結論
オイレス工業は、油を差さなくても回る「すべり軸受」を軸に、橋や建物の免震装置、ドアの金物まで手がける機械部品メーカーだ。筆者の結論は、事業は堅いが稼ぐ力が資本コストの近くにとどまるので、今の値段は 10 年で見るとやや割高、というものだ。決め手は、売上の半分を占める自動車向けが、伸びても物価並みの地味な事業だということである。
自動車向けの軸受は、サスペンションや座席、ポンプなど動く部分に入る。電動化でエンジン周りの部品は減るが、ポンプやモーター周りが埋める。ここは大きく伸びも崩れもしない。伸びしろは、半導体装置や再生可能エネルギー向けの一般軸受と、免震装置にある。
財務は文句のつけようがない。自己資本比率は 8 割で、純現金は時価総額の 3 分の 1 に当たる。それでも ROE は 6% 台にとどまり、資本コストの 8% に届かない。2030 年度に ROE 10% を掲げるが、そのためには自動車と構造機器の利益率を引き上げねばならず、道は平らではない。
足元の悩みは構造機器だ。免震や橋の工事は資材高と人手不足で遅れ、直近の四半期は 4 割近く落ちた。工事が消えたのではなく後ろへずれたと見るが、利益の計上は読みにくい。
中立で見ると、10 年後の利益は今の 1.6 倍ほどに増える。ただ ROE が資本コストの近くなので、倍率は伸びない。余った現金を足しても、割り引いた価値は今の時価総額に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい会社かと問えば、答えは「良い事業ではあるが、払ってよい値段には上限がある」になる。
事業は 10 年後も存在する。すべり軸受は電動化の世界でも使われ、免震は地震国の必需品だ。ただ、堀が広がる気配は乏しい。自動車は完成車メーカーに値段を決められ、構造機器は 1 件ごとの入札に近い。
株主が自由に使えるお金、つまり利益から設備投資を引いた分は、薄い。営業利益のうち 4 割ほどは減価償却を差し引いた設備更新に回り、今後 3 年は投資がさらに重い。
資本の使い方は評価が割れる。現金を積み上げてきた点は減点だが、配当性向を 4 割以上へ上げ、自社株買いを検討すると書いた点は変化の兆しだ。筆者は、この変化が実行に移るかを、いちばん大事な観察点と見る。
安全域は、今の値段にはあまりない。純現金が時価総額の 3 分の 1 あるので悲観でも大きくは割れないが、ROE が資本コストを超えない事業に高い倍率は払えない。現金を除いた事業の価値は、稼ぐ力を資本コストで割った額に近い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は軸受機器だ。ここには 2 つある。1 つは自動車向けで、売上の約半分を占める。四輪・二輪のサスペンション、シートやドアの可動部、ポンプなどに、油を差さずに使える樹脂系・複層の軸受が入る。インドとタイに拠点があり、日系以外のメーカーへの売り込みも進める。もう 1 つは一般向けで、半導体製造装置、工作機械、風力発電、建設機械に使われる大型の軸受と、空気の膜で浮かせるエアベアリングだ。
3 つ目が構造機器で、売上の 16% ほどだ。橋の支承(橋げたを支える部品)と、建物の免震・制震装置を作る。免震の技術を国内で最初に取り入れた会社で、橋の採用実績は 3,700 橋を超える。競争相手は日鉄エンジニアリング、川金コアテック、THK、ニッタなど、方式の違う会社が並ぶ。
4 つ目の建築機器は売上の 8% ほどで、ドアのヒンジやサッシ周りの金物だ。新築が細る国内の需要を、改修へ振り向けようとしている。
自動車は量産品で、顧客は大手完成車メーカー。値段は毎年の値下げ要求にさらされるが、材料の配合や形で他社と差がつくので、ただの汎用品ではない。構造機器は 1 件ごとの受注で、利益は工事の進み具合で大きく動く。海外の売上比率は約 4 割で、これを増やすのが中期計画の柱の 1 つだ。
会社の開示はこの 4 区分までで、市場規模もシェアも載らない。ここでは競合の売上から市場を見積もり、各区分で市場の大きさ × シェアを数量の基準に置いた。
優良さと弱いところ
堅実だが、強い堀とまでは言えない。筆者はこの点が評価の分かれ目だと見る。
良い点は、技術の蓄積が深いことだ。固体潤滑や多孔質材料の配合は、顧客の設計に入ると簡単には替わらない。免震では国内で最初に実績を積み、橋の実績の厚みが信用になる。無借金に近く、赤字の期は過去 10 年でない。
弱い点は、資本の使い方だ。純現金は 10 年続けて積み上がり、ROE は 6% 台で資本コストに届かない。会社自身が、株主資本コストは 7% 台、過去 5 年の ROE は約 6% と認めている。
利益率も、自動車向けが 1 割前後と薄い。完成車メーカーの値下げ要求を受け、材料高を価格に乗せきれない年がある。この 10 年の営業利益率は 6〜11% の幅にとどまる。
経営の姿勢は変わりつつある。配当性向の目標を 30% から 40% 以上に引き上げ、自社株買いも機動的に検討すると書いた。大株主は東京中小企業投資育成で、会社を揺さぶる物言う株主は見当たらない。静かな株主構成は安心だが、変化を急がせる圧力も弱い。
設備投資は 3 年で約 200 億円と、過去の倍にする。インドの第 2 工場と、免震の大型性能試験機が主な使い道だ。投資が利益に変わるまでの 2〜3 年は、減価償却が先に重くなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
事業ごとに景気の位置が違う。
自動車向けは、世界の生産がほぼ横ばいの成熟市場だ。電動化で内燃機関向けの軸受は減るが、電動ポンプや車体の可動部は増える。台数の伸びは期待せず、インドや東南アジアの増産を取り込めるかが焦点になる。
