結論
エーワン精密は、小さな自動旋盤が金属の棒をつかむ筒状の工具、コレットチャックを作る会社だ。工具の再研磨と、特注の切削工具も手がける。売上は17億円で、従業員は100人余りと小さい。
筆者の結論は、10年の価値は今の時価総額を3割ほど下回る、である。事業そのものは優れている。中核のコレットチャックは売上の7割で、その利益率は4割近い。
ただ、時価総額94億円のうち、現金と有価証券が64億円を占める。本業の営業利益は2億円台で、この金融資産の利回りは1%にも届かない。会社は毎年5億円を配るが、利益は2億円前後だ。
筆者は、事業の稼ぐ力は認めるが、低利で眠る資産を高く評価できない。配当で少しずつ戻る形では、10年待つ株主の利回りは資本コストに届かない。
会社がここ2年買い足している有価証券も、運用益は小さい。事業の優秀さと、株主の取り分の少なさが並ぶ会社だ。配当や自社株買いに回れば評価は変わるが、今の方針は配当を中心にした保守的なものだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、本業の質と、資産の使い方を分けて見る。コレットチャックは、少額の消耗品で、顧客が自社の都合で替えにくい。利益率が4割ある事業は、そう多くない。
しかし、本業の営業利益は2億円台で、金融資産64億円の方が大きい。この資産は低利のまま眠り、毎年の配当で少しずつ株主に戻る。
筆者がほしいのは、本業の価値と、戻ってくる現金に近い。両者を足しても、10年で年率の利回りは資本コストに届かない。
払える値段は、本業の利益に控えめな倍率をかけ、金融資産を戻る時期で割り引いたものになる。
経営は誠実だが、資本の配分は保守的だ。有価証券を買い足すより、配当や自社株買いで戻した方が、株主の取り分は大きくなる。
10年持つなら、毎年の配当が主な取り分になる。5億円という額は大きいが、時価総額の5%強で、資本コストには届かない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、消耗品であることだ。コレットチャックは、CNC自動旋盤で棒材をつかむ筒状の工具で、機械が動く間は開閉を繰り返して摩耗する。一定の期間で買い替えが要るため、機械の稼働率が高いほど注文が来る。注文は1本から2本の少量が大半で、完全な受注生産だ。
売上17億円の内訳は、コレットチャックが12億円、切削工具が5億円、自動旋盤用カムが0.2億円。コレットチャックの利益率は38%に達する。切削工具は、市販工具の再研磨と、特注の切削工具の製作を行う。カムは祖業で、供給責任のために続けている。
10%を超える販売先はなく、輸出は12%で台湾、中国、韓国が中心だ。2026年6月期は、半導体の検査に使うプローブピンの加工用に、海外の注文が3割伸びた。
タングステンの入手難で超硬合金が高騰し、2026年2月に値上げを通した。受注は18億円と前期比13%増え、受注残も3倍に積み上がった。
営業は既存顧客の深掘りが中心で、売り込みの派手さはない。注文は顧客の必要に応じて入り、納期の速さと品質が信頼を支える。工場は山梨県韮崎市に集まり、人員の大半がここで働く。
優良さと弱いところ
堀は、少量多品種の消耗品という仕組みそのものにある。大手メーカーが手を出すには市場が小さく、熟練した加工者と設備が要る。50年を超える実績で固定費が抑えられ、コレットチャックの利益率は4割前後を保つ。
弱みは、需要が機械の稼働率に連動する点だ。自動車、半導体、スマートフォンの景気で、受注は2〜3か月の周期で上下する。切削工具部門は、2025年6月期に4.5億円の減損を出した。2026年6月期は特注品が伸びて黒字に戻ったが、再研磨は同業との値下げ競争にさらされる。
財務は極めて堅い。自己資本比率は91%で借入はない。ただ、資本効率は低く、自己資本利益率は直近でも3%に届かない。
経営は配当に前向きで、純資産の3%以上を目安にする方針を掲げる。実際には6.8%を払い、利益を上回る額を出し続けている。一方で、ここ2年有価証券を買い足す姿勢は、資本の使い道が見つかっていないことの表れだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
コレットチャックの需要は、小型の自動旋盤が加工する精密部品の量で決まる。自動車の電装、半導体の検査治具、医療機器、スマートフォンの部品が主な行き先だ。国内の主力旋盤メーカー3社の新規販売は大半が輸出で、海外の稼働が増えるほど工具の補充も増える。
2026年は、国内製造業の稼働率が1月に底を打ち、3月から6月にかけて上向いた。半導体の国産化を進める中国で、プローブピンを加工する小径の旋盤が売れ、工具の需要が増えた。
構造的な懸念は二つある。電気自動車への移行で、エンジン部品の旋削加工が減る可能性。複合加工機や積層造形の普及で、旋削の工程そのものが変わる可能性だ。会社も、旋削が不要になる場合の影響を自らリスクに挙げている。
一方、供給する会社は減っており、ニッチを担う会社に注文が集まりやすい。切削工具の再研磨は、競合が増えて値段が下がりやすい分野だ。
