結論
電業社機械製作所は、下水処理場や川の排水機場、ダム、発電所で水や空気を動かす大型ポンプをつくる会社だ。売上の約7割が国や自治体の発注で、受注残は売上の1年分ある。筆者の結論は「やや割安」。堅い需要と純現金の厚みに対し、今の値段は低すぎると見る。
稼ぎの源は、更新と保守の需要だ。国土交通省が管理する排水機場の2〜3割は設置から40年を超え、新設よりも更新が主役になる。ポンプは数十年使われ、納めたあとの点検や部品の交換が続く。大型の水処理ポンプは使う顧客が限られ、品質と実績が物を言う分野でもある。
一方で、足もとは山に近い。2026年3月期の営業利益率は12.4%で、過去の最高だった。会社は次の年度を減収減益と見ているが、第1四半期は営業利益が3倍になった。海外は中期経営計画の目標に届かず、東京都向けも減った。
10年後の中立では、利益は物価並みに増える。それでも時価総額は利益の9倍弱と、資本コストから見た妥当な水準を下回る。筆者が気にするのは、約13%を持つ大株主と、厚い現金の使い方だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社は理解しやすい。水と空気を動かす機械は社会に欠かせず、10年後も要る。需要の大半が官公需で、景気にも左右されにくい。確信度は高い。
問題は、稼ぐ力を守る堀の幅だ。実績と保守が参入を妨げるものの、入札の価格競争は避けられない。値決めは弱く、利益率を長く保てるかどうかは、受注の選別を続けられるかにかかっている。
資本の使い方は、守りに寄りすぎている。純現金と持ち合い株で時価総額の4割を抱え、配当性向は3割台だ。ためた資金は事業の運転資金として必要な分もあるが、すべてではない。自己資本利益率は8%台と資本コストをわずかに上回るだけで、積み上げた資金が稼ぎを生む形にはなっていない。
安全域はある。利益の9倍弱という値段は、中立の筋書きで見た価値を下回る。筆者は、経営が資金を株主へ戻すか、事業へ成長投資を回すかの選択が、評価の鍵と考える。
何で稼ぐ会社か
単一の事業で、風水力機器、つまりポンプ、送風機、バルブをつくり、据え付けて保守する。大型ポンプは発電プラント、下水道、農業用水向けで、ほかに水中ポンプ、ターボブロワ、道路トンネルの換気ファンがある。生産の中心は静岡県の三島事業所だ。
客は国や自治体が中心だ。2026年3月期の売上は、官需が約7割、国内の民間が約1割強、海外が約2割だった。大きな取引先は、ゼネコンの守谷商会(売上の13%)と東京都(10%)。東京都は前期の19%から減り、案件の波が出ている。
納入後の保守も稼ぎの柱になる。子会社の電業社工事が点検と整備を担い、エコアドバンスが環境機器をつくる。従業員は連結で約560人の小さな会社だ。海外では、インドのプネにある100%子会社DMWインド社がポンプを生産する。生産能力の増強を進めている。
新しい芽は、海水淡水化などで使うエネルギー回収装置DeROs-Eだ。ポンプの技術を水の処理に広げる製品である。専用工場の新設も視野に入れており、中期経営計画の成長の柱とされている。研究開発費は年3億円弱と、規模は小さい。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、実績と据付まで含めた総合力にある。大型ポンプは仕様がそのつど異なり、官公庁は故障が許されない設備に実績のない会社を使いたがらない。納めた設備の保守も同じ会社に頼む傾向がある。筆者は、これが入札のたびに価格だけで決まらない理由だと見る。
ただし、堀と呼ぶには弱い。官公需は入札で、予定価格の枠内で競り合う。荏原製作所、酉島製作所、クボタなど競合も強い。値段を自分で決める力は限られる。営業利益率が6%台から12%台まで上がったのは、受注の質を絞り、生産を効率化した成果だが、価格が構造的に上がったとまでは言えない。
財務は堅い。自己資本比率は73.5%、純現金は約60億円で、赤字の期は過去10年ない。弱点は海外だ。前の中期経営計画で海外受注の比率は、目標20%に対し12.5%にとどまった。人手と技能の継承も課題で、工場のある三島は南海トラフ地震の防災対策地域にあたる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の中心は官公需の更新だ。国土交通省の資料では、排水機場の2〜3割が設置後40年を超えている。農林水産省が定めるポンプの耐用年数30年を超えた施設が、ある県の大規模排水機場の7割を超えている例もある。下水道も、ポンプ場の機械・電気設備の更新が始まっている。
財政は限られる。自治体は人口が減り、更新費の増大に悩んでいる。そのため、全部を取り換えるのでなく、長寿命化で延ばす工法が選ばれやすい。需要は底堅いが、増える速さは物価に届かない可能性がある。東京都向けの売上が1年で半分近くに減ったように、案件の振れも大きい。
民間は、2026年3月期の国内民需の受注が31%増えた。電力や工場向けの更新だ。海外は逆に、受注が32%減った。DMWインド社の生産能力は増えたが、受注が追いつかなかった。
競合は、大型ポンプで荏原製作所、酉島製作所、クボタなどが挙がる。鶴見製作所は排水用の小型ポンプに強く、当社の株主でもある。入札では、価格に加えて、過去の納入実績と保守体制が評価される。鋼材とエネルギーの価格上昇は、受注価格に転嫁するまで時間差がある。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本だ。中期経営計画で配当性向30%以上を掲げ、2026年3月期の配当は創業115周年の記念分を含め前期の1.2倍となった。2027年3月期の予想は、記念分が無くなるため少し下がる。自社株買いの実績は目立たないが、発行済株式の13%が自己株式として残る。
