 円354 億円 | 897 円150 億円 | +128.4% | +8.6% | 1,145 円191 億円 |
| やや悲観 | 24% | 947 円158 億円 | 508 円85 億円 | +10.3% | +1.0% | 349 円58 億円 |
| 悲観 | 10% | 329 円55 億円 | 359 円60 億円 | −47.9% | −6.3% | 69 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,025 円339 億円 | 834 円139 億円 | +116.7% | +8.0% | 2,858 円478 億円 |
今の株価時価総額 1,319 円221 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% ミシンの高級化とロボットの自動化需要が重なり、中計の目標に届く 利益 43 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 4,592 円768 億円
家庭用ミシンは北米のキルト・刺しゅう愛好家に高級機を売り込み、新興国でも台数を伸ばす。年 105 万台まで増え、平均単価は新興国の構成が上がる分だけ物価の伸びに届かない。営業利益率は 9% に上がる。
卓上ロボットとサーボプレスは、電池・半導体・医療の組立の自動化で台数が 1.8 倍になる。標準パッケージ化で個別対応の手間が減り、利益率は 10% に届く。ダイカストは値上げと原価低減が実り、赤字から 4% の黒字になる。IT 関連は AI の自動化で一部の受託を失うものの、運用管理は値上げが通り、売上は 3 割ほど落ちるだけで済む。
全社の営業利益率は 9% 台で、中計「Move! 2027」が最終年度に掲げる 9.2% にほぼ並ぶ。ROE は 11% に上がるが、自己資本を厚くため込まず、還元は 10 年で 250 億円を超える。筋書きとしては、株主が求める資本効率の改善が事業の追い風と同時に起こる形だ。
- 家庭用ミシン・刺しゅう機:数量 105(販売台数(万台))× 価格 47,198(1 台あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 496 億円・営業利益 45 億円。営業利益率9.0%
- 卓上ロボット・サーボプレス:数量 7,020(販売台数(台。ロボット 2,855 台 + サーボプレス 1,045 台))× 価格 129(1 台あたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 91 億円・営業利益 9 億円。営業利益率10.0%
- ダイカスト:数量 4.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.04(1 千トンあたりの平均単価(億円、名目。1 トン 60 万円と仮置き))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
- IT 関連(ソフト開発・運用管理):数量 213(技術者数(人。推定))× 価格 1,448(1 人あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 5 億円。営業利益率17.0%
- 賃貸その他:数量 24.0(賃貸等不動産の簿価(億円、実質。八王子・仙台ほか約 24 億円))× 価格 0.11(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.08125 × 1.0))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。営業利益率30.0%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 17.11 倍、時価総額 768 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:家庭用の台数を 3 割増やしながら、ロボットの需要を取り込み、ダイカストを黒字にする必要がある。中計を 2 期続けて計画未達に終わっている実績から、確率は 1 割に満たない。
やや楽観 20% 値上げと工場の効率化が実り、営業利益率が 8% 近くまで上がる 利益 32 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 2,966 円496 億円
家庭用ミシンは中高級機の構成が高まり、台数は年 97 万台、営業利益率は 7.8% になる。北米の販売代理店の支援を厚くし、新興国ではインドや CIS の新機種が定着する。
ロボット・プレスは 1.4 倍に伸び、利益率 7% に乗る。ダイカストは取引先に価格改定が受け入れられて 2% の黒字になる。IT 関連は人手の仕事が減る分、売上が 2 割ほど減る一方、運用管理は堅い。
全社の営業利益率は約 8% で、過去 12 年の山の 11.2%(2021 年 3 月期のマスク需要)には届かない。ROE は 8% 台で資本コストと並ぶ程度だ。還元は 10 年で 180 億円。
- 家庭用ミシン・刺しゅう機:数量 97.0(販売台数(万台))× 価格 46,215(1 台あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 448 億円・営業利益 35 億円。営業利益率7.8%
