結論
PILLAR は、流体の漏れを止める部品の会社だ。稼ぎの 4 分の 3 は半導体向けの電子機器関連で、洗浄装置に使うふっ素樹脂の継手は世界シェアが 9 割に達する。残りは石油・化学プラント向けのメカニカルシールやパッキンで、定期の交換とメンテナンスが収益を支える。
筆者の結論は、事業は優れているが、値段は先を行き過ぎているというものだ。今期の会社予想は営業利益 200 億円で、前期の 1.7 倍に跳ねる。AI 投資の追い風は確かに吹いている。ただこの会社の利益は、過去にも半導体の山で急に伸び、谷で止まってきた。
10 年で見ると、中立でも営業利益は 300 億円ほどだ。会社が掲げる 2030 年度の 250 億円に、少し遅れて届く姿である。中立の 10 年後の時価総額は、今の 1.06 倍にとどまる。配当と自社株買いを足しても、確率で重みを付けた価値は今の値段を 4 割近く下回る。
堀は本物だが、買い手は大手の装置メーカーで、中国の地場勢が育てば崩れる余地がある。筆者がいちばん気にしているのは、その一点だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家が見るのは、10 年後も同じ地位にあるか、稼いだお金がどう使われるか、そして払う値段に安全域があるかだ。
地位への評価は高い。洗浄装置向け継手の世界シェア 9 割は、市場が小さいので競争相手が育ちにくい種類の堀だ。顧客の装置に組み込まれ、漏れの事故への恐れが切り替えを遠ざける。オーナー利益、つまり設備投資を引いたあとに株主に残る利益は、増産の投資が続く間は帳簿の利益より小さくなる。
資本の使い方は無難だ。M&A は補強型にとどまり、減損を繰り返す会社とは違う。還元も 40% 目標へ引き上げられた。気になるのは、需要の山で設備を増やす点だ。山のあとに稼働率が落ちると、償却が利益を削る。2025 年 3 月期に減益になった理由の 1 つが、まさにそれだった。
安全域は薄い。今の値段は、会社予想の営業利益 200 億円、さらに翌期の 280 億円という予想の山を、ほぼ恒常のものとして買っている。山の利益を長い平均より高く評価することが、この銘柄でいちばん高くつく間違いになる。筆者はそう考えている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 2 つある。
1 つ目は電子機器関連で、売上の約 3 分の 2 を占める。半導体のウェーハを薬液で洗う装置に、薬液を流す継手・チューブ・バルブ・ポンプを納める。素材は「ピラフロン」と呼ぶふっ素樹脂で、強い薬液にも溶けず、不純物も出さない。顧客は国内外の大手の半導体製造装置メーカーだ。装置に標準部品として組み込まれるので、一度採用されれば次の世代の装置にも続けて使われる。ほかに医療向けの部品、免震装置、ふっ素樹脂の基板も、この区分にある。
2 つ目は産業機器関連で、売上の約 3 分の 1 だ。石油精製、化学、発電、LNG 船のポンプの軸から漏れを止めるメカニカルシールとパッキン、配管のつなぎ目のガスケットを作る。LNG 船向けの膨張黒鉛パッキンや、排出ガス規制に対応するパッキンも手がける。この区分は交換とメンテナンスの売上が約半分を占め、景気の波を和らげる。
2023 年に同業のタンケンシールセーコウを買い、メンテナンスの網を広げた。売上の地域別では日本が約 3 分の 2、海外が 3 分の 1 だ。海外比率を 5 割に上げることが、次の中期計画の柱になっている。2024 年に日本ピラー工業から社名を変えた。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、洗浄装置向け継手の世界シェア 9 割にある。数年前の報道では 6 割超とされており、その後さらに高まったとみられる。理由は、漏れが出れば高価な装置と製造ロットを台無しにするので、装置メーカーが実績のない部品に替えたがらないからだ。部品の値段は装置全体では小さい。だから値上げにも比較的応じてもらえる。実際に中国と欧州では価格改定が通った。
数字にも出ている。直近 4 期の営業利益率は 20〜28% の間で動いた。自己資本比率は 75% で、純現金も持つ。
弱みは 3 つある。第 1 に、顧客が少数の大手装置メーカーに偏り、値決めの主導権は完全にはこちらにない。第 2 に、利益が半導体市況に引きずられる。2009 年 3 月期は営業利益率が 1.8% まで落ちた。第 3 に、中国で装置の国産化が進めば、地場の部品メーカーが入り込む。新しい中期計画は中国での標準採用を重点に置いており、会社自身がここを勝負どころと見ている。
経営は 2025 年度まで、配当性向 30% 以上を守った。2027 年 3 月期からは 40% を目標にする。資本の使い方は堅実で、買収も同業の補強型にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の源は、半導体の製造工程の洗浄だ。ウェーハは回路を作る工程の間に何度も洗われる。回路が細かくなり、層が増えるほど、洗う回数も増える。AI 向けの先端ロジックや、メモリーを積み上げる高帯域メモリーはまさにその流れで、洗浄装置の市場は年 7% 超で伸びるという調査が多い。ただ調査によって幅は大きい。洗浄装置ではスクリーンホールディングスが枚葉式で世界の 4 割台を持つとされ、その装置の部品に PILLAR が入る構図だ。