株主では、GM INVESTMENTSが12.2%で筆頭に立つ。光通信系の投資組合も約4%を持つ。大手の取引先で構成する持株会や、明電舎などの取引先も上位に並ぶ。財団と取引先が厚い株主構成は、会社が株主提案を受けにくくしている一面もある。
資産では、純現金が約60億円、上場の持ち合い株が約40億円ある。うち大きいのは三菱UFJフィナンシャル・グループの株で、会社は定期的に保有の適否を検証するとしている。株主優待は、静岡県産の新茶が中心で、長期保有者にはQUOカードもある。費用は年1億円に満たない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
更新の需要は本物で、10年は続く。排水機場、下水処理場、発電所のポンプは、設置後40年を超えるものが増え続ける。国土強靱化の予算が続けば、官公庁は実績ある会社に発注する。当社は受注残が売上の1年分あり、2026年3月期の営業利益は計画を上回った。
海外とエネルギー回収装置が、もう一つの柱になる。DMWインド社は生産能力を増やし、日本品質を低コストで供給できる。DeROs-Eは海水淡水化の消費電力を減らす装置で、中東やアジアの水不足を追い風にできる。海外比率25%の目標が達成されれば、海外売上は今の2倍近くになる。
資本政策も動く。筆頭株主のGM INVESTMENTSと光通信系の組合で、合わせて16%を超える。自己資本利益率が9%の目標に届かないなら、自社株買いや増配への圧力が強まる。純現金と持ち合い株は時価総額の4割にのぼり、還元余地は大きい。株価が利益の9倍弱にとどまる今は、安全域が厚い。
慎重な見方
今の利益は山だ。営業利益率は過去最高の12.4%で、会社自身が次の年度は減収減益を見込む。官公需は入札で決まり、予定価格の枠内で値上げは難しい。人件費と鋼材は物価で上がるのに、売値が追いつかなければ、利益率は下がる。東京都向けの売上が1年で半分近くに減ったことは、官公需の振れの大きさを示している。
海外は伸びない可能性が高い。前の計画で海外受注の比率は目標の20%に対し12.5%にとどまり、2026年3月期の海外受注は32%減った。インドの生産増強で固定費が先に増え、受注が追いつかなければ負担になる。DeROs-Eはまだ実績が小さい。
官公需は人口減と財政の制約を受ける。自治体は長寿命化で更新を先送りでき、需要の増える速さは物価を下回りうる。資本の使い方も、純現金を厚く抱えて自己資本利益率が8%台にとどまるなど、効率が高いとは言えない。持ち合い株も約40億円ある。大株主が動いても、取引先の持株会と財団が厚く、変化は遅い。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は需要の安定と財務の厚みで説得力があり、慎重な見方は価格の弱さと海外の未達で、堀の浅さを突く。10年後の中立は、数量が実質で横ばい、値段が物価に少し遅れる姿とした。営業利益率は11%台に戻り、純利益は今の1.3倍になる。
確率は、需要が堅い側にやや寄せた。理由は、受注残が売上の1年分あること、第1四半期の利益が大きく伸びていること、官公需の更新が構造的に続くことだ。悲観は、入札の価格競争と財政制約が重なる姿を1割強に置いた。本質価値は今の時価総額を1割あまり上回り、「やや割安」となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 11,969 円497 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,384 円99 億円)。 今の値に割り戻すと 7,784 円323 億円、今との差 +39.2%、 期待の年率 +9.9%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 19,779 円821 億円 | 3,637 円151 億円 | +318.9% | +15.4% | 2,810 円117 億円 |
| やや楽観 | 25% | 15,232 円632 億円 | 2,866 円119 億円 | +223.8% | +12.5% | 4,525 円188 億円 |
| 中立 | 32% | 13,472 円559 億円 | 2,601 円108 億円 | +187.5% | +11.1% | 5,143 円214 億円 |
| やや悲観 | 21% | 6,341 円263 億円 | 1,782 円74 億円 | +45.3% | +3.8% | 1,706 円71 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,445 円60 億円 | 241 円10 億円 | −69.8% | −11.3% | 169 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 11,969 円497 億円 | 2,384 円99 億円 | +156.8% | +9.9% | 14,352 円596 億円 |