一般向けは回復の途中にある。直近の四半期は半導体装置と工作機械向けで 1 割以上増えた。世界の需要は、人手不足を背景にした自動化と、風力などの再生可能エネルギーで中期的に広がる。競争相手は大同メタル工業や欧州の軸受大手で、技術で勝負する分野ほど価格が崩れにくい。
構造機器は、国土強靱化と老朽化した橋の更新が追い風になる。一方、建設現場の人手不足と資材高で工事が延び、売上が期をまたいでずれる。免震は業界全体で品質の信頼が試される分野でもあり、他社の不祥事の余波を受けるリスクがある。
建築機器は、新築の戸数が人口減で細るため、改修へ重点を移す途上にある。伸びる事業ではなく、利益を守る事業だ。
全体として、市場は物価並みの名目成長が基本で、数量で大きく伸びるのは半導体関連と再生可能エネルギー向けに限られる。
資本政策と M&A
還元は増えている。配当性向の目標は 40% 以上で、直近は約 5 割だ。自己株式は約 83 億円あり、過去に自社株買いも行った。ただ、自社株買いは方針というより機動的な選択肢にとどまり、純現金は 10 年続けて積み上がっている。
設備投資は 3 年で約 200 億円と倍増する。インドの第 2 工場に 55 億円、足利の大型試験機と施設に 37 億円だ。現金は投資に回るので、余った現金は純現金の全額ではなく、運転資金と投資の持ち出しを引いて見る。
政策保有株は「一定の削減」とだけ書かれ、数値も期限もない。買収の歴史は目立たず、会社を買う側にも売られる側にもなりそうな動きは見えない。小さな時価総額、厚い現金、PBR 1 倍前後という、非公開化や TOB の対象になりやすい条件は揃っている。ただ、東京中小企業投資育成が長期の株主として残る点は、買収を難しくする。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の根拠は 3 つある。
1 つ目は一般軸受だ。半導体装置向けのエアベアリングは、単価が高く、顧客に認定されると長く使われる。風力発電や大型建設機械向けの大型軸受と合わせ、会社が掲げる営業利益率 15% は、この部門の高付加価値化で届く。
2 つ目は構造機器だ。老朽化した橋の更新と国土強靱化の予算は 10 年単位で続き、直近の落ち込みは工事のずれにすぎない。大型の性能試験機が稼働すれば、他社が追えない評価体制で受注が集まる。
3 つ目は資本政策だ。純現金が積み上がり、配当性向は 4 割以上へ上がった。東京中小企業投資育成のような長期の株主が見守るなか、ROE 10% の目標を守るために自社株買いが加わる可能性は高い。
自動車でも、インドの新工場と日系以外の顧客開拓で数量が伸び、規模の利益で利益率が 1 割台の前半へ上がる。これらがそろえば、営業利益は 140 億円を超え、倍率も 13 倍台に乗る。
慎重な見方
慎重な見方の根拠も、はっきりしている。
自動車向けは、売上の半分を占めるのに利益率は 1 割に届かない。完成車メーカーの値下げ要求は毎年続き、材料高を価格に乗せきれない。電動化が進めば、内燃機関に付く軸受の数は減る。電動ポンプで埋まる保証はない。
構造機器は、直近の四半期で売上が 4 割近く落ちた。人手不足と資材高で工事が進まず、これは一時的な遅れではなく業界の構造だという見方もできる。大型の試験機は償却が先に重くなり、利益率を押し下げる。
会社が掲げる営業利益率 15% は、過去 10 年で一度も出ていない。この間の利益率は 6〜11% の幅だった。現金は 10 年続けて積み上がり、自社株買いの約束もないので、ROE は資本コストの近くから動かない。
競争面では、中国や韓国の軸受メーカーが自動車向けで価格を攻め、一般軸受でも欧州大手と争う。仕様が決まれば替えにくいが、新しい案件では価格で選ばれる。
どちらに重みを置いたか
事業の質は評価するが、確率は慎重な見方へやや寄せた。理由は、利益率 15% が過去 10 年で一度も出ておらず、構造機器の落ち込みと 3 年で 200 億円の投資が利益を先に押し下げるからだ。一方、悲観を厚くしすぎなかったのは、純現金が時価総額の 3 分の 1 あり、無借金に近い財務が深い谷を防ぐからだ。楽観は 1 割にとどめ、中立とやや悲観を合わせて 6 割弱を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,268 円1,210 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,091 円309 億円)。 今の値に割り戻すと 3,008 円853 億円、今との差 +11.4%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 6.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,615 円1,876 億円 | 1,587 円450 億円 | +203.9% | +11.8% | 820 円233 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,949 円1,687 億円 | 1,340 円380 億円 | +170.1% | +10.4% | 1,604 円455 億円 |
