結論
イワキは、薬液を正確に、漏らさずに送る小型ポンプの会社だ。水処理、医療機器、半導体、化学と、買い手が散らばる。実質無借金で、利益率は過去最高の 12% 台にある。筆者の結論は、事業は優良だが今の値段は高く、10 年後の価値は今を 3 割近く下回る、というものだ。
強みは、用途の広さにある。水処理が売上の 4 分の 1、医療機器が 2 割弱、半導体・液晶が 15% 台で、残りは化学や食品などに散る。収益性の高いマグネットポンプと定量ポンプで、売上のおよそ半分を稼ぐ。ただ、世界の市場でのシェアは数%にすぎず、規模で値段を決める立場にはない。
気になるのは利益率の水準だ。2016 年 3 月期から 2023 年 3 月期までは 6〜8% 台で、2024 年 3 月期に 12% 台へ跳ねた。今期の第 1 四半期は売上が 15%、営業利益が 28% 伸び、勢いは本物だ。それでも、この水準が 10 年続くとまでは置けない。
もう一つの材料は株主だ。スイスに住所を置くシャロン・ファイナンスが 3 年足らずで 5% から約 19% まで買い増し、ダルトンも 5% を持つ。資本の使い方が変わる余地は、評価の上振れ材料になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、イワキは「悪くない会社を、高い値段で買わされる」タイプに映る。事業は分かりやすく、無借金で、顧客の設備に組み込まれる。だが、世界の大手と競うニッチの会社で、利益率を 10 年にわたり支える決定的な堀は見えない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益より小さい。3 年間で 80 億円の投資を計画し、純利益の 3 年分の半分強に当たる。在庫は 126 億円と、売上の 4 分の 1 を超える。利益は、台湾の持分法益や為替差益にも助けられている。
経営の資本配分には、改善の兆しと不安が同居する。配当の下限と性向の引き上げ、在庫回転の目標、持ち合いの縮減は前向きだ。一方、在庫を積み上げた過去は、資本の使い方が常に厳しかったとは言えない。外から資本効率を問う株主が増えたことは、経営に緊張を与える。
安全域の面では、利益率が過去の倍の水準にある時の利益に、20 倍近い値段が付いている。10 年を通じて今の稼ぎが続くことを、ほぼ満額で織り込んだ値段だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、化学薬品や水など、扱いにくい液体を送るポンプだ。主力は 2 つある。マグネットポンプは、軸に穴を開けず磁石の力で羽根を回すので、液が外に漏れない。定量ポンプは、決まった量を決まった時間に正確に送る。2026 年 3 月期の売上は前者が約 157 億円、後者が約 83 億円で、合わせて全体の半分に当たる。製品の中でも収益性が高い部類だ。
売る先は 7 つの市場に分かれる。最大は水処理の 114 億円で、浄水場や排水処理場、冷却塔の薬品注入に使われる。次が医療機器の 88 億円で、人工透析装置や臨床分析装置に部品として組み込まれる。半導体・液晶は 73 億円、化学は 55 億円、基板のめっきなど表面処理装置が 30 億円、二次電池などの新エネルギーが 8 億円だ。残りは食品や製紙などで、109 億円ある。
売上の 52.7% は海外で、米国・欧州・アジア・中国に販売の拠点を持つ。中期経営計画は、海外売上を 2028 年 3 月期に 295 億円まで伸ばす目標だ。装置メーカーの機器に組み込まれる製品が多く、顧客が一度採用すると簡単には替えない。補修や更新の需要も、一定程度は業績を支える。
優良さと弱いところ
堀は、用途ごとの「組み込み」にある。透析装置や半導体装置の設計に入ったポンプは、装置が作られ続ける限り使われやすい。マグネットポンプは 1967 年に国内で初めて量産した製品で、品ぞろえの広さと海外の販売網は、長い時間でしか築けない。
ただ、堀の深さは限られる。世界の定量ポンプ市場は、上位 10 社で 6 割を握る。ミルトン・ロイやプロミネントなどの大手に比べ、イワキのシェアは数%だ。用途によっては価格を市場で決められてしまう。筆者は、堀を「普通」と見る。
財務は堅い。自己資本比率は 74% で、現金が借入を上回る。一方、資本の使い方には甘さがある。納期を短くしようと在庫を積み、2016 年 3 月期に 43 億円だった在庫が 2025 年 3 月期には 145 億円まで膨らんだ。在庫の回転は 194 日と長く、会社は 150 日への短縮を目標にしている。
利益の中身にも注意がいる。2026 年 3 月期は、営業利益より経常利益が大きい。台湾の関連会社の持分法益や為替差益が、利益を押し上げた。本業の稼ぎだけを見れば、純利益の見かけほど強くはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ポンプは、製造業と社会インフラのほぼ全域で使われる。イワキが戦うのは、その中の薬液や水を扱う小型の領域だ。調査会社の推計では、世界の定量ポンプ市場は約 69 億ドルで、年 5% 台の成長が見込まれる。用途で最大なのは水・排水で、2 割強を占める。
