結論
ソディックは放電加工機を中核に、射出成形機や食品機械も手がける機械メーカーだ。筆者の結論は「やや割高」である。足元の放電加工機の需要は本物だが、10年を通して見ると資本効率の低さが残る。
今の好調はAIデータセンター向けの光通信部品の金型加工が引っ張っている。放電加工機の受注残は前の期末の約1.5倍に積み上がり、生産が追いつかない。会社は2026年の利益予想を上方修正した。
ただ、ソディックは10年のうち半分近くで自己資本利益率(ROE)が資本コストに届かなかった会社だ。赤字の期も3回ある。好況の利益は高いが、続けば例外と見るのが堅い。
もう1つ見落とせない点がある。2025年にファンドへ発行した転換社債と新株予約権だ。株価が上がった今は、転換で株数がおよそ2割増える。今の時価総額だけを見て割安と判断すると、この分を見落とす。
本業の強みは、超精密領域の放電加工機にある。他社がまねしにくい強みで、価格も保ちやすい。この強みで利益率が改善し続けるなら、見方は上へ動く。ただ、中華圏への依存が高い点と産業機械の収益性の低さは、10年の見方を重くする。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、ソディックの事業の中身はわかりやすい。精密な加工機を作り、保守で長く関わる。超精密機の領域に強みがあり、当面の需要も強い。
ただ、この会社を長く持ちたいかと言われれば、筆者は迷う。理由は資本の使い方だ。ROEが資本コストに届かない年が長く続き、現金と在庫を抱えてきた。好況の利益を、株主のために使ってきた実績が薄い。
転換社債も、素直には喜べない。資金調達の中身は成長投資だが、株価が上がると株数が増え、既存株主の持ち分は薄まる。調達した資金で稼ぐ力が上がらなければ、株主の損になる。
安全域の面では、純現金と自己資本比率58%が支えになる。悲観の局面でも、会社が傾く可能性は低い。ただ、安全域は払う値段との関係で決まる。好況の利益に高い倍率をかけて払うのは、避けたい。
見たいのは、放電加工機の好況が終わった後の利益だ。そこで、利益率が10%近くに定着するかどうかで、会社の質ははっきりする。
何で稼ぐ会社か
ソディックの稼ぎ方は、金属や金型に精密な穴や形を加工する機械を売り、保守で長く関わることだ。売上の約8割は工作機械事業。中心は放電加工機で、電気の火花で金属を溶かして削る。硬い材料や複雑な形に強く、金型づくりに欠かせない。
放電加工機のほかに、マシニングセンタ(切削加工機)、金属3Dプリンタ、レーザー加工機も持つ。金属3Dプリンタとレーザー加工機は、10年先の柱に育てたい新規領域だ。まだ全体の利益に効く規模ではない。
次に大きいのが産業機械事業で、中身は射出成形機だ。樹脂の部品を作る機械で、中国・韓国の需要が強い。汎用機は競争が厳しく、利益率は低い。高付加価値機へ寄せる改革が進行中で、厦門の工場は生産を止め、国内に集約している。
食品機械は麺の製造プラントや包装米飯の装置で、売上は小さいが利益率は比較的よい。その他事業には、成形品、リニアモータ応用品、セラミックス、LED照明が入る。
売上の地域は、中華圏が約3割、日本が約3割弱、残りがアジア・米州・欧州だ。海外比率は7割を超える。会社は脱中国依存を掲げ、欧米とアジアでの販売会社やテクニカルセンターの設置を進めている。
2025年には、事業提携の相手として、プライベート・エクイティ(未上場株への投資会社)のアドバンテッジパートナーズ系を選んだ。販売管理、在庫管理、M&Aなどの支援を受ける。社長も同年に代わった。
優良さと弱いところ
ソディックの強みは超精密な放電加工機にある。主力機のEXC100L+は、光コネクタの金型加工という最も精度を問われる領域で使われる。需要が増えても競合がすぐ追いつけない領域で、リードタイムは1年を超える機種もある。この領域の価格は、筆者は物価並みに上がると見る。
一方、全体としての稼ぐ力は弱かった。営業利益率は過去10年で3〜12%を行き来し、2023年は営業赤字になった。ファナックや三菱電機などと競合する放電加工機でも、価格は市場に左右されやすい。
資本効率は課題だ。ROEは過去10年の中央値で6%台と、資本コストを下回る。自己資本は900億円を超え、厚い現金と在庫を抱える。使い切れていない資本が多いということだ。
経営は変わり始めている。2025年にファンドの経営支援を受け入れ、在庫管理や販売管理を見直す。総還元性向70%以上という方針も掲げた。この方針が守られるなら、資本の使い方は確実に改善する。ただ、守られた実績がまだない。
産業機械の利益率の低さも、全体の質を引き下げている。成形機は中国メーカーとの競争が厳しい。高付加価値機にどこまで移れるか、成否が見えるのは来年以降になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