| 中立 | 34% | 4,966 円1,408 億円 | 1,164 円330 億円 | +127.1% | +8.5% | 2,084 円591 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,092 円593 億円 | 882 円250 億円 | +10.2% | +1.0% | 684 円194 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,164 円330 億円 | 353 円100 億円 | −43.8% | −5.6% | 167 円47 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,268 円1,210 億円 | 1,091 円309 億円 | +98.5% | +7.1% | 5,359 円1,520 億円 |
今の株価時価総額 2,699 円765 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:高付加価値化と資本政策の転換がそろう 利益 109 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 6,615 円1,876 億円
一般軸受は半導体装置向けのエアベアリングと風力向けの大型軸受が伸び、営業利益率が 15% に届く。構造機器は大型の性能試験機が稼働し、老朽橋の更新で受注が積み上がる。自動車はインドの新工場と日系以外の顧客で数量が増え、規模の利益で利益率が上がる。
営業利益は 140 億円を超え、会社が掲げる ROE 10% に届く。純現金は自社株買いに使われ、還元は 10 年で 450 億円ほどに増える。倍率も ROE の改善に見合って上がる。
ただ、この姿は会社の計画を上回る出来だ。自動車の薄い利益率が 1 割台の前半に上がることが前提で、実現しにくい部分が残る。
- 一般軸受機器:数量 164(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 330 億円・営業利益 50 億円。営業利益率 15.0%
- 自動車軸受機器:数量 255(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 513 億円・営業利益 62 億円。営業利益率 12.0%
- 構造機器(免震・制震・橋梁):数量 101(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 203 億円・営業利益 24 億円。営業利益率 12.0%
- 建築機器:数量 38.7(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 78 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 9.5%
倍率:事業の ROE は 10% 台で k 6.75% を超える。RONIC = k + 1/2 ×(10.7 − 8.0)= 9.4%、g 4% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 14.3 倍。利益の質は景気の振れを残すので上限の 9.5 割の 17.18 倍。楽観は余った現金を自社株買いで使うので別に足さない。
確率:一般軸受の高付加価値化、構造機器の回復、自社株買いが同時にそろう必要があり、過去 10 年で営業利益率が 15% に届いたことがないため 1 割にとどめた。
やや楽観 22% やや楽観:一般軸受と免震が伸び、資本効率は少し改善 利益 93 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 5,949 円1,687 億円
一般軸受は半導体装置と再生可能エネルギーで伸び、利益率は 13% 台に上がる。構造機器は工事のずれが解消し、国土強靱化の需要で伸びる。自動車はほぼ横ばいだが、インドの増産で少し増える。
営業利益は 120 億円ほどで、利益率は 11% 前後になる。ROE は 8% 台に乗り、資本コストを少し超える。還元は配当を中心に 10 年で 380 億円ほどだ。
会社が掲げる利益率 15% には届かないが、示す方向には進む。着実だが派手さのない 10 年である。
この筋書きで鍵になるのは、構造機器の遅れが 3 年ほどで解消し、投資した大型の試験機とインドの工場が償却を上回る利益を生み始めることだ。自動車で値下げ要求を材料の差で跳ね返せる年が増えれば、数量が横ばいでも利益は着実に積み上がる。
- 一般軸受機器:数量 151(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 303 億円・営業利益 41 億円。営業利益率 13.5%
- 自動車軸受機器:数量 246(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.98(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 488 億円・営業利益 54 億円。営業利益率 11.0%
- 構造機器(免震・制震・橋梁):数量 93.3(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 188 億円・営業利益 20 億円。営業利益率 10.5%
- 建築機器:数量 37.5(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 75 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 16.91 倍、時価総額 1,687 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:一般軸受の回復と免震の更新需要は筋が通る。ただ自動車の値下げ圧力は残るので、楽観に寄せすぎず 2 割強とした。