世界的には、半導体の生産が国力に直結する分野になり、各国が製造装置の増強を急ぐ。その周辺で動く小型旋盤は、検査治具の部品を作る用途で増えている。この流れが10年続くかが、数量の見方を分ける。
資本政策と M&A
資本の使い方が、この会社の評価を最も左右する。2026年6月期末の現金及び預金は41億円で、うち33億円は定期預金だ。投資有価証券も23億円あり、2年で15億円ほど積み増した。借入はない。
配当は年1回で、純資産の3%以上を目安にする方針だ。実際は6.8%で、総額5億円と純利益2億円を大きく上回る。2025年6月期も赤字の中で5億円を払い、別途積立金を崩して賄っている。自社株買いはない。
配当を続けるほど、自己資本は減って資本効率は上がる。ただ、金融資産の運用益は年0.4億円ほどで、利回りは1%を下回る。
M&Aは見当たらない。支配する親会社もなく、大株主の情報は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コレットチャックは利益率が4割ある消耗品で、機械が動くほど注文が来る。2026年6月期は受注が13%増え、受注残は3倍に膨らんだ。半導体の検査用プローブピンやスマートフォン部品の加工が増え、海外の売上は3割伸びた。2026年2月には、超硬合金の高騰に合わせた値上げも通した。会社は2027年6月期の営業利益を3.4億円と、44%増で見ている。
財務は無借金で、現金と有価証券が時価総額の7割近い。配当は年5億円と時価総額の5%を超え、利益を上回って出し続けている。会社の方針は純資産の3%以上で、実際は6.8%だ。
供給する会社が減る中で、ニッチを担う利点は増す。切削工具の特注品も伸び、2026年6月期は黒字に戻った。金利が上がれば、定期預金の利息も増える。
従業員の平均年収は500万円強で、平均勤続は13年近い。受注生産で在庫が軽く、景気が戻る局面では利益が素早く伸びる体質だ。
無借金なので、金利が上がっても利払いの負担はなく、むしろ受取利息が増える。国内の製造業が持ち直す局面では、コレットチャックの注文が先に動く。
慎重な見方
本業の営業利益は2億円台で、時価総額94億円のうち64億円が現金と有価証券だ。その運用益は年0.4億円で、利回りは1%に届かない。10年で見れば、眠る資産が資本コストに届かない分だけ、価値が目減りする。
利益は7年で、営業利益6億円台から2億円台まで縮んだ。切削工具部門は2025年6月期に4.5億円の減損を出し、再研磨は値下げ競争が続く。配当は純利益の2.5倍に達する年もあり、自己資本は年々減っている。
電気自動車への移行や、複合加工機の普及で旋削の工程が減れば、コレットチャックの需要は縮む。会社自身がこのリスクを挙げている。
有価証券を積み増す姿勢は、配当や自社株買いでの還元より、取り分を減らす。従業員は100人余りで、人材の確保も課題になる。
輸出は円建てのため、円高になれば海外の顧客の負担が増える。熟練者が定年を迎える時期も近く、品質と納期の強みを次の世代に渡せるかは未知数だ。
資本効率の低さは長く放置されてきた。経営に改善の意思が見えないままなら、割安にはならない。
どちらに重みを置いたか
勝つのは慎重な見方だ。本業の質は高いが、利益の絶対額が小さく、眠る資産の割合が大きい。楽観の筋書きでも、10年の価値は今に届かない。確率は中立を最も厚くし、やや悲観と悲観で3割とした。配当が増えるか、自社株買いが始まれば見方は変わる。確率は、慎重な見方の根拠である低利の資産と縮んだ利益が、10年で大きくは変わらないという前提に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,486 円75 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 942 円47 億円)。 今の値に割り戻すと 1,377 円69 億円、今との差 −26.3%、 期待の年率 +2.7%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 2,781 円140 億円 | 1,092 円55 億円 | +107.3% | +7.6% | 194 円10 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,165 円109 億円 | 1,032 円52 億円 | +71.2% | +5.5% | 640 円32 億円 |
| 中立 | 45% | 1,620 円82 億円 | 1,000 円50 億円 | +40.3% | +3.4% | 1,179 円59 億円 |
| やや悲観 | 22% | 734 円37 億円 | 834 円42 億円 | −16.1% | −1.7% | 345 円17 億円 |
| 悲観 | 8% | 294 円15 億円 | 595 円30 億円 | −52.4% | −7.2% | 71 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,486 円75 億円 | 942 円47 億円 | +30.0% | +2.7% | 2,428 円122 億円 |
