結論
前澤給装工業は、道路の水道本管から家や工場へ水を引き込む部材をつくる会社だ。サドル付分水栓、止水栓、継手が主力で、売上の半分強を占める。残りは住宅の給水・給湯配管(架橋ポリエチレン管など)と、仕入れ商品の販売である。
筆者の結論は、財務は文句なしだが、稼ぐ力は伸びにくく、今の値段は妥当かやや高い、というものだ。10 年後の中立の時価総額は今の 9 割ほどで、確率で重みを付けた価値は今を 2 割強下回る。
足元の純利益は 27 億円に見えるが、中身は違う。子会社の吸収合併に伴う会計上の一過性の利益 5 億円が入っており、ならした力は 21 億円ほどだ。会社の来期予想も 20 億円である。
強みは二つある。自己資本比率は 85%、純現金は時価総額の 3 割に当たる 97 億円。そして水道事業体に採用された製品は、仕様書に載って長く売れる。一方で、住宅向けは新築の減少と価格競争に押される。
10 年先の中立の営業利益率は 8% 台半ばで、今とほぼ同じだ。物価の分は売値に乗るが、人件費も同じだけ増える。資産の厚さはあるが、稼ぐ力の伸びは小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「守りの優良会社」だ。無借金で、仕様書に載る製品が毎年コツコツ売れる。ただ、オーナーとして長く持ちたいかと問われれば、迷う。
理由は資本の使い方にある。自己資本の約 3 割が現金と上場株に回っている。事業に必要な額を超えた分は、稼ぐ力を生まない。事業そのものの ROE は 5〜6% で、資本コストの 7.5% に届かない。事業にもう一円を投じても、値打ちが増える見込みは薄い。
それでも、悪い会社とは言えない。給水装置は利益率が高く、需要は景気に左右されにくい。会社が余った資金を配当と自社株買いで株主に戻し続けるなら、複利は小さくても、損はしない。
安全域の面では、手元の純現金と上場株の税引き後の合計が、今の時価総額の 4 割ほどある。事業が不振になっても、資産が価値を支える。ただ、割安と言い切るには事業の稼ぐ力が足りない。筆者は、資産の裏づけは評価するが、買い増しを促すほどの割安さはないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は給水装置事業だ。水道事業体が発注する配水管の布設替え工事に使う、サドル付分水栓、止水栓、継手などを製造し、売上の約 53% を占める。利益は全体の約 7 割にあたり、会社の屋台骨である。
二つ目は住宅・建築設備事業で、売上の約 38%。戸建て・集合住宅の屋内の給水・給湯配管部材、床暖房部材、架橋ポリエチレン管の配管システムなどを扱う。新設住宅の着工に左右され、競合メーカーとの価格競争が続いている。
三つ目は商品販売で、両事業に関連する仕入れ商品を売る小さな事業だ。利益率は低い。
生産の中心は福島県本宮市の福島工場で、2025 年 4 月に完全子会社を吸収合併して、決算は連結から単体に変わった。最大の顧客は管材商社の渡辺パイプで、売上の約 11% を占める。従業員は約 430 人と小さな会社である。
原価の中心は銅合金と樹脂だ。銅の国際価格の高騰と円安で調達コストが上がり、会社は 2026 年 4 月から給水装置製品の価格を改定した。値上げを通せるかどうかが、利益率の最大の分かれ目になる。
設備投資は埼玉の物流センターの倉庫(約 10 億円)と、福島工場の金型・生産機械の更新(約 10 億円)が続く。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、顧客との結びつきの固さにある。水道事業体は使う製品を仕様書に決めて採用する。一度承認を受けた分水栓や止水栓は、工事のたびに繰り返し使われる。承認を取るには試験と実績が要るので、新規参入は簡単ではない。これが給水装置事業の利益率を支えている。
事業部の利益率は、給水装置が約 30%、住宅・建築設備が約 17% だ。ただ、本社と研究、販売の費用が全社で約 47 億円あり、会社全体の営業利益率は 8% 台にとどまる。
財務は極めて堅い。自己資本比率は 85% を超え、有利子負債に頼らない。純現金は約 97 億円、上場株の持ち分も約 58 億円ある。ただ、この厚さが ROE(自己資本の稼ぐ率)を押し下げている。ROE は 10 年の中央値で 5%、直近でも 6〜7% にとどまる。
弱点は三つある。一つは利益が伸びないこと。売上は 10 年で 244 億円から 317 億円と 3 割しか増えていない。二つ目は住宅向けの価格競争。三つ目は、銅や樹脂の原価を売値に転嫁するまでに遅れが出ることだ。
なお、大株主には社名の似た前澤化成工業と前澤工業が並ぶ。持ち合いに近い関係とみられ、資本の使い方に外から圧力がかかりにくい面もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の水道は、高度成長期に埋めた管の老朽化が大きな課題だ。更新が必要な管は多いが、自治体は料金収入の減少と人手不足に直面し、更新のペースは年 1% に届かない自治体が多い。耐震化や大規模な断水の経験が、更新を後押しする。ただ、水道事業体の予算の制約は、需要の伸びを抑える側に働く。