中立 34% 中立:物価並みに伸びるが、資本効率は資本コストの近く 利益 81 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 4,966 円1,408 億円
一般軸受は半導体関連と再生可能エネルギーで数量が 3 割増える。自動車はほぼ横ばいで、値段は物価より少し低い上がり方にとどまる。構造機器は工事のずれが戻って 15% ほど増え、建築機器は国内の新築減で数量が少し減る。
営業利益は 100 億円ほどで、利益率は 10% 台前半になる。会社が掲げる 15% には届かない。純利益は今の 1.6 倍ほどだ。
配当性向は 5 割前後で、純現金は積み上がる。ROE は 7% 台で資本コストの近くにとどまる。優良ではあるが、特段の割安さも割高さもない 10 年だ。
- 一般軸受機器:数量 138(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 277 億円・営業利益 33 億円。営業利益率 12.0%
- 自動車軸受機器:数量 239(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.95(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 467 億円・営業利益 49 億円。営業利益率 10.5%
- 構造機器(免震・制震・橋梁):数量 85.9(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 173 億円・営業利益 16 億円。営業利益率 9.0%
- 建築機器:数量 36.7(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 2.01(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 74 億円・営業利益 6 億円。営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 78 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 16.05 倍、時価総額 1,408 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業が着実に物価並みに伸び、収益水準は過去の延長にとどまるという、過去の実績と業界の見通しから見た中心の筋書き。慎重な見方がやや強く、楽観より悲観側をやや厚くした。
やや悲観 23% やや悲観:自動車の値下げ圧力と構造機器の遅れが残る 利益 56 億円 · PER 8.9 倍 · 株価時価総額 2,092 円593 億円
自動車で完成車メーカーの値下げ要求が続き、電動化で一部の軸受が減って数量は 5% ほど減る。構造機器は人手不足で工事が延び続け、大型の試験機の償却が重くのしかかり、利益率は 7% に下がる。
一般軸受は伸びるが、市況に左右されて利益率は 1 割ほどで止まる。
営業利益は 70 億円と今とほぼ変わらない。現金は投資と配当で減らず、自社株買いも行われないまま ROE は 5% 台にとどまる。倍率は稼ぐ力に見合う水準へ下がる。
インドの新工場は稼働するが、新規顧客の開拓は進まず、稼働率は低いまま償却だけが重い。免震の大型試験機も、受注が伸びないまま減価償却が利益を削る。筋書きの上では、投資が資本コストを稼げない 10 年だ。
- 一般軸受機器:数量 122(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.95(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 238 億円・営業利益 25 億円。営業利益率 10.5%
- 自動車軸受機器:数量 217(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.88(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 406 億円・営業利益 35 億円。営業利益率 8.5%
- 構造機器(免震・制震・橋梁):数量 74.7(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.95(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 146 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 7.0%
- 建築機器:数量 34.8(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.95(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 68 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 7.0%
倍率:ROE は 5% 台で k を下回る。新しく投じるお金の稼ぎは k に届かず、RONIC = 8.0 + 1/2 ×(5.5 − 8.0)= 6.8%、g を 3% に落として正当化 PER = 11.1 倍。構造的に稼ぐ力が弱い筋書きなので 8 割の 8.9 倍に置いた。余った現金は谷で食う想定で今の 0.75 倍、戻り方 0.5 で足した。
確率:完成車メーカーの値下げ要求は毎年続き、構造機器の落ち込みも長引く可能性が現実にある。慎重な見方が強いので 2 割強とした。
