結論
テセックは、パワー半導体の検査装置(ハンドラとテスタ)を作る、従業員200人ほどの小さな会社だ。売上は56億円、営業利益は3億円と、直近は谷にいる。ただし2026年7月に今期予想を大きく上げ、営業利益を11億円とした。筆者の結論は割高である。足元の戻りは確かだが、10年の平均で稼げる利益に対して、株価はすでに高い。
見落としやすいのは、貸借対照表の厚みだ。現金と有価証券、投資有価証券を合わせると約92億円ある。時価総額175億円の半分を超える。この金融資産は事業とは別に評価している。
事業そのものは、波が深い。営業利益率は2024年3月期の20%から2026年3月期の5%まで、2年で落ちた。過去12年には赤字が5回ある。
さらに市場の伸びほどに売上が伸びていない。ハンドラとテスタの市場は年7〜9%で広がるが、この会社の売上は10年で4割しか増えていない。中国勢のコスト競争も強まる。
財務は安全で、DOE4%の配当も続く。ただ、安全なことと割安なことは別だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「この事業は10年後に今より強いか」を問う。パワー半導体の検査は、市場は大きく伸びるが、小さな会社が大手と中国勢に挟まれた構図が続く。堀は狭く、将来の稼ぎが読みにくい。
オーナー利益、つまり株主に残る利益は、設備投資が小さいので純利益に近い。ただし営業利益は谷で3億円、山で21億円と7倍も動く。10年の平均で見る必要がある。
経営の資本配分は評価が分かれる。DOE4%と配当の安定は、株主に向いた姿勢だ。一方で、事業で使わない金融資産が時価総額の半分を超え、効率は低い。この資産を株主に返さず、買収などに使えば、価値が目減りする。
安全域は、金融資産の厚みにある。しかしそれは、事業が割高であっても現金の分だけ安全に見える、という意味でしかない。事業を、稼ぐ力と市場の見通しだけで測ると、今の値段には余裕がない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは3つある。1つ目のハンドラは、半導体のチップを検査装置に運び、仕分ける機械で、売上の46%(25億円)を占める。MAPハンドラなど、パワー半導体向けに強い。2つ目のテスタは、チップに電気を流して性能を測る装置で、35%(20億円)を占める。高電圧・大電流の測定を得意とする。3つ目のパーツ等は、消耗部品と保守で、19%(10億円)。
テスタとハンドラの両方を作る国内唯一のメーカーを自称している。パワー半導体の高電圧・大電流の測定と、ウェハ段階での検査に力を入れ、研究開発費は年3.5億円ほどである。顧客は車載向けパワー半導体を作る海外のメーカーが多く、最大のインフィニオンのマレーシア工場が売上の約1割を占める。海外売上比率は77%だ。
2025年1月には、神奈川の嶺光音電機を子会社にした。拠点は東京、長野の伊那、熊本のほか、米国、マレーシア、中国にある。従業員は連結で211人と少ない。
2026年3月期は、ハンドラが5割増えた一方、テスタが3割減り、売上は5.5%の減収だった。品目で需要が大きく入れ替わるのは、顧客の投資が装置ごとにずれて動くためだ。
優良さと弱いところ
堀は、パワー半導体の検査という狭い分野の知識と、顧客との長い取引にある。テスタとハンドラの両方を持つため、顧客は一括して導入しやすい。ただし規模は小さく、アドバンテストやテラダインなどの大手、中国の新興メーカーと競う。値下げ要求は恒常的で、決算書にも書かれている。
利益率の波は深い。2022年3月期から3年続けて20%を超えたが、2021年3月期は-13%、2013年3月期は-45%だった。固定費が重く、売上が落ちると赤字に転じる。
財務は安全だ。自己資本比率は89%で、借入は3億円に満たない。しかし、金融資産が大きく、事業に使われていない。事業の資本の効率でいえば、事業に使う純資産は50億円ほどで、稼ぎは営業利益3億円。稼ぐ力は低い。
資本配分は、2025年度からDOE4%に切り替えた。2026年3月期は純利益の1.2倍の配当を払っている。株主を意識する姿勢は評価できるが、成長への投資は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
検査装置の市場は、半導体の生産量と、新しい工場への投資に連動する。ハンドラの世界市場は2024年に約17億ドル、年7〜11%で広がる見通しだ。パワー半導体向けテストシステムは約3億ドルと小さく、年9%で伸びる。SiC・GaNの検査は年20%超で伸びるとされる。
成長の背景は、EVと再生可能エネルギー、AIデータセンターの電源だ。ただし2026年3月期のテスタの減収が示すとおり、EV向けの需要は減速している。AI向けの電源は好調だが、まだ検査装置の注文には十分につながっていない。
競争は厳しい。テスタ分野でも、上位の大手と、中国の山東の新興メーカーなどが並ぶ。国際的な大企業と小さな専門企業が混在し、コストで優位に立つ新興国のメーカーが脅威だと、会社は自ら書いている。値下げの要求も恒常的に続く。
