結論
不二越(ナチ)は、切削工具、産業用ロボット、ベアリング、油圧機器、特殊鋼まで手がける、富山生まれの総合機械メーカーだ。筆者の結論は、今の値段は割高。事業は立て直しの途上にあるが、稼ぐ力が資本コストに届かない状態が長く、10 年かけて改善しても割安には届かないと見る。
売上は 2,400 億円ほどで、営業利益率は 4% 前後にとどまる。同じ領域のSMCが 2 割を超えるのとは別の会社だ。看板のロボットは中国の自動車向けが崩れ、3 年で売上が 3 分の 2 に減った。構造改革で固定費を削り、足元の営業利益は前期比で 5 割を超えて増える見通しだが、利益率はまだ 6% 台に戻るだけだ。
値段の見方は単純だ。ROE(自己資本利益率)が資本コストを下回る会社は、ためた利益が額面どおりの価値を持たない。中立の筋書きでは 10 年後も ROE は 6% 前後で、帳簿の半分ほどの値段が妥当になる。ベアリング拠点の集約と政策保有株の売却は前向きだが、株主への還元を厚くするところまでは踏み込んでいない。総合では割高(−41%)。今の値段は、利益の回復をかなり織り込んだ値段だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安いから買う」類の会社ではない。
見るべきは、利益の質と資本の使い方だ。稼いだ利益のうち、設備投資と運転資金に消える分を引いて、株主の手元に残る利益(オーナー利益)はごく薄い。営業利益率は 4% 前後、ROE は 3% で、同じ金を預金に回した方が増える年もある。こういう事業では、利益をためて事業に投じ続けても価値は増えない。
堀も弱い。世界首位の製品がなく、値段を決める力が小さい。景気が悪くなると利益が先に消え、良くなっても取り分は限られる。
安全域は、値段が価値を十分に下回っているときにしか生まれない。PBR は 0.7 倍と帳簿より安く見えるが、帳簿の資産が資本コスト以上の稼ぎを生まないなら、1 倍割れは割安の証拠にならない。筆者は、構造改革で利益が戻りつつある点を評価しつつ、今の値段にその回復がかなり織り込まれていると見る。
見直しの条件は二つ。利益率が 8% 前後で定着するか、余剰資産の整理が株主への還元に回るかだ。どちらも確認できるまで、安全域はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は三つある。工具・工作機械・ロボットの機械工具、ベアリング・油圧機器・自動車向け油圧部品の部品、そして特殊鋼だ。売上は 2025 年 11 月期で 2,359 億円。部品が 6 割強、機械工具が 3 割強を占め、特殊鋼などは 1 割に満たない。
商品別に見ると、ベアリングが 854 億円で最も大きい。続いて油圧機器 397 億円、工具 342 億円、ロボット 253 億円、カーハイドロリクス(自動車の変速機などの油圧部品)221 億円、工作機械 140 億円の順だ。どれも世界の首位を争う規模ではなく、領域ごとに 1% 前後のシェアを持つ「幅広く浅い」会社である。
顧客の中心は自動車と建設機械だ。ロボットは自動車のボディ組立ライン、工具は自動車部品の加工、油圧機器は建設機械、カーハイドロリクスは自動車の変速機に向かう。景気と自動車の設備投資の波が、そのまま業績の波になる。海外売上は半分強で、長期ビジョンでは 6 割を目指す。
創業は 1928 年の富山で、本社機能は東京に集めた。ロボットは 1979 年に世界で初めて電動の多関節溶接ロボットを作った歴史を持つ。ただ、中国の自動車向け投資が止まり、ロボット売上は 2022 年の 385 億円から 253 億円まで落ちた。会社は今、余剰な設備と人員を整理し、ベアリングの生産を中国など 10 拠点から主にタイへ集める構造改革の最中にある。
優良さと弱いところ
優良さの評価は厳しくなる。まず、強い堀(他社がまねできない強み)が見当たらない。ベアリングは日本精工・NTN・ジェイテクトに規模で劣り、ロボットはファナックや安川電機が先を走る。工具もサンドビックやオーエスジーに及ばない。値段を自分で決める力は弱く、原材料の値上がりを転嫁できるかどうかが利益を左右する。
利益率の低さがそれを示す。営業利益率は過去 10 年で 3〜9% の間を動き、最近は 4% 前後だ。ROE の 10 年の中央値は 5.5% で、資本コストを下回り続けてきた。
良い点もある。自己資本比率は 5 割を超え、純有利子負債は自己資本の 3 分の 1 ほど。借金で首が回らなくなる会社ではない。営業利益を支払利息で割った倍率は 8 倍台で、金利が上がっても耐えられる。構造改革が効き、足元の営業利益は大きく戻っている。
筆者が気にするのは、この回復が事業の強さから来るのか、固定費を削った一度きりの効果なのかだ。後者なら、次の景気後退で利益はまた元の水準へ戻る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
事業ごとに景気の位置が違う。
ロボットは谷にいる。中国の自動車メーカーが設備投資を見直し、EV 向けの大型ロボットが売れなくなった。一方で世界の産業用ロボットの設置は 2025 年に 11% 増え、60 万台を超えた。需要がないのではなく、中国の地場メーカーが安値で取っていく構図だ。国産勢はファナック・安川電機が先に立ち、不二越は溶接など自動車向けの専門性で戦っている。
