結論
タカキタは、三重県名張市で牛のエサを作る機械や、畑に堆肥をまく機械を作る農機の専業メーカーだ。筆者の結論は割高である。財務は鉄壁で、自己資本比率は8割を超える。ただ、稼ぐ力は国の補助金の波と、縮んでいく国内の畜産に左右される。
主力の細断型シリーズは、とうもろこしなどを刻んで丸く固め、発酵させて牛のエサにする機械だ。国の研究機関が開発し、補助金の後押しで同社がシェアを広げた。2024年3月期には営業利益率が11%台に乗った。だが補助金の山が過ぎると、売上は2年で2割以上減った。
酪農家と肉牛の農家は高齢化と飼料高で減っている。同社はクボタやヤンマーの販売網を通じて売るが、売る相手の数そのものが細る。海外と畑・果樹向けへの展開が答えだが、まだ小さい。
10年の中立で、筆者は純利益を4億円台と見る。自己資本に対する利益は4%ほどで、資本コストに届かない。現金を加えても、今の値段を正当化するには足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、タカキタは手堅いが、伸びしろの乏しい事業だ。
事業の質は悪くない。大手の販売網に乗る分業の形は長く続き、交換部品という繰り返しの稼ぎもある。10年後も、日本の酪農と畑作が続く限り、この会社の機械は使われる。
ただ、需要の源が縮む。牛の頭数と農家の数は減り続け、補助金がなければ機械の更新も遅れる。オーナー利益、つまり設備の更新を引いて株主が自由に使える利益は、ならせば年3〜4億円ほどだ。
経営は慎重で、資本を無駄にしない。借金はなく、配当は安定している。ただ、厚い現金と政策保有株が、ROEを押し下げている。現金の一部は自社株買いで株主に戻す余地がある。
安全域は財務にある。自己資本比率は8割超で、事業が傾いても倒れる心配はない。しかし、今の値段を超える価値は、海外の伸びや補助金の山に賭けない限り見えにくい。筆者は、今の値段は高いと見る。
何で稼ぐ会社か
タカキタは1919年に創業した農業機械のメーカーで、本社と工場は三重県名張市にある。従業員は約270人だ。
事業は2つある。2026年3月期の売上65億円のうち、農業機械が61億円、軸受の加工が4億円だ。
農業機械は3つの柱からなる。1つめはエサづくりの機械で、細断型ロールベーラや飼料の収穫機が主力だ。とうもろこしや飼料用の稲を刻んで丸く梱包し、ラップで包んで発酵させる。輸入の飼料に頼らない自給飼料づくりに欠かせない。2つめは土づくりの機械で、有機肥料や堆肥をまくコンポキャスタが代表だ。3つめは除雪機のスノーブロワである。
売り方は、大手の農機メーカーの販売網に乗せる形だ。クボタが売上の27%、ヤンマーアグリが20%、日本ニューホランドが11%を占める。大手はトラクターを売り、同社はそれに付ける作業機を供給する。
売上の15%ほどは部品だ。機械が長く使われるほど、交換部品の需要が積み上がる。部品は利益率が高く、景気の波にも強い。
軸受の加工は、ベアリングメーカーから材料を受け取り、鉄道車両などに使う大型の軸受の輪を削って磨く仕事だ。ここ数年は赤字が続く。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、狭い分野の製品力と販売網にある。細断型ロールベーラは国の研究機関が開発した技術を、同社が実用に磨いて広げた。大手の農機メーカーは作業機を自社で作らず、同社のような専業に任せる。この分業は長く続いてきた。
部品の売上は安定した稼ぎ頭だ。国内で動いている同社の機械が多いほど、交換部品が売れる。
一方で弱さもはっきりしている。需要は国の補助金で大きく動く。畜産クラスター事業の補助が厚かった時期に売上は85億円まで伸び、補助の波が引くと65億円に戻った。値段を決める力も強くない。大手の販売網を通すため、売り値の主導権は大手にある。
資本効率は並みだ。ROE(自己資本に対する純利益の割合)は過去10年の中央値で6.9%、良い年で11%だった。2026年3月期は2.5%に落ちた。自己資本の厚さが、ROEを押し下げている面もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の畜産は、長い縮小の途中にある。酪農家の戸数は毎年数%ずつ減り、肉牛の農家も高齢化で減る。円安と穀物高で輸入の飼料が高くなったことは、自給飼料の機械には追い風だった。だが、牛の頭数が減れば、エサづくりの機械の需要も細る。
需要の山と谷を作るのは国の補助金だ。畜産クラスター事業は、地域で協力する農家の機械の購入を助けてきた。予算が厚い年は受注が膨らみ、薄い年はしぼむ。2026年3月期は、畜産と酪農の投資意欲の低迷で、細断型シリーズの受注が減った。
伸びる分野もある。化学肥料の値上がりと環境への配慮で、堆肥や有機肥料をまく機械の需要は堅い。畑作と果樹の農家にも売り込める。同社は欧州と北米、韓国、豪州と東南アジアに売り先を広げ、2033年3月期に海外の売上を20億円にする目標を掲げる。
海外には強い競合がいる。牧草やエサの機械では、欧州のクーンやクローネなどの大手が世界の市場を押さえる。同社が海外で戦えるのは、日本の小さな圃場や水田向けに磨いた機械だ。