足元は谷から山への戻りの途中にある。2027年3月期の第1四半期の売上は、前年より79%増えた。ただし検査装置は、投資の山を過ぎると、長い低迷期に入ることが多い。2020年と2021年の2期連続の赤字は、その例にあたる。
資本政策と M&A
還元の方針は、中期経営計画「Enjoy2.1」(2025〜27年度)で、総還元性向35%から、DOE(株主資本配当率)4%を目安にした安定配当へ切り替えた。業績が悪くても配当を保つ考えだ。2026年3月期の配当は総額5.4億円で、純利益の1.2倍にあたる。自社株の保有も増えている。
手元の金融資産は、現金35億円、有価証券17億円、投資有価証券40億円。投資有価証券には、りそなホールディングスやみずほ、ロームなど政策保有の5銘柄(約7億円)が含まれる。取締役会が毎年見直し、合理性が確認できない銘柄は減らす方針だ。
買収は、2025年1月の嶺光音電機の子会社化がある。金額は開示されていない。余った金融資産を使った大型買収には、成果の乏しい事例が多い。この点が資本配分の最大の関心事となる。
kabufuの推計では、10年以内に買収される確率は19%と、高めに出る。時価総額が小さく、金融資産が厚いためだ。ただし本分析は、買収の上乗せを価値に入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
需要は戻り始めている。2026年7月に今期予想を売上70億円、営業利益11億円へ引き上げ、第1四半期の売上は前年の8割増、営業利益は4億円だった。ハンドラは前期に5割増え、MAPハンドラなどの採用が進んでいる。
パワー半導体の検査市場は年9%で伸び、SiC・GaN向けは年20%超という。テセックはテスタとハンドラの両方を持つ国内唯一のメーカーで、車載・AIデータセンターの電源向けの投資が戻れば、売上は2022年3月期から3年続いた水準に戻る。その時の営業利益率は20%を超えた。
財務は安全だ。金融資産は約92億円あり、DOE4%の配当と自社株買いで、株主に厚く返している。政策保有株の縮減方針もあり、資本効率は改善する方向にある。時価総額が小さく、買収の対象となる確率も高い。足元の戻りが数年続けば、利益は大きく伸びる。しかも会社の規模が小さいので、売上が少し増えるだけで、利益率は大きく上がる。固定費を抱えた装置メーカーが、売上の増加で利益を伸ばす典型的な局面だ。
慎重な見方
今期の予想は、谷からの反動に過ぎない。2024年3月期に営業利益17億円、2025年3月期に4億円、2026年3月期に3億円と、この会社の利益は2年で6分の1まで落ちた。同じことが、次の投資の谷でも起こる。
市場は年7〜9%で伸びるのに、10年で売上は4割しか増えていない。シェアを失い続けている証拠だ。中国の新興メーカーはコスト優位で入り込み、値下げの要求は恒常的だと、会社自身が書いている。
有価証券を含む金融資産の92億円は、事業の外にある。事業に使う純資産は50億円ほどで、その稼ぎは営業利益3億円だから、稼ぐ力はもともと低い。配当は純利益の1.2倍で、将来は減る可能性がある。基幹システムの更新は延期を重ねており、費用と業務の混乱が利益を圧迫する面もある。小さな会社が、大手と中国勢に挟まれて価格を決められない構図は、10年たっても変わらない。株価は、金融資産と山の利益の両方を織り込んでいる。足元の予想が上がっても、10年の平均で稼ぐ力は変わらない。事業の稼ぐ力に、金融資産の分だけの上乗せを足した値段を払う余地は、あまりない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、足元の予想の引き上げと市場の伸びを根拠にするが、慎重な見方が指摘する、シェアの低下と利益の波の深さの方が、10年の平均を決める力が強い。確率は中立を最も厚く置き、シェアの低下という事実を踏まえて、やや悲観と悲観を合わせて4割弱とした。金融資産の厚みは悲観の床を支えるため、悲観の確率は1割台前半にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,272 円167 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,339 円68 億円)。 今の値に割り戻すと 2,295 円117 億円、今との差 −27.4%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 7,117 円363 億円 | 2,158 円110 億円 | +193.5% | +11.4% | 835 円43 億円 |
| やや楽観 | 21% | 4,620 円236 億円 | 1,667 円85 億円 | +99.0% | +7.1% | 1,320 円67 億円 |
| 中立 | 32% | 3,464 円177 億円 | 1,471 円75 億円 | +56.2% | +4.6% | 1,579 円81 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,558 円79 億円 | 1,177 円60 億円 | −13.5% | −1.4% | 656 円33 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,281 円65 億円 | 294 円15 億円 | −50.2% | −6.7% | 221 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,272 円167 億円 | 1,339 円68 億円 | +45.9% | +3.9% | 4,611 円235 億円 |