放電加工機の市場は、全体では大きく伸びない。会社自身が成長は限定的と述べる。ただ、光通信とAIデータセンターに関わる金型だけは別で、ここに需要が集中している。
データセンターの内部の光ケーブルは、コネクタの多心化が進む。12心から24心、48心と増えるほど、金型の精度への要求は高くなる。ソディックの超精密機は、この領域で優位に立つ。会社は、少なくとも今後数年は成長が続くと話す。
需要は中華圏が中心だ。金型市場は中国が世界最大で、設備投資も中華圏に集まる。このため売上の中国比率は上がっている。地政学の変化や補助金の動きで、中国向けは大きく振れうる。
競合は、ファナック、三菱電機、牧野フライス製作所、西部電機、GFマシニングソリューションズなどだ。会社はシェアに大きな変化はないとみている。牧野フライスにはニデックのTOBの報道もあり、業界の再編が進む可能性がある。
工作機械は、受注の景気変動が大きい業種だ。ソディックも2009年と2023年に営業赤字を出した。今回はAI投資という構造的な追い風があるが、設備投資の山は必ず来る。
産業機械の成形機は成熟した市場で、競争が厳しい。食品機械は小さいが安定している。金属3Dプリンタは世界で多くの企業が競う。ソディックが勝てるかどうかは、これからの実績で見るしかない。
資本政策と M&A
資本政策では、2025年8月の資金調達が大きい。アドバンテッジ系のファンドに、転換社債80億円と新株予約権20億円分を発行した。転換価額と行使価額は同じで、今の株価の約6割の水準だ。利率は0%、満期は5年だ。
この資金は、脱中国依存30億円、M&A40億円、成長投資30億円に使う予定だ。M&Aの対象は、レーザー加工機と食品機械が中心になる。
注意したいのは、希薄化だ。株価が転換価額の1.2倍を超える間は、転換と行使が可能になる。今の株価はそれを上回るので、転換が進めば株数は約2割増える。今の時価総額だけで割安を語れない理由だ。
還元は、総還元性向70%以上を中期経営計画の4年間の方針とする。会社は、株価水準やキャッシュを見て、必要なら追加の資本政策も検討すると述べる。ただし、この資金調達でM&Aに最大の資金を回す計画でもある。
買収される側になる可能性も考えておく。提携先のファンドが、転換後に大きな株主になりうる。10年のうちに、再編や非上場化といった動きが起きる余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
放電加工機は、データセンター向けの光コネクタ金型で、代わりが利かない機械になりつつある。受注残は前の期末の約1.5倍に積み上がり、生産能力を上回る受注が続く。主力機は月産2台から、2026年下期に4〜5台、2027年以降は5〜10台へ増産する計画だ。
ここで増えるのは、台数と、機械の単価の両方だ。多心化が進むほど要求精度は上がり、超精密機の価格は物価を超えて上がる。生産設備への投資が実を結べば、利益率は過去の最高水準に戻り、さらにそれを超える余地もある。
産業機械の受注も前の期末の約4倍になり、高付加価値機への移行が進んでいる。高付加価値化が進めば、利益率は来年以降に改善する。産業機械の低収益という重しは外れる。
財務は純現金で、ファンドの資金も入る。販売会社の設置やM&Aで、欧米・アジアの売上が増え、中国依存は薄まる。金属3Dプリンタとレーザー加工機が次の柱になれば、10年先の事業の厚みは今とは別物になる。
中期経営計画の営業利益100億円は、2026年の予想がすでに近い水準に入ったことで、射程に入った。総還元性向70%も実現すれば、自己資本は膨らまず、ROEは資本コストを上回る。
慎重な見方
好調な利益の多くは、AIデータセンター投資という1つの波に乗ったものだ。投資ブームは何度も一服してきた。波が引けば、受注残は急に減り、設備を増やした分だけ固定費が重くなる。
ソディックは、過去10年のうち半分近くで、ROEが資本コストを下回った。2009年、2019〜2020年、2023年と、好況の次に必ず不況を迎えている。営業利益率は3〜12%を行き来する会社で、今の10%近い水準が続く保証はない。
売上の約3割が中華圏で、その比率は上がっている。補助金で国産化が進めば、中国メーカーの追い上げは放電加工機にも及ぶ。ファナックや三菱電機のような大手と、価格で競う場面も避けられない。
産業機械は汎用機の競争が厳しく、利益率が上がらない。AltForm社の赤字も続く。M&Aは、ファンドの支援を受けて進めるが、買収の成否は読めず、のれんの損失を抱える恐れがある。