筆者は、10年で国内の数量はやや減り、海外と土づくりの機械がそれを補うと見る。
資本政策と M&A
資本政策は、安定配当を軸にした保守的な形だ。配当は同じ額を毎年続け、2026年3月期の配当性向は55%だった。長期計画では配当性向30%以上を目安とする。自社株買いは目立たないが、2022年には取引先の持ち合いの解消に合わせて自社株を引き取った。
財務は鉄壁である。純現金は約16億円あり、借金は実質ない。上場株の政策保有は66銘柄で約6億円あり、少しずつ売っている。2025年3月期には売却益が利益を押し上げた。
長期計画「Offensive120」は、2033年3月期に売上100億円、ROE10%を掲げる。第1段階の目標には2024年3月期に一度届いたが、その後は遠のいた。
買収は少ない。関係会社への出資で評価損を出したこともあり、M&Aで大きく広げるより、自社の製品を海外に広げる方針である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、日本の自給飼料の機械で欠かせない立場にある。細断型ロールベーラは国の研究機関の技術を実用に磨いたもので、クボタやヤンマーが自社で作らず同社に任せる。この分業は簡単には崩れない。
需要の追い風は戻る。輸入の飼料は円安と穀物高で高くなり、国は飼料の自給率を上げる方針を掲げる。補助金が再び厚くなれば、2024年3月期のように売上は85億円、営業利益率は11%台まで戻る。
土づくりの機械も伸びる。化学肥料の値上がりで、堆肥や有機肥料をまく機械の需要が畑作と果樹に広がる。部品の売上は前の期より12%増えた。機械の数が増えるほど、部品の稼ぎは積み上がる。
海外も伸びしろだ。欧州と北米、豪州に売り先を広げ、2033年3月期に海外の売上20億円を目指す。
財務は鉄壁で、純現金16億円と政策保有株6億円がある。時価総額47億円に対し、自己資本は83億円だ。下値は限られ、利益が戻れば値段は大きく動く。
慎重な見方
需要の源が細っている。酪農家と肉牛の農家は高齢化と飼料高で毎年減る。牛が減れば、エサを作る機械は要らなくなる。補助金の山で売上が85億円になったのは一時の話で、2年で65億円まで戻った。
値段の主導権もない。売上の6割近くをクボタ、ヤンマー、ニューホランドの3社の販売網に頼る。大手の都合で取扱いが減れば、それで終わりだ。
海外は簡単ではない。牧草やエサの機械は、欧州の大手が世界を押さえる。同社の海外の売上は、目標の20億円にほど遠い。軸受の加工は赤字が続き、立て直しの道筋も見えない。
2026年3月期のROEは2.5%だった。会社自身が認めるとおり、株主資本コストを下回る。長期計画の売上100億円、ROE10%は、補助金の山でも届かなかった水準だ。
財務が堅いことは、利益を生まない資産が多いことの裏返しでもある。現金は株主に戻らず、自社株買いもほとんどない。自己資本を下回る値段には、それなりの理由がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。分業の立場と部品の稼ぎは本物だが、国内の畜産の縮小と補助金の波は、会社の力では変えられない。
確率は中立を中心に置き、悲観側をやや厚くした。補助金の山のような利益を中立には置かず、ならした水準にした。海外が育つ楽観にも2割強を残した。
財務の堅さで下値は守られるが、利益が資本に見合わない以上、帳簿を下回る値段も不思議ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 474 円54 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 113 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 297 円34 億円、今との差 −27.4%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 865 円98 億円 | 176 円20 億円 | +154.5% | +9.8% | 83 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 679 円77 億円 | 141 円16 億円 | +100.3% | +7.2% | 164 円19 億円 |
| 中立 | 38% | 513 円58 億円 | 114 円13 億円 | +53.4% | +4.4% | 238 円27 億円 |
| やや悲観 | 22% | 263 円30 億円 | 97 円11 億円 | −12.1% | −1.3% | 79 円9 億円 |
| 悲観 | 12% | 139 円16 億円 | 53 円6 億円 | −53.1% | −7.3% | 23 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 474 円54 億円 | 113 円13 億円 | +43.7% | +3.7% | 588 円67 億円 |