競争は厳しい。定量ポンプでは、ミルトン・ロイ、プロミネント、IDEX、LEWA、グルンドフォスといった海外の大手が上位を占める。国内では、定量ポンプのタクミナや、マグネットポンプの荏原製作所が競合する。値段で争う汎用品は新興国の安いメーカーに食われやすく、イワキの勝負どころは、薬液ごとの相性や品質、供給の安定だ。
今は追い風が多い。2026 年 3 月期は、米国の水処理が前年比 7%、欧州の化学が 8%、国内の医療機器が 20% 伸び、台湾・韓国・中国の半導体・液晶も回復に転じた。水資源の不足と排水の規制強化は、10 年を通じた需要の土台だ。中期経営計画が重要テーマに掲げる水素など次世代エネルギーは、まだ需要を探る段階にある。
筆者は、水関連の市場が実質で年 2〜3% 伸びる、堅実な成長を前提にした。半導体・液晶は景気の波が大きいが、構造的な伸びは他より高く置いた。
資本政策と M&A
還元は、中期経営計画で強まった。配当性向を従来の 30% 超から 35% 以上に引き上げ、1 株あたりの配当に下限も設けた。2027 年 3 月期は、上場 10 周年の記念配当を含めて前期比およそ 2 割の増配を予定する。
3 年間(2026〜2028 年 3 月期)のお金の配分は、営業キャッシュフロー約 190 億円(在庫の削減を含む)に手元資金 80 億円と借入 30 億円を足し、成長・基盤投資に約 80 億円、株主還元に約 60 億円を充てる。新工場の建設は終わり、減価償却が増える局面に入る。投資有価証券は 27 億円から 22 億円へ減り、持ち合いを整理する方向だ。
注目は株主の顔ぶれだ。シャロン・ファイナンスは 2023 年 9 月の 5% から、2026 年 8 月の報告では 18.95% まで買い増した。保有の目的は当初「投資リターン」とされ、実質の保有者は開示から分からない。ダルトンは 2026 年 4 月に株主提案を出し、会社は取締役会の意見を示した。ほかに藤中ホールディングスが約 12%、社長の藤中茂氏が約 8% を持つ。買収の可能性は小さくないが、筆者は支配権の争いより、還元と資本効率の改善圧力として働くと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
イワキの利益率は、一時の好況ではなく、値決めと製品構成の改善で変わった。2024 年 3 月期に 12% 台へ上がってから、3 年続けて 12% を割っていない。今期の第 1 四半期は売上が 15%、営業利益が 28% 伸び、会社の予想はまだ控えめに見える。
市場の追い風も揃う。米国の水処理、欧州の化学、国内の医療機器が最高の売上を更新し、半導体・液晶も回復している。水素や二次電池といった新しい用途は、まだ数字に入っていない。
さらに、株主の目が変わった。シャロン・ファイナンスが 19% 近くまで買い増し、ダルトンも 5% を持つ。会社は配当性向を 35% 以上に上げ、在庫の圧縮と持ち合いの縮減に動く。在庫が 150 日まで縮めば、数十億円の現金が戻る。還元がさらに厚くなれば、ROE は 14% を超える。
中期経営計画の 2035 年の目標は、売上 1,000 億円、利益率 15% 以上だ。海外の水処理と、世界で売れるグローバル製品が育てば、届かない数字ではない。
慎重な見方
利益率の跳ね上がりは、持続するとは限らない。10 年前は 5〜6% 台で、2023 年 3 月期までは 6〜8% 台だった。2024 年 3 月期からの 12% は、円安と値上げの追い風が重なった結果で、その風が止めば元に戻る力が働く。
今期の純利益は、営業利益の伸び以上に持分法益と為替差益で膨らんだ。台湾の半導体・液晶の好況は循環の一部で、続かない。医療機器の国内 20% 増も、特定の装置の採用に左右される一時的な伸びかもしれない。
競争は構造的に厳しい。世界の定量ポンプ市場は上位 10 社で 6 割を握り、中国や韓国の安価な製品も育っている。イワキのシェアは数%で、価格を決める力は弱い。値上げが通らなくなれば、利益率は一気に下がる。
資本配分への不安も消えない。在庫を 3 倍強に積んだ判断の甘さは、新工場と成長投資でも繰り返されうる。株主の圧力が還元を強めても、本業の稼ぎが先に細れば、効果は限られる。
どちらに重みを置いたか
利益率の持続性が最大の争点で、慎重な見方がやや強い。12% 台は歴史的に高く、10 年を通した実力とは言い切れない。一方、用途の分散と無借金の財務、株主による資本効率の圧力は、下値を支える。
確率は、中立に 34% を置き、悲観側に 37%、楽観側に 29% とした。楽観には会社の 10 年目標に近い筋書きを、悲観には利益率が 5% 前後まで戻る筋書きを置く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,250 円1,166 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,280 円284 億円)。 今の値に割り戻すと 3,655 円812 億円、今との差 −5.7%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 6.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,143 円2,252 億円 | 1,946 円432 億円 | +212.0% | +12.1% | 967 円215 億円 |