最後に、希薄化だ。株価が高い今、転換社債と新株予約権が行使されれば、株数は約2割増える。利益が同じなら、1株あたりの価値は下がる。調達した資金が稼ぐ力に変わらなければ、既存の株主は損をする。
どちらに重みを置いたか
放電加工機の強さと、足元の受注残の厚さは本物だ。ただ、10年で見ると、利益率が過去の幅から大きく上へ動く証拠はまだ薄い。資本効率の低さと、約2割の希薄化も、やや割高と判断した理由だ。
中立では、営業利益率が9%近くに上がり、ROEは資本コストに届かない水準にとどまると置いた。好調側と不調側は、ほぼ均等に配った。ただ、過去に景気で大きく崩れた実績が重く、不調側にやや厚めに確率を置いた。
結果として、10年の本質価値は今の時価総額を大きく下回り、総合はやや割高と出た。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,902 円951 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 739 円369 億円)。 今の値に割り戻すと 1,333 円666 億円、今との差 −8.3%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,914 円1,956 億円 | 1,201 円600 億円 | +252.0% | +13.4% | 511 円256 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,518 円1,258 億円 | 940 円470 億円 | +138.0% | +9.1% | 761 円380 億円 |
| 中立 | 34% | 2,000 円1,000 億円 | 840 円420 億円 | +95.5% | +6.9% | 966 円483 億円 |
| やや悲観 | 21% | 885 円443 億円 | 528 円264 億円 | −2.7% | −0.3% | 297 円148 億円 |
| 悲観 | 13% | 700 円350 億円 | 120 円60 億円 | −43.5% | −5.6% | 107 円53 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,902 円951 億円 | 739 円369 億円 | +81.8% | +6.2% | 2,642 円1,320 億円 |
今の株価時価総額 1,453 円726 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 好調側:AI光通信の金型需要が10年続き、超精密機が事業の柱になる 利益 150 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 3,914 円1,956 億円
光コネクタの多心化とAIデータセンターの投資が10年にわたり続く。ソディックの超精密放電加工機は、この分野で他社が追いつけない地位を保つ。主力機の増産計画は予定どおり進み、台数が5割増える。単価も、精度の要求が上がるため物価を少し上回って伸びる。
金属3Dプリンタとレーザー加工機は新しい柱に育ち、成形機も高付加価値機へ移る。欧米とアジアの販売網が整い、中華圏への依存は薄まる。営業利益率は10年で13%近くまで上がり、会社が掲げる目標を超える。
還元は手厚く続くが、利益の伸びが大きいので自己資本も増え、ROEは資本コストを少し上回る程度にとどまる。転換社債は全て株式に変わり、株数は約2割増える。
- 工作機械事業(放電加工機・マシニングセンタ・金属3Dプリンタ・レーザー加工機):数量 3,498(台数換算(平均単価の推定で割った台数))× 価格 3,500(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 1,224 億円・営業利益 208 億円。数量 1.50 倍、単価 1.40 倍
- 産業機械事業(射出成形機):数量 878(成形機の台数(推定))× 価格 2,070(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 16 億円。数量 1.35 倍、単価 1.38 倍
- 食品機械事業(麺製造プラント・製麺機・包装米飯装置):数量 420(プラント・装置の件数(推定))× 価格 2,680(1件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 16 億円。数量 1.20 倍、単価 1.34 倍