今の株価時価総額 5,590 円232 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 更新需要と海外が重なり、利益が倍近くに 利益 49 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 19,779 円821 億円
官公需の更新が10年続き、国内の対象市場は実質で1割増える。当社は実績と保守で受注を取り、シェアを13.5%に上げる。民間はプラント更新が堅調で、7%のシェアを持つ。
海外は、DMWインド社の増強とエネルギー回収装置の拡販で、シェアを3.5%まで伸ばし、売上は今の2.7倍になる。営業利益率は12%台の山を保つ。三島の生産設備は更新投資で能力を上げ、保守の受注が積み上がって、利益の波が小さくなる。
資本政策も変わる。大株主の提案を受けて総還元性向が4割に上がり、自己資本利益率は9%台へ高まる。純現金は事業の成長にも回る。会社が掲げる中期経営計画の目標、つまり自己資本利益率9%と海外受注比率25%を、10年の間に達成して維持する姿である。
- 官公需(上下水道・河川排水・ダム・発電所向けの大型ポンプなど):数量 1,650(国内の官公需の対象市場(大型ポンプ・送風機・バルブなど風水力機器、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 18.1%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 299 億円・営業利益 42 億円。市場 1,650 億円 × シェア 13.5%、物価の倍率 1.34、営業利益率 14.0%
- 国内民需(電力・化学・製鉄などのプラント向けポンプ、保守):数量 720(国内民需の対象市場(プラント向けポンプ・送風機・保守、億円・実質、推定))× 価格 9.4%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 68 億円・営業利益 7 億円。市場 720 億円 × シェア 7.0%、物価の倍率 1.34、営業利益率 11.0%
- 海外(インドの子会社 DMW インド社と輸出):数量 3,200(当社が手がける海外の大型ポンプ需要(億円・実質・推定))× 価格 4.7%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 150 億円・営業利益 16 億円。市場 3,200 億円 × シェア 3.5%、物価の倍率 1.34、営業利益率 10.5%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 16.48 倍、時価総額 821 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国の防災・減災と排水機場の更新が続き、DMWインド社と海水淡水化向けの装置が重なれば起こる。前の計画で海外は未達だったため、強気の実現確度は高くない。
やや楽観 25% 官需の更新が底堅く、海外も少し伸びる 利益 40 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 15,232 円632 億円
官公需の対象市場は実質で5%増え、シェアは12.9%に上がる。民需はプラント更新で1割増える。海外は需要が1.16倍になり、シェアは2.9%まで伸びる。
値段は物価の1.32倍、営業利益率は全社で12%と、今の山を保つ。受注の選別が続き、利益率の低い案件を絞る。保守と部品の売上が積み上がり、新設の波を和らげる。
還元は3割台後半に上がる。純現金は積み上がらず、成長投資と配当に回る。エネルギー回収装置の専用工場は小さく始まり、10年の後半に利益へ寄与しはじめる。自己資本利益率は8%近くまで上がる。
- 官公需(上下水道・河川排水・ダム・発電所向けの大型ポンプなど):数量 1,575(国内の官公需の対象市場(大型ポンプ・送風機・バルブなど風水力機器、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 17.0%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 268 億円・営業利益 36 億円。市場 1,575 億円 × シェア 12.9%、物価の倍率 1.32、営業利益率 13.5%
- 国内民需(電力・化学・製鉄などのプラント向けポンプ、保守):数量 660(国内民需の対象市場(プラント向けポンプ・送風機・保守、億円・実質、推定))× 価格 8.7%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 58 億円・営業利益 6 億円。市場 660 億円 × シェア 6.6%、物価の倍率 1.32、営業利益率 10.5%
- 海外(インドの子会社 DMW インド社と輸出):数量 2,900(当社が手がける海外の大型ポンプ需要(億円・実質・推定))× 価格 3.8%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 111 億円・営業利益 11 億円。市場 2,900 億円 × シェア 2.9%、物価の倍率 1.32、営業利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 15.39 倍、時価総額 623 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が売上の1年分あり、第1四半期の利益も伸びている。更新需要は構造的で、中期経営計画の方向に近い筋書きとして4分の1を置く。