| やや楽観 | 21% | 7,699 円1,709 億円 | 1,513 円336 億円 | +137.7% | +9.0% | 1,935 円430 億円 |
| 中立 | 34% | 6,287 円1,396 億円 | 1,306 円290 億円 | +96.0% | +7.0% | 2,582 円573 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,366 円525 億円 | 1,081 円240 億円 | −11.0% | −1.2% | 862 円191 億円 |
| 悲観 | 12% | 770 円171 億円 | 766 円170 億円 | −60.4% | −8.8% | 184 円41 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,250 円1,166 億円 | 1,280 円284 億円 | +68.5% | +5.4% | 6,529 円1,450 億円 |
今の株価時価総額 3,875 円860 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 中期経営計画の目標に届き、資本の使い方も変わる 利益 113 億円 · PER 19.9 倍 · 株価時価総額 10,143 円2,252 億円
海外の水処理と医療機器が伸び続け、2036 年 3 月期の売上は約 1,000 億円と、会社が掲げる NEXT10 の目標に届く。世界で売れるグローバル製品が育ち、シェアは水処理で 3.7%、半導体・液晶で 4.0% まで上がる。利益率は 13% 台を保つ。
大株主の圧力もあって資本の使い方が変わる。在庫は 150 日まで縮み、持ち合い株の売却と合わせて、10 年で純利益の 55% を配当と自社株買いで返す。ROE は 14% 台に上がる。
水素や二次電池向けなど新しい用途も立ち上がる。ただ、会社の描く筋書きにほぼ全部が合う、最良の 10 年だ。
- 水処理市場向け:数量 5,600(世界の水処理向け小型ポンプ(定量・マグネット等)の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 278 億円・営業利益 39 億円。市場 5,600 億円・シェア 3.7%・利益率 14%
- 半導体・液晶・表面処理向け:数量 4,320(半導体・液晶・表面処理装置向けの薬液用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 232 億円・営業利益 37 億円。市場 4,320 億円・シェア 4.0%・利益率 16%
- 医療機器向け:数量 2,900(医療・分析機器に組み込まれる小型ポンプの世界市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 187 億円・営業利益 30 億円。市場 2,900 億円・シェア 4.8%・利益率 16%
- 化学・新エネルギー・その他向け:数量 15,360(化学・食品・製紙・新エネルギー向けの小型〜中型ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 2.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 319 億円・営業利益 42 億円。市場 1.5 兆円・シェア 1.55%・利益率 13%
倍率:事業の純利益 113 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍。全体の PER 19.93 倍、時価総額 2,252 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上 1,000 億円と利益率 13% 台を同時に取り、株主還元も厚くなる必要がある。市場の追い風・水素や電池の新用途・株主の圧力がすべて噛み合う筋書きで、確度は高くない。
やや楽観 21% 利益率 12% 台を守り、還元が少しずつ厚くなる 利益 92 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 7,699 円1,709 億円
会社の中期計画どおりに 2028 年 3 月期へ進み、その後も市場の伸びを取り込む。2036 年 3 月期の売上は約 920 億円、利益率は 12% 台を保つ。値上げが定着し、水処理と医療機器でシェアが少しずつ上がる。
半導体・液晶は台湾・韓国・中国の投資が続いて、市場が 10 年で 5 割ほど大きくなる。医療機器は高齢化と国内の装置の更新に支えられ、化学は穏やかな伸びにとどまる。会社の長期目標(利益率 15% 以上)には届かないが、近づく。