- その他事業(成形品・リニアモータ応用品・セラミックス・LED照明):数量 62.0(実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 134(名目の価格指数(今=100))→ 売上 83 億円・営業利益 3 億円。数量 1.10 倍、単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 150 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13.04 倍、時価総額 1,956 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI・光通信の投資が長く続き、増産投資が実を結び、海外販売網の整備も成功する必要がある。連続して当たる確度は高くないので1割にとどめた。
やや楽観 22% やや好調側:需要は続くが、競争で利益率は10%程度までしか伸びない 利益 107 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,518 円1,258 億円
AI・光通信向けの需要は今後数年強く、その後も緩やかに続く。主力機の生産能力は広がり、台数は3割強増える。単価は物価並みで、一部の超精密機が少し上乗せになる。
産業機械は、高付加価値機へ移ることで利益が出始める。ただ、ファナックや三菱電機が追い上げ、放電加工機の利益率は過去のピークまでは戻らない。営業利益率は10%程度で、会社の目標をおおむね達成する水準になる。
転換社債は転換され、株数が増える。還元の方針は守られるが、ROEは資本コストにわずかに届かない。会社は、成長投資と還元の両立に成功した、という評価にはなるが、資本効率の面では、まだ及第点とは言えない10年になる。
- 工作機械事業(放電加工機・マシニングセンタ・金属3Dプリンタ・レーザー加工機):数量 3,148(台数換算(平均単価の推定で割った台数))× 価格 3,425(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 1,078 億円・営業利益 156 億円。数量 1.35 倍、単価 1.37 倍
- 産業機械事業(射出成形機):数量 780(成形機の台数(推定))× 価格 2,025(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 158 億円・営業利益 12 億円。数量 1.20 倍、単価 1.35 倍
- 食品機械事業(麺製造プラント・製麺機・包装米飯装置):数量 392(プラント・装置の件数(推定))× 価格 2,680(1件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 105 億円・営業利益 14 億円。数量 1.12 倍、単価 1.34 倍
- その他事業(成形品・リニアモータ応用品・セラミックス・LED照明):数量 56.0(実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 134(名目の価格指数(今=100))→ 売上 75 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍、単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 107 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,258 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向け需要は数年続くが、10年を通しての持続は競合や景気で削られる。会社の計画に近い成長を、やや強気の確率として置いた。
中立 34% 中立:好調は数年続き、利益率は9%近くで安定。ROEは資本コストに届かない 利益 85 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,000 円1,000 億円
AI向けの特需は数年で落ち着く。その後は、工作機械の需要が緩やかに伸びる。台数は10年で2割強の増加にとどまり、単価は物価並みに上がる。
超精密領域の強みは保たれ、営業利益率は9%近くへ上がる。ただ、成形機は競争の中で伸び悩み、金属3Dプリンタとレーザー加工機は、まだ利益の柱とは言えない。中華圏への依存は残り、脱中国依存の進展は限られる。
転換社債は転換されて株数が2割ほど増える。還元は利益の6割強を保つが、ROEは7%弱と資本コストには届かない。普通に堅いが、資本をうまく使えない会社のままという姿だ。