- 卓上ロボット・サーボプレス:数量 5,460(販売台数(台。ロボット 2,855 台 + サーボプレス 1,045 台))× 価格 129(1 台あたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 5 億円。営業利益率7.0%
- ダイカスト:数量 4.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.04(1 千トンあたりの平均単価(億円、名目。1 トン 60 万円と仮置き))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.0%
- IT 関連(ソフト開発・運用管理):数量 195(技術者数(人。推定))× 価格 1,413(1 人あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 4 億円。営業利益率16.0%
- 賃貸その他:数量 24.0(賃貸等不動産の簿価(億円、実質。八王子・仙台ほか約 24 億円))× 価格 0.11(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.08125 × 1.0))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。営業利益率30.0%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 14.55 倍、時価総額 496 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の増益基調(1Q の営業利益 8 億円)と会社の 2027 年 3 月期の計画が実現し、その後も続く筋書きで、中立に次いで現実味がある。ただし中計は未達が続き、確率は 2 割に置いた。
中立 38% 北米の高級機と新興国で台数は戻るが、利益率は 7% 手前に収まる 利益 24 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,116 円354 億円
家庭用ミシンは年 90 万台まで戻る。2026 年 3 月期の 81 万台は米国の関税と為替で落ちた年で、2025 年 3 月期の 89 万台に近い水準だ。新興国の台数が増えて、平均単価は物価の伸びに届かない。営業利益率は 6.8%、会社の 2027 年 3 月期の計画(7.0%)を少し下回る。
産業機器では、卓上ロボットとサーボプレスの台数は自動化の流れで年 1 割増える。ダイカストは値上げが一部通るものの、原材料と物流費の上昇を追い切れず、収支はようやくゼロになる。IT 関連は AI エージェントが一部の開発と運用を置き換え、数量は 3 割減るが、値上げで売上の減りは 2 割にとどまる。
全社の営業利益率は約 6.7%、過去 12 年の中央値より上、会社の 2028 年 3 月期の予想(7.5%)より下だ。ROE は 6% 台で資本コストに届かない。還元は 10 年で 150 億円、利益のおよそ 8 割。
- 家庭用ミシン・刺しゅう機:数量 90.0(販売台数(万台))× 価格 45,231(1 台あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 407 億円・営業利益 28 億円。営業利益率6.8%
- 卓上ロボット・サーボプレス:数量 4,290(販売台数(台。ロボット 2,855 台 + サーボプレス 1,045 台))× 価格 129(1 台あたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。営業利益率5.0%
- ダイカスト:数量 3.8(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.04(1 千トンあたりの平均単価(億円、名目。1 トン 60 万円と仮置き))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
- IT 関連(ソフト開発・運用管理):数量 175(技術者数(人。推定))× 価格 1,390(1 人あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。営業利益率15.0%
- 賃貸その他:数量 24.0(賃貸等不動産の簿価(億円、実質。八王子・仙台ほか約 24 億円))× 価格 0.11(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.08125 × 1.0))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。営業利益率30.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 354 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最近の利益率は 3% 台から 11% 台まで振れた。会社は 2027 年 3 月期に営業利益 30 億円を見込むが、その実現を過去の計画達成率を割り引いて見る。中立に最も厚く置いた。