還元は配当性向 35% を上回って 5 割近くまで上がる。ただ、大きな資本政策の転換はなく、ROE は 12% 前後に落ち着く。
- 水処理市場向け:数量 5,400(世界の水処理向け小型ポンプ(定量・マグネット等)の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 4.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 246 億円・営業利益 32 億円。市場 5,400 億円・シェア 3.4%・利益率 13%
- 半導体・液晶・表面処理向け:数量 4,104(半導体・液晶・表面処理装置向けの薬液用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 215 億円・営業利益 31 億円。市場 4,100 億円・シェア 3.9%・利益率 14.5%
- 医療機器向け:数量 2,800(医療・分析機器に組み込まれる小型ポンプの世界市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 171 億円・営業利益 26 億円。市場 2,800 億円・シェア 4.55%・利益率 15%
- 化学・新エネルギー・その他向け:数量 14,880(化学・食品・製紙・新エネルギー向けの小型〜中型ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 2.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 291 億円・営業利益 34 億円。市場 1.49 兆円・シェア 1.46%・利益率 11.5%
倍率:事業の純利益 92 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.58 倍、時価総額 1,709 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の第 1 四半期の勢いと、会社の中期計画(2028 年 3 月期に売上 530 億円・利益率 13%)が実現し、その後も市場の伸びを取り込む筋書き。実現の確度は中立に次いで高い。
中立 34% 用途の広さで堅実に伸びるが、利益率は少し下がる 利益 79 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 6,287 円1,396 億円
2036 年 3 月期の売上は約 860 億円と、10 年で 1.8 倍になる。需要の実質の伸びは年 2〜3% で、残りは物価の分だ。シェアは水処理でやや上がり、半導体・液晶と化学は横ばいに近い。
利益率は 11.5% に緩む。値上げは定着するが、競争で全部は通らない。人件費と研究開発の増加も効く。純利益は約 80 億円で、今の 1.6 倍になる。
配当性向は 40% 台で、10 年の還元は約 290 億円。在庫の回転は改善し、財務は無借金のまま現金が積み上がる。会社の NEXT10(利益率 15% 以上)には届かない。「普通に強い優良企業」の 10 年だ。
- 水処理市場向け:数量 5,200(世界の水処理向け小型ポンプ(定量・マグネット等)の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 4.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 223 億円・営業利益 27 億円。市場 5,200 億円・シェア 3.2%・利益率 12%
- 半導体・液晶・表面処理向け:数量 3,915(半導体・液晶・表面処理装置向けの薬液用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 194 億円・営業利益 26 億円。市場 3,900 億円・シェア 3.7%・利益率 13.5%
- 医療機器向け:数量 2,700(医療・分析機器に組み込まれる小型ポンプの世界市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 163 億円・営業利益 23 億円。市場 2,700 億円・シェア 4.5%・利益率 14%
- 化学・新エネルギー・その他向け:数量 14,400(化学・食品・製紙・新エネルギー向けの小型〜中型ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 1.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 276 億円・営業利益 30 億円。市場 1.44 兆円・シェア 1.43%・利益率 11%
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.67 倍、時価総額 1,396 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:水関連の市場が 10 年で年 3〜5% 伸びる前提(業種ノート)に、実質では年 2〜3% の需要増と、物価並みの値上げを合わせた中心の筋書き。利益率は今の 12.4% から 11.5% へ緩む前提で、慎重な見方がやや強い分、悲観側へ寄せた。
