結論
TOWAは、半導体チップを樹脂で包んで守る封止(モールディング)装置と金型で世界首位の会社だ。AI 向けメモリの HBM を積み上げる工程で使うコンプレッション方式に強く、直近の受注は過去最高圏にある。
筆者の結論は、事業は本物だが今の値段は先を買いすぎている、というものだ。理由は 2 つある。利益率は 20% 前後が上限で、独占企業のように 40% まで届く姿は描きにくい。もう 1 つは、稼いだ利益の多くが厚い自己資本にたまり、資本の稼ぐ力(ROE)が 10% 前後にとどまることだ。
売上の 7 割強を占める半導体装置は、後工程の市場が実質で年 5% 台伸びると見て、そこで世界の半分を取り続ける姿を中心に置く。残りの新事業・医療・レーザは地味な成長にとどまる。顧客はメモリ大手に偏り、受注の 4 割は中国向けだ。投資の波と輸出管理のどちらにも揺さぶられる。
10 年の中立は、営業利益が今の 3 倍強、時価総額は今をわずかに上回る程度だ。確率をかけた価値は今の時価総額を 3 割強下回り、総合は割高になる。会社の目標(FY28/03 の営業利益率 22%)が達成されても、その後の 7〜8 年を同じ高さで走り続ける前提は重い。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の目で見ると、稼ぎは年によって大きく揺れる。FY25/03 の純利益は 81 億円、FY26/03 は 46 億円と、1 年で半分近くに落ちた。装置会社の利益は、良い年を基準に先へ伸ばして見るのは危うい。
堀については、世界首位という立場は評価するが、独占ではない。封止の方式が替わる局面で、先に実績を作った会社が勝つ。いまはコンプレッション方式で先頭にいても、次の世代で同じ位置に居続けられるかは、10 年先では見通しにくい。
資本の使い方はおおむね堅実だ。大型買収で価値を壊しておらず、財務は健全だ。ただし、積み上がった自己資本に対して稼ぎが小さく、バリュー投資家としては、その資本が株主に戻るのか、成長投資で資本コスト以上に稼げるのかを見極めたい。
安全域は、中立の筋書きでも今の値段に届かない。いま買われている値段には、受注の勢いが何年も続き、利益率も過去最高の水準に戻ることが含まれている。確信を持って 10 年先を語れる事業ではないので、価値は幅を持たせて見ておく。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は半導体事業で、売上のおよそ 74% を占める。半導体チップを樹脂で包む封止装置と、その金型を作って売る。装置は、樹脂を粉や液で流し込むトランスファー方式と、金型に敷いた樹脂にチップを沈めるコンプレッション方式の両方を持つ。HBM のように薄く重なったチップには、樹脂の流れでチップを傷めにくいコンプレッション方式が向く。
残りは 3 つに分かれる。新事業は精密工具・ブレード・装置の更新や定額の保守で、売上は 95 億円ほどだ。医療用精密部品のメディカルデバイスが 25 億円、レーザ加工が 20 億円で続く。いずれも半導体の波を和らげる役目だが、規模はまだ小さい。
顧客は世界のメモリ・ロジックの大手と、後工程の受託メーカーだ。売上の 4 割は欧米、受注の 4 割近くは中国で、地域が売上と受注で食い違う。最新の受注残は 300 億円ほどあり、半年先まで見える。
グループには、韓国・中国・マレーシアの金型工場がある。2015 年に韓国 SEMES のモールディング事業を、2018 年に南通の金型製造を、2023 年にマレーシアの金型製造を取り込んだ。買収は小さい工場や事業の取り込みが中心で、会社全体を変える大型案件はない。
優良さと弱いところ
強みは、封止の工程そのものに深く入り込んでいる点だ。世界首位をうたう装置と金型は、顧客が量産の条件を決めるときに一緒に組み込まれ、装置を替えると条件出しをやり直す手間が生じる。コンプレッションの大判・HBM 向けの装置を先に出したことも、先端での信頼につながっている。
ただし堀は、ディスコのような圧倒的なものではない。国内にはヤマハ系のアピックヤマダがあり、海外にはベシ、ASMPT がいる。中国勢も内製化を急ぐ。首位でも、競合に代わりが効く分だけ値段を自分で決めきれない。筆者は堀を普通と見る。
利益率は、良い年でも 22% ほどだ。直近は初号機の追加コストと製品の中身の変化で 12.7% に落ちた。会社は FY28/03 に 22% を掲げるが、2022 年に立てた計画(営業利益 167 億円)は 156 億円へ下がっている。計画どおり進まないことが、この会社では珍しくない。