やや悲観 24% 北米の関税と競合で単価が押され、ダイカストの赤字も残る 利益 12 億円 · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 947 円158 億円
米国の関税と為替で北米向けの単価が思うように上がらず、台数も年 80 万台と今の水準に近い。家庭用の営業利益率は 4.5% に下がる。ロボットは中国・韓国の設備投資が鈍り、台数が 1 割減る。ダイカストは原材料高を価格に移せず、赤字が続く。IT 関連は AI の自動化で売上が 3 分の 2 ほどになる。
全社の営業利益率は 4% 台前半。2020 年 3 月期前後の水準に戻る。
還元は利益の減少に合わせて 10 年で 85 億円に落とす。余った現金は買収や設備に使われ、残るのは 3 割減の水準と見る。ROE は 3% 台。
- 家庭用ミシン・刺しゅう機:数量 80.0(販売台数(万台))× 価格 42,524(1 台あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 340 億円・営業利益 15 億円。営業利益率4.5%
- 卓上ロボット・サーボプレス:数量 3,510(販売台数(台。ロボット 2,855 台 + サーボプレス 1,045 台))× 価格 118(1 台あたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.5%
- ダイカスト:数量 3.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 7.32(1 千トンあたりの平均単価(億円、名目。1 トン 60 万円と仮置き))→ 売上 25 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-4.0%
- IT 関連(ソフト開発・運用管理):数量 150(技術者数(人。推定))× 価格 1,274(1 人あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。営業利益率12.0%
- 賃貸その他:数量 24.0(賃貸等不動産の簿価(億円、実質。八王子・仙台ほか約 24 億円))× 価格 0.10(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.08125 × 1.0))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率30.0%
倍率:ROE 3.1% は k 以下で、稼ぐ力(事業の純利益÷k)は約 150 億円。PER の上限 12.5 倍の約 8 割(9.8 倍)。余った現金は 0.75 倍の 30 億円を足した。
確率:ブラザーなど大手の価格攻勢と米国の通商政策が重なる筋書きで、中立の次に起こりやすい。過去にも 2019〜2020 年 3 月期に営業利益率が 3% 台に落ちた。2 割台半ばを置いた。
悲観 10% 家庭用の台数が構造的に減り、産業機器は撤退を迫られる 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 329 円55 億円
家庭用ミシンは安価な中国製とブラザーに押され、年 60 万台まで減る。単価も上がらず、利益率は 1% まで下がる。ロボット・プレスは台数が 4 割減り、ダイカストは取引先を失い、規模を縮める。IT 関連は AI の自動化で売上が半分以下になる。
全社の営業利益は数億円にとどまり、赤字の事業を整理するための費用もかかる。
手元の純現金と賃貸不動産が、床として残る。還元は 10 年で 60 億円と細り、株主はこの資産の使い方を決める立場にない。
構造的な負けの中身は 3 つある。ひとつは北米の関税と競合の安値で、高級機の単価が崩れること。ふたつめは中国・韓国の設備投資が戻らず、ロボットの台数が元に戻ること。みっつめは IT 関連の受託開発が AI に置き換わり、営業利益の 3 割近くを稼いでいた事業が細ることだ。経営はこれらに対し、戦略投資 85 億円で買収に動く可能性が高く、その失敗で純現金も目減りする。
- 家庭用ミシン・刺しゅう機:数量 60.0(販売台数(万台))× 価格 38,341(1 台あたりの平均単価(円、名目))→ 売上 230 億円・営業利益 2 億円。営業利益率1.0%
- 卓上ロボット・サーボプレス:数量 2,340(販売台数(台。ロボット 2,855 台 + サーボプレス 1,045 台))× 価格 106(1 台あたりの平均単価(万円、名目))→ 売上 25 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-2.0%
- ダイカスト:数量 2.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 6.60(1 千トンあたりの平均単価(億円、名目。1 トン 60 万円と仮置き))→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-10.0%
- IT 関連(ソフト開発・運用管理):数量 113(技術者数(人。推定))× 価格 1,158(1 人あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。営業利益率8.0%