やや悲観 25% 値上げの追い風が止まり、利益率が 10% を割る 利益 55 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 2,366 円525 億円
円安と値上げの追い風が止まり、競争が値段に戻る。2036 年 3 月期の売上は約 730 億円と伸びは鈍り、利益率は 9% 台まで下がる。台湾・中国の半導体・液晶が一巡し、医療機器の国内の伸びも落ち着く。
在庫の圧縮は進むが、新工場の減価償却と人件費の増加が利益を削る。純利益は約 55 億円と、今とほぼ変わらない。大株主の圧力で還元は強まるものの、稼ぐ力そのものは伸びない。
配当は下限近辺に張り付き、還元は 10 年で約 240 億円。ROE は 8% 弱と資本コスト並みで、成長への再投資が価値を生まない会社になる。
- 水処理市場向け:数量 4,880(世界の水処理向け小型ポンプ(定量・マグネット等)の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 3.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 190 億円・営業利益 20 億円。市場 4,900 億円・シェア 2.9%・利益率 10.5%
- 半導体・液晶・表面処理向け:数量 3,510(半導体・液晶・表面処理装置向けの薬液用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 4.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 160 億円・営業利益 18 億円。市場 3,500 億円・シェア 3.4%・利益率 11.5%
- 医療機器向け:数量 2,560(医療・分析機器に組み込まれる小型ポンプの世界市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 141 億円・営業利益 17 億円。市場 2,560 億円・シェア 4.1%・利益率 12%
- 化学・新エネルギー・その他向け:数量 13,440(化学・食品・製紙・新エネルギー向けの小型〜中型ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 1.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 243 億円・営業利益 23 億円。市場 1.34 兆円・シェア 1.35%・利益率 9.5%
倍率:ROE 7.8% は k 6.75% とほぼ同じ。RONIC = 7.65%、g 4.0% から正当化 PER = 13.6 倍。稼ぐ力は資本コスト並みで、利益に特殊要因も混じるため、上限の 7 割の 9.5 倍に置いた。
確率:利益率が 6〜8% 台だった 2023 年 3 月期までの水準に向けて、半分ほど戻る筋書き。利益率の跳ねが特殊要因を含むという慎重な見方を重く見て、中立に近い確率を置いた。
悲観 12% 中国勢と大手に挟まれ、値段もシェアも失う 利益 19 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 770 円171 億円
中国・韓国の安いポンプが水処理と半導体で育ち、イワキは値段で押される。値段は物価に追いつかず、10 年で 1.22 倍にとどまる。シェアは水処理で 2.4%、半導体・液晶で 2.7% まで下がる。
2036 年 3 月期の売上は約 500 億円と、10 年でほとんど増えない。利益率は 5% 前後へ戻り、2023 年 3 月期までの水準になる。固定費の重い新工場が利益を圧迫する。
のれんや在庫の評価損も出て、自己資本は膨らまない。純利益は約 19 億円で、ROE は 3% 台に落ちる。配当は下限を割る年も出てくる。
- 水処理市場向け:数量 4,400(世界の水処理向け小型ポンプ(定量・マグネット等)の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 2.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 129 億円・営業利益 8 億円。市場 4,400 億円・シェア 2.4%・値段は物価に追いつかず 10 年 1.22 倍・利益率 6.5%
- 半導体・液晶・表面処理向け:数量 3,105(半導体・液晶・表面処理装置向けの薬液用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 3.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 102 億円・営業利益 7 億円。市場 3,100 億円・シェア 2.7%・利益率 6.5%