ベアリングは構造の変わり目にある。エンジン向けが電動化で細り、中国勢が汎用品を安く売る。日本精工と NTN は 2027 年 10 月の経営統合で基本合意し、国内の再編が進む。不二越は生産を主にタイへ集め、固定費を下げて耐える道を選んだ。
油圧機器は建設機械向けが中心で、国内の生産調整が一巡し、欧米と中国で需要が戻りつつある。カーハイドロリクスは自動車の生産回復で堅い。工具は北米とアセアンで伸び、国内の工作機械は需要が弱い。
10 年で見ると、自動化と人手不足は追い風だ。ただ競争は厳しく、市場が伸びても、不二越が取るシェアは広がりにくい。業界ノートが置く世界の需要の伸びは、この会社では価格競争で大半が相殺されると見る。
資本政策と M&A
資本政策は慎重で、還元に積極的とは言えない。配当は業績が落ちても減らさず、純利益に対する比率は 4〜7 割で動く。自社株買いの方針は示していない。ROE の目標や中期の数値目標も、公表資料からは確認できなかった。長期ビジョンに掲げるのは、海外売上比率 6 割と営業利益率 10% だ。
良い動きは政策保有株の縮減だ。2024 年 11 月期に 37 億円、2025 年 11 月期にも約 31 億円の売却益を出し、有価証券報告書でも資本効率の向上のために縮減を進めると明記する。ただ、売却益は構造改革の費用を埋める形で使われ、株主への上乗せ還元には向かっていない。
株主は安定している。筆頭は持株会(那智わねい持株会)で、従業員持株会、取引店の持株会、生命保険会社が続く。支配する親会社はなく、物言う株主の影も見えない。この安定は経営を守るが、資本効率を迫る力が働きにくいことでもある。
大きな買収は見当たらない。11 月末を基準日とする 1 対 5 の株式分割を決めているが、1 株の値が変わるだけで、会社の価値は変わらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造改革の効果はこれから本格的に出る。2026 年 11 月期は営業利益が前期比で 5 割以上伸びる見通しで、第 3 四半期までの累計はすでに 7 割増えた。ベアリングを主にタイへ集めれば、中国の過剰設備と重い固定費から抜けられる。ロボットは中国の自動車投資が谷にあるだけで、世界の設置台数は増え続けている。インドと北米は不二越が狙う市場で、ここで自動車と建機の設備投資が戻れば稼働率が上がり、利益率は 8% 台へ届く。
工具は北米とアセアンで売上が伸び、機械工具の中で最も利益が出る。油圧機器も建設機械向けが欧米と中国で戻り始めた。固定費を削った後の会社は、売上が伸びた分の利益が従来より厚く残る。
株主還元の余地も大きい。自己資本比率は 5 割を超え、借金は軽い。政策保有株の売却を続け、余剰資金で還元を増やせば ROE は上がる。PBR が 0.7 倍の会社は、資本効率を問う東証の流れの中で、改革の候補に挙がりやすい。10 年のうちに、株式公開買付け(TOB)の対象になる可能性も残る。
慎重な見方
回復は固定費削減の一度きりの効果で、稼ぐ力そのものは戻っていない。営業利益率は 10 年で一度も 9% を超えず、ROE の中央値は 5.5% と資本コストを下回り続けてきた。2026 年の予想でも ROE は 4% 台にとどまる。構造改革のたびに特別損失が出ており、費用の出ない年が見えてこない。
事業の競争力にも陰りがある。ロボットは中国の地場勢が安く売り、2022 年の 385 億円から 253 億円に縮んだ。ベアリングは電動化でエンジン向けが細り、日本精工と NTN の統合で相手は大きくなる。タイへの集約は中国依存を減らすが、規模で勝つ策ではない。
還元にも期待しにくい。持株会と取引先の株主が厚く、資本効率を迫る力が弱い。ROE が資本コストを下回る会社が利益をためるほど、ためた利益の価値は額面を割る。今の PBR 0.7 倍は、むしろ回復を織り込んだ値段だ。景気が悪化すれば、4% 前後の営業利益率はすぐ 2〜3% に落ちる。
どちらに重みを置いたか
事業の回復については強気の見方に分がある。足元の利益は確かに戻っている。ただ、値段の面では慎重な見方が重い。回復が続いて営業利益率が 6% 台になる中立でも、ROE は 6% 前後で資本コストに届かず、利益に掛けられる倍率は低いままだ。強気の筋書きが実現しても、割り引いた価値は今の時価総額の 1.3 倍に届かない。確率は中立に厚く置き、やや悲観を楽観より重くした。結論は割高。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/11 期)
確率で加重した株価時価総額 6,574 円1,449 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,592 円351 億円)。 今の値に割り戻すと 4,047 円892 億円、今との差 −23.1%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 13,035 円2,872 億円 | 2,814 円620 億円 | +201.3% | +11.7% | 1,268 円279 億円 |