循環のどこにいるか。上期は減収減益だったが、2026 年 3 月期の第 4 四半期から受注が急回復し、今期の第 1 四半期は売上が 36% 増、営業利益が 83% 増になった。会社は通期の営業利益予想を 200 億円まで引き上げた。足元はまちがいなく山へ向かっている。ただこの会社は 2023 年 3 月期に営業利益率 28% を付けたあと、2 年で 20% 弱まで戻った。山は長くは続かないと、筆者は見ている。
産業機器の側は、石油・化学プラントの定期修理や発電所の更新が需要で、景気にあまり左右されない。LNG 船向けのパッキンや、大気汚染物質の排出を抑えるパッキンは、規制の強化で伸びる。水・流体まわりの業種全体でも、交換とメンテナンスの売上が厚い会社は、需要が落ちても傷が浅い。
10 年の構造的な負け筋は 2 つある。中国の装置メーカーが地場の部品に替えること。そして、樹脂継手そのものが別の材料や接合方式に置き換わることだ。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向だ。配当性向の目標を、2027 年 3 月期から 30% 以上を 40% へ引き上げる。2025 年度までの 3 年間の還元は約 100 億円で、自社株買いは過去最大の規模だった。新しい中期計画 One2030 は、5 年間で還元に 300〜350 億円を充てる。
ただし、お金の主な行き先は成長投資だ。設備に 500 億円、研究開発に 200 億円、M&A に 200 億円を使い、不足分として 250〜300 億円を外部から調達する計画である。今は純現金の会社が、5 年で小さな純負債に転じる可能性がある。筆者はこれを悪いとは見ない。福知山の第 2 工場など、供給力の増強は需要の山に間に合わせる必要があるからだ。
M&A は 2023 年のタンケンシールセーコウが前例で、同業の補強型だった。次の 200 億円も同じ型なら、価値を壊す危険は小さい。
TOB(株式公開買い付け)の可能性は、kabufu の試算で 10 年内に約 17% だ。大株主の上位は取引先持株会などで、2025 年 3 月時点の情報である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI 向けの半導体は、層を重ね、洗う回数を増やす方向に進む。メモリーを積み上げるほど工程が増え、洗浄装置と、そこに入る継手の数も増える。PILLAR はその部品で世界シェア 9 割を握り、需要が増えた分をほぼそのまま取り込める。今期の営業利益予想 200 億円と、翌期の予想 280 億円は、その入口にすぎない。
会社は 2030 年度に売上 1,000 億円、営業利益 250 億円を掲げる。だが今期の予想は、もうその 8 割に達している。目標は低すぎるとも言える。中国では標準採用を広げ、新型ポンプなどで 1 台あたりの部品の金額を増やす。産業機器でも、メンテナンスの比率が上がり、営業利益率は 15% から 21% へ上がる計画だ。
堀の深さも強気の根拠になる。部品の値段は装置全体では小さく、顧客は値上げより漏れの事故を恐れる。値上げが通る事業は、インフレの 10 年に強い。自己資本比率が 75% で純現金も持つので、増産の設備を借金に頼らず積める。10 年後の営業利益が 500 億円を超えても、不思議ではない。
慎重な見方
利益が山にいる時に、その山を先へ延ばして値を付けるのは危うい。この会社の営業利益率は、2009 年 3 月期に 1.8% まで落ちた。2023 年 3 月期に 28% の山を付けたあとも、2 年で 20% 弱まで戻っている。今期予想の 200 億円も、同じ型の山である可能性が高い。
堀にも穴がある。顧客は数社の大手装置メーカーで、買い手の力が強い。中国では装置の国産化が進み、地場の部品メーカーが育てば、世界シェア 9 割は国ごとに削られていく。中期計画が中国での標準採用を最重点に置いていること自体、まだ取り切れていない証拠でもある。
投資の山も気になる。5 年で設備に 500 億円、M&A に 200 億円を使い、借り入れも 250〜300 億円見込む。需要が曲がれば、固定費と償却の重い会社になる。2025 年 3 月期は、需要が弱かっただけで営業利益が 2 割減った。
加えて、10 年先には樹脂継手を使わない接合方式や、別の洗浄方式が出る可能性もある。業績が良い今こそ、安全域は薄い。
どちらに重みを置いたか
事業の質では、強気の見方が正しい。洗浄装置向け継手の世界シェア 9 割は本物の堀で、値上げが通る力もある。一方、値段への影響では慎重な見方に分がある。今期の予想はこの会社の利益が山にいることを示しており、10 年の平均の稼ぐ力としては高すぎる。