悲観 11% 悲観:自動車で価格競争に負け、構造機器も赤字に近づく 利益 17 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,164 円330 億円
中国・韓国の軸受メーカーが自動車向けで品質も追いつき、完成車メーカーは価格を叩く。電動化で軸受の数が減り、自動車向けの数量は 2 割減る。売上は物価ほど上がらず、利益率は 3% に落ちる。
構造機器では、工事の遅れが慢性化し、大型の試験機の償却が重くのしかかる。業界の品質問題の余波で、免震の受注も細る。利益は出ず、固定費だけが残る。
営業利益は 20 億円を割り、減損も出る。もう優良な部品メーカーとは言えず、純現金と工場・土地の売却価値が値段の支えになる。
会社は 3 年の計画で投じた約 200 億円の設備投資を回収できず、インドの新工場は低い稼働率のまま償却だけが残る。配当は減らさざるをえず、10 年で 100 億円ほどに縮む。数量も価格も落ちる、守りの 10 年だ。
- 一般軸受機器:数量 101(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.73(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 174 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 6.0%
- 自動車軸受機器:数量 182(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.65(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 301 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 3.0%
- 構造機器(免震・制震・橋梁):数量 59.7(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.73(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 103 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
- 建築機器:数量 30.9(対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当))× 価格 1.73(販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本)→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 3.0%
倍率:稼ぐ力は事業の純利益 約 13 億円 ÷ k で 160 億円ほどにとどまり、純現金+売れる資産の税後 約 330 億円の方が大きい。PBR はこの床を今の自己資本 801 億円で割った値。稼ぐ力と資産だけで置いた。
確率:中国・韓国勢の攻勢、電動化による軸受の減少、免震の品質問題が重なる複合の下振れ。10 年という期間で起こりうるが、無借金の財務が谷を浅くするので 1 割ほどにとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
一般軸受機器
半導体装置・工作機械・風力・建設機械向けの大型すべり軸受とエアベアリングなど。
| 数量対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当) | 価格販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 106 | 1.50 | 159 | 17 |
| 10 年後 中立 | 138 | 2.01 | 277 | 33 |
取り方:会社は市場規模を開示しない。無給油・固体潤滑のすべり軸受と半導体装置向けなどの対象市場を実質で約 3,600 億円と見積もり(欧州・米国の軸受専業と大同メタルなど競合の規模から推定)、当社のシェアは約 4.4%。数量は市場の物量 × シェア(今の値段で測った百万ドル相当、150 円換算)、価格は 1 百万ドル相当あたりの売上(億円。今 1.5、物価で 10 年 1.34 倍)。
自動車軸受機器
四輪・二輪のサスペンション、シート、ポンプなどに入る無給油の樹脂系・複層軸受。
| 数量対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当) | 価格販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 228 | 1.50 | 342 | 34 |
| 10 年後 中立 | 239 | 1.95 | 467 | 49 |
取り方:自動車用の樹脂・複層すべり軸受の世界市場を実質で約 5,700 億円と見積もり(競合の自動車向け売上から推定)、当社のシェアは約 6%。数量は市場の物量 × シェア、価格は 1 百万ドル相当あたりの売上(今 1.5 億円)。顧客別の売上は開示を確認できず推定。
構造機器(免震・制震・橋梁)
橋の支承と、建物の免震・制震装置。案件ごとの受注で、工事の進み具合で売上が動く。
| 数量対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当) | 価格販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 74.7 | 1.50 | 112 | 13 |