| やや楽観 | 20% | 10,140 円2,234 億円 | 2,333 円514 億円 | +137.1% | +9.0% | 2,495 円550 億円 |
| 中立 | 34% | 7,720 円1,701 億円 | 1,756 円387 億円 | +80.2% | +6.1% | 3,222 円710 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,668 円588 億円 | 958 円211 億円 | −31.1% | −3.7% | 943 円208 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,541 円340 億円 | 454 円100 億円 | −62.1% | −9.2% | 239 円53 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,574 円1,449 億円 | 1,592 円351 億円 | +55.3% | +4.5% | 8,166 円1,799 億円 |
今の株価時価総額 5,260 円1,159 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 構造改革が定着し、利益率が 8% を超える 利益 223 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 13,035 円2,872 億円
構造改革が実を結び、ベアリングの生産集約で固定費の重い構造から抜ける。ロボットは中国の自動車投資が戻り、インドと北米で新しい顧客も増えて、売上が大きく伸びる時期を挟む。工具と工作機械は自動車の電動化に伴う新しい部品の加工需要を取り込む。油圧機器も建設機械の更新需要で伸びる。全社の営業利益率は 8% 台に上がり、長期ビジョンの 10% には届かないが、過去 10 年の最高 8.8% に近づく。純利益は 220 億円ほどで、ROE は 9% 台と資本コストを超える。政策保有株の売却で得た資金は還元に回り、配当性向は 45% で安定する。「幅広く浅い」会社から、「得意な領域で稼ぐ」会社に変わる。
- 工具:数量 364(切削工具の世界市場(億ドル、2025 年の推計 280 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.72(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 625 億円・営業利益 69 億円。営業利益率 11.0%
- 工作機械:数量 1,040(工作機械の世界市場(億ドル、概算 800 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 25.8%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 268 億円・営業利益 27 億円。営業利益率 10.0%
- ロボット:数量 316(産業用ロボットの世界市場(億ドル、2025 年の推計 186 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.82(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 575 億円・営業利益 52 億円。営業利益率 9.0%
- ベアリング:数量 2,040(ベアリングの世界市場(億ドル、2025 年 1,457 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 72.3%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,474 億円・営業利益 103 億円。営業利益率 7.0%
- 油圧機器・カーハイドロリクス:数量 563(油圧機器の世界市場(億ドル、2025 年の推計 421〜533 億ドルの中ほど 450 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.84(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,036 億円・営業利益 88 億円。営業利益率 8.5%
- 特殊鋼・その他:数量 50.0(国内の特殊鋼の対象市場(億ドル、推定 50 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 4.08(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 204 億円・営業利益 12 億円。営業利益率 6.0%
倍率:ROE 9.1%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 8.25% + 残る割合 1/3 ×(9.1 − 8.75)= 8.9%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 11.6 倍。ROE が k をわずかに上回る筋書きで、景気の振れが残るため上限の 10 割に近い 12.44 倍に置いた。