給水装置の市場は、筆者の推定で国内 1,100 億円ほどだ。人口は減るが、配水管の更新と給水管の取り替えは続くので、実質の数量は 10 年で 1.05 倍ほどと置く。
住宅配管は事情が違う。新設住宅の着工は減り続けており、10 年では 1 割前後の縮小を見込む。競合には積水化学工業やオンダ製作所などの名が挙がる。架橋ポリエチレン管は規格品に近く、値段で選ばれやすい。
業種の前提とは違う点を確認しておきたい。機械業種の水処理の節は半導体工場向けの超純水が主役で、栗田工業やオルガノが中心だ。当社は半導体と関係がない。使えるのは「公共インフラ投資の縮小と人口減少が逆風」という部分だけで、数量は国内の水道更新と新築住宅から積み上げた。
原材料は銅合金と樹脂だ。銅の値上がりは売値への転嫁で吸収できる範囲かが、利益率を左右する。
資本政策と M&A
配当は 2025 年の中期経営計画で、配当性向の目安から、自己資本に対する配当率(DOE)3% 程度と累進配当に切り替えた。利益の波にかかわらず、配当を減らさない方針である。直近の配当性向は約 48% だ。自社株買いも前の中計で 9 年にわたり累計 40 億円行った。
中期経営計画 2029 は、2029 年度に売上 335 億円、営業利益 38 億円、営業利益率 11.5% 以上、ROE 7% 以上を掲げる。10 年の実績を見ると、営業利益率は 7〜11% の帯で、最高の 11% は 2020 年 3 月期だ。38 億円は過去最高に近く、筆者は達成を前提にしない。
政策保有株は上場 8 銘柄で約 58 億円。毎年、取締役会で保有の合理性を点検し、2026 年 3 月期は 2 億円強を売却した。
M&A は目立たない。完全子会社の吸収合併が最近のできごとで、買収で規模を広げる戦略は取っていない。10 年以内の TOB の確率は、統計的な目安で 2 割強とされる。純現金と上場株が時価総額の 5 割に迫るため、買い手の目には資産の厚い会社に映る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
水道管の更新は、一度始まると止められない仕事だ。耐用年数を超えた管の数は年々増え、自治体は災害のたびに耐震化を急ぐ。給水装置の需要は、景気より政策に支えられる。当社は仕様書に載った承認品を多く持つので、需要が増えれば真っ先に恩恵を受ける。
価格改定も追い風だ。2026 年 4 月の改定は、銅の原価高を売値に乗せる動きで、営業利益率の改善に直結する。先の中計 2029 の営業利益 38 億円、ROE 7% は達成の道筋が見えている。
財務は無借金で、純現金と上場株が時価総額に迫る。DOE を使った累進配当と自社株買いで、余った資金は株主に戻る。住宅部材が縮んでも、利益の柱の給水装置が支える。資産の厚さを考えれば、今の値段は事業をほとんどただで買うに等しい。住宅部材のリフォーム需要も底堅く、新築の減少を全部は打ち消さなくても、利益の柱を傷つけない。配当は累進で、減らさないと約束している点も、株主には安心材料になる。
慎重な見方
利益が伸びない会社は、資産が厚くても価値は増えない。売上は 10 年で 3 割しか伸びず、物価の上昇を差し引けば実質では縮んでいる。営業利益率も 7〜11% の帯から抜け出していない。中計の営業利益 38 億円は、過去最高を目指すもので現実味が薄い。
住宅・建築設備は新築の減少と価格競争の板挟みで、将来の姿が見えない。本社費など固定費は物価で増え、利益を削る。銅や樹脂の値上がりを売値に乗せ切れない期が続けば、利益はさらに減る。
自己資本の約 3 割は現金と株式で、稼ぐ力を持たない。大株主に関係会社が並び、資本を事業に生かす圧力も弱い。これは割安の理由ではなく、資産が事業の遅さを覆い隠しているだけだ。事業を縮める力は、物価の上昇でさらに強まる。人件費も原材料も同じだけ上がるので、売値を同じ率で上げ続けられなければ、利益率はじわじわ削られる。自治体の予算難で更新工事が遅れれば、需要の見通しは一気にしぼむ。しかも給水装置は国内にしか売れない。海外に出る道筋もなく、成長の源は国内の水道事業体の財布ひとつに限られる。
どちらに重みを置いたか