中立 32% 中立:数量は横ばい、利益は物価並みに増える 利益 34 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 13,472 円559 億円
国内の官公需は実質で横ばいだ。更新が増える一方で、自治体の財政制約が上限になる。当社のシェアは12.6%を保つ。民需は横ばい、海外は需要が1.15倍に増え、シェアは2.4%に上がる。
値段は入札の競争で物価に遅れ、10年で1.30倍と置く。営業利益率は官需で13%、全社で11%台と、今の山より少し低い。本社費や人件費は物価並みに増える。海外は中期経営計画の目標に届かず、比率は2割にとどまる。
10年後の純利益は今の1.3倍で、実質では横ばいに近い。還元は3割台半ばで、自己資本は積み上がり、自己資本利益率は7%にとどまる。ここでの純現金は運転資金に使われ、株主に戻る額は限られる。
- 官公需(上下水道・河川排水・ダム・発電所向けの大型ポンプなど):数量 1,500(国内の官公需の対象市場(大型ポンプ・送風機・バルブなど風水力機器、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 16.4%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 246 億円・営業利益 32 億円。市場 1,500 億円 × シェア 12.6%、物価の倍率 1.30、営業利益率 13.0%
- 国内民需(電力・化学・製鉄などのプラント向けポンプ、保守):数量 600(国内民需の対象市場(プラント向けポンプ・送風機・保守、億円・実質、推定))× 価格 8.3%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 50 億円・営業利益 5 億円。市場 600 億円 × シェア 6.4%、物価の倍率 1.30、営業利益率 10.0%
- 海外(インドの子会社 DMW インド社と輸出):数量 2,875(当社が手がける海外の大型ポンプ需要(億円・実質・推定))× 価格 3.1%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 90 億円・営業利益 8 億円。市場 2,875 億円 × シェア 2.4%、物価の倍率 1.30、営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 15.13 倍、時価総額 525 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残と更新需要が下支えし、会社の計画(営業利益率12%)も保守的に出されてきた。山を平らにならした筋書きを最も重く置く。
やや悲観 21% 財政制約と価格競争で、利益が3割減る 利益 19 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 6,341 円263 億円
更新の発注が自治体の財政制約で先送りされ、長寿命化の補修が主流になる。国内の官公需の対象市場は実質で1割以上縮み、当社のシェアも12%に下がる。入札の価格競争で値段は10年で1.24倍にとどまり、営業利益率は官需で10%に下がる。
海外は市場が横ばいで、インドの増強が空回りする。固定費を吸収できず、海外は利益率6%にとどまる。国内民需も、設備投資の一巡で受注が細る。
全体の営業利益は今の7割ほどに減る。ただし純現金と持ち合い株は残り、財務に傷はない。還元は利益に合わせて細る。会社は赤字には陥らず、保守の売上が下支えするが、成長投資に回す余力は乏しい。
- 官公需(上下水道・河川排水・ダム・発電所向けの大型ポンプなど):数量 1,300(国内の官公需の対象市場(大型ポンプ・送風機・バルブなど風水力機器、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 14.9%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 193 億円・営業利益 19 億円。市場 1,300 億円 × シェア 12.0%、物価の倍率 1.24、営業利益率 10.0%
- 国内民需(電力・化学・製鉄などのプラント向けポンプ、保守):数量 520(国内民需の対象市場(プラント向けポンプ・送風機・保守、億円・実質、推定))× 価格 7.2%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。市場 520 億円 × シェア 5.8%、物価の倍率 1.24、営業利益率 7.0%
- 海外(インドの子会社 DMW インド社と輸出):数量 2,500(当社が手がける海外の大型ポンプ需要(億円・実質・推定))× 価格 2.5%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。市場 2,500 億円 × シェア 2.0%、物価の倍率 1.24、営業利益率 6.0%