- 工作機械事業(放電加工機・マシニングセンタ・金属3Dプリンタ・レーザー加工機):数量 2,845(台数換算(平均単価の推定で割った台数))× 価格 3,350(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 953 億円・営業利益 129 億円。数量 1.22 倍、単価 1.34 倍
- 産業機械事業(射出成形機):数量 747(成形機の台数(推定))× 価格 2,010(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 11 億円。数量 1.15 倍、単価 1.34 倍
- 食品機械事業(麺製造プラント・製麺機・包装米飯装置):数量 368(プラント・装置の件数(推定))× 価格 2,680(1件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 13 億円。数量 1.05 倍、単価 1.34 倍
- その他事業(成形品・リニアモータ応用品・セラミックス・LED照明):数量 56.0(実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 134(名目の価格指数(今=100))→ 売上 75 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍、単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,000 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:好況の利益の一部は残るが、工作機械の循環と過去の低い収益性を考えると、中立が最も確からしい。
やや悲観 21% やや不調側:好況は一巡し、中国勢との競争で利益は今の水準に戻る 利益 43 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 885 円443 億円
AI向け投資の山が過ぎ、受注は減る。台数はほぼ横ばいで、ここまで積み上がってきた受注残は消化されて終わる。中国メーカーの汎用機が価格を押し下げ、単価は物価に届かない。
営業利益率は5%台に戻り、2025年の水準とほぼ同じになる。産業機械は薄い利益のままで、金属3Dプリンタは赤字を抜けられない。ROEは3〜4%で、資本コストを大きく下回る。
転換社債は、株価が転換価額を上回る期間が短く、一部しか転換されない。還元は利益の6割を保つが、額は小さい。会社の地位が揺らぐわけではない。ただ、好況期にあった勢いは消え、資本をうまく使えない会社という姿に戻る。投資家の評価も、成長株から割安株へ移る。
- 工作機械事業(放電加工機・マシニングセンタ・金属3Dプリンタ・レーザー加工機):数量 2,332(台数換算(平均単価の推定で割った台数))× 価格 3,200(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 746 億円・営業利益 75 億円。数量 1.00 倍、単価 1.28 倍
- 産業機械事業(射出成形機):数量 650(成形機の台数(推定))× 価格 1,800(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍、単価 1.20 倍
- 食品機械事業(麺製造プラント・製麺機・包装米飯装置):数量 350(プラント・装置の件数(推定))× 価格 2,600(1件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 11 億円。数量 1.00 倍、単価 1.30 倍
- その他事業(成形品・リニアモータ応用品・セラミックス・LED照明):数量 56.0(実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 125(名目の価格指数(今=100))→ 売上 70 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍、単価 1.25 倍
倍率:ROE 3.6% は k を大きく下回り、PER は 1÷k = 11.4 倍まで。好況が終わって利益が元の水準に戻る筋書きで、稼ぐ力と現金・在庫の厚みを考え、上限の約 8.8 割の 10.29 倍に置いた。
確率:過去に何度も、好況の後に利益が元の低い水準へ戻っている。中国勢の追い上げや補助金の動きを踏まえ、2割強の確率で置いた。
悲観 13% 不調側:中国勢の追い上げと需要の反落が重なり、優良さを失う 利益 −15 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 700 円350 億円