確率は、強気側に 3 割強を置き、中立を中心にした。中国の国産化という構造的な負けを、やや悲観と悲観で合わせて 4 割弱とした。10 年の価値は、楽観の筋書きでようやく今の値段を超える。この差が事業の質ではなく、値段の高さから来ていることが、筆者の結論だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 16,250 円3,716 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,002 円686 億円)。 今の値に割り戻すと 9,975 円2,281 億円、今との差 −0.5%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 36,409 円8,326 億円 | 4,793 円1,096 億円 | +310.8% | +15.2% | 4,120 円942 億円 |
| やや楽観 | 22% | 26,145 円5,979 億円 | 3,826 円875 億円 | +198.8% | +11.6% | 6,594 円1,508 億円 |
| 中立 | 31% | 18,481 円4,226 億円 | 3,100 円709 億円 | +115.2% | +8.0% | 6,690 円1,530 億円 |
| やや悲観 | 23% | 4,184 円957 億円 | 2,178 円498 億円 | −36.6% | −4.5% | 1,463 円335 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,181 円270 億円 | 1,561 円357 億円 | −72.7% | −12.2% | 384 円88 億円 |
| 加重平均 | 100% | 16,250 円3,716 億円 | 3,002 円686 億円 | +91.9% | +6.7% | 19,251 円4,402 億円 |
今の株価時価総額 10,030 円2,294 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% AI 向けの洗浄工程の増加が 10 年続き、シェアも上がる 利益 398 億円 · PER 20.9 倍 · 株価時価総額 36,409 円8,326 億円
AI 向けの先端ロジックと、メモリーを積み上げる高帯域メモリーの投資が 10 年続く。回路が細かく層が増えるので、ウェーハを洗う回数は増え続ける。電子機器の対象市場は実質で 2.7 倍になり、PILLAR は新型ポンプと中国での標準採用でシェアを 38% 台へ上げる。値上げも物価を少し上回って通り、営業利益率は 27% 台に戻る。
産業機器は、半導体向けのロータリージョイントとメンテナンスが伸び、営業利益率は会社の目標に近い 20% に届く。増やした設備も稼働率が埋めるので、償却が利益を削らない。売上は 2,000 億円を超える。会社が掲げる 2030 年度の目標を、前倒しで大きく超える姿だ。
- 電子機器関連(半導体洗浄装置向けのふっ素樹脂継手・ポンプ・バルブ):数量 7.8(半導体ウェット工程向け流体部品の実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.40(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,637 億円・営業利益 450 億円。対象市場 3,038 億円(実質)× シェア 38.5%、営業利益率 27.5%
- 産業機器関連(メカニカルシール・パッキン・ガスケット):数量 2.1(軸封・ガスケット・メンテナンスの実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.40(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 439 億円・営業利益 88 億円。対象市場 5,800 億円(実質)× シェア 5.4%、営業利益率 20.0%
倍率:事業の純利益 398 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 14.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.9 倍。全体の PER 20.92 倍、時価総額 8,326 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI 投資の追い風、シェア 9 割の堀、増配の方針がすべて続く筋書き。10 年も強い山が続き、中国の国産化も押し返す必要があり、実現の確度は高くない。
やや楽観 22% 半導体の山が重なり、谷が浅いまま電子機器が伸び続ける 利益 300 億円 · PER 19.9 倍 · 株価時価総額 26,145 円5,979 億円
半導体の山が 2 回来て、谷は浅くすむ。電子機器の対象市場は実質で 2.35 倍になり、シェアは 36〜37% へ上がる。新型ポンプで 1 台あたりの部品の金額が増え、値上げも物価並みより少し高く通る。営業利益率は 25% 台を保つ。
産業機器は、2023 年に買ったタンケンシールセーコウとの組み合わせで海外のメンテナンス網が広がり、営業利益率が 18% 台に乗る。会社の 2030 年度の目標(売上 1,000 億円、営業利益 250 億円)には少し遅れて届き、10 年後には上回る。山のたびに設備を足しても、谷の稼働率で崩れない筋書きだ。