- 医療機器向け:数量 2,300(医療・分析機器に組み込まれる小型ポンプの世界市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 4.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 93 億円・営業利益 7 億円。市場 2,300 億円・シェア 3.3%・利益率 7%
- 化学・新エネルギー・その他向け:数量 12,240(化学・食品・製紙・新エネルギー向けの小型〜中型ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 1.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 179 億円・営業利益 10 億円。市場 1.22 兆円・シェア 1.2%・利益率 5.5%
倍率:ROE 3.5% が k 6.75% を下回り、ためた利益は額面を割る価値なので PER は 1÷k = 13.3 倍までで、稼ぐ力(純利益 ÷ k = 253 億円)が上限。構造的に利益率が戻らない筋書きなので、その 7 割ほどの 9.0 倍に置いた。
確率:安価な中国・韓国製の小型ポンプが半導体・水処理で育ち、世界の大手とも競う複合の負け筋。顧客の設備に組み込まれる製品なので全面的な崩れは起きにくく、低めの確率を置いた。同じ領域の会社の悲観の確率(11〜14%)に揃えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水処理市場向け
浄水場・排水処理場・冷却塔などで薬品を注入する定量ポンプと、薬液を送るマグネットポンプ。米国の水処理需要が伸びている。
| 数量世界の水処理向け小型ポンプ(定量・マグネット等)の市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 2.9% | 114 | 15 |
| 10 年後 中立 | 5,200 | 4.3% | 223 | 27 |
取り方:水処理向けの売上は 114.3 億円(決算説明資料)。調査会社の推計では世界の定量ポンプ市場は約 69 億ドルで、水・排水向けがその 23% ほど(約 2,400 億円)。ここにマグネットポンプなど他の小型ポンプを加え、イワキが取りに行ける市場を約 4,000 億円と推定した(公式のシェア開示はない推定)。今のシェアは約 2.9%。利益率は全社 12.4% から 13% と置いた推定。数量は今の値段で測った実質、物価の分は価格に入れた。
半導体・液晶・表面処理向け
半導体・液晶の製造装置に組み込まれる薬液用の空気駆動ポンプ・マグネットポンプと、プリント基板などの表面処理装置向けのポンプ。
| 数量半導体・液晶・表面処理装置向けの薬液用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,700 | 3.8% | 103 | 15 |
| 10 年後 中立 | 3,915 | 5.0% | 194 | 26 |
取り方:半導体・液晶の売上 73.0 億円と表面処理装置の 29.7 億円の合計 102.7 億円(決算説明資料)。装置メーカーに納める薬液用ポンプの世界市場を、競合の顔ぶれと用途の広がりから約 2,700 億円と推定した(開示のない推定)。今のシェアは約 3.8%。利益率は 14.5% と置いた推定。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
医療機器向け
人工透析装置・臨床分析装置などに組み込まれる小型のポンプ。国内の大口の装置向けが伸びている。
| 数量医療・分析機器に組み込まれる小型ポンプの世界市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 4.4% | 88 | 13 |
| 10 年後 中立 | 2,700 | 6.0% | 163 | 23 |
取り方:医療機器向けの売上は 88.4 億円(決算説明資料。国内は前年比 +20%)。透析や分析装置に使われる小型ポンプの世界市場を約 2,000 億円と推定した(開示のない推定)。今のシェアは約 4.4%。利益率は 14.5% と置いた推定。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
化学・新エネルギー・その他向け
化学薬品の製造・移送、食品・製紙の洗浄や冷却、二次電池の製造などに使うマグネットポンプ・定量ポンプ・回転容積ポンプなど。
| 数量化学・食品・製紙・新エネルギー向けの小型〜中型ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,000 | 1.4% | 172 | 21 |
| 10 年後 中立 | 14,400 | 1.9% | 276 | 30 |
取り方:化学 55.0 億円・新エネルギー 7.8 億円・その他 108.7 億円の合計 171.5 億円(決算説明資料)。耐薬品性が要る化学向けと、用途が散らばる産業用の市場を合わせ約 1.2 兆円と推定し(開示のない推定)、今のシェアは約 1.4%。利益率は 12% と置いた推定。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