今の株価時価総額 409 円46 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外と土づくりが伸び、長期計画に届く 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 865 円98 億円
国が飼料の自給を強く後押しし、補助金が再び厚くなる。細断型シリーズは酪農の大規模な農家に広がる。化学肥料の値上がりで、堆肥と有機肥料をまく機械が畑作と果樹の農家に普及する。
海外では欧州と北米、豪州で日本の小さな圃場向けの機械が評価され、海外の売上が20億円を超える。全社の台数は25%増え、単価は物価並みに上がる。
部品の売上も機械の数とともに増える。営業利益率は2024年3月期並みの10%台に戻る。
長期計画の売上100億円を数年遅れで超え、配当性向は3割台を保つ。10年で20億円を株主に戻す。それでもROEは6%台で、資本コストには届かない。
- 農業機械(本体):数量 3,206(販売台数(台))× 価格 268(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 86 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 8.0%
- 農業機械の部品:数量 28.8(国内外で動いている機械の数(千台))× 価格 5.36(1台あたりの年間部品売上(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 16.0%
- 軸受の加工:数量 15.2(加工個数(千個))× 価格 4.02(1個あたりの加工賃(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 98 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:補助金の再拡大と海外の開拓、土づくりの機械の普及が重なる必要がある。2024年3月期に一度は利益率11%台に届いた実績があるが、10年続く確度は低い。
やや楽観 20% 補助金が続き、部品と土づくりが支える 利益 6 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 679 円77 億円
補助金は山と谷を繰り返しながら続く。細断型シリーズの台数は国内でほぼ横ばいを保ち、海外と土づくりの機械が少しずつ上乗せする。全社の台数は8%増える。
部品の売上は、動いている機械の数に合わせて増える。値上げは物価並みに通る。
営業利益率は8%台と、過去10年の中央値を少し上回る。軸受の加工は受注の幅を広げて黒字に戻る。
配当は性向3割台を保ち、10年で16億円を払う。現金は厚いまま残り、ROEは5%台にとどまる。
筆者が見る楽観寄りの姿でも、牛の頭数の減りは止まらない。補助金と部品が、その減りを上回り続けることが条件になる。
- 農業機械(本体):数量 2,770(販売台数(台))× 価格 268(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 74 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 6.5%
- 農業機械の部品:数量 27.0(国内外で動いている機械の数(千台))× 価格 5.36(1台あたりの年間部品売上(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 15.5%
- 軸受の加工:数量 13.8(加工個数(千個))× 価格 4.02(1個あたりの加工賃(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 77 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:飼料の自給は国の方針で、補助金がなくなる可能性は低い。部品の売上は前の期より12%増えており、緩やかな回復には根拠がある。
中立 38% 国内の縮小を海外と部品が埋め、利益は並みに戻る 利益 4 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 513 円58 億円
国内の酪農家と肉牛の農家は減り続け、エサづくりの機械の台数は少しずつ細る。土づくりの機械と海外がそれを補い、全社の台数は5%減にとどまる。単価は物価並みに上がる。
部品の売上は、動いている機械の数がほぼ保たれ、物価並みに伸びる。利益率の高い部品が全社の稼ぎを支える。
営業利益率は6%台後半で、過去10年の中央値を少し下回る。軸受の加工はわずかな黒字を保つ。
純利益は4億円台に戻る。配当は性向3割前後で、10年で13億円を払う。現金は厚いまま残り、ROEは4%ほどで資本コストに届かない。