今の株価時価総額 1,868 円94 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 5% 半導体と医療の追い風が続き、高採算を保つ10年 利益 5 億円 · PER 20.9 倍 · 株価時価総額 2,781 円140 億円
半導体の検査治具、医療機器、車載電装の加工が伸び、コレットチャックの販売本数は今の1.4倍になる。超硬合金の値上げを通し続け、価格は物価を上回る1.4倍になる。
特注の切削工具も伸び、切削工具部門は利益率25%に乗る。
利益は営業利益で7億円ほどと、10年前の水準に戻る。配当は少しずつ増やされ、10年で55億円ほどを株主に戻す。
眠る資産は減り、運用益も増えるが、本業の利益が主役になる。
ただ、売上は30億円台にとどまる小さな会社で、人員の確保が追いつくかが前提になる。この筋書きは、半導体と医療の追い風が10年続く場合だけだ。
- コレットチャック部門:数量 13.7(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 1.68(1万本あたりの売上(億円)。1.2は1本約1.2万円)→ 売上 23 億円・営業利益 10 億円。本数1.4倍・価格は1.4倍
- 切削工具部門:数量 7.7(年間の受注件数(万件、推定))× 価格 1.12(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。件数1.25倍・価格1.4倍
- 自動旋盤用カム部門:数量 1.3(年間の販売枚数(千枚、推定))× 価格 0.13(1千枚あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。微減
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)36 億円。全体の PER 20.85 倍、時価総額 140 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の国産化と小型精密部品の需要は強いが、売上17億円の小企業で、数量が4割増える筋は軽くない。
やや楽観 20% 稼働率が高まり、利益率も上向く10年 利益 4 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 2,165 円109 億円
国内の製造業が緩やかに回復し、海外では半導体向けの小径加工が増える。コレットチャックの本数は今の1.28倍になる。
価格は物価並みの1.37倍。超硬の値上げが定着し、利益率は4割を超える。
切削工具は特注品が伸び、利益率は22%に戻る。
営業利益は5億円強。配当は年5億円台で続き、10年で52億円を戻す。金融資産は少しずつ減る。
新リース会計の導入は影響が小さく、10年後の利益は今と同じ形で置く。
眠る資産は少しずつ減り、運用益も増える。本業が主役に近づく筋書きだ。
従業員の確保と設備の更新は、売上の伸びの範囲で賄える。償却は取得時の値段のまま足され、新しい設備だけが物価の高い値段で加わる。
- コレットチャック部門:数量 12.5(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 1.64(1万本あたりの売上(億円)。1.2は1本約1.2万円)→ 売上 21 億円・営業利益 8 億円。本数1.28倍・価格1.37倍
- 切削工具部門:数量 7.1(年間の受注件数(万件、推定))× 価格 1.07(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。件数1.15倍・価格1.34倍
- 自動旋盤用カム部門:数量 1.5(年間の販売枚数(千枚、推定))× 価格 0.13(1千枚あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)36 億円。全体の PER 19.46 倍、時価総額 109 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年6月期は受注が13%増え、受注残も3倍に積み上がった。国内外の稼働率が上がる局面で、数量が3割近く伸びる筋は軽くない。
中立 45% 回復は緩やかで、高採算と低利の資産が並ぶ10年 利益 3 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 1,620 円82 億円
国内製造業の稼働は緩やかに戻り、海外の半導体向けが支える。コレットチャックの本数は今の1.15倍。価格は物価並みの1.34倍に上がり、超硬の値上げ分を吸収する。
切削工具は再研磨の値下げ競争が続き、利益率は2割にとどまる。カムは供給責任のため横ばいだ。
全社費用は物価で年4.7億円に増える。営業利益は3.7億円で、2027年6月期の予想と同じ水準だ。