確率:構造改革の成果、中国のロボット需要の戻り、油圧と工具の伸びが 10 年のうちに重なる必要がある。ROE が資本コストを超えるまで上がるのは過去 10 年で一度もなく、確度は高くない。
やや楽観 20% 回復は定着するが、資本効率は道半ば 利益 176 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 10,140 円2,234 億円
構造改革の効果が残り、営業利益率は 7% 台半ばまで上がる。ベアリングはタイ集約で黒字が安定し、ロボットは中国の底打ちとインドの立ち上がりで緩やかに戻る。ただ、各分野でシェアは小さいまま、新しい投資の稼ぎは資本コストに届かない。純利益は 180 億円ほどで、ROE は 7% 台にとどまる。還元は少しずつ増えるが、自己資本は着実にたまる。事業としては立ち直った会社だが、資本の使い方は変わらず、10 年たっても資本コストに届かない。市場の評価は「改善した低収益企業」にとどまる。バリュー投資の目で見れば、数字は良くなっても、持ち続けて資産が増えていく会社にはまだなっていない。10 年後の自己資本はたまっているが、その使い道が変わらないことが、倍率の伸びを止める。
- 工具:数量 353(切削工具の世界市場(億ドル、2025 年の推計 280 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.67(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 588 億円・営業利益 62 億円。営業利益率 10.5%
- 工作機械:数量 1,000(工作機械の世界市場(億ドル、概算 800 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 24.6%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 246 億円・営業利益 23 億円。営業利益率 9.5%
- ロボット:数量 294(産業用ロボットの世界市場(億ドル、2025 年の推計 186 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.64(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 481 億円・営業利益 39 億円。営業利益率 8.0%
- ベアリング:数量 1,952(ベアリングの世界市場(億ドル、2025 年 1,457 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 66.8%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,304 億円・営業利益 78 億円。営業利益率 6.0%
- 油圧機器・カーハイドロリクス:数量 540(油圧機器の世界市場(億ドル、2025 年の推計 421〜533 億ドルの中ほど 450 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.77(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 955 億円・営業利益 72 億円。営業利益率 7.5%
- 特殊鋼・その他:数量 48.5(国内の特殊鋼の対象市場(億ドル、推定 50 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 4.08(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 198 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 176 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,133 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:構造改革の効果が残り、ベアリングとロボットが緩やかに戻るという、実現性が比較的高い組み合わせ。ただ過去 10 年の利益率の天井は 9% 弱で、これ以上は重くしない。
中立 34% 利益は戻るが、稼ぐ力は資本コストに届かない 利益 132 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 7,720 円1,701 億円
構造改革の効果で営業利益率は 6% 台に戻る。ロボットは中国で地場勢にシェアを譲り、売上は 400 億円弱へ戻るにとどまる。ベアリングは電動化と中国勢の安値で数量が伸びず、タイ集約で採算は 5% 近くまで上がる。油圧機器と工具が稼ぎの中心になる。全社の売上は 3,400 億円前後で、物価で名目は増えるが実質はほぼ横ばいだ。純利益は 130 億円ほどで、ROE は 6% 前後。資本コストを下回るため、利益をためるほど価値は目減りする。配当は純利益の 4 割強を保つ。優良とは言えないが、潰れもしない、凡庸な機械メーカーの 10 年になる。