- 電子機器関連(半導体洗浄装置向けのふっ素樹脂継手・ポンプ・バルブ):数量 6.4(半導体ウェット工程向け流体部品の実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.36(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,312 億円・営業利益 335 億円。対象市場 2,644 億円(実質)× シェア 36.5%、営業利益率 25.5%
- 産業機器関連(メカニカルシール・パッキン・ガスケット):数量 1.9(軸封・ガスケット・メンテナンスの実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.36(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 388 億円・営業利益 72 億円。対象市場 5,480 億円(実質)× シェア 5.2%、営業利益率 18.5%
倍率:事業の純利益 300 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍。全体の PER 19.93 倍、時価総額 5,979 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の山が重なり、会社の計画に近い成長が取れる筋書き。会社予想がすでに計画を先取りしている点と、堀の深さを見て、やや厚めに置いた。
中立 31% 山と谷を繰り返しながら、洗浄の工程数に沿って市場が 2 倍になる 利益 226 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 18,481 円4,226 億円
半導体は山と谷を 2 回ずつ繰り返す。それでも洗浄の工程数は着実に増え、電子機器の対象市場は実質で 2 倍になる。シェアは 35% に保たれ、物価並みの値上げが通る。営業利益率は山の 28% と谷の 20% 弱の間を行き来し、均すと 23〜24% に落ち着く。
産業機器は、市場が 3 割伸びる。メンテナンスの比率が上がり、営業利益率は 17% になる。10 年後の営業利益は約 310 億円で、会社が掲げる 2030 年度の 250 億円に数年遅れて届き、さらに積み上げた形だ。今期の予想は、この平均より高い山にいる。
- 電子機器関連(半導体洗浄装置向けのふっ素樹脂継手・ポンプ・バルブ):数量 5.3(半導体ウェット工程向け流体部品の実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,055 億円・営業利益 248 億円。対象市場 2,250 億円(実質)× シェア 35.0%、営業利益率 23.5%
- 産業機器関連(メカニカルシール・パッキン・ガスケット):数量 1.8(軸封・ガスケット・メンテナンスの実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 362 億円・営業利益 62 億円。対象市場 5,200 億円(実質)× シェア 5.2%、営業利益率 17.0%
倍率:事業の純利益 226 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.7 倍、時価総額 4,226 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:洗浄の工程数の増加に沿った平均的な成長と、シェア維持を置いた中心の筋書き。強気と慎重の意見が拮抗するので、全体の 3 割強を置いた。
やや悲観 23% 中国の地場勢に低価格品から入り込まれ、取り分が薄くなる 利益 110 億円 · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 4,184 円957 億円
中国の地場メーカーが低価格品から入り込み、PILLAR のシェアは 32% へ下がる。大手の装置メーカーも価格交渉を強め、値上げは物価に届かず、10 年で 28% にとどまる。半導体市場は伸びるが、会社の取り分は薄くなる。
電子機器の営業利益率は 17%、産業機器は 13% と、増強で膨らんだ償却と人件費に押される。会社の 2030 年度の目標には届かない。それでも配当は守られ、赤字にはならない。堀が少しずつ削られる、静かな負け方である。
産業機器も、タンケンシールセーコウとの統合の効果が思うほど出ず、メンテナンス比率の上昇が緩やかになる。純現金は設備投資で薄れ、小さな純負債に変わる。売上は 1,000 億円近くまで伸びるが、利益は今の水準を少し上回る程度にとどまる。
- 電子機器関連(半導体洗浄装置向けのふっ素樹脂継手・ポンプ・バルブ):数量 3.6(半導体ウェット工程向け流体部品の実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.28(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 691 億円・営業利益 118 億円。対象市場 1,688 億円(実質)× シェア 32.0%、営業利益率 17.0%