AIデータセンター向けの投資が大きく反落し、中国勢が超精密領域にまで入り込む。台数は4分の1ほど減り、単価も物価に届かず、価格競争で利益が消える。
成形機は赤字に近く、食品機械も縮む。営業利益は赤字に沈み、会社は構造改革を繰り返す。厦門の工場停止のような手を、他の分野でも打たざるを得ない。
転換社債は転換されず、2030年に80億円を現金で償還する。還元は大きく縮み、会社は優良とは言えなくなる。ただ、純現金と工場・在庫が下値を支え、存続が危うくなることはない。還元は、利益ではなく、積み上げた現金と、遊休資産の売却で払う形になる。
- 工作機械事業(放電加工機・マシニングセンタ・金属3Dプリンタ・レーザー加工機):数量 1,749(台数換算(平均単価の推定で割った台数))× 価格 2,750(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 481 億円・営業利益 14 億円。数量 0.75 倍、単価 1.10 倍
- 産業機械事業(射出成形機):数量 552(成形機の台数(推定))× 価格 1,650(1台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 −2 億円。数量 0.85 倍、単価 1.10 倍
- 食品機械事業(麺製造プラント・製麺機・包装米飯装置):数量 332(プラント・装置の件数(推定))× 価格 2,400(1件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 6 億円。数量 0.95 倍、単価 1.20 倍
- その他事業(成形品・リニアモータ応用品・セラミックス・LED照明):数量 56.0(実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 110(名目の価格指数(今=100))→ 売上 62 億円・営業利益 −3 億円。数量 1.00 倍、単価 1.10 倍
倍率:赤字が続く筋書きで、稼ぐ力はほぼ消える。純現金と売れる資産の税後を床とし、約 350 億円とみた。PBR はこの床を今の自己資本 905 億円で割った値。
確率:AI投資の反落と、中国勢のハイエンド参入が同時に起きる必要がある。ただ10年は長く、過去に赤字が3回ある会社でもあるので、1割強にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工作機械事業(放電加工機・マシニングセンタ・金属3Dプリンタ・レーザー加工機)
放電加工機(ワイヤ・形彫・細穴)が中心で、マシニングセンタ、金属3Dプリンタ、レーザー加工機を含む。売上の約8割。
| 数量台数換算(平均単価の推定で割った台数) | 価格1台あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,332 | 2,500 | 583 | 55 |
| 10 年後 中立 | 2,845 | 3,350 | 953 | 129 |
取り方:2025年12月期の工作機械セグメントの売上583億円・利益55億円(有報ベース)。平均単価2,500万円は、ワイヤ放電加工機(1,500〜4,000万円台)、マシニングセンタ、金属3Dプリンタ(1億円超)の混合を筆者が推定した値で、台数は売上をそれで割った約2,330台。開示の台数ではない。
産業機械事業(射出成形機)
射出成形機の開発・製造・販売。中国・韓国が強く、汎用機の競争が厳しい。
| 数量成形機の台数(推定) | 価格1台あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 650 | 1,500 | 98 | 5 |
| 10 年後 中立 | 747 | 2,010 | 150 | 11 |
取り方:2025年12月期の産業機械セグメントの売上97億円・利益5億円。平均単価1,500万円は筆者の推定(汎用機と高付加価値機の混合)で、台数は約650台。
食品機械事業(麺製造プラント・製麺機・包装米飯装置)
麺製造プラント、製麺機、包装米飯製造装置の開発・製造・販売。
| 数量プラント・装置の件数(推定) | 価格1件あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 350 | 2,000 | 70 | 10 |
| 10 年後 中立 | 368 | 2,680 | 99 | 13 |
取り方:2025年12月期の食品機械セグメントの売上70億円・利益10億円。1件あたり2,000万円は筆者の推定で、件数は約350件。
その他事業(成形品・リニアモータ応用品・セラミックス・LED照明)