財務は堅い。自己資本比率 66%、純現金が 88 億円ある。ただし資本の効率は低めで、直近の ROE は 6.5%、過去 10 年の中央値でも 11% 弱だ。稼ぎのわりに積み上がった自己資本が大きいという意味で、株主にとってはもう少し配当や自社株買いで戻してほしい水準にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体の後工程は、いま追い風の中にいる。AI 向けの GPU を支えるメモリ(HBM)は、チップを何段も重ねて 1 つの部品にする。重ねるほど封止の難度が上がり、装置の数も増える。TOWA 自身も、HBM 向けに数年で 30〜45 台の追加投資が要ると説明している(この数字は会社の見込みで、筆者は裏を取れていない)。
業界の見方は、世界の半導体製造装置全体が 10 年で年 5〜7%、後工程は年 8〜10%(名目)で伸びるというものだ。物価を除けば実質で年 5% 前後になる。この会社の中立は、それよりやや控えめに置く。封止は装置全体の中では小さな隣接市場で、成長を牽引するのは AI 向けの一部だからだ。
風向きが変わる要因も多い。メモリは投資の波が大きく、設備が過剰になれば装置の発注が一気に止まる。2019 年と 2023 年の不況でも、後工程の装置は半年から 1 年で大きく振れた。
競争の面では、封止の方式が変わる節目に弱さが出る。トランスファーからコンプレッションへ、さらに大判パネル(PLP)へと移る局面で、先に量産の実績を作った会社が次の世代を取る。中国の内製化も、まずは汎用のトランスファー装置から進む。輸出管理が強まれば、受注の 4 割近い中国向けも不安定になる。
資本政策と M&A
株主への還元は、配当性向 20% 以上を目標にしている。実際の配当は純利益の 3 割ほどで、増配は続いているが、自社株買いは大きくない。
資本の使い方は、生産能力の増強とデジタル化の投資が中心だ。設備投資は 42 億円から 55 億円へ増やす計画で、新しい工場や開発の設備に回す。買収は、金型や工具の小さな事業を取り込む形が続く。
注目点は株主構成だ。信託銀行のほか、創業家に近い資産管理会社が 7.6%、取引金融機関の京都銀行が 2.8% を持つ。経営への影響力が大きい株主は見当たらず、TOB の対象になるほどの規模でもないが、半導体装置に関心を持つ大手の動きには注意したい。
ROE 13% 以上を目標にしながら、自己資本は 700 億円を超えて積み上がった。目標に近づく最も手近な方法は還元の強化で、これが変わるかどうかが資本政策の分かれ目になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI 向けメモリの積み上げは、まだ序盤だ。HBM は世代が進むごとに段数が増え、薄いチップを傷めずに包めるコンプレッション装置の出番が増える。会社の受注はその初期段階ですでに過去最高圏に乗り、FY27/03 の営業利益は 4 割以上増える予想だ。
コンプレッションと大判パネル(PLP)への対応を先に出し、顧客に「量産で使える」と認められた実績は大きい。先端のメモリ・ロジックの各社が複数の工場で同じ装置を使うと、条件出しの手間があるので替えにくくなる。金型と装置を一体で持つことも、信頼を厚くする。
競合の中でも世界首位で、中国の内製化はまず汎用品から始まる。先端の封止は技術のハードルが高く、すぐには追いつかれない。会社が掲げる FY32/03 の売上 1,000 億円・営業利益 250 億円は、AI の波が続けば現実味がある。利益率が 25% に近づけば、ROE は 15% を超え、倍率も高く評価される。
財務は健全で、純現金があり、配当も増えている。投資と還元を両方進める余力があるので、需要が戻る局面で動きやすい。
慎重な見方
いまの値段は、先の利益を前借りしている。FY26/03 の営業利益率は 12.7% にとどまり、FY25/03 の 16.6% からも下がった。受注が過去最高でも、初号機の追加コストと製品の中身の変化で利益が出ていない。次の世代の装置でも同じことが起きる恐れがある。
計画の下方修正が続いている点も重い。2022 年の計画(FY28/03 の営業利益 167 億円)は、2025 年に 156 億円まで下がった。FY32/03 の営業利益 250 億円は、売上が今の 2 倍近くに伸びたうえで利益率が 25% に乗る前提で、達成の確率は高くない。
競合は多い。ヤマハ系のアピックヤマダ、ベシ、ASMPT に、中国の装置メーカーが加わる。受注の 4 割近くが中国で、輸出管理が変われば需要は急に変わる。顧客は少数のメモリ大手に偏り、1 社の投資が止まるだけで受注が大きく割れる。
資本の効率も弱い。自己資本は積み上がったが、ROE は 1 桁で、資本コストを下回る年さえある。こうした事業に高い倍率を付ける根拠は乏しい。
どちらに重みを置いたか