筆者が最もありそうだと見る姿である。事業は堅く続くが、資本に見合う利益は出ない。
- 農業機械(本体):数量 2,437(販売台数(台))× 価格 268(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 65 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 5.0%
- 農業機械の部品:数量 25.0(国内外で動いている機械の数(千台))× 価格 5.36(1台あたりの年間部品売上(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 15.0%
- 軸受の加工:数量 13.8(加工個数(千個))× 価格 4.02(1個あたりの加工賃(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 58 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の畜産は縮むが、補助金と部品が下支えし、海外が少しずつ育つ。補助金の山の利益でも谷の利益でもない、ならした水準が落としどころ。
やや悲観 22% 補助金が細り、国内の台数が2割減る 利益 3 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 263 円30 億円
国の補助金が細り、酪農と肉牛の農家は機械の更新を先送りする。エサづくりの機械の台数は2割減る。海外は欧州の大手に押され、目標に遠く届かない。
単価は物価に少し届かない。大手の販売網が値下げを求め、同社は原価の上昇を価格に移しきれない。
部品の売上は、動いている機械の数が減って少し細る。軸受の加工は赤字に戻る。
営業利益は3億円ほどにとどまる。配当は今の額を守るが、10年で11億円となる。
財務は堅いので配当は守れるが、利益は資本に対してごくわずかになる。現金は厚いまま眠り、ROEは3%に届かない。
- 農業機械(本体):数量 2,052(販売台数(台))× 価格 255(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 3.0%
- 農業機械の部品:数量 23.8(国内外で動いている機械の数(千台))× 価格 5.10(1台あたりの年間部品売上(万円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 13.0%
- 軸受の加工:数量 11.0(加工個数(千個))× 価格 3.83(1個あたりの加工賃(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 -3.0%
倍率:ROEは約2.7%で資本コストを大きく下回る。需要が縮み利益の質が落ちた姿で、1÷k(約11.8倍)の約72%の8.5倍に置いた。余った現金は谷で4分の1を食い6億円、戻り方0.75を掛けた。
確率:畜産と酪農の投資意欲の低迷は2026年3月期に表れた。財政の制約で補助金が細れば、機械の更新は先送りされる。
悲観 12% 国内の畜産が細り、作業機の分業が崩れる 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 139 円16 億円
酪農の離農が速まり、牛の頭数は大きく減る。大手の農機メーカーは、欧州の大手の作業機を輸入して自社の販売網で売り始める。同社の台数は4割減る。
値上げは通らず、作業機の本体は赤字になる。部品の売上が残るが、動いている機械の数も減っていく。
軸受の加工は撤退に近い規模に縮む。工場の稼働が落ち、固定費が重くのしかかる。
配当は減らし、10年で6億円にとどまる。残るのは厚い現金と工場の土地だが、少数株主はその使い方を決められない。
日本の小さな圃場に合わせた機械という強みも、農家の大規模化で薄れる。大きな農家は欧州の大型の機械を選ぶからだ。
- 農業機械(本体):数量 1,539(販売台数(台))× 価格 240(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 37 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率 -2.0%
- 農業機械の部品:数量 21.3(国内外で動いている機械の数(千台))× 価格 4.80(1台あたりの年間部品売上(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 10.0%
- 軸受の加工:数量 6.9(加工個数(千個))× 価格 3.60(1個あたりの加工賃(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 -5.0%
倍率:稼ぐ力(純利益0.4億円÷k)は約5億円で床を下回る。床は純現金と上場株で、今の自己資本83億円に0.19を掛けた約16億円とした。