給水装置の需要と財務の厚さには強気の見方に説得力がある。ただし、物価で増える固定費と、住宅部材の縮小は、利益の伸びを打ち消す。筆者は、会社の稼ぐ力は中立で今とほぼ変わらないと置いた。確率は中立に最も重みを置き、やや悲観を楽観より厚くした。住宅の不振と自治体の予算難は、実現する可能性が高いと見るからだ。資産の厚さは悲観の床として効くので、悲観の確率は 1 割強にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,785 円358 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 777 円156 億円)。 今の値に割り戻すと 1,490 円299 億円、今との差 −3.1%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 6.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,576 円717 億円 | 947 円190 億円 | +194.1% | +11.4% | 317 円63 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,594 円520 億円 | 898 円180 億円 | +127.0% | +8.5% | 663 円133 億円 |
| 中立 | 38% | 2,081 円417 億円 | 848 円170 億円 | +90.4% | +6.7% | 1,113 円223 億円 |
| やや悲観 | 25% | 771 円155 億円 | 698 円140 億円 | −4.4% | −0.5% | 367 円74 億円 |
| 悲観 | 11% | 528 円106 億円 | 399 円80 億円 | −39.8% | −4.9% | 102 円20 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,785 円358 億円 | 777 円156 億円 | +66.6% | +5.2% | 2,562 円514 億円 |
今の株価時価総額 1,538 円308 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 水道管の更新が国の課題として加速し、給水装置が取りこぼさず伸びる 利益 41 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 3,576 円717 億円
国が老朽化した水道管の更新を急がせ、自治体が補助と料金改定を使って工事を前倒しする。配水管の布設替えが増え、分水栓や止水栓といった引込部材の出荷が伸びる。当社は自治体の使用承認品を広く持つため、需要の増えた分を取りこぼさず、国内シェアを 1 ポイント強上積みする。住宅部材は着工の減少が続くが、リフォームと床暖房の更新で落ち込みを抑える。銅価格の上昇は価格改定で吸収できる。中計 2029 の営業利益率 11.5% に近い水準まで届き、自己資本の厚さを使った自社株買いも続く。会社の財務は無借金のまま変わらず、余った現金は配当と自社株買いで戻り続ける。物価で増える人件費や本社費も、増収の効果で吸収できる。事業の ROE は資本コストを上回り、この会社が「資産の厚い守りの会社」から「稼ぐ会社」へ評価を改める10年になる。ただし、これは自治体の財政と工事の担い手の両方が整う前提で、起こる確率は高くない。
- 給水装置:数量 1,320(国内の給水装置用引込部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 22.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 292 億円・営業利益 91 億円。市場(実質)× シェア。シェア 15.3% を基準に増減
- 住宅・建築設備:数量 2,850(国内の住宅向け給水・給湯配管部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 164 億円・営業利益 27 億円。市場(実質)× シェア。着工の減少を反映
- 商品販売:数量 600(関連する流通商品の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。仕入れ商品。両事業に連動
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 16.39 倍、時価総額 717 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要の加速とシェア上積みが同時に起きる筋書き。会社の中計の目標(営業利益率 11.5%)も上回る必要があり、実現は難しいので 1 割を切る確率にとどめた。
やや楽観 19% 更新需要が着実に積み上がり、住宅の落ち込みを給水装置が補う 利益 32 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 2,594 円520 億円
更新工事は急には増えないが、毎年少しずつ積み上がる。給水装置は市場が 1 割強広がり、シェアもわずかに上がる。住宅・建築設備は新築が細るものの、リフォームで下支えされ、減少は 1 割弱にとどまる。価格改定が定着して原価高を吸収し、営業利益率は 10% 前後で安定する。累進配当と自社株買いが続き、自己資本の伸びは抑えられる。会社の中計 2029 の目標には届かないが、過去 10 年の山には近づく。本社費や人件費は物価並みに増えるが、増収と価格改定がそれを上回る。住宅部材の撤退はなく、縮んだ市場でも当社のシェアは守られる。事業の ROE は資本コストに近づくが、まだ届かない。それでも利益の伸びと還元の安定が評価され、資産の厚さを割り引く動きは弱まる。