プラスチック成形品、リニアモータ応用製品、セラミックス、LED照明など。
| 数量実質の売上(今の値段基準・億円) | 価格名目の価格指数(今=100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 56.0 | 100 | 56 | 0 |
| 10 年後 中立 | 56.0 | 134 | 75 | 0 |
取り方:連結売上から3つのセグメントの合計を引いた差額約56億円。利益はセグメント開示が無く、調整(本社費・その他の損益)の中に含めて0とした。
リスクと懸念
希薄化(転換社債・新株予約権)
2025年に発行した転換社債80億円と新株予約権20億円分は、株価が転換価額の1.2倍を超える間は転換・行使できる。今の株価はこれを上回るので、株数は最大で約2割増える。利益が同じなら、1株あたりの価値は薄まる。
AI・光通信向けの需要への集中
今の好調は、光コネクタ金型とAIデータセンター向けが引っ張る。設備投資が一服すれば、受注残は急に減る。生産能力を増やした分、固定費が重くなる。工作機械は2009年と2023年に営業赤字を出した業種でもある。
中華圏への依存
売上の約3割が中華圏で、その比率は上がっている。金型市場の最大地域で需要は厚いが、補助金による国産化、規制、地政学の変化で大きく振れうる。会社は脱中国依存を掲げるが、進めるには時間と投資が要る。
産業機械の収益性とAltForm社
成形機は汎用機の競争が厳しく、利益率が上がらない。グループ会社のAltForm社は、今期も営業赤字の予定だ。黒字化は3年以内が目標で、実現しなければ、投資の回収に疑問が出る。
M&Aの実行
ファンドの支援で、新しい事業領域の買収を進める方針だ。調達資金のうち40億円がM&A向けになる。買収が成功すれば柱が増えるが、失敗すれば、のれんの減損や統合の負担で資本効率がさらに下がる。
資本効率と還元の実行
過去10年のROEの中央値は6%台と、資本コストを下回る。総還元性向70%以上は4年間の方針で、10年を通じて守られる保証はない。M&Aが優先されれば、追加の還元は先送りされうる。
今後の分かれ目
- 光コネクタ向けの放電加工機の受注が、2027年以降も増え続ける
- 増産投資が実り、営業利益率は10%を超えて定着する。好調側の確率を上げる材料になる
- 中国メーカーが、超精密の放電加工機でも実用的な製品を出す
- 単価が下がり、利益率は過去の幅に戻る。やや不調側から不調側の見方が強まる
- 受注残が2027年にかけて減り、工作機械の受注が急減速する
- 営業利益は半分以下になりうる。ただ純現金があるので、存続は揺らがない
- ファンド系が転換後に大株主になり、非上場化や再編を提案する
- 株主にとって、買収価格が評価の分かれ目になる。今の見方は大きく変わりうる
- 産業機械の高付加価値機が成功し、利益率が7〜8%に上がる
- 全体の営業利益率を押し上げ、ROEが資本コストへ近づく
- 追加の自社株買いなど、新しい資本政策が出る
- 自己資本が膨らまず、ROEが改善する。希薄化の影響も一部やわらぐ
見ておくもの
- 放電加工機の受注残と、主力機EXC100L+の月産台数
- 中華圏の売上比率と、欧米・アジアの売上の伸び
- 産業機械事業の営業利益率
- 転換社債・新株予約権の転換・行使の進み方
- 総還元性向70%以上の実行と、追加の資本政策
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価(PER17倍前後・PBR0.9倍弱)を見ずに、その時点のROEと資本コスト8.5%から決めた。ROEが資本コストに届かない筋書きが多く、PERは上限の1÷k=11.4倍の8〜8.5割に置いた。過去や同業の倍率は使っていない。今の時価総額は転換前の株数で、転換後は株が約2割増えるが、同時に調達資金100億円が自己資本に入る。10年後の時価総額は転換後の株数で書き、今の時価総額と比べるので、1株あたりでは割高に出やすい。10年の営業利益は、2026年の予想(92億円)より高くても低くても、好況の利益を恒常と置かないよう中立は控えめにした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→13.04 倍・やや楽観 PER 9.7→11.76 倍・中立 PER 9.1→11.76 倍・やや悲観 PER 10→10.29 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.25% = 8.75%。希薄化・M&A の実行・中華圏の依存は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。