- 産業機器関連(メカニカルシール・パッキン・ガスケット):数量 1.4(軸封・ガスケット・メンテナンスの実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.28(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 270 億円・営業利益 35 億円。対象市場 4,400 億円(実質)× シェア 4.8%、営業利益率 13.0%
倍率:ROE 8.5%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.5% + 残る割合 2/3 ×(8.5 − 8.25)= 8.4%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 12.4 倍。ROE は k を上回るが、堀が削られて新しい投資の稼ぎが薄れやすい。上限の 7.0 割の 8.7 倍に置いた。
確率:中国の地場勢の台頭と、大手装置メーカーの価格交渉が少しずつ効く筋書き。会社自身が中国の標準採用を最重点に置くことから、無視できない確率を置いた。
悲観 14% 中国の国産化で世界シェアを失い、設備だけが重く残る 利益 30 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,181 円270 億円
中国で装置の国産化が完成し、現地の装置メーカーは地場の部品に切り替える。欧米や日本の装置メーカーも、中国向けの分は同じ流れに従う。PILLAR の電子機器のシェアは 22% へ落ち、値下げ圧力で価格も物価に追いつかない。
増強した工場の稼働率が下がり、償却だけが重く残る。営業利益率は電子機器で 9%、産業機器で 10% まで下がる。売上は今より 2 割弱少ない 490 億円にとどまり、利益はわずかしか残らない。構造的に負けた、ただの部品メーカーになる姿だ。
産業機器にも余波が及ぶ。半導体向けのロータリージョイントが伸びず、石油・化学のメンテナンスだけが残る。会社は設備と研究開発を減らして耐えるが、純現金は使い切り、配当も利益の大半を回して続ける形になる。
- 電子機器関連(半導体洗浄装置向けのふっ素樹脂継手・ポンプ・バルブ):数量 1.8(半導体ウェット工程向け流体部品の実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.15(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 313 億円・営業利益 28 億円。対象市場 1,238 億円(実質)× シェア 22.0%、営業利益率 9.0%
- 産業機器関連(メカニカルシール・パッキン・ガスケット):数量 1.0(軸封・ガスケット・メンテナンスの実質市場(億ドル)× 当社シェア)× 価格 1.15(値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍))→ 売上 175 億円・営業利益 18 億円。対象市場 3,800 億円(実質)× シェア 4.0%、営業利益率 10.0%
倍率:ROE 2.9% が k 7.5% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので、PER の上限は 1÷k = 12.1 倍。構造的に負けて縮む事業で、利益に成長を見込めないので、上限より低い 9.0 倍に置いた。稼ぐ力(純利益 ÷ k)を超えない。
確率:中国の国産化が完成し、堀を失う構造的な負け。シェアが 9 割の部品は替えにくいので低めだが、顧客が少数の装置メーカーで、国策で国産化が進む点を見て 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子機器関連(半導体洗浄装置向けのふっ素樹脂継手・ポンプ・バルブ)
半導体の洗浄装置に薬液を流す、ふっ素樹脂製の継手・チューブ・バルブ・ポンプ。医療向け部品、免震装置、ふっ素樹脂基板もこの区分。
| 数量半導体ウェット工程向け流体部品の実質市場(億ドル)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.6 | 1.00 | 394 | 91 |
| 10 年後 中立 | 5.3 | 1.34 | 1,055 | 248 |
取り方:セグメント開示の電子機器関連は売上 393.6 億円・営業利益 90.6 億円(営業利益率 23.0%)。洗浄装置向け樹脂継手のシェアは 9 割とされるが、ポンプ・バルブ・チューブは低いので、対象市場(洗浄装置の流体部品)を約 7.5 億ドル(1,125 億円)、当社シェアを 35% と推定した(洗浄装置の市場は調査会社で幅が大きく、流体部品を装置価格の 7% 前後と見た推定)。数量は市場(実質)× シェアを億ドルで置き、物価の分は価格の指数に入れた。為替は 150 円。 数量は物価を除いた実質の市場×シェアで、名目の市場予測を使っていない(物価は価格の指数 1.34 倍にだけ入る)。
産業機器関連(メカニカルシール・パッキン・ガスケット)
石油精製・化学・発電・LNG 船向けの軸封部品とガスケット、半導体向けロータリージョイント、およびメンテナンス。