- 工具:数量 342(切削工具の世界市場(億ドル、2025 年の推計 280 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.62(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 553 億円・営業利益 53 億円。営業利益率 9.5%
- 工作機械:数量 956(工作機械の世界市場(億ドル、概算 800 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 23.5%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 224 億円・営業利益 19 億円。営業利益率 8.5%
- ロボット:数量 275(産業用ロボットの世界市場(億ドル、2025 年の推計 186 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 141.9%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 391 億円・営業利益 25 億円。営業利益率 6.5%
- ベアリング:数量 1,865(ベアリングの世界市場(億ドル、2025 年 1,457 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 61.3%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,143 億円・営業利益 55 億円。営業利益率 4.8%
- 油圧機器・カーハイドロリクス:数量 522(油圧機器の世界市場(億ドル、2025 年の推計 421〜533 億ドルの中ほど 450 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.69(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 884 億円・営業利益 58 億円。営業利益率 6.5%
- 特殊鋼・その他:数量 47.5(国内の特殊鋼の対象市場(億ドル、推定 50 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 4.08(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 194 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,600 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:構造改革で利益率は戻るが、堀が弱く、ロボットとベアリングでシェアを譲るという、同じ領域の汎用部品メーカーの実績を踏まえた中心の筋書き。
やや悲観 26% 利益率が 4% 前後で足踏みし、競争で押される 利益 53 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 2,668 円588 億円
構造改革の効果が価格競争に飲み込まれ、営業利益率は 4% 前後に戻る。ロボットは中国の地場勢に押されて採算がほぼ消え、ベアリングも中国勢と統合後の日本精工・NTN の間で値下げを迫られる。工具は北米で伸びるが、国内の工作機械は弱いままだ。売上は名目で 2,700 億円弱にとどまる。純利益は 50 億円台で、ROE は 3% に届かない。配当は業績に関係なく維持され、純利益の 4 割ほどに当たる。資本コストを大きく下回る状態が続き、市場の評価も低いままになる。構造改革の話は「また次の改革」として繰り返され、経営は守りの姿勢を崩さない。株主の側から見れば、10 年たっても何も起きなかったという結末である。
- 工具:数量 308(切削工具の世界市場(億ドル、2025 年の推計 280 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.52(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 468 億円・営業利益 33 億円。営業利益率 7.0%
- 工作機械:数量 840(工作機械の世界市場(億ドル、概算 800 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 21.1%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 177 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 5.0%
- ロボット:数量 233(産業用ロボットの世界市場(億ドル、2025 年の推計 186 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 112.8%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 262 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 2.5%