- 給水装置:数量 1,232(国内の給水装置用引込部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 21.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 261 億円・営業利益 78 億円。市場(実質)× シェア。シェア 15.3% を基準に増減
- 住宅・建築設備:数量 2,730(国内の住宅向け給水・給湯配管部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 154 億円・営業利益 25 億円。市場(実質)× シェア。着工の減少を反映
- 商品販売:数量 582(関連する流通商品の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 35 億円・営業利益 4 億円。仕入れ商品。両事業に連動
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 6.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 15.12 倍、時価総額 520 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:老朽管の更新は政策の後押しがあり、価格改定も通っている。住宅が縮む分を給水装置が埋める形を、中立の次に起こりやすい筋書きとして置いた。
中立 38% 給水装置は微増、住宅は静かに縮み、会社全体の稼ぐ力はほぼ横ばい 利益 26 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,081 円417 億円
給水装置は市場が実質で 5% ほど広がり、シェアは今のまま。住宅・建築設備は新設住宅着工の減少が続き、市場は 1 割強縮む。当社の製品は架橋ポリエチレン管など同業が多く、値段で勝てないためシェアは守るのが精いっぱいだ。物価は価格に乗せられるが、人件費や本社費も同じ率で増える。営業利益率は 8% 台半ばと今とほぼ変わらず、純利益は 25 億円台に落ち着く。配当は自己資本の 3% を目安に累進し、余った現金は少しずつ株主に戻る。中計 2029 の営業利益 38 億円、営業利益率 11.5% は達成せず、過去の山である 11% 近辺にも届かない。事業の ROE は資本コストを下回り、余った現金が価値の下支えになる。特別な事件はなく、「安定しているが伸びない会社」として10年が過ぎる。
- 給水装置:数量 1,155(国内の給水装置用引込部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 20.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 237 億円・営業利益 71 億円。市場(実質)× シェア。シェア 15.3% を基準に増減
- 住宅・建築設備:数量 2,640(国内の住宅向け給水・給湯配管部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 143 億円・営業利益 24 億円。市場(実質)× シェア。着工の減少を反映
- 商品販売:数量 570(関連する流通商品の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 34 億円・営業利益 4 億円。仕入れ商品。両事業に連動
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 6.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 14.81 倍、時価総額 417 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:水道の更新は自治体の財政の範囲で緩やかに進み、住宅は着工の減少が続く。10 年の実績でも営業利益率は 7〜11% の帯に収まっており、最も起こりやすい形として最大の確率を置いた。
やや悲観 25% 自治体の財政難で更新が遅れ、住宅では価格競争にシェアを削られる 利益 14 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 771 円155 億円