今の株価時価総額 3,160 円161 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 9% SiC・EV・AI電源の検査需要が続き、テスタのシェアが戻る 利益 21 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 7,117 円363 億円
SiC・GaNなど新しいパワー半導体の検査需要が年20%を超えて伸び、車載とAIデータセンターの電源向けの投資が続く。テセックはテスタで、顧客の要求する高電圧・大電流の測定に応える製品を出し続け、シェアを2025年3月期の水準(約7%)近くまで戻す。ハンドラはMAPハンドラなどで量産ラインに入り込み、パーツ・保守も稼働台数の増加で伸びる。主要顧客のインフィニオンとの取引が拡大し、中国の新規顧客も増える。営業利益率は過去の山の下の方、約19%に乗る。DOE4%の配当に加え、自社株買いも続き、株主への還元は厚くなる。
- ハンドラ:数量 30.0(世界のテストハンドラ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 1.81(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 54 億円・営業利益 8 億円。ハンドラ市場 30 億ドル(実質) × シェア 0.9%(据え置き)、営業利益率 14%
- テスタ:数量 6.0(世界のパワー半導体テストシステム市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 12(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 72 億円・営業利益 16 億円。パワー半導体テスト市場 6.0 億ドル(実質) × シェア 6%(2025/03 期並み)、営業利益率 22%
- パーツ等(消耗部品・保守):数量 3,000(稼働中の自社装置の台数(台・推定))× 価格 0.01(1 台あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 4 億円。稼働台数 3,000 台 × 1 台あたり 70 万円(物価 1.34 倍)、営業利益率 20%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 14.59 倍、時価総額 363 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2022 年 3 月期から 3 年続けて営業利益率が 20% を超えた実績があり、EV とパワー半導体の投資が再び強まれば戻りうる。ただし投資は波で、そのうえ中国勢のコスト競争が強まるなか、10 年の平均でこの水準を保つ確率は 1 割に届かない。
やや楽観 21% パワー半導体の投資が戻り、売上は 120 億円台 利益 13 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,620 円236 億円
パワー半導体の増産投資が数年続き、テセックのハンドラとテスタがともに売上を伸ばす。ただし、中国の検査装置メーカーが価格を下げて入り込み、シェアはハンドラで 0.8%、テスタで 5% に下がる。パーツと保守の収益は稼働台数の増加で積み上がる。営業利益率は 14% で、2022 年から 2024 年の山には届かない。新しい基幹システムの償却が加わるが、売上の増加で吸収する。主要顧客の新規投資が国内外で続き、受注残の積み上がりが翌年の売上を支える形になる。配当は DOE 4% を守り、自社株買いも一部加わる。
- ハンドラ:数量 28.5(世界のテストハンドラ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 1.61(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。ハンドラ市場 28.5 億ドル(実質) × シェア 0.8%、営業利益率 11%
- テスタ:数量 5.9(世界のパワー半導体テストシステム市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 10(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 59 億円・営業利益 9 億円。パワー半導体テスト市場 5.9 億ドル(実質) × シェア 5%、営業利益率 15%