封止の先端領域で首位に立つという事実は、強気の見方に説得力がある。一方で、利益率が 20% を超えて続かないこと、堀が独占の水準でないこと、資本の効率が低いことは、慎重な見方の指摘が強い。そのため確率は中立に最も厚く置き、やや悲観と悲観の合計を 4 割弱にした。AI の波が続く筋書きを 3 割置いても、確率をかけた価値は今の時価総額を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,152 円2,365 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 487 円366 億円)。 今の値に割り戻すと 1,869 円1,402 億円、今との差 −4.9%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,565 円5,677 億円 | 773 円580 億円 | +324.1% | +15.5% | 834 円626 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,210 円3,910 億円 | 626 円470 億円 | +196.8% | +11.5% | 1,167 円876 億円 |
| 中立 | 32% | 3,424 円2,570 億円 | 533 円400 億円 | +101.3% | +7.2% | 1,266 円950 億円 |
| やや悲観 | 24% | 899 円675 億円 | 360 円270 億円 | −36.0% | −4.4% | 302 円227 億円 |
| 悲観 | 14% | 300 円225 億円 | 200 円150 億円 | −74.6% | −12.8% | 70 円53 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,152 円2,365 億円 | 487 円366 億円 | +85.1% | +6.4% | 3,639 円2,731 億円 |
今の株価時価総額 1,966 円1,475 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% AI のメモリ増設が長く続き、コンプレッション封止の標準を握り切る 利益 301 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 7,565 円5,677 億円
AI 向けのメモリ増設が複数の世代にわたって続き、後工程の封止市場は実質で 12 億ドルまで育つ。TOWA はコンプレッションの大判・HBM 向けと PLP で標準を握り、世界シェアを 55% まで広げる。初号機の追加コストも抑えられ、半導体装置の営業利益率は 26% に乗る。新事業の工具・保守も装置の稼働台数に連れて伸び、営業利益率 18% を保つ。中国の内製化は汎用のトランスファー装置にとどまり、先端には届かない。ヤマハ系やベシは追随するが、実績の差で TOWA が上回る。利益は今の 6 倍を超え、配当も厚くなる。ただし受注の波はなくならず、投資の谷は何度か来る。
- 半導体製造装置(モールディング・個片化):数量 12.0(世界の後工程の封止(モールディング)・個片化装置の市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 111(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,327 億円・営業利益 345 億円。市場 12.0 億ドル(実質)×シェア 55%、営業利益率 26%
- 新事業・メディカルデバイス・レーザ:数量 10.0(対象市場(億ドル、実質。精密工具・ブレード・医療用精密部品・レーザ加工の合計の推定))× 価格 34(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 342 億円・営業利益 62 億円。市場 10.0 億ドル(実質)×シェア 17%、営業利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 301 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍。全体の PER 18.86 倍、時価総額 5,677 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI のメモリ増設が複数世代続き、コンプレッションと PLP の両方で標準を握るという連続成功が要る。実現すれば大きいが、競合と封止方式の節目があるので確率は 1 割にとどめた。
やや楽観 20% HBM と先端パッケージの投資が着実に積み上がる 利益 221 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 5,210 円3,910 億円
HBM と先端パッケージの投資が着実に積み上がり、封止の市場は実質で 10.5 億ドルになる。TOWA のシェアは 52% で、会社が掲げる営業利益率 22% を長く保ち、23% まで改善する。コンプレッションの受注が装置の稼働台数を押し上げ、金型・工具の収益も安定する。新事業は 16.5% の営業利益率で、医療とレーザが少し足を引っ張るが、全体としては計画に近い歩みだ。競合は追い上げるが、先端での実績が差になる。中国向けの輸出管理は厳しくなるものの、受注の穴は欧米と台湾で埋まる。10 年後の利益は今の 4.8 倍ほどになる。