水道事業体は人手も予算も足りず、更新工事が計画どおりに進まない。給水装置の市場は実質で微減に転じ、シェアも他社の承認品に少し奪われる。住宅・建築設備は着工の減少に加えて価格競争が厳しく、市場は 2 割近く縮み、シェアも落ちる。銅や樹脂の値上がりを売値に乗せ切れない期が続き、営業利益率は 5% 前後まで下がる。配当は据え置きを守るが、自社株買いは止まる。福島工場の稼働率が下がり、固定費の負担が重くなる。事業部の利益率は給水装置で 28% 台、住宅で 15% に下がる。本社費は物価で増え続けるため、全社の営業利益は今の半分ほどになる。余った現金は配当の維持に使われ、積み上がらない。
- 給水装置:数量 1,078(国内の給水装置用引込部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 19.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 209 億円・営業利益 60 億円。市場(実質)× シェア。シェア 15.3% を基準に増減
- 住宅・建築設備:数量 2,460(国内の住宅向け給水・給湯配管部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 125 億円・営業利益 19 億円。市場(実質)× シェア。着工の減少を反映
- 商品販売:数量 540(関連する流通商品の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。仕入れ商品。両事業に連動
倍率:ROE が k を大きく下回り、事業の純利益から置く価値は小さい。稼ぐ力(純利益 ÷ k)と、純現金と上場株の税引き後の売れる資産のうち大きい方まで。工場の減損を見込んだ今と同じ 407 億円に掛けて 0.38 倍と置いた(中立の PBR より低い)。
確率:水道事業体の財政難と人手不足で更新工事が計画どおりに進まない一方、住宅配管は同業との価格競争が続く。利益が伸びず、実績の下限に張り付く形で、強気の筋書きより起こりやすいとみて、やや厚く置いた。
悲観 11% 給水装置でも値引き競争に巻き込まれ、利益の柱が細る 利益 4 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 528 円106 億円
給水装置でも自治体が仕様を広げて他社品を認め、値引き競争が始まる。市場も縮み、シェアは 13% 台に下がる。住宅・建築設備は新築の減少と価格競争で赤字すれすれになり、事業の縮小や撤退を迫られる。本社費の固定費が重くのしかかり、営業利益はほぼゼロに近づく。減損も出るが、配当を維持するために現金を取り崩す。それでも財務は無借金で、事業が崩れても会社そのものは続く。配当の維持のため、10 年で現金を取り崩す。関連会社との資本関係が動き、買収の提案や事業の整理が現実味を帯びるかもしれない。会社が稼ぐ力を失っても、現金と上場株という資産は残り、それが価値の床になる。
- 給水装置:数量 968(国内の給水装置用引込部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 18.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 175 億円・営業利益 47 億円。市場(実質)× シェア。シェア 15.3% を基準に増減
- 住宅・建築設備:数量 2,160(国内の住宅向け給水・給湯配管部材の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 4.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 96 億円・営業利益 11 億円。市場(実質)× シェア。着工の減少を反映
- 商品販売:数量 480(関連する流通商品の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。仕入れ商品。両事業に連動
倍率:悲観は価値の床を、稼ぐ力ではなく手元の資産で測る。事業の純利益 4 億円は小さく、PER で置くと床の資産を割る。今の自己資本 407 億円に掛ける形で、現金と上場株の税引き後の評価に当たる 0.26 倍に置いた(中立の PBR より低い)。
確率:給水装置は自治体の仕様承認に守られ、突然の崩れは起こりにくい。それでも新素材や同業の攻勢で承認品の値段が崩れ、住宅でも撤退を迫られる形を、1 割強で置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
給水装置
水道本管から敷地へ水を引き込む分水栓・止水栓・継手。水道事業体の布設替え工事が需要先。
| 数量国内の給水装置用引込部材の市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,100 | 15.3% | 169 | 51 |
| 10 年後 中立 | 1,155 | 20.5% | 237 | 71 |