| 数量軸封・ガスケット・メンテナンスの実質市場(億ドル)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1。物価並みで 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 1.00 | 201 | 30 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 1.34 | 362 | 62 |
取り方:セグメント開示の産業機器関連は売上 200.9 億円・営業利益 30.2 億円(営業利益率 15.0%)。メカニカルシール国内シェア 30〜35% の報道はあるが、海外と他製品を含む対象市場は広いので、軸封・ガスケット・メンテナンスの市場を約 26.7 億ドル(4,000 億円)、当社シェアを 5% と推定した。数量は市場(実質)× シェアを億ドルで置き、物価の分は価格の指数に入れた。為替は 150 円。
リスクと懸念
半導体投資の山が終わる
今期の予想は、利益率の高い山の上に立っている。装置メーカーの在庫調整や設備投資の一服が来れば、受注は急に細る。2025 年 3 月期は、需要が弱かっただけで営業利益が 2 割減った。会社は設備を増やしているので、谷での減益はさらに深くなりうる。
中国での国産化
中国の装置メーカーが地場の部品に切り替えれば、世界シェア 9 割は国ごとに削られる。会社は中国での標準採用を最重点にしており、進捗が遅れれば成長の前提が崩れる。国策による国産化は、価格だけでは止められない。
顧客の偏り
買い手は少数の大手装置メーカーで、買い手の交渉力が強い。ある 1 社が内製化や別の仕入れ先へ動けば、売上と利益が大きく動く。値上げが通る間は見えにくいが、構造としては常に残るリスクだ。
設備の重さ
5 年で設備に 500 億円を使う計画で、不足分は外部から 250〜300 億円を調達する。需要が曲がると、償却と金利だけが残る。純現金の強みが、数年で薄れる可能性がある。
産業機器の利益率目標
産業機器は 15% の営業利益率を 2030 年度に 21% へ上げる計画だ。タンケンシールセーコウとの統合の効果とメンテナンス比率の上昇が前提になる。統合が思うように進まなければ、利益率は 15% 台に張り付く。
代わりの技術
10 年先には、樹脂継手を使わない接合方式や、薬液を使わない洗浄方式が出る可能性もある。確率は低いが、起きれば市場が縮む。研究開発費を売上の 5% で続ける計画は、この備えでもある。
今後の分かれ目
- 中国で標準採用が、主要な海外装置メーカーの次世代装置で実現したら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。国産化の圧力を押し返す証拠になる。
- 中国の装置メーカーが地場の継手へ切り替えたと報じられたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。世界シェア 9 割の前提を国別に見直す。
- 半導体の装置メーカーの受注が 2 四半期続けて前年を下回ったら
- 山が終わったとみて、今期の予想を中立の前提から外す。設備を増やした分、利益の下振れを大きく見る。
- タンケンシールセーコウとの統合が進み、産業機器の営業利益率が 18% を超えたら
- 会社の 2030 年度の目標(21%)の確度が上がるので、産業機器の筋書きを上げる。
- M&A に使う 200 億円が、同業の補強型を離れた大型の買収に使われたら
- 資本配分の規律が緩んだとみて、やや悲観側の確率を少し上げる。
- 配当性向 40% に加えて、自社株買いの枠が広がったら
- 還元の厚みが増すので、10 年の還元の合計を上げる。価値の差はわずかに縮まる。
見ておくもの
- 主要な装置メーカー向けの受注と、電子機器関連の営業利益率
- 中国での標準採用の進み具合と、地場の部品メーカーの動き
- 福知山・伊那の設備投資の進捗と、稼働率
- 産業機器関連の営業利益率と、メンテナンス比率
- 純現金の推移と、外部調達の実行
倍率と資本コストの決め方
電子機器と産業機器を、対象市場(実質)× シェアと、物価並みの値段の指数で積み上げ、利益ベースの正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) で倍率を決めた(k 7.5%、g 4%、強い堀で超過分の 2/3 が残る)。倍率は上限の 7〜9 割で、悲観は 1÷k 以内に収めた。今期の予想や直近の高い株価には寄せていない。会社予想の山(営業利益 200 億円)は、10 年の中立では均した値(約 310 億円)に置き換えた。今の時価総額と比べたのは最後で、結論の割高は事業の質ではなく、山の利益に払う値段から出ている。10 年後の数字は日本基準で、リース会計の変更の影響は小さいとみている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.6→20.92 倍・やや楽観 PER 14.07→19.93 倍・中立 PER 12.46→18.7 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.75% = 8.25%。中国の国産化や顧客の偏りは k に足さず、悲観側の確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。