- 半導体製造装置(モールディング・個片化):数量 10.5(世界の後工程の封止(モールディング)・個片化装置の市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 105(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,098 億円・営業利益 252 億円。市場 10.5 億ドル(実質)×シェア 52%、営業利益率 23%
- 新事業・メディカルデバイス・レーザ:数量 9.5(対象市場(億ドル、実質。精密工具・ブレード・医療用精密部品・レーザ加工の合計の推定))× 価格 32(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 306 億円・営業利益 50 億円。市場 9.5 億ドル(実質)×シェア 16%、営業利益率 16.5%
倍率:事業の純利益 221 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.69 倍、時価総額 3,910 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:HBM と先端パッケージの投資が着実に増え、シェアを保ちながら利益率が会社の目標に近づく筋書き。業界ノートの上位レンジに近く、2 割に置いた。
中立 32% 市場は育つが競争も増え、利益率は過去の良い年に届かない 利益 160 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 3,424 円2,570 億円
封止市場は実質で 9.2 億ドルに育つ。今の約 1.7 倍だ。TOWA のシェアは 49% と今よりわずかに下がり、ヤマハ系やベシ、中国勢に一部を渡す。コンプレッションは先頭を保つが、トランスファーの汎用装置は値下げ競争に巻き込まれる。半導体装置の営業利益率は 20% で、過去の良い年(22%)にはやや届かない。新事業・医療・レーザは市場 9 億ドルでシェア 15%、営業利益率 15% の地味な成長だ。メモリ投資の谷は何度か来るが、AI 向けが下支えして浅くすむ。堀は普通の水準で、資本効率は ROE 10% 台にとどまる。会社の長期目標(売上 1,000 億円、営業利益 250 億円)には届かない 10 年になる。
- 半導体製造装置(モールディング・個片化):数量 9.2(世界の後工程の封止(モールディング)・個片化装置の市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 98(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 906 億円・営業利益 181 億円。市場 9.2 億ドル(実質)×シェア 49%、営業利益率 20%
- 新事業・メディカルデバイス・レーザ:数量 9.0(対象市場(億ドル、実質。精密工具・ブレード・医療用精密部品・レーザ加工の合計の推定))× 価格 30(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 271 億円・営業利益 41 億円。市場 9.0 億ドル(実質)×シェア 15%、営業利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 160 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.06 倍、時価総額 2,570 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:後工程の市場は実質で年 5% 台伸びるが、競合の追い上げでシェアはやや下がり、利益率は 20% で止まる。業界ノートの中立に沿った中心の筋書きで、最も厚く置いた。
やや悲観 24% 中国と国内競合に押され、投資の波も深くなる 利益 71 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 899 円675 億円
中国の装置メーカーと国内競合が、汎用のトランスファーだけでなく中位のコンプレッションにも広がり、TOWA のシェアは 42% に下がる。市場の実質の伸びも 7.2 億ドルと鈍り、メモリ投資の谷が 10 年に 2 度来る。装置の値下げ競争で営業利益率は 13% にとどまり、初号機の追加コストも毎世代出る。新事業は 8 億ドルの市場でシェア 13%、営業利益率 11% と伸び悩む。会社の計画(22%)は遠いままだ。ただし封止の先端領域には技術の壁が残り、事業が崩れるわけではない。配当は続くが、増配の余地は小さく、自己資本だけが積み上がる。