- パーツ等(消耗部品・保守):数量 2,800(稼働中の自社装置の台数(台・推定))× 価格 0.01(1 台あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 3 億円。稼働台数 2,800 台 × 1 台あたり 70 万円、営業利益率 17%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 12.87 倍、時価総額 236 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 3 月期の予想は 7 月に売上 63 億円から 70 億円へ、営業利益 4.5 億円から 11 億円へ引き上げられ、第 1 四半期の売上は前年の 8 割増だった。需要の戻りは足元で確認できる。この水準が数年続く筋書きは、中立の次に厚く置く。
中立 32% 市場は育つが、シェアを少し失い、利益率は平均止まり 利益 9 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 3,464 円177 億円
検査装置の市場は、ハンドラが年7%、パワー半導体向けテスタが年9%で広がる。物価の分を除いても、10年で1.5〜1.8倍になる。ただしテセックはこの10年で、市場の伸びほどには売上が伸びなかった。中国やアジアの装置メーカーがコストの優位で入り込み、ハンドラのシェアは約0.9%から0.75%に、テスタは約4%で据え置かれる。値下げの要求は恒常的で、物価分の値上げは通りにくい。研究開発と基幹システムの償却で費用は増える。結果は、売上105億円前後、営業利益率11%台となる。売上の波は、投資の山と谷で大きく動く。
- ハンドラ:数量 27.6(世界のテストハンドラ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 1.51(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 42 億円・営業利益 4 億円。ハンドラ市場 27.6 億ドル(実質) × シェア 0.75%、営業利益率 9%
- テスタ:数量 5.7(世界のパワー半導体テストシステム市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 8.04(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 45 億円・営業利益 5 億円。パワー半導体テスト市場 5.65 億ドル(実質) × シェア 4%(今と同じ)、営業利益率 12%
- パーツ等(消耗部品・保守):数量 2,600(稼働中の自社装置の台数(台・推定))× 価格 0.01(1 台あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。稼働台数 2,600 台 × 1 台あたり 70 万円(物価 1.34 倍)、営業利益率 15%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 11.67 倍、時価総額 177 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2018 年 3 月期から 2026 年 3 月期までの営業利益率の平均は 11% ほどで、山の 20% 超も谷の -13% も経験している。市場は伸びるがシェアは長く落ち続けており、中立は平均に置いた。売上は 100 億円を少し超える。
やや悲観 24% 中国勢にシェアを削られ、売上は 70 億円台 利益 4 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 1,558 円79 億円
中国の装置メーカーが価格を大きく下げ、ハンドラはシェアが0.6%、テスタは3%まで落ちる。値下げ要求が強まり、物価分の値上げは通らない。主要顧客の投資が止まる年は売上が半分になる。インフィニオンなど大口顧客の調達方針の変更も、売上の落ち込みを深くする。研究開発費と基幹システムの償却は変わらず、営業利益率は5%に落ちる。配当はDOE4%を守れず、減配が現実味を帯びる。余った金融資産は減らさず積み上がるが、事業の利益が増えないため、評価は上がらない。研究開発費と基幹システムの償却は固定費として重く、売上が減っても減らせない。
- ハンドラ:数量 24.0(世界のテストハンドラ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 120.6%(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。ハンドラ市場 24 億ドル(実質) × シェア 0.6%、営業利益率 4%
- テスタ:数量 5.0(世界のパワー半導体テストシステム市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 6.03(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。パワー半導体テスト市場 5.0 億ドル(実質) × シェア 3%、営業利益率 4%