配当は年5億円の水準を保ち、10年で50億円を戻す。現金と有価証券は減るが、32億円ほどが残る。
運用益は金利上昇で増えるが、利回りは2%にとどまる。
- コレットチャック部門:数量 11.3(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 1.61(1万本あたりの売上(億円)。1.2は1本約1.2万円)→ 売上 18 億円・営業利益 7 億円。本数1.15倍・価格は物価並みの1.34倍
- 切削工具部門:数量 6.5(年間の受注件数(万件、推定))× 価格 1.07(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。件数1.05倍・価格は物価並み
- 自動旋盤用カム部門:数量 1.6(年間の販売枚数(千枚、推定))× 価格 0.13(1千枚あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)32 億円。全体の PER 17.75 倍、時価総額 82 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年6月期の予想は営業利益3.4億円。受注は強いが、過去7年の縮小も長い。緩やかな回復が最も起こりやすい。
やや悲観 22% 稼働率が戻らず、値下げが広がる10年 利益 1 億円 · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 734 円37 億円
国内製造業の稼働が伸びず、中国の工具メーカーとの価格競争が輸出先で強まる。コレットチャックの本数は今の0.95倍にとどまり、価格も1.3倍に抑えられて利益率は33%に下がる。
切削工具は再研磨の値下げ競争で、利益率は1割を割る。
全社費用は年4.5億円。営業利益は1億円を割る。
配当は年4億円台に抑える。それでも利益を上回るため、金融資産は30億円まで減る。
稼ぐ力は小さいが、金融資産が株主の取り分を支える。
輸出先で価格競争が強まる。ただ、固定費は人件費が中心で、人員の調整で赤字は避けられる。
- コレットチャック部門:数量 9.3(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 1.56(1万本あたりの売上(億円)。1.2は1本約1.2万円)→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。本数0.95倍・価格1.3倍
- 切削工具部門:数量 5.8(年間の受注件数(万件、推定))× 価格 1.04(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。件数0.95倍・価格1.3倍
- 自動旋盤用カム部門:数量 1.2(年間の販売枚数(千枚、推定))× 価格 0.12(1千枚あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。微減
倍率:事業のROEは約4%でk7.5%を下回り、PERの上限は1÷k=12.5倍。利益の薄さを割り引いて9.79倍に置いた。
確率:過去7年で営業利益が6億円台から2億円台まで縮んだ。国内製造業の設備投資が鈍る局面が長引く筋は軽くない。
悲観 8% 旋削が複合加工に置き換わる構造的な負け 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 294 円15 億円
電気自動車の普及でエンジン部品の旋削が減り、複合加工機が小型旋盤の仕事を奪う。コレットチャックの本数は今の0.65倍に縮み、価格競争で利益率は18%まで落ちる。
切削工具も赤字に沈み、固定の全社費用4.2億円が重くのしかかる。営業損益は赤字になる。
配当は3年後に純資産の3%の水準まで引き下げられ、10年で30億円にとどまる。
事業は続くが、価値は現金と有価証券が中心になる。眠っていた資産が、そのまま下値を支える。
配当は減るが、無借金の財務が事業の縮小を受け止める。会社の清算は起きず、現金の使い方は少数株主に決められない。
- コレットチャック部門:数量 6.4(年間の販売本数(万本、推定))× 価格 1.32(1万本あたりの売上(億円)。1.2は1本約1.2万円)→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。本数0.65倍・価格1.1倍
- 切削工具部門:数量 3.7(年間の受注件数(万件、推定))× 価格 0.88(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。件数0.6倍・価格1.1倍
- 自動旋盤用カム部門:数量 0.8(年間の販売枚数(千枚、推定))× 価格 0.10(1千枚あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:稼ぐ力に値が付かず、床は金融資産の側。今の自己資本74億円の約0.2倍とした。