- 半導体製造装置(モールディング・個片化):数量 7.2(世界の後工程の封止(モールディング)・個片化装置の市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 84(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 608 億円・営業利益 79 億円。市場 7.2 億ドル(実質)×シェア 42%、営業利益率 13%
- 新事業・メディカルデバイス・レーザ:数量 8.0(対象市場(億ドル、実質。精密工具・ブレード・医療用精密部品・レーザ加工の合計の推定))× 価格 26(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 209 億円・営業利益 23 億円。市場 8.0 億ドル(実質)×シェア 13%、営業利益率 11.0%
倍率:ROE 5.9% が k 7.5% を下回り、ためた利益は額面を下回る価値なので、PER は 1÷k = 12.1 倍を超えない。ROE ÷ k の 7 割強の水準として 9.5 倍に置いた。
確率:中国と国内競合に押されて市場の伸びが鈍り、メモリ投資の谷が深くなる。顧客の偏りと中国向けの比重を踏まえ、2 割台半ばに置いた。
悲観 14% 封止装置が汎用品になり、稼ぐ力を失う 利益 25 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 300 円225 億円
封止の方式がもう一段変わる局面(大判パネルや新しい積層の方式)で、TOWA は後れを取る。ヤマハ系・ベシ・中国勢が先に量産の実績を作り、顧客は複数社から買うようになる。TOWA のシェアは 34% まで落ち、実質 6.2 億ドルの市場でも装置の値下げが続く。輸出管理で中国向けが止まり、メモリ投資の谷が長引く。半導体装置の営業利益率は 6%、新事業も 6% で、全社の利益は FY26/03 のおよそ半分より小さくなる。装置は汎用品として扱われ、堀は事実上なくなる。純現金と配当で持ちこたえるが、稼ぐ力は大きく損なわれる 10 年になる。
- 半導体製造装置(モールディング・個片化):数量 6.2(世界の後工程の封止(モールディング)・個片化装置の市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 68(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 424 億円・営業利益 25 億円。市場 6.2 億ドル(実質)×シェア 34%、営業利益率 6%
- 新事業・メディカルデバイス・レーザ:数量 7.0(対象市場(億ドル、実質。精密工具・ブレード・医療用精密部品・レーザ加工の合計の推定))× 価格 22(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 155 億円・営業利益 9 億円。市場 7.0 億ドル(実質)×シェア 11%、営業利益率 6.0%
倍率:ROE が 3% 弱と k を大きく下回り、PER は 1÷k = 12.1 倍まで。構造的に稼ぐ力を失う筋書きで、事業の純利益 ÷ k(約 300 億円)の範囲に収まる 9.0 倍に置いた(やや悲観の 9.5 倍より低く)。
確率:封止の次の方式でも後れを取り、中国の内製化と輸出管理が重なって汎用品化する、構造的な負け。受注の中国比率が高く、小さな会社なので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体製造装置(モールディング・個片化)
半導体チップを樹脂で包む封止(モールディング)装置と、その金型。コンプレッションとトランスファーの両方式を持ち、HBM 向けが成長の核。
| 数量世界の後工程の封止(モールディング)・個片化装置の市場(億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.4 | 75 | 404 | 51 |
| 10 年後 中立 | 9.2 | 98 | 906 | 181 |
取り方:半導体事業の売上 403.9 億円。後工程の封止・個片化装置の市場を約 5.4 億ドル(実質)と推定し、世界首位をうたう点から当社シェアを約 50% と置いて逆算した(シェアは開示なしの推定)。数量は今の値段で測った市場規模(実質)、物価の分は価格(シェア × 150 円 × 物価の倍率)に入れた。セグメント利益は未確認で、全社の営業利益 69 億円を割り振った推定。 10 年の数量(中立は 5.4→9.2 億ドル)は物価を除いた実質で、名目では年 8.6% にあたる伸び(後工程・先端パッケージの業界の見立て 8〜10% の範囲)。名目の伸びを数量に置いて価格にも物価を重ねてはいない。
新事業・メディカルデバイス・レーザ