- 賃貸その他:数量 24.0(賃貸等不動産の簿価(億円、実質。八王子・仙台ほか約 24 億円))× 価格 0.09(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.08125 × 1.0))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率30.0%
倍率:営業利益がほぼゼロで稼ぐ力(純利益 2 億円÷k)は 25 億円にとどまり、純現金+売れる資産の床 55 億円を今の自己資本 346.5 億円に掛けて PBR 0.16 倍とした。事業整理の減損で自己資本は流れより増えない。
確率:世界の家庭用ミシンは競合の数が少なく、ブランドと販売網で勝負する市場で、一度地位を落とすと戻りにくい。主力の北米依存が高く、関税・為替・景気が重なる筋書きを 1 割置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
家庭用ミシン・刺しゅう機
家庭用ミシンと刺しゅう機、関連ソフト。売上の 76%、北米の高級機に強い。
| 数量販売台数(万台) | 価格1 台あたりの平均単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 81.0 | 36,690 | 297 | 19 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 45,231 | 407 | 28 |
取り方:家庭用機器の売上 297.2 億円(総売上 389.7 億円から産業機器 61.55・IT 28.95・その他 2.0 を引いた)を、販売台数 81 万台(有報)で割り、1 台 3.67 万円と置いた。営業利益は前期の 21.6 億円から 3.04 億円減った(為替 -6.5 億円など)。数量は新興国の台数増で中立 10 年 1.11 倍(先進国と国内は横ばい〜微減)。価格は物価 1.34 倍に、新興国の構成が上がる分(0.92)を掛けて 1.23 倍。市場の大きさ:世界の家庭用ミシンは信頼できるシェアの出典がなく、ブラザーが首位級、シンガー・ジューキ・ジャノメが続く。
卓上ロボット・サーボプレス
組立の自動化に使う卓上ロボットと電動のサーボプレス。電池・半導体・医療・自動車向け。
| 数量販売台数(台。ロボット 2,855 台 + サーボプレス 1,045 台) | 価格1 台あたりの平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,900 | 96 | 38 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4,290 | 129 | 55 | 3 |
取り方:産業機器の売上 61.55 億円からダイカスト 23.9 億円を引いた 37.6 億円を、2 製品の合計 3,900 台(有報)で割り、1 台 96 万円と置いた。営業利益はダイカストの営業損失 6.32 億円を産業機器の損失 5.43 億円から戻して +0.89 億円と推定。数量は自動化需要で中立 10 年 1.1 倍(前期はロボットが 2.2 倍に急増した反動あり)。価格は物価並み 1.34 倍。市場の大きさ:卓上ロボットはエプソン・山洋電気などと競う。
ダイカスト
アルミなどの鋳造部品を自動車向けなどに受託生産。子会社ジャノメダイカストが担う。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1 千トンあたりの平均単価(億円、名目。1 トン 60 万円と仮置き) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 6.00 | 24 | −6 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 8.04 | 31 | 0 |
取り方:ダイカストの売上 23.92 億円(有報)を、1 トン 60 万円(推定)で割って出荷量 4.0 千トンと置いた。営業損失は 6.32 億円(前期 3.37 億円)。数量は取引先の見直しで中立 10 年 0.95 倍、価格は物価並み 1.34 倍で、原価を追い切れず利益率はゼロとみる。市場の大きさ:国内のアルミダイカストは自動車向けが中心で、ジャノメダイカストは小規模。
IT 関連(ソフト開発・運用管理)
子会社ジャノメクレディアによるソフト開発、情報処理、システム運用管理。
| 数量技術者数(人。推定) | 価格1 人あたりの年間売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 1,158 | 29 | 5 |
| 10 年後 中立 | 175 | 1,390 | 24 | 4 |
取り方:IT 関連の売上 28.95 億円(外部顧客向け)を、技術者 250 人(推定。ジャノメクレディアの人数は未確認)で割り、1 人 1,158 万円と置いた。人月・運用管理の型として AI エージェント代替を重く見て、数量は中立 10 年 0.70 倍。価格は運用管理の値上げが通る分を見て 1.20 倍。開発の受託と自社運用型サーバの運用管理の売上比率は開示がなく、運用管理が堅いことを理由に人月型の下限(0.55)より上に置いた。
賃貸その他
不動産賃貸など。