確率:電気自動車への移行と複合加工機の普及で、小型旋盤の需要が縮む筋は、単一の消耗品の会社には致命傷になりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コレットチャック部門
小型CNC自動旋盤で棒材をつかむコレットチャックとガイドブッシュを作る。
| 数量年間の販売本数(万本、推定) | 価格1万本あたりの売上(億円)。1.2は1本約1.2万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 9.8 | 1.20 | 12 | 5 |
| 10 年後 中立 | 11.3 | 1.61 | 18 | 7 |
取り方:部門売上11.74億円・利益4.52億円(利益率38%)。本数は開示がなく、1本あたり約1.2万円と置いて推定した。国内の売上は前期比2.4%増、海外は29.6%増。
切削工具部門
市販切削工具の再研磨と、特注の切削工具の製作・再研磨を行う。
| 数量年間の受注件数(万件、推定) | 価格1万件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 6.2 | 0.80 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 1.07 | 7 | 1 |
取り方:部門売上4.92億円(再研磨3.22億円、特注1.70億円)・利益1.39億円。件数は1件約8千円と置いた推定。前期は減損4.5億円を別に計上した。
自動旋盤用カム部門
カム式自動旋盤用のカムを作る。供給責任のために続けている祖業。
| 数量年間の販売枚数(千枚、推定) | 価格1千枚あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1.6 | 0.10 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 0.13 | 0 | 0 |
取り方:部門売上0.16億円・損失0.01億円。枚数は推定。全社費用は約3.5億円で、各部門の利益の合計から営業利益2.36億円を引いて出した。
リスクと懸念
半導体と自動車の稼働率への連動
受注は顧客の機械稼働率に連動し、2〜3か月の周期で上下する。国内製造業の設備投資が鈍れば、営業利益は6億円台から2億円台に縮んだ7年間の再来もありうる。
旋削工程の置き換え
電気自動車の普及でエンジン部品の旋削が減り、複合加工機や積層造形が小型旋盤の仕事を奪う可能性がある。会社自身もこのリスクを挙げている。
切削工具部門の採算
2025年6月期に4.5億円の減損を出した。再研磨は同業との値下げ競争が続き、特注品が伸びなければ再び赤字に近づく。
超硬合金の高騰
タングステンの入手難で原材料が急騰し、2026年2月に値上げした。値上げが通らなくなれば、利益率は4割を保てない。
資本の使い方
現金と有価証券が時価総額の7割近い。運用益は年0.4億円と低く、毎年の配当が利益を超える。使い道のない資金が眠り続けるリスクがある。
規模の小ささ
売上は17億円、従業員は100人余りと小さい。熟練した加工者の確保に失敗すれば、納期と品質の強みが崩れる。
今後の分かれ目
- 配当を増やす、または自社株買いを始める
- 眠る資産が株主に戻る速度が上がり、10年の価値が上がる。楽観側に寄る。
- 2027年6月期の営業利益が3.4億円の予想を超える
- 半導体向けと値上げが効き、利益率の回復が確認できる。中立の利益を上げる材料になる。
- 有価証券の積み増しが続き、配当が減る
- 資本効率が上がらず、やや悲観の筋書きに寄る。
- コレットチャックの国内売上が前年を割る
- 工程の置き換えが始まった兆しで、悲観の確率が上がる。
- 他社が出資や公開買付けを仕掛ける
- 現金が時価総額の7割近いため、少数株主に有利な条件が出る可能性はあるが、開示に兆しはなく確率は低い。
見ておくもの
- コレットチャック部門の受注高と受注残
- 海外売上の比率とプローブピン向けの動き
- 配当の水準と有価証券の残高
- 切削工具部門の利益
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PERの式と、事業の自己資本から現金を除いたROEから置き、今の株価や同業の倍率は使っていない。現金と有価証券は事業に要る運転資金と退職給付を除いて余った現金とみて、戻り方1.0で数えた。10年後の余った現金は、配当で減る分を筋書きごとに書いた。リースは該当しない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→20.85 倍・やや楽観 PER 14→19.46 倍・中立 PER 13→17.75 倍・やや悲観 PER 9→9.79 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+0.5%を足して8.0%。無借金で事業は傾いておらず、上乗せはしない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。