取り方:市場規模は開示がなく、水道事業体向けの配水管布設替えの周辺部材として約 1,100 億円と推定した。当社売上 168.6 億円から逆算するとシェアは約 15%。推定値であり、幅は大きい。数量は今の値段で測った実質、物価の分は価格に入れた。
住宅・建築設備
屋内の給水・給湯配管部材、架橋ポリエチレン管、床暖房部材。新設住宅とリフォームが需要先。
| 数量国内の住宅向け給水・給湯配管部材の市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 4.0% | 121 | 20 |
| 10 年後 中立 | 2,640 | 5.4% | 143 | 24 |
取り方:住宅向け配管部材の国内市場を約 3,000 億円と推定し、当社売上 121.4 億円からシェアは約 4%。競合は積水化学工業やオンダ製作所など。推定値で、開示の根拠はない。
商品販売
両事業に関連する仕入れ商品の販売。
| 数量関連する流通商品の市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 4.5% | 27 | 3 |
| 10 年後 中立 | 570 | 6.0% | 34 | 4 |
取り方:両事業に付随する仕入れ商品の市場を約 600 億円と推定し、当社売上 26.8 億円からシェアは約 4.5%。推定。
リスクと懸念
水道事業体の予算と人手の制約
給水装置の需要は、自治体が配水管の更新に回せる予算と工事の担い手で決まる。料金改定が進まず、工事業者の不足が続けば、老朽管の更新は計画より遅れ、分水栓や止水栓の出荷が伸びない。
銅・樹脂の原価高と価格転嫁
銅合金や樹脂の値上がりが続く中で、売値への転嫁が遅れると利益率が下がる。2026 年 4 月の価格改定が通っても、住宅向けは競争が厳しく、同じ幅では上げにくい。
住宅の新築減少と価格競争
新設住宅の着工は人口減で減り続ける見込みで、住宅・建築設備の売上は縮む。同業との競争で値引きを迫られれば、事業部の利益率は 17% から下がる。
承認品の新規参入
自治体が仕様書の範囲を広げ、他社品の承認を増やせば、給水装置の値段が下がる。これは利益の約 7 割を占める事業の根幹に関わる。
資本効率の低さ
自己資本の約 3 割が現金と上場株に回り、ROE は 5〜7% にとどまる。余った資金を事業に使えず、還元も遅れれば、価値は増えない。
関係会社との資本の絡み
社名の似た関連会社が大株主に並び、持ち合いに近い。外部の株主から資本政策への圧力が弱く、余った資金の還元が遅れるおそれがある。
今後の分かれ目
- 老朽管の更新が国の予算で前倒しされ、自治体の布設替えが増えたら
- 給水装置の数量を上方修正し、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 2026 年 4 月の価格改定が定着し、営業利益率が 10% に近づいたら
- 中計 2029 の目標に現実味が出る。中立の利益率を引き上げ、やや楽観の確率を上げる。
- 自治体が仕様書を広げ、他社品の承認が増えたら
- 給水装置の値段が崩れる兆しとみて、悲観側の確率を上げる。
- 銅価格が高止まりし、転嫁が遅れる期が続いたら
- 利益率の見通しを下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 余った現金の大型還元や、自社株の大きな消却が発表されたら
- 資本効率の改善が見込まれ、倍率の前提を引き上げる。
- 大株主の関係会社や第三者による買収提案が出たら
- 資産の厚さが評価され、買い手との交渉が価値を決める。TOB の確率は別に評価し直す。
見ておくもの
- 給水装置事業の売上と利益率(四半期)
- 新設住宅着工と住宅・建築設備の売上
- 銅価格と価格改定の浸透
- 自社株買い・配当(DOE)の実施
- 政策保有株の売却額と純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに実質の市場規模 × シェアと物価並みの価格で売上を積み、利益率は給水装置 30%・住宅 16.5% など今の事業部の実績並みに置いた。倍率は事業の ROE(現金の利息と余った現金を除く)が k を下回るので、1÷k に ROE÷k を掛けた目減りで置き、今の株価や過去の倍率には寄せていない。余った現金 50 億円は戻り方 1.0 で別に足した。新リース会計基準による数字の形の変化は、当社は賃借が小さく影響が小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.57→16.39 倍・やや楽観 PER 11.53→15.12 倍・中立 PER 9.45→14.81 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0% = 7.5%。ガバナンスの緩さや関係会社との持ち合いは k に足さず、還元の見通しで表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 6.75%。