リスクと懸念
利益率の持続性
営業利益率は 2023 年 3 月期までの 6〜8% 台から、2024 年 3 月期に 12% 台へ跳ねた。値上げの定着と円安が重なった結果なら、追い風が止まった時に元へ戻る力が働く。10 年で 12% 台が続くかが、価値の最大の分かれ目になる。
半導体・液晶の循環
半導体・液晶と表面処理は売上の約 2 割で、台湾の関連会社の持分法益も加わる。装置の投資が止まれば、売上と持分法益が同時に落ちる。2026 年 3 月期の純利益が持分法益と為替差益に助けられた分は、持続しない部分だ。
中国・韓国の安価な製品
定量ポンプの世界市場は上位 10 社で 6 割を握る一方、新興国の安いメーカーも育つ。水処理や半導体の汎用ポンプから値崩れが起きれば、イワキの値決めは厳しくなる。品質と供給の安定で差をつけ続けられるかが問われる。
在庫と資本の使い方
在庫は 2016 年 3 月期の 43 億円から 2025 年 3 月期の 145 億円まで膨らみ、回転日数は 194 日になった。会社は 150 日への短縮を目標にするが、需要が落ちれば評価損が出る。納期を縮める施策が資金を縛った過去は、繰り返される恐れがある。
大株主の動き
シャロン・ファイナンスは約 19%、ダルトンは 5% を持つ。還元の強化につながる一方、株主提案や買い増しが続けば、経営の判断が短期の圧力に振られる。買収や再編に発展する可能性も、ゼロとは言えない。
海外・為替
売上の 5 割強は海外で、ドルとユーロの値動きが円換算の利益を大きく変える。10 年間を 1 ドル 150 円で置いたが、円高に振れれば、海外の伸びが円換算で目減りする。米国の関税など貿易の摩擦も、販売や調達の費用に響く。
今後の分かれ目
- 在庫の回転日数が目標の 150 日に近づき、現金が戻り始めたら
- 資本の使い方が改まったと見て、楽観寄りの筋書きの確率を上げる。在庫が減らず、評価損が出るなら逆に、やや悲観へ寄せる。
- 営業利益率が 13% を超えて上がり続けたら
- 値決めの力が本物と見て、中立の利益率を上げる。逆に 11% を割り込めば、利益率の持続性への疑いが当たったと見て、やや悲観の確率を厚くする。
- シャロン・ファイナンスやダルトンが提案を強める、または買収を提案したら
- 還元と資本効率の改善が進むなら価値を上げる材料だが、価格が先に上がるなら、本質価値との差は広がる。提案の中身で判断を分ける。
- 半導体・液晶の投資が急減し、台湾の持分法益が落ちたら
- 純利益を下方に直す。営業利益への影響は小さくても、利益の質が悪化したと見て、やや悲観の確率を上げる。
- 水素や二次電池向けのポンプが、売上に数十億円規模で立ち上がったら
- 新用途の分を楽観の筋書きに入れ直す。まだ探索の段階なので、受注が出るまでは中立に入れない。
- 中国・韓国のメーカーが、水処理や半導体で価格を大きく下げ始めたら
- シェアと値段の前提を下げ、悲観の確率を引き上げる。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益率と、海外・医療機器の売上
- 在庫の回転日数と、棚卸資産の水準(目標 150 日)
- 大量保有報告書(シャロン・ファイナンス・ダルトン)の保有割合と目的
- 台湾の持分法益と、半導体・液晶の売上
- 配当(性向 35% 以上・1 株あたりの下限)と自社株買いの実施
倍率と資本コストの決め方
4 つの市場の実質の規模 × シェアと物価並みの値段で売上を積み、利益ベースの正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) を引いた(k 6.75% = 基本 7.5% に quality 0、g 4%、RONIC は k を超える分の半分が残る値)。中立は上限の 8 割、楽観 9 割、やや楽観 8.5 割。やや悲観・悲観は資本コスト並みの稼ぐ力から置き、7 割を上限に引き上げていない。今の PER 18 倍や過去・同業の倍率には寄せていない。
リースは工場と販売拠点を借りる分が小さく、純現金の評価には大きく響かない。新リース会計(2028 年 3 月期から貸借対照表に載る)で営業利益・純負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえた。売上の市場規模とシェアは公式の開示がなく、調査会社の推計と競合の顔ぶれから置いた推定で、幅が大きい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.4→19.93 倍・やや楽観 PER 14.2→18.58 倍・中立 PER 12.6→17.67 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.0% = 7.5%。大株主の動きや利益率の持続性への不安は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 6.75%。