倍率:ROE 4.2%(事業の純利益÷自己資本、余った現金を除く)は k 7% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k=13.8 倍が上限。稼ぐ力が落ちる筋書きなので、上限の 7.6 割の 10.5 倍に置いた。余った現金 15.0 億円は戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:更新は進むが、自治体が長寿命化に切り替え、入札の競争も激しくなる筋書き。東京都向けが1年で半減した実績など、案件の振れが大きいため、5分の1強を置く。
悲観 10% 構造的に負ける:入札で買い叩かれ、更新も先送り 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,445 円60 億円
自治体が更新を先送りし、入札で新興や海外メーカーが安値で参入する。当社の官需シェアは9%に落ち、値段は10年で1.15倍にとどまる。官公需の対象市場も実質で3割近く縮む。
海外は撤退に近い縮小で、インド子会社の稼働は落ち、赤字になる。工場の減損も出る。営業利益はほぼゼロだ。インドの生産増強は固定費となって利益を圧迫し、DeROs-Eの専用工場の投資も見送られる。
株主へ戻せる利益は乏しい。それでも純現金と持ち合い株は残る。会社が清算に至らない限り、少数株主はその使い道を決められない。価値は資産の一部だけを認める。
- 官公需(上下水道・河川排水・ダム・発電所向けの大型ポンプなど):数量 1,100(国内の官公需の対象市場(大型ポンプ・送風機・バルブなど風水力機器、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 10.4%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 114 億円・営業利益 3 億円。市場 1,100 億円 × シェア 9.0%、物価の倍率 1.15、営業利益率 3.0%
- 国内民需(電力・化学・製鉄などのプラント向けポンプ、保守):数量 400(国内民需の対象市場(プラント向けポンプ・送風機・保守、億円・実質、推定))× 価格 4.6%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。市場 400 億円 × シェア 4.0%、物価の倍率 1.15、営業利益率 2.0%
- 海外(インドの子会社 DMW インド社と輸出):数量 2,000(当社が手がける海外の大型ポンプ需要(億円・実質・推定))× 価格 1.7%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。市場 2,000 億円 × シェア 1.5%、物価の倍率 1.15、営業利益率 0.0%
倍率:10 年の悲観は稼ぐ力が消えるので、利益でなく資産で値を付ける。今の自己資本 307 億円のうち、純現金と上場株の税後を預かり分などで割り引いた約 60 億円(今の自己資本の 0.20 倍)を床とした。ためた利益に床の倍率は掛けていない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.1954 倍・時価総額 60 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:競争の激化と更新の先送りが同時に来る深い筋書き。純現金が厚く、受注残もあるため確率は1割にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
官公需(上下水道・河川排水・ダム・発電所向けの大型ポンプなど)
国や自治体が発注する下水処理場・排水機場・浄水場・ダム・トンネル換気向けのポンプ、送風機、バルブと、その据付・保守。
| 数量国内の官公需の対象市場(大型ポンプ・送風機・バルブなど風水力機器、億円・今の値段で測った実質、推定) | 価格市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 12.6% | 189 | 26 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 16.4% | 246 | 32 |
取り方:会社は単一セグメント。需要先別の売上は官需 189.2 億円(構成比 67%)・国内民需 38.2 億円・海外 54.5 億円(有報)。営業利益は需要先別の開示が無いため、全体の営業利益 35.0 億円を官需 13.8%・民需 10.5%・海外 9.3% の利益率で割り振った推定。国内の官公需の対象市場は約 1,500 億円(実質)と置き、当社シェア約 12.6% は売上からの逆算(独立した裏づけではない。大型ポンプは荏原製作所・酉島製作所・クボタなどと競う)。数量は実質、物価の分は価格(シェア × 物価の倍率)に入れる。
国内民需(電力・化学・製鉄などのプラント向けポンプ、保守)
発電所・工場・プラント向けのポンプ、ブロワ、バルブと、納入後の保守・部品。
| 数量国内民需の対象市場(プラント向けポンプ・送風機・保守、億円・実質、推定) | 価格市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 6.4% | 38 | 4 |