- ベアリング:数量 1,676(ベアリングの世界市場(億ドル、2025 年 1,457 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 51.1%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 856 億円・営業利益 17 億円。営業利益率 2.0%
- 油圧機器・カーハイドロリクス:数量 473(油圧機器の世界市場(億ドル、2025 年の推計 421〜533 億ドルの中ほど 450 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 1.57(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 740 億円・営業利益 33 億円。営業利益率 4.5%
- 特殊鋼・その他:数量 42.5(国内の特殊鋼の対象市場(億ドル、推定 50 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 3.88(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 165 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 3.0%
倍率:ROE 2.6% が k 8.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 11.4 倍まで。利益率が 4% 前後と薄く稼ぐ力も不安定なので、上限の 7 割の 8.0 倍に置いた。
確率:構造改革の効果が価格競争に消え、ロボットとベアリングでシェアを大きく失うという、事業の弱さがそのまま出る筋書き。堀が弱い会社なので楽観より重く置いた。
悲観 12% ロボットとベアリングで構造的に負け、普通の部品屋になる 利益 −30 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,541 円340 億円
中国の地場勢が溶接ロボットでも品質で追いつき、不二越のロボットは自動車向けの専用品に縮む。ベアリングはエンジン向けが電動化で急速に細り、新しい用途には出遅れる。ロボットとベアリングの 2 事業は赤字になり、全社の営業利益はほぼゼロ。工具・油圧・特殊鋼の稼ぎで穴を埋めるのが精一杯で、売上は 1,800 億円ほどまで縮む。構造改革の費用がかさみ、純利益は赤字になる。配当は維持できず削られる。稼ぐ力はほとんど消え、市場は会社を資産の価値で測るようになる。ベアリングとロボットを整理する選択肢もあるが、その時点では売却価格も低く、損失を確定させるだけの形になる。残るのは、工具と油圧を軸にした小さな会社だ。
- 工具:数量 280(切削工具の世界市場(億ドル、2025 年の推計 280 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 130.8%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 366 億円・営業利益 13 億円。営業利益率 3.5%
- 工作機械:数量 720(工作機械の世界市場(億ドル、概算 800 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 18.8%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 135 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
- ロボット:数量 205(産業用ロボットの世界市場(億ドル、2025 年の推計 186 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 81.9%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 168 億円・営業利益 −5 億円。営業利益率 -3.0%
- ベアリング:数量 1,457(ベアリングの世界市場(億ドル、2025 年 1,457 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 35.4%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 515 億円・営業利益 −15 億円。営業利益率 -3.0%
- 油圧機器・カーハイドロリクス:数量 405(油圧機器の世界市場(億ドル、2025 年の推計 421〜533 億ドルの中ほど 450 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 119.7%(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 485 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 0.5%