- パーツ等(消耗部品・保守):数量 2,400(稼働中の自社装置の台数(台・推定))× 価格 0.01(1 台あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。稼働台数 2,400 台 × 1 台あたり 63 万円(物価に届かず 1.2 倍)、営業利益率 10%
倍率:ROE 2.6% が k 8.75% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k=10.8 倍。検査装置の需要が顧客の設備投資の波で大きく振れ、中国勢との価格競争もあって利益の質が低いので、上限の 6.0 割の 7.02 倍に置いた。事業の純利益は金融資産の利息 0.8 億円を除いて測り、余った金融資産は別に足す。
確率:過去 12 年の売上は 31 億円から 87 億円の間で、100 億円に届いたことは一度もない。この水準を超えず、シェアも下がる筋書きは十分にありうる。2021 年 3 月期には営業利益率が -13% まで落ち込んだ実績もあり、確率は中立に近く置く。
悲観 14% 中国勢に主力の座を奪われ、売上が半分に 利益 −5 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,281 円65 億円
SiCの検査装置で中国の装置メーカーが技術に追いつき、インフィニオンなどの主要顧客が調達先を切り替える。国内の取引先でも、価格を理由にした置き換えが相次ぐ。ハンドラのシェアは0.4%、テスタは1.5%まで落ち、売上は40億円に満たなくなる。固定費は減らせず、営業赤字が続く。会社は研究開発を絞るが、新製品が出なくなり、さらにシェアを失う。余った現金・有価証券を使った買収に走る恐れもある。倒産することはなく、自己資本比率は高いままだが、事業の価値は金融資産の整理額が決める。配当は赤字の年も一定期間は続けるが、やがて金融資産を取り崩す形になり、減配に追い込まれる。
- ハンドラ:数量 20.0(世界のテストハンドラ市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 80.4%(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 16 億円・営業利益 −2 億円。ハンドラ市場 20 億ドル(実質) × シェア 0.4%、営業利益率 -12%
- テスタ:数量 4.0(世界のパワー半導体テストシステム市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 3.02(実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 12 億円・営業利益 −3 億円。パワー半導体テスト市場 4.0 億ドル(実質) × シェア 1.5%、営業利益率 -25%
- パーツ等(消耗部品・保守):数量 2,000(稼働中の自社装置の台数(台・推定))× 価格 0.00(1 台あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。稼働台数 2,000 台 × 1 台あたり 47 万円、営業利益率 0%
倍率:営業赤字で稼ぐ力では測れない構造的な負けの10年。現金・有価証券・投資有価証券の約92億円に戻り方0.5を掛けた約46億円と、土地の簿価14億円の税引き後約11億円、売掛金・棚卸資産を整理した税引き後約8億円を足した約65億円を床とし、今の自己資本142億円に0.46倍を掛けた。ためた利益には掛けていない。やや悲観より低い。
確率:2013 年 3 月期に -45%、2021 年 3 月期に -13% と、大きな営業赤字を何度も出している。国内の取引先が減るなか、技術で優位に立つ前提が崩れる構造的な負けを、14% の確率で置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ハンドラ
半導体のチップを検査装置に運び、仕分ける装置(MAPハンドラ、ダイソーターなど)。
| 数量世界のテストハンドラ市場(億ドル・今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.8 | 135.5% | 26 | 1 |
| 10 年後 中立 | 27.6 | 1.51 | 42 | 4 |
取り方:テストハンドラの世界市場は、調査会社により2024年で16〜17億ドル、年7〜11%の拡大。2025年を約18.8億ドルと置いた(推定)。ハンドラ売上25.5億円を150円で割ると0.17億ドルで、シェアは約0.9%。セグメント別の利益は開示が無く、全社の営業利益3.0億円をハンドラ約0.5億円、テスタ約-0.4億円、パーツ約2.9億円と分けた(推定)。数量は実質で置き、物価は価格に入れた。中立でハンドラの価格が物価の1.34倍に届かないのは、シェアが0.9%から0.75%へ下がること(中国・アジア勢のコスト優位)と、恒常的な値下げ要求を織り込んだため。
テスタ