| 10 年後 中立 | 85.9 | 2.01 | 173 | 16 |
取り方:国内の免震・制震装置と橋の支承の市場を約 900 億円と見積もり、当社のシェアは約 12%(橋の採用 3,700 橋超からの推定。第三者の統計は無い)。数量は市場の物量 × シェア、価格は 1 百万ドル相当あたりの売上(今 1.5 億円)。
建築機器
ドアのヒンジやサッシ周りの金物。新築から改修へ重点を移している。
| 数量対象市場(実質・百万ドル)× シェア=販売数量(今の値段で測った百万ドル相当) | 価格販売数量 1 百万ドル相当あたりの売上(億円)。今は 150 円換算で 1.5、物価で 10 年 1.34 倍が基本 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38.7 | 1.50 | 58 | 5 |
| 10 年後 中立 | 36.7 | 2.01 | 74 | 6 |
取り方:ドア金物・サッシ周りなど対象市場を約 1,000 億円と見積もり、当社のシェアは約 5.8%。数量は市場の物量 × シェア、価格は 1 百万ドル相当あたりの売上(今 1.5 億円)。
リスクと懸念
構造機器の工事の遅れ
免震や橋の工事は、資材高と人手不足で後ろへずれている。直近の四半期は売上が 4 割近く落ちた。遅れが長引けば、大型の性能試験機の償却だけが先に重くなり、部門の利益率が落ちる。
自動車向けへの依存
売上の約半分、利益の約半分が自動車向けだ。完成車メーカーの値下げ要求と、電動化による軸受の置き換えが同時に進めば、数量と価格の両方が削られる。
資本の使い方が動かないこと
純現金は 10 年続けて積み上がり、ROE は 6% 台で資本コストに届かない。配当性向は上がったが、自社株買いは「機動的に検討」にとどまる。大株主は長期保有の投資育成会社で、変化を急がせる圧力は弱い。
大型投資の回収
3 年で約 200 億円の投資は過去の倍だ。インドの第 2 工場と足利の大型試験機は、稼働の 2〜3 年は減価償却だけが先に出る。需要が計画どおりに来なければ、利益率が下がる。
免震の品質問題
免震は、業界全体で過去に他社の性能偽装が起きた分野だ。同社の製品は別の構造だが、事故や偽装が起きれば、信頼の揺らぎは業界全体に及び、受注の遅れや試験費用の増加につながりうる。
中国・韓国勢の価格攻勢
自動車向けや一般軸受では、中国・韓国の軸受メーカーが品質を上げて価格を攻めている。仕様が決まった案件は替えにくいが、新規の案件では価格で選ばれる。
半導体・工作機械の市況
一般軸受は半導体装置や工作機械の投資に連動する。直近は回復しているが、投資は数年おきに大きく振れ、利益率は景気の山と谷で数ポイント動く。
今後の分かれ目
- 自社株買いを数百億円の規模で発表したら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。純現金の使い道が定まり、ROE が資本コストを超える道が開く。実際の買い付けの実行を確かめる。
- 構造機器の売上が前年並みに戻り、部門の利益率が 10% を超えたら
- 工事のずれにすぎなかったという見方が強まる。中立の利益を上方に直す余地が出る。
- 自動車軸受の営業利益率が 10% を超えて定着したら
- 値下げ要求を材料と配合の差で跳ね返せている証拠になる。やや楽観の確率を上げる。
- インドの第 2 工場が計画どおり 2027 年に稼働し、稼働率が上がったら
- 非日系の顧客開拓が進み、自動車の数量が伸びる根拠になる。逆に稼働が遅れれば、償却の重さが先に出る。
- 半導体装置向けの需要が反落し、一般軸受が 2 期連続で減収になったら
- 伸びの柱が崩れるので、中立の数量を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 政策保有株の売却が数値目標とともに示されたら
- 売却益が現金として積み上がり、還元の原資になる。余った現金の戻り方を 0.5 から上げる材料になる。
見ておくもの
- 構造機器の四半期の売上と受注残
- 自動車軸受の営業利益率(1 割を超えて定着するか)
- 自社株買いの発表と実施額
- インド第 2 工場の稼働時期と稼働率
- 中期計画の ROE 8%(2026 年度)の達成と次期計画の目標
倍率と資本コストの決め方
4 つの事業ごとに、市場の大きさ(競合の売上から見積もり)× シェアを数量に、値段の指数を物価並みの 1.34 倍(自動車だけ値下げ要求を見て 1.30 倍)に置いて 10 年の売上と利益を積んだ。倍率は、事業の ROE と資本コスト 6.75% から出る正当化 PER(利益ベース)の 8 割(楽観 9.5 割、やや楽観 9 割)とし、余った現金 150 億円は戻り方 0.5 で別に足した。今の株価や過去・同業の PER・PBR は根拠にしていない。ROE が資本コストの近くなので、正当化 PER は 1÷k に近い値になる。悲観は純現金と売れる資産の床で置いた。リースは小さく、新リース会計基準で数字の形が変わる影響は軽いが、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.6→17.18 倍・やや楽観 PER 12→16.91 倍・中立 PER 11.3→16.05 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.5% = 8.0%。構造機器の遅れ・自動車依存・資本政策の動きにくさは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 6.75%。