- 特殊鋼・その他:数量 40.0(国内の特殊鋼の対象市場(億ドル、推定 50 億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 3.68(実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 147 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:稼ぐ力が消えて赤字になる構造的な負け。稼ぐ力ではなく、売れる資産を処分して負債を返した残りを床にした。約 340 億円は今の自己資本の約 2 割。PBR はこの床を今の自己資本で割った値。
確率:中国の地場勢の技術向上とエンジン向け軸受の縮小が重なる負け筋は、10 年という期間では十分ありうる。量の縮みと値下げが同時に来る筋書きとして 12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工具
ドリル・エンドミル・タップ・ホブ(歯車の刃物)など、金属を削る切削工具。自動車の部品加工が主な用途で、北米とアセアンで伸びている。
| 数量切削工具の世界市場(億ドル、2025 年の推計 280 億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 280 | 122.0% | 342 | 29 |
| 10 年後 中立 | 342 | 1.62 | 553 | 53 |
取り方:会社は商品別の売上(工具 341.6 億円)を開示する。市場は調査会社の推計 231〜317 億ドルの中ほどの 280 億ドルとして、市場規模 × シェアで表した。今のシェアは約 0.8%。営業利益は機械工具の開示(42.8 億円)を工具 8.5%・工作機械 6.8%・ロボット 1.7% に推定して割り振った。中立で価格が物価ほど上がらないのは、シェアをわずかに譲る(0.81% → 0.80%)と置いたため。
工作機械
歯車加工機・研削盤などの工作機械。国内の自動車・産業機械向けが中心で、国内需要の波を受ける。
| 数量工作機械の世界市場(億ドル、概算 800 億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 800 | 17.5% | 140 | 10 |
| 10 年後 中立 | 956 | 23.5% | 224 | 19 |
取り方:会社の開示は工作機械 140.0 億円。世界の生産額を約 800 億ドルと概算し、市場規模 × シェアで表した(市場額は出典を確認できない推定で、シェアは約 0.12%)。利益率は機械工具の開示から工具より低い 6.8% と推定した。
ロボット
自動車のボディ組立で使うスポット溶接ロボットを中心に、アーク溶接・ハンドリング・パレタイジング(積み付け)ロボットを作る。
| 数量産業用ロボットの世界市場(億ドル、2025 年の推計 186 億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 186 | 135.8% | 253 | 4 |
| 10 年後 中立 | 275 | 141.9% | 391 | 25 |
取り方:会社の開示はロボット 252.5 億円(2022 年は 385 億円)。市場額は二次情報の 186 億ドルで、IFR の設置台数(2025 年 60.3 万台)と整合する規模。シェアは約 0.9%。稼働率の悪化で利益はほぼ出ていないと見て 1.7% と推定した。中立で 10 年後の価格が物価(1.34 倍)を下回るのは、中国の地場勢などにシェアを譲る(約 0.9% → 0.7%)と置いたため。
ベアリング
小型の玉軸受・ころ軸受。産業機械や自動車向けに、アセアンの市販(補修)向けも売る。10 拠点をタイへ集約中。
| 数量ベアリングの世界市場(億ドル、2025 年 1,457 億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 1,457 | 58.6% | 854 | 17 |
| 10 年後 中立 | 1,865 | 61.3% | 1,143 | 55 |
取り方:会社の開示はベアリング 854.2 億円。市場は業種ノートの 1,457 億ドルで、シェアは約 0.39%。部品事業の営業利益(約 50 億円)を油圧と分け、構造改革の途上で薄い 2.0% と推定した。中立で価格が物価ほど上がらないのは、エンジン向けの縮小と中国勢の安値でシェアを譲る(約 0.39% → 0.30%)と置いたため。
油圧機器・カーハイドロリクス
建設機械向けの油圧ポンプ・バルブと、自動車の変速機などに使うカーハイドロリクス(油圧部品)。
| 数量油圧機器の世界市場(億ドル、2025 年の推計 421〜533 億ドルの中ほど 450 億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 450 | 137.4% | 618 | 33 |
| 10 年後 中立 | 522 | 1.69 | 884 | 58 |
取り方:会社の開示は油圧機器 397.4 億円とカーハイドロリクス 220.9 億円の合計 618.3 億円。市場は調査会社の中ほどの 450 億ドルとし、シェアは約 0.9%。国内建機の生産調整が一巡し、利益率は部品事業の中で高い 5.3% と推定した。中立で価格が物価ほど上がらないのは、建機向けで競合に少しシェアを譲る(約 0.92% → 0.85%)と置いたため。