確率:酪農の離農が加速し、大手が輸入の作業機に切り替える構造的な負け。財務が堅く倒れる心配はないので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
農業機械(本体)
細断型ロールベーラなどのエサづくりの機械、堆肥をまくコンポキャスタなどの土づくりの機械、除雪機。
| 数量販売台数(台) | 価格1台あたりの平均売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,565 | 200 | 51 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,437 | 268 | 65 | 3 |
取り方:有報の製商品の販売実績51.3億円を、作業機の平均単価を約200万円として台数に直した推定。営業利益は農業機械のセグメント利益3.07億円を、本体と部品に利益率の差(部品が高い)を付けて分けた推定。
農業機械の部品
動いている機械の交換部品。機械が長く使われるほど積み上がる繰り返しの稼ぎ。
| 数量国内外で動いている機械の数(千台) | 価格1台あたりの年間部品売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 4.00 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 5.36 | 13 | 2 |
取り方:有報の部品の販売実績10.0億円。動いている台数は年2.5千台前後の販売と10年ほどの寿命から約25千台と置き、1台年4万円の部品売上とした推定。利益率は約15%と置いた推定。
軸受の加工
ベアリングメーカーの支給材で、鉄道車両などの大型軸受の外輪・内輪を削って磨く受託加工。
| 数量加工個数(千個) | 価格1個あたりの加工賃(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13.8 | 3.00 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 13.8 | 4.02 | 6 | 0 |
取り方:セグメント売上4.15億円・損失0.13億円(有報)。個数の開示はないため、1個あたり約3万円の加工賃として個数に直した推定。
リスクと懸念
国内の畜産の縮小
酪農家と肉牛の農家は高齢化と飼料高で毎年減っている。牛の頭数が減れば、エサづくりの機械の需要も細る。中立で国内の台数は少しずつ減ると置いた。AIエージェントによる代替は関係しない。
補助金の波
畜産クラスター事業などの補助金で受注が大きく動く。補助が厚かった2024年3月期に売上85億円、営業利益率11%台となり、その後2年で売上は65億円に戻った。
販売網への依存
クボタ、ヤンマーアグリ、日本ニューホランドの3社で売上の57%を占める。大手が作業機の調達先を変えたり、輸入品に切り替えたりすれば、売上は大きく減る。
海外の開拓の遅れ
2033年3月期に海外の売上20億円を目指すが、牧草やエサの機械は欧州の大手が世界を押さえる。開拓が遅れれば、国内の縮小を補えない。
原材料の値上がり
鋼材や部品、燃料の値上がりを、大手の販売網を通して価格に移すには時間がかかる。中東情勢などによる調達難も課題に挙げている。
軸受の加工の赤字
軸受の加工は赤字が続く。受注の確保と加工の範囲を広げる努力が実らなければ、撤退や縮小の判断を迫られる。
今後の分かれ目
- 国が飼料の自給の補助を大きく広げ、細断型シリーズの受注が2割以上増えたら
- やや楽観の確率を厚くし、国内の台数を引き上げる。
- 海外の売上が10億円を超えたら
- 海外が育つ筋が現実になったとみて、楽観側の確率を上げる。
- 自社株買いや配当の大幅な引き上げが発表されたら
- 余った現金の戻り方を1.0に近づけて見直す。
- 大手の農機メーカーが作業機の輸入を本格化させたら
- 分業が崩れ始めたとみて、悲観の確率を上げる。
- 軸受の加工からの撤退が決まったら
- 赤字が消える分、中立の利益を少し上げる。
見ておくもの
- 細断型シリーズの受注と畜産クラスター事業の予算
- 部品の売上の伸び
- 海外の売上
- 酪農家の戸数と牛の頭数
- 配当と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、本体・部品・軸受の台数や個数×単価で10年後の利益を積んだ。補助金の山だった2024年3月期の利益を中立に置かず、ならした水準にした。中立の営業利益率は6.7%で、過去12年の山11.6%を下回る。倍率はROEが資本コストを下回るので1÷k(約11.8倍)の85%に置き、余った現金8億円は戻り方0.75で足した。今のPBR約0.6倍は割安の根拠にしていない。リースの影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.5 倍・やや楽観 PER 10.5→12.5 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。