| 10 年後 中立 | 600 | 8.3% | 50 | 5 |
取り方:国内民需の売上 38.2 億円(有報)。対象市場を約 600 億円(実質)、当社シェアを約 6.4% と置いた推定(売上からの逆算)。営業利益は割り振りの推定値 4.0 億円。
海外(インドの子会社 DMW インド社と輸出)
プネのインド子会社でつくるポンプと、海水淡水化・発電向けの輸出。エネルギー回収装置 DeROs-E の拡販も狙う。
| 数量当社が手がける海外の大型ポンプ需要(億円・実質・推定) | 価格市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,500 | 2.2% | 55 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2,875 | 3.1% | 90 | 8 |
取り方:海外売上 54.5 億円(構成比 19%、有報)。当社が参加できる海外の大型ポンプ需要を約 2,500 億円(実質)、シェアを約 2.2% と置いた推定(売上からの逆算)。営業利益は割り振りの推定値 5.1 億円。
リスクと懸念
官公需への依存と入札の価格競争
売上の約7割が官公需で、入札の予定価格の枠内で競る。物価や人件費が上がっても売値に転嫁しにくい。財政の制約や長寿命化への切り替えで、更新の発注が先送りされる可能性がある。
大口案件の振れ
東京都の売上は前期の19%から10%に減り、単年の案件の山谷が大きい。受注残は約273億円と売上の1年分あるが、前期比4%減っている。大型案件の取りこぼしが業績に響く。
海外展開の遅れ
前の中期経営計画で海外受注の比率は目標20%に対し12.5%にとどまった。2026年3月期の海外受注は32%減った。インド子会社の増強が空回りすると固定費が重い。
コストの上昇と調達
鉄鋼など原材料とエネルギーの価格が上がり、転嫁には時間差がある。中東情勢などで部品の調達が難しくなる可能性もある。為替の変動も海外売上と調達に影響する。
工場の災害リスク
主力の三島事業所は南海トラフ地震の防災対策推進地域にある。災害で生産が止まれば、納期遅れと違約金が出る。製品の瑕疵による賠償も、大型設備ではリスクになる。
新事業の不確実さ
エネルギー回収装置DeROs-Eは量産と拡販を狙う段階で、専用工場の投資も視野にある。需要が立ち上がらなければ、投資が回収できない。
大株主との関係
GM INVESTMENTSが12%、光通信系の組合が4%を持つ。資本効率の改善を求められる可能性があり、対応を誤れば経営の時間を取られる。一方で、取引先の持株会が厚く、変化は遅い面もある。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の通期営業利益が会社予想(31億円)を上回る見込みになったら
- 強気側に確率を移す。第1四半期は営業利益が前年の3倍になっており、保守的な予想が続いている。
- 海外受注比率が中期計画の目標25%に向けて上がり、DMWインド社の稼働率が上がったら
- 海外の数量とシェアの前提を上げ、強気側に確率を寄せる。
- 東京都など大口の官公需の受注が戻らず、受注残が売上の1年を割ったら
- やや悲観側に重みを移す。入札競争の激化も疑う。
- 自社株買いや配当性向の引き上げなど、30%超の還元が発表されたら
- ためた資金の目減りが止まり、中立の価値が上がる。強気側に近づく。
- 国や自治体が更新を長寿命化で先送りする方針を強めたら
- 官公需の数量が縮む。慎重な側の筋書きに寄せる。
- DeROs-Eの大型受注が決まり、専用工場の投資が発表されたら
- 新規事業の収益化を前提に上方修正する。投資の回収期間も合わせて点検する。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と受注残、官需・民需・海外の内訳
- 営業利益率(12%の維持)と海外受注比率(目標25%)
- 大株主(GM INVESTMENTS・光通信系)の持分と提案
- DeROs-Eの受注と専用工場の投資判断
- 国や自治体の更新予算(防災・減災・国土強靱化)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。中立の事業の自己資本利益率は7%で資本コスト7%をわずかに下回るため、PERの上限は資本コストの逆数の13.8倍で、受注の波と入札の価格競争を見て9割の12.4倍とした。今のPERが9倍弱であることには寄せていない。
数量は官公需を実質横ばい、価格は物価より少し遅れて1.30倍、営業利益率は直近の山の12.4%から11.6%に戻した。会社が掲げる2028年度の営業利益35億円は、10年後の中立の営業利益45億円(名目)より低い。計画は物価の上昇を織り込んだ長期の見通しではないため、名目の伸びを物価並みに置いた。
悲観は稼ぐ力ではなく、純現金と上場株の税後を預かり分などで割り引いた約60億円とした。過去のPBRの底からは置いていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.7→16.48 倍・やや楽観 PER 12.8→15.39 倍・中立 PER 12.4→15.13 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。