| 数量賃貸等不動産の簿価(億円、実質。八王子・仙台ほか約 24 億円) | 価格簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.08125 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24.0 | 0.08 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 0.11 | 3 | 1 |
取り方:その他事業の売上 1.95 億円(2025 年 3 月期)を、賃貸用設備の簿価 24 億円(八王子ほか 18.4 億円、仙台ほか約 6 億円)× 簿価に対する賃料の利回り約 8% と置いた。営業利益は全社の営業利益 19.1 億円から他のセグメントの推定を引いた残り(0.6 億円)。数量は横ばい、価格は物価並み。
リスクと懸念
米国の関税と為替
海外売上比率は 7 割前後で、北米は家庭用の約 4 割。関税の影響額は開示されていないが、2026 年 3 月期は為替だけで 6.5 億円の減益要因になった。台湾・タイでの現地生産の通貨高も原価を押し上げる。
ダイカストの赤字
売上 24 億円に対し営業損失は 6.3 億円で前期の約 2 倍。原材料と物流費の上昇を価格に移せず、産業機器全体の赤字の原因になっている。撤退・縮小の判断が遅れると全社の利益率を下げる。
競合の価格攻勢
家庭用ミシンはブラザーが首位級で、シンガー、中国メーカーなど競合が多い。台数が 95 万台から 81 万台へ減ってきており、単価の上昇で売上を補う形が続く。
中国・韓国の設備投資の波
ロボット・プレスは中国・韓国の電池・電子部品の設備投資に支えられたが、1Q の売上は前年を下回った。需要の山が過ぎれば、2026 年 3 月期に 2.2 倍に増えた台数は元に戻りうる。
AI エージェントによる IT 関連の置き換え
IT 関連は営業利益の 3 割近くを稼ぐが、受託のソフト開発は AI エージェントが人月を置き換えやすい。運用管理は堅いものの、売上と利益率が長期で縮む可能性がある。
戦略投資の失敗
成長投資 105 億円(うち戦略投資 85 億円)が計画され、買収を含むと読める。ダイカストの経験から、買う側としての実績は定まっておらず、純現金 55 億円が失われうる。
計画未達の歴史
前の中計は目標に届かず、「Move! 2027」の ROE 8%・営業利益率 9.2% も達成できるかは未知数。目標を外す年が続くと、大株主の改善要求が強まる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が会社予想の 30 億円に届いたら
- 利益率の持ち直しが確かになり、中立から楽観寄りの筋書きに重みを移してよい。
- ダイカストが 2027 年 3 月期に黒字化したら
- 産業機器全体の赤字が消え、全社の利益率の前提が 1 ポイント近く上がる。
- 米国の関税が北米の販売価格や台数に目に見える影響を与えたら
- 北米依存の高さから、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
- 純現金を使った大型の買収を発表したら
- のれんと利益率の負担を見て、余った現金の戻り方を 1.0 から下げる。
- MM Investments や大栄不動産が株主提案や TOB に動いたら
- 買い手の価格は純資産近辺が目安。事業の稼ぐ力以上の値は付きにくい。
- ロボット・プレスの受注が 2 期連続で前年を下回ったら
- 自動化の台数前提を落とし、産業機器の利益を下方修正する。
見ておくもの
- 家庭用ミシンの販売台数と平均単価(北米・新興国別)
- ダイカストの営業損益と撤退・縮小の判断
- 営業利益率の四半期推移(7% 前後に乗るか)
- 自社株買いと配当の実行額、戦略投資の使い道
- ロボット・プレスの受注と中国・韓国の設備投資
- MM Investments・大栄不動産の持株比率と提案
倍率と資本コストの決め方
家庭用ミシンは台数 × 単価、ロボット・プレスは台数 × 単価、ダイカストは出荷量 × 単価(推定)、IT 関連は技術者数 × 1 人あたり売上(推定)で積み上げ、価格は物価並みの 1.34 倍(新興国の構成が上がる家庭用は 1.23 倍、IT は AI 代替の下で 1.2 倍)とした。営業利益率は中立で 6.7%(会社の 28 年 3 月期予想 7.5% と過去 12 年の山 11.2% の間で、中央値より上)。ROE は 6% 台で k 以下なので PER の上限は 1÷k=12.5 倍で、その 9 割を置いた。今の株価や PBR 0.6 倍からは倍率を置いていない。純現金は時価総額の 24% で、40 億円を余った現金として別に足し、残りは運転資金と戦略投資に見た。賃貸不動産は賃料が利益に残るので価値には足さない。新リース会計基準の影響は小さいとみて数字の形は今のままで置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.1→17.11 倍・やや楽観 PER 12.5→14.55 倍・中立 PER 11.3→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%。赤字が続く事業はあるが全体は黒字で純現金も厚く、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。