精密工具・ブレードや装置の更新・定額保守の新事業、医療用精密部品、レーザ加工。半導体の波を和らげる役目だが規模は小さい。
| 数量対象市場(億ドル、実質。精密工具・ブレード・医療用精密部品・レーザ加工の合計の推定) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.7 | 21 | 140 | 19 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 30 | 271 | 41 |
取り方:新事業 94.7・メディカルデバイス 24.8・レーザ 20.0 の合計 139.5 億円。対象市場を約 6.7 億ドル(実質)と推定し、シェア約 14% で置いた(推定)。数量は実質の市場、物価の分は価格に入れた。利益は半導体と同程度の 13% と置いた推定。
リスクと懸念
メモリ投資の波
売上の主な使い道はメモリ大手の増設で、設備が過剰になれば発注が一気に止まる。2019 年と 2023 年の不況では、後工程の装置も半年から 1 年で大きく振れた。AI 向けの需要があっても、波そのものは消えていない。
初号機の追加コスト
新しい世代の装置は、最初の 1 台で想定外の費用が出やすい。直近の減益の主因もこれだった。コンプレッションの大判化や PLP でも同じことが起きれば、受注が伸びても利益は伸びない。
中国向けと輸出管理
受注の 4 割近くが中国向けで、輸出管理が変わると需要が急に動く。中国の装置メーカーが内製化を進めれば、汎用のトランスファー装置から先に侵食される。
競合の追い上げ
ヤマハ系のアピックヤマダ、ベシ、ASMPT がコンプレッションの対応を進めている。先端の実績で先行しても、封止方式の次の節目で後れを取れば、首位の座は動く。
中期計画の達成力
2022 年に立てた FY28/03 の計画(営業利益 167 億円)は、2025 年に 156 億円へ下がった。長期の売上 1,000 億円・営業利益 250 億円も、計画どおりに進んできた実績があるとは言いにくい。
資本効率の低さ
自己資本は 700 億円を超えたが、ROE は 1 桁の年が続く。還元を強めない限り、稼ぎのわりに資本がたまる構図は変わらず、株主価値の伸びを抑える。
今後の分かれ目
- コンプレッション装置の受注が四半期ごとに過去最高を更新し続け、追加コストが減ったら
- 営業利益率が 20% 台に定着する道が開く。強気の筋書きの確率を上げてよいが、その場合も ROE が 15% を超えるかを確かめたい。
- メモリ大手のどこかが HBM の増設計画を大きく縮めたら
- 受注残が減り、やや悲観の筋書きに近づく。顧客の偏りがそのまま業績に出る。
- 中国の装置メーカーが先端の封止でも採用を取り始めたら
- シェア前提を下げ、悲観の筋書きの確率を上げる。
- 輸出管理の強化で中国向けの出荷が止まったら
- 受注の 4 割近くが細り、短期の売上は大きく落ちる。長期の価値は、他地域の受注で穴埋めできるかで決まる。
- 会社が自社株買いや配当を大幅に増やし、ROE の目標に向けて資本をそぎ落としたら
- ROE が上がり、同じ利益でも倍率を高く見られる。中立の ROE が 13% に近づくなら、倍率も上方に直せる。
- 大型の買収で新しい事業領域に入ったら
- 資本の使い方が変わるので、買収価格と稼ぐ力を個別に確かめ、筋書きを組み直す。
見ておくもの
- 四半期の受注高(コンプレッション装置と中国向け)と受注残
- 営業利益率(FY28/03 の 22% の達成度)
- メモリ大手の HBM 増設計画
- 配当性向と自社株買いの有無(ROE 13% の達成手段)
倍率と資本コストの決め方
半導体装置は封止市場の規模(実質)×シェアで、残りの事業は対象市場×シェアで積み、事業の純利益に利益ベースの正当化 PER を当てた。k は基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%、RONIC は k を超える分の半分が残る値、g は半導体の長期の数量から 4.5%(k−g は 3.75%)。中立は上限の 8 割に置いた。やや悲観・悲観は ROE が k を下回るので 1÷k を超えない形で置き、悲観は稼ぐ力(純利益÷k)の範囲に収めた。今の PER・PBR や株価、過去の倍率は根拠にしていない。純現金は時価総額の 5% で 1 割未満なので分けていない。リースは小さいとみて、今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.11→18.86 倍・やや楽観 PER 13.29→17.69 倍・中立 PER 11.24→16.06 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.75% = 8.25%。顧客の偏りや中国向けの比重は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。