特殊鋼・その他
工具鋼・高速度鋼などの特殊鋼を、グループの工具やベアリングと外部の両方へ売る。富山の圧延会社が担う。
| 数量国内の特殊鋼の対象市場(億ドル、推定 50 億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 億ドルあたりの当社売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 50.0 | 3.05 | 152 | 5 |
| 10 年後 中立 | 47.5 | 4.08 | 194 | 9 |
取り方:会社の開示は特殊鋼 131.4 億円とその他 21.0 億円の合計 152.4 億円。対象市場の 50 億ドルは根拠の弱い推定で、シェアは約 2%(利益への影響は小さい)。その他の事業の営業利益 5.0 億円をそのまま置いた。
リスクと懸念
構造改革の効果が一度きりで終わる
固定費の削減とベアリングの集約で営業利益は戻っているが、売上が伸びない中での利益改善だ。効果が出尽くした後に利益率がどこで止まるかが読めない。構造改革のたびに特別損失も出ている。
中国のロボット需要と地場勢
ロボット売上は中国の自動車向けの落ち込みで 2022 年の 385 億円から 253 億円に縮んだ。中国は世界の設置の 6 割を占めるが、地場メーカーが安値で取る構図が続くと、需要が戻っても不二越の取り分は戻らない。
ベアリングの電動化と業界再編
エンジン向けの軸受は電動化で細る。日本精工と NTN が統合すれば、国内の競合は大きくなる。タイへの集約が計画どおり進まなければ、構造改革の費用だけが残る。
自動車と建設機械の設備投資の波
主な顧客が自動車と建設機械に偏る。設備投資が止まると、ロボット・油圧・工具が同時に落ちる。過去 10 年に営業利益率は 3% まで下がり、2009 年には赤字になった。
資本効率が改善しない
ROE が資本コストを下回る状態が長い。持株会と取引先が厚い株主構成で、還元や資本効率を迫る圧力が弱い。政策保有株の売却益が還元に回らないと、価値は増えない。
原材料高の転嫁
特殊鋼や素材の値上がりを販売価格に転嫁できるかで、利益率が決まる。2026 年 11 月期の第 1 四半期も、機械工具で原材料高が利益を押し下げた。
今後の分かれ目
- ベアリングのタイ集約が予定どおり終わり、部品事業の利益率が 5% を超えたら
- 構造改革が一度きりでなかったとみて、やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- ロボットの受注が中国以外(インド・北米)で明確に伸び始めたら
- ロボットの底打ちとみて、中立〜やや楽観に重みを移す。逆に中国の地場勢に主要顧客を取られるなら、やや悲観に寄せる。
- 政策保有株の売却資金で、自社株買いや大幅な増配が発表されたら
- 資本効率の改善が動き出したとみて、楽観側の確率を上げる。TOB や再編の話が出た場合も同様に見直す。
- 自動車と建設機械の設備投資が減速に転じたら
- ロボット・油圧・工具が同時に落ちるため、やや悲観〜悲観に重みを移す。
- 日本精工と NTN の統合後に、汎用ベアリングで値下げ競争が強まったら
- ベアリングの利益率が改善せず、中立の利益率を下げる。やや悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が 2 年続けて 8% 前後で定着したら
- 事業の稼ぐ力が上がったとみて、ROE が資本コストを超える楽観に重みを移す。
見ておくもの
- 部品事業(ベアリング・油圧)の営業利益率と、タイ集約の進み具合
- ロボットの売上と受注(中国・インド・北米の別)
- 政策保有株の売却額と、その資金の使い道(還元か投資か)
- 自動車・建設機械の設備投資と、工具・油圧の受注
- 営業利益率が 6% を超えて定着するか、ROE が資本コストに近づくか
倍率と資本コストの決め方
売上は商品別に、実質の市場規模 × シェアと物価並みの価格で積み、利益率は事業ごとの構造から置いた。倍率は ROE が k(基本 7.5% + quality +1.25% = 8.75%)以下の筋書きでは 1÷k を上限に、その 7〜9 割で置いた。楽観だけ ROE が k を上回るため正当化 PER の式を使った。悲観は稼ぐ力でなく、売れる資産から負債を返した残りの床で測った。今の株価・PER・PBR や過去の倍率は根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.44 倍・やや楽観 PER 10.29→12.12 倍・中立 PER 9.14→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.25% = 8.75%。ガバナンスや回復の持続性は k に足さず、筋書きと確率で表す。同じ領域ではSMCの 7.8% より高く、NTN・ジェイテクト(8.8%)と同じ水準。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.25%。