パワー半導体に電気を流して性能を測る装置(スイッチングテスタ、ウェハパラレルテスタなど)。
| 数量世界のパワー半導体テストシステム市場(億ドル・今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.2 | 6.17 | 20 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5.7 | 8.04 | 45 | 5 |
取り方:パワー半導体テストシステムの世界市場は2024年で約2.9億ドル、2025〜31年に年9%の拡大(QYResearch)。2025年を約3.2億ドルと置いた。テスタ売上19.7億円を150円で割ると0.13億ドルで、シェアは約4.1%。2025/03期は売上30億円でシェア約6.9%、2026/03期は谷にあたる。
パーツ等(消耗部品・保守)
納入済みの装置の消耗部品と保守サービス。
| 数量稼働中の自社装置の台数(台・推定) | 価格1 台あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.01 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,600 | 0.01 | 18 | 3 |
取り方:稼働中の自社装置の台数は開示が無く、約2,000台と推定した。パーツ等の売上10.5億円を割ると、1台あたり年約52万円。消耗部品と保守は利益率が高いと見て、営業利益2.9億円と置いた(推定)。
リスクと懸念
検査装置の投資の波
顧客の設備投資で売上と利益が大きく動く。2024年3月期の営業利益17億円は、2026年3月期に3億円まで落ちた。赤字の年は過去12年で5回ある。
中国勢のコスト競争
国際的な大企業から小さな専門企業まで競合が多く、コストで優位な新興国の企業も増えている。値下げの要求は恒常的で、シェアの低下が続けば、利益率は戻らない。
大口顧客と地域への偏り
最大の顧客インフィニオン(マレーシア)が売上の約1割、海外売上が77%を占める。調達先の切り替えや、為替、関税の変化が直接響く。
余った金融資産の使い道
事業に使わない金融資産が時価総額の半分を超える。買収や運用の失敗で目減りすれば、安全域が削られる。2025年1月の子会社化の成果も、まだ見えにくい。
配当が利益を上回る
2026年3月期の配当は純利益の1.2倍。DOE4%を保つ方針だが、赤字が続けば金融資産を取り崩して払うことになる。
基幹システムの更新遅れ
次期基幹システムの投資総額は5.6億円で、完了は2027年4月以降に延びた。費用の増加と業務の混乱が利益を圧迫する可能性がある。
今後の分かれ目
- テスタの受注が回復し、シェアが2025年3月期の約7%に戻ったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げ、テスタの利益率の前提を引き上げる。
- 営業利益率が2年続けて15%を超えたら
- 山の利益が続いているか、投資の波の途中かを確かめ、中立の利益率を見直す。
- 中国メーカーが主要顧客に採用されたと確認できたら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、ハンドラとテスタのシェアの前提を下げる。
- 金融資産を使った大型の買収が発表されたら
- 買収の内容と価格で、余った金融資産の戻り方の前提を下げる。
- 政策保有株の売却が進み、自社株買いや特別配当が出たら
- 余った金融資産の戻り方の根拠が強まり、価値を引き上げる。
- 他社が買収に動き、TOBが発表されたら
- 買収価格で価値が決まる局面になる。本分析の値は事業の本質価値なので、乖離を確かめる。
見ておくもの
- ハンドラ・テスタの受注高と受注残(四半期)
- テスタのシェアと主要顧客の動き
- 営業利益率(谷の5%からどこまで戻るか)
- 金融資産の使い道(買収・自社株買い・配当)
- DOE4%の維持と配当性向
倍率と資本コストの決め方
数量×価格を品目ごとに積み上げ、ROEと資本コストから倍率を決めた。中立はROE約6%がk 8.75%を下回るので、PERの上限は1÷k(10.8倍)で、利益の質に応じて7割の7.6倍に置いた。今のPER(約38倍)や、簿価に近いPBRには寄せていない。足元の谷(2026/03期)と今期の戻り(会社予想)のどちらも10年の置き方には使わず、2018/03期以降の平均を中心に置いた。現金・有価証券・投資有価証券の約92億円のうち、事業の運転に要る約12億円を除く80億円を別に足し、利息は除いた。含み益(評価差額金)はこの時価に入っている。悲観の床は、金融資産と整理できる資産の推定で、過去のPBRの底には依らない。設備は小さく、償却費は利益率にほとんど効かない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.26→14.59 倍・やや楽観 PER 9.19→12.87 倍・中立 PER 8.65→11.67 倍・やや悲観 PER 6.49→7.02 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。